特許第5923230号(P5923230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923230
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】留め具用ストリップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/00 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
   B25C1/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-515461(P2015-515461)
(86)(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公表番号】特表2015-518787(P2015-518787A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013060456
(87)【国際公開番号】WO2013182420
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2015年1月31日
(31)【優先権主張番号】102012209402.4
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フォーザー
(72)【発明者】
【氏名】ホーティエン チェン
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−041637(JP,U)
【文献】 特開昭49−015300(JP,A)
【文献】 特開2009−115212(JP,A)
【文献】 実開平04−077013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/00
B25C 7/00
B27F 7/13
F16B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
留め具の軸に適した相互に繋がれた複数のホルダーを備える留め具用ストリップの製造方法であって、前記ホルダーは打ち込み方向を決定し、前記留め具は前記打ち込み方向に、前記ホルダーから基材へと、打ち込み機によって打ち込まれるものにおいて、
a)ストリップ長手方向を定める連続的ストリップを製造するステップ、
b)前記ストリップの部材により前記ホルダーを製作するステップ、及び
c)前記留め具を前記ホルダーへ組込むステップ
を備え、ステップb)の際、前記ホルダーは、前記打ち込み方向に対して横方向に、深絞り加工によって製作される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記深絞り加工は前記打ち込み方向に対して垂直に行われる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記深絞り加工は前記ストリップ長手方向に対して垂直に行われる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)の際、前記ホルダーを形成する前記ストリップの部材には開口が形成される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
前記ストリップ長手方向に、開口は前記ホルダーと同じ高さに形成される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ストリップ長手方向に、前記ホルダーは2つの開口の間に形成される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)の際又はステップb)の後、前記ホルダーはスリットを備え、前記スリットは前記打ち込み方向に延びる、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
前記打ち込み方向の前記スリットは前記ホルダー上に連続的に構成される、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)の際、前記留め具は前記ホルダーに該当する前記スリットを通して嵌め込まれる、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)の際、前記打ち込み方向の前記留め具は前記ホルダーに導入され、及び前記ホルダーに挿入又はねじ込まれている、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記軸はねじ山を備え前記ねじ山は、前記留め具が前記ホルダーに組み込まれているとき又は前記留め具が前記ホルダーから前記基材に打ち込まれるとき、前記ホルダーに前記ねじ山に対応するねじ山を切る、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)の際又はステップb)の後、前記ホルダーは理論破断部位を備え、前記理論破断部位は前記打ち込み方向に沿って延びる、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載の方法。
【請求項13】
前記留め具は、前記軸の前記打ち込み方向と逆側の端部に頭部と、前記頭部と前記軸の間に漏斗状又は円錐状膨大部と、を備え、前記漏斗状膨大部の外形寸法は、前記打ち込み方向に対して横方向に、前記ホルダーの内寸よりも大きい、ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1に記載の方法。
【請求項14】
前記ホルダーは、前記留め具の前記打ち込み方向への動作により、前記頭部又は前記膨大部を通して拡大され得、及び、曲げ開けられ得る、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留め具を一時的に保持するための相互に繋がれた複数の保持部を備える、留め具用のストリップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなストリップにおいて、通常、保持部は対応する留め具の軸又は頭部に適したホルダーを備える。打ち込み機を用いて留め具を基材に向けて打ち込む際、留め具はホルダーから又はホルダーを通して押し出されるが、その際、特定の力がかかる。その結果、必要に応じて、ホルダーは破壊され、ある状況下では、ホルダーの残余部が留め具にくっついてしまう。
【0003】
そのようなストリップの製造では、連続的ストリップを後に打ち込み方向となる方向に変形させる方法がある。この方法では、打ち込み方向に留め具が同様に導入されるホルダーが形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、留め具用ストリップを迅速に且つ適切に製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、留め具の軸に適した相互に繋がれた複数のホルダーを備える、留め具用ストリップの製造方法であって、ホルダーは打ち込み方向を決定し、留め具は打ち込み方向にホルダーから基材へと、打ち込み機によって打ち込まれるものにおいて、
a)ストリップの長手方向を定める連続的ストリップを製造するステップ、
b)ストリップの部材によりホルダーを製作するステップ、及び
c)留め具をホルダーへ組込むステップ、
を備え、ステップb)の際、ホルダーは、打ち込み方向に対して横方向に、深絞り加工によって製作される方法によって達成される。したがって、深絞り加工中、そのストリップの部材の一部は打ち込み方向以外の方向へ絞られる。そのため、深絞り方向は、深絞り加工を行うよう形成されたダイに対して、深絞り加工を行うよう形成されたパンチが移動する方向である。深絞り方向は打ち込み方向に対して垂直であることが好ましい。また、深絞り方向はストリップの長手方向に対して垂直であることが特に好ましい。深絞り用部材を伸張することにより、ホルダーの部材厚は連続的ストリップの部材厚とは関係なく選ばれ得る。
【0006】
この方法の好ましい発明の態様は、ステップb)の際、ホルダーを形成するストリップの部材には開口が形成されることを特徴とする。特に好ましい発明の態様において、ホルダーと同じ高さにおいて、穴がストリップの長手方向に形成される。同様の特に好ましい発明の態様において、ストリップの長手方向に、ホルダーは2つの開口の間に形成される。
【0007】
この方法の好ましい発明の態様は、留め具が軸を備え、ステップc)の際、この軸がホルダーに保持されることを特徴とする。留め具は先端又は頭部も備えることが特に好ましい。留め具はねじ山を備え、ねじとして構成されることが好ましい。別の発明の態様において、留め具はくぎやボルトなどとして構成される。
【0008】
この方法の好ましい発明の態様は、ステップb)の際又はステップb)の後、ホルダーはスリットを有することを特徴とする。スリットは打ち込み方向に沿って延びることが好ましい。スリットはホルダー上に連続的に構成されることが特に好ましい。この方法の好ましい発明の態様は、ステップc)の際、留め具がホルダーに嵌め込まれる。この工程は、スリットがあればそこを通して行われることが好ましい。別の好ましい発明の態様において、スリットはホルダーの一部のみに亘り、連続的には形成されていない。
【0009】
この方法の好ましい発明の態様は、ステップc)の際、留め具はその打ち込み方向にホルダーに導入されることを特徴とする。留め具はホルダーに挿入されることが特に好ましい。
【0010】
この方法の好ましい発明の態様は、ステップb)の際又はステップb)の後、ホルダーは理論破断点を備えることを特徴とする。この理論破断点は打ち込み方向に沿って延びることが好ましい。
【0011】
この方法の好ましい発明の態様は、留め具が、軸の打ち込み方向と反対側の端部に頭部と、頭部と軸との間に漏斗状膨大部と、を備え、漏斗状膨大部の外形寸法は、打ち込み方向に対して横方向に、ホルダーの内寸よりも大きいことを特徴とする。漏斗状膨大部は円錐形状に形成されているのが特に好ましい。ホルダーは、留め具の打ち込み方向への移動に連れて、頭部又は膨大部が通り抜けられるよう拡張され得るのが好ましく、更に曲げ開き得ることが特に好ましい。
【0012】
図面を参照し、以下の記載により本発明の実施例を詳細に説明する。図面は以下の内容を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】留め具用ストリップを示す斜視図である。
図2】留め具用ストリップを示す側面図である。
図3】打ち込み方向から見た留め具用ストリップの図である。
図4】打ち込み方向から見た留め具用ストリップの図である。
図5】打ち込み方向から見た留め具用ストリップの図である。
図6】留め具用ストリップを示す斜視図である。
図7】留め具用の種々のホルダーを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、図示されていない軸及び頭部を備える留め具用のストリップ100を示す斜視図である。ストリップ100はプラスチックからなり、留め具の一時的な保持のための相互に繋がれた複数のホルダー120と、二つのホルダーの間に配置される連結部115とを備える。そのため、留め具は、中央位置、即ち、ホルダー120内のその重心に保持されることが好ましい。図示されていない実施例において、ストリップはフォイル材や紙等からなる。
【0015】
各ホルダー120は、打ち込み方向130に、ホルダー120から図示されていない基材に向けて打ち込まれ得る留め具の1つの軸に対して設けられる。そのため、打ち込み方向130はストリップ長手方向170に対して垂直である。そして、留め具は、その動作の結果として、ホルダー120を曲げ開き、そのホルダー120から打ち込み方向130へ比較的弱い力で飛び出す。このために、留め具は、軸の打ち込み方向と逆側の端部に頭部と、頭部と軸との間に漏斗状膨大部と、を備え、その膨大部の外形寸法は、打ち込み方向に対して横方向に、ホルダーの内寸よりも大きい。
【0016】
ホルダー120はスリット160、頭部側の前面開口140及び先端側の前面開口150を備える。スリット160は、打ち込み方向130に沿って、ホルダー120の全長に亘り延在しており、頭部側の前面開口140及び先端側の前面開口150は相互に繋がっている。スリット160の幅はホルダー120の幅より狭いので、図示されていない留め具はスリット160通してホルダー120へ嵌め込むことができ、ホルダー120に固定される。
【0017】
ホルダー120は、ストリップの平面に対して垂直に、打ち込み方向130及びストリップ長手方向170に亘り、ストリップ100の連続する主要部から突出している。このように、単純な手法で、適切な部材の選択及び強度により、留め具の離脱に必要なホルダー120の可撓性を損なうことなく、ストリップ100を打ち込み機に簡単に装着し得るに十分な剛性を持つ、ストリップ100を形成することができ、ホルダーはストリップ100の主要部よりも部材厚が薄い。
【0018】
ストリップ100の製造のため、まず連続的ストリップが製造され、その部材からホルダー120が製作される。続いて、各ホルダーには、パンチによって長方形領域が、打ち込み方向130及びストリップ長手方向170に垂直に、連続的ストリップから対向ダイに向かって絞り出される。前面開口140、150は、前段の又は同時パンチングによって形成され、例えば、パンチのしかるべき鋭い刃によって形成される。長方形領域は、深絞り加工又は熱成形中に形成され、個々のホルダー120の支持壁180、190を構成する。スリット160は、同時又は後段のパンチングによって形成され、例えば、パンチのしかるべき鋭い前縁によって形成される。開口200の支持壁180、190は、互いに接近する方向に曲がるよう構成されており、一緒にホルダー120を形成する。そのため、支持壁180、190はストリップ100の開口200をその後ろに備え、ホルダー120に同じ高さでストリップ長手方向170に配置される。
【0019】
図2は、図示されていない軸及び頭部を備える留め具用の別のストリップ100の側面図である。図1において示すストリップと異なり、打ち込み方向130とストリップ長手方向は互いに垂直ではなく、互いに対して鋭角に傾斜するよう向けられている。ここでその傾斜角は、45°から80°の間であるのが好ましく、70°であるのが特に好ましい。互いにずらして繋がれている留め具を配置したので、それぞれの頭部は部分的に重なり合い、その結果、同じ長さのストリップ100でもより多くの留め具がストリップに保持される。
【0020】
図3は、打ち込み方向から見た図1又は図2のストリップ100を示す。同一の要素には同じ参照符号が付されている。さらに、ねじ110は、複数のホルダー120の一つによって保持されている留め具の例として、断面図で示されている。
【0021】
図4は、ホルダー420に保持されている留め具410と共に、打ち込み方向から見たストリップ400の断面図を示す。ストリップ400の製造において、支持壁480、490はパンチによって形成され、ストリップ400に開口499を設ける。開口499の支持壁は、互いに離れるように曲がるよう構成されており、そのため、開口499の支持壁490が隣接する開口499’の支持壁480’と共に、ホルダー420を形成する。ホルダー420は、支持壁480、490の間に、打ち込み方向に、連続的スリット460を有する。そして、ストリップ400の長手方向470に、ホルダー420は開口499、499’の間に配置される。
【0022】
図5は、ホルダー520に保持されている留め具510と共に、打ち込み方向から見たストリップ500の断面図を示す。ストリップ500の製造において、ホルダー520はスリットではなく、ホルダー520を形成するただ一つの支持壁がパンチによって形成され、その後ろに開口599を残す。ホルダーの部材は、ここでパンチによって対向ダイに向かって絞り出される。対向ダイは、留め具510の離脱を容易にするために、理論破断部位に相当する、好ましくは打ち込み方向に連続している、ノッチ525の製造に適した鋭端部を備える。
【0023】
図示されていない実施例において、パンチは、それに代えて又はそれに加えて、鋭端部を備えているので、所望により理論破断部位が、ホルダーの外側のノッチによって、ホルダーの内側のノッチによって、若しくは、ホルダー部材の両面の脆弱性によって、形成される。図示されていない別の実施例において、ホルダーは、スリットに代えて又はそれに加えて、理論破断部位を備える。
【0024】
図6は、図示されていない留め具用ストリップ600を示す斜視図である。ストリップ600は留め具の一時的な保持のための相互に繋がれた複数のホルダー620と、二つのホルダー620の間に配置される連結部615と、を備える。留め具は、中央位置、即ち、ホルダー620内のその重心に保持されるのが好ましい。
【0025】
各ホルダー620は留め具の軸に対して設けられ、留め具は打ち込み方向630に、ホルダー620から図示されていない基材に打ち込まれる。打ち込み方向630はストリップ長手方向670に対して傾斜している。
【0026】
ホルダー620は、打ち込み方向630に沿って、頭部側の前面開口640から始まり、ホルダー620の一部に広がり、ホルダー120の先端側の前面開口650の手前で終わる、スリット660を有する。スリット660の端部665は、先が尖るように成形される。そのため留め具は、打ち込み方向630への運動の結果、まずホルダー620を曲げ開き、それから比較的弱い力で裂開する。裂開は切欠効果により可能になり、端部665から発生する。
【0027】
図7は、ホルダー720上のスリット760の幾つかの変形例を示し、これらの変形例は、主に、スリット760の端部765の形状が異なる。スリットの端部765の形状は、尖端(図7a)、平面(図7b)、曲線的(図7c)である。別の実施例において、スリット760は、ホルダー720のいずれの前面開口とも繋がっておらず、平面の(図7d)、曲線的な(図7e)、又は尖っている(図7f)二つの端部765、766を備える。スリット760は、特に、その端部765は、留め具のホルダー720からの離脱の際、特定の条件下において、理論破断部位として機能する。図示されていない実施例において、スリットの二つの端部の異なる形状は互いに組み合わされるか、及び/又は、ホルダーはいくつかのスリット、例えば、図7aや図7fに示したスリットを有する。
【0028】
図示されていない別の実施例において、ホルダーは理論破断部位を備えており、それは、例えば図5に示す内側及び/又は外側ノッチの形状、及び、例えば図7a及び7fに示す一つ又は複数のスリットである。ノッチはスリットがその端部を超えて延長されるよう構成されるのが好ましく、ホルダーの先端側の前面開口にまで及ぶのが特に好ましい。
【0029】
本願発明は、頭部と軸を備える留め具用ストリップの製造方法、特に、打ち込み機に適した方法を一例として記載している。本発明に係る方法及び本発明に係るストリップは、ほかの用途にも適するものである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a)】
図7b)】
図7c)】
図7d)】
図7e)】
図7f)】