特許第5923265号(P5923265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5923265-蒸発濃縮装置および蒸発濃縮方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923265
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】蒸発濃縮装置および蒸発濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/04 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
   B01D1/04
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-207149(P2011-207149)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2013-66844(P2013-66844A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵理
(72)【発明者】
【氏名】井上 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 靖史
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−202101(JP,A)
【文献】 特開2007−098350(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/066673(WO,A1)
【文献】 特開2004−097146(JP,A)
【文献】 特開2010−075817(JP,A)
【文献】 特開昭63−218650(JP,A)
【文献】 特開昭58−143801(JP,A)
【文献】 特開2007−075795(JP,A)
【文献】 実開昭55−122801(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−3/42
C02F 1/02−18
B01J 19/00
C07B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を大気圧以下の減圧状態で蒸発させる単一の蒸発器を備える蒸発濃縮装置であって、
前記蒸発器内には、被処理液を加熱する複数の伝熱管が、その両端部を前記蒸発器側面の両ヘッダーに支持された状態で、前記両ヘッダーを連通するように水平に配置され、
前記蒸発器の底部に貯留される被処理液を、前記蒸発器の上部に戻して、前記伝熱管の外表面に供給するように循環させる循環手段を備え、
前記蒸発器は、前記被処理液が貯留される前記底部が、複数の底部に区分されると共に、複数の各底部が、下方に向かって水平断面積が小さくなるコーン状であり、
前記循環手段は、前記複数の各底部にそれぞれ貯留される前記被処理液を、前記蒸発器の上部にそれぞれ戻して、前記伝熱管の外表面に供給するように循環させる、
ことを特徴とする蒸発濃縮装置。
【請求項2】
前記循環手段は、前記被処理液を循環させる循環ポンプとして容積式ポンプを備える、
請求項1に記載の蒸発濃縮装置。
【請求項3】
前記蒸発器を、前記複数の各底部に対応させて複数の蒸発室に仕切ると共に、蒸発室毎に前記被処理液の濃縮濃度を異ならせる、
請求項1または2に記載の蒸発濃縮装置。
【請求項4】
前記被処理液が、食品用の液体である、
請求項1ないし3のいずれかに記載の蒸発濃縮装置。
【請求項5】
大気圧以下の減圧状態の単一の蒸発器の底部に貯留される被処理液を、前記蒸発器の上部に戻して前記蒸発器内に水平に配置された複数の伝熱管に供給する蒸発濃縮方法であって、
前記複数の伝熱管は、その両端部が前記蒸発器側面の両ヘッダーに支持された状態で、前記両ヘッダーを連通するように配置され、
前記蒸発器の前記底部が、複数の底部に区分されると共に、複数の各底部が、下方に向かって水平断面積が小さくなるコーン状であり、
前記複数の各底部にそれぞれ貯留される前記被処理液を、前記蒸発器の上部にそれぞれ戻して、前記伝熱管の外表面に供給する、
ことを特徴とする蒸発濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を蒸発濃縮する蒸発濃縮装置および蒸発濃縮方法に関し、更に詳しくは、食品用の液体を濃縮するのに好適な蒸発濃縮装置および蒸発濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を蒸発濃縮する蒸発濃縮装置として、例えば、特許文献1には、下部に濃縮処理される廃液等の被処理液が貯留される密閉型の蒸発器内の上部に、複数の伝熱管を設け、各伝熱管の外表面に、循環ポンプによって供給される被処理液を散布ノズルで散布することによって蒸発させ、発生した蒸気を、蒸気エゼクターで圧縮して昇温し、この昇温した蒸気を、ダクトを介して前記各伝熱管内に供給することによって、各伝熱管の外表面に散布される被処理液を加熱、蒸発させるようにした蒸発濃縮装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−24202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる蒸発濃縮装置は、被処理液から発生する蒸気を、蒸気エゼクター等で圧縮、昇温することによって、伝熱管で被処理液を加熱、蒸発させるための熱源として利用する、すなわち、被処理液から発生する蒸気の熱を回収して熱源として利用するので、蒸気圧縮式でない濃縮装置に比べてエネルギー効率が高いという特長を有している。
【0005】
かかる蒸発濃縮装置によって濃縮処理される被処理液が廃液である場合には、被処理液が蒸発濃縮装置に滞留している滞留時間は、さほど問題とならないが、例えば、お茶、コーヒー、スープエキス等の食品用の液体である場合には、この食品用の液体を加熱および蒸発させるので、蒸発濃縮装置における滞留時間が長くなると、色、味、香りといった品質に影響が生じることなる。したがって、食品用の液体などを濃縮する場合には、滞留時間を極力短くすることが求められる。
【0006】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、蒸発濃縮装置における被処理液の滞留時間を可及的に短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0008】
(1)本発明の蒸発濃縮装置は、被処理液を大気圧以下の減圧状態で蒸発させる単一の蒸発器を備える蒸発濃縮装置であって、前記蒸発器内には、被処理液を加熱する複数の伝熱管が、その両端部を前記蒸発器側面の両ヘッダーに支持された状態で、前記両ヘッダーを連通するように水平に配置され、前記蒸発器の底部に貯留される被処理液を、前記蒸発器の上部に戻して、前記伝熱管の外表面に供給するように循環させる循環手段を備え、前記蒸発器は、前記被処理液が貯留される前記底部が、複数の底部に区分されると共に、複数の各底部が、下方に向かって水平断面積が小さくなるコーン状であり、前記循環手段は、前記複数の各底部にそれぞれ貯留される前記被処理液を、前記蒸発器の上部にそれぞれ戻して、前記伝熱管の外表面に供給するように循環させる。
【0009】
本発明の蒸発濃縮装置によると、被処理液が貯留される底部を、複数の底部に区分すると共に、各底部をコーン状としているので、例えば、底部を複数に区分することなく、単一の底部のままで前記コーン状と同じ傾斜のコーン状とした単一のコーン状の底部と、前記複数のコーン状の各底部とにおいて、同じ液位、すなわち、単一のコーン底部の先端からの高さが同じ液面レベルの被処理液の液量を比べると、複数のコーン状の各底部にそれぞれ貯留される被処理液の液量を加算した総液量の方が、単一のコーン状の底部に貯留される被処理液の液量よりも少なくなる。
【0010】
このように被処理液が貯留される底部を、複数のコーン状の底部とすることによって、貯留される被処理液の液量、すなわち、保有液量を少なくできるので、被処理液を蒸発させる蒸発能力が同じ場合には、所定の濃度に達するまでの時間が短くなるため、蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を短縮できることになる。
【0011】
(2)本発明の蒸発濃縮装置の好ましい実施態様では、前記循環手段は、前記被処理液を循環させる循環ポンプとして容積式ポンプを備える。
【0012】
この実施態様によると、循環ポンプとして、従来の渦流ポンプに比べてNPSH(正味吸込みヘッド)が小さい容積式ポンプを用いるので、蒸発器の底部に貯留される被処理液の水位を低くして保有液量を少なくすることが可能となり、蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を一層短縮することができる。
【0013】
(3)本発明の蒸発濃縮装置の他の実施態様では、前記蒸発器を、前記複数の各底部に対応させて複数の蒸発室に仕切ると共に、蒸発室毎に前記被処理液の濃縮濃度を異ならせている。
【0014】
この実施態様によると、蒸発器を、複数の蒸発室に仕切って濃縮濃度を異ならせている、すなわち、濃度差をもたせているので、例えば、第1の蒸発室を低濃度側の蒸発室とし、この低濃度側の蒸発室で濃縮した被処理液を、高濃度側の蒸発室である第2の蒸発室に供給して目標の濃度まで更に濃縮するといったことが可能となり、単一の蒸発器で目標の濃度まで濃縮するのに比べて効率的に濃縮することができる。
【0015】
(4)本発明の蒸発濃縮装置の更に他の実施態様では、前記被処理液が、食品用の液体である。
【0016】
この実施態様によると、蒸発濃縮処理における食品用の液体の滞留時間を短縮できるので、色、味、香りといった品質に与える影響を低減することができる。
【0017】
(5)本発明の蒸発濃縮方法は、大気圧以下の減圧状態の単一の蒸発器の底部に貯留される被処理液を、前記蒸発器の上部に戻して前記蒸発器内に水平に配置された複数の伝熱管に供給する蒸発濃縮方法であって、前記複数の伝熱管は、その両端部が前記蒸発器側面の両ヘッダーに支持された状態で、前記両ヘッダーを連通するように配置され、前記蒸発器の前記底部が、複数の底部に区分されると共に、複数の各底部が、下方に向かって水平断面積が小さくなるコーン状であり、前記複数の各底部にそれぞれ貯留される前記被処理液を、前記蒸発器の上部にそれぞれ戻して、前記伝熱管の外表面に供給する。
【0018】
本発明の蒸発濃縮方法によると、被処理液が貯留される底部を、複数の底部に区分すると共に、各底部をコーン状としているので、蒸発器における被処理液の保有液量を少なくすることができ、蒸発能力が同じ場合、所定の濃度に達するまでの時間が短くなるため、蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蒸発器における被処理液の保有液量を少なくすることができるので、蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の一実施形態の蒸発濃縮装置の構成図である。
図2図2図1の蒸発濃縮装置の伝熱管の配列を示す垂直断面図である。
図3図3は本発明の他の実施形態の蒸発濃縮装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面によって本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸発濃縮装置の構成図である。
【0023】
この実施形態の蒸発濃縮装置は、被処理液として、食品用の液体、例えばお茶やコーヒー等を蒸発濃縮するものであり、密閉型の蒸発器1を備えている。
【0024】
この実施形態では、蒸発器1は、2つの第1,第2蒸発室11,12に、仕切板13によって仕切られており、被処理液を第1蒸発室11で濃縮し、この濃縮された被処理液を第2蒸発室12で更に濃縮する、2段の濃縮を行うものである。各蒸発室11,12は、全体として縦長の直方体形状であって、各底部が、下方に向かって水平断面積が小さくなる四角錐形のコーン状をなしている。
【0025】
各蒸発室11,12のコーン状の各底部は、被処理液を貯留する第1,第2液溜部181,182となっており、その上部には、両蒸発室11,12に亘って水平方向に延びる複数の伝熱管4が設けられている。各伝熱管4の両端部は、第2蒸発室12側の入口側のヘッダー2と第1蒸発室11側の出口側のヘッダー3とに支持されて両ヘッダー2,3を連通する。各伝熱管4の中央部は、仕切板13に気密に挿通支持されている。
【0026】
また、両ヘッダー2,3の内、一方の入口側のヘッダー2内には、入口室2aと折り返し室2bとを区画する区画板2cが設けられ、他方の出口側のヘッダー3内には、折り返し室3aと出口室3bとを区画する区画板3cが設けられる。
【0027】
出口側のヘッダー3の折り返し室3aの下部には、溜まった凝縮液を排出するための排出管路27が接続され、この排出管路27の途中に凝縮水ポンプ11が設けられている。出口側のヘッダー3上部の出口室3bには、蒸発器1内を大気圧以下に減圧するための真空ポンプ10が接続される。
【0028】
各蒸発室11,12の各液溜部181,182の被処理液は、第1,第2循環ポンプ51,52によって第1,第2循環管路61,62を介して、各蒸発室11,12内の上部に設けた第1,第2散布ノズル71,72にそれぞれ供給され、各散布ノズル71,72から各伝熱管4の外表面に向かって散布した後、各蒸発室11,12の液溜部181,182に流下するという循環を行うように構成している。
【0029】
第1循環ポンプ51の吐出側の第1循環管路61には、第1蒸発室11で濃縮した被処理液を第2蒸発室12に移送する移送管路14が接続され、この移送管路14は、第1開閉弁15を介して第2循環ポンプ52の吸込み側の第2循環管路62に接続される。第2循環管路62の途中には、第2蒸発室12で濃縮した被処理液を排出するための排出管路8が接続され、この排出管路8には、第2開閉弁16が設けられる。
【0030】
第1蒸発室11には、原液としての被処理液を供給するための原液供給管路23が接続される。
【0031】
各循環ポンプ51,52、各循環管路61,62及び各散布ノズル71,72によって、各液溜部181,182に貯留される被処理液を、各蒸発室11,12上部の各散布ノズル71,72から伝熱管4の外表面に散布するように循環させる循環手段が構成される。
【0032】
この実施形態では、各循環ポンプ51,52は、従来の渦流ポンプに代えて、容積式ポンプを用いている。容積式ポンプは、一定量の液体を吸込んで、その液体を押し出すものであって、ギヤポンプやネジポンプなどの回転ポンプ、あるいは、ピストンポンプやダイヤフラムポンプなどの往復ポンプのいずれでもよいが、ギヤポンプなどの回転ポンプが好ましい。
【0033】
各蒸発室11,12の上部は、共通の蒸気管路19を介してブロワー等の圧縮機9に接続されており、各蒸発室11,12からの蒸気は、圧縮機9によって圧縮され、蒸気管路20を介して入口側のヘッダー2に供給される。なお、圧縮機9に代えて蒸気エゼクターで圧縮してもよい。
【0034】
この実施形態の蒸発濃縮装置は、上述のように、食品用の液体を濃縮するものであって、サニタリー仕様となっている。すなわち、この実施形態では、蒸発器1は、ステンレス鋼からなると共に、主要な管路は、ステンレス製のサニタリー配管で構成されている。
【0035】
上記構成の蒸発濃縮装置における被処理液の濃縮処理では、先ず、蒸発器1内を真空ポンプ10によって減圧すると共に、原液供給管路23から被処理液の原液を第1蒸発室11に供給する。このとき、移送管路14の第1開閉弁15は、閉止している。
【0036】
次に、蒸気供給管路25を介して高圧蒸気を駆動用の蒸気として入口側のヘッダー2に供給すると共に、第1循環ポンプ51を駆動して液溜部181内の被処理液を、第1蒸発室11内の上部の第1散布ノズル71に供給して各伝熱管4の外表面に散布する。
【0037】
散布された被処理液は、第1蒸発室11内の下部の液溜部181に流下する一方、各伝熱管4の外表面で加熱されて蒸発し、発生した蒸気は、蒸気管路19から圧縮機9に吸引、圧縮された後、入口側のヘッダー2を介して各伝熱管4内に導かれて、当該各伝熱管4の外表面に散布される被処理液を加熱するための熱源として利用される。
【0038】
各伝熱管4内で生成して出口側のヘッダー3の折り返し室3aの下部に溜まった凝縮液は、排出管路27を介して凝縮水ポンプ11によって系外へ排出される。
【0039】
次に、移送管路14の第1開閉弁15を開放して、第1蒸発室11で濃縮された被処理液の一部を、第2循環管路62に移送する。この実施形態では、第1蒸発室11で濃縮を行いながら、濃縮された被処理液の一部を第2蒸発室12に移送する。第1蒸発室11には、被処理液の原液が供給される。
【0040】
第2蒸発室12では、排出管路8の第2開閉弁16を閉止した状態で、第2循環ポンプ52を駆動し、第2蒸発室12の液溜部182の被処理液を、第2散布ノズル72に供給し、各伝熱管4に散布する。
【0041】
散布された被処理液は、第2蒸発室12内の下部の液溜部182に流下する一方、各伝熱管4の外表面で加熱されて蒸発し、発生した蒸気は、蒸気管路19から圧縮機9に吸引、圧縮された後、入口側のヘッダー2を介して各伝熱管4内に導かれる。
【0042】
第2蒸発室12の液溜部182の被処理液が所定の濃度になると、排出管路8の第2開閉弁16を開放して濃縮された被処理液を排出する。
【0043】
なお、第1蒸発室11及び第2蒸発室12には、それぞれ被処理液の液面の上限レベルを検出する図示しないレベルセンサがそれぞれ設置されており、被処理液が減少すると、各蒸発室11,12には、前記各レベルセンサによって上限レベルに達したことが検出されるまで原液あるいは濃縮された被処理液がそれぞれ供給される。また、上限レベルに達して原液あるいは濃縮された被処理液の供給が停止された後は、一定期間が経過して液面レベルが低下したとき、あるいは、被処理液の液面の下限レベルを検出するレベルセンサによって下限レベルになったことが検出されたときに、再び、原液あるいは濃縮され被処理液が供給される。
【0044】
このように蒸発器1を第1,第2蒸発室11,12に仕切って、第1蒸発室11で低濃度の濃縮を行い、更に、第2蒸発室12で高濃度の濃縮を行うことによって、単一の蒸発室で高濃度の濃縮を行うのに比べて、効率的に濃縮することができる。
【0045】
一般に、不揮発性の溶質が溶けた被処理液を濃縮すると、被処理液の濃度が高くなるにつれて沸点上昇によって蒸発量が低下する。つまり、被処理液が高濃度になるほど、被処理液の濃縮が進みにくくなるために、所定の濃度に達するまでの時間が長くなる。このため、単一の蒸発室で、所定の濃度まで濃縮するのに要する時間と、蒸発室を低濃縮側と高濃縮側とに分けて2つの蒸発室で、前記所定の濃度まで濃縮するのに要する時間とを比べると、蒸発室を2つに分けることで、時間のかかる高濃度の濃縮を、低濃度の濃縮と同時進行で処理できるために、濃縮に要する時間を短くすることができ、効率的な濃縮が可能となる。
【0046】
また、この実施形態では、蒸発器1の底部は、各蒸発室11,12に対応するように2つの区分された液溜部181,182となっており、各液溜部181,182は、上述のように四角錐形のコーン状であるので、例えば、同じ傾斜の四角錐形のコーン状で単一の液溜部を構成して同じ液位まで被処理液を貯留した場合に比べて、貯留される被処理液の液量を少なくすることができる。
【0047】
すなわち、各液溜部181,182のコーン状の傾斜と同じ傾斜の四角錐形の単一のコーン状の液溜部を構成した場合に、そのコーンの先端から或る液面レベルまで貯留した被処理液の液量と、各液溜部181,182に各コーンの先端から前記或る液面レベルまでそれぞれ貯留した被処理液の液量を加算した総液量とを比較すると、各液溜部181,182に貯留した被処理液の液量を加算した総液量の方が、単一のコーン状の液溜部に貯留される被処理液の液量よりも少なくなる、すなわち、蒸発器1内の保有液量が少なくなる。したがって、被処理液を蒸発させる蒸発能力が同じ場合には、単一のコーン状の液溜部に比べて、2つのコーン状の液溜部181,182を有する本実施形態の方が、所定の濃度に達するまでの時間が短くなるため、蒸発濃縮処理における滞留時間を短縮することができる。
【0048】
このように蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を短縮できるので、被処理液である食品用の液体の加熱及び蒸発に伴う色、味、香りといった品質に与える影響を低減することができる。
【0049】
また、この実施形態では、上述のように各循環ポンプ51,52として容積式ポンプを用いている。この容積式ポンプは、従来の渦流ポンプに比べてNPSH(正味吸込みヘッド)が小さいので、蒸発器1の底部に貯留される被処理液の水位を低く設定して保有液量を少なくすることが可能となる。したがって、蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を一層短縮することができる。
【0050】
更に、この実施形態では、上述のように、各蒸発室11,12は、全体として縦長の直方体形状であって、各蒸発室11,12に亘って配置される複数の伝熱管4は、図2の伝熱管4の垂直断面図に示されるように、縦長に配列されている。
【0051】
すなわち、複数の伝熱管4は、上下方向の段数を、左右方向の列数よりも多く、例えば、2倍以上にした長方形状に配列されている。
【0052】
このように複数の伝熱管4を縦長に配列しているので、各蒸発室11,12の上方の各散布ノズル71,72から散布された被処理液が、底部の各液溜部181,182に落下するまでに接触する伝熱管4の本数が多くなって処理能力が向上し、これによって、滞留時間を一層短縮することができる。
【0053】
上述の実施形態では、蒸発器1を、2つの第1,第2蒸発室11,12に仕切って、被処理液を第1蒸発室11で濃縮し、濃縮された被処理液を第2蒸発室12で更に濃縮するようにしたけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、図3に示すように、蒸発器1を仕切ることなく、被処理液が貯留される底部を複数に区分して各底部をコーン状としてもよい。
【0054】
図3は、本発明の他の実施形態に係る蒸発濃縮装置の構成図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0055】
この実施形態の蒸発濃縮装置では、蒸発器1a内を2つに仕切る仕切板13は、設けられておらず、複数の伝熱管4の中央部を支持する支持板21が設けられている。
【0056】
蒸発器1の底部は、2つに区分されており、各底部は、被処理液をそれぞれ貯留する第1,2液溜部181,182となっており、それぞれ四角錐形のコーン状となっている。
【0057】
各液溜部181,182には、原液供給管路23から被処理液の原液が供給できるように構成されている。
【0058】
この実施形態では、各液溜部181,182に対応して被処理液をそれぞれ循環させるように構成されている。第1,第2循環管路61,62は、第1,第2循環ポンプ51,52の吸込み側で接続管路24によって接続されており、第1,2液溜部181,182に貯留される被処理液の濃度が同じになるように構成されている。
【0059】
この実施形態では、原液供給管路23から各液溜部181,182に被処理液の原液を供給し、各循環ポンプ51,52によって、各液溜部181,182の被処理液を、上部の各散布ノズル71,72に供給して伝熱管4の外表面に散布する。
【0060】
散布された被処理液は、蒸発室1aの下部の各液溜部181,182に流下する一方、各伝熱管4の外表面で加熱されて蒸発し、発生した蒸気は、蒸気管路19から圧縮機9に吸引、圧縮された後、入口側のヘッダー2を介して各伝熱管4内に導かれて、当該各伝熱管4の外表面に散布される被処理液を加熱するための熱源として利用される。
【0061】
各伝熱管4内で生成して出口側のヘッダー3の折り返し室3aの下部に溜まった凝縮液は、排出管路27を介して凝縮水ポンプ11によって系外へ排出される。被処理液が所要の濃度になると、排出管路8の開閉弁16を開放して濃縮された被処理液を排出する。
【0062】
この実施形態においても、上述の実施形態と同様に、蒸発器1aの底部を、2つに区分して四角錐形のコーン状としているので、蒸発器1aの保有液量を減らすことが可能となり、蒸発濃縮処理における被処理液の滞留時間を短縮することができる。
【0063】
上述の各実施形態では、蒸発器1,1aの底部は、2つに区分されたけれども、3つ以上に区分してもよく、また、区分された底部を四角錐としたけれども、四角錐に限らず、他の角錐、あるは、円錐のコーン状としてもよい。
【0064】
上述の各実施形態では、食品用の液体の濃縮に適用して説明したけれども、本発明は、食品用の液体に限らず、例えば、医薬品や化学薬品用の液体あるいは廃液などの液体の濃縮にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0065】
1,1a 蒸発器
1,12 第1,第2蒸発室
2,3 ヘッダー
4 伝熱管
1,52 第1,第2循環ポンプ
1,62 第1,第2循環管路
1,72 第1,第2散布ノズル
9 圧縮機
13 仕切板
181,182 第1,第2液溜部
21 支持板
図1
図2
図3