【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る柱脚保護構造は、建物の上部構造
と、上部構造の柱の下端から下方に延在する鋼製の柱脚部と、柱脚部の下部を支持する鉄筋コンクリート製の
基礎構造の基礎部と、基礎部と上部構造の
外壁の下端部との間に設けられて柱脚部の一部又は全部を包囲する保護カバーと、を備え、保護カバーは、柱脚部の側面に対向するカバー本体部と、カバー本体部から柱脚部に向けて突設されて柱脚部に係合する係合部と、を備え、カバー本体部は、基礎部の上面から
外壁の下端部までの長さよりも小さい高さを有して形成され、保護カバーの係合部が柱脚部に係合した状態でカバー本体部の下端部は基礎部の上面から離間してこれらの間に隙間が形成されており、カバー本体部の下端部と基礎部の上面との隙間に第1シール材が充填されていることを特徴とする。
【0008】
この発明では、保護カバーは、係合部が柱脚部に係合することで支持されると共に、基礎部から離間した状態で設置される。また、カバー本体部と基礎部との間に第1シール材が充填される。これにより、保護カバーは、荷重伝達の観点からは基礎部から縁が切れた状態となる。従って、基礎部に地震等による水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバーへのこれらの伝達が第1シール材により著しく低減され、当該保護カバーの損傷を防止することができる。
【0009】
また、基礎部から伝達される地震力は時には甚大であり、基礎はコンクリート基礎として密実に強度な剛性を有して形成される。一方、従来の化粧モルタル(湿式モルタル)は地震に対する強度はほとんど期待できない。このため、従来のように化粧モルタルを用いた場合には、基礎部や上部構造は地震に対して抵抗力を有している一方、これらの間の化粧モルタルのみが弱く、これによって、当該化粧モルタルのみが破壊してしまう等の問題が発生していた。これに対し、本願の如く保護カバーと基礎部とを完全に構造的に縁を切ることによって、当該保護カバーへの荷重の入力が著しく減少することとなり、保護カバーの破壊を免れることができる。
【0010】
また、保護カバーと基礎部との間は第1シール材によって水密に連結されるものとなるので、これらの間から柱脚部に向けての雨水等の浸入を抑制することができると共に気密性も確保され、柱脚部での内部結露の発生も抑制することができる。
【0011】
また、保護カバーを設置するだけで柱脚部を覆うことができるため、モルタル等を用いて柱脚部を覆う場合に比べて品質や施工性が向上する。
このように、本発明に係る柱脚保護構造によれば、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる。
【0012】
また、上記柱脚保護構造において、柱脚部は、
柱の
下端部に連結される筒状の立上り部と、立上り部の下端部から当該立上り部の軸に対して離間する方向に延在して基礎部の上面に載置されるプレート状のベース部と、を備え、保護カバーの係合部は、ベース部の縁部に乗り上がった状態で係合する座面を備えていることが好ましい。この場合、係合部の座面を柱脚部のベース部の縁部に載せるだけで保護カバーを設置することができ、保護カバーの設置作業を著しく容易に行うことができる。
【0013】
また、上記柱脚保護構造において、保護カバーのカバー本体部は、
係合部が柱脚部に係合した状態で柱脚部
の側面から離間して設けられていることが好ましい。この場合には
、上述の如き地震発生時においては、基礎部に合わせて柱脚部も振動することとなるが、カバー本体部と柱脚部とが離間しているので、保護カバーは、柱脚部の振動の影響も受け難く、柱脚部の振動に伴う損傷も抑制される。
【0014】
また、上記柱脚保護構造において、
外壁の下端部には、
外壁の外面を流下する流体の下方への流下を促す水切り部材が設けられており、保護カバーと水切り部材との間には隙間が設けられ、カバー本体部の上端部には、水切り部材の最外縁よりも外側から当該水切り部材の下方に回り込みつつ立ち上がって水切り部材との間に第2シール材を充填する充填スペースを形成するベッド部が設けられており、充填スペースに第2シール材が充填されることで、第2シール材を介して保護カバーの上端部と
水切り部材の下端部とが連結されていることが好ましい。この場合には、カバー本体部の上端部と
水切り部材との隙間に第2シール材が充填される。これによって、保護カバーは、荷重伝達の観点からは、基礎部に加えて更に上部構造とも縁が切れた状態となる。従って、風荷重や地震等に起因して上部構造に水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバーへのこれらの伝達は第2シール材により著しく低減され、これによって、保護カバーの損傷を更に確実に防止することができる。
【0015】
また
、水切り部材の下方に回りこんで立ち上がるようしてベッド部を設けているので、水切り部材とカバー本体部との間のスペースに第2シール材を充填する際に当該ベッドを背部からのシール押さえ(支持部)として用いることができる。これにより、第2シール材の充填作業の容易化、且つ、第2シール材を水切り部材の下方に確実に充填することができ、第2シール材が充填スペースから脱落等して雨水の流下の妨げとなることを防止できる。
【0016】
また、上記柱脚保護構造において、保護カバーは、プレキャストコンクリートからなることが好ましい。この場合には、保護カバーを部材化して工場等で容易に大量生産できるものとなり、保護カバーの寸法精度等も向上させることができる。また、保護カバーをプレキャストコンクリートによって形成することで、耐衝撃性を向上させることができる。これにより、例えば保護カバーに人や物が衝突する場合でも、保護カバーの損傷を防止することができる。ここで、プレキャストコンクリートとは、工場などで予め製造されたコンクリートを意味する。
【0017】
また、上記課題を解決すべく、本発明に係る保護カバーは、上部構造
と、上部構造の柱の下端から下方に延在する鋼製の柱脚部と、柱脚部の下部を支持する鉄筋コンクリート製の
基礎構造の基礎部と
を有する建物において、基礎部と上部構造の外壁の下端部との間に設けられて柱脚部の一部又は全部を包囲する保護カバーであって、柱脚部の側面に対向するカバー本体部と、カバー本体部から柱脚部に向けて突設されて柱脚部に係合する係合部と、を備え、カバー本体部は、基礎部の上面から
外壁の下端部までの長さよりも小さい高さを有して形成され、係合部が柱脚部に係合することでカバー本体部の下端部は
基礎部の上面から離間してこれらの間に隙間が形成されることを特徴とする。
【0018】
この発明では、保護カバーを、係合部を柱脚部に係合させることで基礎部から離間した状態で設置することができる。これにより、保護カバーは、柱脚部と基礎部との間に設置したときに、荷重伝達の観点からは基礎部から縁が切れた状態となる。従って、基礎部に地震等による水平荷重や振動が入力される場合であっても、当該保護カバーの損傷を防止することができる。
【0019】
また、基礎部から伝達される地震力は時には甚大であり、基礎はコンクリート基礎として密実に強度な剛性を有して形成される。一方、従来の化粧モルタルは地震に対する強度はほとんど期待できない。このため、従来のように化粧モルタルを用いた場合には、基礎部や上部構造は地震に対して抵抗力を有している一方、これらの間の化粧モルタルのみが弱く、これによって、当該化粧モルタルのみが破壊してしまう等の問題が発生していた。これに対し、本願の保護カバーを用いることで、保護カバーと基礎部とを完全に構造的に縁を切ることができる。これにより、当該保護カバーへの荷重の入力を著しく減少させることができ、柱脚部と基礎部との間に保護カバーを設置した場合であっても、保護カバーの破壊を免れることができる。
【0020】
また、保護カバーを設置するだけで柱脚部を覆うことができるため、モルタル等を用いて柱脚部を覆う場合に比べて品質や施工性が向上する。
このように、本発明に係る保護カバーによれば、荷重による割れの発生を改善し、品質及び施工性の向上も図ることができる。
【0021】
また、上記保護カバーにおいて、柱脚部には、
柱の
下端部に連結される筒状の立上り部と、立上り部の下端部から当該立上り部の軸に対して離間する方向に延在して基礎部の上面に載置されるプレート状のベース部と、が設けられており、係合部は、ベース部の縁部に乗り上がった状態で係合する座面を備えていることが好ましい。この場合、係合部の座面を柱脚部のベース部の縁部に載せるだけで保護カバーを設置することができ、保護カバーの設置作業を著しく容易に行うことができる。
【0022】
また、上記保護カバーにおいて、カバー本体部は、係合部が柱脚部に係合した状態で柱脚部
の側面から離間して設けられることが好ましい。この場合には
、上述の如き地震発生時においては、基礎部に合わせて柱脚部も振動することとなるが、カバー本体部と柱脚部とが離間しているので、保護カバーは、柱脚部の振動の影響も受け難く、柱脚部の振動に伴う損傷も抑制される。
【0023】
また、上記保護カバーにおいて、
外壁の下端部には、
外壁の外面を流下する流体の下方への流下を促す水切り部材が設けられており、カバー本体部の上端部には、水切り部材の最外縁よりも外側から当該水切り部材の下方に回り込みつつ立ち上がって水切り部材との間に第2シール材を充填する充填スペースを形成するベッド部が設けられていることが好ましい。この場合には、カバー本体部の上端部と
水切り部材との隙間に第2シール材を充填することができる。これによって、柱脚部と基礎部との間に保護カバーを設置した場合、保護カバーは、荷重伝達の観点からは、基礎部に加えて更に上部構造とも縁が切れた状態となる。従って、風荷重や地震等に起因して上部構造に水平荷重や振動が入力される場合であっても、保護カバーへのこれらの伝達は第2シール材により著しく低減され、これによって、保護カバーの損傷を更に確実に防止することができる。
【0024】
また
、水切り部材の下方に回りこんで立ち上がるようしてベッド部を設けているので、水切り部材とカバー本体部との間の充填スペースに第2シール材を充填する際に当該ベッドを背部からのシール押さえ(支持部)として用いることができる。これにより、第2シール材の充填作業の容易化、且つ、第2シール材を水切り部材の下方に確実に充填することができ、第2シール材が充填スペースから脱落等して雨水の流下の妨げとなることを防止できる。
【0025】
また、上記保護カバーは、プレキャストコンクリートからなることが好ましい。この場合には、保護カバーを部材化して工場等で容易に大量生産できるものとなり、保護カバーの寸法精度等も向上させることができる。また、保護カバーをプレキャストコンクリートによって形成することで、耐衝撃性を向上させることができる。これにより、例えば保護カバーに人や物が衝突する場合でも、保護カバーの損傷を防止することができる。
【0026】
また、上記保護カバーは、カバー本体部と係合部とを有する複数の保護カバー形成体を連結して形成されることが好ましい。このように、複数の保護カバー形成体によって保護カバーを形成することで、保護カバー形成体の組み合わせによって様々な大きさの保護カバーを得ることができ、様々な大きさの柱脚部に対応ことができる。