(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923300
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20160510BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/306 B
H01L21/306 J
H01L21/306 R
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-287214(P2011-287214)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138051(P2013-138051A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】武明 励
(72)【発明者】
【氏名】難波 敏光
【審査官】
樫本 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−072598(JP,A)
【文献】
特開2000−308859(JP,A)
【文献】
特開平11−016876(JP,A)
【文献】
特開2009−141383(JP,A)
【文献】
特開平11−297663(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/074521(WO,A1)
【文献】
特開2008−198689(JP,A)
【文献】
特開2007−184524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
上部の搬入口から搬入される複数の基板を、隣接する基板の主面を対向させつつ起立姿勢にて配列された状態で収容する槽本体と、
前記槽本体の前記搬入口を開閉する蓋部と、
前記槽本体内の前記複数の基板に向けて処理液を噴出する複数の処理液ノズルと、
前記蓋部の下面に向けてガスを噴出することにより、前記蓋部の前記下面に付着した処理液を流して除去する少なくとも1つのガスノズルと、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する少なくとも一方の側壁に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する両側壁に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板処理装置であって、
前記少なくとも1つのガスノズルが、高さ方向において、前記蓋部と前記処理液ノズルとの間に位置することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記複数の処理液ノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する両側壁に設けられ、
前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体内の前記複数の基板の主面に対向する側壁に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記蓋部の前記下面が、前記少なくとも1つのガスノズル近傍において、前記少なくとも1つのガスノズルから離れるに従って上方へと向かう傾斜面を含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記蓋部と前記槽本体との間の間隙の外側に、前記間隙からの処理液の漏出を妨げる遮蔽部または漏出した処理液を回収する回収部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記少なくとも1つのガスノズルの向きを変更する向き変更機構をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置であって、
複数の基板を前記槽本体内に搬入するために前記蓋部が前記搬入口を開ける前に、前記少なくとも1つのガスノズルからガスを噴出させる制御部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記処理液が、硫酸過水であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
基板処理方法であって、
a)槽本体の上部の搬入口が蓋部により閉じられた状態で、少なくとも1つのガスノズルから前記蓋部の下面に向けてガスを噴出することにより、前記蓋部の前記下面に付着した処理液を流して除去する工程と、
b)前記搬入口を開ける工程と、
c)隣接する基板の主面を対向させつつ起立姿勢にて配列された状態で、前記搬入口から複数の基板を前記槽本体内に搬入する工程と、
d)前記搬入口を蓋部により閉じる工程と、
e)複数の処理液ノズルから前記複数の基板に向けて処理液を噴出する工程と、
f)前記搬入口を開ける工程と、
g)前記搬入口から前記複数の基板を搬出する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理方法であって、
前記a)工程の前に、前記複数の処理液ノズルから前記槽本体内に向けて前記処理液を噴出して前記処理液の温度を調整する工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の基板処理方法であって、
前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する両側壁に設けられ、
前記e)工程において、前記両側壁に設けられたガスノズルから交互にガスが噴出されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項14】
基板処理方法であって、
a)槽本体の上部の搬入口を開ける工程と、
b)隣接する基板の主面を対向させつつ起立姿勢にて配列された状態で、前記搬入口から複数の基板を前記槽本体内に搬入する工程と、
c)前記搬入口を蓋部により閉じる工程と、
d)複数の処理液ノズルから前記複数の基板に向けて処理液を噴出する工程と、
e)前記d)工程の終了と同時またはその直前もしくは直後から、少なくとも1つのガスノズルから前記蓋部の下面に向けてガスの噴出を開始して前記蓋部の前記下面に付着した処理液を流して除去し、前記噴出を終了する工程と、
f)前記搬入口を開ける工程と、
g)前記搬入口から前記複数の基板を搬出する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項15】
請求項11ないし14のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記処理液が、硫酸過水であることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽内で複数の基板を処理する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、処理槽内で複数の基板に洗浄、エッチング、レジスト剥離等の処理を行う基板処理装置が利用されている。このような基板処理装置として、硫酸過水(Sulfuric Acid/Hydrogen Peroxide/Water Mixture、以下、「SPM溶液」という。)を処理槽内に貯留し、複数の基板を同時に浸漬させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、薬液処理後の基板を水洗槽に投入し、基板を水洗槽内で上下に揺動させながら、水洗槽において互いに対向して配置されたノズルから、基板の表面に向けてシャワー水洗する基板水洗方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49022号公報
【特許文献2】特開2000−183011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2のように処理槽内でシャワー状に処理液を噴出して処理を行うと、処理槽の蓋部に処理液が付着する。次に処理する予定の基板を搬入した後に蓋部を閉じると、その振動で、蓋部から基板へと処理液の液滴が落下する虞がある。液滴が基板に付着すると、液滴に含まれるパーティクルも基板に付着し、基板に不良箇所が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、液滴が蓋部から基板へと落下して付着することを防止または低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板処理装置であって、上部の搬入口から搬入される複数の基板を、隣接する基板の主面を対向させつつ起立姿勢にて配列された状態で収容する槽本体と、前記槽本体の前記搬入口を開閉する蓋部と、前記槽本体内の前記複数の基板に向けて処理液を噴出する
ことにより、前記蓋部の前記下面に付着した処理液を流して除去する複数の処理液ノズルと、前記蓋部の下面に向けてガスを噴出する少なくとも1つのガスノズルとを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する少なくとも一方の側壁に設けられる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の基板処理装置であって、前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する両側壁に設けられる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の基板処理装置であって、前記少なくとも1つのガスノズルが、高さ方向において、前記蓋部と前記処理液ノズルとの間に位置する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記複数の処理液ノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する両側壁に設けられ、前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体内の前記複数の基板の主面に対向する側壁に設けられる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記蓋部の前記下面が、前記少なくとも1つのガスノズル近傍において、前記少なくとも1つのガスノズルから離れるに従って上方へと向かう傾斜面を含む。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記蓋部と前記槽本体との間の間隙の外側に、前記間隙からの処理液の漏出を妨げる遮蔽部または漏出した処理液を回収する回収部をさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記少なくとも1つのガスノズルの向きを変更する向き変更機構をさらに備える。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置であって、複数の基板を前記槽本体内に搬入するために前記蓋部が前記搬入口を開ける前に、前記少なくとも1つのガスノズルからガスを噴出させる制御部をさらに備える。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の基板処理装置であって、前記処理液が、硫酸過水である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、基板処理方法であって、a)槽本体の上部の搬入口が蓋部により閉じられた状態で、少なくとも1つのガスノズルから前記蓋部の下面に向けてガスを噴出する
ことにより、前記蓋部の前記下面に付着した処理液を流して除去する工程と、b)前記搬入口を開ける工程と、c)隣接する基板の主面を対向させつつ起立姿勢にて配列された状態で、前記搬入口から複数の基板を前記槽本体内に搬入する工程と、d)前記搬入口を蓋部により閉じる工程と、e)複数の処理液ノズルから前記複数の基板に向けて処理液を噴出する工程と、f)前記搬入口を開ける工程と、g)前記搬入口から前記複数の基板を搬出する工程とを備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の基板処理方法であって、前記a)工程の前に、前記複数の処理液ノズルから前記槽本体内に向けて前記処理液を噴出して前記処理液の温度を調整する工程をさらに備える。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項11または12に記載の基板処理方法であって、前記少なくとも1つのガスノズルが、前記槽本体の前記複数の基板の外縁部に対向する両側壁に設けられ、前記e)工程において、前記両側壁に設けられたガスノズルから交互にガスが噴出される。
【0020】
請求項14に記載の発明は、基板処理方法であって、a)槽本体の上部の搬入口を開ける工程と、b)隣接する基板の主面を対向させつつ起立姿勢にて配列された状態で、前記搬入口から複数の基板を前記槽本体内に搬入する工程と、c)前記搬入口を蓋部により閉じる工程と、d)複数の処理液ノズルから前記複数の基板に向けて処理液を噴出する工程と、e)前記d)工程の終了と同時またはその直前もしくは直後から、少なくとも1つのガスノズルから前記蓋部の下面に向けてガスの噴出を開始し
て前記蓋部の前記下面に付着した処理液を流して除去し、前記噴出を終了する工程と、f)前記搬入口を開ける工程と、g)前記搬入口から前記複数の基板を搬出する工程とを備える。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項11ないし14のいずれかに記載の基板処理方法であって、前記処理液が、硫酸過水である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、処理液の液滴が蓋部から基板へと落下して付着することを防止または低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図7】基板処理装置の動作の流れの一部を示す図である。
【
図8】ガスノズルの他の配置を簡略化して示す図である。
【
図9】ガスノズルの他の配置を簡略化して示す図である。
【
図10】ガスノズルの他の配置を簡略化して示す図である。
【
図11】ガスノズルの他の配置を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置1の正面図であり、
図2は側面図である。
図1および
図2では、処理槽10を断面にて示している。
【0025】
基板処理装置1は、処理槽10と、基板9を昇降するリフタ2と、複数の処理液ノズル31と、複数のガスノズル32とを備える。処理槽10は、上部が開口する略箱状の槽本体11と、一対の蓋部12とを備える。蓋部12は、
図1における左右に配置され、紙面に垂直な軸を中心として回動することにより、槽本体11の上部の開口を開閉する。一対の蓋部12の下面の間には隙間はほとんど存在せず、段差もない。すなわち、蓋部12の下面の少なくとも中央領域は平面である。
【0026】
リフタ2は、複数の基板9を下方から保持する基板保持部21と、基板保持部21を昇降する昇降機構22と、基板保持部21と昇降機構22とを接続する接続部23とを備える。基板保持部21は、
図2の左右方向である前後方向に延びる複数の棒状部材であり、棒状部材に形成された溝に基板9の下部が保持される。複数の基板9は、隣接する基板9の主面を対向させつつ等間隔かつ起立姿勢にて配列される。基板9は、この状態で槽本体11に収容される。
【0027】
昇降機構22により基板保持部21が昇降することにより、複数の基板9が、処理槽10内にて実線にて示す処理位置と、二点鎖線にて示す受け渡し位置との間にて移動する。受け渡し位置にて、図示省略の搬送装置と基板保持部21との間で基板9の受け渡しが行われる。基板保持部21が昇降する際には、蓋部12により槽本体11の上部の開口が開けられる。以下の説明では、基板9の搬出入に利用される槽本体11の上部の開口を「搬入口110」と呼ぶ。
【0028】
蓋部12には、接続部23を避ける切り欠きが形成されており、基板保持部21が槽本体11内に位置する状態で、搬入口110を閉じることができる。基板保持部21が複数の基板9を保持して槽本体11内に位置する状態で蓋部12が搬入口110を閉じることにより、基板9は処理槽10内に収容される。
【0029】
複数の処理液ノズル31は、槽本体11の基板9の外縁部に対向する、
図1の左右の側壁111に設けられる。処理液ノズル31は、基板9の配列方向に平行に3列に配列され、3つの配列が、側壁111の上部、中央部、下部に配置される。処理液ノズル31は、槽本体11内の複数の基板9に向けてシャワー状に処理液を噴出する。本実施の形態では、処理液はSPM溶液(硫酸過水)であり、基板処理装置1により、基板9上のレジスト膜の剥離やメタルの除去が行われる。シャワー方式を採用することにより、浸漬方式に比べて、処理液の使用量を削減することができる。上段の処理液ノズル31は、水平方向に対して下方に傾斜する方向かつ基板9に向かう方向に処理液を噴出する。中段の処理液ノズル31は水平方向かつ基板9に向かう方向に処理液を噴出する。下段の処理液ノズル31は水平方向に対して上方に傾斜する方向かつ基板9に向かう方向に処理液を噴出する。
【0030】
ガスノズル32も槽本体11の複数の基板9の外縁部に対向する両側壁111に設けられ、上段の処理液ノズル31の上方に設けられる。換言すれば、ガスノズル32は、高さ方向において、蓋部12と処理液ノズル31との間に位置する。ガスノズル32の噴出口は、処理液ノズル31と同様に、基板9の配列方向に平行に配列される。ガスノズル32からは窒素ガスが蓋部12の下面に向けて噴出される。すなわち、ガスノズル32は、
図1の左右から水平方向に対して上方に傾斜する方向かつ中央に向かう方向にガスを噴出する。
図1では、ガスおよび処理液が噴出される様子を破線にて示しているが、原則として、ガスと処理液とは同時には噴出されない。
【0031】
ガスノズル32を基板9の外縁部に対向する側壁111に設けることにより、処理槽10内に接続部23が存在しても、接続部23に妨げられることなく、ガスを蓋部12に向けて噴出することができる。ガスノズル32が処理液ノズル31と蓋部12との間に位置することにより、ガスノズル32への処理液の付着を抑制することができ、かつ、斜め下から蓋部12の下面にブローを行うことができる。また、両側壁111にガスノズル32を設けることにより、蓋部12の下面全体を容易にブローすることができる。
【0032】
図3は、処理槽10、処理液ノズル31およびガスノズル32に接続される構成を示す図である。なお、処理槽10の断面の平行斜線を省略している。槽本体11の底部は、槽排出路51に接続される。処理時には、槽本体11の底部に処理液91が貯溜される。槽排出路51上には弁61が設けられ、弁61が開放されることにより、槽本体11から処理液91が排出される。槽排出路51は分岐し、一方はポンプ41に接続され、他方は排液路52に接続される。排液路52には弁62が設けられる。ポンプ41は加熱部42に接続され、加熱部42はフィルタ43に接続される。
【0033】
処理液ノズル31は、ノズル供給路53を介してフィルタ43に接続される。ノズル供給路53はフィルタ43から複数の分岐路に分岐して処理液ノズル31へと向かう。各分岐路上には弁63が設けられる。弁63が開けられた状態でポンプ41が駆動されることにより、処理液ノズル31から処理液91が噴出される。加熱部42は、処理液91の温度を制御するために利用される。フィルタ43は、処理液91中のパーティクルを除去する。ノズル供給路53からはバイパス路54が分岐し、バイパス路54は弁64を介して槽本体11の下部の吐出口33に接続される。なお、
図3では、片側の処理液ノズル31とノズル供給路53との接続のみを示している。
【0034】
基板処理装置1は、バッファタンク44と、処理液供給源45と、ガス供給源46とをさらに備える。バッファタンク44は、タンク排出路55を介してポンプ41に接続される。タンク排出路55上には弁65が設けられる。バッファタンク44は、タンク供給路56を介してフィルタ43に接続される。タンク供給路56上には弁66が設けられる。バッファタンク44は処理液供給源45に接続される。処理液供給源45にて硫酸、過酸化水素水および純水が所定の割合にて混合されることにより、SPM溶液が生成され、バッファタンク44に供給される。これらの溶液は、混合されることなくバッファタンク44に供給されてもよい。
【0035】
ガスノズル32は、ガス供給路57を介してガス供給源46に接続される。ガス供給路57上には弁67が設けられ、弁67が開けられることにより、窒素ガスがガスノズル32から噴出される。処理槽10には排気路58が接続され、排気路58上に弁68が設けられる。
【0036】
基板処理装置1は制御部7を備え、各弁、ポンプ41および加熱部42は、制御部7により制御される。制御部7は、リフタ2の動作や蓋部12の開閉も制御する。
【0037】
図4および
図5は、基板処理装置1の動作の流れを示す図である。
図3に示すように、処理が開始される際には、事前に槽本体11に処理液91が貯留される。処理液91の量は、処理位置に配置された基板9に触れない量である。
【0038】
具体的一例として、処理液91は、バッファタンク44にて調整される。処理液供給源45から各種液がバッファタンク44に供給され、弁65,66を開け、他の弁を閉じた状態でポンプ41が駆動される。これにより、処理液91がバッファタンク44からタンク排出路55、ポンプ41、加熱部42、フィルタ43、タンク供給路56を循環する。バッファタンク44には温度計および濃度計が設けられ、処理液供給源45からの各種液の供給および加熱部42を制御することにより、処理液91が所望の濃度および温度となる。弁66を閉じて弁64を開くことにより、処理液91は、タンク排出路55、ポンプ41、加熱部42、フィルタ43、バイパス路54を介して処理槽10に供給される。なお、処理液91は、処理液供給源45から処理槽10に直接各種液が供給される等の他の方法により処理槽10に貯留されてもよい。
【0039】
基板処理では、まず、プレ温調が必要か否かが確認される(ステップS11)。例えば、前の基板9の処理から次の基板9の処理まで長時間が経過している場合に、処理液91、ノズル供給路53、槽本体11、処理槽10内のガス等の温度を所望の温度とするためにプレ温調が行われる(ステップS12)。プレ温調では、弁61,63が開けられ、他の弁は閉じられる。ただし、弁64は開けられてもよい。処理槽10内の処理液91は、槽排出路51から排出され、ポンプ41、加熱部42、フィルタ43、ノズル供給路53を介して処理液ノズル31から噴出される。槽本体11には温度計および濃度計が設けられており、処理液91の温度が所望の温度に調整され、処理液91の濃度が監視される。処理液91の噴出は所定時間行われる。
【0040】
プレ温調が終了すると、制御部7により弁67が開けられ、ガス供給源46からガス供給路57を介してガスノズル32に窒素ガスが供給される。これにより、搬入口110が蓋部12により閉じられた状態で、ガスノズル32から蓋部12の下面に向けてガスが噴出される(ステップS13)。実際には、左右からのガスの流れの衝突を避けるため、ガスは、左右の側壁111のガスノズル32から交互に噴出される。その結果、プレ温調または前回の基板処理にて蓋部12の下面に付着した処理液91の大部分が側壁111に向かって流れる。
【0041】
図6は、ガスノズル32近傍を拡大して示す断面図である。ガスノズル32は上段の処理液ノズル31が設けられるノズルブロック311に設けられる。具体的には、ノズルブロック311内に紙面に垂直な方向(すなわち、基板9の配列方向)に延びる流路321が形成され、流路321に沿って複数のガス噴出口322が形成される。
【0042】
ノズルブロック311の上端は鋭角に尖っており、蓋部12の下面121に対向する。ノズルブロック311の上端と蓋部12との間、すなわち、槽本体11と蓋部12との間には僅かな間隙30が存在し、間隙30の外側に、断面が三角形の遮蔽部312が設けられる。遮蔽部312は、蓋部12のうち槽本体11の外部に位置する部位の下面に設けられる。
図6に例示する遮蔽部312は、間隙30から離れるに従って下方へと向かう傾斜面313を有する。これにより、ガスの噴出が行われる際に、間隙30から処理液91の液滴または微粒子(ミスト)が処理槽10の外部へと漏出することが妨げられる。間隙30からの処理液91の漏出を低減するために、ガスの噴出時には、
図3に示す弁68が開けられ、排気路58からの排気が行われる。なお、処理液91の漏出の低減のためには、これ以外に、例えば、処理槽10が納められるチャンバ(図示せず)内に下降気流(ダウンフロー)を形成して、ミストを排出するようにしてもよい。
【0043】
ガスの噴出が停止されると、蓋部12が搬入口110を開け(ステップS14)、基板保持部21が上昇して外部の搬送装置から複数の基板9を受け取る。基板保持部21は下降し、槽本体11に基板9が搬入され、蓋部12が搬入口110を閉じる(ステップS15,S16)。
【0044】
その後、プレ温調と同様に、弁61,63が開けられ、処理槽10内の処理液91が、槽排出路51、ポンプ41、加熱部42、フィルタ43、ノズル供給路53を介して処理液ノズル31へと導かれ、処理液91が処理液ノズル31から基板9に向けて噴出される(
図5:ステップS21)。基板処理中は、リフタ2が基板保持部21を上下に揺動することにより、処理の均一性の向上が図られてもよい。
【0045】
基板処理が完了すると、弁63が閉じられ、蓋部12が搬入口110を開ける(ステップS22)。基板保持部21が上昇することにより基板9は槽本体11から搬出され、外部の搬送装置に渡される(ステップS23)。基板保持部21は下降し、蓋部12が搬入口110を閉じる(ステップS24)。
【0046】
次の基板9を処理する場合(ステップS25)、ポスト温調が必要か否かが確認される(ステップS26)。ポスト温調は基板9の処理後に処理液91の温度を所望の温度に維持する動作であり、基板9の搬出動作と並行して行われてもよい。ポスト温調では、弁61,64が開けられ、処理槽10内の処理液91が、槽排出路51、ポンプ41、加熱部42、フィルタ43、バイパス路54を介して吐出口33へと導かれる。これにより、処理液91を噴出することなく処理槽10を利用して処理液91の温調が行われる(ステップS27)。
【0047】
その後、ステップS11に戻り、次の基板9の処理の前にプレ温調が必要か否か確認される。プレ温調が行われる場合は、プレ温調およびガス噴出が行われ(ステップS12,S13)、プレ温調が行われない場合は、ガス噴出が行われる(ステップS13)。いずれの場合においても、制御部7の制御により、複数の基板9を槽本体11内に搬入するために蓋部12が開く前に、ガスノズル32からガスを噴出することにより、蓋部12の下面に付着した処理液91が除去される。その結果、基板9の搬入後に蓋部12が閉じる際に、基板9に処理液91の液滴が落下して、基板9に液滴と共にパーティクルが付着してしまうことを防止または低減することができる。
【0048】
上記基板処理は最後の複数の基板9が処理されるまで繰り返され、全ての基板9が処理されると、基板処理装置1による処理が終了する(ステップS25)。
【0049】
図7は、基板処理装置1の他の動作例を示す図であり、
図5のステップS21に対応する部分の詳細を示す。
図7に示す動作では、基板9の搬入後に、まず、処理液91の噴出が開始され(ステップS211)、所定の時間が経過するとガスの噴出が開始される(ステップS212)。ガスの噴出が開始されるとすぐに処理液91の噴出が停止される(ステップS213)。その後、ガスが両側壁111のガスノズル32から交互に噴出され、ガスの噴出が停止される(ステップS214)。
【0050】
処理液91の噴出の終了直前からガスの噴出が開始されることにより、処理液91の噴出を停止した後に蓋部12の下面から基板9に液滴が落下する可能性が低減される。なお、処理液91の落下の可能性が低減可能であれば、ガスの噴出開始は、処理液91の噴出の停止と同時であってもよく、停止の直後であってもよい。
【0051】
図8ないし
図11は、ガスノズル32の他の配置を簡略化して示す図である。処理液ノズル31は一部のもののみを示す。
図8では、ガスノズル32は、蓋部12の下面に取り付けられる。これにより、ガスの一部が蓋部12の下面に向かって流れ、下面上の処理液が押し流される。
図9では、ガスノズル32は、2つの蓋部12の先端側の下面に取り付けられ、ガスは蓋部12の継ぎ目側から左右へと流れる。すなわち、ガスノズル32は処理位置に位置する基板9の真上に設けられる。これにより、基板9の真上の領域から処理液を除去することができる。
図9の場合、ガスノズル32からのガスの噴出は、蓋部12が搬入口110を閉じた状態で行われてもよく、
図9に示すように半分だけ開いた状態で行われてもよい。
【0052】
図10に示す例では、処理液ノズル31は揺動機構34に設けられ、ガスノズル32も揺動機構34に設けられる。処理液ノズル31は、処理液を噴出する間に、揺動機構34により上下および/または左右に揺動される。これにより、基板9の処理がより均一に行われる。ガスノズル32から蓋部12の下面に向けてガスが噴出される際にも、ガスノズル32が上下および/または左右に揺動される。揺動機構34は、ガスノズル32の向きを変更する向き変更機構として機能する。これにより、蓋部12の下面からの処理液の除去をより適切に行うことが実現される。なお、ガスノズル32は揺動されるのではなく、向き変更機構により、所望の向きへと変更されるのみでもよい。ガスノズル32の向きは、作業者により変更されて調整されてもよく、制御部7により自動的に変更されてもよい。
【0053】
図11に示す例では、ガスノズル32は、槽本体11内の複数の基板9の主面に対向する側壁111に設けられ、ガスノズル32からガスが蓋部12の下面に向けて斜め上方へと噴出される。すなわち、ガスノズル32は、基板保持部21が槽本体11内に位置する場合の接続部23(
図2参照)側の側壁111に設けられる。実際には、複数のガスノズル32が
図11の紙面に垂直な方向に配列される。処理液ノズル31は、
図1および
図2と同様に、槽本体の複数の基板9の外縁部に対向する両側壁111に設けられる。ガスノズル32をこのように設けることにより、蓋部12の下面の処理液は、蓋部12の継ぎ目を跨ぐことなく蓋部12の端までガスにより移動することができる。また、処理液の配管との干渉を避けつつガスノズル32を容易に設けることができる。
【0054】
図12は、
図11に示す例における蓋部12の他の例を示す図である。蓋部12の下面121は、ガスノズル32近傍において、ガスノズル32から離れるに従って上方へと向かう傾斜面122を含む。ガスの流れに沿う傾斜面122が設けられることにより、蓋部12の下面121上の処理液は、ガスの流れに沿って滑らかに流れる。これにより、例えば、蓋部12の中央部を薄くするために段差を設ける場合に比べて、広範囲の処理液91を蓋部12の下面121から容易に除去することができる。
【0055】
図13は、
図6の遮蔽部312に代えて回収部35が設けられた例を示す図である。回収部35は、蓋部12とノズルブロック311との間の間隙30の外側を覆うように設けられ、排出路59に接続される。間隙30から漏出する処理液の液滴または微粒子は、回収部35にて受け止められ、排出路59から回収される。これにより、間隙30を介して処理槽10から処理液が外部へと漏れ出すことが防止される。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0057】
ガスの噴出は、様々なタイミングにて行われよく、例えば、プレ温調が行われない場合において、基板9を搬出して蓋部12が搬入口110を閉じた直後からガスの噴出が開始されてもよい。逆に、蓋部12が搬入口110を開く直前のみにおいて、ガスの噴出が行われてもよい。さらには、基板9を処理している最中にガスの噴出が行われてもよい。
【0058】
ガスは空気でもよく、他の種類のガスでもよい。ガスの流量は、制御部7により調整可能でもよい。処理液ノズル31が上下に揺動する場合、処理液ノズル31自体からガスが蓋部12の下面に向けて噴出されてもよい。
【0059】
図1に示す構成において、ガスノズル32は、槽本体11の複数の基板9の外縁部に対向する一方の側壁111のみに設けられてもよい。この場合、ガスは、蓋部12の下面を一方向のみに流れる。ガスノズル32を基板9の外縁部に対向する少なくとも一方の側壁111に設けることにより、基板9の主面に対向する側壁111に設ける場合に比べて、処理液91の液滴の移動距離を短くすることができ、かつ、広い範囲の液滴を適切に除去することができる。
【0060】
ガスノズル32は1つでもよい。すなわち、基板処理装置1には、少なくとも1つのガスノズル32が設けられる。ガスノズル32の開口は様々な形状であってよく、例えば、水平方向に延びるスリット状でもよい。
【0061】
図12に示すように蓋部12の下面121に傾斜面122を設ける手法は、槽本体11の基板9の外縁部に対向する側壁111にガスノズル32が設けられる場合に適用されてもよい。蓋部12は槽本体11に直接設けられる必要はなく、例えば、槽本体11がチャンバに収容され、このチャンバに蓋部が設けられてもよい。この場合においても、槽本体11の上部の開口である搬入口は、実質的に蓋部により開閉される。
【0062】
処理液ノズル31は蓋部12に設けられてもよい。ポスト温調と同様の温調動作は、基板9の処理中に行われてもよく、基板9の搬入や搬出時に行われてもよい。
【0063】
図13に示す回収部35には、排出路59に加えて、ガスを吸引する排気路が設けられてもよい。排気路に気液分離機能が設けられてもよい。
【0064】
基板処理装置1にて行われる処理は、SPM溶液による処理には限定されず、いわゆるSC−1(アンモニア水や過酸化水素水と純水との混合液を使用して高温で処理する洗浄処理)やSC−2(塩酸および過酸化水素水と純水との混合液を使用する洗浄処理)等の他の処理でもよい。さらには、基板処理装置1による処理対象は半導体基板には限定されず、表示装置、光磁気ディスク、フォトマスク、太陽電池等に使用される様々な基板であってよい。
【0065】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0066】
1 基板処理装置
7 制御部
9 基板
11 槽本体
12 蓋部
31 処理液ノズル
32 ガスノズル
34 揺動機構(向き変更機構)
35 回収部
91 処理液
110 搬入口
111 側壁
121 下面
122 傾斜面
312 遮蔽部
S11〜S16,S21〜S27,S211〜S214 ステップ