(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のレーザ加工ヘッドにおいて、レーザ光の光路に対応して回転自在に備えたリング状の回転駆動体又は前記レンズホルダの一方に、放射外方向へ突出した突出部を備え、前記回転駆動体又は前記レンズホルダの他方に、前記突出部によって一体的に回転される当接部材を備えており、前記回転駆動体上に前記レンズホルダを重ね合せたときに、前記突出部の間に形成された凹部に前記当接部材が係合し、前記回転駆動体と前記レンズホルダとが一体的に回転する構成であることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成においては、傾斜ガラスを回転させることにより、ワークの溶接線に対してレーザ光の照射位置を旋回しつつ前記溶接線に沿って相対的に移動するものである。したがって、レーザ光の照射位置は、溶接線に対して螺旋状に移動することになる。よって、レーザ光の照射位置は常に溶接線上に位置するとは限らないものであり、溶接線上から離れた位置をも照射する無駄があると共に、溶接幅が広くなり、熱影響が大きくなるという問題がある。また、照射位置の旋回半径、旋回速度にもよるが、ときとして、溶接位置の溶融が充分に行われないことがあるなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、レーザ発振器から発振されたレーザ光を長円形状に変形するためのシリンドリカルレンズを備えたレーザ加工ヘッドであって、
レーザ加工ヘッドに備えた格納部本体における格納室内に、回動アームを回動自在に備え、この回動アームの先端部に、前記シリンドリカルレンズを備えた筒状のレンズホルダを回転自在に備え、前記レーザ加工ヘッドの移動方向に対する前記レンズホルダの方向性を常に一定に保持するために前記レーザ加工ヘッドの移動方向に対して前記レンズホルダの回転を調節するためのサーボモータを備え、前記レンズホルダは、
前記回動アームの回動によってレーザ光の前記光路から退避可能に備えられて
おり、前記シリンドリカルレンズを前記光路に対応した位置に位置決めするために、前記回動アームを当接して位置決めを行うための当接位置決め部材を、前記格納部本体に備えていることを特徴とするものである。
【0006】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、レーザ光の光路に対応して回転自在に備えたリング状の回転駆動体又は前記レンズホルダの一方に、放射外方向へ突出した突出部を備え、前記回転駆動体又は前記レンズホルダの他方に、前記突出部によって一体的に回転される当接部材を備えて
おり、前記回転駆動体上に前記レンズホルダを重ね合せたときに、前記突出部の間に形成された凹部に前記当接部材が係合し、前記回転駆動体と前記レンズホルダとが一体的に回転する構成であることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記レーザ加工ヘッドにおいて、前記突出部は周方向に等間隔に複数備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ光を長円形状に変形し、この長円形状の長手方向を、溶接線に対して例えば直交する方向に保持してレーザ溶接を行うことができる。したがって、レーザ光の照射位置を常に溶接線上に保持することが容易であり、品質のよいレーザ溶接を能率よく行うことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッド1は、一般的な溶接ロボットと同様に産業用ロボット(図示省略)において、例えばX、Y、Z軸方向へ移動自在かつ手首を旋回かつ上下に揺動可能なロボットアーム3の先端部に適宜に装着してある。前記レーザ加工ヘッド1は、前記ロボットアーム3の先端部に適宜に取付けた支持ブラケット5を備えており、この支持ブラケット5は、適宜のアタッチメント7を介して前記ロボットアーム3に取付けてある。
【0011】
前記支持ブラケット5にはレンズハウジング9が一体的に備えられており、このレンズハウジング9内には集光レンズ11が備えられている。このレンズハウジング9の一端側には、コリメートレンズ13を内装した第2のレンズハウジング15が一体的に立設固定してある。そして、この第2のレンズハウジング15の上部には、レーザ発振器(図示省略)から発振されたレーザ光の断面形状を長円形状(楕円形状)に変形するためのシリンドリカルレンズ17を備えた筒状のレンズホルダ19を回転自在に内装した格納部本体21が備えられている。上記格納部本体21の上部には、光ファイバーレシーバ23が備えられている。この光ファイバーレシーバ23は、レーザ発振器(図示省略)に一端側を接続した光ファイバー25の他端側を支持する作用をなすものである。
【0012】
したがって、レーザ発振器において発振されたレーザ光は、光ファイバー25の他端側(出射端側)から出射され、シリンドリカルレンズ17によって長円形状に変形される。そして、前記コリメートレンズ13によって平行光線化され、前記レンズハウジング9の一端側に備えた反射ミラー27によって前記集光レンズ11方向へ反射される。前記集光レンズ11へ入射されたレーザ光は、当該集光レンズ11によって集光されると共に、前記レンズハウジング9の他端側に備えた反射ミラー29によって、レンズハウジング9の他端側に備えたレーザノズル31方向へ反射される。そして、ワークの溶接位置へ照射されることになる。
【0013】
既に理解されるように、レーザ光の断面形状は、シリンドリカルレンズ17によって長円形状に変形されているので、ワークの溶接位置へ照射したレーザ光の照射面は長円形状になる。したがって、前記レンズホルダ19を適宜に回動してシリンドリカルレンズ17の方向性を調節することにより、ワークの溶接線に対して長円形状の長手方向を常に直交方向に調節することが可能である。
【0014】
そこで、本実施形態においては、前記シリンドリカルレンズ17の方向性を調節可能かつレーザ光の光路に対して出入自在(退避自在)に構成してある。より詳細には、
図2に示すように、前記格納部本体21におけるベースプレート33の周縁付近には適宜形状の壁部材35A、35B(
図3参照)が立設してあり、この壁部材35A、35Bには上部プレート37が着脱可能に取付けてある。この上部プレート37上には前記光ファイバーレシーバ23が備えられており、前記ベースプレート33の下側であって前記光ファイバーレシーバ23の軸心と同一軸心上には前記コリメートレンズ13が備えられている。したがって、前記ベースプレート33には、光ファイバー25(
図2には図示省略)の出射端から出射されたレーザ光が透過自在な透過穴39(
図3(B)参照)が備えられている。
【0015】
既に理解されるように、前記格納部本体21は、前記シリンドリカルレンズ17を備えたレンズホルダ19を回転自在に内装したレンズホルダ格納部として、ベースプレート33、壁部材35A、35B及び前記上部プレート37によって区画された格納室41を備えている。そして、この格納室41内に、前記レンズホルダ19が回転自在かつレーザ光の光軸(光路)に対して出入自在に備えられている。
【0016】
より詳細には、前記ベースプレート33の下面にはモータ等のごときロータリーアクチュエータ43が装着してある。そして、このロータリーアクチュエータ43の回動支持軸45は前記レーザ光の光軸と平行に設けてあり、かつ前記格納室41内に突出してある。この回動支持軸45には回動アーム47の基端部側がボルトなどのごとき適宜の固定具によって一体的に取付けてある。したがって、前記ロータリーアクチュエータ43によって回動支持軸45を往復回動することにより、前記回動アーム47は、前記光軸に対して直交する平面内において往復回動(揺動)するものである。
【0017】
そして、前記回動アーム47の先端側で前記光軸を横切る位置には、前記レンズホルダ19を一体的に備えたリングギア49が軸受けを介して回転自在に支持されている。したがって、前記ロータリーアクチュエータ43を往復回動して前記回動アーム47を回動することにより、当該回動アーム47に回転自在に支持された前記リングギア49を、レーザ光の光軸(光路)に対応した位置及び光軸から離反した位置へ位置決めすることができるものである。すなわち、前記シリンドリカルレンズ17を、レーザ光の光路に対して退避する(出入する)ことができるものである。
【0018】
前述のように、前記シリンドリカルレンズ17をレーザ光の光軸に対応した位置、すなわち、前記透過穴39に対応した位置に位置決めするために、一方の前記壁部材35Bには、前記回動アーム47と当接して位置決めを行うための当接位置決め部51Bが備えられており、他方の前記壁部材35Aには、前記光軸から離反した位置、すなわち前記透過穴39から離れた位置に位置決めを行うための当接位置決め部51Aが備えられている。したがって、回動アーム47を、前記当接位置決め部51B、51Aへ当接位置決めすることにより、前記シリンドリカルレンズ17を、レーザ光の光軸に対応した位置、及び光軸から離反した位置(退避位置)へ容易に位置決めすることができるものである。
【0019】
なお、前記リングギア49を回転するための駆動回転体としての駆動ギア53は、前記回動支持軸45の軸心と同心に備えられており、この駆動ギア53を回転駆動するためのサーボモータ55は前記上部プレート37上に装着してある。
【0020】
前記構成により、
図3(B)に示すように、回動アーム47が当接位置決め部51Aに当接位置決めされ、シリンドリカルレンズ17がレーザ光の光路から退避した状態にあるときに、ロータリーアクチュエータ43を作動する。そして、回動アーム47を、
図3(B)において反時計回り方向に回動し、当接位置決め部51Bに当接すると、シリンドリカルレンズ17は、
図3(A)に示すように、レーザ光の光路に位置決めされることになる。
【0021】
この際、前記シリンドリカルレンズ17を備えたリングギア49と駆動ギア53は常に連動連結した状態にあるので、サーボモータ55によって直ちに回転することができる。そして、前記回動アーム47を、
図3(A)に示す状態から時計回り方向に回動することにより、直ちに
図3(B)に示す元の位置へ復帰することができるものである。この場合には、レーザ切断加工を行うことができるものである。
【0022】
既に理解されるように、回動アーム47を時計回り方向及び反時計回り方向へ回動することによって、シリンドリカルレンズ17を、レーザ光の光路に対して出入することができ、前記光路に対応した位置及び光路から離脱した位置へのシリンドリカルレンズ17の位置決めを容易に行い得るものである。また、前記構成においては、回動アーム47等は格納室41内に格納してあるので、格納室41を密封状態とすることも容易であって、格納室41の防塵効果を図ることも容易なものである。
【0023】
前記構成より理解されるように、リングギア49を前記透過穴39に対応した位置に位置決めすると、レーザ発振器から発振されたレーザ光はリングギア49に保持されているシリンドリカルレンズ17を透過し、長円形状に変形されることになる。したがって、長円形状における長径を、例えば、ワークの溶接線に対して直交する方向に位置決めすることにより、溶接線に対するレーザ光の照射位置の位置決めが容易であって、溶接線上に常にレーザ光の照射位置を位置決めして溶接を行い得るものである。
【0024】
なお、前記溶接線がX軸方向の溶接線である場合には、レーザ光の前記長円形状の長径方向をY軸方向に調節し、Y軸方向の溶接線である場合には長径方向をX軸方向に調節すればよいものである。この場合、前記サーボモータ55を正逆回転し、当該サーボモータ55に備えられているロータリーエンコーダ(図示省略)によって前記リングギア49の回転角を検出することができ、前記シリンドリカルレンズ17における長手方向(長円形状に形成したレーザ光の長径方向)を常に検知し調節し得るものである。
【0025】
なお、前記シリンドリカルレンズ17の長手方向は、前記レーザ加工ヘッド1を基準位置に位置決めしたときに、X軸方向又はY軸方向に一致した状態に予め位置決めすることが望ましいものである。この場合、前記シリンドリカルレンズ17を備えた前記リングギア49に基準位置決め用のドグ又はセンサを備え、前記格納部本体21に基準位置決め用の前記センサ又はドグを備えた構成とすることが望ましいものである。そして、前記センサによって前記ドグを検出して位置決めしたときに、長円形状に形成されたレーザ光の長径方向がX軸方向又はY軸方向に一致する構成とすることが望ましいものである。
【0026】
上記構成とすることにより、前記センサがドグを検出した状態にあるときには、前記格納部本体21の基準位置に対してリングギア49の基準位置が一致した状態にあることとして検知できる。そして、前記基準位置から前記リングギア49を回動したときの回動角度は、前記サーボモータ55に備えられているロータリーエンコーダによって検知できる。したがって、前記サーボモータ55の回転角を制御装置(図示省略)の制御の下に制御(調節)することにより、ワークの溶接線の方向性に対してレーザ光の長円形状の長径の方向性を常に一定に保持(維持)する(制御する)ことができるものである。
【0027】
なお、前記溶接線が曲線の場合には、溶接線の形状を溶接ロボットの制御装置へ予め教示し、曲率等を予め演算することにより、長円形状の長径方向を、溶接線の接線に対して例えば直交する方向に調節(制御)することが可能なものである。
【0028】
以上のごとき説明より理解されるように、レーザ光を長円形状に変形するシリンドリカルレンズ17を備えたリングギア49の回転を、サーボモータ55の回転によって調節するものであるから、前記長円形状の長径方向の方向性を所望方向に調節することができるものである。したがって、長円形状に変形したレーザ光の照射位置における長径方向を、例えばワークの溶接線に対して常に直交する方向(溶接線が曲線の場合には接線に対して直交する方向)に調節して溶接を行うことができるものである。
【0029】
したがって、ワークの溶接線に対してレーザ光の照射位置を、従来のように螺旋状に旋回する必要がなく、レーザ光の照射位置を溶接線上に常に位置決めした状態でレーザ溶接を行うことができるものである。よって、ワークの溶接線部分の溶融を効果的に行うことができ、レーザ溶接を品質よく、かつ能率よく行うことができると共に、レーザ溶接時の溶接幅(溶融幅)が大きくなることを抑制でき、熱影響範囲を抑制することができるものである。
【0030】
前述の第1の実施形態においては、シリンドリカルレンズ17を保持したレンズホルダ19と回転駆動系の駆動ギア53は常に連動可能な状態にある。前記レンズホルダ19を回動するのは、
図3(A)に示すように、レーザ光の光路上にレンズホルダ19を位置決めしたときであって、
図3(B)に示すように、前記レンズホルダ19を光路上から退避したときには、レンズホルダ19を回動することはないものである。したがって、レンズホルダ19を光路上に位置決めしたときに、回転駆動系とレンズホルダ19とが連動する構成とすることも可能である。
【0031】
図4〜6は、レーザ加工ヘッドの第2の実施形態を示すもので、シリンドリカルレンズ17を保持したレンズホルダ19をレーザ光の光路上に位置決めしたときに、回転駆動系とレンズホルダ19とが連動して回転する構成としてある。なお、前述した第1の実施形態におけるレーザ加工ヘッド1の構成要素と同一機能を奏する構成要素には、同一符号を付することとして重複した説明は省略する。
【0032】
第2の実施形態に係るレーザ加工ヘッドにおいては、レンズホルダ19を回転自在に備えた回動アーム47を回動するためのロータリーアクチュエータ43は、前記上部プレート37に装着してある。そして、前記上部プレート37から格納室41内へ下方向に突出した回動支持軸45に、回動アーム47の基端部側が固定してある。
【0033】
前記格納室41のベースプレート33に備えた透過穴39の部分には、中空状の従動プーリ57が回転自在に備えられており、この従動プーリ57は、前記格納部本体21の外側に備えたサーボモータ59と連動連結してある。すなわち、前記従動プーリ57には、前記サーボモータ59によって回転される駆動プーリ61に掛回したタイミングベルト63が掛回してある。
【0034】
前記従動プーリ57の上端部は前記格納室41内に突出してあり、この従動プーリ57の上面にはリング状の駆動回転体65がボルトなどのごとき複数の固定具によって一体的に取付けてある。この駆動回転体65には、放射外方向へ突出した複数の突出部67が周方向に等間隔に備えられている。したがって、前記各突出部67の間には、放射外方向が次第に広くなる形状の凹部69が形成してある。そして、前記駆動回転体65と前記レンズホルダ19とを一体的に回転するために、前記レンズホルダ19の下面には、前記突出部67に当接自在な当接部材71が下方向へ突出して備えられている。
【0035】
前記当接部材71は、回転アーム47を回動して、
図5に示すように、駆動回転体65上にレンズホルダ19を重ね合わせたとき、前記駆動回転体65の前記凹部69に係合するものであって、一種の係合部材をなすものである。すなわち、換言すれば、当接部材71は、前記凹部69に対して係合離脱自在なものである。なお、前記格納部本体21における格納室41の内壁面には、前記回転アーム47を、
図4に示す退避位置へ回動したときに、回転アーム47に当接して衝撃を緩和するストッパ73が備えられている。
【0036】
前記構成により、第2の実施形態に係るレーザ加工ヘッドにおいては、
図4に示した状態から回転アーム47を時計回り方向に回動して、レンズホルダ19を駆動回転体65に重ね合わせると、レンズホルダ19の下面に備えた当接部材71が駆動回転体65の凹部69に係合する。そして、駆動回転体65を回転すると、レンズホルダ19も一体的に回転することになる。したがって、レンズホルダ19に保持されているシリンドリカルレンズ17の方向を所望の方向に回動することができることとなり、前述した第1の実施形態に係るレーザ加工ヘッドと同様の効果を奏し得るものである。