(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
<アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本発明におけるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、分子中にアルケニル基を含有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式
[R
5SiO
3/2]
x[R
6SiO
3/2]
y
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;R
5はアルケニル基、または、アルケニル基を有する基;R
6は、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができ、さらには、式
[AR
12SiO−SiO
3/2]
a[R
23SiO−SiO
3/2]
b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;R
1は、アルキル基またはアリール基;R
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物が好ましいものとして例示される。
【0035】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0036】
R
1は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR
1としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
R
2は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR
2としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上、さらには3以上が好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
【0037】
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。合成方法としては、例えば、R
7SiX
a3(式中R
7は、上述のR
5、R
6を表し、X
aは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、R
7SiX
a3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、多面体構造ポリシロキサンを合成する方法も知られている。
【0038】
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能である。
【0039】
<ヒドロシリル基を有する化合物(b)>
本発明で用いるヒドロシリル基を有する化合物は、分子中に1個以上のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、得られる多面体構造ポリシロキサン変性体の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンであることが好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
特に、ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、変性させる際の反応性や得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
【0041】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および変性させる場合の反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0042】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0043】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明では、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成、および、該化合物を用いたポリシロキサン系組成物を硬化させる際に、ヒドロシリル化触媒を用いる。
【0044】
本発明で用いるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを用いることができ特に制限はない。
【0045】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0046】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
【0047】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)>
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、ヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(b)とのヒドロシリル化反応により合成することができる。この際、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。
【0048】
ヒドロシリル基を有する化合物の添加量は、多面体構造ポリシロキサン系化合物(A)のアルケニル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のハンドリング性が劣り、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0049】
また、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成時には、過剰量のヒドロシリル基を有する化合物(b)を存在させるため、例えば減圧・加熱条件下にて、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(b)を取り除くことが好ましい。
【0050】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、アルケニケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)のアルケニル基1モルに対して10
−1〜10
−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10
−4〜10
−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0051】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0052】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基が導入されていることから、各種アルケニルを有する化合物と反応させることが可能となる。具体的には、後述の1分子中にアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン(B)と反応させることにより、硬化物を得ることができる。この際、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)におけるヒドロシリル基は、分子中に少なくとも3個含有することが好ましい。ヒドロシリル基が3個未満である場合、得られる硬化物の強度が不十分となる恐れがある。
【0053】
また、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、温度20℃において液状とすることも可能である。このような液状の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、例えば、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンで変性することで得ることができる。多面耐構造ポリシロキサン変性体(A)を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0054】
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A)成分としては、
[XR
32SiO−SiO
3/2]
a[R
43SiO−SiO
3/2]
b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;R
3は、アルキル基またはアリール基;R
4は、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0057】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。)を構成単位とすることが、耐熱性、耐光性、あるいは、得られる硬化物の強度の観点から、好ましい例として挙げられる。
【0058】
<(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン>
本発明における(B)成分は、1分子中にアルケニル基を2個以上含有していることが好ましく、さらに好ましくは2〜10個である。1分子中のアルケニル基の数が多すぎると、耐熱・耐光性が低下する恐れがある。
【0059】
本発明における(B)成分のシロキサンのユニット数は、特に限定されないが、2つ以上が好ましく、さらに好ましくは、2〜10個である。1分子中のシロキサンのユニット数が少ないと、ポリシロキサン系組成物の系内から揮発しやすくなり、望まれた物性が得られないことがある。また、シロキサンのユニット数が多いと、得られた硬化物の透湿度が高くなるなど、ガスバリア性が低くなることもある。
【0060】
本発明における(B)成分は、アリール基を含有していることが、ガスバリア性の観点から好ましい。また、アリール基を含有する(B)成分は、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上に直接アリール基が結合していることが好ましい。また、アリール基は分子の側鎖または末端のいずれにあってもよい。また、アリール基含有オルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば直鎖状、分岐鎖状、一部分岐鎖状を有する直鎖状の他に、環状構造を有してもよい。
【0061】
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、3−tブチルフェニル基、4−tブチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、ビフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3−エポキシフェニル基、4−エポキシフェニル基、3−グリシジルフェニル基、4−グリシジルフェニル基等が挙げられる。中でも、耐熱・耐光性の観点から、フェニル基が好ましい例として挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
【0062】
本発明における(B)成分は、耐熱性、耐光性の観点から、アルケニル基を2個以上有する直鎖状ポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン、アルケニル基を2個以上有する環状シロキサンなどのアルケニル基を有するポリシロキサンが好ましい例として挙げられる。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
アルケニル基を2個以上有する直鎖状ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリエチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリエチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリエチルシロキシ単位との共重合体などが例示される。中でも、耐熱・耐光性の観点から、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンが好ましい例として挙げられる。
【0064】
分子末端にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサン、ジエチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジエチルアルケニルシロキサン単位とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。中でも、耐熱・耐光性の観点から、ジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO
2単位、SiO
3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンが好ましい例として挙げられる。
【0065】
アルケニル基を2個以上有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1−フェニル−3,5,7−トリメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3−ジフェニル−5,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,5−ジフェニル−3,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5−トリフェニル−7−メチルシクロテトラシロキサン、1−フェニル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジフェニル−5,7−ジビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。中でも、耐熱・耐光性の観点から、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1−フェニル−3,5,7−トリメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3−ジフェニル−5,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,5−ジフェニル−3,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5−トリフェニル−7−メチルシクロテトラシロキサン、1−フェニル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジフェニル−5,7−ジビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンが好ましい例として挙げられる。
これらは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
【0066】
(B)成分である1分子中にアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、(A)成分である多面体構造ポリシロキサン系変性体に含まれるSi原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0067】
<(C)1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物>
本発明における1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(C)は、前記(A)成分のヒドロシリル基と反応する。本発明における(C)成分を用いることで、硬化物の弾性率を低下することができ、さらに、耐冷熱衝撃性、破壊強度、ガスバリア性、光取り出し効率性等を向上することができる。
本発明における(C)成分は、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物であればよく、この炭素−炭素2重結合は、ビニレン基、ビニリデン基、アルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
本発明における(C)成分は、平均分子量が1000以下であればよいが、さらに好ましい例としては、下記式
C
nH
2(n−x)
(nは4〜20の整数、xは1〜5の整数)で表される環状オレフィン化合物が、(b)成分との反応性の観点から好ましい例として挙げられる。
【0068】
このような環状オレフィン化合物として、脂肪族環状オレフィン化合物、置換脂肪族環状オレフィン化合物等が挙げられる。
脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、シクロへキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、アリルシクロヘキサン、アリルシクロヘプタン、アリルシクロオクタン、メチレンシクロヘキサン等が挙げられる。
【0069】
置換脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、ノルボルネン、1−メチルノルボルネン、2−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、2−ビニルノルボルナン、7−ビニルノルボルナン、2−アリルノルボルナン、7−アリルノルボルナン、2−メチレンノルボルナン、7−メチレンノルボルナン、カンフェン、ビニルノルカンフェン、6−メチル−5−ビニル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、3−メチル−2−メチレン−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、α−ピネン、β−ピネン、6、6−ジメチル−ビシクロ〔3,1,1〕−2−ヘプタエン、ロンギフォーレン、2−ビニルアダマンタン、2−メチレンアダマンタン等が挙げられる。
【0070】
中でも入手性の観点から、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、カンフェン、ピネンが好ましい例として挙げられる。
【0071】
これら、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(C)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物(C)の添加量は、後述のヒドロシリル基を有する化合物(b)のヒドロシリル基1個あたり、(C)成分の炭素−炭素2重結合の数が、0.01〜0.5個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が低下する場合があり、添加量が多いと、得られる硬化物に硬化不良が生じる場合がある。
【0073】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明では、多面体構造ポリシロキサン変性体の合成、および、該変性体を含有する組成物を硬化させる際に、ヒドロシリル化触媒を用いる。
【0074】
本発明で用いるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを用いることができ特に制限はない。
【0075】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0076】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
【0077】
<硬化遅延剤>
硬化遅延剤は、本発明のポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整するための成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0078】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0079】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0080】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0081】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0082】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0083】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0084】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10
−1〜10
3モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0085】
<無機フィラー>
本発明のポリシロキサン系組成物は、必要に応じて無機フィラーを添加することができる。
本発明のポリシロキサン系組成物の組成分として無機フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0086】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0087】
前記カップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0088】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。
【0089】
上記無機フィラーをポリシロキサン系組成物の組成分として用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性等の諸物性を改善することができる。
【0090】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、平均粒径が0.005〜50μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。同様に、BET比表面積についても、特に限定されるものでないが、ガスバリア性の観点から、70m
2/g以上であることが好ましく、100m
2/g以上であることがより好ましく、さらに200m
2/g以上であることが特に好ましい。ここで、BET比表面積とは、ガス吸着法により算出される粒子の比表面積のことで、ガス吸着法による粒子の比表面積算出は、窒素ガスの様に吸着占有面積が分かっているガス分子を粒子に吸着させ、その吸着量から粒子の比表面積を算出するものである。BET比表面積は、固体表面に直接吸着したガス分子の量(単分子層吸着量)を正確に算出することができる。BET比表面積は、下記に示すBETの式と呼ばれる数式を用いて算出することができる。
【0091】
下記式(1)に示す様に、BETの式は一定温度で吸着平衡状態にある時の吸着平衡圧Pとその圧力における吸着量Vの関係を示すもので以下の様に表される。
【0092】
式(1):P/V(Po−P)=(1/VmC)+((C−1)/VmC)(P/Po) (Po:飽和蒸気圧、Vm:単分子層吸着量、気体分子が固体表面で単分子層を形成した時の吸着量、C:吸着熱などに関するパラメータ(>0))
上式より単分子吸着量Vmを算出し、これにガス分子1個の占める断面積を掛けることにより、粒子の表面積を求めることができる。
【0093】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分の混合物100重量部に対して、1〜1000重量部、よりこの好ましくは、5〜500重量部、さらに好ましくは、10〜300重量部である。無機フィラーの添加量が多すぎると、流動性が悪くなる場合があり、少ないと、得られる成型体の物性が不十分となる場合がある。
【0094】
無機フィラーの混合の順序としては、特に限定されないが、貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(B)成分に混ぜた後、(A)成分、(C)成分と混合する方法が望ましい。また、反応成分である(A)成分、(B)成分、(C)成分がよく混合され安定した成形物が得られやすいという点においては、(A)成分、(B)成分、(C)成分を混合したものに、無機フィラーを混合することが好ましい。
【0095】
これら無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下に行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
【0096】
<ポリシロキサン系組成物および、硬化物>
本発明のポリシロキサン系組成物は、(A)多面体構造ポリシロキサン変性体に、(B)1分子中にアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、(C)1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物、からなるが、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤、無機フィラー、接着性付与剤等を加えることにより得ることができる。
【0097】
接着性付与剤は本発明におけるポリシロキサン系組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
【0098】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0099】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
シランカップリング剤の添加量としては、(A)成分と(B)成分の混合物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0100】
本発明においては、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明のポリシロキサン系組成物は、液状樹脂組成物として取り扱うことが可能である。液状組成物とすることにより、型、パッケージ、基板等に流し込み、加熱して硬化させることで容易に成型体を得ることができる。本発明のポリシロキサン系組成物によって得られる成型体は、高硬度、低熱膨張率を有しており、熱寸法安定性に優れる。
【0102】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
【0103】
本発明においては、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒を追加して用いることができる。
硬化時間は、硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量、その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0104】
本発明におけるポリシロキサン系組成物は、具体的に例えば、パッケージや基板などに、注入あるいは塗布して使用することが可能である。注入あるいは塗布した後、上述の硬化条件にて、硬化させることで、用途に応じた成型体を容易に得ることができる。
【0105】
また、本発明のポリシロキサン系組成物には、必要に応じて蛍光体、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0106】
本発明に用いるポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりしてもよい。
【0107】
本発明のポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
【0108】
本発明において得られる成型体の用途としては、具体的に例えば、液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、カラーフィルター、偏光子保護フィルム、パッシベーション膜などの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。また、PDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、カラーフィルター、パッシベーション膜、またLED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、カラーフィルター、パッシベーション膜、またプラズマアドレス液晶ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、カラーフィルター、偏光子保護フィルム、パッシベーション膜、また有機ELディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、カラーフィルター、接着剤、パッシベーション膜、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、カラーフィルター、パッシベーション膜が例示される。
【0109】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0110】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0111】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
また、本発明において得られるポリシロキサン系組成物は、以下に記載する光学デバイスに使用することができる。
【0112】
<光学デバイス>
本発明の光学デバイスは、本発明のポリシロキサン系組成物を用いてなる光学デバイスである。
本発明のポリシロキサン系組成物を用いることで低い透湿性を有し、光素子封止剤としても有用であるとともに、当該封止剤を用いて光学デバイスを作成することも可能である。
本発明の光学デバイスとしては、具体的に例えば、光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤が例示される。さらに具体的には、次世代DVD等の光ピックアップ用の部材、例えば、ピックアップレンズ、コリメータレンズ、対物レンズ、センサレンズ、保護フィルム、素子封止剤、センサー封止剤、グレーティング、接着剤、プリズム、波長板、補正板、スプリッタ、ホログラム、ミラー等に好適に用いることができる。
【0113】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0114】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0115】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0116】
半導体集積回路周辺材料では、層間絶縁膜、パッシベーション膜、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0117】
<透湿度>
本発明のポリシロキサン系組成物を用いてなる硬化後の透湿度は、温度40℃、湿度90%の条件下において、30g/m
2/24h以下であるが、さらには20g/m
2/24h以下であることがガスバリア性の観点から好ましい。
なお、透湿度とは以下の方法に従って算出することができる。
【0118】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1gをロの字型内に充填しこれを試験体とする。さらに上部に5cm角の評価用硬化物(2mm厚)を固定し、恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生する。下記式(2)に従い、透湿度を算出することができる。
【0119】
式(2):透湿度(g/m
2/24h)={(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))}×10000/9cm
2
本発明のポリシロキサン系組成物を用いた封止剤を硬化すると、透湿度は30g/m
2/24h以下となり、良好な低透湿性のため、LEDの封止剤として特に有用である。本願発明の封止剤の特徴である透湿度が30g/m
2/24h以下であることにより水分、更には、酸素、硫化水素等のガス透過が抑制されて、LEDにおける銀リードフレームや、リフレクター等の腐食が生じにくくなる結果、LEDの耐久性が向上する効果が期待できる。
【0120】
<封止層の粘弾性挙動>
本発明におけるポリシロキサン系組成物からなる硬化物は特定の粘弾性挙動を示すものである。
【0121】
一般に角周波数ωの正弦波形震動応力(歪)を受けた場合、歪と応力における複素弾性率はE*=E’+iE”で示される。ここでE’は貯蔵弾性率、E”は損失弾性率である。応力と歪の位相差がδである場合、損失正接(tanδ)は、E”/E’で表される。
【0122】
本発明における封止層は、−40℃〜50℃において、少なくとも1つの損失正接の極大値を有し、且つ50℃での貯蔵弾性率が10MPa以下である封止層である。損失正接の極大値は、−5℃〜45℃の範囲内にあることがより好ましく、0℃〜45℃の範囲内にあることがさらに好ましい。低温に極大値を有すると封止層のガスバリア性が低下する場合があり、高温に極大値を有すると封止層を硬化させる際の内部(残留)応力が大きくなり、封止層の耐冷熱衝撃性が悪化する場合がある。さらに、50℃での貯蔵弾性率は8MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることがさらに好ましい。50℃での貯蔵弾性率が10MPaより大きいと、封止層の耐冷熱衝撃性が悪化する場合がある。
【0123】
封止層の粘弾性挙動が前記の範囲内において、光学デバイスの製作過程で起こり得る封止層のクラックなどの現象がなく良好な光学デバイスが得られる。
【実施例】
【0124】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0125】
(耐熱試験、耐光試験用サンプル作成)
ポリシロキサン系組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間熱硬化させて、厚さ2mmのサンプルを作成した。
【0126】
(耐熱試験)
上記の通り作成したサンプルを、150℃に温度設定した対流式オーブン内(空気中)で該サンプルを200時間養生し、目視にて観察した。着色などによる色目の変化が見られなかったものを○、見られたものを×と評価した。
【0127】
(耐光試験)
スガ試験機(株)社製、メタリングウェザーメーター(形式M6T)を用いた。上記の通り作成したサンプルを、ブラックパネル温度120℃、放射照度0.53kW/m
2で、積算放射照度50MJ/m
2まで照射し、目視にて観察した。着色などによる色目の変化が見られなかったものを○、見られたものを×と評価した。
(クラック性試験)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1、外形寸法3528、3.5mm×2.8mm×1.9mm、内径2.4mm)に、0.4mm×0.4mm×0.2mmの単結晶シリコンチップ2個を、株式会社ヘンケルジャパン製エポキシ系接着剤(品名:LOCTITE348)で貼り付け、150℃で30分オーブンに入れた。このLEDパッケージにポリシロキサン系組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて試料を作成した。硬化後の試料を顕微鏡にて観察し、変化が無ければ○、クラックが入ったり、パッケージとの間に剥離が起きたりした場合は×とした。
【0128】
(冷熱衝撃試験、ヒートサイクル(H/C)試験)
上記LEDパッケージにポリシロキサン系組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて試料を作成した。試料を熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)によって、高温保持100℃、30分間、低温保持−40℃、30分間のサイクルを100サイクル行った後、試料を顕微鏡にて観察した。試験後、変化が無ければ○、クラックが入ったり、パッケージとの間に剥離が起きたりした場合は×とした。
【0129】
(透湿性試験)
ポリシロキサン系組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて5cm角の評価用硬化物(2mm厚)を作成した。この硬化物を室温25℃、湿度55%RHの状態で24時間養生した。
本発明における透湿度とは以下の方法に従って算出したものである。
【0130】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1gをロの字型内に充填しこれを試験体とした。さらに上部に5cm角の評価用硬化物(2mm厚)を固定し、恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生した。
下記式(2)に従い、透湿度を算出した。
【0131】
式(2):透湿度(g/m
2/24h)={(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))}×10000/9.0cm
2
【0132】
(硫化水素試験、H
2S試験)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1、外形寸法3528、3.5mm×2.8mm×1.9mm、内径2.4mm)にポリシロキサン系組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて試料を作成した。この試料を、フロー式ガス腐食試験機(ファクトケイ株式会社製KG130S)内に入れ、40℃、80%RH、硫化水素3ppmの条件下で、96時間、硫化水素暴露試験を行った。試験後、パッケージのリフレクターが変色していなければ○、わずかに変色している場合は△、黒色化している場合は×とした。
【0133】
(動的粘弾性測定用サンプル作成)
ポリシロキサン系組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて、長さ35mm、幅5mm、厚さ2mmのサンプルを作成した。
【0134】
(動的粘弾性測定)
上記の通り作成したサンプルの動的粘弾性を、UBM社製動的粘弾性測定装置ReogelE4000を用い、測定温度−40℃〜150℃、昇温速度4℃毎分、歪み4μメートル、周波数10Hz、チャック間25mm、引張モードで測定した。
【0135】
(光取り出し効率)
ジェネライツ社製12mil×13mil角 青色LEDチップ(品番:B1213AAA0 S46B/C−19/20)と、金ワイヤーと、信越化学社製ダイボンド剤KER−3000を、エノモト社製LEDパッケージ(品番:TOP LED 1−IN−1)に実装した。このLEDを大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その全光束を測定し、測定したサンプル100個の平均値を求めた。
測定後、このLEDに、封止剤を0.1g注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間熱硬化させた。封止したLEDを、さらに大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その全光束を測定し、測定したサンプル100個の平均値を求めた。
光取り出し効率の計算方法として、以下の式を用いた。
【0136】
(式)
光取り出し効率(%)=(封止後LEDの全光束/封止前LEDの全光束)×100
ただし、封止後LEDの全光束と、封止前LEDの全光束は、100個の平均値である。
この、光取り出し効率(%)が120%以上のものを○、115%以上120%未満のものを△、115%未満のものを×とした。
【0137】
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1262gにテトラエトキシシラン1083gを加え、室温で2時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1000mLを加え、均一溶液とした。
【0138】
ジメチルビニルクロロシラン537g、トリメチルシリクロリド645gおよびヘキサン1942mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基3個を有するアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンを白色固体として533g得た。
【0139】
(製造例2)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン20.0gをトルエン30.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)1.93μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン30.94g、トルエン30.94gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
【0140】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体21.7g(SiH価数4.70mol/kg)を得た。
【0141】
(製造例3)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)1.93μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン20.62g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン11.52g、トルエン32.14gの溶液にゆっくりと滴下し、95℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
【0142】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体28.5g(SiH価数3.92mol/kg)を得た。
【0143】
(実施例1)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00g(SiH価数4.70mol/kg)に、ビニル基を両末端に含有するフェニルシロキサン(アデカ社製、重量平均分子量385、Vi価数5.02mol/kg)1.73g、カンフェン(重量平均分子量136、Vi価数7.35mol/kg)1.25gを加え、撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を用いて、前述の各試験法に従い評価した。その結果を表1に記載した。
【0144】
(実施例2)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00g(SiH価数4.70mol/kg)に、ビニル基を両末端に含有するフェニルシロキサン(アデカ社製、FX−T180、重量平均分子量490、Vi価数5.02mol/kg)1.73g、β―ピネン(重量平均分子量136、Vi価数7.35mol/kg)1.09g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである東レダウコーニング製SH6040を0.20重量部を加え、撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を用いて、前述の各試験法に従い評価した。その結果を表1に記載した。
【0145】
(実施例3)
製造例3で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00g(SiH価数3.92mol/kg)に、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(重量平均分子量385、Vi価数5.20mol/kg)1.45g、カンフェン(重量平均分子量136、Vi価数7.35mol/kg)0.94gを加え、撹拌した。さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.21μl、マレイン酸ジメチルを0.11μl、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンを0.008μl添加し攪拌した後、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.10μl加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を用いて、前述の各試験法に従い評価した。その結果を表1に記載した。
【0146】
(実施例4)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00g(SiH価数4.70mol/kg)に、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Gelest社製、DMS−V03、重量平均分子量500、Vi価数4.00mol/kg)2.03g、カンフェン(重量平均分子量136、Vi価数7.35mol/kg)1.32g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである東レダウコーニング製SH6040を0.21重量部を加え、撹拌した。さらに、ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R812、一次平均粒径7nm、BET比表面積が260(m
2/g))0.42gを添加し、撹拌した。さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.21μl、マレイン酸ジメチルを0.10μl添加し撹拌し、これに、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.14μl加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を用いて、前述の各試験法に従い評価した。その結果を表1に記載した。
【0147】
(比較例1)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00g(SiH価数4.70mol/kg)に、ビニル基を両末端に含有するフェニルシロキサン(アデカ社製、FX−T180、重量平均分子量490、Vi価数5.02mol/kg)2.71g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである東レダウコーニング製SH6040を0.23重量部を加え、撹拌した。さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.56μl、マレイン酸ジメチルを0.64μl添加し撹拌し、これに、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.10μl加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、前述の各試験法に従い評価した。その結果を表1に記載した。
【0148】
(比較例2)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00g(SiH価数4.70mol/kg)に、ビニル基を末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(クラリアント社製、MVD8MV、重量平均分子量780、Vi価数2.56mol/kg)5.45gを加え、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである東レダウコーニング製SH6040を0.31重量部を加え、撹拌した。さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.56μl、マレイン酸ジメチルを0.65μl添加し撹拌し、これに、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.10μl加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、組成物を得た。このようにして得られた組成物を用いて、前述の各試験法に従い評価した。その結果を表1に記載した。
【0149】
【表1】
【0150】
上記のように、本発明のポリシロキサン系組成物より得られた硬化物は、高い耐熱性、耐光性を有し、耐冷熱衝撃性、ガスバリア性、光取り出し効率性に優れることが分かった。本発明のポリシロキサン系組成物を用いることで低い透湿性を有し、光取り出し効率性に優れた光学デバイスを作成することも可能である。