(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923356
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20160510BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20160510BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/10
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-68027(P2012-68027)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-200990(P2013-200990A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】柳▲瀬▼ 考応
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 昇
(72)【発明者】
【氏名】譲原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】須田 正之
【審査官】
久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−301936(JP,A)
【文献】
特開平09−115537(JP,A)
【文献】
特開2006−012550(JP,A)
【文献】
特開2006−179242(JP,A)
【文献】
特開2006−179194(JP,A)
【文献】
特開2011−096554(JP,A)
【文献】
特開2008−084688(JP,A)
【文献】
特開2008−311084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された燃料によって発電する燃料電池を含み、当該燃料電池の発電した電力を外部負荷に供給する燃料電池装置であって、
前記燃料電池にアクティブ方式で燃料を供給するアクティブ燃料供給装置と、
前記燃料電池にパッシブ方式で燃料を供給するパッシブ燃料供給装置と、
前記アクティブ燃料供給装置と前記パッシブ燃料供給装置の双方の燃料供給装置に接続され、前記燃料電池に対して双方又は何れか一方の燃料供給装置より燃料を供給するように前記燃料供給装置を切り替える切替部と、
前記燃料電池装置の出力状態を検出するとともに前記切替部の切り替え制御を行う状態検出部と、
を備え、
前記状態検出部は、検出した前記出力状態に応じて、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を切り替え、さらに、前記燃料電池の出力電力Pfと、前記燃料電池装置が前記外部負荷に供給する供給電力Poと、前記燃料電池装置の内部で消費される内部消費電力Piと、前記アクティブ燃料供給装置が消費するアクティブ消費電力Paと、前記燃料電池に対して燃料を供給している燃料供給装置と、を検出することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記状態検出部は、前記出力電力Pfに対する前記内部消費電力Piの割合が予め定めた値より大きいとき、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記パッシブ燃料供給装置に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記状態検出部は、前記燃料電池に対して燃料を供給している燃料供給装置がパッシブ燃料供給装置であると検出した際、前記パッシブ燃料供給装置が前記燃料電池に対して供給可能な最大の燃料供給量で当該燃料電池を発電させた際の電力Pmに対する前記出力電力Pfの割合が予め定めた値を超えた場合に、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記アクティブ燃料供給装置に切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記燃料電池装置の外部状態を検出する外部状態検出部を有し、
前記状態検出部は、前記外部状態検出部により検出した前記外部状態に応じて、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を切り替える請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記外部状態検出部は、前記外部負荷の駆動状態を検出可能であり、
前記状態検出部は、前記外部状態検出部により前記外部負荷が休止状態又は低消費電力状態であることを検出された場合、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記パッシブ燃料供給装置に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記外部状態検出部は、前記燃料電池装置の使用者によって選択された燃料供給装置を検出可能であり、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記使用者によって選択された燃料供給装置に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料を交換することで連続的に電気を取り出すことが可能な電池である。つまり、燃料電池は、電気を取り出す上で、リチウムイオンバッテリーに代表される二次電池のような充電作業を要しないので充電の待ち時間が無く、しかも、AC電源等の外部電源も必要としない。したがって、燃料電池は、上述のような利便性の良さから、新規電源としての実用化が期待されている。
【0003】
ここで、燃料電池の種類は、用いる電解質によって、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型などに分類される。特に固体高分子型燃料電池は、小型電子機器類の電源としての応用が検討されている。
さらに、燃料電池の動作・運転方法の違いにより、パッシブ型とアクティブ型とに分けられる。
【0004】
パッシブ型の燃料電池は、ポンプや電磁弁など電力の消費によって動作する補機と呼ばれる機材を用いずに、燃料の移送や燃料の生成制御などを行うもので、燃料電池装置の小型化や高効率な発電が期待できる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
アクティブ型の燃料電池は、ポンプやブロアなどの電源を必要とする補機を用い、燃料の輸送や燃料の生成制御などを行うものである。つまり、アクティブ型の燃料電池は、パッシブ型に比べて大量の燃料の供給制御が可能になるため、燃料電池から大電力を取り出すことが可能である。ただし、アクティブ型の燃料電池は、燃料電池から高出力を得るために大量の燃料を燃料電池に送り込む必要があるので、ポンプやコンプレッサー等の補機類の消費電力が増加する。そこで、燃料電池の高出力時における補機類のエネルギー損失を低減させ、燃料電池装置全体のエネルギー効率を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−146224号公報
【特許文献2】特開平8−45525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に開示された技術では、燃料電池が低出力の場合の補機類の消費電力について配慮されていない。特に低出力時においては、燃料電池の出力に対して補機類が消費するエネルギーの割合が高くなり、燃料電池装置全体としてのエネルギー効率が低下する問題がある。
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、電力を供給する対象が低負荷である場合であっても、燃料電池装置全体のエネルギー効率を低下させることなく安定的に電力を供給することができる燃料電池装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、供給された燃料によって発電する燃料電池を含み、当該燃料電池の発電した電力を外部負荷に供給する燃料電池装置であって、前記燃料電池にアクティブ方式で燃料を供給するアクティブ燃料供給装置と、前記燃料電池にパッシブ方式で燃料を供給するパッシブ燃料供給装置と、前記アクティブ燃料供給装置と前記パッシブ燃料供給装置の双方の燃料供給装置に接続され、前記燃料電池に対して双方又は何れか一方の燃料供給装置より燃料を供給するように前記燃料供給装置を切り替える切替部と、前記燃料電池装置の出力状態を検出するとともに前記切替部の切り替え制御を行う状態検出部と、を備え、前記状態検出部は、検出した前記出力状態に応じて、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を切り替えることを要旨とする。
【0009】
ここで燃料電池は、たとえば、水素−酸素を燃料とするPEFC(固体高分子形燃料電池)やメタノール−酸素を燃料とするDMFC(ダイレクトメタノール形燃料電池)の他に、SOFC(固体酸化物形燃料電池)、MCFC(溶融炭酸塩形燃料電池)、PAFC(リン酸形燃料電池)等を用いることができる。
また、燃料は、燃料電池に適用可能な燃料であれば良く、例えば、PEFCの場合、燃料としてメタノールや水素などを用いればよい。なお、燃料は燃料電池から取り外し、交換可能なカートリッジとして用意しても良い。
【0010】
なお、燃料電池装置には、出力電圧の安定化のために燃料電池の出力を変換して負荷等へ電力を供給するDC−DCコンバータなどの電圧変換装置を搭載しても良い。さらに、燃料電池装置の出力のバッファーとしてリチウムイオン二次電池やキャパシタなどの蓄電装置を搭載しても良い。
本様態によれば、燃料電池の出力の状態に応じて、燃料電池へ燃料を供給する燃料供給装置を選択することが出来る。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記状態検出部は、前記燃料電池の出力電力Pfと、前記燃料電池装置が前記外部負荷に供給する供給電力Poと、前記燃料電池装置の内部で消費される内部消費電力Piと、前記アクティブ燃料供給装置が消費するアクティブ消費電力Paと、前記燃料電池に対して燃料を供給している燃料供給装置と、を検出することを要旨とする。
本様態によれば、燃料電池装置の出力状態及び燃料電池へ燃料を供給している燃料供給装置を把握することが出来る。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記状態検出部は、前記出力電力Pfに対する前記内部消費電力Piの割合が予め定めた値より大きいとき、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記パッシブ燃料供給装置に切り替えることを要旨とする。
本様態によれば、燃料電池の出力Pfに対して燃料電池内部での消費電力Piの割合が高い状態での非効率的な発電を回避することが出来る。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記状態検出部は、前記燃料電池に対して燃料を供給している燃料供給装置がパッシブ燃料供給装置であると検出した際、前記パッシブ燃料供給装置が前記燃料電池に対して供給可能な最大の燃料供給量で当該燃料電池を発電させた際の電力Pmに対する前記出力電力Pfの割合が予め定めた値を超えた場合に、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記アクティブ燃料供給装置に切り替えるを要旨とする。
本様態によれば、燃料電池が燃料不足状態で発電することを回避し、安定的に電力を供給することが出来る。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記燃料電池装置の外部状態を検出する外部状態検出部を有し、前記状態検出部は、前記外部状態検出部により検出した前記外部状態に応じて、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を切り替えることを要旨とする。
本様態によれば、燃料電池装置の外部から燃料電池装置の燃料供給装置を制御することが出来る。
【0015】
本発明の第6の態様は、前記外部状態検出部は、前記外部負荷の駆動状態を検出可能であり、前記状態検出部は、前記外部状態検出部により前記外部負荷が休止状態又は低消費電力状態であることを検出された場合、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記パッシブ燃料供給装置に切り替える。
【0016】
本発明の第7の態様は、前記外部状態検出部は、前記燃料電池装置の使用者によって選択された燃料供給装置を検出可能であり、前記切替部により前記燃料電池に対して燃料を供給する燃料供給装置を前記使用者によって選択された燃料供給装置に切り替えることを要旨とする。
本様態によれば、燃料電池装置の使用者が任意で燃料供給装置を選択することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る燃料電池装置は、アクティブ燃料供給装置とパッシブ燃料供給装置とを備えるとともに、切替部により燃料電池に燃料を供給する燃料電池装置を切り替えることができるので、状態検出部が燃料電池装置の出力状態に応じて、燃料電池へ燃料を供給する燃料供給装置を必要に応じて切り替えることが可能となる。そのため、本発明に係る燃料電池装置によると、例えば、燃料電池装置が電力を供給する外部負荷が低負荷の場合であっても、補機類の消費電力を要しないパッシブ燃料供給装置を用いることで、燃料電池装置のエネルギー効率を保つことができる。
【0018】
したがって、本発明は、電力を供給する対象が低負荷である場合であっても、燃料電池装置全体のエネルギー効率を低下させることなく安定的に電力を供給することができる燃料電池装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す燃料電池装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第2実施の形態にかかる燃料電池装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示す燃料電池装置の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて、本発明を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における燃料電池装置の例を示す。
図1に示すように、燃料電池装置1は、燃料電池2と、当該燃料電池2に燃料の供給を行うアクティブ燃料供給装置3及びパッシブ燃料供給装置4と、燃料電池2への燃料の供給対象をアクティブ燃料供給装置3及びパッシブ燃料供給装置4の何れかに切替える燃料供給切替部5と、各種の状態検出を行う状態検出部6と、を備えて構成される。
【0021】
燃料電池2は、燃料供給切替部5より供給された燃料に応じて発電する電池である。当該燃料電池2は、例えば、ノートパソコンやビデオカメラ、通信機器のような電子機器類からなる負荷(外部負荷)に対して状態検出部6を介して電力供給を行うための、メタノールを負極の燃料とするDMFC(ダイレクトメタノール形燃料電池)である。正極の燃料は大気中の酸素とし、燃料電池2は、大気を自然吸気によって取り込む構成である。なお、燃料電池2としては、DMFCに限定されるものではなく、水素を負極の燃料とするPEFC(固体高分子形燃料電池)の他、SOFC(固体酸化物形燃料電池)、MCFC(溶融炭酸塩形燃料電池)、PAFC(リン酸形燃料電池)、等を適宜に用いることができる。なお、燃料は、燃料電池2から取り外し、交換可能なカートリッジとして用意しても良い。
【0022】
アクティブ燃料供給装置3は、電力消費を伴うポンプやバルブ、ブロア等の補機を用いて、状態検出部6を介して燃料電池2に燃料(メタノール)を供給するアクティブ方式の燃料供給器である。つまり、アクティブ燃料供給装置3は、容器内に封入された燃料を補機によって強制的に搬送できるため、大量の燃料供給ができる反面、補機による電力消費が嵩む。一方、パッシブ燃料供給装置4は、上記補機を用いずに状態検出部6を介して燃料電池2に燃料供給を行うパッシブ方式の燃料供給器である。具体的には、パッシブ燃料供給装置4は、燃料を封入した可塑性の容器を、バネ等の弾性材で外部より加圧するように構成されてなる。或いは、金属水素化物と水溶液との化学反応等によって、水素等の燃料を、燃料が生成される際の圧力の増加等の物理的変化を利用し、例えば金属水素化物に対して燃料生成時の圧力と大気圧との差圧等を利用して水溶液を注入したり、水溶液の注入を停止させたりして、燃料の生成・供給制御を行う構成しても良い。このように、パッシブ燃料供給装置4は、電力消費無しに燃料供給が可能である反面、アクティブ燃料供給装置3に比べて燃料供給性能が劣る。
【0023】
燃料供給切替部5(切替部)は、入力側がアクティブ燃料供給装置3及びパッシブ燃料供給装置4に接続され、出力側が燃料電池2に接続される。つまり、燃料供給切替部5は、アクティブ燃料供給装置3及びパッシブ燃料供給装置4のうち、燃料電池2に対して燃料供給を行うための燃料供給装置を切替える機能を有する。なお、燃料電池2の出力や負荷の消費電力に対して燃料供給量が不足する場合、燃料供給切替部5は、必ずしも一方の燃料供給装置だけを選択せず、両方の燃料供給装置から燃料電池2へ燃料の供給を行えるような切替えを行っても良い。また、燃料供給切替部5による切替えは、状態検出部6から送信された切替え信号に基づいて行われる。
【0024】
状態検出部6は、燃料電池2、アクティブ燃料供給装置3、燃料供給切替部5、及び負荷、とそれぞれ接続され、各々の電力を検出する。具体的には、状態検出部6は、燃料電池2の出力電圧Pfと、燃料電池装置1が負荷に供給する電力である供給電力Poと、燃料電池装置1の内部で消費される電力である内部消費電力Piと、アクティブ燃料供給装置3が消費するアクティブ消費電力Paと、燃料電池装置1の出力状態として検出する。ここで、内部消費電力Piは、出力電圧Pfと供給電力Poの差分量を示す。また、アクティブ消費電力Paは、アクティブ燃料供給装置3に備わる補機の消費電力を示す。
【0025】
さらに、状態検出部6は、燃料供給切替部5より、燃料電池2へ燃料を供給している燃料供給装置がアクティブ燃料供給装置3であるかパッシブ燃料供給装置4であるかを、燃料電池装置1の出力状態として検出する。なお、状態検出部6を用いた事前の試験にて、パッシブ燃料供給装置4によって燃料電池2に燃料を供給した際に、燃料電池2から取り出せる最大の出力電力Pmが測定される。
【0026】
そして、状態検出部6は、燃料供給切替部5の切替え制御を行う。つまり、状態検出部6は、検出した出力状態に応じて、燃料供給切替部5により燃料電池1に対して燃料を供給する燃料供給装置を切り替える。
【0027】
なお、燃料電池装置1には、出力電圧の安定化のために燃料電池2の出力を変換して負荷等へ電力を供給するDC−DCコンバータなどの電圧変換装置(図示省略)を搭載しても良い。さらに、燃料電池装置1の出力のバッファーとしてリチウムイオン二次電池などの蓄電装置を搭載しても良い。
【0028】
(燃料電池装置の動作手順)
このように構成された燃料電池装置1において、
図2のフローチャートによりその動作を説明する。
まず、ステップS1は、燃料電池2へパッシブ燃料供給装置4によって燃料を供給するステップである。具体的には、状態検出部6が、燃料供給切替部5により供給路をパッシブ燃料供給装置4側に切替える制御を行う。その結果、燃料電池2は、パッシブ燃料供給装置4より燃料が供給されて発電を開始する。ここで、本ステップS1では、一例として燃料電池2への燃料供給にパッシブ燃料供給装置4を用いることとしたが、アクティブ燃料供給装置3を用いても良い。すなわち、燃料供給切替部5が、負荷の種類や負荷特性等に応じて、或いは燃料電池装置1の仕様として、適宜、アクティブ燃料供給装置3とパッシブ燃料供給装置4のいずれかを選択する制御を行うこととしても良い。
【0029】
次いで、ステップS2において、状態検出部6は、燃料電池2の出力電力Pfと燃料電池装置1の内部で消費される内部消費電力Piを検出し、出力電力Pfにしめる内部消費電力Piの割合が予め定めた値(本実施形態では0.1)を超えているか否かを判断する。ここで、状態検出部6は、燃料電池2の出力端に備わる電圧計及び電流計(図示省略)を用いて電圧値と電流値を検知し、電圧値に電流値を乗算することでPfを検出する。また、状態検出部6は、Pfと同様にして、燃料電池装置1の出力端の手前に備わる電圧計及び電流計より電圧値と電流値を検知し、電圧値に電流値を乗算することで、燃料電池装置1が負荷に供給する電力であるPoを算出する。そして、状態検出部6は、PfからPoを減算することでPiを検出する。なお、予め定めた値は、システムの仕様に応じてパッシブ燃料供給装置4を動作させることによって、システム内部の損失が低減し、燃料電池、システムの出力パフォーマンスが低下しない様に設定することが望ましい。その設定値としては0.1から1程度であればよく、0.1に限られるものではない。
【0030】
ステップS2にて、Pi/Pfの演算結果が0.1をよりも高い値の場合(ステップS2;Y)はステップS4へ移行し、それ以外の場合(ステップS2;N)はステップS3へ移行する。
【0031】
ステップS2からステップS3へ移行した場合、状態検出部6は、燃料供給切替部5により、燃料電池2への燃料供給をパッシブ燃料供給装置4からアクティブ燃料供給装置3に切り替え、ステップS2以降の処理を繰り返す。
【0032】
ステップS2からステップS4へ移行した場合、状態検出部6は、燃料供給切替部5により、パッシブ燃料供給装置4による燃料電池2への燃料供給を行う。すなわち、状態検出部6は、出力電力Pf全体に占める内部消費電力Piの割合が低い状態(エネルギー効率の高い状態)ではアクティブ燃料供給装置3による燃料供給を行う一方、出力電力Pf全体に占める内部消費電力Piの割合が増してくる状態、すなわち、アクティブ燃料供給装置3の補機による消費電力の割合が高くなってエネルギー効率が低下し始めると、補機を用いないパッシブ燃料供給装置4による燃料供給を行うことで、燃料電池装置1のエネルギー効率を高く保つことができる。
【0033】
続いて、ステップS5にて、状態検出部6は、パッシブ燃料供給装置4が燃料を供給しているときの出力電力Pfが、パッシブ燃料供給装置4の最大限供給可能な燃料供給量で燃料電池2が発電した時の電力Pmを超えないようにするための判断を行う。この判断は、PfがPmを超えることによる、燃料電池2への燃料の供給量が不足状態に陥って負荷への電力供給を満足に行えなくなる事態を防ぐためになされる。ここで、PfがPmを超えた後に、燃料電池2への燃料供給をパッシブ燃料供給装置4からアクティブ燃料供給装置3への切り替えを行っても遅いので、ある程度、パッシブ燃料供給装置4の燃料供給能力に余裕があるうちにアクティブ燃料供給装置3へ切り替えることが望ましい。上記パッシブ燃料供給装置4の燃料供給能力に余裕持たせるためには、PfがPmの約8割程度の出力を超えた時点でアクティブ燃料供給装置3へ切り替えられればよい。本実施形態では、一例として、状態検出部6が、PfがPmの9割を超える(Pf/Pm>0.9;予め定めた値)出力となると判断した場合に、ステップS3へと移行して、燃料供給切替部5にパッシブ燃料供給装置4からアクティブ燃料供給装置3へ切り替えさせる。
【0034】
反対に、ステップS5にて、状態検出部6が、PfがPmの9割未満であると判断した場合、燃料供給装置を切り替える必要が無いので、ステップS2以降の処理が繰り返される。
【0035】
このようにして、本実施形態に係る燃料電池装置1は、電力の供給対象が低負荷でPfにしめるPiの割合が高くなり始めた場合であっても、パッシブ燃料供給装置4による燃料供給に切り替えることによって燃料電池装置1のエネルギー効率を高く保つことができる。また、燃料電池装置1は、燃料電池2の出力がパッシブ燃料供給装置4の燃料供給能力を超えそうな状態に至っても、事前に燃料電池2への燃料供給がアクティブ燃料供給装置3へ切り替わるので、安定的に電力を供給することができる。
【0036】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態における燃料電池装置構成を示す。ここで、本実施形態に係る燃料電池装置1aが第1実施形態に係る燃料電池装置1と相違する点は、状態検出部6aと外部状態検出部7aである。なお、
図2において、状態検出部6aと外部状態検出部7a以外の構成には、
図1と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0037】
燃料電池装置1aにおいて、外部状態検出部7aは燃料電池装置1aの外部状態(後述)を検出する構成であり、状態検出部6aは、第1実施形態で述べた各部における電力を検出する機能や燃料電池2へ燃料を供給している燃料供給装置を特定する機能に加えて、負荷に対して出力する電力量を制限する機能と外部状態検出部7aの信号を受け取る機能を備えてなる。
【0038】
ここで、外部状態検出部7aは、負荷の駆動状態(通常の電力消費状態、休止状態、低消費電力状態など)や、燃料電池装置1aの使用者が任意で燃料電池2への燃料供給方法をアクティブ燃料供給装置3とパッシブ燃料供給装置4の何れかを選択していることを、外部状態として検出するものである。ここで、使用者がパッシブ燃料供給装置4を選択する場合、パッシブ燃料供給装置4には補機等の電力駆動部品が無く燃料供給に際して電力を消費しないので、燃料電池装置1a全体として負荷へ高効率な電力供給が出来ることや、騒音や振動がなく静粛性の極めて高い運転が可能となることが利点となる。
【0039】
(燃料電池装置の動作手順)
このように構成された燃料電池装置1aにおいて、
図4のフローチャートによりその動作を説明する。
まず、ステップS1aは、
図2に示したステップS1と同様に燃料電池2へパッシブ燃料供給装置4によって燃料を供給するステップである。ここで、燃料電池2への燃料供給にパッシブ燃料供給装置4を用いることとしたが、アクティブ燃料供給装置3であっても良く、負荷の種類や負荷特性等により、燃料電池装置1の仕様として適宜、アクティブ燃料供給装置3とパッシブ燃料供給装置4のいずれかを選択して良い。
【0040】
燃料電池2へ燃料が供給され燃料電池2が発電していると、ステップS2aにおいて、外部状態検出部6aは、外部状態検出部7aにて検出された外部状態に基づいて、外部から燃料電池2への燃料供給としてパッシブ燃料供給装置4が選択されていると判断した場合、具体的には、負荷が休止状態にある又は低消費電力状態に設定されており大量の電力量を必要としない状態にある、又は燃料電池装置1のユーザーが手動でパッシブ燃料供給装置3を選択しているような場合(ステップS2a;Y)は、燃料供給切替部5を介して燃料電池2への燃料供給をパッシブ燃料供給装置4とする(ステップS4a)。一方、外部状態検出部6aは、外部状態検出部7aにて検出された外部状態に基づいて、外部から燃料電池2への燃料供給としてアクティブ燃料供給装置4が選択されていると判断した場合、具体的には、負荷が通常の電力消費状態に設定されており電力を必要とするような状態にある、又は燃料電池装置1aのユーザーが手動でアクティブ燃料供給装置4を選択しているような場合(ステップS2a;N)、燃料供給切替部5を介して燃料電池2への燃料供給をアクティブ燃料供給装置3とする(ステップS3a;N)。そして、外部状態検出部6aは、ステップS3aの処理が終わるとステップS2a以降の処理を繰り返す。
【0041】
次いで、状態検出部6aは、ステップS4aにて燃料電池2への燃料供給をパッシブ燃料供給装置4とした後、ステップS5aにて、燃料電池出力PfがPmの9割以上であるか否かを判断する。ここで、状態検出部6aは、PfがPmの9割未満であると判断した場合(ステップS5a;N)、ステップS2aへ移行するフローとなる。一方、状態検出部6aは、PfがPmの9割以上の場合、ステップS6aにて、状態検出部6がPfがPmの9割未満となるように負荷に対する燃料電池2の出力を制限し、PfがPmの9割未満となった後にステップS2aへ移行する。
【0042】
このようにして、負荷の状態に連動したり、使用者の要求に応えエネルギー効率の高い燃料供給や静粛性の高い燃料供給を行い安定的に電力を供給することが出来る。
【符号の説明】
【0043】
1、1a 燃料電池装置
2 燃料電池
3 アクティブ燃料供給装置
4 パッシブ燃料供給装置
5 燃料供給切替部
6、6a 状態検出部
7a 外部状態検出部