(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述のような場合、コンベヤチェーンの操作が難しくなる。一方、そのコンベヤチェーンの操作を、センサや制御装置を用いて行うことも可能であるが、移動の頻度が少ないため、特別な操作や制御を行うことは、コスト高になるとともに、制御の信頼性も低いという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、制御に高い信頼性を得ることができるとともに、煩雑な制御も不要にすることができる動力断接装置ならびにそれを用いる搬送システムおよび育苗/養生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の動力断接装置は、曳索に牽引される搬器に設けられ、前記曳索と搬器との間で牽引力を断接する装置であって、前記曳索に臨むとともに、前記搬器の進行方向に向けて、該搬器に取付けられる基体と、前記基体から前記進行方向側に突出し、先行の搬器または障害物に接触することで前記進行方向とは反対側に後退する作動片と、前記基体に揺動自在に設けられ、前記作動片が突出状態で前記基体から突出して曳索に係合し、前記作動片が後退すると前記基体側へ後退して前記曳索から離脱する係合片とを含
み、前記曳索は、アタッチメント付きのコンベヤチェーンであり、前記係合片は、前記アタッチメントに係合し、前記作動片は、前記進行方向側の端部が前記先行の搬器または障害物に接触する接触片となり、前記進行方向とは反対側の端部にフックを有するロッドから成り、前記基体は、前記ロッドを進行方向と平行に、かつ前記接触片を該基体から出没自在に案内する案内部材を備え、前記係合片は、前記進行方向と直交方向から見て略L字状に形成され、前記進行方向と直交方向に延びる軸線回りに前記略L字の屈曲部が揺動自在に前記基体に取付けられるレバーから成り、前記接触片が突出状態である場合に、前記略L字の一端側が前記フックに係合されることで該係合片の揺動が阻止されるとともに前記略L字の他端側が前記基体から突出して曳索に係合することで前記牽引力の伝達が可能になり、前記接触片が後退すると、前記略L字の一端側の前記フックとの係合が外れて該係合片の揺動が可能となって、前記略L字の他端側が前記曳索の移動に伴い退避することで前記牽引力の遮断が可能になることを特徴とする動力断接装置。
【0009】
上記の構成によれば、本発明の動力断接装置は、搬器に設けられ、その搬器が曳索に牽引される場合に、該搬器が、前記曳索に牽引されたり、牽引を止めて停止されたりするために前記牽引力を断接する装置である。そして、該動力断接装置は、基体と、作動片と、係合片とを備えて構成される。
【0010】
前記基体は、前記搬器に、曳索に臨むとともに、該搬器の進行方向に向けて取付けられる。前記作動片は、前記基体から前記進行方向側に突出しており、先行の搬器または障害物に接触することで、前記進行方向とは反対側に後退する。前記係合片は、前記基体に揺動自在に設けられ、前記作動片が突出状態で前記基体から突出して曳索に係合し、前記作動片が後退すると前記基体側へ後退して前記曳索から離脱する。
【0011】
したがって、前記搬器は、先行の搬器または障害物に接触していない状態では、前記係合片が曳索に係合して該搬器には牽引力が伝達されており、先行の搬器または障害物に接触すると、前記係合片が曳索から離脱して前記牽引力が遮断される。さらに接触状態から先行の搬器が移動する(逃げる)と、再び係合片が曳索に係合して、搬器に牽引力が伝達される。こうして、搬器が先行の搬器または障害物に当たったら機械的に停止する構成を実現でき、制御に高い信頼性を得ることができるとともに、煩雑な制御も不要になる。
【0013】
また、係合片を基体から突出させるだけで容易にアタッチメントに係合させて牽引力の伝達を可能にし、係合片を基体側へ後退させるだけで容易にアタッチメントから離脱させて牽引力の伝達を遮断することができる。
【0015】
また、作動片の出没に連動して、係合片を曳索に係合または離脱させることができる構成を、少ない部品で実現することができる。
【0016】
また、本発明の動力断接装置では、前記係合片を揺動自在に支持する軸に対して巻きバネが巻き掛けられており、その一端が前記基体に係止され、他端が前記係合片の他端側に係止され、前記係合片の一端側を前記
係合片の突出方向にバイアスすることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、基体に揺動自在に支持される係合片が、その一端側が突出方向、すなわち曳索に係合する方向にバイアスされるので、曳索との係合タイミング、たとえば前記コンベヤチェーンのアタッチメントとの係合タイミングにズレがあっても、該係合片が不所望に揺動することなく、タイミングが一致すると確実に係合させることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の動力断接装置では、前記接触片はボルトの頭部であり、前記ロッドは前記ボルトに連なる部材で構成され、前記ボルトの軸部の回りにおいて、前記ボルトの頭部と前記基体の進行方向端面との間に巻回されるコイルバネをさらに備え、前記コイルバネによって、前記作動片が進行方向側に突出するようにバイアスされていることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、基体が前記コイルバネの弾発力を超える力で先行の搬器または障害物に接触した場合に、該動力断接装置を機能させて前記牽引力の遮断を可能にすることができる。
【0020】
また、本発明の搬送システムは、前記の動力断接装置が設けられ、所定の案内軌条上を走行可能なる搬器と、前記案内軌条間に敷設される曳索とを備えることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、曳索は、搬器の下部に限らず、側部や上部に設けられていてもよいが、搬器の案内軌条間に敷設することで、搬器への牽引力の偏在を抑え(たとえば、側部に牽引力を加えると回転モーメントになり、上部に牽引力を加えると前に倒す力になる)、脱線を防止し、また安定した走行を実現することができる。また、案内軌条が床面に敷設されることで、搬器の上部に前記動力断接装置を搭載するための枠や壁が不要となり、該搬器の上部の空間を任意に使用することができる。
【0022】
さらにまた、本発明の搬送システムでは、前記動力断接装置は前記搬器の進行方向の前後に設けられ、前記進行方向の後方側の動力断接装置は、後続の搬器に追突されることで前記曳索から離脱することを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、先行の搬器または障害物に接触することで曳索との係合が外れる前方側の動力断接装置だけでなく、後続の搬器に追突されることで曳索との係合が外れる後方側の動力断接装置を設ける。
【0024】
したがって、縦続状態で停止している状態から、曳索の進行方向を反対にすると、搬器は順に、所定間隔(略作動片2つのストローク分)を開けて、順に移動してゆき、その反対方向で再び先行の搬器または障害物に接触すると、縦続状態で停止してゆくようになる。こうして、いずれの進行方向でも、先行の搬器または障害物に接触すると、停止させることができる。
【0025】
本発明の育苗/養生装置は、前記の搬送システムを備え、前記搬器に、
苗を搭載することを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、前記苗の生育に連れて、最適な環境を提供する育苗/養生室を移動させる際に、特別な操作や制御を行うことなく、曳索を駆動するだけで、搬器は先行の搬器と所定の間隔を開けて整列してゆくことになり、苗搬送の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の動力断接装置ならびにそれを用いる搬送システムおよび育苗/養生装置は、搬器が先行の搬器または障害物に当たったら機械的に停止する構成を実現でき、制御に高い信頼性を得ることができるとともに、煩雑な制御も不要になる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の一形態に係る育苗/養生装置1の断面図である。この育苗/養生装置1は、対象となる花卉、野菜、果物等の苗木や接ぎ木などの植物2の生理的な特質に合わせて、当該植物2の生育を管理するように構成されたものである。この育苗/養生装置1は、内部に植物2を生育させるための空間3を備えた筒状を呈する育苗/養生室4と、植物2を搭載して、この育苗/養生室4内に侵入/脱出可能な育苗棚5と、前記空間3内に適正に調製された負帯電微細水滴を供給する加湿器6と、空間3内の温度を上昇させる加温装置7と、空間3内の温度を下降させる冷却装置8と、空間3内の植物2に生育用の光を供給する光源9とを備えている。
【0030】
前記育苗/養生室4は、枠体および壁材が適宜組み合わせられて成り、所望の生育環境の段階数に応じ、また同時に処理すべき植物2の数量に応じ、奥行き方向に適宜延長される。この育苗/養生室4内に、前記植物2を多数搭載した育苗棚5が、該育苗/養生室4内に敷設された一対の案内軌条101,102上を走行することで出入り可能となっている。前記育苗/養生室4の出入り口には扉が、また生育環境に応じて、適宜それを区画するカーテンなどが、設けられている。
【0031】
前記加湿器6は、育苗/養生室4の側板41の中央部より若干下方位置を貫通して当該側板41に支持された排気ダクト61の上流端と、育苗/養生室4の天板42の中央部を貫通して当該天板42に支持された吸気ダクト62の下流端との間に介設された直方体状のハウジング63に内装されている。この加湿器6は、遠心力で吹き飛ばした水を壁面に衝突させて、負に帯電した微細粒子を生成するレナード効果によって、多量の負帯電微細水滴を生成し、気流に乗せて、排気ダクト61から前記育苗/養生室4内に供給し、使用後の水滴は、吸気ダクト62から回収し、再利用する。
【0032】
このような負帯電微細水滴は、その粒径が極めて小さく、埃や細菌を保持することがないので、極めて清浄な状態になっている。そのため、育苗/養生室4の空間3内に、単に水を噴霧した場合に比較し、加湿器6から当該負帯電微細水滴を噴霧することで、植物2への雑菌の侵入をより効果的に防止することができるばかりか、水滴による葉の赤枯れを防止することが可能になる等、湿度による植物2の生育環境を確保しつつ、植物2の劣化を有効に回避することが可能になる。これによって、空間3内は、植物2を適正に育成したり貯蔵したりするのに最適な生育空間となる。因みに、自然現象である滝からの水の落下により形成される負帯電微細水滴の個数は、通常、1cm
3当たり6000個といわれているが、前記レナード効果による加湿器6では、数万〜数十万個(本実施形態では略200000個)である。
【0033】
前記加温装置7は、育苗/養生室4の空間3内の生育温度を上昇させるときに使用されるものであり、ボイラー71によって生成された熱水または蒸気が流通される昇温用蛇行管72を備えている。前記昇温用蛇行管72は、育苗/養生室4の底板43上に、前記案内軌条101,102および後述するコンベヤチェーン11と干渉しないように配設されている。かかる昇温用蛇行管72にボイラー71から適正な熱水または蒸気が供給されることにより、空間3内の雰囲気は、対流伝熱によって昇温されるようになっている。
【0034】
前記冷却装置8は、育苗/養生室4の空間3内の生育温度を下降させるときに使用されるものであり、通常の上水道や汲み上げた地下水を供給するように構築された地下水道等の冷却水源81からの冷却水が流通される冷却用蛇行管82,83,84を備えている。前記冷却用蛇行管82,83は、育苗/養生室4の左右一対の側板41,44の内壁面に沿うように配設されている。また、特に効果的に冷却を行える冷却用蛇行管84が、育苗/養生室4の天板42に配設されている。前記空間3内は、これらの冷却用蛇行管82,83,84からの冷気の対流伝熱により冷却され得るようになっている。
【0035】
そして、ボイラー71からの昇温用蛇行管72への熱水あるいは蒸気の供給量および供給タイミングと、冷却水源81からの冷却用蛇行管82,83,84への冷却水の供給量および供給タイミングとを、空間3内の温度が目標温度になるように制御することにより、空間3内は、生育対象の植物2にとって最適の温度環境になる。
【0036】
前記光源9は、空間3内に装填された植物2に光合成等を行わせるためのものである。本実施形態では、光源9として、商用電源91からの電力供給によって発光する複数本の蛍光灯92が採用されている。かかる蛍光灯92は、育苗/養生室4の左右一対の側板41,44の外壁面に沿って配設されている。蛍光灯92からの光を空間3内へ透過させるべく、各側板41,44は、透明な硬質の合成樹脂材料または透明ガラスによって形成されている。また、前記育苗棚5上の棚板521には、ミラープレート522が取付けられており、該ミラープレート522によって、前記育苗棚5の内側から外側へ、蛍光灯92からの光を反射するようになっている。
【0037】
図2は、育苗棚5の斜視図である。育苗棚5は、台車(パレット)51上に、棚52が搭載されて構成されている。棚52は、前記台車51の4隅からそれぞれ立設される柱523に、棚板521が支持されて構成される。勿論、この育苗棚5には、植物2の種類によって、棚52が設けられていないものが用いられてもよく、その場合、台車51上に植物2が直接搭載される。
図2の例では、根付きの状態で当該根の部分が所定のカップ21に植え付けられた多数の植物2が、台車51上と、下層の2段の棚板521a,521b上との計3段に搭載されている。そして、前記2段の棚板521a,521bおよび天板となる棚板521cには、前記ミラープレート522が取付けられている。
【0038】
前記台車51は、前記棚52を搭載する台板511と、その4隅に設けられる車輪512と、本発明の実施の一形態に係る動力断接装置12とを備えて構成される。なお、本発実施形態では、搬器としての台車51は、必ずしも一対の案内軌条101,102上を走行するものでなくてもよく、案内軌条が1本で、それに懸垂または跨座していてもよい。また、車輪512が、単に育苗/養生室4の底板43上を走行するものであって、案内軌条は側部に設けられていてもよい。しかしながら、底板43上に敷設した案内軌条101,102上を台車51が走行することで、後述のコンベヤチェーン11や、前記昇温用蛇行管72の引き回しの空間を確保し易くなる。
【0039】
また、
図2の例では、案内軌条101,102はLアングルで、車輪512は、その直径線での断面が略H字状に形成されるが、両側の車輪の一方のみがそのようになっており、他方は、踏面が平らな車輪であってもよく、或いは鉄道車輪のようにそれぞれ内側にフランジを有するものであってもよく、車輪512は、重量物の育苗棚5を脱線しないように案内できるものであればよい。
【0040】
このように構成される育苗棚5において、動力断接装置12は、台車51の進行方向(前後方向)F1の少なくとも前方側に取付けられている。搬器としての台車51は、曳索としてのコンベヤチェーン11に牽引され、前記動力断接装置12は、前記コンベヤチェーン11と台車51との間で、該台車51が、前記コンベヤチェーン11に牽引されたり、牽引を止めて停止されたりするために、前記牽引力を断接する装置である。コンベヤチェーン11は、前記育苗/養生室4の入口側と出口側との間に設けたスプロケットホイル間に巻き掛けられている。
【0041】
なお、前記花卉、野菜、果物等の苗木や接ぎ木などの育苗/養生装置1においては、殆どの場合、台車51の進行方向F1は決まっており、逆走するケースは少ないけれども、台車51の進行方向F1が、前後両方となる場合は、前記動力断接装置12は、少なくとも進行方向前側となっている方に設けられる。
【0042】
図3は、前記動力断接装置12の斜視図であり、
図4は、その分解斜視図である。前記動力断接装置12は、基体121と、作動片122と、係合片123と、巻きバネ124と、コイルバネ125とを備えて構成される。
【0043】
前記基体121は、台板511の裏側において、前記台車51の進行方向F1の前方側および後方側で、前記コンベヤチェーン11に臨んで取付けられる。また、前記基体121は、前方側に設けられる動力断接装置12では前方側に向けて、後方側に設けられる動力断接装置12では後方側に向けて、それぞれ取付けられる。
【0044】
前記作動片122は、前記基体121から前記進行方向F1側に突出し、先行の搬器または障害物に接触することで前記進行方向F1とは反対側に後退する。後方側に設けられる動力断接装置12の前記作動片122は、前記基体121から前記進行方向F1とは反対側に突出し、後続の搬器が接触することで、前記進行方向F1に後退する。以下、この動力断接装置12について、進行方向F1の前方側に設けられる場合で説明し、後方側に設けられる場合は、前後方向が逆になるだけであり、その説明を省略する。また、動力断接装置12が後方側に設けられない場合は、その後方側の動力断接装置12の設置位置には、後続の台車51の動力断接装置12における作動片122が当接する当り板が設けられる。
【0045】
前記係合片123は、前記基体121に揺動自在に設けられ、前記作動片122が突出状態で前記基体121から突出してコンベヤチェーン11に係合し、前記作動片122が後退すると前記基体121側へ後退して前記コンベヤチェーン11から離脱する。
【0046】
これに対応して、前記コンベヤチェーン11は、アタッチメント(付属部品)付きのコンベヤチェーンである。
図2の例では、A部で拡大して示すように、前記アタッチメントは、所定数周期(
図2では4個周期)で、リンクプレート111において外周方向に延びて形成される突出部111aに枢支されるローラ112である。前記係合片123は、このローラ112に係合する。したがって、係合片123を基体から突出させるだけで容易にローラ112に係合させて牽引力の伝達を可能にし、係合片123を基体121側へ後退させるだけで容易にローラ112から離脱させて牽引力の伝達を遮断することができる。
【0047】
前記基体121は、筐体1211と、案内部材1212とを備えて構成される。筐体1211は、両端を開放した四角筒状に形成され、かつ一側面(
図1および
図2のように、台車51の底面に取付けの場合は、下面となる)の中央に、前記係合片123が突出する開口1211aを備えている。また、筐体1211には、後述する各種の孔1211b,1211c,1211dが形成されている。
【0048】
前記案内部材1212は、前記作動片122を進行方向F1と平行に移動可能に案内する案内筒部1212aと、それを筐体1211に固定する基板1212bとを備えて構成される。先ず案内筒部1212aが基板1212bの一方の面にスポット溶接され、次に前記基板1212bの他方の面から延びたピン1212cが、前記筐体1211の前記一側面とは反対側の面(
図1および
図2の取付けの場合は、上面となる)に形成された孔1211bを挿通した後、孔1211bの周囲と溶接される。こうして、案内筒部1212aの熱による変形を小さくして、該案内筒部1212aを筐体1211に取付けることができる。
【0049】
前記作動片122は、頭部1221aが接触片となる前方の当たりボルト1221と、後方のロッドとなる作動部材1222とを備えて構成される。作動部材1222は、前記当たりボルト1221がねじ込まれるナット1222aと、前記ナット1222aが一端に蝋付けされ、前記ナット1222aとともに前記案内筒部1212a内を摺動可能な円筒部1222bと、前記円筒部1222bの他端に蝋付けされる連結部材1222cと、前記連結部材1222cに蝋付けされるフック1222dとを備えて構成される。前記連結部材1222cは、前記進行方向F1と直交する断面で、底板と、その両側から立設される側板とを備えて構成される凹の字状に形成され、該連結部材1222cの円筒部1222bと反対側に、前記フック1222dが設けられている。フック1222dは、前記進行方向F1と平行する(
図1および
図2の取付けの場合、上下の)断面で、LまたはJの字状に形成されその折り返された係止片1222d1が、前記進行方向F1に延びている。
【0050】
一方、前記当たりボルト1221の軸部1221bの回りにおいて、前記頭部1221aと前記案内筒部1212aの進行方向F1の端面1212a1との間には、コイルバネ125が巻回されており、前記作動片122が進行方向F1側に突出するようにバイアスされている。前記コイルバネ125と端面1212a1との間には、さらにワッシャ126が、バネ受けとして設けられている。したがって、前記当たりボルト1221が先行する台車や障害物に接触し、コイルバネ125の弾発力を超える力で押し込まれると、円筒部1222bから連結部材1222cおよびフック1222dが、前記進行方向F1とは反対方向に後退する。
【0051】
前記係合片123は、前記進行方向F1と直交方向(横)から見て、略L字状に形成され、前記進行方向F1と直交方向(横)に延びる軸線回りに前記略L字の屈曲部が揺動自在に前記筐体1211に取付けられるレバーから成る。
図4の例では、係合片123は、帯状の係合部1231と、その一端側に蝋付けされる円筒部1232と、前記円筒部1232の係合部1231と反対側に蝋付けされる被係止部1233とを備えて構成される。そして、前記円筒部1232が、筐体1211において、開口1211a付近に形成された一対の孔1211cに挿通されるボルト127によって、前記軸線回りに揺動自在に支持される。ボルト127の先端には、ナット128が締結されて抜け止めが行われている。勿論、係合部1231から被係止部1233が帯状の部材を折り曲げて形成され、その屈曲部に円筒部1232を設けるようにしてもよい。しかしながら、上述のように係合部1231と被係止部1233とを分断し、間を円筒部1232で接続することで、係合片123の筐体1211内での高さを抑えることができる。
【0052】
また、前記係合片123には、巻きバネ124が取付けられている。この巻きバネ124は、前記ボルト127に巻き掛けられる巻き付き部124aと、前記巻き付き部124aから互いに異なる方向に延びるアーム部124b,124cと、一方のアーム部124bの先端が折り曲げられて形成され、前記孔1211dに嵌り込む係止部124eと、他方のアーム部124cの先端が折り曲げられて形成され、前記係合部1231を抱え込む保持部124dとを備えて構成される。この巻きバネ124は、前記係合片123の帯状の係合部1231が、筐体1211から前記進行方向F1とは直交方向(
図2の取付け例では鉛直方向)に突出するように癖付けされている。
【0053】
このように構成される動力断接装置12において、前記当たりボルト1221が、先行の台車や障害物に接触しておらず、コイルバネ125の弾発力によって進行方向F1に突出している状態では、前記係合片123は、その被係止部1233がフック1222dに係止され、該係合片123の揺動が阻止されるとともに、巻きバネ124の弾発力によって、係合部1231が開口1211aから前記進行方向F1とは直交方向に突出した状態で、ガタつきなく保持されている。したがって、前記係合部1231が、前記コンベヤチェーン11のアタッチメントであるローラ112に係合し、進行方向F1への牽引力が、前記コンベヤチェーン11からこの動力断接装置12を通して、台車51に伝達される。
【0054】
これに対して、前記当たりボルト1221が、先行の台車や障害物と接触し、進行方向F1とは反対方向に後退すると、前記係合片123の被係止部1233のフック1222dによる係止状態が解除され、該係合片123の矢符F2方向への揺動が可能になる。したがって、前記ローラ112の通過に伴い、前記巻きバネ124の弾発力に抗して、係合部1231が跳ね上げられてゆき、前記牽引力の遮断が可能になる。前記ローラ112が通過すると、次のローラ112が通過するまで、前記巻きバネ124の弾発力によって、前記係合部1231が開口1211aから前記進行方向F1とは直交方向に突出する。
【0055】
さらに、前記当たりボルト1221の接触状態から先行の台車が移動(逃げる)したり、障害物が取り除かれると、再び該当たりボルト1221が突出して、係合片123の被係止部1233にフック1222dが係止され、係合部1231がコンベヤチェーン11のローラ112に係合して、台車51に牽引力が伝達される。
【0056】
一方、前記進行方向F1とは反対側の後方側に動力断接装置12が設けられている場合、その後方側の動力断接装置12では、前記進行方向F1への牽引の場合、ローラ112のピッチや前後の動力断接装置12の取付け間隔などによって、係合片123は、前記進行方向F1とは直交方向に突出した状態から、ローラ112によって跳ね上げられた状態まで、任意の状態となっている。そして、後続の台車51に追突されることで、前記進行方向F1とは反対方向へのコンベヤチェーン11の移動に対しても、ローラ112による跳ね上げが可能となる。
【0057】
したがって、後方側に動力断接装置12が設けられている場合、上述のように育苗/養生装置1においては、あまりそのようなケースは無いが、複数の台車51が、前記進行方向F1へのコンベヤチェーン11の移動によって、先行の台車に追突して縦続状態で停止している状態から、コンベヤチェーン11の進行方向を反対にすると、台車51は順に、所定間隔(略作動片122の2つのストローク分)を開けて、順に移動してゆき、その反対方向で再び先行の台車または障害物に接触すると、縦続状態で停止してゆくようになる。こうして、前後に動力断接装置12が設けられている場合、いずれの進行方向でも、先行の台車または障害物に接触すると、停止させることができる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、係合部1231はローラ112によって跳ね上げられることで該ローラ112の移動経路から退避する構造となっているけれども、リンクやレバー等を用いて、作動片122の後退に連動して退避するようにしてもよい。
【0059】
こうして、台車51が先行の台車や障害物に当たったら機械的に停止する構成を実現でき、制御に高い信頼性を得ることができるとともに、煩雑な制御も不要になる。また、基体121と、作動片122と、係合片123との構成によって、作動片122の出没に連動して、係合片123をコンベヤチェーン11に係合または離脱させることができる構成を、少ない部品で実現することができる。さらにまた、前記巻きバネ124によって係合片123が突出方向にバイアスされることで、該係合片123とコンベヤチェーン11のローラ112との係合タイミングにズレがあっても、該係合片123が不所望に揺動することなく、タイミングが一致すると確実に係合させることができる。
【0060】
また、搬器として前記の動力断接装置12を搭載する台車51を用い、曳索としてコンベヤチェーン11を用いて、搬送システムを構成する場合に、前記コンベヤチェーン11は、台車51の下部に限らず、側部や上部に設けられていてもよい。しかしながら、台車51の一対の案内軌条101,102間に敷設することで、台車51への牽引力の偏在を抑え(たとえば、側部に牽引力を加えると回転モーメントになり、上部に牽引力を加えると前に倒す力になる)、脱線を防止し、また安定した走行を実現することができる。また、案内軌条101,102が床面43に敷設されることで、台車51上部に前記動力断接装置12を搭載するための枠や壁が不要となり、該台車51上部の空間を任意に使用することができる。
【0061】
育苗/養生装置1に前記の搬送システムを用い、前記台車51に、花卉、野菜、果物等の苗を搭載することで、前記苗の生育に連れて、最適な環境を提供する育苗/養生室4を移動させる際に、特別な操作や制御を行うことなく、コンベヤチェーン11を駆動するだけで、台車51は先行の台車と所定の間隔を開けて整列してゆくことになり、苗搬送の作業性を向上することができる。
【0062】
前記障害物は、意図的に配置されてもよく、たとえばその障害物となる当たり板を、エアシリンダやソレノイド駆動などで、前記動力断接装置12に向けて飛び出させることで、台車51を停止させることができる。特に、育苗/養生室4がカーテンなどで複数に区分けされた場合においては、その区分けされた各部屋に停止させることができる。或いは人力で、2本の案内軌条101,102間に、前記当たり板をボルト止めするなどして、任意の箇所で台車51を停止させることができる。