【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
参 考 例 1
甜茶エキスの製造:
甜茶葉に粉砕等の処理を施した後、甜茶葉の15倍量の水と甜茶葉の5%相当量のクエン酸を添加してpHを3.8に調整し、20℃で60分間の抽出を行った。更に、得られた抽出液をエバポレーターで5倍濃縮し、ブリックス(Brix.)13の甜茶エキスを得た。
【0037】
製 造 例 1
甜茶エッセンスの製造(1):
上記の20℃、60分間の抽出後に得た甜茶エキスに、0.05mol/Lの濃度となるように塩化マグネシウム六水和物を添加した。次に、これを電気透析装置(電気透析膜:AC220−50、製品名:マイクロアシライザーS−3、装置メーカー:株式会社アストム社)の脱塩室に入れ、濃縮室にエキスの17%に相当する水を入れて、脱塩室の電気伝導度が平衡になるまで、具体的には電気伝導度が2ミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm)となるまで電気透析処理し、濃縮液を回収した。更に、この濃縮液をエバポレーターで5倍に濃縮し、ブリックス12の甜茶エッセンス1を得た。
【0038】
実 施 例 1
培養物の製造(1):
10%脱脂粉乳溶液を基本培地とし、これに
製造例1で調製した甜茶エッセンス1を、0.2%添加し、100℃で15分間加熱殺菌して培養培地を調製した。これらの培地にラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)のスターターを0.1%接種して(初発菌数:1.5×10
6cfu/ml)37℃で24時間培養を行った後に10℃以下まで冷却し、培養物を得た。また、比較のため、基本培地に、甜茶エッセンス1に代えて甜茶エキスを0.2%添加した培地で上記と同様に製造した培養物も得た。
【0039】
培養物のpHをpHメーター(HORIBA F−52)を用いて測定し、乳酸菌数をBCP培地(栄研化学株式会社製)を用いて測定した。また、培養物の酸度(培養物9gをとり、その中の有機酸を0.1N苛性ソーダでpH8.5となるまで滴定したときの滴定値:単位ml)を測定した。更に、得られた乳製品の風味を下記評価基準により専門パネル3名で評価した結果を表1に示した。
【0040】
<風味評価基準>
評点 内容
5 : 苦みを全く感じない
4 : 苦みをほとんど感じない
3 : 苦みをやや感じる
2 : 苦みを感じる
1 : 苦みを強く感じる
【0041】
【表1】
【0042】
表1から明らかなように甜茶エキスまたは甜茶エッセンス1を添加した乳製品では、基本培地のみの乳製品に比べて培養物のpHが低くなり、高い生菌数が得られることが認められた。また、甜茶エッセンス1は甜茶エキスと比べて、pHおよび生菌数がほぼ同等であるものの、風味はかなり良好であることが認められた。
【0043】
製 造 例 2
甜茶エッセンスの製造(2):
製造例1において、塩化マグネシウム六水和物に代えて塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたはクエン酸三カリウムを同量用いる以外は同様にして甜茶エッセンス2〜5を製造した。
【0044】
実 施 例 2
培養物の製造(2):
実施例1において、甜茶エッセンス1に代えて製造例2で製造した甜茶エッセンス2〜5を同量用いる以外は同様にして培養物を得た(初発菌数:1.5×10
6cfu/ml)。これらの培養物について、実施例1と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表2に示した。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から明らかなように塩化マグネシウムを添加して得た甜茶エッセンスは他の塩を添加して得た甜茶エッセンスよりも増殖促進効果に優れていることが認められた。また、有機塩であるクエン酸三カリウムには乳酸菌の増殖促進効果はわずかしか認められなかった。
【0047】
製 造 例 3
甜茶エッセンスの製造(3):
製造例1において、塩化マグネシウム0.05mol/Lに代えて、塩化マグネシウムを0.01、0.02、0.1、0.2または0.5mol/L用いる以外は同様にして甜茶エッセンス6〜10を製造した。
【0048】
実 施 例 3
培養物の製造(3):
実施例1において、甜茶エッセンス1に代えて
製造例
3で製造した甜茶エッセンス6〜10を同量用いる以外は同様にして培養物を得た(初発菌数:1.5×10
6cfu/ml)。これらの培養物について、実施例1と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表3に示した。
【0049】
【表3】
【0050】
表3から明らかなように、乳酸菌に対する増殖促進効果は、甜茶エキスに塩化マグネシウムを添加して電気透析し、濃縮液として得られる甜茶エッセンス、特に塩化マグネシウムを0.02%以上添加した甜茶エッセンスを用いることで顕著となる傾向が認められた。また、塩化マグネシウムを添加する場合であっても0.2%以下であれば風味に悪影響を及ぼさないことが認められた。
【0051】
実 施 例 4
培養物の製造(4):
実施例1において、甜茶エッセンス1の添加量を0.01、0.02、0.05、0.1、0.5%とする以外は同様にして培養物を得た(初発菌数:1.5×10
6cfu/ml)。これらの培養物について、実施例2と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表4に示した。なお、表4の培養培地5は実施例1の甜茶エッセンス1を添加した培地と同一である。
【0052】
【表4】
【0053】
表4から明らかなように、甜茶エッセンスを添加することにより、乳製品の風味にはほとんど影響を及ぼすこともなく、乳酸菌の増殖促進効果が認められた。特に、甜茶エッセンスを0.02〜0.2%添加することで、高い生菌数と良好な風味が得られることがわかった。
【0054】
実 施 例 5
培養物の製造(5):
乳酸菌としてラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)またはラクトバチルス・ガセリ(YIT0192)を用い、基本培地と、甜茶エッセンスを0.2%含有する培地(培養培地5)を用いて実施例1と同様にして培養物を得た(初発菌数:ラクトバチルス・カゼイ1.5×10
6cfu/ml、ラクトバチルス・ガセリ4.5×10
5cfu/ml)。これらの培養物について、実施例1と同様にして培養物のpH、酸度、生菌数を測定し、風味を評価した。これらの結果を表5に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
表5から明らかなように、甜茶エッセンスを添加することにより、ラクトバチルス・ガセリのような基本培地ではあまり増殖しない乳酸菌についても増殖促進効果が認められた。
【0057】
実 施 例 6
培養物の製造(6):
4%のぶどう糖と3%の果糖を含む15%脱脂粉乳を基本培地とし、これに製造例1で調製した甜茶エッセンス1を0.2%添加し、100℃で60分間加熱殺菌して培養培地を調製した。これらの培地にラクトバチルス・カゼイ(YIT9029)のスターターを0.5%接種して(初発菌数:7.6×10
7cfu/ml)37℃でpH3.7となるまで培養した後、10℃以下まで冷却し、培養物を得た。これらの培養物について、培養に要した時間と、実施例1と同様にして培養物の生菌数を測定した。これらの結果を表6に示した。
【0058】
【表6】
【0059】
表6から明らかなように、甜茶エッセンスを培地に添加することによりラクトバチルス・カゼイの培養に要する時間が3分の2に短縮できた。
【0060】
実 施 例 7
乳酸菌飲料の製造:
実施例6で製造した培養物を15MPaで均質化したもの25重量部に、30%のぶどう糖果糖液糖、25%の還元水あめ、0.3%のビタミンC、0.3%の大豆多糖類および0.03%のスクラロースを含む水溶液を100℃で10分間殺菌したものを75重量部加え、ヨーグルト香料((株)ヤクルトマテリアル製)を0.1%添加して乳酸菌飲料を製造した。この乳酸菌飲料を65mL容のポリスチレン製容器に充填し、得られた乳酸菌飲料の製造直後(製品化時)と、10℃で21日間保存した後の生菌数を実施例1と同様に測定し、風味を評価した。この結果を表7に示した。また、この乳酸菌飲料の10℃で21日間保存後の生残率を以下の式により求めた。
【0061】
【表7】
【0062】
[数1]
生残率(%)=10℃、21日間保存後の生菌数/製品化時の生菌数×100
【0063】
表7から明らかなように、甜茶エッセンスを含有する培地で製造された乳酸菌飲料は、これを含まない培地で製造された乳酸菌飲料と比べて、保存後の生菌数の減少が抑制されることが示された。