特許第5923382号(P5923382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923382
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】残留塩素測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20160510BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20160510BHJP
   G01N 27/38 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   G01N27/30 361
   G01N27/46 316
   G01N27/38 355
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-114113(P2012-114113)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-242170(P2013-242170A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕平
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−164408(JP,A)
【文献】 特開2006−107925(JP,A)
【文献】 特開平10−143791(JP,A)
【文献】 実開昭61−190871(JP,U)
【文献】 特開平05−052805(JP,A)
【文献】 実開平02−017653(JP,U)
【文献】 特開昭61−281962(JP,A)
【文献】 実公昭40−007360(JP,Y1)
【文献】 実開平05−069674(JP,U)
【文献】 特開平05−015113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液に含まれる残留塩素を測定する回転式センサと、
前記回転式センサを回転させる回転駆動軸と、
前記回転駆動軸に接触して、前記回転式センサの検出信号を前記回転駆動軸を介して取得する固定接触子とを備え、
前記回転駆動軸における前記固定接触子と接触する被接触軸部が、銀から形成された中空部材又は中実部材により構成されており、
前記固定接触子が、板状の弾性部材と、当該弾性部材の表面において前記回転駆動軸の回転方向に沿った方向に延び設けられ、前記回転駆動軸に接触する線状部材とを有することを特徴とする残留塩素測定装置。
【請求項2】
前記固定接触子が、前記線状部材を複数有する請求項1記載の残留塩素測定装置。
【請求項3】
前記被接触軸部が、円筒状をなす中空部材から構成されており、
前記回転駆動軸が、一端部に前記被接触軸部が挿入して取り付けられる取付軸部を有し、他端部に前記回転式センサが接続される軸本体を有しており、
前記軸本体に前記被接触軸部が着脱可能に構成されている請求項1又は2記載の残留塩素測定装置。
【請求項4】
前記取付軸部の外周面に雄ねじ部が形成されており、
前記被接触軸部の内周面に前記雄ねじ部に着脱可能に螺合する雌ねじ部が形成されている請求項記載の残留塩素測定装置。
【請求項5】
前記固定接触子及び前記被接触軸部の間に導電性を有する潤滑剤が介在して設けられている請求項1乃至の何れかに記載の残留塩素測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式センサを有する残留塩素測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば水道水(上水)等の試料液中の遊離残留塩素(例えば次亜塩素酸(HClO)等)を測定するものとして、回転電極式ポーラログラフ法を用いた残留塩素測定装置が考えられており、この残留塩素測定装置は、少なくとも作用電極及び対電極の2電極を有している。そして、この残留塩素測定装置は、作用電極を回転させて、当該作用電極表面で濃度分極を生じさせ、その際に流れる電流(拡散電流)を測定することにより、試料液中の残留塩素濃度を求めるものである。
【0003】
ところで、この残留塩素測定装置は、作用電極が回転するため、当該作用電極の検出信号を静止側に伝達するための信号伝達機構が必要となる。この信号伝達機構としては、特許文献1の図7に示すように、作用電極に連結されて当該作用電極を回転させるための回転駆動軸に固定接触子を接触させることによって、作用電極の検出信号を静止側に伝達するように構成したものがある。
【0004】
ここで、前記拡散電流を精度良く測定するためには、回転駆動軸及び固定接触子の接点での電気抵抗を小さくすることが望ましい。このため、回転駆動軸及び固定接触子の接点における電気抵抗を小さくすべく、回転駆動軸及び固定接触子の接触圧力を大きくすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、回転駆動軸及び固定接触子の接触圧力を大きくすると、回転駆動軸及び固定接触子の摩耗が発生し易く、回転駆動軸及び固定接触子の接触を長期間に亘って確保することが難しいという問題がある。また、その摩耗によって回転駆動軸及び固定接触子が短寿命となってしまい、回転駆動軸及び固定接触子の交換を頻繁に行う必要があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−164408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、回転式センサの回転駆動軸に固定接触子を接触させて、回転式センサの検出信号を取り出すものにおいて、回転駆動軸及び固定接触子の接触を長期間に亘って確保するとともに回転駆動軸及び固定接触子の長寿命化を可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る残留塩素測定装置は、試料液に含まれる残留塩素を測定する回転式センサと、前記回転式センサを回転させる回転駆動軸と、前記回転駆動軸に接触して、前記回転式センサの検出信号を前記回転駆動軸を介して取得する固定接触子とを備え、前記回転駆動軸における前記固定接触子と接触する被接触軸部が、銀から形成された中空部材又は中実部材により構成されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、回転駆動軸における固定接触子と接触する被接触軸部が、銀から形成された中空部材又は中軸部材から構成されているので、固定接触子及び被接触軸部を長時間使用しても、軟らかい金属である銀が削れずに延びることで摩耗しにくい。したがって、回転駆動軸及び固定接触子の安定的な接触を長期間に亘って確保するとともに回転駆動軸及び固定接触子の長寿命化を可能にする。また、固定接触子及び被接触軸部の削れによる接触抵抗の増大及び摩耗粉の発生を防ぐことができる。
【0010】
前記被接触軸部が、円筒状をなす中空部材から構成されており、前記回転駆動軸が、一端部に前記被接触軸部が挿入して取り付けられる取付軸部を有し、他端部に前記回転式センサが接続される軸本体を有しており、前記軸本体に前記被接触軸部が着脱可能に構成されていることが望ましい。これならば、被接触軸部を交換可能にすることができる。また、被接触軸部と軸本体とを別部材により構成することで、軸本体により回転駆動軸の機械的強度を確保しつつ、被接触軸部を軟らかい金属により構成して固定接触子との間の摩耗等の問題を解決することができる。
【0011】
前記取付軸部の外周面に雄ねじ部が形成されており、前記被接触軸部の内周面に前記雄ねじ部に着脱可能に螺合する雌ねじ部が形成されていることが望ましい。これならば、軸本体に被接触軸部を着脱可能にする構成として、軸本体及び被接触軸部以外の別部材が不要となり、構成を簡略化することができる。また、取付軸部に被接触軸部を螺合させることによって、軸本体及び被接触軸部の電気的な接触を確実にすることができる。
【0012】
前記固定接触子及び前記被接触軸部の間に導電性を有する潤滑剤が介在して設けられていることが望ましい。これならば、固定接触子と被接触軸部との接触抵抗を低減して摩耗を一層防止するとともに、固定接触子及び被接触軸部の間の電気抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、回転式センサの回転駆動軸に固定接触子を接触させて、回転式センサの検出信号を取り出すものにおいて、回転駆動軸及び固定接触子の接触を長期間に亘って確保するとともに回転駆動軸及び固定接触子の長寿命化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る残留塩素測定装置の模式的構成図。
図2】同実施形態の回転数検知機構を示す模式図。
図3】同実施形態の回転数検知機構を示す断面図。
図4】同実施形態の信号伝達機構を示す模式図。
図5】同実施形態の回転数異常検知を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る残留塩素測定装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る残留塩素測定装置100は、図1に示すように、少なくとも作用電極2及び対電極3を有しており、前記作用電極2を回転させながら作用電極2及び対電極3の間に電圧を印加してそれら電極に流れる酸化還元電流(拡散電流)を測定する回転電極式ポーラログラフ法を用いたものである。
【0017】
具体的に残留塩素測定装置100は、前記作用電極2を回転させる電極回転機構4と、回転する作用電極2の電気信号を静止側に伝達するための信号伝達機構5と、前記電極回転機構4により回転された作用電極2の回転数を検知するための回転数検知機構6と、前記信号伝達機構5及び前記回転数検知機構6から出力される信号に基づいて前記電極回転機構4等を制御する制御機構7とを備えている。
【0018】
電極回転機構4は、前記作用電極2を回転させるステッピングモータ41と、前記ステッピングモータ41及び前記作用電極2を連結する回転駆動軸42とを有する。
【0019】
前記ステッピングモータ41は、支持枠体17により基台10に固定されており、後述する回転数制御部71により入力パルス信号が入力されることによって回転数が制御される。なお、支持枠体17は、基台10に対して複数本(本実施形態では4本)の脚部材171と、当該脚部材171の上端部に設けられ、ステッピングモータ41が取り付けられる固定板172とを有する。このように複数の脚部材171により固定板172を支持する構造とすることで、基台10に対してステッピングモータ41が振動しにくく、回転駆動軸42に余計な応力が掛からないようにするとともに、後述する回転駆動軸42のカップリング構造423等の着脱作業、又は後述する被接触軸部52の交換作業の作業性を向上させることができる。
【0020】
前記回転駆動軸42は、一端がステッピングモータ41のロータに連結されており、他端が作用電極2に連結されている。具体的に回転駆動軸42は、ステッピングモータ41のロータに連結された第1の回転駆動軸421及び当該第1の回転駆動軸421にカップリング構造423を介して接続されており、作用電極2に連結された第2の回転駆動軸422を有している。第2の回転駆動軸422は、作用電極2からの電気信号を伝達する伝達部材として機能する。また、第2の回転駆動軸422は、上下2箇所に設けられた軸受11を介して基台10に回転自在に支持されている。なお、第1の回転駆動軸421は、ステッピングモータ41の出力軸(シャフト)により一部が構成されるものであっても良いし、ステッピングモータ41の出力軸に連結される当該出力軸とは別体のものであっても良い。
【0021】
基台10の下側の構造について説明しておくと、前記基台10の下面に作用電極2及び対電極3が延出して設けられている。また、基台10の下面には、試料液を測定するためのセル空間Sが形成されている。このセル空間Sは、前記基台10の下面に設けられたセル空間形成部材12により形成されている。このセル空間形成部材12は、有底筒形状をなすものであり、その下壁には、試料液を前記セル空間Sに導入するための導入ポート13が形成されている。また、セル空間形成部材12の側壁上部には、セル空間Sから試料液を外部に導出するための導出ポート14が設けられている。さらにセル空間S内部において、前記作用電極2の配置空間の周囲には、当該作用電極2を洗浄するためのビーズ15を収容するための収容部16が設けられている。なお、試料液は、この収容部16の底部からセル空間S内に導入されるように構成されている。
【0022】
また、第2の回転駆動軸422には、回転する作用電極2の電気信号を、静止側に設けられた制御機構7に伝達するための信号伝達機構5が設けられている。ここで作用電極2の電気信号とは、作用電極2及び対電極3の間に流れる拡散電流である。
【0023】
この信号伝達機構5は、図1図3に示すように、前記第2の回転駆動軸422に接触して設けられた固定接触子51と、前記第2の回転駆動軸422に設けられ、当該固定接触子51が接触する被接触軸部52とを有する。
【0024】
固定接触子51は、固定側である基台10又は支持枠体17に設けられており、図2及び図3に示すように、導電性を有する例えば板状の弾性部材511と、当該弾性部材511の表面に設けられて被接触軸部52に接触する1又は複数の線状部材512とを有する。
【0025】
弾性部材511には、制御機構7に電気信号を伝達するための配線が接続されている。この弾性部材511は、線状部材512による被接触軸部52への押し付け力が、0.3N〜0.5Nとなるように調整されており、例えば板ばねから構成することができる。また、線状部材512は、金合金からなるものであり、被接触軸部52の軸方向に沿って上下に2つ設けられている。なお、線状部材512の材質としては、例えばPt10wt%、Au10wt%、Ag30wt%、Pd35wt%の他、Cu、Znを含む金合金である。また、線状部材512の向きは、被接触軸部52の回転方向に沿った方向(水平方向)を向いている。
【0026】
被接触軸部52は、銀から形成された所定(例えば1mm以上)の肉厚を有するものであり、本実施形態では中空円管形状をなす中空部材から構成されている。なお、銀としては、銀そのものであっても良いし、銀が均一に分散された銀合金であっても良い。このように被接触軸部52を銀からなる中空部材としているので、接点における電気抵抗を低減すべく接触圧力を強くした場合であっても、軟らかい金属である銀が削れずに延びることで摩耗しにくいため、固定接触子51の線状部材512及び被接触軸部52の削れによる接触抵抗の増大及び摩耗粉の発生を防ぐことができる。なお、被接触軸部52を第2の回転駆動軸422の外周面に銀メッキや金メッキ等を施すことによって形成することが考えられるが、そうすると、メッキが削れてしまい、更には、例えばステンレス等により形成された第2の回転駆動軸も削れてしまうという問題がある。また、銀メッキ等を施した部材は高価であるが、銀製の中空部材は安価であるという効果もある。
【0027】
そして、第2の回転駆動軸422が、一端部に前記被接触軸部52が挿入して取り付けられる取付軸部422xを有しており、他端部に前記作用電極2が接続される例えばステンレス等の金属製の軸本体422zを有しており、当該軸本体の取付軸部422xに中空円管形状をなす被接触軸部52が取り付けられる。なお、取付軸部422xの外周面に雄ねじ部5Mを形成し、被接触軸部52の内周面に前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部5Nを形成して、取付軸部422xに被接触軸部52をねじ込むことにより着脱可能に固定することが考えられる。なお、被接触軸部52の上部には、外周面の対向部位を一部切り欠いて平面部52zを形成して、取付軸部422xに対する被接触部52の取り付け、取り外しを容易にしている。これにより、被接触軸部52を第2の回転駆動軸422の取付軸部422xから交換可能にすることができる。また、被接触軸部52と軸本体422zとを別部材により構成することで、軸本体422zにより第2の回転駆動軸422により機械的強度を確保しつつ、被接触軸部52を軟らかい金属により構成して固定接触子51との間の摩耗等の問題を解決することができる。そして、取付軸部422xに被接触軸部52を取り付けられた状態において、前記被接触軸部52の上端から取付軸部422xが外部に延出するように構成されている。そして、当該延出した取付軸部422xが前記カップリング構造423により第1の回転駆動軸421に連結される。
【0028】
また、固定接触子51と被接触軸部52との間には、導電性を有する潤滑剤5Gが介在して設けられている(図3参照)。これにより、固定接触子51と被接触軸部52との接触抵抗を低減するとともに、固定接触子51及び被接触軸部52の間の電気抵抗を低減している。
【0029】
回転数検知機構6は、図1及び図4に示すように、前記回転駆動軸42と同期して回転する回転体61と、当該回転体61に検査光L1を照射する発光部621及び前記回転体61からの反射光L2を受光する受光部622を有する光学センサ62とを有する。なお、受光部622により得られる光情報である光強度信号は、後述する回転数制御部71に出力されて、この回転数制御部71によって前記作用電極2の回転数が演算される。
【0030】
回転体61は、前記回転駆動軸42に設けられたものであり、詳細には、前記第1の回転駆動軸421に設けられており、第1の回転駆動軸421と一体となって回転する。この回転体61は、図4に示すように、概略矩形平板状をなす例えばシリコン等の樹脂製であり、回転駆動軸42の軸方向と平行に2枚の羽根を形成するものである。また、回転体61の中央部に、長手方向に略平行に2つの切れ込みK1、K2が形成されている。この2つの切れ込みK1、K2に前記回転駆動軸42が挿入され、切れ込みK1、K2により挟まれる内側部分と、それら切れ込みK1、K2の外側部分とにより回転駆動軸42が挟まれる。これにより、回転駆動軸42に回転体61が固定される。このように回転体61を構成することによって、回転体61の構成を簡略化するとともに軽量化を図っている。
【0031】
光学センサ62は、反射型フォトインタラプタを用いて構成されており、当該反射型フォトインタラプタは、前記ステッピングモータ41と作用電極2との間における前記回転駆動軸42の側方に設けられている。つまり、発光部621が回転駆動軸42の側方に設けられて回転体61に検査光L1を照射し、受光部622が回転駆動軸42の側方に設けられて回転体61からの反射光L2を受光する。本実施形態の光学センサ62は、前記支持枠体17の固定板172に固定されている。
【0032】
しかして本実施形態では、発光部621の発光軸Lx1及び受光部622の受光軸Lx2の交点Xを通り発光軸Lx1及び受光軸Lx2の交差角を二等分する中心線Cが回転駆動軸42と交わらないように、発光部621及び受光部622が設けられている。つまり、光学センサである反射型フォトインタラプタ62の検出領域が、前記回転駆動軸42の側方であって、前記回転体61が回転する際に通過する領域となるように設定されている。本実施形態の回転体61は、回転駆動軸42の外側周面において対向する位置に2つの羽根を形成しているため、前記光学センサ62は、回転駆動軸42が一回転する間に、回転体61を2回検知することになる。このように反射型フォトインタラプタ62を配置することにより、周囲温度の変化に伴う検出距離の変動によって、回転体61の有無に関わらず回転駆動軸42を検出してしまうという問題を回避することができる。
【0033】
制御機構7は、前記支持枠体17に固定された制御基板により構成されており、残留塩素測定装置100全体の動作を制御して、作用電極2及び対電極3に流れる酸化還元電流(拡散電流)を測定し、当該測定値から残留塩素濃度を演算するものである。なお、制御基板は、ステッピングモータ41の側方に位置するように固定されている。このようにステッピングモータ41の側方に設けることによって、装置の高さ寸法を小型化している。
【0034】
また、制御機構7は、作用電極2の回転数を制御する回転数制御部71を備えている。この回転数制御部71は、前記光学センサ62の受光部622から得られる光強度信号(光情報)を取得して、当該光強度信号に基づいて、回転体61(つまりステッピングモータ41)の回転数を検知するとともに、当該回転体61の回転数から前記作用電極2の回転数を検知する。そして、作用電極2を所定の回転数(例えば一定の回転数)とするために、前記ステッピングモータ41に一定周波数のパルス信号を入力する。
【0035】
そして、本実施形態の回転数制御部71は、前記光学センサ62からの光情報により得られた前記ステッピングモータ41の検知回転数が所定の異常回転数以下となった場合に、前記ステッピングモータ41を停止させ、所定時間経過後に前記ステッピングモータ41を再起動する。
【0036】
具体的には、図5に示すように、以下の手順により、ステッピングモータ41の脱調を解消するとともに、当該ステッピングモータ41の故障を検出する。
【0037】
まず回転数制御部71は、ステッピングモータ41の検知回転数の移動平均(以下、平均回転数という。)が所定の異常回転数(例えば400rpm)であるかを判断する(ステップS1)。なお、ここで正常な回転数は、600rpmである。平均回転数が異常回転数以下と判断した場合には、その異常回数をカウントする(ステップS2)。そして、その異常回数の累積カウント数がn(例えば5回)異常であるか否かを判断する(ステップS3)。そして、その累積カウント数がn未満であれば、前記ステッピングモータ41を一旦停止させる(ステップS4)。この停止後から所定時間(例えば5秒間)経過後に、所定の設定回転数とするための入力パルス信号(駆動信号)を出力することで前記ステッピングモータ41を再起動する(ステップS5)。平均回転数が異常回転数未満となる原因がステッピングモータ41の脱調であれば、これらステップS3、S4によりステッピングモータ41の脱調を解消することができる。一方で、異常回数の累積カウント数がn以上の場合には、ステッピングモータ41が故障していると判断して、ステッピングモータ41を停止させるとともに、エラー信号を出力して、ユーザにエラー報知する(ステップS6)。
【0038】
このように構成した残留塩素測定装置100によれば、回転駆動軸42における固定接触子51と接触する被接触軸部52が、銀から形成された中空部材から構成されているので、固定接触子51及び被接触軸部52を長時間使用しても、軟らかい金属である銀が削れずに延びることで摩耗しにくい。したがって、回転駆動軸42及び固定接触子51の安定的な接触を長期間に亘って確保するとともに回転駆動軸42及び固定接触子51の長寿命化を可能にする。また、固定接触子51及び被接触軸部52の削れによる接触抵抗の増大及び摩耗粉の発生を防ぐことができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、前記実施形態では、モータとしてステッピングモータを用いたものであったが、DCモータ、ブラシレスDCモータ、交流モータ等を用いても良い。
【0040】
また、前記実施形態では、2極式ポーラログラフ法を用いたものであったが、3極式又は4極式ポーラログラフ法を用いたものであっても良い。
【0041】
さらに、前記実施形態の被接触軸部は銀製の中空管からなる中空部材であったが、被接触軸部を銀製の中実棒からなる中実部材から構成しても良い。この場合、前記第2の回転駆動軸全体を銀製の中実部材とすることによって構成しても良いし、前記第2の回転駆動軸の一部を銀製の中実部材とすることによって構成しても良い。
【0042】
その上、前記実施形態では、光学センサが、発光部及び受光部を一体に有する反射型フォトインタラプタ(フォトリフレクタ)を用いたものであったが、発光部及び受光部が別体の光学センサを用いても良い。
【0043】
加えて、前記実施形態の回転体は、概略矩形平板状をなすものを回転駆動軸に面方向が回転方向を向くように構成されているが、その他、概略半円状をなす半円板を回転駆動軸に当該面方向が回転駆動軸方向を向くように構成したものであっても良い。また、回転体は、回転駆動軸に対して対称に設ける他、当該回転駆動軸の一方側に片持ち状に設けても良い。
【0044】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100 ・・・残留塩素測定装置
2 ・・・作用電極(回転式センサ)
3 ・・・対電極
4 ・・・電極回転機構
41 ・・・モータ
42 ・・・回転駆動軸
422x・・・取付軸部
422z・・・軸本体部
5 ・・・信号伝達機構
51 ・・・固定接触子
52 ・・・被接触軸部
図1
図2
図3
図4
図5