特許第5923415号(P5923415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923415
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】ミキサドラムの駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20160510BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20160510BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   B60P3/16 A
   B28C5/42
   F15B11/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-199329(P2012-199329)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-54865(P2014-54865A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良光
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−294008(JP,A)
【文献】 特開2003−301802(JP,A)
【文献】 特開2003−294005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
B28C 5/42
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車の架台に回転自在に搭載されるミキサドラムを駆動するミキサドラムの駆動装置であって、
前記ミキサドラムを回転駆動する液圧モータと、
前記ミキサ車のエンジンの動力によって駆動されて、前記液圧モータに作動液を供給する液圧ポンプと、
前記液圧ポンプとは独立に設けられ、電動モータによって駆動されて、前記液圧モータに作動液を供給する補助液圧ポンプと、
前記補助液圧ポンプから吐出される作動液の液圧を検出する圧力センサと、
前記補助液圧ポンプから吐出される作動液を前記液圧モータに供給するか否かを切り換える切換弁と、
前記切換弁を開閉制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記切換弁が閉じられた状態であって、前記液圧ポンプにより駆動された液圧モータによって前記ミキサドラムが回転駆動されている状態のときに、前記圧力センサによって検出された液圧が予め設定された液圧以上であった場合に前記切換弁を開くことを特徴とするミキサドラムの駆動装置。
【請求項2】
前記切換弁は、前記補助液圧ポンプと前記液圧モータとの連通を遮断する中立位置を備え、前記補助液圧ポンプより吐出される作動液の液圧が予め設定した所定値に上昇した段階で中立位置から供給位置に切換えられることを特徴とする請求項1に記載のミキサドラムの駆動装置。
【請求項3】
前記補助液圧ポンプを駆動する前記電動モータは、ミキサドラムの回転モードを選択する選択レバーのレバー操作量に応じて、その回転数を上昇させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミキサドラムの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサドラムの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミキサ車は、モルタルやレディミクストコンクリート等(以下、「生コン」という)を架台に回転自在に搭載されるミキサドラム内に積載して、生コン工場から工事現場まで運搬するものである。そして、このミキサ車は、生コンを運搬するにあたり、生コンの品質劣化および固化を防止するためにミキサドラムを正回転させてミキサドラム内に取付けられた螺旋状の複数のブレードで攪拌している。また、ミキサ車は、ミキサドラムを先程とは逆回転させることでミキサドラム内の生コンを排出することができ、コンクリート打設現場に到着すると、上記のようにミキサドラムを逆回転させて生コンを打設箇所へ供給することができる。
【0003】
上述のようにミキサ車にあっては、生コンを排出するまでは、常に、ミキサドラムを回転させる必要があり、その駆動源としては、ミキサ車のエンジンを用いるのが一般的である。具体的には、PTO(Power Take Off)を介してエンジンの回転動力を油圧ポンプへ伝達し、油圧ポンプから吐出される作動油を油圧モータへ供給してこれを駆動し、油圧モータの回転でミキサドラムを回転駆動するようにしている。
【0004】
このようなエンジンのみでミキサドラムを駆動するミキサドラムの駆動装置では、特に、ミキサドラムを高速回転させる場合、エンジンの回転数を上げる必要があり、回転数を上げると騒音が発生するとともに燃料消費が激しくなる。この問題を解決するため、ミキサ車の停車中はエンジンによる油圧ポンプの駆動に代えて、電動モータで副油圧ポンプを駆動して、ミキサドラムを回転駆動するミキサドラムの駆動装置も提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−278430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2007−278430号公報に開示されたミキサドラムの駆動装置では、ミキサ車の停車中は、エンジン駆動の油圧ポンプに代えて、電動モータ駆動の副油圧ポンプから、油圧モータに作動油を供給してミキサドラムを回転させるようにしている。このため、副油圧ポンプより油圧モータへ作動油を供給する際に、副油圧ポンプから吐出される作動油の圧力が充分に上昇されていない場合には、油圧ポンプ・油圧モータ間の作動油が副油圧ポンプ側へ逆流して、ミキサドラムの回転が不安定となるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、液圧ポンプとは独立した液圧供給源から液圧モータに作動液を供給する際のミキサドラムの安定した回転を維持するに好適なミキサドラムの駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ミキサ車の架台に回転自在に搭載されるミキサドラムと、ミキサドラムを回転駆動する液圧モータと、ミキサ車のエンジンの動力によって駆動されて、液圧モータに作動液を供給する液圧ポンプと、を備えるミキサドラムの駆動装置である。そして、本発明のミキサドラムの駆動装置は、液圧ポンプとは独立に設けられ、電動モータによって駆動されて、液圧モータに作動液を供給する補助液圧ポンプと、補助液圧ポンプから吐出される作動液の液圧を検出する圧力センサと、補助液圧ポンプから吐出される作動液を液圧モータに供給するか否かを切り換える切換弁と、切換弁を開閉制御するコントローラと、を備えている。
【0009】
そして、本発明においては、切換弁が閉じられた状態であって、液圧ポンプによってミキサドラムが回転駆動されている状態のときに、圧力センサによって検出された液圧が予め設定された液圧以上であった場合に切換弁を開くようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本発明では、補助液圧ポンプからの作動液を切り換え供給する切換弁が閉じられて、液圧ポンプによってミキサドラムが回転駆動されている状態において、圧力センサによって検出された補助液圧ポンプからの液圧が、予め設定された液圧以上であった場合に切換弁を開くようにしている。これにより、補助液圧ポンプと切換弁との間の液圧が予め設定された液圧以上となるので、液圧ポンプ及び液圧モータからの作動液が補助液圧ポンプに逆流することを防止できる。この結果、液圧ポンプとともに補助液圧ポンプが予め設定された液圧以上の作動液を液圧モータに供給でき、ミキサドラムを安定して回転駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示すミキサドラムの駆動装置の概略構成図である。
図2】ミキサドラムを架台に搭載したミキサ車の側面図である。
図3】ミキサドラムを架台に搭載したミキサ車の背面図である。
図4】コントローラで実行される補助油圧装置の作動を示す制御フローチャートである。
図5】電動モータの特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のミキサドラムの駆動装置を一実施形態に基づいて説明する。図1〜3に示すように、ミキサ車Vは、コンクリートプラントでミキサドラムM内に投入された生コンを打設現場へ運搬するものである。また、打設現場にて生コンを排出した後においては、ミキサドラムM内に洗浄水を投入してミキサドラムM内を洗浄しながらコンクリートプラントへ戻るように使用される。
【0013】
ミキサドラムの駆動装置Sは、ミキサ車Vの架台Cに回転自在に搭載されるミキサドラムMと、ミキサドラムMを回転駆動する油圧モータ3と、ミキサ車VのエンジンEの動力によって駆動されるとともに油圧モータ3に作動油を供給する油圧ポンプ4と、これらを制御するコントローラ7と、を備える。油圧モータ3とミキサドラムMとの間には、減速機が介装される場合もある。
【0014】
また、本実施形態のミキサドラムの駆動装置Sは、後述するように、油圧ポンプ4と協同して、ミキサドラムMを正回転若しくは逆回転させるように油圧モータ3へ作動油を供給可能な補助油圧ポンプ5と、補助油圧ポンプ5を回転駆動する電動モータ6と、を有する補助油圧装置SDを備える。そして、ミキサドラムMと当該ミキサドラムMの回転駆動に必要な、油圧モータ3、油圧ポンプ4、補助油圧装置SDおよびこれらを制御するコントローラ7は、架台Cに搭載されている。
【0015】
ミキサドラムMは、図2,3に示すように、架台C上のブラケットTの先端に回転自在に設けられた一対のローラR,Rにより、後端側外周のローラリング2が支持され、前端の軸心部が油圧モータ3に連結されている。これにより、ミキサドラムMは、後端側が上方に持ち上げられた前傾姿勢で上記架台Cに回転自在に取り付けられている。ミキサドラムMは、後端が開口する有底筒状に形成され、前端となる底部の軸心部が油圧モータ3に連結されるドラムシェル1で形成されている。
【0016】
なお、図示はしないが、ドラムシェル1の内周側には、複数の螺旋状のブレードが設けられている。油圧モータ3によりミキサドラムMが正回転されると、ブレードは内部に積載される生コンを前方側に移動させながら攪拌する。また、油圧モータ3により、ミキサドラムMが逆回転されると、生コンをブレードによって後端側に移動させてミキサドラムMから排出させることができる。なお、ミキサドラムM内へ生コンを投入する際には、油圧モータ3によりミキサドラムMを攪拌回転よりも高速で正回転させることになる。
【0017】
したがって、ミキサドラムMは、生コンを投入する際に利用される投入モードと、当該生コンを攪拌する際に利用される攪拌モードと、当該生コンを排出する際に利用される排出モードの三つのモードで回転される。攪拌モードでは、生コンの固化を防止しつつもスランプ値の上昇を抑制する必要のため、生コンの固化を防止でき得る程度の低速でミキサドラムMを正回転させる。
【0018】
図1に示すように、油圧ポンプ4と油圧モータ3とは、ループ状管路8で接続されている。油圧ポンプ4は、油圧モータ3へ向けて作動油を吐出する、例えば、可変容量型のピストンポンプにより構成されている。そして、この油圧ポンプ4は、PTO等を介してミキサ車VのエンジンEの動力で回転駆動される。
【0019】
一方向へ作動油を吐出する油圧ポンプ4を採用する場合には、油圧モータ3を双方向へ回転させるために、ループ状管路8の途中に、方向切換弁20を設けている。この方向切換弁20は、油圧ポンプ4の作動油を、油圧モータ3を正回転させるように油圧モータ3へ送る正回転位置20Bと、油圧モータ3を逆回転させるように油圧モータ3へ送る逆回転位置20Aと、油圧モータ3と油圧ポンプ4の接続を遮断する中立位置20Cとの三つの位置を備えた4ポート3位置切換弁である。
【0020】
なお、油圧ポンプ4として、例えば、作動油の吐出方向を変更できる双方向吐出可能な油圧ポンプを採用してもよい。この場合には、油圧ポンプ4と油圧モータ3とをループ状管路8で接続して油圧ポンプ4の吐出方向を切換えることにより油圧モータ3を正逆双方向へ回転駆動させるようにする。この場合においては、方向切換弁20は、図示しないが、ループ状管路8を連通させる連通位置と、遮断位置と、を備えるものを使用する。
【0021】
また、ミキサドラムの駆動装置Sにあっては、ミキサ車VのオペレータがミキサドラムMの回転モードを選択することができるように、選択レバー14が設けられている。即ち、選択レバ一14の操作によって、オペレータが選択した回転モードでミキサドラムMを回転させることができる。
【0022】
具体的には、オペレ−タは、選択レバー14を、図中矢印A方向へ操作することによって、ミキサドラムMを高速で正回転させる投入モードと、ミキサドラムMを低速で正回転させる攪拌モードと、ミキサドラムMを高速で逆回転させる排出モードの各モードのいずれかを選択できる。なお、図示するように、攪拌モードと排出モードとの間に停止モードが配置される場合もある。なお、本実施形態では、選択レバー14は、エンジンEの図示しないガバナにリンク等を介して連結する構成を備えていない。このため、選択レバー14により投入モードおよび排出モードが選択されても、エンジンEの回転数を上昇させて、油圧ポンプ4の作動油の吐出量を増加させて、ミキサドラムMを高速回転させることができないようにしている。
【0023】
選択レバー14により選択されたミキサドラムMの回転モードは、図示しない検出スイッチによりコントローラ7に入力される。コントローラ7は、選択レバー14の検出スイッチに基づいて、方向切換弁20を切換えるアクチュエータ等を駆動するようになっている。即ち、投入モードおよび攪拌モードでは、油圧モータ3を正回転させるように作動油を供給する正回転位置20Bへ方向切換弁20を切換え、排出モードでは、油圧モータ3を逆回転させるように作動油を供給する逆回転位置20Aへ方向切換弁20を切換える。
【0024】
また、選択レバー14により攪拌モードを選択すると、油圧ポンプ4の吐出流量がエンジンEの回転数の如何によらず一定となるように、油圧ポンプ4の傾転角を自動調節する図示しない調節機構が働いて、ミキサドラムMはエンジンEの回転数によらずに一定速度で正回転するようになっている。
【0025】
本実施形態のミキサドラムの駆動装置Sでは、上記構成に加えて、油圧ポンプ4と協同して、ミキサドラムMを正回転若しくは逆回転させるように油圧モータ3へ作動油を供給可能な補助油圧装置SDを備える。
【0026】
補助油圧装置SDは、タンク10の作動油を吸込んで作動油を吐出する補助油圧ポンプ5と、補助油圧ポンプ5から吐出された作動油をループ状管路8のいずれか一方に供給し、ループ状管路8のいずれか他方から排出してタンク10へ戻す切換弁15と、よりなる油圧回路を備える。また、補助油圧ポンプ5を駆動するために、多相交流モータにより構成された電動モータ6と、電動モータ6に供給する多相交流電力を調整するインバータ9と、インバータ9に直流電力を供給する電源Batと、を備える。インバータ9は、選択レバー14による投入モードおよび排出モードの選択時における、図1中のB方向への操作量に応じて、インバータ9から電動モータ6に供給する多相交流電力を増加させるように、コントローラ7により制御される。この結果、電動モータ6の回転数は、図5に示すように、選択レバーのB方向へのレバー操作量に応じて上昇する。
【0027】
切換弁15は、油圧モータ3と油圧ポンプ4とを接続する一対のループ状管路8それぞれに接続した一対の管路12と、タンク10に接続した管路13と、補助油圧ポンプ5の吐出管路11と、に接続している。そして、切換弁15は、いずれのポートも遮断する中立位置15Cを備えている。また、切換弁15は、ミキサドラムMの正転時に、ループ状管路8の高圧側へ補助油圧ポンプ5よりの作動油を供給し、ループ状管路8の低圧側をタンク10へ接続する正回転位置15Bと、ミキサドラムMの逆転時に、ループ状管路8の高圧側へ補助油圧ポンプ5よりの作動油を供給し、ループ状管路8の低圧側をタンク10へ接続する逆回転位置15Aと、を備える。
【0028】
この切換弁15は、選択レバー14の検出スイッチに基づいて、コントローラ7により、図示しないソレノイド等のアクチュエータを駆動することによりその位置が切換えられる。即ち、攪拌モードおよび停止位置では、中立位置15Cとされ、投入モードでは、切換弁15を油圧モータ3を正回転させるように作動油を供給する正回転位置15Bへ切換え、排出モードでは、切換弁15を油圧モータ3を逆回転させるように作動油を供給する逆回転位置15Aへ切換える。
【0029】
なお、補助油圧ポンプ5の吐出管路11には、切換弁15より上流側において、吐出管路11の油圧が設定値以上になることを抑制するためのリリーフ弁17が設けられている。また、補助油圧ポンプ5の吐出管路11には、切換弁15より上流側において、作動油の油圧を検出する圧力センサ(圧力スイッチ)16が配置されている。圧力センサ16により検出された検出信号はコントローラ7に入力される。
【0030】
コントローラ7には、エンジン回転数を検出する回転数センサ18よりの検出信号と、選択レバー14により選択されたミキサドラムMの回転モード信号と、選択レバー14による投入モードおよび排出モードの選択時における、図1中のB方向への操作量信号と、供給管路11の圧力センサ16よりの油圧信号と、が入力されている。
【0031】
コントローラ7は、これらの信号に基づいて、ミキサドラムMの回転モード、エンジンEの回転状態を判定し、ミキサドラムMの回転モードが正回転である攪拌モードおよび投入モードである場合には、ループ状管路8の方向切換弁20を正回転位置20Bに切換える指令を出力する。また、コントローラ7は、ミキサドラムMの回転モードが逆回転である排出モードである場合には、ループ状管路8の方向切換弁20を逆回転位置20Aに切換える指令を出力する。
【0032】
また、コントローラ7は、選択レバー14が投入モードおよび排出モードに切換えられると、インバータ9を介して電動モータ6に所定の多相交流電力を供給して、電動モータ6を回転させる。コントローラ7は、電動モータ6が多相交流電力を供給されて補助油圧ポンプ5を駆動した結果として、その吐出管路11の油圧が予め設定した油圧値に上昇したことを圧力センサ16により判定した場合に、吐出管路11に接続された切換弁15を中立位置15Cから選択レバー14で選択している正回転位置15B若しくは逆回転位置15Aへ切換える指令を出力する。そしてコントローラ7は、投入モードおよび排出モードが選択されている状態において、選択レバー14が図1中のB方向へ操作された際に、その操作量に応じてインバータ9を制御して電動モータ6に供給する多相交流電力を増加させる。
【0033】
図4は、選択レバー14によりミキサドラムMの回転モードを、投入モード若しくは排出モードに選択した際に、コントローラ7により起動されて実行される補助油圧装置SDの制御フローチャートである。以下では、図4に示すフローチャートに基づいて、補助駆動装置の作動を説明する。
【0034】
コンクリートプラントでミキサドラムM内に投入された生コンを積載したミキサ車Vを、ミキサドラムMを回転させて生コンを攪拌させつつ運搬して打設現場へ到着すると、ミキサ車Vは停車されるがエンジンEの運転を継続させて、ミキサドラムM内の生コンの攪拌を継続させる。即ち、エンジンEにより駆動される油圧ポンプ4からの作動油がループ状管路8の一方を経由して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3から排出された作動油が同じくループ状管路8の他方を経由して油圧ポンプ4に戻されている。この状態では、補助油圧装置SDの電動モータ6、補助油圧ポンプ5は停止されており、切換弁15は遮断状態の中立位置15Cにあり、エンジンE駆動の油圧ポンプ4より吐出された作動油のみにより油圧モータ3が攪拌回転されている。
【0035】
この状態において、打設現場で生コンを打設するために、選択レバー14により排出モードを選択すると、本実施形態では、選択レバー14が排出モードに切換えられた時点から、図4に示すフローチャートが実行される。選択レバー14が排出モードに切換えられると、先ず、コントローラ7によりループ状管路8の方向切換弁20が逆回転位置20Aに切換え、油圧ポンプ4より吐出された作動油を油圧モータ3を逆転させる方向に供給し、油圧モータ3およびミキサドラムMは攪拌回転数と同様な低速で逆回転する。この状態では、ミキサドラムMは攪拌回転数と同じ比較的低速で逆転するものであるため、生コンの排出を徐々に行うことができる。
【0036】
この状態において、補助油圧装置SDは、まず、ステップS10により、インバータ9を介して電動モータ6に所定の多相交流電力を供給して、補助油圧装置SDの電動モータ6を低速で回転させる。電動モータ6が回転され補助油圧ポンプ5が駆動されたことの結果として、吐出された作動油の油圧が上昇される。次いで、ステップS11では、吐出管路11の油圧が予め設定した油圧値に上昇したか否かが判定される。そして、圧力センサ16により吐出管路11の油圧が予め設定した油圧値に上昇したと判定した場合には、ステップS12において、吐出管路11に接続された切換弁15を中立位置15Cから選択レバー14で選択している逆回転位置15Aへ切換える。
【0037】
即ち、補助油圧ポンプ5の吐出管路11の油圧が予め設定した油圧値に上昇した段階で、切換弁15を中立位置15Cから供給位置である逆回転位置15A(若しくは正回転位置15B)へ切換えるようにしている。このようにすることにより、ループ状管路8を流れている作動油が、切換弁15を切換えた途端に補助油圧装置SD側へ洩れ出て、油圧モータ3およびミキサドラムMが不安定に回転変動することを防止することができる。
【0038】
この切換弁15の切換により、補助油圧ポンプ5より吐出された作動油は切換弁15を経由してループ状管路8に供給され、油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3は補助油圧ポンプ5で吐出された作動油が増量された分だけ増加した回転数で逆回転する。また、油圧モータ3より油圧ポンプ4へ戻る作動油の一部(補助油圧ポンプ5で供給した量の作動油)は、ループ状管路8から分流して切換弁15を経由してタンク10へ戻される。
【0039】
ステップS13では、B方向への選択レバー14のレバー操作量に対応して、インバータ9を制御して電動モータ6に供給する多相交流電力を制御する。即ち、上記状態において、選択レバー14をB方向に操作すると、その操作量がコントローラ7に入力され、B方向への選択レバー14のレバー操作量に応じて、インバータ9を制御して電動モータ6に供給する多相交流電力を増加させる。電動モータ6は供給される多相交流電力の増加に応じて回転数を上昇させ、補助油圧ポンプ5を上昇した回転数で駆動し、補助油圧ポンプ5は吐出する作動油を増量させる。
【0040】
増量された作動油は、油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3は補助油圧ポンプ5で吐出された作動油が増量された分だけ増加した回転数で逆回転する。また、油圧モータ3より油圧ポンプ4へ戻る作動油の一部(補助油圧ポンプ5で供給した量の作動油)は、ループ状管路8から分流して切換弁15を経由してタンク10へ戻される。このようにミキサドラムMが高速で逆回転されると、積載している生コンを当該ミキサドラムMの回転速度に応じて排出することができる。
【0041】
ステップS14では、投入モード若しくは排出モードが継続されているか否かが判定され、継続されている場合には、上記ステップS13を継続して実行する。
【0042】
この生コンを排出する排出モードにおいては、ミキサドラムMは高速で逆回転するが、ミキサドラムMを高速回転させるために利用される作動油量は、補助油圧装置SDから供給された作動油であり、エンジンEはアイドリング状態を含む低速で回転している状態に維持される。そして、電動モータ6より発生する騒音は小さいものであり、油圧ポンプ4をエンジンEにより高速で回転させてミキサドラムMを逆回転させる排出モードに比較して、車外に放出される騒音を大幅に低減させることができる。また、油圧ポンプ4をエンジンEにより高速で回転させるものでないため、エンジンEにより消費される燃費を低減できる。
【0043】
選択レバー14により排出モードから他のモード、例えば、停止モードに切換えられると、ステップS14における判定が、投入モード若しくは排出モードが継続されていないと判定する。そして、ステップS15で切換弁15を中立位置15Cに切換え、ステップS16で電動モータ6を停止させて排出モードを停止させる。
【0044】
また、コンクリートプラントでミキサドラムM内に生コンを投入する場合においても、エンジンEをアイドリングさせて、エンジンEにより駆動される油圧ポンプ4よりの作動油をループ状管路8を経由して油圧モータ3に供給する。この状態では、補助油圧装置SDの電動モータ6、補助油圧ポンプ5は停止されており、切換弁15は遮断状態の中立位置15Cにあり、エンジンE駆動の油圧ポンプ4より吐出された作動油のみにより油圧モータ3が回転される。
【0045】
この状態において、生コンを投入するために、選択レバー14により投入モードを選択すると、本実施形態では、選択レバー14が投入モードに切換えられた時点から、図4に示すフローチャートが実行される。選択レバー14の選択位置が投入モードに切換えられると、補助油圧装置SDは、まず、ステップS10により、インバータ9を介して電動モータ6に所定の多相交流電力を供給して、補助油圧装置SDの電動モータ6を低速で回転させる。電動モータ6が回転され補助油圧ポンプ5が駆動されたことの結果として、吐出された作動油の油圧が上昇される。
【0046】
ステップS11では、吐出管路11の油圧が予め設定した油圧値に上昇したか否かが判定される。そして、圧力センサ16により吐出管路11の油圧が予め設定した油圧値に上昇したと判定した場合には、ステップS12において、吐出管路11に接続された切換弁15を中立位置15Cから選択レバー14で選択している正回転位置15Bへ切換える。この切換弁15の切換により、補助油圧ポンプ5より吐出された作動油は切換弁15を経由してループ状管路8に供給され、油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3は補助油圧ポンプ5で吐出された作動油が増量された分だけ増加した回転数で正回転する。また、油圧モータ3より油圧ポンプ4へ戻る作動油の一部(補助油圧ポンプ5で供給した量の作動油)は、ループ状管路8から分流して切換弁15を経由してタンク10へ戻される。
【0047】
ステップS13では、B方向への選択レバー14のレバー操作量に対応して、インバータ9を制御して電動モータ6に供給する多相交流電力を制御する。即ち、上記状態において、選択レバー14をB方向に操作すると、その操作量がコントローラ7に入力され、B方向への選択レバー14のレバー操作量に応じて、インバータ9を制御して電動モータ6に供給する多相交流電力を増加させる。電動モータ6は供給される多相交流電力の増加に応じて回転数を上昇させ、補助油圧ポンプ5を上昇した回転数で駆動し、補助油圧ポンプ5は吐出する作動油を増量させる。
【0048】
増量された作動油は、油圧ポンプ4より吐出された作動油と合流して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3は補助油圧ポンプ5で吐出された作動油が増量された分だけ増加した回転数で正回転する。また、油圧モータ3より油圧ポンプ4へ戻る作動油の一部(補助油圧ポンプ5で供給した量の作動油)は、ループ状管路8から分流して切換弁15を経由してタンク10へ戻される。このようにミキサドラムMが高速で正回転されることにより、ミキサドラムM内に供給された生コンを投入することができる。そして、投入モード(若しくは排出モード)が継続されている場合には、上記ステップS13を継続して実行する。
【0049】
この生コンを投入する投入モードにおいても、ミキサドラムMは高速で正回転するが、ミキサドラムMを高速回転させるために利用される作動油量は、補助油圧装置SDから供給された作動油であり、エンジンEはアイドリング状態を含む低速で回転している状態に維持される。そして、電動モータ6より発生する騒音は小さいものであり、油圧ポンプ4をエンジンEにより高速で回転させてミキサドラムMを正回転させる投入モードに比較して、車外に放出される騒音を低減させることができる。また、油圧ポンプ4をエンジンEにより高速で回転させるものでないため、エンジンEにより消費される燃費を低減できる。
【0050】
なお、選択レバー14により投入モードから他のモード、例えば、攪拌モードに切換えられると、ステップS14〜S16の作動が実行されて補助油圧装置SDが停止され、エンジンE駆動による油圧ポンプ4よりの作動油により、ミキサドラムMは攪拌回転される。
【0051】
なお、上記実施形態では、ミキサドラムMの回転モードを、選択レバー14の操作位置により実行するものについて説明した。しかし、ミキサドラムMの回転モードの制御を選択レバー14で行わず、例えば、操作ボタンや選択スイッチ等で行うようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、切換弁15の中立位置15Cから供給位置である正回転位置15B若しくは逆回転位置15Aへの切換えタイミングを吐出管路11の油圧値に基づいて設定している。この切換えタイミングは吐出管路11の油圧値のみに限定されず、例えば、補助油圧ポンプ5の回転数や電動モータ9の駆動電流値が所定値を超える時点で設定するものであってもよい。また、操作レバー14のB方向への操作に対してミキサドラムMの回転数の上昇が見られない状態に基づいて設定してもよい。
【0053】
以上説明した本実施形態のミキサドラムの駆動装置においては、補助油圧ポンプ5からの作動油を切り換え供給する切換弁15が閉じられて、油圧ポンプ4により駆動された油圧モータ3よってミキサドラムMが回転駆動されている状態において、圧力センサ16によって検出された補助油圧ポンプ5からの油圧が、予め設定された油圧以上であった場合に切換弁15を開くようにしている。これにより、補助油圧ポンプ5と切換弁15との間の油圧が予め設定された油圧以上となるので、油圧ポンプ4及び油圧モータ3からの作動油が補助油圧ポンプ5に逆流することを防止できる。この結果、油圧ポンプ4とともに補助油圧ポンプ5が予め設定された油圧以上の作動油を油圧モータ3に供給でき、ミキサドラムMを安定して回転駆動させることができる。
【0054】
また、切換弁15は、補助油圧ポンプ5と油圧モータ3との連通を遮断する中立位置15Cを備え、補助油圧ポンプ5より吐出される作動油の油圧が予め設定した所定値に上昇した段階で中立位置15Cから供給位置15A若しくは15Bに切換えられるようにしている。これにより、逆流防止専用のチェック弁等を設けることなく、油圧ポンプ4より油圧モータ3へ供給されている作動油の補助油圧ポンプ5側への逆流を、切換弁15により抑制できる。
【0055】
また、補助油圧ポンプ5を駆動する電動モータ6は、ミキサドラムMの回転モードを選択する選択レバー14のレバー操作量に応じて、その回転数を上昇させるようにした。このため、必要に応じてミキサドラムMの回転数を選択レバー14のレバー操作量に応じて、任意に調整することができる。
【0056】
なお、以上の説明では、作動流体として、作動油を使用するものについて説明したが、作動油の代りに、水溶性の代替液等を使用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
3 油圧モータ(液圧モータ)
4 油圧ポンプ(液圧ポンプ)
5 補助油圧ポンプ(補助液圧ポンプ)
6 電動モータ
7 コントローラ
8 ループ状管路
9 インバータ
10 タンク
11 吐出管路
14 選択レバー
15 切換弁
16 圧力センサ(圧力スイッチ)
20 方向切換弁
Bat 電源
C 架台
E エンジン
M ミキサドラム
R ローラ
S ミキサドラムの駆動装置
SD 補助油圧装置
V ミキサ車
図1
図2
図3
図4
図5