特許第5923418号(P5923418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923418
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】酸化セリウム粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/00 20060101AFI20160510BHJP
【FI】
   C01F17/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-204523(P2012-204523)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58422(P2014-58422A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年4月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本セラミックス協会2012年会講演予稿集、2012年3月19日 日本セラミックス協会2012年会、平成24年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】北條 純一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 尚也
(72)【発明者】
【氏名】アン ユンミン
(72)【発明者】
【氏名】稲田 幹
(72)【発明者】
【氏名】田中 優実
(72)【発明者】
【氏名】赤松 正守
(72)【発明者】
【氏名】池田 信彦
(72)【発明者】
【氏名】森脇 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】米田 晶子
(72)【発明者】
【氏名】井口 寛章
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−349324(JP,A)
【文献】 特開2007−245054(JP,A)
【文献】 特表2005−519845(JP,A)
【文献】 特開2008−280199(JP,A)
【文献】 特開2004−128511(JP,A)
【文献】 特表2003−519074(JP,A)
【文献】 特開平11−330020(JP,A)
【文献】 特表2005−509725(JP,A)
【文献】 特表2004−528158(JP,A)
【文献】 特開2000−080346(JP,A)
【文献】 特表2008−504199(JP,A)
【文献】 特開2008−105935(JP,A)
【文献】 特表2005−535547(JP,A)
【文献】 特開平06−304468(JP,A)
【文献】 特表2009−511403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸セリウムアンモニウム、アルコール、水、及び界面活性剤を成分とする原料含有液を製造する含有液製造工程と、
前記原料含有液を複数の相に分離した状態のまま所定時間放置する放置工程と、
前記放置工程の間に析出した析出物を取出す取出工程と、
前記取出工程において取出された前記析出物を熱分解させる熱分解工程とを備えることを特徴とする酸化セリウム粒子の製造方法。
【請求項2】
前記含有液製造工程において混合される前記アルコールが、アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質であることを特徴とする請求項1記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
【請求項3】
前記アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質がn−ブチルアルコールであることを特徴とする請求項2記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
【請求項4】
前記含有液製造工程において混合される前記n−ブチルアルコールのモル数が前記硝酸セリウムアンモニウムの30倍以上40倍以下であり、
前記含有液製造工程において混合される前記水のモル数が前記硝酸セリウムアンモニウムの30倍以上50倍以下であり、
前記含有液製造工程において混合される前記界面活性剤のモル数が前記硝酸セリウムアンモニウムの0.0003倍以上0.0004倍以下であり、
前記放置工程における前記原料含有液の温度が353ケルビン以上373ケルビン以下であることを特徴とする請求項3記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
【請求項5】
前記含有液製造工程において混合される前記界面活性剤がポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであることを特徴とする請求項3記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、触媒用酸化セリウム粉体の製造方法を開示する。その製造方法は、沈殿工程と、分離回収工程と、焼成工程とを有する。沈殿工程はセリウム塩の溶液に塩基物質と炭酸物質とを添加して沈殿物を作る工程である。分離回収工程は沈殿物を分離回収して前駆体を得る工程である。焼成工程は前駆体を加熱する工程である。この工程において酸化セリウムが生成する。この方法によって得られる酸化セリウム粉体は、排気ガスに含まれる粒子状物質の自己発火開始温度を大幅に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−245054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法で得られた酸化セリウム粉体には、比表面積が小さくなるという問題がある。比表面積が小さいことは、触媒としての性能が低い原因となる。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものである。本発明の目的は、比表面積が大きい酸化セリウム粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況下、本発明者らは、触媒用酸化セリウムについて鋭意検討した結果、以下の本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、下記[1]〜[5]が提供される。
[1]硝酸セリウムアンモニウム、アルコール、水、及び界面活性剤を成分とする原料含有液を製造する含有液製造工程と、
前記原料含有液を前記原料含有液が複数の相に分離した状態のまま所定時間放置する放置工程と、
前記放置工程の間に析出した析出物を取出す取出工程と、
前記取出工程において取出された前記析出物を熱分解させる熱分解工程とを備えることを特徴とする酸化セリウム粒子の製造方法。
[2]前記含有液製造工程において混合される前記アルコールが、アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質であることを特徴とする[1]記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
[3]前記アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質がn−ブチルアルコールであることを特徴とする[2]記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
[4]前記含有液製造工程において混合される前記n−ブチルアルコールのモル数が前記硝酸セリウムアンモニウムの30倍以上40倍以下であり、
前記含有液製造工程において混合される前記水のモル数が前記硝酸セリウムアンモニウムの30倍以上50倍以下であり、
前記含有液製造工程において混合される前記界面活性剤のモル数が前記硝酸セリウムアンモニウムの0.0003倍以上0.0004倍以下であり、
前記放置工程における前記原料含有液の温度が353ケルビン以上373ケルビン以下であることを特徴とする[3]記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
[5]前記含有液製造工程において混合される前記界面活性剤がポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであることを特徴とする[3]記載の酸化セリウム粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明で得られた酸化セリウム粉体は比表面積を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例において得られた酸化セリウム粒子の比表面積の平均値と比較例において得られた酸化セリウム粒子の比表面積との比較結果を示す図である。
図2】本発明の含有液製造工程において使用されるアルコールの種類が酸化セリウム粒子の比表面積に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる酸化セリウム粒子の製造方法は、多孔性物質をゾルゲル法で合成する際に界面活性剤の分子集合体を型として用いるという点において「テンプレート法」と言われる公知の方法の一種である。しかしながら、本発明にかかる酸化セリウム粒子の製造方法は、少なくとも次に述べる点で、公知のテンプレート法とは異なる。その点とは、原料含有液が水相とアルコール相とに分離した状態のまま放置される工程を有する点である。以下、本発明にかかる酸化セリウム粒子の製造方法を説明する。本発明にかかる酸化セリウム粒子の製造方法は、含有液製造工程と、放置工程と、取出工程と、熱分解工程とを備える。
【0011】
含有液製造工程において原料含有液が製造される。原料含有液とは、硝酸セリウムアンモニウム、アルコール、水、及び、界面活性剤を成分とする混合物のことである。この混合物は、次に述べられる2つの要件を満たす限り、上述した成分以外の成分を含んでいても良い。第1の要件は、放置されると混合物が複数の相に分離するという要件である。第2の要件は、分離した相の界面のいずれかにセリウム及びセリウム化合物(ただし酸化により酸化セリウムになるもの)の少なくとも一方を含む析出物がたまるという要件である。原料含有液において、アルコールのモル数は硝酸セリウムアンモニウムのモル数の30倍以上40倍以下であることが好ましい。水のモル数は硝酸セリウムアンモニウムのモル数の10倍以上50倍以下であることが好ましい。水のモル数は硝酸セリウムアンモニウムのモル数の30倍以上50倍以下であることが特に好ましい。界面活性剤のモル数は硝酸セリウムアンモニウムのモル数の0.0003倍以上0.04倍以下であることが好ましい。界面活性剤のモル数は硝酸セリウムアンモニウムのモル数の0.0003倍以上0.0004倍以下であることが特に好ましい。
【0012】
含有液製造工程において用いられるアルコールは、アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質であることが好ましい。「アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質」の例には、プロパノールとブタノールとペンタノールとがある。アルカンの水素原子がヒドロキシ基で置換された物質が含有液製造工程において用いられる場合、その物質がブタノール特にn−ブチルアルコールであることが好ましい。
【0013】
含有液製造工程において用いられる界面活性剤は、非イオン界面活性剤であることが好ましい。含有液製造工程において用いられる非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであることが好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールはPluronic(登録商標)F127という商品名で市販されている。その他の非イオン界面活性剤の例にはポリ(アルキレンオキサイド)ブロックコポリマー(化学式:HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H)がある。この非イオン界面活性剤はPluronic(登録商標)P123という商品名で市販されている。
【0014】
放置工程は、原料含有液を所定時間放置する工程である。何ら管理を行わないことばかりでなく、温度を一定に保ち続けることも、気化などによる成分の漏洩が防止された状態を保ち続けることも、ここで言う「放置」の一種である。この工程において、原料含有液は、複数の相に分離した状態のまま放置される。原料含有液がどのような相に分離するかは原料含有液の成分に応じて異なる。例えば、原料含有液は、アルコールより水が多く含まれる相(水相)と水よりアルコールが多く含まれる相(アルコール相)との2相に分離する。放置工程において原料含有液が放置される時間は特に限定されない。放置工程において相の界面(例えば水相とアルコール相との界面)に析出物がたまる。これにより、原料含有液は反応液(水相とアルコール相と析出物とが含まれる液)に変化する。
【0015】
取出工程は、放置工程の間に析出した析出物を反応液から取出す工程である。析出物を取出すための具体的な方法は特に限定されない。その方法の一例には、次に述べる方法がある。まず、2相に分かれた反応液のうち下部に位置する水相の大部をスポイトを用いて吸引除去した後に、残りの反応液を遠心分離する。これにより析出物と廃液(遠心分離により析出物が分離された水相及びアルコール相のこと)とが分離する。分離した廃液は廃棄される。廃棄された廃液と同程度の体積のエタノールを残った析出物に加える(これにより析出物がエタノール中に分散する)。エタノールが加えられ析出物を再び遠心分離する(これにより析出物とエタノールとが分離される)。エタノールが分離された析出物に新たなエタノールを加える(これにより析出物がエタノール中に再度分散する)。エタノールが加えられ析出物を再び遠心分離する。エタノールの添加とそのエタノールの分離とは3回以上繰り返されても良い。エタノールの添加とそのエタノールの分離とを少なくとも2回繰り返すことにより、析出物に付着した未反応物等がエタノール中に溶解するので、析出物は清浄化される。なお、遠心分離器の回転速度は特に限定されない。たとえばそれは毎分12000回転である。なお、エタノールを使うのは、水にもブタノールにも溶けること、蒸発しやすいこと、及び、50℃(323.15ケルビン)程度の低温で素早く乾燥できること、などが理由である。
【0016】
熱分解工程は、取出工程において取出された析出物を熱分解させる工程である。析出物を熱分解させるための具体的な方法は特に限定されない。その方法の一例には、析出物を酸素雰囲気中で加熱するという方法がある。析出物が大気中で加熱されても良いことは言うまでもない。熱分解のための加熱温度は特に限定されないが、400℃(673.15ケルビン)程度であることが好ましい。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
含有液製造工程において、硝酸セリウムアンモニウムと、n−ブチルアルコールと、水と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとが、モル比1:40:30:3×10−4にて混合された。これにより原料含有液が製造された。原料含有液は、還流器付きガラス容器(還流器付きガラス容器は還流器が取付けられた周知のガラス容器である。還流器は気化した物質を冷却することにより液化させるための周知の装置である。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰り返されない。)に入れられた。放置工程において、原料含有液は24時間放置された。その間、原料含有液の温度は100℃(373.15ケルビン)のままであった。その間、攪拌は行われなかった。その結果、原料含有液は、水相とアルコール相とに分離した状態であった。取出工程において、まず、遠心分離器によって反応液から廃液が除去された。廃液が除去された後、遠心分離器内に析出物が残った。その析出物はエタノールによって洗浄された。洗浄に用いられたエタノールは遠心分離器によって除去された。エタノール洗浄とエタノールの除去とは2回ずつ繰り返された。熱分解工程において、まず析出物は50℃(323.15ケルビン)で乾燥された。その後、析出物は400℃(673.15ケルビン)の空気中で加熱された。これにより、酸化セリウム粒子が得られた。この酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、173m/gであった。
【0018】
[実施例2]
放置工程における原料含有液の温度が80℃(353.15ケルビン)であったことを除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、193m/gであった。
【0019】
[実施例3]
含有液製造工程における、硝酸セリウムアンモニウムと、n−ブチルアルコールと、水と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとのモル比が1:40:50:3×10−4であったことを除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、185m/gであった。
【0020】
[実施例4]
次に述べる2つの点を除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。第1点目は、含有液製造工程における、硝酸セリウムアンモニウムと、n−ブチルアルコールと、水と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとのモル比が1:30:40:3×10−4であったという点である。第2点目は、放置工程において原料含有液が放置された時間が48時間であったという点である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、182m/gであった。
【0021】
[実施例5]
次に述べる2つの点を除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。第1点目は、含有液製造工程において、硝酸セリウムアンモニウムと、n−ペンタノールと、水と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとのモル比が1:40:30:3×10−4であったという点である。第2点目は、放置工程における原料含有液の温度が80℃(353.15ケルビン)であったという点である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、113m/gであった。
【0022】
[実施例6]
次に述べる3つの点を除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。第1点目は、含有液製造工程において、硝酸セリウムアンモニウムと、n−プロパノールと、水と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとのモル比が1:40:30:3×10−4であったという点である。第2点目は、放置工程における原料含有液の温度が80℃(353.15ケルビン)であったという点である。第3点目は、放置工程において原料含有液が放置された時間が120時間であったという点である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、118m/gであった。なお、放置工程において原料含有液が24時間放置された時点では、水相とアルコール相との界面に析出物がたまっていなかった。
【0023】
[実施例7]
含有液製造工程において、硝酸セリウムアンモニウムと、n−ブチルアルコールと、水と、ポリ(アルキレンオキサイド)ブロックコポリマーとが、モル比1:30:40:4×10−4にて混合された点を除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、134m/gであった。
【0024】
[実施例8]
次に述べる2つの点を除けば、本実施例の内容は実施例1と同様である。第1点目は、含有液製造工程において、硝酸セリウムアンモニウムと、n−ブチルアルコールと、水と、ポリ(アルキレンオキサイド)ブロックコポリマーとが、モル比1:30:40:4×10−4にて混合された点である。第2点目は、放置工程において原料含有液が放置された時間が72時間であったという点である。本実施例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、144m/gであった。
【0025】
[比較例1]
硝酸セリウム(III)6水和物Ce(NO・6HOを液中モル濃度が0.1モル/リットルとなるようにイオン交換水に攪拌しながら投入し、Ce水溶液を得た。この水溶液の撹拌を継続しながらこの水溶液の温度を40℃(313.15ケルビン)に調整し、温度が40℃に到達した段階で沈殿剤として炭酸アンモニウムを2当量添加した。そのままの状態で1時間放置し、沈殿物スラリーを得た。これを濾過した後、水洗し、120℃で6時間乾燥することで、セリウムを主体とする乾燥粉末(前駆体)を得た。この前駆体を400℃(673.15ケルビン)の大気中で2時間加熱することにより焼成し、酸化セリウム粒子を得た。本比較例において得られた酸化セリウム粒子のBET法により測定された比表面積は、95m/gであった。
【0026】
[比較例2]
放置工程に代えて撹拌工程が実施されたことを除けば、本比較例の内容は実施例1と同様である。撹拌工程は、原料含有液が24時間撹拌され続ける工程である。本比較例では析出物の析出がなかった。
【0027】
[比表面積の比較結果]
図1に、実施例1ないし実施例8において得られた酸化セリウム粒子の比表面積の平均値(約155.3m/g)と比較例1において得られた酸化セリウム粒子の比表面積(95m/g)との比較結果が示される。図1から明らかなように、本発明にかかる酸化セリウム粒子は、比較例1において得られた酸化セリウム粒子に比べて約60パーセント比表面積が大きい。
【0028】
図2に、含有液製造工程において使用されるアルコールの種類が酸化セリウム粒子の比表面積に及ぼす影響が示される。含有液製造工程において使用されるアルコールがn−ブチルアルコールである場合(実施例1の場合)、酸化セリウム粒子の比表面積は、含有液製造工程において使用されるアルコールがn−ペンタノールの場合(実施例5の場合)又はn−プロパノールの場合(実施例6の場合)に比べて、約50パーセント大きくなる。なお、実施例1において得られた酸化セリウム粒子の比表面積(173m/g)は、比較例1において得られた酸化セリウム粒子の比表面積(95m/g)に比べて約80パーセント大きい。
図1
図2