特許第5923473号(P5923473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923473
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】緑色発光蛍光体
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/62 20060101AFI20160510BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20160510BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20160510BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20160510BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20160510BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160510BHJP
【FI】
   C09K11/62CPC
   C09K11/08 B
   H01L33/00 410
   F21S2/00 431
   F21S2/00 481
   F21V9/16 100
   F21Y101:02
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-195518(P2013-195518)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59202(P2015-59202A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年12月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 和弘
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−236310(JP,A)
【文献】 JOURNAL OF RARE EARTHS,2007, 25,701-705
【文献】 JOURNAL OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY,2001, 148(7),D89-D93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00− 11/89
H01L 33/50
F21Y101/02
F21V 9/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、
XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満である緑色蛍光体。
【請求項2】
PLピークの半値幅が、46nm〜51nmである請求項1記載の緑色蛍光体。
【請求項3】
PLピーク波長が、540nm〜550nmである請求項1又は2記載の緑色蛍光体。
【請求項4】
PLピーク波長が、530nm〜570nmである請求項1又は2記載の緑色蛍光体。
【請求項5】
前記組成式において、0.05≦x≦0.18、0.25≦y≦0.50である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の緑色蛍光体。
【請求項6】
水蒸気バリアフィルムと、
前記水蒸気バリアフィルムに挟持された蛍光体層とを備え、
前記蛍光体層が、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満である緑色蛍光体と赤色蛍光体とを含有する蛍光体シート。
【請求項7】
請求項に記載の蛍光体シートを備える照明装置。
【請求項8】
ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とカルシウム化合物とを含む混合溶液を、粉末ガリウム化合物を加えた亜硫酸塩溶液中に滴下し、
Eu、Sr、Ca、及びGaを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成し、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示される緑色蛍光体を得る緑色蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色発光蛍光体に関し、特に、SrGa:Euで表される緑色発光蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
SrGa:Eu(以下、SGSと表記する。)蛍光体は、近紫外〜青色領域の光で励起されるため、青色LED励起用の緑色発光蛍光体として注目されている。SGS蛍光体は、色純度が高く、発光効率が高いことが特徴である。また、SGS蛍光体のSrサイトをCaで置換することで、約560nm付近まで長波長化可能である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とを含む溶液から、ユウロピウム及びストロンチウムを含む粉体を得た後、粉体粉体ガリウム化合物とを混合し、焼成することにより、(Sr,Ba,Ca)1−xGa:Eu(但し、0.10≦x≦0.20、好ましくは、0.10≦x≦0.18)かつ(内部量子効率/吸収効率)の値が0.7以上である緑色発光蛍光体を得ることができることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、Ca、Ga及びSを含有する母体結晶とする蛍光体において、CuKα線を用いたXRDパターンが開示されている。
【0005】
しかしながら、上述した従来の蛍光体は、青色LED励起用の緑色発光蛍光体として十分な変換効率が得られておらず、さらに高い変換効率を有する緑色蛍光体が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−236310号公報
【特許文献2】WO2011/033830号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of MMIJ Vol.126 P.456-459 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における課題を解決するものであり、高い変換効率を有する緑色蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者は、鋭意検討を行った結果、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、所定値未満のとき、高い変換効率が得られ、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る緑色蛍光体は、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る蛍光体シートは、水蒸気バリアフィルムと、前記水蒸気バリアフィルムに挟持された蛍光体層とを備え、前記蛍光体層が、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満である緑色蛍光体と赤色蛍光体とを含有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る照明装置は、前述の蛍光体シートを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る緑色蛍光体の製造方法は、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とカルシウム化合物とを含む混合溶液を、粉末ガリウム化合物を加えた亜硫酸塩溶液中に滴下し、Eu、Sr、Ca、及びGaを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成し、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示される緑色蛍光体を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、XRDパターン(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満であり、結晶性が良好であるため、高い変換効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】蛍光体シートの構成例を示す概略断面図である。
図2】蛍光体シートの製造方法の一例を説明するための模式図である。
図3】エッジライト型の照明装置を示す概略断面図である。
図4】直下型の照明装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態(以下、本実施の形態と称する。)について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
1.緑色蛍光体
2.緑色蛍光体の製造方法
3.蛍光体シート及び蛍光体シートの製造方法
4.照明装置
5.実施例
【0017】
<1.緑色蛍光体>
本実施の形態に係る緑色蛍光体は、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満である。これにより、蛍光体の高い変換効率を得ることができる。ここで、蛍光体の変換効率とは、励起光を吸収する効率(吸収率)、吸収した励起光を蛍光に変更する効率(内部量子効率)、及びそれらの積である励起光を蛍光に変換する効率(外部量子効率)をいう。
【0018】
また、緑色蛍光体は、PLピークの半値幅が、46nm〜51nmであることが好ましい。これにより、高い色純度を得ることができる。
【0019】
また、緑色蛍光体は、PLピーク波長が、530nm〜570nmであることが好ましく、540nm〜550nmであることがより好ましい。これにより、色純度の良好な緑色を得ることができる。
【0020】
また、緑色蛍光体は、上記組成式において、0.05≦x≦0.18、0.25≦y≦0.50であることが好ましい。これにより、色純度の良好な緑色を得ることができるとともに、高い変換効率を得ることができる。
【0021】
また、緑色蛍光体は、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とカルシウム化合物とを含む混合溶液を、粉末ガリウム化合物を加えた亜硫酸塩溶液中に滴下し、Sr、Ca、Eu及びGaを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成してなることが好ましい。これにより、良好な結晶性を有するとともに、高い変換効率を得ることができる。
【0022】
<2.緑色蛍光体の製造方法>
本実施の形態に係る緑色蛍光体の製造方法は、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とカルシウム化合物とを含む混合溶液を、粉末ガリウム化合物を加えた亜硫酸塩溶液中に滴下し、Eu、Sr、Ca、及びGaを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成し、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示される緑色蛍光体を得る。すなわち、本実施の形態に係る緑色蛍光体の製造方法は、出発物質を液相にて生成させる湿式法を用いる。
【0023】
ユウロピウム化合物としては、硝酸ユウロピウム[Eu(NO・xHO]、蓚酸ユウロピウム[Eu(C・xHO]、炭酸ユウロピウム[Eu(CO・xHO]、硫酸ユウロピウム[Eu(SO]、塩化ユウロピウム[EuCl・xHO]、フッ化ユウロピウム[EuF]、水素化ユウロピウム[EuH]、硫化ユウロピウム[EuS]、トリ−i−プロポキシユウロピウム[Eu(O−i−C]、酢酸ユウロピウム[Eu(O−CO−CH]等を用いることができる。
【0024】
ストロンチウム化合物としては、硝酸ストロンチウム[Sr(NO]、酸化ストロンチウム[SrO]、臭化ストロンチウム[SrBr・xHO]、塩化ストロンチウム[SrCl・xHO]、炭酸ストロンチウム[SrCO]、蓚酸ストロンチウム[SrC・HO]、フッ化ストロンチウム[SrF]、ヨウ化ストロンチウム[SrI・xHO]、硫酸ストロンチウム[SrSO]、水酸化ストロンチウム[Sr(OH)・xHO]、硫化ストロンチウム[SrS]等を用いることができる。
【0025】
カルシウム化合物としては、硝酸カルシウム[Ca(NO]、酸化カルシウム[CaO]、臭化カルシウム[CaBr・xHO]、塩化カルシウム[CaCl・xHO]、炭酸カルシウム[CaCO]、蓚酸カルシウム[CaC・HO]、フッ化カルシウム[CaF]、ヨウ化カルシウム[CaI・xHO]、硫酸カルシウム[CaSO]、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、硫化カルシウム[CaS]等を用いることができる。
【0026】
ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とカルシウム化合物を含む混合溶液を得るための溶媒としては、純水、硝酸水溶液、アンモニア水溶液、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合水溶液を用いることができる。
【0027】
また、粉状ガリウム化合物としては、酸化ガリウム[Ga]、硫酸ガリウム[Ga(SO・xHO]、硝酸ガリウム[Ga(NO・xHO]、臭化ガリウム[GaBr]、塩化ガリウム[GaCl]、ヨウ化ガリウム[GaI]、硫化ガリウム(II)[GaS]、硫化ガリウム(III)[Ga]、オキシ水酸化ガリウム[GaOOH]等を用いることができる。
【0028】
粉状ガリウム化合物を加える亜硫酸塩としては、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムを用いることができる。また、亜硫酸塩以外にも、炭酸塩(具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム)を用いることも可能である。
【0029】
また、前述した製造方法に限らず、ユウロピウム化合物とストロンチウム化合物とカルシウム化合物とを含む混合溶液に粉末ガリウム化合物を加え、Eu、Sr、Ca、及びGaを含む混合溶液を亜硫酸塩溶液中に滴下し、Eu、Sr、Ca及びGaを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成し、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示される緑色蛍光体を得るようにしてもよい。
【0030】
<3.蛍光体シート及び蛍光体シートの製造方法>
本実施の形態に係る蛍光体シートは、水蒸気バリアフィルムと、水蒸気バリアフィルムに挟持された蛍光体層とを備え、蛍光体層が、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満である緑色蛍光体と赤色蛍光体とを含有する。これにより、青色LEDや近紫外LEDを用いて広い色域を可能とする白色光を得ることができる。
【0031】
図1は、蛍光体シート端部の構成例を示す概略断面図である。この蛍光体シートは、蛍光体層11が、第1の水蒸気バリアフィルム12と第2の水蒸気バリアフィルム13とに挟持されている。
【0032】
蛍光体層11は、青色励起光の照射により波長530〜570nm、好ましくは波長540〜550nmの緑色蛍光を発する緑色蛍光体と、青色励起光の照射により波長620〜660nmの赤色蛍光を発する赤色蛍光体とを含有し、照射された青色光を白色光に変換する。
【0033】
緑色蛍光体として、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満であるものが用いられる。また、緑色蛍光体は、上記組成式において、0.05≦x≦0.18、0.25≦y≦0.50であることが好ましい。これにより、色純度の良好な緑色を得ることができるとともに、高い変換効率を得ることができる。
【0034】
また、前述した緑色蛍光体以外の他の緑色蛍光体として、ZnSiO:Mn、YAl12:Ce3+、(Y,Gd)Al(BO:Tb3+、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、BaSi12:Eu、β-サイアロン:Eu2+等から1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
赤色蛍光体は、特に限定されるものではなく、硫化物系蛍光体、酸化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体等から、蛍光体の種類、吸収帯域、発光帯域等に応じて、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
赤色蛍光体の具体例としては、(ME:Eu)S、(M:Sm)(Si,Al)12(O,N)16、MESi:Eu、(ME:Eu)SiN、(ME:Eu)AlSiN、(ME:Eu)SiO、(Ca:Eu)SiN、(Ca:Eu)AlSiN、Y:Eu、YVO:Eu、Y(P,V)O:Eu、3.5MgO・0.5MgF・Ge:Mn、CaSiO:Pb,Mn、MgAsO11:Mn、(Sr,Mg)(PO:Sn、LaS:Eu、YS:Eu等を挙げることができる。これらの赤色蛍光体の中でも、広い色域を実現可能なCaS:Eu、又は(Ba,Sr)SiO:Euが好ましく用いられる。ここで、「ME」は、Ca、Sr及びBaから成る群から選択された少なくとも1種類の原子を意味し、「M」は、Li、Mg及びCaから成る群から選択された少なくとも1種類の原子を意味する。また、「:」の前は母体を示し、「:」の後は付活剤を示す。
【0037】
また、緑色蛍光体及び赤色蛍光体は、その表面が被覆されていることが好ましい。これにより、蛍光体の特性の劣化を防止することができる。表面を被覆するのに用いる化合物としては、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、または酸化ランタン等の酸化物を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
蛍光体層11は、粉末状の緑色蛍光体と赤色蛍光体とを含有する樹脂組成物を成膜したものである。蛍光体層11を形成する樹脂組成物には、ポリオレフィン共重合体成分又は光硬化性(メタ)アクリル樹脂成分のいずれかの樹脂成分を含むことが好ましい。
【0039】
ポリオレフィン共重合体としては、スチレン系共重合体又はその水添物を挙げることができる。このようなスチレン系共重合体又はその水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体又はその水添物、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体又はその水添物を好ましく挙げることができる。これらの中でも透明性やガスバリア性の点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の水添物を特に好ましく使用することができる。このようなポリオレフィン共重合体成分を含有させることにより、優れた耐光性と低い吸水性を得ることができる。
【0040】
光硬化型(メタ)アクリレート樹脂成分としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの中でも、光硬化後の耐熱性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。このような光硬化型(メタ)アクリレート樹脂成分を含有させることにより優れた耐光性と低い吸水性を得ることができる。
【0041】
また、樹脂組成物には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、他の光透過性樹脂、着色顔料、溶媒等を配合しても構わない。
【0042】
水蒸気バリアフィルム12,13は、PET(Polyethylene terephthalate)等のプラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムである。また、PET/SiOx/PET等の多層構造のものを用いても良い。
【0043】
また、蛍光体シートは、第1の水蒸気バリアフィルム12の端部と第2の水蒸気バリアフィルム13の端部とが、1g/m/day以下の水蒸気透過率を有するカバー部材14で封止されていることが好ましい。
【0044】
カバー部材14としては、1g/m/day以下の水蒸気透過率を有する基材141に粘着剤142が塗布された粘着テープを用いることができる。基材141としては、アルミ箔等の金属箔や、水蒸気バリアフィルム12,13を用いることができる。アルミ箔は、光沢の白アルミ又は非光沢の黒アルミのいずれを用いても良いが、蛍光体シート端部の良好な色合いが必要な場合、白アルミを用いることが好ましい。また、水蒸気バリアフィルム上に貼り付けられるカバー部材14の幅Wは、水蒸気バリア性や強度の観点から1mm〜10mmであることが好ましく、1mm〜5mmであることがより好ましい。このような構成からなるカバー部材14によれば、水蒸気バリアフィルムの端部から蛍光体層への水蒸気の侵入を防止することができ、蛍光体層中の蛍光体の劣化を防止することができる。
【0045】
図2は、蛍光体シートの製造方法の一例を説明するための模式図である。具体例として示す蛍光体シートの製造方法は、図2に示すように、攪拌工程(A)と、ラミネート工程(B)と、抜き加工工程(C)と、封止工程(D)とを有する。
【0046】
攪拌工程(A)では、例えば溶剤により溶解された樹脂ペースト中に、赤色蛍光体21と緑色蛍光体22とを予め決定された配合比で混合し、蛍光体含有樹脂ペーストを得る。ラミネート工程(B)では、第1の水蒸気バリアフィルム12上の蛍光体樹脂ペースト塗布し、バーコータ23を用いて蛍光体樹脂ペーストの膜厚を均一にし、オーブン24にて蛍光体樹脂ペーストを乾燥させ、蛍光体層11を形成する。そして、熱ラミネータ25を用いて蛍光体層11上に第2の水蒸気バリアフィルム13を貼り合わせ、蛍光体層11が第1,第2の水蒸気バリアフィルム12,13に挟持された蛍光体シートの原反を得る。抜き加工工程(C)では、蛍光体シートの原反をプレス機26にて抜き加工し、端部側面に蛍光体層が露出した所定のサイズの蛍光体シートを得る。封止工程(D)では、例えばカバー部材14としてアルミ箔テープを用いて、第1の水蒸気バリアフィルムと第2の水蒸気バリアフィルムとの間に露出した蛍光体層を封止する。
【0047】
以上の工程(A)〜(D)により、第1,第2の水蒸気バリアフィルム12,13の端部が、カバー部材14で封止された蛍光体シートを得ることができる。
【0048】
<4.照明装置>
次に、前述の蛍光体シートを用いた照明装置について説明する。図3は、エッジライト型の照明装置を示す概略断面図である。図3に示すように、照明装置は、青色LED31と、側面から入射される青色LED31の青色光を拡散させ、表面に均一の光を出す導光板32と、青色光から白色光を得る蛍光体シート33と、光学フィル34とを備える、所謂“エッジライト型バックライト”を構成する。
【0049】
青色LED31は、青色発光素子として例えばInGaN系のLEDチップを有する、所謂“LEDパッケージ”を構成する。導光板32は、アクリル板等の透明基板の端面より入れた光を均一に面発光させる。蛍光体シート33は、青色発光素子の青色光から白色光を得る粉末状の蛍光体を含有する。蛍光体の粉末は、平均粒径が数μm〜数十μmのものを用いる。これにより蛍光体シート33の光散乱効果を向上させることができる。光学フィルム34は、例えば液晶表示装置の視認性を向上させるための反射型偏光フィルム、拡散フィルムなどで構成される。
【0050】
また、図4は、直下型の照明装置を示す概略断面図である。図4に示すように、照明装置は、青色LED41が二次元配置された基板42と、青色LED41の青色光を拡散させる拡散板43と、基板42と離間して配置され、青色光から白色光を得る蛍光体シート33と、光学フィルム34とを備える、所謂“直下型バックライト”を構成する。
【0051】
青色LED41は、青色発光素子として例えばInGaN系のLEDチップを有する、所謂“LEDパッケージ”を構成する。基板42は、フェノール、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂を利用したガラス布基材から構成され、基板42上には、所定ピッチで等間隔に青色LED41が、蛍光体シート33の全面に対応して二次元に配置される。また、必要に応じて、基板42上の青色LED41の搭載面に反射処理を施してもよい。基板42と蛍光体シート33とは約10〜50mm程度離間して配置され、照明装置は、所謂“リモート蛍光体構造”を構成する。基板42と蛍光体シート33との間隙は、複数の支持柱や反射板によって保持され、基板42と蛍光体シート33とがなす空間を支持柱や反射板が四方で囲むように設けられている。拡散板43は、青色LED41からの放射光を光源の形状が見えなくなる程度に広範囲に拡散するものであり、例えば20%以上80%以下の全光線透過率を有する。
【0052】
このような構成の照明装置において、蛍光体シート33の蛍光体層は、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(0.03≦x≦0.20、0<y≦1)の組成式で示され、XRDパターンの(422)面の回折ピークの半値幅が、0.18未満である緑色蛍光体と赤色蛍光体とを含有するため、広い色域を可能とする白色光を出射することができる。
【0053】
なお、本発明は、前述の実施の形態にのみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々更新を加え得ることは勿論である。例えば、前述の実施の形態では、照明装置を表示装置用のバックライト光源に適用した例を示したが、照明用光源に適用してもよい。照明用光源に適用する場合、光学フィルム34は不要である場合が多い。また、蛍光体含有樹脂は、平面のシート形状であるだけでなく、カップ型形状等の立体的な形状を持っていてもよい。
<5.実施例>
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、各種の緑色蛍光体を作製し、X線回折(XRD:X‐ray diffraction)、PL(Photoluminescence)スペクトル、発光効率について評価した。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[X線回折の測定]
粉末X線解析計(株式会社リガク製)を用いて、CuKα線のX線回折(XRD)パターンにおける回折ピークの位置(2θ)及び半値幅を測定した。
【0056】
[PLスペクトルの測定]
分光蛍光光度計FP−6500(日本分光社製)を用いてPLスペクトルにおけるPLピーク波長、PLピーク強度、及びPLピーク半値幅を測定した。
【0057】
[変換効率の算出]
蛍光体の変換効率として、励起光を吸収する効率(吸収率)、吸収した励起光を蛍光に変更する効率(内部量子効率)、及びそれらの積である励起光を蛍光に変換する効率(外部量子効率)を算出した。量子効率は、分光蛍光光度計FP−6500(日本分光社製)を用いて測定した。専用セルに蛍光体粉末を充填し、波長450nmの青色励起光を照射させて、蛍光スペクトルを測定した。その結果を、分光蛍光光度計付属の量子効率測定ソフトを用いて、緑色の量子効率を算出した。
【0058】
[実施例1]
先ず、Ga(純度6N)、Sr(NO(純度3N)、Ca(NO・4HO(純度2N)、及びEu(NO・nHO(純度3N、n=6.06)、並びに、亜硫酸アンモニウム一水和物を準備した。
【0059】
次いで、表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.03、y=0.35とする組成比(Eu濃度:3mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。実施例1の場合、ユウロピウム化合物(Eu(NO・nHO)2.683g、ストロンチウム化合物(Sr(NO)25.311g、及びカルシウム化合物(Ca(NO・4HO)15.208gである。
【0060】
ユウロピウム化合物と、ストロンチウム化合物と、カルシウム化合物とを100mlの純水に添加し、溶け残りが無くなるまで十分に攪拌し、Eu、Sr、及びCaを含有する混合溶液を得た。
【0061】
次に、Eu、Sr、及びCaのモル数の合計の1.15倍のモル数の亜硫酸アンモニウム30.974gを100mlの純水に溶解させた溶液に、粉状ガリウム化合物(粉状Ga)36.550gを加え、十分攪拌して、亜硫酸塩混合溶液を作製した。
【0062】
この亜硫酸塩混合溶液に、先のEu、Sr、及びCaを含有する混合溶液を滴下することで析出・沈殿物を得た。この析出・沈殿物は、亜硫酸ユウロピウム・ストロンチウム・カルシウム粉体と、酸化ガリウム粉体の混合物である。
【0063】
そして、伝導率が0.1mS/cm以下になるまで、析出・沈殿物を純水で洗浄、濾過し、120℃で6時間、乾燥させた。その後、公称目開き100μmの金網を通すことで、Eu、Sr、Ca、及びGaを含有する粉体混合品を得た。この粉体混合品は、亜硫酸ユウロピウム・ストロンチウム・カルシウム粉体[(Sr,Ca,Eu)SOから成る粉体]と酸化ガリウム粉体とを含有する混合物である。
【0064】
次いで、粉体混合品を電気炉で焼成した。焼成条件を以下のとおりとした。1.5時間で925℃まで昇温し、その後、1.5時間、925℃を保持し、次いで、2時間で室温まで降温させた。焼成中、0.3リットル/分の割合で電気炉に硫化水素を流した。その後、公称目開き25μmのメッシュを通し、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.03、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。以上の試料作製方法を、表1中、湿式法1と表記する。
【0065】
表1に、実施例1の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.22°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.130degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は2.97(YAG比)、半値幅は48.46nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は70.7%、内部量子効率は79.4%、内部量子効率/吸収率は1.12、及び外部量子効率は56.1%であった。
【0066】
[実施例2]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.05、y=0.35とする組成比(Eu濃度:5mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.05、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0067】
表1に実施例2の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.27°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.138degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.51(YAG比)、半値幅は47.71nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は80.6%、内部量子効率は78.4%、内部量子効率/吸収率は0.97、及び外部量子効率は63.2%であった。
【0068】
[実施例3]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.08、y=0.35とする組成比(Eu濃度:8mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.08、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0069】
表1に、実施例3の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.25°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.136degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.67(YAG比)、半値幅は47.53nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は83.1%、内部量子効率は79.1%、内部量子効率/吸収率は0.95、及び外部量子効率は65.8%であった。
【0070】
[実施例4]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=0.35とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0071】
表1に、実施例4の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.23°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.137degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.71(YAG比)、半値幅は46.97nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は84.0%、内部量子効率は79.5%、内部量子効率/吸収率は0.95、及び外部量子効率は66.8%であった。
【0072】
[実施例5]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.13、y=0.35とする組成比(Eu濃度:13mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.13、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0073】
表1に、実施例5の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.25°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.145degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.63(YAG比)、半値幅は47.14nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は84.1%、内部量子効率は76.9%、内部量子効率/吸収率は0.91、及び外部量子効率は64.7%であった。
【0074】
[実施例6]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.15、y=0.35とする組成比(Eu濃度:15mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.15、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0075】
表1に、実施例6の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.25°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.145degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長546nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.75(YAG比)、半値幅は47.26nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は84.8%、内部量子効率は78.6%、内部量子効率/吸収率は0.93、及び外部量子効率は66.6%であった。
【0076】
[実施例7]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.18、y=0.35とする組成比(Eu濃度:18mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.18、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0077】
表1に、実施例7の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.22°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.139degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.68(YAG比)、半値幅は46.88nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は84.8%、内部量子効率は78.1%、内部量子効率/吸収率は0.92、及び外部量子効率は66.2%であった。
【0078】
[実施例8]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.20、y=0.35とする組成比(Eu濃度:20mol%、Ca置換割合:35%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.20、y=0.35)から成る蛍光体粒子を得た。
【0079】
表1に、実施例8の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.22°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.142degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.38(YAG比)、半値幅は46.69nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は85.0%、内部量子効率は71.1%、内部量子効率/吸収率は0.84、及び外部量子効率は60.4%であった。
【0080】
[実施例9]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=0.25とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:25%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=0.25)から成る蛍光体粒子を得た。
【0081】
表1に、実施例9の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.21°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.137degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長544nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.57(YAG比)、半値幅は47.04nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は82.4%、内部量子効率は77.9%、内部量子効率/吸収率は0.95、及び外部量子効率は64.1%であった。
【0082】
[実施例10]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=0.50とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:50%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=0.50)から成る蛍光体粒子を得た。
【0083】
表1に、実施例10の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.31°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.148degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長547nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.49(YAG比)、半値幅は48.23nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は82.4%、内部量子効率は77.8%、内部量子効率/吸収率は0.94、及び外部量子効率は64.1%であった。
【0084】
[実施例11]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=0.75とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:75%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=0.75)から成る蛍光体粒子を得た。
【0085】
表1に、実施例11の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.55°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.157degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長558nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は2.86(YAG比)、半値幅は50.04nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は76.5%、内部量子効率は70.6%、内部量子効率/吸収率は0.92、及び外部量子効率は54.0%であった。
【0086】
[実施例12]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=1.00とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:100%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=1.00)から成る蛍光体粒子を得た。
【0087】
表1に、実施例12の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.66°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.151degであった。また、X線回折パターンの最大ピークは、回折角2θ=17.64°に現れ、(022)面に帰属する回折ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長562nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は2.86(YAG比)、半値幅は50.27nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は77.8%、内部量子効率は70.0%、内部量子効率/吸収率は0.90、及び外部量子効率は54.1%であった。
【0088】
[実施例13]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=0.25とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:25%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。実施例13の場合、ユウロピウム化合物(Eu(NO・nHO)8.943g、ストロンチウム化合物(Sr(NO)28.570g、及びカルシウム化合物(Ca(NO・4HO)10.637gである。
【0089】
ユウロピウム化合物と、ストロンチウム化合物と、カルシウム化合物とを100mlの純水に添加し、溶け残りが無くなるまで十分に攪拌し、粉状ガリウム化合物(粉状Ga)36.550gを加え、Eu、Sr、Ca、及びGaを含有する混合溶液を得た。
【0090】
次に、Eu、Sr、及びCaのモル数の合計の1.15倍のモル数の亜硫酸アンモニウム30.974gを100mlの純水に溶解させ、亜硫酸塩溶液を作製した。
【0091】
この亜硫酸塩溶液に、先のEu、Sr、Ca、及びGaを含有する混合溶液を滴下することで析出・沈殿物を得た。この析出・沈殿物は、亜硫酸ユウロピウム・ストロンチウム・カルシウム粉体と、酸化ガリウム粉体の混合物である。
【0092】
以降の工程は、実施例1と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=0.25)から成る蛍光体粒子を得た。以上の試料作製方法を、表1中、湿式法2と表記する。
【0093】
表1に、実施例13の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.13°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.131degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長541nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は2.94(YAG比)、半値幅は46.61nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は79.1%、内部量子効率は69.2%、内部量子効率/吸収率は0.88、及び外部量子効率は54.7%であった。
【0094】
[実施例14]
表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.13、y=0.25とする組成比(Eu濃度:13mol%、Ca置換割合:25%)で、0.2モル量となるように各原料の秤量値を算出した。これ以外は、実施例13と同様にして、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.13、y=0.25)から成る蛍光体粒子を得た。
【0095】
表1に、実施例14の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.18°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.153degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長542nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.30(YAG比)、半値幅は48.02nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は80.8%、内部量子効率は73.4%、内部量子効率/吸収率は0.91、及び外部量子効率は59.3%であった。
【0096】
[比較例1]
先ず、Ga(純度6N)、CaCO(純度4N)、SrCO(純度3N)、及びEu(純度3N)を準備した。
【0097】
次いで、表1に示すように、組成式(Sr1−yCa1−xGa:Euで表される蛍光体において、x=0.10、y=0.25とする組成比(Eu濃度:10mol%、Ca置換割合:25%)で、1.0モル量となるように各原料の秤量値を算出した。比較例1の場合、ユウロピウム化合物(Eu)3.519g、ストロンチウム化合物(SrCO)9.965g、カルシウム化合物(CaCO)2.252g、及びガリウム化合物(Ga)18.275gである。
【0098】
ユウロピウム化合物と、ストロンチウム化合物と、カルシウム化合物と、ガリウム化合物とをボールミルを用いてエタノール中で混合した。混合終了後、混合物を吸引濾過し、80℃で6時間、乾燥させた。その後、公称目開き100μmの金網を通すことで、Eu、Sr、Ca、及びGaを含有する粉体混合品を得た。
【0099】
次に、アルミナ焼成ボートに粉体混合品25gセットし電気炉で焼成した。焼成条件を以下のとおりとした。1.5時間で925℃まで昇温し、その後、1.5時間、925℃を保持し、次いで、2時間で室温まで降温させた。焼成中、0.3リットル/分の割合で電気炉に硫化水素を流した。その後、公称目開き25μmのメッシュを通し、(Sr1−yCa1−xGa:Eu(x=0.10、y=0.25)から成る蛍光体粒子を得た。以上の試料作製方法を、表1中、乾式法と表記する
【0100】
表1に、比較例1の蛍光体の評価結果を示す。X線回折パターンを測定した結果、回折角2θ=24.22°に(422)面に帰属する回折ピークが現れ、その半値幅は0.222degであった。(422)面に帰属する回折ピークが、X線回折パターンの最大ピークであった。また、PLスペクトルを測定した結果、波長545nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は2.27(YAG比)、半値幅は49.30nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は80.4%、内部量子効率は52.0%、内部量子効率/吸収率は0.65、及び外部量子効率は41.8%であった。
【0101】
【表1】
【0102】
比較例1は、X線回折パターンにおける(422)面の回折ピークの半値幅が0.222degと大きく、結晶性が悪く、外部量子効率が50%未満であった。
【0103】
一方、実施例1〜14は、X線回折パターンにおける(422)面の回折ピークの半値幅が0.180未満と小さく、結晶性が良好であり、外部量子効率も50%以上であった。
【0104】
また、上記組成式においてx及びyの値が同一の比較例1と実施例9と実施例13とを比較すると、前駆体の製法として、湿式法1,2を用いることにより、結晶性が良好となり、優れたXRD回折ピーク半値幅、PLピーク強度、及び変換効率を得ることができた。また、湿式法2を用いるよりも湿式法1を用いた方が、高い変換効率を有する蛍光体を得ることができた。
【0105】
また、湿式法1を用いた実施例において、組成式が0.05≦x≦0.18、0.25≦y≦0.50である実施例2〜7、9、10は、内部量子効率/吸収率が0.90以上、且つ、外部量子効率が60%以上の優れた変換効率を得ることができた。
【符号の説明】
【0106】
11 蛍光体層、 12 第1の水蒸気バリアフィルム、 13 第2の水蒸気バリアフィルム、 14 カバー部材、 21 赤色蛍光体、 22 緑色蛍光体、 23 バーコータ、 24 オーブン、 25 熱ラミネータ、 26 プレス機、 31 青色LED、 32 導光板、 33 蛍光体シート、 34 光学フィルム、 41 青色LED、 42 基板、 43 拡散板
図1
図2
図3
図4