特許第5923500号(P5923500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5923500相補型デュアル絶対圧力センサを有する差圧トランスミッタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923500
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】相補型デュアル絶対圧力センサを有する差圧トランスミッタ
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/06 20060101AFI20160510BHJP
   G01L 15/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   G01L13/06 Z
   G01L15/00
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-519685(P2013-519685)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-531255(P2013-531255A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】US2011038692
(87)【国際公開番号】WO2012009062
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2013年3月8日
(31)【優先権主張番号】12/834,245
(32)【優先日】2010年7月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ブローデン,デヴィッド・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘツキ,ロバート・シー
(72)【発明者】
【氏名】クロシンスキ,アンドリュー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シトラー,フレッド・シー
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−543093(JP,A)
【文献】 特表平11−501123(JP,A)
【文献】 特表2000−505563(JP,A)
【文献】 特表2008−542726(JP,A)
【文献】 特開平01−284726(JP,A)
【文献】 特開2002−039903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 13/06
G01L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体の圧力を測定するためのプロセス変数トランスミッタであって、
第1の離隔ダイヤフラムを通じて第1のプロセス圧力に結合するように構成された第1のポートと、第2の離隔ダイヤフラムを通じて第2のプロセス圧力に結合するように構成された第2のポートとを有するプロセス継手と、
第1の隔離管を通じて前記第1のポートに結合されるとともに、第2の隔離管を通じて前記第2のポートに結合され、前記第1の圧力と前記第2の圧力との間の差圧に関連する出力を提供する差圧センサと、
前記第1の隔離管を通じて前記第1のポートに結合され、前記第1の圧力に関連する出力を提供する第1の圧力センサと、
前記第2の隔離管を通じて前記第2のポートに結合され、前記第2の圧力に関連する出力を提供する第2の圧力センサと、
前記差圧センサからの前記出力にもとづいてトランスミッタ出力を提供し、前記第1及び第2の圧力にもとづいて拡張させた機能をさらに提供するように構成されたトランスミッタ回路とを含み、
前記第1及び第2の各隔離管の中には、前記第1及び第2の隔離ダイヤフラムによって前記プロセス流体から隔離された充填液がそれぞれ配設され、
前記第1及び第2の圧力センサは、内部に形成されたキャビティを有する脆性材料からなり、前記第1及び第2の圧力センサからの前記出力が、キャビティの変形に関連し、それによって、前記第1及び第2の圧力センサは、前記差圧センサの周波数応答よりも高い周波数応答を有し、前記差圧センサよりも早い応答時間での測定を提供することが可能であり、
前記第1及び第2の圧力センサは、前記差圧センサの最大動作圧力よりも高い圧力で動作するように構成され、前記トランスミッタ回路は、前記第1及び第2の圧力センサにもとづいてトランスミッタ出力を提供し、
前記拡張させた機能が、前記差圧センサを較正すること、前記差圧センサの出力にスパンライン圧補償を提供すること、及び前記プロセス変数トランスミッタの動作レンジを拡張することの少なくとも1つを含む、トランスミッタ。
【請求項2】
前記トランスミッタが、前記第1及び第2の圧力センサからの前記出力にもとづいて差圧を算出するように構成される、請求項1記載のプロセス変数トランスミッタ。
【請求項3】
前記第1の隔離管が延長部を含み、前記第1の圧力センサが前記延長部の遠位端に取り付けられる、請求項1記載のプロセス変数トランスミッタ。
【請求項4】
前記差圧センサが品質低下している場合、前記トランスミッタ回路が、前記第1の圧力センサからの前記出力と、前記第2の圧力センサからの前記出力との間の差異にもとづいて差圧出力を提供するように構成される、請求項1記載のプロセス変数トランスミッタ。
【請求項5】
前記第1の圧力センサが、前記第1の隔離管内に延長し、ロウ付けによって前記第1の隔離管に結合される、請求項1記載のプロセス変数トランスミッタ。
【請求項6】
前記拡張させた機能が、詰まりのあるラインを検出することを含む、請求項1記載のプロセス変数トランスミッタ。
【請求項7】
前記拡張させた機能が、前記第1及び第2の圧力センサによって検知された信号の周波数にもとづく、請求項1記載のプロセス変数トランスミッタ。
【請求項8】
プロセス変数トランスミッタ内でプロセス流体の圧力を測定する方法であって、
第1の離隔ダイヤフラムを通じて第1の隔離管を第1のプロセス圧力に結合させることと、
第2の離隔ダイヤフラムを通じて第2の隔離管を第2のプロセス圧力に結合させることと、
前記第1及び第2の隔離管間に結合された差圧センサを用いて、前記第1のプロセス圧力と前記第2のプロセス圧力との間の差圧を検知することと、
前記第1の隔離管を通して前記第1のプロセス圧力に結合された第1の圧力センサで、前記第1のプロセス圧力を検知することと、
前記第2の隔離管を通して前記第2のプロセス圧力に結合された第2の圧力センサで、前記第2のプロセス圧力を検知することと、
前記差圧センサによって検知された前記差圧に関連するトランスミッタ出力を提供することと、
前記第1及び第2の圧力センサからの出力にもとづいて、前記プロセス変数トランスミッタに、前記差圧センサを較正すること、前記差圧センサの出力にスパンライン圧補償を提供すること、及び前記プロセス変数トランスミッタの動作レンジを拡張することの少なくとも1つを含む、拡張させた機能を行うこととを含み、
前記第1及び第2の各隔離管の中には、前記第1及び第2の隔離ダイヤフラムによって前記プロセス流体から隔離された充填液がそれぞれ配設され、
前記第1の圧力センサが、内部に形成されたキャビティを有する脆性材料からなり、前記第1の圧力センサからの前記出力が、前記キャビティの変形に関連し、それによって、前記第1及び第2の圧力センサは、前記差圧センサの周波数応答よりも高い周波数応答を有し、前記差圧センサよりも早い応答時間での測定を提供することが可能であり、
前記第1及び第2の圧力センサは、前記差圧センサの最大動作圧力よりも高い圧力で動作するように構成され、トランスミッタ回路は、前記第1及び第2の圧力センサにもとづいてトランスミッタ出力を提供する、方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の圧力センサからの前記出力にもとづいて差圧を算出する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第1の隔離管が延長部を含み、前記第1の圧力センサが前記延長部の遠位端に取り付けられる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の圧力センサの検出された周波数にもとづいて、システム、コンポーネント又はプロセスを診断すること、を含む請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記検知された第1及び第2の圧力にもとづいて、ラインの詰まりを検出することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記検知された第1及び第2の圧力にもとづいて、前記差圧センサの動作を診断することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記差圧センサが品質低下している場合、前記検知された第1及び第2の圧力にもとづいて差圧を検知することを含む、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用プロセスにおけプロセス流体の圧力の測定に関する。より具体的には、本発明は、差圧トランスミッタ内のライン圧の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用プロセスは、多くの種類の材料の製造及び輸送に用いられる。そのようなシステムでは、多くの場合、プロセス内部の異なる種類の圧力を測定することが必要とされる。測定されることが多い圧力の1つの種類は、差圧である。これは、プロセス内の1点と、プロセス内の別の点との間の圧力差である。たとえば、プロセス流体の流れを収容している管内のオリフィス板両端の差圧は、流体の流量に関連する。また、差圧を用いて、たとえばタンク又は他の容器内のプロセス流体の高さを測定することもできる
【0003】
工業用プロセスでは、圧力センサは、通常、遠隔位置に位置し、圧力関連情報を中央の場所、たとえば制御室に返り返す圧力トランスミッタに包含されるか又は結合される。送信は、プロセス制御ループを経由することが多い。たとえば、2線を用いて情報と電力の両方をトランスミッタに伝達する二線式プロセス制御ループがしばしば用いられる。また、ワイヤレス通信技術を用いることもできる。
【0004】
トランスミッタ技術の進歩は、トランスミッタによって作り出されることができる情報量を増大させてきた。特に、トランスミッタは、複数のプロセス変数入力を、又は単一のプロセス変数をより広範囲にわたり測定するための複数のセンサを具備することができる。たとえば、トランスミッタは、Brodenらに対する米国特許番号第5、495、769号、Rud, Jr.に対する米国特許番号6、047、244号、及びSchulteらに対する米国特許番号7、467、555号に記載されたような複数の圧力センサを備えることができ、これらはすべてRosemount Inc., Eden Prairie, MNに譲渡されている。
【0005】
多くのプロセス設備では、差圧の測定に加えて、プロセスの絶対圧又はゲージ圧(「ライン圧」とも呼ばれる)を測定することがさらに望ましい。この情報を用いて、たとえば、流れ計算においてプロセス流体の濃度の変化を含むことによって、より正確な流れの測定を提供する。プロセス流体に結合された別個の圧力センサを用いて、さらなる圧力測定をすることができる。
【発明の概要】
【0006】
プロセス流体の圧力を測定するためのプロセス変数トランスミッタは、第1のプロセス圧力に結合するように構成された第1のポートと、第2のプロセス圧力に結合するように構成された第2のポートとを有するプロセス継手を含む。少なくとも、第1の圧力センサが第1のポートに結合して、第1の圧力に関連する出力を提供する。トランスミッタ回路は、差圧からの出力にもとづいて、トランスミッタ出力を提供するように構成される。検知された第1の圧力及び第2の検知された圧力を用いて、トランスミッタによってさらなる機能が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明によって構築されたプロセストランスミッタを有するプロセス測定システムを示す。
図1図1のプロセストランスミッタの簡略化されたブロック図である。
図2】トランスミッタ電子回路を示す図1のプロセストランスミッタの略側面図である。
図3図3トランスミッタのセンサモジュールの断面図である。
図4】ライン圧センサの断面図である。
図5】管内に取り付けられた、図5のライン圧センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、差圧測定トランスミッタに、デュアルライン圧センサを用いてさらなる機能を提供するための機器及び方法を提供する。より具体的には、1つの態様では、本発明は、診断を行うか又は他の機能を提供するために用いるための、差圧センサの反対側に結合されたライン圧センサを含む。
【0009】
図1は、プロセス測定システム32の環境を全体的に示す。図1は、プロセス圧力を測定するためのプロセス測定システム32に結合された、圧力下にある流体を包含するプロセス配管30を示す。プロセス測定システム32は、配管30に接続されたインパルス配管34を含む。インパルス配管34は、プロセス圧力トランスミッタ36に接続される。一次エレメント33、たとえばオリフィス板、ベンチュリ管、フローノズル等は、プロセス配管30内のインパルス配管34の管間ある位置でプロセス流体に接触する。一次エレメント33は、流れが一次エレメント33を通過する際に、流体内に圧力変化を生じさせる。
【0010】
トランスミッタ36は、インパルス配管34を通してプロセス圧力を受けるプロセス測定装置である。トランスミッタ36は、プロセス差圧力を検知して、それをプロセス圧力の関数である標準化された伝送信号に変換する。
【0011】
プロセスループ38は、制御室40からトランスミッタ36への電力信号、及び二方向通信の両方を提供し、多くのプロセス通信プロトコルに従って構築されることができる。図示された例では、プロセスループ38は2線式ループである。2線式ループを用いて、4−20mA信号による通常動作中、トランスミッタ36に全電力が、及びトランスミッタ36に/トランスミッタ36から全通信が送信される。制御室40は、トランスミッタ36に電力供給する電圧源46と、直列抵抗44とを含む。別の例の構成では、ループ38は、ポイントツーポイント構成、メッシュネットワークのいずれか、又は他の構成でデータがワイヤレス送信又は受信され得るワイヤレス接続である。
【0012】
図2は、圧力トランスミッタ36の簡略化されたブロック図である。圧力トランスミッタ36は、データバス66を通して共に結合されたセンサモジュール52と電子回路基板72をと含む。センサモジュール電子回路60は、印加された差圧54を受ける差圧センサ56に結合する。データ接続部58は、センサ56をアナログ・ディジタル変換器62と結合させる。また、任意の温度センサ63が、センサモジュールメモリ64とともに図示される。電子回路基板72は、マイクロコンピュータシステム74(又はマイクロプロセッサ)、電子回路メモリモジュール76、ディジタル・アナログ変換器78及びディジタル通信ブロック80を含む。
【0013】
図2には、差圧センサ56をプロセス流体54と結合させるために用いられる毛管又は「充填」管93及び94がさらに図示される。隔離ダイヤフラム90は、プロセス流体54から、毛管93及び94内に運ばれる充填液に印加される圧力を受ける。この充填液を通して、工業用プロセスの圧力が差圧センサ56に印加される。
【0014】
図示された実施形態によれば、ライン圧センサ97及び98は、それぞれ毛管93及び94に結合し、毛管93及び94内の圧力をモニタするように配置される。ライン圧センサ97及び98は、圧力測定回路99に結合する。回路99は、たとえば、印加されたリンク圧力の関数として変化する、センサ97及び99の電気的パラメータに応答する回路を含むことができる。たとえば、圧力センサ97及び98は、周知の技術に従って動作することができ、センサ97及び98の電気容量が変化したり、センサ97及び98の電気抵抗が変化したり、センサの共振周波数が変化したりする等の圧力測定技術を含む。以下に1つの特定の構成がより詳細に述べられる。回路99は、スタンドアローン回路であることができ、又は、いくつかの構成では、差圧を測定するために用いられる他の回路に組み入れられてもよい。たとえば、各種のセンサをモニタするために用いられるコンポーネントのいくつか又はすべてが、共用のコンポーネントであってもよい。
【0015】
図3は、センサモジュール52及びトランスミッタ電子回路モジュール136を有する圧力トランスミッタ36の1つの実施形態を概略的に示す。センサモジュール52は、ハウジング152及びベース54を含み、その中にはセンサ基板156、差圧センサ56、隔離管93及び94、及び隔離ダイヤフラム90が配設されている。トランスミッタ電子回路モジュール136は、ハウジング164、カバー166、ディスプレイカバー168、出力インターフェイス170及びトランスミッタ回路172を含む。センサモジュール52は、ライン圧センサ97及び98、及び温度センサ175をさらに含む。圧力P1及びP2は、図1に示された配管30内の一次エレメント33のいずれの側でも生成される。
【0016】
センサ基板156及びセンサ56は、センサモジュール52のハウジング152内部に取り付けられる。センサモジュール52のハウジング152は、たとえばねじ接続を通して、電子回路モジュール136のハウジング164に接続する。同様に、カバー166及び168は、当技術分野で周知のように、ハウジング164内部から炎が漏れ出ることを防止する消炎シールを形成する螺合接続を通して、ハウジング164に接続する。出力インターフェイス170及びトランスミッタ回路172は、トランスミッタ電子回路モジュール136内のハウジング164に取り付けられ、図2に示される電子回路基板72を形成する。
【0017】
図示された実施形態では、センサ56は、一対の電極板の間に配設された検知ダイヤフラムを有する容量ベースの差圧セルである。1つの実施形態では、センサ56は、Frickらに対する米国特許番号第6、295、875号に記載されたような金属ダイヤフラムタイプのセンサであり、これはRosemount Inc., Eden Prairie, MNに譲渡されている。センサ56は、中に油圧用充填液が配設された隔離管93及び94によってベース54に接続されている。隔離ダイヤフラム90は、隔離管93及び94内部の充填液を、プロセス流体の圧力P1及びPから隔離させる。プロセス流体の圧力P1及びP2の変化は、センサ56によって、ベース54内部の隔離ダイヤフラム90及び隔離管93及び94内部の油圧用充填液を通して、差圧ΔPとして検知される。しかし、本発明はこの差圧測定構成に限定されない。
【0018】
前述の実施形態では、ライン圧センサ97及び98は、容量ベースの絶対圧力センサである。1つの構成では、センサ97及び98は、Sittlerらに対する米国特許番号6、484、585号及び関連する一連の出願に記載されたような容量性圧力センサであり、それらはすべてRosemount Inc., Eden Prairie, MNに譲渡されている。そのようなセンサは、高い圧縮強度を有する脆性の検知材料を用いる技術を含む。たとえば、脆性材料はサファイア等である。センサ97及び98は、隔離管93及び94内の充填液のライン圧P1及びP2をそれぞれ検知する。各々の圧力センサ97及び98によって検知された圧力は、互いに比較されて、センサ56によって検知された差圧ΔPの代わりに、又は差圧ΔPとの比較のために用いられることができる、差圧ΔPを表す信号を生成することができる。
【0019】
センサ56、97及び98は共に、単一のセンサ装置を有する差圧センサ機器、及び2つのセンサ装置を有するセンサ機器を含むセンサシステムを形成する。差圧センサ56と絶対圧力センサ97及び98とは、センサ基板156と電子的に通信する。センサ基板156は、センサケーブル176を通してトランスミッタ回路172と電子的に通信する。トランスミッタ回路172は、電子回路用ケーブル178を通して出力インターフェイス170と電子的に通信する。出力インターフェイス170は、トランスミッタ36を制御ループ38の配線に接続させる。本発明の別の実施形態では、トランスミッタ回路172、センサ基板156及び出力インターフェイス170の機能の実行が分散されて、所望のように異なって実施される。
【0020】
センサ56は、小さな差圧を正確に測定する。さらに、センサ97及び98は、絶対圧力を正確に測定する。センサ56は、ライン圧P1及びP2間の差異を直接測定する。センサ97及び98は、圧力P1及びP2をそれぞれ直接測定する。センサ97及び98からの出力間の差異を用いて、大きな差圧を判定するか、診断を行うか、センサ56等に較正を提供するか、又は他の機能を提供することができる。そして、センサ56、97及び98を用いて、多岐にわたる状況でライン圧及び差圧を検知することができる。
【0021】
図4は、より詳細に示されたセンサモジュール52の断面図である。図4に図示されるように、管93は、差圧センサ56に結合する曲げ部202を含む。さらに、管93は、ライン圧センサ97に結合する延長部200を含む。同じように、管94は、差圧センサ56に接続する曲げ部206と、ライン圧センサ98に結合する延長部204とを含む。
【0022】
図5は、ライン圧センサ97の一例の側面断面図である。図5の例では、ライン圧センサ97は、互いに接合されてその間にバキュームキャビティ224を形成する2つのサファイア基板220及び222で形成される。バキュームキャビティ224は、電気接続リード線226に結合する2つのコンデンサ板(図示せず)を含む。電気接続リード線226は、センサ基板156内の回路に接続する。ブレーズ(ロウ付け)バンド230が設けられて、センサ97を管93に結合するために用いられる。
【0023】
図6は、管93の延長部200に取り付けられたライン圧センサ97の断面図である。管93は、ニッケルで形成されて、実質的に非圧縮性の流体、たとえば油で充填されることができる。管93の延長部200は、内部に形成された、圧力センサ97を支持する開口部を含む。圧力センサ97は、たとえばブレーズ(ロウ付け)232を用いて、延長部200にシールされる。
【0024】
図2を再度参照すると、圧力センサ56、97及び98からのセンサ信号は、トランスミッタ36内の回路によって受信される。この回路は、たとえばセンサモジュール52内の、又は電子回路基板72上の回路を含む。たとえば、マイクロプロセッサ回路74は、ライン圧信号を処理して、トランスミッタ36に拡張させた機能を提供することができる。そのような拡張させた機能は、診断、拡張された測定レンジ、重複するセンサ測定、較正、さらなるプロセス変数、たとえば質量流量の算出等を含む。
【0025】
さらなるセンサの使用を用いて、装置が圧力を検出することが可能になる測定レンジを拡張することができる。たとえば、ライン圧センサ97及び98を用いて、圧力が圧力センサ56の上限測定レンジを超えた場合のプロセス流体の差圧を検知することができる。そのような構成は、圧力測定の精度を低減させることがあるが、場合によっては、この妥協が、増大された測定レンジを提供するために許容可能とされてもよい場合がある。このことは、流量及び差圧の両方を測定するために有用である可能性がある。
【0026】
さらなるセンサ97、98を用いて、センサ診断の提供に用いるための重複する差圧測定を可能にすることができる。たとえば、250水銀柱インチ未満の圧力で、センサ97、98を用いて差圧を測定し、重複する差圧測定を提供することができる。ラインセンサ97及び98を用いて測定された差圧は、差圧センサ56を用いて測定された差圧と比較されることができる。マイクロプロセッサ74は、これら2つの測定間のあらゆる差異に用いて、故障しているセンサを特定することができる。
【0027】
1つの構成では、さらなる絶対圧力センサ97及び98を用いて、差圧センサ56が故障しているか又は不正確な測定を提供している場合に差圧測定を提供する。この構成は、トランスミッタ36が、故障した機材が修理されるか又は交換されるまで、低減された精度を有する限定された(又は「リンプ」)モードで動作することを可能にする。マイクロプロセッサシステム74が、たとえば信号出力が提供されないことによってセンサ56が故障していることを検出した場合、マイクロプロセッサ74は、センサ97及び98からの出力に基づいて差圧を算出することができる。この算出された差圧は、遠隔位置に送信されることができる。送信は、任意には診断情報、たとえば、トランスミッタが「リンプ」モードで動作しているために、送信されたプロセス変数が低減された精度を有することを示す情報を含んでもよい。この構成は、修理が実施されることができるまで、工業用プロセスが、ことによっては低減された容量で動作を継続することを可能にする。
【0028】
別の構成では、診断は、絶対圧力センサ97、98上のマイクロプロセッサシステム74によって、差圧センサ56によって測定された差圧にもとづいて行われる。通常動作中、ライン圧センサ97、98の一方によって測定された圧力は、他方のライン圧センサ97、98によって測定された圧力と、差圧センサ56によって測定された差圧との間の差異と実質的に等しいはずである。同様に、さらなるラインセンサ97、98を用いて、インパルス配管の詰まり又は故障している一次エレメントを特定することができる。
【0029】
説明された実施形態では、2つの異なるタイプのセンサの使用を用いて、異なる周波数応答を有するセンサを提供することができる。たとえば、本明細書で説明された差圧センサ56で用いられる金属ダイヤフラムは、より高い周波数のプロセスノイズをろ過する傾向がある効果的なローパスフィルタを有する。一方、本明細書で説明されたサファイアベースのライン圧センサ97、98は、より高い周波数応答を有し、より早い応答時間での測定を提供することが可能である。この高周波数応答を用いて、差圧センサ56の両側におけるノイズ信号を測定することができる。これを用いて、拡張させたプロセス統計及び診断、たとえばプロセス中の詰まりのあるライン又は故障したコンポーネントの特定を提供することができる。また、ライン圧信号は、差圧センサ56を較正するために用いることができることに加えて、高いライン圧に起因するあらゆる変化に対する差圧測定を補償するために用いることができる。たとえば、上述の圧力センサ97及び98の構成は、長期間にわたって比較的安定した測定を呈する。センサ97及び98が比較的安定しているので、それらの測定を用いて、圧力センサ56によって提供される測定のドリフトを較正することができる。このように、マイクロプロセッサ74によって較正を行うことができる。別の例では、ライン圧センサ97及び98によって提供されるさらなる圧力測定を用いて、差圧センサ56の圧力測定に、マイクロプロセッサ74による正確なスパンライン圧補償を提供することができる。1つの構成では、2つの絶対圧力センサ測定の使用を用いて、差圧測定の変動をより正確に補償することができる。補償アルゴリズムは、マイクロプロセッサ74で実施することができる。
【0030】
1つの構成では、ライン圧センサ97及び98は、約5、000psiの測定レンジ上限を有する。センサ97、98は、装置内の任意の場所に置かれることができるが、填管93、94に関連する上述の場所は、都合のよい位置を呈する。本明細書で説明されたライン圧センサ97、98は、容量の変動にもとづいて動作するため、測定システムの各種の動作及びコンポーネント、たとえば図2に示された、同じく容量の変動にもとづいて動作する温度センサ63が、差圧センサ56と共有されてもよい。1つの実施形態では、温度センサは、センサ97及び/又は98内部に設けられる。これを用いて、それらの測定における温度の変動を補償することができる。さらに、基準コンデンサ(図示せず)をセンサ97及び/又は98に組み込んで、絶対圧力測定の精度をさらに向上させることができる。また、デュアル絶対ライン圧センサ97、98は、他のプロセス変数測定構成、たとえばセンサがひずみゲージと並行に位置付けられることができるインラインユニットで用いられてもよい。
【0031】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者においては、本発明の本質及び意図から逸脱することなく、形状及び詳細に変更がなされてよいことが認識されよう。ライン圧センサ97及び98は、任意の方法でP1及びP2に結合されることができ、本明細書に示された管構成に限定されない。上述された各種の機能は、任意の好適な回路を用いて組み込まれることができ、そのような機能の実施は、コンポーネント間で共有されることができ、同じ又は別個の回路を用いて実施されることができる。本明細書で用いられる場合、「トランスミッタ回路」は、トランスミッタ36内部の任意の回路を指す。本明細書で用いられる場合、「拡張させた機能」は、システム診断、コンポーネント診断、プロセス診断、拡張された動作レンジ、コンポーネントの較正、統計的なプロセス測定、及びコンポーネント故障発生時の限定された装置動作を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6