(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートあるいはロール巻取りシート状のカーボンである被蒸着体を絶縁支持体の上に載置あるいは移動させた状態で、かつ上面より金属板を前記被蒸着体に接触させて除電しながら、半導体、あるいは非導電体に不純物をドーピングした導電体の蒸着材であるシリコンを上方の真空アーク蒸着源から前記被蒸着体に飛翔して蒸着させ、
前記真空アーク蒸着源と前記被蒸着体の間にベーンフィルターなどの液滴やパーティクルを除去する機構が取り付けられており、
前記蒸着材であるシリコンの比抵抗が0.1Ωcm以下になるように前記不純物をドーピングさせている
微粒子形成装置。
シートあるいはロール巻取りシート状のカーボンである被蒸着体を絶縁支持体の上に載置あるいは移動させた状態で、かつ上面より金属板を前記被蒸着体に接触させて除電しながら、半導体、あるいは非導電体に不純物をドーピングした導電体の蒸着材であるシリコンを上方の真空アーク蒸着源から前記被蒸着体に向けて、ベーンフィルターなどの液滴やパーティクルを除去する機構を介して飛翔して蒸着させ、
前記蒸着材であるシリコンの比抵抗が0.1Ωcm以下になるように前記不純物をドーピングさせる
微粒子形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の微粒子形成装置及びその方法は、シートあるいはロール巻取りシート状カーボンである被蒸着体を絶縁支持体の上に載置あるいは移動させた状態で、かつ上面より金属板を前記シートに接触させて除電しながら上方から、半導体、あるいは非導電体に不純物をドーピングした導電体の蒸着材を前記被蒸着体に飛翔して蒸着させる。
上記真空アーク蒸着源と前記被蒸着体の間にベーンフィルターなどの液滴やパーティクルを除去する機構を取り付けてもよい。
シリコンターゲットの場合、電気伝導度および熱伝導度が金属ターゲットと比べ悪いため放電の際、シリコンターゲットのアークスポットよりシリコンの液滴あるいはパーティクルが発生しやすいため、これらの混入を嫌う場合には、これらの除去機構の設置が有効である。
【0017】
上記蒸着材は、例えばシリコンであり、上記被蒸着材は、例えばカーボン系粉体である。
上記蒸着材であるシリコンの比抵抗が0.1Ωcm以下になるように不純物をドーピングさせている。
このようなシリコンが蒸着されたカーボン系粉体は、電池の負極材に用いられる。
【0018】
本実施形態によれば、カーボン製の粉やロッド、シートなどの担持体にシリコンのナノ粒子を均一にかつ密着性よく蒸着できる。
【0019】
また、単一のカーボンシートあるいはロール状に巻かれたカーボンシートへのシリコンのナノ粒子の形成に際しては、これらのシートを絶縁物支持台の上に置くあるいは移動させ、かつシート上面では接地した金属板を接触させておく。真空アーク蒸発源は上方に配置する。
この状態で真空アーク蒸発源を放電させカーボンシートにプラズマを照射しナノ粒子を形成すれば、カーボンシート上面の電荷はシート上面に沿って金属板に逃げることができ、電荷の蓄積による絶縁破壊によるシートの穴あきを防ぐことが出来る。金属製支持台の場合は、コンデンサへの過電圧印加の場合と同様に、チャージアップによる絶縁破壊で電荷が金属製支持台に逃げるためカーボンシートの穴あきを防ぐことはできない。
出来ない。
【0020】
シリコンナノ粒子は、放電電圧が70Vでコンデンサ容量が360μF〜720μFの範囲で1nm〜4nmの範囲である。また放電電圧が100Vでコンデンサ容量が720μF〜1080μFで3nm〜5nmとなる。また放電電圧が150V〜20Vでコンデンサ容量が1800μFの場合は10nm〜20nmのシリコンナノ粒子が形成される。このようにシリコンのナノ粒子の大きさは放電電圧およびコンデンサ容量が大きいほど大きくなる傾向はあるが、数十nm程度の不定形のナノ粒子が多いのもシリコンターゲットの特徴である。
好適には、上記担体は、粒径1μm以上〜1mm以下のカーボン粉体である。カーボンの粉体は、任意のカーボン系粉体で構わない、グラファイト系であるバルカン、ケチェンブラック、グラフェン(例えば、3次元グラフェン)、カーボンナノチューブやフラーレン、カーボンコイル、グラファイトナノファイバ等であってもよい。
またあらゆる種類のカーボン系シートへの担持も可能である。また、ゲルマニウム等のその他の半導体等を用いてもよい。
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係わる微粒子形成装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、同軸型真空アーク蒸着5を用いた微粒子形成装置1の模式図である。
図1に示す微粒子形成装置1は、例えば、真空中の円筒容器である攪拌容器73に収納された担持体であるカーボン粉例えばバルカン(被蒸着体7)を攪拌しながら真空アークプラズマ発生装置3を用いて発生させた触媒金属であるナノ粒子(蒸着体:シリコン)のプラズマを上から照射し、アルミナ粉表面に触媒金属を担持させる。
図1に示す真空チャンバ2は、円筒状をしている。
真空チャンバ2内には、攪拌装置3および同軸型真空アーク蒸着源5が収納されている。
【0022】
[攪拌装置3]
攪拌装置3は、被蒸着体7を入れるための攪拌容器73と、被蒸着体7を攪拌するための固定羽根であるスクレーパ75a,75bと、攪拌過程で生じる被蒸着体7のダマ(塊)を潰すスタンプ85とを有する。
被蒸着体7は、例えば、粒径1μm以上〜1mm以下の粉体であるチタニアの粉(TiO225)である。
【0023】
攪拌容器73の下面の中心には、攪拌容器73をその中心軸80を中心に回転させる回転機構72が接続されている。
回転機構72は、固定テーブル71の下方に配置されている。
攪拌容器73の材質は、例えばステンレスであり、内壁(内側側面及び底面73a)はバフ研磨されている。攪拌容器73の上部開口部の径は例えば60〜300mmである。当該上部開口部は楕円形状でもよい。
攪拌容器73の内壁は、ステンレスである。
【0024】
図2は、微粒子形成装置1のスクレーパ75a,75bの機能を説明するための図である。
図2(A)は攪拌容器73の上部開放部側から見た平面方向におけるスクレーパ75a,75bの配置を説明するための図、
図2(B)はスクレーパ75aの側面方向から見た配置を説明するための図である。
図2(A)に示すように、攪拌容器73の周囲には、スクレーパ75a,75bが固定されている。
スクレーパ75a,75bは、例えばステンレスで製作されている。また、スクレーパ75a,75bは、直径1mm〜5mm程度の棒材で形成され、外側をテフロン(登録商標)チューブで被覆されている。
【0025】
スクレーパ75aは、攪拌容器73の上部開放部から攪拌容器73内に延び、攪拌容器73の底面73aの内周面付近に当接し、当該当接した箇所から底面73aに接触しながら内側に延びている。
また、スクレーパ75bは、攪拌容器73の上部開放部から攪拌容器73内に延び、底面73aの中心軸付近に当接し、当該した箇所から底面73aに接触しながら内周面に向けて延びている。
また、スクレーパ75bの先端と、スクレーパ75aとの間には、隙間76が形成されている。
【0026】
攪拌容器73内の被蒸着体7は、スクレーパ75bに衝突して隙間76に向けて(攪拌容器73の内周面に向けて)移動し、隙間76を介してスクレーパ75aに衝突して中心軸80に向けて移動する。被蒸着体7の一部は、スクレーパ75a,75bに衝突して、上向きに指向されて、それらを乗りい越えて移動する。
このように、スクレーパ75a,75bを構成することで、攪拌容器73内の被蒸着体7を中心軸80から内周面に向けて、内周面から中心軸80に向けて、並びに深さ方向に移動でき、効率的に攪拌することができる。
これにより、カーボン粉末上にシリコンを蒸着した場合には、
図3のヒストグラムのようなシリコンナノ粒子の粒度分布のヒストグラムを示す。
【0027】
また、スクレーパ75a,75bを駆動するのではなく、スクレーパ75a,75bを固定して攪拌容器73を回転させるため、駆動機構を簡単にすることができる。
【0028】
図4は、微粒子形成装置1のスクレーパ75a,75bおよびスタンプ85を説明するための図である。
図4に示すように、攪拌容器73の周囲には、スクレーパ75a,75bの他にスタンプ85が配置されている。
スタンプ85は、スクレーパ75a,75bによる攪拌過程で生じた被蒸着体(粉体状担体)7のダマを粉砕するために、攪拌容器73内の底面73aを叩くスタンプヘッド87と、スタンプヘッドを支持するアーム部89とを有する。
【0029】
スタンプ85は、攪拌容器73が中心軸80を中心に回転する過程で、スタンプヘッド87を攪拌容器73の底面73aに衝突させる第1の動作と、スタンプヘッド87を上記底面73aに接触した状態で保持する第2の動作と、スタンプヘッド87を上記底面73aから徐々に離す第3の動作とを繰り返す。
【0030】
図5に示すように、攪拌容器73の上部開口部の円状の縁部90は、斜めに切り欠けられており、中心軸80が延びる方向に滑らかに傾斜するスロープを形成している。
攪拌容器73の上部開口部の縁部90は、傾斜していない第1の縁部90aと、底面73aから離れる向きに滑らかに傾斜する第2の縁部90bと、段差90cとを有する。
段差90bは、例えば3〜20mmである。
【0031】
アーム部89は、攪拌容器73内に配置される側の一端にスタンプヘッド87を固定し、その他端は
図4および
図6に示すように、スタンプヘッド保持部93に固定されている。アーム部89の直径は、例えば1mm〜5mm程度である。
【0032】
アーム部89の長手方向の中央付近は、攪拌容器73の上部開口部の縁部90に当接している。アーム部89は、バネ95によって攪拌容器73の底面73aに向けて付勢されている。
これにより、アーム部89は、攪拌容器73が中心軸80を中心に回転する過程で、その中央部付近を縁部90に常に接触させている。
アーム部89は、上述した縁部90の段差90cで底面73aに向けて落下してスタンプヘッド87を底面73aに衝突させ、第1の縁部90aでスタンプヘッド87を底面73aに接触させた状態を所定期間保持する。その後、第2の縁部90bでスタンプヘッド87cと底面73aとを非接触状態にする。この動作は、攪拌容器73が中心軸80を中心に1回転する間に行われ、当該回転中、上述した第1、2、3の動作が繰り返し行われる。
【0033】
図7は、上述した中心軸80の回転中におけるスタンプヘッド87と攪拌容器73の底面73aとの距離の時間変化を説明するための図である。
図7に示すように、スタンプヘッド87と攪拌容器73の底面73aとは周期的に接触する。
すなわち、アーム部89が縁部90のスロープを登るにつれ、スタンプヘッド87は底面73a(床面)から徐々に上方に浮き上がる。
なお、攪拌容器73の被蒸着体7の深さ、並びにスタンプヘッド87の上下運動の移動量は、スタンプヘッド87が被蒸着体7の表面から出ないように設定される。
なお、攪拌容器73の回転数は、例えば、20〜100rpmである。
【0034】
スタンプヘッド87の先端87aは、例えば、
図8に示すように、攪拌容器73の底面73aから離れる向きに傾いている。これにより、攪拌容器73の回転に応じて被蒸着体7をスタンプヘッド87aに衝突させ、スタンプヘッド87と底面73aとの間に効率的に引き込むことができる。そのため、被蒸着体7のダマを完全に粉砕できる確率を高めることができる。
また、攪拌装置3では、スクレーパ75a,75bおよびスタンプ85のアーム部89の直径を非常に細くし、且つ、スタンプヘッド87が被蒸着体7の表面から出ないように設定されるため、同軸型真空アーク蒸着源5からのナノ粒子(蒸着体)が、スクレーパ75a,75bおよびスタンプヘッド87に衝突する量を少なくできる。
【0035】
微粒子形成装置1では、後述するようにパルスをトリガとして周期的に放電を行う。この放電の周期が短くなるに従ってダマが生じる量が多くなるため、攪拌容器73の回転速度を高めるように制御を行う。また、構造的理由から、スタンプ85の底面73aへの衝突周期は、攪拌容器73の回転速度に比例する。なお、攪拌容器73の回転開始してから所定時間経過後の攪拌容器73の回転速度を、当該所定時間内での回転速度に比べて早くしてもよい。
【0036】
[同軸型真空アーク蒸着源5]
同軸型真空アーク蒸着源5は、カソード電極に取付けられたシリコンで成る円柱状の蒸着材料11と、アルミナで成るハット状の絶縁碍子14(以下、ハット型碍子と呼ぶ)と、トリガ電極13とを有する。
カソード電極に取付けられた蒸着材料11と、ハット型碍子14と、トリガ電極13は同心円状に密着させて取り付けられている。
【0037】
アノード電極23は、ステンレスで成り、円筒状をしている。また、このアノード電極23は、カソード電極に取付けられた蒸着材料11と同心円状に取付けられている。
なお、同軸型真空アーク蒸着源5は、図示しない支柱と図示しない真空フランジを介して、真空チャンバ2の壁面に取付けられている。
【0038】
また、
図1中に簡易的な配線図で電源装置6を示す。
電源装置6は、トリガ電源31、アーク電源32、コンデンサユニット33を有する。
トリガ電源31は、パルストランスからなり、入力200VのμS単位のパルス電圧を約17倍に変圧して、3.4kV、数μS単位のプラス極性のトリガパルスを出力する。
【0039】
アーク電源32は、100V数Aの容量の直流電源であり、コンデンサユニット33に充電している。充電時間は約1秒必要とするので放電周期は1Hzとなる。
コンデンサユニット33は、720〜1800μF、耐圧100Vである。コンデンサユニット33は、アーク電源32により、100Vで充電される。
【0040】
トリガ電源31のプラス出力端子は、トリガ電極13に接続され、マイナス端子はアーク電源32のマイナス出力端子と同じ電位に接続され、さらにカソード電極に接続されている。コンデンサユニット33の両端子は、アーク電源32のプラスおよびマイナス端子間に接続されている。
【0041】
真空排気系9は、ターボ分子ポンプ51、仕切りバルブ52、ロータリポンプ53、調整バルブ54を有する。
ターボ分子ポンプ51からロータリポンプ53までは、金属製の配管で接続されており、真空チャンバ2内の真空排気を行っている。真空排気を行うことで、真空チャンバ2内は、10−4Pa以下に保たれている。
【0042】
以下、
図1に示す微粒子形成装置1の動作例を説明する。
[同軸型真空アーク蒸着源5の動作例]
アーク電源32により、100Vで電荷を充電しておく。ここで、コンデンサユニット33は、720〜1800μFとする。
トリガ電極13にトリガ電源31からの3.4kVのトリガパルスを印加し、カソード電極に取付けられた蒸着材料11とトリガ電極13の間に、ハット型碍子14を介して印加することで、ハット型碍子14表面で沿面放電が発生し、蒸着材料11とアノード電極23との間でコンデンサユニット33に蓄電された電荷が放電され、カソード電極に多量の電流が流入し、白金で成るカソード電極に取付けられた蒸着材料11が液相から気相、さらにシリコンのプラズマが形成される。
【0043】
この時、カソード電極に多量の電流(2000A〜5000A)が、200μS〜500μSの間に流れるので、カソード電極に取付けられた蒸着材料11に磁場が形成される。プラズマ中の電子が、カソード電極に取付けられた蒸着材料11の形成した磁場によるローレンツ力を受けて、同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行するようになる。
【0044】
プラズマ中の蒸着材料であるシリコンの原子状イオンは、分極することでクーロン力により、同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行する電子に引き付けられるようにして同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行するようになる。
【0045】
一方、プラズマ中の蒸着材料であるシリコンのイオンは、分極することでクーロン力により、同軸型真空アーク蒸着源5の前方へ飛行する。その結果、白金のイオンは、カーボンの粉7aを核にして成長し、ナノメートル単位の白金粒子が形成される。
【0046】
このようにシリコンの原子状イオンを照射しながら、カーボン粉体の粉をスクレーパ75a,75b上に攪拌容器73を回転させてカーボン粉体を攪拌する。これを継続して、カーボン粉に均一にシリコンのナノ粒子を形成する。
【0047】
さらに詳しくは、攪拌容器73の中のカーボンの粉7に向かって原子状シリコンイオンを照射する。ここで、攪拌容器73は回転機構72により回転しており、スクレーパ75a,75bによって、攪拌容器73内のカーボン等の被蒸着体7は攪拌される。
被蒸着体7は、スクレーパ75a,75bに衝突することにより、攪拌容器73の上に現れて白金イオンに曝される。これを次々と継続することによって、攪拌容器73内の全ての被蒸着体7の粒子に均一にシリコンの微粒子を形成するというものである。