(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のスコア線における前記パネルの破断によって、舌片状の部位が形成され、前記タブによって、当該舌片状の部位は、前記パネルのうちの当該タブが取り付けられている面とは反対側の面側に向かって曲げられ、
前記反対側の面側に向かって曲げられる前記舌片状の部位とともに、前記リベットが移動し、当該リベットが、当該反対側の面側に向かって移動することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の缶蓋。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される飲料缶100の上面図である。この飲料缶100は、上部に開口を有するとともに下部に底部を有し且つ筒状に形成された容器本体(缶胴)200と、容器本体200の開口に取り付けられ容器本体200の開口を塞ぐ缶蓋300とを有している。なお飲料缶100の内部には、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料などの飲料が充填(収容)されている。
【0012】
缶蓋300は、円盤状に形成され基板として機能するパネル400を有している。また缶蓋300は、ユーザにより操作されるタブ500を有している。タブ500は、パネル400に取り付けられ、ユーザにより操作されることでパネル400のうちの予め定められた箇所(詳細は後述)を押圧する。なお本実施形態における缶蓋300は、飲み口として機能する開口がパネル400に形成された後もタブ500がパネル400に取り付けられた状態を維持するいわゆるステイオンタイプの缶蓋である。ここで本実施形態では、タブ500は、パネル400の中央部(中心)からずれた位置に設けられたリベット900によってパネル400に固定されている。付言すると、タブ500は、パネル400に対して偏心した状態で設けられたリベット900によってパネル400に固定されている。なお本実施形態では、タブ500が、パネル400の中央部からずれた位置に設けられたリベット900によってパネル400に固定されている場合を一例に説明するが、タブ500は、パネル400の中央部に設けられたリベット900によってパネル400に固定することもできる。
【0013】
図2−1は、タブ500が取り付けられる前のパネル400の状態を示した正面図である。
パネル400は、上記のとおり円盤状に形成されている。またパネル400は、曲げ加工が施された外周縁410を有している。本実施形態では、この外周縁410と容器本体200の上縁部(不図示)とが互いに接触した状態で、この外周縁410および上縁部に対しいわゆる巻き締め加工が施される。これにより、パネル400が容器本体200の上縁部に固定される。またパネル400には、タブ500がパネル400に固定される際に押しつぶされ上述したリベット900となる突出部(ニップル)420が形成されている。ここでこの突出部420は、パネル400の中心部CPから外れた箇所に設けられている。
【0014】
また本実施形態では、パネル400の表面に、第1スコア線430が形成されている。この第1スコア線430は、パネル400の表面に形成された溝により構成されており、パネル400の破断(後述)を誘導する役割を果たす。付言すると、第1スコア線430は、パネル400の破断が予定されている破断予定線として捉えることができる。また第1スコア線430は、パネル400を正面から眺めた場合に略U字状に形成されている。さらに第1スコア線430は、パネル400の中心部CP側に一端部431および他端部432を有し、パネル400の外周縁(周縁)410側に頂部433Aを有している。
【0015】
ここで、第1スコア線430の一端部431は、パネル400の中心部CPとパネル400に形成された突出部420とを結ぶ第1仮想線CL1の一方側に配置されている。また他端部432は、第1の仮想線CL1を挟み上記一端部431が設けられている側とは反対側に設けられている。また、一端部431および他端部432が互いに離れた状態で設けられることによって、一端部431と他端部432との間には、第1スコア線430が設けられていない不連続部が設けられた状態となっている。この不連続部が設けられることによって、後述する舌片部がパネル400から離脱せず舌片部がパネル400に取り付いたままの状態となる。
【0016】
また、上記第1仮想線CL1と直交する仮想線であって突出部420を通る第2仮想線CL2を想定した場合に、上記一端部431および他端部432は、この第2仮想線CL2よりもパネル400の中央部CP側に設けられている。付言すると、
図1において、一端部431および他端部432は、リベット900よりも上方に設けられている。また上記第1仮想線CL1と直交する仮想線であってパネル400の中心部CPを通る第3仮想線CL3を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域内に頂部433Aが設けられ、他方の領域内に一端部431および他端部432が設けられている。さらに、この一方の領域内に、突出部420が設けられている。突出部420をこのように一方の領域内に設けた場合、突出部420をパネル400の中央部CPに設ける場合に比べ、舌片部(後述)を曲げる際に要する操作荷重が小さくなる。
【0017】
さらに説明すると、リベット900となる突出部420は、パネル400のうちの第1スコア線430により囲まれている部位であって、第1スコア線430の一端部431および他端部432よりも頂部433A側に位置する部位に設けられている。また第1スコア線430は、
図2−1に示すように湾曲部433を有している。この湾曲部433は、一端部431と他端部432とを結ぶとともに突出部420が設けられている側に膨らみ且つ突出部420よりもパネル400の外周縁410側を通るように設けられている。
【0018】
また湾曲部433は、第1仮想線CL1と交わる箇所に頂部433Aを有している。また本実施形態における缶蓋300では、パネル400のうち第1スコア線430により囲まれた領域内に、この第1スコア線430により囲まれた領域の剛性を高める補強用ビードHBが形成されている。また補強用ビートHBの一端部には、上方(飲料缶100の外側)に向かって突出しタブ500の先端により押圧されるエンボスEBが設けられている。このエンボスEBが設けられることによって、エンボスEBがない場合に比べ、第2スコア線450(詳細は後述)におけるパネル400の破断が生じやすくなる。
【0019】
ここで本実施形態では、ユーザによりタブ500が操作されることで、第1スコア線430により囲まれた領域がタブ500により押圧され、第1スコア線430が形成されている箇所にてパネル400の破断が生じる(詳細は後述)。これにより、第1スコア線430が形成されている領域が舌片状となり、且つ、この領域が飲料缶100の内部に向かって折れ曲がる。これにより、飲料缶100に飲み口としての役割を果たす開口が形成される。なお本明細書では、第1スコア線430にて生じる破断により形成される上記舌片状の部位を舌片部と称する場合がある。また本実施形態では、第2のスコア線450(詳細は後述)の湾曲部454(パネル400の破断が最初に生じる箇所)がパネル400の中央部CP側に寄せられて配置されている。このような場合、パネル400の外周縁410側にてパネル400の破断が最初に生じる場合に比べ、内部の飲料がこぼれにくくなっている。
【0020】
また本実施形態では、パネル400の表面に、第2スコア線450が形成されている。なおこの第2スコア線450も、パネル400の表面に形成された溝により構成されており、パネル400の破断を誘導する役割を果たす。第2スコア線450は、第2仮想線CL2を挟み相対する2つの領域のうちの、頂部433A(第1スコア線430の頂部433A)が設けられている領域内に設けられている。また第2スコア線450は、一端部451および他端部452を有している。ここで第2スコア線450の他端部452は、第1スコア線430の湾曲部433に接続されている。より具体的には、第1スコア線430の湾曲部433のうちの第1仮想線CL1と第2仮想線CL2との間に位置する部位に接続されている。
【0021】
一方で、第2スコア線450の一端部451は、突出部420の近傍に設けられている。さらに説明すると、第2スコア線450の一端部451は、第1仮想線CL1を挟んで相対する2つの領域のうちの一方の領域側に配置され、第2スコア線450の他端部452はこの2つの領域のうちの他方の領域側に配置されている。さらに説明すると、第2スコア線450は、他端部452から突出部420に向かう直線部453を有している。さらに、この直線部453に接続されるとともに円柱状に形成された突出部420との間に距離を有して配置され且つ突出部420に沿うように設けられた湾曲部454を有している。ここでこの湾曲部454は、突出部420と第1スコア線430との間に形成されている。より詳細には、第1スコア線430の頂部433Aと突出部420との間に形成されている。付言すると、第1仮想線CL1上において、突出部420と第1スコア線430との間に、第2スコア線450の湾曲部454が配置されている。
【0022】
ここで
図2−2(パネル400の状態を説明するための図)も参照しながら、タブ500が操作された際のパネル400の状態を説明する。なお、
図2−2では、パネル400を正面から眺めた場合の状態、および、パネル400を側方から眺めた場合の状態を図示している。
本実施形態では、タブ500の後端部がユーザにより持ちあげられた際、タブ500の先端部(タブノーズ)510(
図1参照)が、第2スコア線450の湾曲部454と第1スコア線430の頂部433Aとの間の領域RA(
図2−1の破線を参照)を押圧する。そして領域RAがタブ500により押圧されると、まず、この領域RAとリベット900(突出部420)との間を通過するように設けられた第2スコア線450の湾曲部454にてパネル400が破断する(
図2−2の(B)参照)。その後、第2スコア線450に沿って破断が進行し、第1スコア線430と第2スコア線450との接続部まで、パネル400が破断した状態となる。
【0023】
ここで本実施形態では、第1スコア線430と第2スコア線450との上記接続部にて、スコア線が分岐した状態となっている。このため、第2スコア線450の上記湾曲部454から上記接続部までパネル400の破断が進行した後、本実施形態では、
図2−2の(C)に示すように、接続部から頂部433Aを経て第1スコア線430の一端部431まで破断が進行する。また、
図2−2の(D)に示すように、接続部から第1スコア線430の他端部432に向かっての破断も進行する。これにより、第1スコア線430により囲まれていた領域が上述した舌片部となる。また、舌片部の根元(第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する箇所)にて舌片部は折り曲げられ、
図2−2(E)に示すように、舌片部は飲料缶100の内部に進入する。これにより飲料缶100には飲み口として機能する開口が形成される。なお詳細は後述するが、引き起こされたタブ500が元の状態に戻される際には、
図2−2(F)に示すように、タブ500が折れ曲がる。
【0024】
また本実施形態では、
図2−1に示すように、第1スコア線430の一端部431と他端部432との間に位置する領域に、溝600が設けられている。この溝600は、円弧を描き湾曲して形成されるとともに第1スコア線430の一端部431が設けられている側から他端部432が設けられている側に向かうように設けられている。付言すると、第2仮想線CL2(第3仮想線CL3)に沿うように設けられている。このため本実施形態における飲料缶100では、舌片部の折れ曲がりが生じやすくなっている。また本実施形態では、溝600が湾曲して形成されているため、曲がった舌片部が元の状態に戻りにくくなっている。なお溝600は必ずしも必要ではなく溝600は省略することもできる。
【0025】
次にタブ500について詳細に説明する。
図3および
図4は、タブ500を説明するための図である。また
図5は、ユーザによりタブ500が操作されパネル400に開口が形成された際の状態を示した図である。なお
図3(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)は同図(A)の矢印IIIB方向からタブ500を眺めた場合の図である。また、同図(C)はタブ500の裏面図である。付言すると、パネル400と対向する対向面側からタブ500を眺めた場合の図である。また同図(D)は、同図(A)の矢印IIID方向からタブ500を眺めた場合の図である。また
図4(A)はタブ500に設けられた伸長部(後述)を説明するための図であり、同図(B)はタブ500が引き起こされた際の状態を示した図である。
【0026】
本実施形態におけるタブ500は、
図3(A)に示すように、板状に形成され且つ矩形状に形成されたタブ本体部520を有している。なお本実施形態では、同図(D)に示すように、このタブ本体部520の外周縁に対して曲げ加工(カール加工)が施され、タブ本体部520の外周縁が内側にカールした状態となっている。付言すると、タブ本体部520に四方に設けられている縁部には、カール部が形成されている。これにより本実施形態のタブ500は曲げ剛性が高められている。さらにタブ500には、パネル400を押圧する先端部510が設けられている側とは反対側(タブテール側)に、ユーザの指が引っ掛けられる貫通孔(フィンガーホール)530が形成されている。
【0027】
またタブ500には、タブ500の先端部510側に、パネル400に設けられた突出部420(
図2−1参照)が挿入される挿入孔540が形成されている。さらに、タブ500の長手方向に沿った長穴550が、タブ500の先端部510側に形成されている。ここで、この長穴550は、タブ500の幅方向(長手方向と直交する方向)において、2つ並んだ状態で設けられている。なお本実施形態では、この2つの長穴550の間に挿入孔540が設けられている。また、挿入孔540よりもタブ500の後端側であって、上記2つの長穴550の間に位置する領域には、伸長部560が形成されている。なお伸長部560が設けられている箇所は、タブ500の後端側とリベット900(
図1参照)との間に設けられ、タブ500の後端側とリベット900とを接続する接続部として捉えることができる。
【0028】
ここで伸長部560では、
図4(A)に示すように、板状に形成された上記タブ本体部520(
図3(A)参照)に対して曲げ加工が施されており、伸長部560には、互いに交差する関係の第1片部561および第2片部562が設けられている。付言すると、伸長部560には、タブ本体部520を構成する板部材が屈曲した屈曲部が形成された状態となっている。ここで第1片部561は、タブ500の後端部に向かうに従いパネル400から離れるように配置されている。また第2片部562は、第1片部561に前端部が接続されタブ500の後端部に向かうに従いパネル400に接近するように配置されている。
【0029】
また
図3(A)を参照してタブ500についてさらに説明を行うと、タブ本体部520の四方に設けられた4つのカール部のうちタブ500の長手方向に沿って設けられたカール部には第1スリット521が形成されている。また4つのカール部のうちタブ500の長手方向に沿って設けられたもう一つのカール部には、第2スリット522が形成されている。さらに、タブ本体部520のうち第1スリット521と第2スリット522との間に位置する部位には、溝523が形成されている。
【0030】
ここで、第1スリット521、第2スリット522、溝523は、互いに接続され連続した状態で設けられている。また、第1スリット521、第2スリット522、溝523は、タブ500の幅方向に沿って設けられている。また、第1スリット521、第2スリット522、溝523は、挿入孔540と貫通孔530との間に配置されている。ここで本実施形態ではこのように第1スリット521、第2スリット522、溝523が形成されており、これらが形成された部分の剛性(曲げ剛性)が低下している。このため、
図3(B)に示すように、タブ500の後端部側に荷重を加えるとタブ500が折れ曲がるようになる。付言するとタブが屈曲するようになる。ここで本実施形態では、第1スリット521と第2スリット522との間に溝523を形成してこの部分の剛性を低下させたが、このような溝に限らず、例えば曲げ加工を施すことで剛性を低下させることができる。また溝523は必ずしも必要ではなく溝523は省略することもできる。なおタブ500のうち第1スリット521、第2スリット522、溝523が形成された部位は、剛性低下部として捉えることができる。
【0031】
次にタブ500が操作された際の各部の状態を説明する。
ユーザによりタブ500が操作される際には、タブ500の後端部とパネル400との間にユーザの指が挿入され、
図4(B)に示すように、タブ500が引き起こされる。ここでこの際、まず、第1片部561と第2片部562とにより形成された伸長部560が延びるようになる。付言すると、第1片部561と第2片部562とによって折れ曲がった状態にあった伸長部560が直線状となり、伸長部560が伸びるようになる。そして、伸長部560が伸びきると、伸長部560からリベット900に荷重が伝わるようになり、リベット900を上方に引っ張り上げようとする力がリベット900に作用する。
【0032】
その一方で、タブ500の先端部510がパネル400に接触しており、パネル400を下方に向かって押圧する力がパネル400に作用する。これにより、タブ500の先端部510とリベット900との間に位置する、第2スコア線450の湾曲部454(
図2−1参照)にて、パネル400の破断が発生する。その後、上記にて説明したように、第2スコア線450に沿って破断が進行し、次いで、第1スコア線430に沿って破断が進行する。これにより、第1スコア線430により囲まれていた領域に舌片部が形成される。また、第1スコア線430により囲まれていた領域に開口が形成される。
【0033】
また上記のように、伸長部560が伸び伸長部560からリベット900に荷重が伝わるようになると、
図4(B)の矢印4Aに示すような回転モーメントが舌片部に作用する。これにより、舌片部の根元を中心として舌片部が回転し、この根元にて舌片部の折れ曲がりが生じる。また、この折れ曲がりによって舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。さらに、舌片部の飲料缶100の内部への進入により、
図5(A)に示すように、タブ500の先端部側が飲料缶100の内部へ入り込む。
【0034】
なお
図5(A)は、タブ500が起立しパネル400とタブ500とが直交している状態を示している。その後、引き起こされたタブ500がユーザにより元の状態に戻されることとなるが、この際、上記にて説明した、第1スリット521、第2スリット522、および溝523にて、タブ500の折れ曲がりが生じるようになる。この結果、
図5(B)に示すように、タブ500の後端部側がパネル400に沿うようになる。その一方で、タブ500の先端部側は飲料缶100の内部に入り込んだ状態となる。
【0035】
ここで飲料缶100の直径を小さくしたい場合(パネル400が小さくなる場合)、第1スコア線430により囲まれた領域(開口となる領域、舌片部となる領域)とタブ500とを接近させて配置する必要が生じる。ところでこの場合、第1スコア線430により囲まれた領域とタブ500とが重なる領域の面積が大きくなる。また開口(飲み口)を大きくした場合にも、第1スコア線430により囲まれた領域とタブ500とが重なる領域の面積が大きくなる。ところでこの場合、内部の飲料が出にくくなったりしユーザは飲料を飲みにくくなる。このため本実施形態では、上記のように、タブ500のうち飲み口と重なる部分(舌片部と重なる部分)を飲料缶100の内部に入り込ませる構成としている。この場合、開口の面積が大きくなり、タブ500の先端側が飲料缶100の内部に入り込まない構成に比べ、ユーザは内部の飲料を飲みやすくなる。
【0036】
なお
図6(缶蓋300の他の構成例を示した図)に示すように、リベット900により固定される部位の周囲にスリット700が設けられたタブ500が使用されることも多い。ところでこのようなタブ500を
図2−1にて示したパネル400に取り付けた場合、スリット700が設けられているためにリベット900を上方に引き上げる力(引っ張る力)(
図4(B)の符号4B参照)はリベット900に働かず、
図4(B)の矢印4Aで示した回転モーメントはかからなくなる。そしてこの場合、舌片部の根元での舌片部の折れ曲がりが生じにくくなる。付言するとリベット900が設けられている箇所にて舌片部の折れ曲がりが生じるようになるが、舌片部の根元での舌片部の折れ曲がりは生じにくくなる。そしてこの場合、パネル400に形成される開口が小さいものとなってしまう。
【0037】
このため本実施形態では、タブ500のうちリベット900の後方に位置する部位と、このリベット900とを伸長部560で接続する構成としている。この構成によって、リベット900を上方に引き上げる力が大きくなり、舌片部に作用する回転モーメントが大きくなる。これにより、舌片部の根元にて舌片部の曲がりが生じ舌片部の全体が飲料缶100の内部に進入するようになる。
【0038】
なお伸長部を設けない構成であっても上記回転モーメントを大きくことができる。例えば、タブ500のうちのリベット900の後方に位置する部位と、このリベット900とを単に接続するだけでも、回転モーメントは大きくなる。しかしながらこの場合、タブ500を引き起こす際の操作性が低下してしまう。より具体的に説明すると、通常、タブ500を引き起こす際には、タブ500とパネル400との間に指が入れられたうえでタブ500の引き起こしが行われる。ところで、上記のように、リベット900の後方に位置する部位とリベット900とを接続した場合、タブ500の変位(タブ500の後端部の上方への変位)がリベット900により規制され、タブ500の変位が起こりにくくなってしまう。そしてこの場合、ユーザの指がパネル400とタブ500との間に入りこみにくくなり、タブ500を引き起こす際の操作性が低下する。
【0039】
このため本実施形態では、伸長部560を設ける構成としている。このように伸長部560を設けた場合、タブ500が予め定められた所定の角度となるまでは伸長部560が伸びるようになり、タブ500がこの予め定められた所定の角度(例えば60°)となるまで、タブ500の変位のリベット900による規制がなされにくくなる。そしてこのように規制がなされにくくなると、タブ500とパネル400との間に指が入りやすくなる。この結果、本実施形態の構成では、タブ500を引き起こす際の操作性の低下が抑制される。
【0040】
なお上記では、溝600(
図2−1参照)を湾曲させて形成したが、
図7(溝600の他の態様を示した図)の(A)に示すように、直線状に溝600を形成することもできる。また、直線状の溝600は、同図(B)に示すように複数本に分け分断した状態で設けることもできる。さらに同図(C)に示すように、複数本(本実施形態では2本)設けられた溝600間に、点状の凹部610を設けることもできる。なおこれらの態様では、溝600が湾曲している場合に比べ舌片部が元の状態に戻りやすくなるが、溝600が全く形成されていない場合に比べ、舌片部が曲がりやすくなる。付言すると、溝600が全く形成されていない場合に比べ、タブ500を引き起こす際に要する操作力が小さくなる。なお上記および下記では、溝600および凹部610が、飲料缶100の内部側に凹んでいる態様を説明するが、飲料缶100の外部側に凸となるように形成してもよい。
【0041】
また、直線状に設けられた2本の溝600は、
図8(溝600の他の態様を示した図)の(A)に示すように、同一の直線状に配置した状態ではなく、互いに交差する関係の2つの直線(不図示)の上にそれぞれ設けることができる。付言すると、2本の溝600をハの字状に配置することができる。なお
図8(A)では、2本の溝600の各々が、第1仮想線CL1から離れるに従い第2仮想線CL2に接近するように配置されているが、
図9(溝600の他の態様を示した図)の(A)に示すように、2本の溝600の各々は、第1仮想線CL1から離れるに従い第2仮想線CL2から離れるように配置することもできる。また2本の溝600を、
図8(B)、
図9(B)に示すように、接続して設けることもできる。さらに、
図8(C)、
図9(C)に示すように、2本の溝600の間に、点状の凹部610を設けることもできる。
【0042】
また
図8(A)に示した直線状の2本の溝600は、
図10(溝600の他の態様を示した図)の(A)に示すように、突出部420から離れる方向に向かって膨らむように湾曲した状態で形成することもできる。また、
図10(B)に示すように、突出部420から離れる方向に膨らむ2本の溝600の間に、点状の凹部610を設けることもできる。また、
図2−1では、突出部420から離れる方向に向かって膨らむ溝600を例示したが、
図11(溝600の他の態様を示した図)の(A)に示すように、溝600は、突出部420に接近する方向に向かって膨らむように形成してもよい。また
図9(A)に示した直線状に形成された2本の溝600は、
図11の(B)に示すように、突出部420が設けられている側に向かって膨らむように湾曲した状態で形成することもできる。また、
図11(C)に示すように、2本の溝600の間に、点状の凹部610を設けることもできる。
【0043】
なお溝600の形状に特に制限はないが、溝600は、
図12に示す形状で形成することができる。
図12は、溝600の形状の一例を示した図である。溝600は、例えば、同図(A)に示すように、パネル400の表面と略直交する関係を有する第1側面621、第2側面622、および、第1側面621と第2側面622とを接続する平坦な底面623とを有する形状で形成することができる。なお溝600の底部には、同図(B)に示すように曲率を付与してもよい。また溝は、同図(C)に示すように、断面が三角形となる形状で形成することもできる。なお、上記では、溝600を形成することで、舌片部の根元の剛性を低下させたが、同図(D)に示すように、曲げ加工を舌片部の根元に対して施すことで、剛性を低下させることもできる。
【0044】
次にパネル400の他の構成について説明する。
図13は、パネル400の他の一形態を示した正面図である。
本実施形態のパネル400では、上記にて説明した第2スコア線450は設けられていない。また本パネル400では、上記第1スコア線430に相当するスコア線460が設けられている。ここで、
図2−1にて示した第1スコア線430は、第1仮想線CL1を中心として線対象となる関係で形成されていたが、本実施形態におけるスコア線460は、線対象となる関係で配置されていない。
【0045】
ここで本実施形態におけるスコア線460は、上記第1スコア線430と同様に、一端部461および他端部462を有している。また、一端部461からスコア線460の頂部460Aにかけての形状は、上記第1スコア線430における一端部431から頂部433A(
図2−1参照)にかけての形状と同じとなっている。その一方で、頂部460Aから他端部462にかけての形状は、第1スコア線430の頂部433Aから他端部432にかけての形状とは異なっている。
【0046】
より具体的に説明すると、本実施形態におけるスコア線460の他端部462は、突出部420の近傍に設けられている。またこの他端部462は、第1仮想線CL1を挟んで相対する2つの領域のうち、一端部461が設けられている領域内に設けられている。そして本実施形態では、この他端部462を始点とし一端部461を終点としてスコア線460が延びている。より詳細に説明すると、他端部462を出発点として、スコア線460は、まず、突出部420と頂部460Aとの間を通過する。なお本実施形態では、スコア線460のうち他端部462と後述する屈曲部との間に位置する部位を、第2のスコア線として捉えることができる。
【0047】
その後、スコア線460は、突出部420の周囲を且つスコア線460の頂部460Aが設けられている側とは反対側に向かって進行していく。その後、スコア線460は、屈曲し、その進行方向を逆転する。より詳細に説明すると、突出部420から離れる方向且つパネル400の外周縁410に向かう方向に向かって円弧を描きながら進行する。さらにスコア線460は、スコア線460の頂部460Aに向かって進行していく。そして最後に、スコア線460は一端部461に到達する。なお、スコア線460のうち上記屈曲する部位を、本明細書では、以下「屈曲部」と称する。
【0048】
ここでタブ500が操作され飲料缶100に開口が形成される際には、上記と同様、スコア線460のうち突出部420とスコア線460の頂部460Aとの間に位置する部位にて、パネル400の破断が生じる。その後、パネル400の破断が、スコア線460の頂部460Aを経由してスコア線460の上記一端部461まで進行していく。これにより上記と同様、舌片部が形成され飲み口となる開口がパネル400に形成される。なお本実施形態のおけるスコア線460では、上記のとおり屈曲部が形成されている。このため、上記
図2−1にて示したパネル400の方が、
図13で示したパネル400よりも、パネル400の破断が進行しやすくなっている。
【0049】
次にタブ500の他の態様を説明する。
図14は、タブ500の他の一形態を示した図である。なお同図(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)は同図(C)のXIVB−XIVB線における断面図であり、同図(C)はタブ500の裏面図である。付言すると、同図(C)は、パネル400と対向する対向面側からタブ500を眺めた場合の図である。
【0050】
図14に示すタブ500では、同図(A)に示すように、タブ本体部520に対し、タブ500の幅方向(タブ500の長手方向と直交する方向)に延びるスリット580が形成されている。また本実施形態におけるタブ500では、同図(C)に示すように、タブ500の裏面側に位置し、タブ本体部520に対向する第1対向片581および第2対向片582が設けられている。ここで、第1対向片581は、タブ本体部520の縁部のうちタブ本体部520の長手方向に沿った縁部に接続されている。また、第2対向片582は、タブ本体部520の縁部のうちタブ本体部520の長手方向に沿った他方の縁部に接続されている。また本実施形態では、第1対向片581および第2対向片582に対し、タブ500の幅方向に延びる溝583が形成されている。
【0051】
ここで本実施形態では、同図(B)の矢印14Aに示す方向にタブ500が引き起こされる。これによりパネル400に開口が形成されるとともに、この開口を通じ飲料缶100の内部にタブ500の先端部510が進入する。その後、矢印14Bに示すように、タブ500が戻される操作が行われると、スリット580が設けられている箇所にて、タブ500は、先端部510側と後端部590側とに分割される。また、溝583が設けられている箇所にてタブ500の曲がりが発生する。これにより、タブ500は、折れ曲がった状態となる。そしてこの場合、上記と同様、タブの先端部510側が飲料缶100の内部に入り込んだ状態となる。これにより、飲み口とタブ500との重なりが抑制される。
【0052】
次にタブ500に設けられた伸長部560の他の構成例を説明する。
図15は、タブ500の伸長部560の他の構成例を示した図である。なお
図15(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)は同図(A)の矢印XVB方向からタブ500を眺めた場合の図である。また、同図(C)はタブ500の裏面図である。付言すると、パネル400と対向する対向面側からタブ500を眺めた場合の図である。また同図(D)は、同図(A)の矢印XVD方向からタブ500を眺めた場合の図である。なお、上記にて説明した実施形態と同様の機能については、同様の符号を用いここではその説明を省略する。
【0053】
図15にて示す伸長部560には、同図(A)に示すように、第1伸長部565と第2伸長部566とが設けられている。ここで、第1伸長部565は、タブ500の幅方向においてタブ500の一方の縁部側に設けられ、第2伸長部566は、タブ500の他方の縁部側に設けられている。なお第1伸長部565および第2伸長部566は同様に構成されているため、以下では第1伸長部565について説明する。
【0054】
第1伸長部565は、リベット900(
図1参照)によってパネル400に固定される固定片565Aを備えている。また第1伸長部565は、固定片565Aよりもタブ500の周縁部側に位置し且つタブ500の長手方向に沿って設けられ一方の端部(タブ500の後端部側に位置する端部)が固定片565Aに接続された第1片部565Bを有している。さらに、第1片部565Bよりもタブ500の周縁部側に位置し且つタブ500の長手方向に沿って設けられるともに一方の端部(タブ500の先端部側に位置する端部)が第1片部565Bに接続された第2片部565Cを有している。なお、この第2片部565Cの他方の端部は、タブ500の周縁部に接続されている。
【0055】
また本実施形態におけるタブ500では、固定片565Aと第1片部565Bとの間、第1片部565Bと第2片部565Cとの間、第2片部565Cとタブ500の周縁部との間に、スリット567が形成されている。またタブ本体部520のうち固定片565Aよりもタブ500の後端部側に位置する部位(以下、「後端側部位」と称する)と、この固定片565Aとの間にもスリット568が形成されている。さらに、後端側部位と第1片部565Bとの間、後端側部位と第2片部565Cとの間にもスリット568が形成されている。
【0056】
ここでタブ500の引き起こしがユーザによりなされると、
図16(引き起こし操作がなされた際のタブ500を示した図)に示すように、タブ500の後端部側が上方へ移動する。そしてこの移動によって、伸長部560が伸長する。より具体的に説明すると、固定片565Aと第1片部565Bとの間、第1片部565Bと第2片部565Cとの間、および、第2片部565Cとタブ本体部520の周縁部との間に形成された上記スリット567にて、タブ500を構成する板材の破断が発生する。また、上記後端側部位と固定片565Aとの間、後端側部位と第1片部565Bとの間、後端側部位と第2片部565Cとの間においても破断が発生する。この結果、伸長部560は、
図16に示すように、ひも状に伸長する。そして伸長部560の伸長が終了すると、舌片部に作用する回転モーメントが大きくなり、舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。
【0057】
図17は、伸長部560の他の一形態を説明するための図である。なお同図(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)は同図(A)の矢印XVIIB方向からタブ500を眺めた場合の図である。また、同図(C)はタブ500の裏面図である。付言すると、パネル400と対向する対向面側からタブ500を眺めた場合の図である。また同図(D)は、同図(A)の矢印XVIID方向からタブ500を眺めた場合の図である。なお、上記にて説明した実施形態と同様の機能については、同様の符号を用いここではその説明を省略する。
【0058】
図17に示す伸長部560には、上記と同様に、固定片565A、第1片部565B、および、第2片部565Cが設けられている。ここで本実施形態における第1片部565Bは、タブ500の幅方向に沿うように設けられている。また、第2片部565Cもタブ500の幅方向に沿うように設けられている。また第1片部565Bは固定片565Aよりもタブ500の後端部側に設けられ、第2片部565Cは第1片部565Bよりもタブ500の後端側に設けられている。また、固定片565Aと第1片部565Bとの間、第1片部565Bと第2片部565Cとの間、第2片部565Cと上記後端側部位との間には、スリット569が形成されている。
【0059】
ここで、タブ500の引き起こしがユーザによりなされた場合、上記と同様、
図18(引き起こし操作がなされた際のタブ500を示した図)に示すように、タブ500の後端部が上方へ移動する。そしてこの移動によって、伸長部560が伸長する。より具体的に説明すると、固定片565Aと第1片部565Bとの間、第1片部565Bと第2片部565Cとの間、第2片部565Cと後端側部位との間に形成されたスリット569にて、タブ500を構成する板材の破断が発生する。この結果、伸長部560が
図18に示すように、ひも状に伸長する。そして伸長部560の伸長が終了すると、上記と同様に、舌片部に作用する回転モーメントが大きくなり、舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。
【0060】
また伸長部560は、
図19(伸長部560の他の一形態を説明するための図)に示すように構成することができる。なお同図(A)はタブ500の正面図であり、同図(B)は同図(A)の矢印XIXB方向からタブ500を眺めた場合の図である。また、同図(C)はタブ500の裏面図である。付言すると、パネル400と対向する対向面側からタブ500を眺めた場合の図である。また同図(D)は、同図(A)の矢印XIXD方向からタブ500を眺めた場合の図である。なお、上記にて説明した実施形態と同様の機能については、同様の符号を用いここではその説明を省略する。
【0061】
図19に示す伸長部560は、同図(B)に示すように、タブ本体部520の裏面(パネル400と対向する対向面)から突出する第1突出片555、第1突出片555よりもタブ500の先端部側に位置し同じくタブ本体部520の裏面から突出する第2突出片556、タブ本体部520の裏面との間に間隙を有して配置され第1突出片555の端部と第2突出片556の端部とを接続する接続片557とを有している。ここで本実施形態では、接続片557に対し、突出部420(
図2−1参照)が挿入される挿入口540が形成されている。なおこの挿入口540は、第2突出片556が設けられた側に寄った状態で配置されている。また本実施形態では、第1突出片555と接続片557とが互いに交差(直交)する関係で配置されることによって、第1突出片555および接続片557が設けられている箇所に、タブ本体部520の一部が屈曲した屈曲部が形成された状態となっている。
【0062】
ここでタブ500の引き起こしがユーザによりなされた場合、
図20(引き起こし操作がなされる際のタブ500の状態を示した図)の(A)の状態から(B)に示す状態にタブ500は変位する。より具体的に説明すると、タブ500の後端部側が上方に向かって移動するとともにタブ500の先端部側が下方に向かって移動し且つこの先端部側がパネル400に接触する。そしてこのタブ500の先端部側のパネル400に対する接触により、パネル400に開口が形成される。また、タブ500の後端部側が上方に向かって移動する際には、第1突出片555と接続片557とにより形成された上記屈曲部が直線上となる。即ちこの場合も、伸長部560が伸長するようになる。そしてこの伸長によって、上記と同様、舌片部に作用する回転モーメントが大きくなり、舌片部が飲料缶100の内部に進入していく。