特許第5923622号(P5923622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923622
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】フタレート非含有ZNPP触媒の製造
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20160510BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/00
【請求項の数】10
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2014-549424(P2014-549424)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-503647(P2015-503647A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2012076117
(87)【国際公開番号】WO2013098149
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】11196162.9
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】デニフル ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】レイノネン ティモ
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−527271(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01484345(EP,A1)
【文献】 特開平03−294319(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02202247(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0135354(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02415790(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60−4/70
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子形態のオレフィン重合触媒成分を製造する方法であって、
(a)
(a)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)の溶液を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、マグネシウム化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
又は
(a)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)及び少なくとも第2のアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物の溶液を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、マグネシウム化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物であり、前記第2のアルコキシ化合物(Bx)が、マグネシウム化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、及び
(b)前記溶液を少なくとも1種のチタン化合物に添加する工程、及び
(c)前記固体触媒成分粒子を製造する工程
を有し、ベンゾエート、アルキレングリコールジベンゾエート、マレエート、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジアルキルエステル及び1,3−ジエーテルから選択される内部電子供与体、又は任意の選択された供与体の混合物、又は対応する前駆体が、工程(c)の前の任意の工程で添加される、上記方法。
【請求項2】
前記内部供与体が、
(a)式(I)のベンゾエート
【化1】
(式中、Rは、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキル基であり、
R’は、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキル基であり、前記アルキル基は、O、N又はSから選択される1又は2以上のヘテロ原子をアルキル鎖中に含むことができ、又は、=O、ハロゲン、又は置換されていてもよいC〜C14アリールから選択される1又は2以上の置換基により置換されることができる。)、
(b)エチレングリコールジベンゾエート、1,2−プロピレングリコールジベンゾエート及び1,3−プロピレングリコールジベンゾエートからなる群より選択されるアルキレングリコールジベンゾエート、
(c)式(III)のマレエート
【化2】
(式中、R及びRは、同じであるか又は異なり、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキル基であり、
Rは、H又は直鎖状、分枝状若しくは環状C〜C12アルキルである。)、
(d)式(IV)の1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジアルキルエステル
【化3】
(式中、R及びRは、同一であるか又は異なることができ、直鎖状又は分枝状C〜C20アルキルであることができる。)、
(e)式(V)又は(VI)の1,3−ジエーテル
【化4】
(式(V)及び(VI)において
及びRは同じであるか又は異なり、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキルであることができ、又は、RはRと、及び/又はRはRと、4から6個のC原子を有する環を形成することができ、
式(V)のR及びRは同じであるか又は異なり、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキルであることができ、又は、R及びRは一緒に、5から10個のC原子を有する環を形成することができ、前記環は、9から20個のC原子を有する脂肪族又は芳香族の多環系の一部であることができ、
式(V)中のR及びRは同じであるか又は異なり、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキルであることができ、又は、一緒に、5から8個のC原子を有する脂肪族環を形成することができ、
式(VI)中のR51、R61及びRは同じであるか又は異なり、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキルであることができ、又は、R51、R61及びRの2つ又は3つは、C〜Cと一緒に、6から14個のC原子を有する芳香族環又は環系を形成することができる。)
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)においてa)のアルコキシ化合物混合物の溶液が使用され、アルコール(A)及び(B)が、6:1から1:6のモル比で用いられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルコール(B)がC〜Cグリコールモノエーテルであり、エーテル基が2から18個の炭素原子を有する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
固体粒子形態のオレフィン重合触媒成分の製造が、
(a1)
(a1−1)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)と請求項1又は2に記載の電子供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体(OM1)中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、マグネシウム化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
又は
(a1−2)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)及び少なくとも第2のアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物と、請求項1又は2に記載の電子供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体(OM1)中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、マグネシウム化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物であり、前記第2のアルコキシ化合物(Bx)が、マグネシウム化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
(b1)前記溶液(S1)を少なくとも1種のチタン化合物(CT)と合わせる工程、及び
(c1)固体粒子形態の前記触媒成分を沈澱させる工程、及び
(d1)オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子を回収する工程
を有する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(b1)における少なくとも1種のチタン化合物(CT)への溶液(S1)の添加が、50から110℃の温度範囲で行われ、この温度で、前記少なくとも1種のチタン化合物(CT)が液体形態であり、前記添加が前記固体触媒成分の沈澱をもたらし、界面活性剤が工程(a1)又は工程(b1)において添加され得る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶液(S1)を、液体形態の少なくとも1種のチタン化合物(CT)と−20℃から30℃の温度で混合し、続いて温度を50から110℃の温度範囲までゆっくりと上げることにより固体触媒成分を沈澱させ、温度上昇の速度が毎分0.1℃から30℃までの範囲内であり、界面活性剤が、工程(b1)の前に溶液(S1)に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
固体粒子形態の触媒成分の製造が、
(a2)
(a2−1)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)と請求項1又は2に記載の電子供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、マグネシウム化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、又は
(a2−2)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)及び少なくとも第2のアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物と、請求項1又は2に記載の電子供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、マグネシウム化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物であり、前記第2のアルコキシ化合物(Bx)が、マグネシウム化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
(b2)前記溶液(S1)を、少なくとも1種のチタン化合物に添加して、分散相が液滴の形態であり、前記分散相が、50mol%を超えるマグネシウムをアルコキシ化合物中に含有するエマルジョンを生成させる工程、
(c2)前記エマルジョンを撹拌して、前記分散相の液滴を2から500μmの前記所定の平均径範囲内に維持する工程、
(d2)分散相の前記液滴を凝固させる工程、
(e2)オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子を回収する工程
を有する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
連続的に行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
〜C10α−オレフィンを、任意にC〜C12モノマーから選択されるコモノマーと重合させるための、請求項1に記載の触媒成分の粒子、及び共触媒、及び任意に外部電子供与体を含む、オレフィン重合触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な粒子状オレフィン重合触媒成分の製造のための新規な方法、並びに重合プロセスにおいて使用される触媒を製造するための前記新規な触媒成分の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(ZN)タイプのポリオレフィン触媒は、ポリマー分野においてよく知られており、一般に、(a)周期表(IUPAC、Nomenclature of Inorganic Chemistry、1989)の第4族から第6族の遷移金属化合物、周期表(IUPAC)の第1族から第3族の金属化合物、並びに、任意に、周期表(IUPAC)の第13族の化合物及び/又は内部供与体化合物から形成される少なくとも1種の触媒成分を含む。ZN触媒はまた、(b)共触媒及び/又は外部供与体等のさらなる触媒成分を含んでもよい。
【0003】
現在の技術水準において、ZN触媒を製造するための様々な方法が公知である。公知の方法の1つにおいて、担持型ZN触媒系は、触媒成分を粒子状支持体材料に含浸させることにより製造される。WO−A−0155230において、触媒成分は、多孔質の、無機又は有機の粒子状担体材料、例えばシリカ等に担持されている。
【0004】
周知のさらなる方法において、担体材料は、触媒成分の1つ、例えば、MgCl等のマグネシウム化合物をベースとしている。このタイプの担体材料もまた、様々な方法で形成することができる。Japan OlefinsのEP−A−713886は、アルコールを用いてMgCl付加物を形成し、次いでこれを乳化し、最後に、結果として生じる混合物を急冷して液滴の凝固を引き起こすことを記載している。
【0005】
あるいは、BPのEP−A−856013は、Mg成分含有相を連続相に分散させ、この2相混合物を液体炭化水素に添加することにより分散したMg相を凝固させる、固体Mg系担体の形成を開示している。
【0006】
形成された固体担体粒子は通常、遷移金属化合物、及び、任意に活性触媒を形成するための他の化合物で処理される。
【0007】
したがって、外部担体の場合、そのいくつかの例が上記に開示されているが、担体のモルフォロジーは、最終的な触媒のモルフォロジーを決定する要因の1つである。
【0008】
支持触媒系で直面する不利な点の1つは、支持体材料上の触媒活性化合物の分布が、支持体粒子のきめ細かさ(compactness)、空隙率及び細孔径分布といった支持体粒子構造に高度に依存することである。結果として、このことにより、しばしば、触媒粒子内での活性成分の分布が不均一となることがある。触媒粒子中での活性部位の一様でない分布の結果として、別々の粒子間の粒子間不均質性に加えて粒子内不均質性を有する触媒が得られ、これは最終的に不均質なポリマー材料をもたらす。
【0009】
さらに、支持体材料は、最終的なポリマー中に残渣として残存し、これはいくつかのポリマー用途において有害である可能性がある。
【0010】
WO−A−0008073及びWO−A−0008074は、Mg系化合物及び1又は2種以上のさらなる触媒化合物の溶液を形成し、この系を加熱することによりそれらの反応生成物を前記溶液から沈澱させる、固体ZN触媒を製造するためのさらなる方法を記述している。さらに、EP−A−926165は、MgCl及びMgアルコキシドの混合物をTi化合物と一緒に沈澱させてZN触媒を得る、別の沈澱法を開示している。
【0011】
US2005/0176900によれば、マグネシウム化合物、アルコール、エーテル、界面活性剤及びアルキルシリケートをまず反応させて触媒支持体を得、次いでこれを、チタン化合物とさらに反応させる。沈澱により固体チタン触媒成分が得られる。この触媒成分は、多種多様な化合物から選択することができる内部供与体をさらに含む。
【0012】
WO03/000757並びにWO03/000754は、固体触媒粒子を生成するためにいかなる外部担体材料も使用せず、従来の沈澱法も使用しないが、いわゆる乳化−凝固法を使用して、遷移金属と一緒に第2族金属を含む触媒成分の固体粒子の製造を可能にする、オレフィン重合触媒成分の製造方法を記述する。この方法においては、エマルジョンが形成されるような方法及び化学物質を使用して、フタレートタイプの内部電子供与体が、触媒製造中にその場(in situ)で製造される。エマルジョンの分散相の液滴が触媒成分を形成し、液滴を凝固させることにより固体粒子状触媒となる。
【0013】
WO2004/029112は、WO03/000757並びにWO03/000754に記載されたエマルジョン−凝固法のさらなる変法を開示しており、すなわち、特定のアルミニウムアルキル化合物を触媒成分と接触させることにより、より高温である程度の活性増大を可能とすることをさらに特徴とする、オレフィン重合触媒成分の製造方法に関する。
【0014】
したがって、チーグラー・ナッタ触媒の分野において多くの開発研究が行われてきたが、望ましい特性を有するZN触媒を製造する代替の又は改良された方法が依然として必要である。
【0015】
よって、触媒粒子の所望の特性、すなわち所望のモルフォロジー及び/又は粒子径に応じて、沈澱又はエマルジョン/凝固法のような様々な方法での前記固体触媒成分の形成を可能にし、触媒製造中にゲル様物質が形成されず、また製造された触媒が、メルトフローレート、キシレン可溶性成分含量等のような、所望のポリマー特性をもたらす、固体オレフィン重合触媒成分の製造方法が利用できれば、非常に有利であろう。プロピレン−エチレンランダムポリマーが製造される場合、ランダム性は、ポリマー特性に影響を及ぼす本質的な特徴の1つである。
【0016】
本発明のさらなる側面は、健康並びに環境的側面に関して潜在的な有害化合物と考えられる物質の使用をできる限り回避するという要望である。潜在的な有害化合物と考えられている物質のクラスの1つはフタレートであり、これは、チーグラー・ナッタタイプの触媒において内部電子供与体として一般的に使用されてきた。触媒において内部供与体として使用されるこれらのフタレート化合物の量は、最終的なポリマーにおいて非常に少ないが、フタレート化合物にとって代わる代替化合物を見いだしつつ、なお良好な活性、所望のポリマー特性をもたらす優れたモルフォロジーを有する触媒を得ることが望ましい。
【0017】
非フタレート供与体の使用自体は、ZN触媒において新規ではない。しかしながら、そのような供与体は、外部担体に触媒成分を担持することにより製造される触媒において主に使用される。そのような触媒の欠点は上記した通りである。
【0018】
この触媒製造方法におけるエマルジョン形成は非常に繊細な側面を有しているため、供与体又は供与体前駆体を変えるだけではエマルジョンを形成することはこれまで不可能であった。また沈澱挙動も、Mg錯体の形成によりMg化合物の溶解性に影響を与えることにより、使用される供与体から大きく影響を受ける。
【0019】
よって、両方の方法について、選択された供与体に応じたエマルジョン形成、沈殿の条件は、当業者にとって自明ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、所望の化学組成及び粒子径を有する触媒成分を提供することが本発明の目的の1つである。加えて、触媒成分は所望のモルフォロジーを有する。
【0021】
したがって、異なる方法(例えば、沈澱又はエマルジョン/凝固法)でありながら共通の機構での触媒成分の形成を可能とし、さらに内部電子供与体としてフタレートを使用する必要がなく、所望のポリマー特性を有するポリマーを製造するのに適している所望の化学組成、モルフォロジー及び粒子径の触媒成分をもたらす、固体触媒成分の製造方法を提供することが本発明のさらなる目的の1つである。
【0022】
さらに、オレフィン重合において使用するための本明細書において記載されている触媒を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
驚くべきことに、これらの目的は、一価アルコール(A)及びアルコール(B)を含むアルコール混合物であって、前記アルコール(B)が、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有する、上記アルコール混合物を固体触媒成分の製造中に使用することにより解決することができた。
【0024】
驚くべきことに、触媒成分の製造中にそのようなアルコール混合物を使用することにより、そのような混合物を使用せずに製造された他のZN触媒と比較して触媒活性の顕著な増大を示す触媒が得られることが見いだされた。
【0025】
本発明の記述
したがって本発明は、請求項1に規定するオレフィン重合触媒成分を製造する方法を提供する。
【0026】
よって、本発明は、固体粒子形態のオレフィン重合触媒成分を製造する方法であって、
(a)
(a)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)の溶液を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、第2族金属化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
又は
(a)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)及び少なくとも第2のアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物の溶液を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、第2族金属化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物であり、前記第2のアルコキシ化合物(Bx)が、第2族金属化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、及び
(b)前記溶液を少なくとも1種の遷移金属化合物に添加する工程、及び
(c)前記固体触媒成分粒子を製造する工程
を有し、ベンゾエート、アルキレングリコールジベンゾエート、マレエート、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,3−エーテルから選択される内部電子供与体、又は任意の選択された供与体の混合物、又は対応する前駆体が、工程(c)の前の任意の工程で添加される、上記方法を提供する。
【0027】
好ましい実施形態を従属請求項並びに以下に記述する。さらに、本発明は、本発明により得ることができる触媒成分、さらにオレフィン重合における当該触媒成分の使用を提供する。
【0028】
本発明を、特に好ましい実施形態を参照して以下により詳細に記載する。固体触媒が、フタレート化合物を使用する必要なく、液/液2相(エマルジョン)系−凝固法により、又は沈澱法により製造することができ、所望の物理的特性、例えば、とりわけ所望のモルフォロジー特性及び/又は所望の粒子径及び粒子径分布を有する触媒粒子をもたらすことは、すべての実施形態において必須である。
【0029】
驚くべきことに、実施形態において所望のモルフォロジー及び/又は粒子径及び/又は粒子径分布並びに高い活性を有する触媒成分粒子が、オレフィン重合における使用、特にプロピレン重合に適するチーグラー・ナッタ(ZN)タイプの触媒を製造するエマルジョン−凝固又は沈澱法により、フタレートの使用を必要とすることなく得ることができることが本発明の発明者らにより見いだされた。レプリカ効果により、本発明の触媒を使用することにより製造されるポリマー粒子は、所望のモルフォロジー特性も有する。
【0030】
本発明の触媒製造は、固体触媒粒子を得るために別個の外部担体材料、例えばシリカ又はMgClを必要としない、液/液2相系(エマルジョン/凝固法)又は沈澱法に基づいている。
【0031】
固体触媒粒子を製造するこの方法は、触媒成分の形成が、a)少なくとも1種のアルコキシ化合物(Ax)の使用であって、前記少なくとも1種のアルコキシ化合物(Ax)が、少なくとも1種の第2族金属化合物と、一価アルコール(A)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との反応生成物である、上記使用、又はa)少なくとも1種のアルコキシ化合物(Ax)及びアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物の使用であって、前記少なくとも1種のアルコキシ化合物(Ax)が、少なくとも1種の第2族金属化合物と一価アルコール(A)との反応生成物であり、前記アルコキシ化合物(Bx)が、第2族金属化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との反応生成物である、上記使用を有することを特に特徴とし、上記方法はさらに、フタレート非含有内部電子供与体が触媒製造自体に使用されるか、又はその場(in situ)で形成されることを特徴とする。
【0032】
アルコキシ化合物混合物を使用する変形(a)が特に好ましい。
【0033】
アルコキシ化合物(Ax及びBx)は、前記第2族金属化合物を上記のアルコール又はアルコール混合物と反応させることにより触媒製造方法の第1工程においてその場(in situ)で製造することができ、又は前記アルコキシ化合物は、別個に製造された反応生成物であってもよく、又はそれらはさらに、既製の化合物として市販されているものでもよく、本発明の触媒製造方法においてそのまま使用することができる。
【0034】
少なくとも1種の第2族金属化合物及び上記で規定したアルコール又はアルコール混合物からのアルコキシ化合物(Ax又はBx)の製造中に、供与体又は供与体前駆体を反応混合物に添加することができ、これにより第2族金属錯体(錯体Ac又はBc)が形成され、これは、本出願において、少なくとも第2族金属化合物、アルコール又はアルコール混合物及び供与体の錯体であると規定されるものである。
【0035】
いかなる供与体も供与体前駆体も使用せずにアルコキシ化合物(Ax)及び/又は(Bx)を形成する場合、供与体自体を、反応生成物溶液に別個に又は触媒成分の製造中に添加する。
【0036】
第2族金属化合物は、第2族金属ジアルキル、アルキル第2族金属アルコキシド、アルキル第2族金属ハライド及び第2族金属ジハライドを含む群より、好ましくはそれらからなる群より選択される。これはさらに、ジアルキルオキシ第2族金属、ジアリールオキシ第2族金属、アルキルオキシ第2族金属ハライド、アリールオキシ第2族金属ハライド、アルキル第2族金属アルコキシド、アリール第2族金属アルコキシド及びアルキル第2族金属アリールオキシドからなる群より選択することができる。好ましくは、第2族金属はマグネシウムである。
【0037】
一価アルコール(A)は、式ROHの一価アルコール(式中、Rは、直鎖状又は分枝状C〜C10アルキル基、好ましくは分枝状Cアルキル基である。)である。
【0038】
好ましい一価アルコールは、ヘキサノール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、5−ノナノール、ジイソブチルカルビノール、1−デカノール及び2,7−ジメチル−2−オクタノールを含む。最も好ましい一価アルコールは2−エチル−1−ヘキサノールである。
【0039】
少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)は脂肪族化合物である。脂肪族化合物は、直鎖状、分枝状又は環状又はそれらの任意の組合せであってよく、特に好ましいアルコールは、ただ1つのエーテル基を有するものである。
【0040】
本発明により用いられるそのような好ましいエーテル基を有するアルコール(B)の具体例は、エーテル基が2から18個の炭素原子、好ましくは2から12個の炭素原子、より好ましくは2から8個の炭素原子を含むグリコールモノエーテル、特にC〜Cグリコールモノエーテル、例えばエチレン又はプロピレングリコールモノエーテル等である。好ましいモノエーテルは、C〜Cグリコールモノエーテル及びその誘導体である。具体的な好ましい例は、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn−ヘキシルエーテル、プロピレングリコール2−エチルヘキシルエーテルであり、エチレングリコールヘキシルエーテル、1,3−プロピレングリコールエチルエーテル及び1,3−プロピレングリコールn−ブチルエーテルが特に好ましい。
【0041】
最も好ましいアルコール(B)は、1,3−プロピレングリコールエチルエーテル及び1,3−プロピレングリコールn−ブチルエーテルである。
【0042】
通常、異なるアルコキシ化合物又はアルコールが、10:1から1:10までのモル比で用いられ、好ましくはこのモル比は、8:1から1:8まで、より好ましくは6:1から1:6、さらにより好ましくは5:1から1:5、また実施形態においては4:1から1:4、又はさらには2:1から1:2である。この比は、使用される供与体に応じて調整することができ、例えば、短鎖を有する供与体は、より長鎖のアルコールを必要とし、逆もまた同様である。
【0043】
アルコキシ化合物(Ax)及び(Bx)の製造のための反応は、実施形態において、好ましくは芳香族性又は芳香族性/脂肪族性媒体中で20℃から80℃の温度で行ってよく、第2族金属がマグネシウムである場合、アルコキシマグネシウム化合物の製造は、50℃から70℃の温度で行ってもよい。
【0044】
溶媒として使用される反応媒体は、芳香族炭化水素又は芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素の混合物とすることができ、後者は、5〜20個の炭素原子、好ましくは5〜16個の炭素原子、より好ましくは5〜12個の炭素原子、最も好ましくは5から9個の炭素原子を含む。好ましくは、芳香族炭化水素は、置換された及び未置換のベンゼンから、好ましくはアルキル化ベンゼンから、さらにより好ましくはトルエン及びキシレンから選択され、最も好ましくはトルエンである。
【0045】
前記反応媒体のマグネシウムに対するモル比は、好ましくは10未満、例えば、4から10まで、好ましくは5から9までである。
【0046】
アルコキシ化合物(Ax)及び(Bx)は、好ましくはアルコキシマグネシウム化合物である。
【0047】
アルコキシマグネシウム化合物群は、好ましくは、マグネシウムジアルコキシド、マグネシウムジハライドとアルコールの錯体、及びマグネシウムジハライドとマグネシウムジアルコキシドの錯体、又はそれらの混合物からなる群より選択される。より好ましくは、アルコキシマグネシウム化合物はマグネシウムジアルコキシド化合物である。
【0048】
アルコキシマグネシウム化合物は、それぞれアルコール(A)、アルコール(B)又はアルコール(A)とアルコール(B)の混合物の、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムアルコキシド、アルキルマグネシウムハライド及びマグネシウムジハライドからなる群より選択されるマグネシウム化合物との反応生成物である。これは、さらに、ジアルキルオキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、アルキルオキシマグネシウムハライド、アリールオキシマグネシウムハライド、アルキルマグネシウムアルコキシド、アリールマグネシウムアルコキシド及びアルキルマグネシウムアリールオキシドからなる群より選択することができる。
【0049】
マグネシウムジアルコキシドは、好ましくは、式RMgのジアルキルマグネシウム(式中、2つのRのそれぞれは、同様の又は異なるC〜C20アルキル、好ましくは同様の又は異なるC〜C10アルキルである。)と、アルコール(A)及び/又は(B)との反応生成物である。典型的なマグネシウムアルキルは、エチルブチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、プロピルブチルマグネシウム、ジペンチルマグネシウム、ブチルペンチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム及びジオクチルマグネシウムである。最も好ましくは、式RMgの一方のRはブチル基であり、他方のRはエチル又はオクチル基であり、すなわち、ジアルキルマグネシウム化合物はブチルオクチルマグネシウム又はエチルブチルマグネシウムである。
【0050】
使用される場合、典型的なアルキル−アルコキシマグネシウム化合物RMgORは、エチルマグネシウムブトキシド、ブチルマグネシウムペントキシド、オクチルマグネシウムブトキシド及びオクチルマグネシウムオクトキシドである。
【0051】
最も好ましくは、アルコキシ化合物(Ax)は、2−エチルヘキサノールと、式RMgのジアルキルマグネシウム(式中、Rは異なるC〜Cアルキルである。)を反応させることによって、さらにより好ましくはブチルオクチルマグネシウム又はエチルブチルマグネシウムを反応させることによって得られ、アルコキシ化合物(Bx)は、C又はCアルキルグリコールC〜Cアルキルエーテルと、さらにより好ましくは1,3−プロピレングリコールエチルエーテル又は1,3−プロピレングリコールn−ブチルエーテルと、式RMgのジアルキルマグネシウム(式中、Rは異なるC〜Cアルキルである。)を反応させることによって、さらにより好ましくはブチルオクチルマグネシウム又はエチルブチルマグネシウムを反応させることによって得られ、この場合、一価アルコール(A)、例えば2−エチルヘキサノールの、アルコール(B)、例えば1,3−プロピレングリコールエチルエーテル又は1,3−プロピレングリコールn−ブチルエーテルに対するモル比は、6:1から1:6の範囲内、好ましくは5:1から1:5、最も好ましくは4:1から1:4である。
【0052】
本発明の触媒の製造において使用されるフタレート非含有電子供与体化合物は、好ましくは、ベンゾエート、アルキレングリコールジベンゾエート、マレエート、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,3−ジエーテル又はそれらの混合物から選択される。
【0053】
好ましくは、フタレート非含有内部供与体は、以下から選択される:
a)式(I)のベンゾエート
【化1】
(式中、Rは、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状C〜C10アルキル基、より好ましくは直鎖状又は分枝状C〜Cアルキル基、最も好ましくは分枝状C〜Cアルキル基、例えば2−エチルヘキシルであり、
R’は、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状C〜C10アルキル基、より好ましくは直鎖状又は分枝状C〜Cアルキル基、例えば第三級ブチル又はn−ヘキシルであり、前記アルキル基は、O、N又はS、好ましくはO又はN、より好ましくはOから選択される1又は2以上のヘテロ原子をアルキル鎖中に含むことができ、又は=O、ハロゲン、例えば塩素、フッ素若しくは臭素等、又は置換されていてもよいC〜C14アリールから選択される1又は2以上の置換基により置換されることができる。)。
【0054】
〜C14アリール基は、好ましくは、フェニル基であり、前記アリール基上の任意の置換基は、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキル、好ましくは直鎖状又は分枝状C〜C10アルキル、より好ましくは直鎖状又は分枝状C〜Cアルキル又はハロゲン、例えば塩素、フッ素若しくは臭素、好ましくは塩素若しくは臭素、より好ましくは塩素であることができる。前記アリール基上の置換基の数は、0から4、好ましくは0から2、より好ましくは0又は1であることができる。
【0055】
HではないR’は、オルト、メタ又はパラ位、好ましくはパラ又はオルト位にあることができる。
【0056】
より好ましい化合物は、2−エチルヘキシルベンゾエート、2−エチルヘキシル(4−n−ヘキシルベンゾエート)、2−エチルヘキシル(4−第三級ブチルベンゾエート)、2−エチルヘキシル((2−(4−クロロベンゾイル)ベンゾエート)である。
【0057】
b)式(II)のアルキレングリコールジベンゾエート
【化2】
(式中、nは1又は2であり、n=1である場合はR=CHであり、n=2である場合はR=Hである。)。
【0058】
より好ましい化合物は、エチレングリコールジベンゾエート、1,2−プロピレングリコールジベンゾエート及び1,3−プロピレングリコールジベンゾエートである。
【0059】
c)式(III)のマレエート
【化3】
(式中、R及びRは、同じであるか又は異なり、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分枝状C〜Cアルキル基、より好ましくは直鎖状又は分枝状C〜Cアルキル基、最も好ましくはエチルであり、R及びRは好ましくは同じであり、
Rは、H又は直鎖状、分枝状若しくは環状C〜C12アルキル、好ましくは分枝状又は環状C〜Cアルキル、例えばイソブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり、RはHではないことが好ましい。)。
【0060】
より好ましい化合物は、ジエチル−2−イソブチルマレエート、ジエチル−2−シクロペンチルマレエート及びジエチル−2−シクロヘキシルマレエートである。
【0061】
d)式(IV)の1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジアルキルエステル
【化4】
(式中、R及びRは、同一であるか又は異なることができ、直鎖状又は分枝状C〜C20アルキル、好ましくはC〜C16アルキル、より好ましくは直鎖状又は分枝状C〜C12アルキルであることができる。好ましくはR及びRは同一である。)。
【0062】
より好ましい化合物は、1−シクロヘキセン−1,2−(ビス−(2−エチルヘキシル)ジカルボキシレートである。
【0063】
e)式(V)又は(VI)の1,3−ジエーテル
【化5】
(式(V)及び(VI)において
及びRは同じであるか又は異なり、直鎖状又は分枝状C〜C12アルキルであることができ、又はRはRと、及び/又はRはRと、4から6個のC原子を有する環を形成することができ、
式(V)のR及びRは同じであるか又は異なり、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキルであることができ、又はR及びRは一緒に、5から10個のC原子を有する環を形成することができ、前記環は、9から20個のC原子を有する脂肪族又は芳香族の多環系の一部であることができ、
式(V)中のR及びRは同じであるか又は異なり、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキルであることができ、又は、一緒に、5から8個のC原子を有する脂肪族環を形成することができ、
式(VI)中のR51、R61及びRは同じであるか又は異なり、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C12アルキルであることができ、又はR51、R61及びRの2つ又は3つは、C〜Cと一緒に、6から14個のC原子、好ましくは10から14個のC原子を有する芳香族環又は環系を形成することができる。)。
【0064】
及びRは、好ましくは式(V)及び(VI)において同じであり、直鎖状又は分枝状C〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル又は第三級ブチル又は2−エチルヘキシルであることができる。
【0065】
式(V)において、RはRと、及び/又はRはRと、酸素原子と一緒に、4から6個のC原子、好ましくは4から5個のC原子を有する環、例えばテトラヒドロフラン環又はテトラヒドロピラン環を形成することがさらに可能である。
【0066】
は好ましくは、直鎖状又は分枝状C〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキルであり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、i−ブチル又はn−ノニルである。
【0067】
は好ましくは、H又は直鎖状若しくは分枝状C〜C10アルキル、より好ましくはC〜Cアルキルであり、例えばメチル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、i−ペンチルである。
【0068】
及びRは、一緒に、環、好ましくは5から7個のC原子、より好ましくは5から6個のC原子を有する好ましくは脂環、例えばシクロペンタン、2−又は3−シクロペンテン、シクロヘキセン、2−又は3−又は4−シクロヘキセンを形成することもまた可能である。
【0069】
この環は、9から18個のC原子を有する脂環式又は芳香族の多環系、例えばデカリン、ヒドロインダン、フルオレン又はインダンの一部であることがさらに可能である。
【0070】
式(V)中のRは、好ましくはH又は直鎖状若しくは分枝状C〜Cアルキルであることができ、より好ましくはH又はC〜Cアルキルであることができ、最も好ましくはHである。
【0071】
式(V)中のRは、好ましくはH又は直鎖状若しくは分枝状C〜Cアルキル、好ましくはH又は直鎖状C〜Cアルキルであることができ、例えばi−プロピル又はi−ブチルであることができる。
【0072】
式(V)において、R及びRは一緒に、5から8個のC原子を有する脂肪族環、例えばシクロペンタン、シクロヘキセン又はシクロヘプタンを形成することがさらに可能である。
【0073】
式(VI)において、R51、R61及びRは同じであるか又は異なり、好ましくはH又は直鎖状若しくは分枝状C〜C10アルキル、より好ましくはH又は直鎖状若しくは分枝状C〜Cアルキルであり、例えばメチル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、i−ペンチルである。
【0074】
式(VI)において、R51、R61及びRの2つ又は3つは、C〜Cと一緒に、6から14個のC原子、好ましくは10から14個のC原子を有する芳香族環又は環系を形成することがさらに可能である。そのような芳香族環又は環系は、フェニル、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンである。好ましくはそのような環系はナフタレンである。
【0075】
より好ましい化合物は、1,8−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン、3,3−ビス(エトキシメチル)−2−メチルドデカン及び3,3−ビス(エトキシメチル)−2,6−ジメチルヘプタンである。
【0076】
最も好ましくは、フタレート非含有内部供与体は、エチレングリコールジベンゾエート、1,2−プロピレングリコールジベンゾエート及び1,3−プロピレングリコールジベンゾエート、ジエチル−2−イソブチルマレエート、ジエチル−2−シクロペンチルマレエート及びジエチル−2−シクロヘキシルマレエート又はそれらの混合物から選択される。
【0077】
遷移金属化合物は、好ましくは第4族金属化合物である。第4族金属は好ましくはチタンであり、第2族錯体と反応させるその化合物は好ましくはハライドである。チタンテトラハライドの等価物は、その場(in situ)でチタンテトラハライドを形成することができる、アルコキシチタンハライド及びそれに対するハロゲン化剤の組合せである。最も好ましいハライドはクロリドである。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、本方法において使用される遷移金属化合物はまた、シングルサイト触媒として知られ、当分野において通常使用される有機配位子を含むこともできる。
【0079】
本発明のなおさらなる実施形態において、遷移金属化合物はまた、第5族金属、第6族金属、Cu、Fe、Co、Ni及び/又はPd化合物から選択することもできる。
【0080】
原則として、前記オレフィン重合触媒成分は、すべて同じ機構に基づくいくつかの方法で得ることができる。
【0081】
実施形態の1つにおいて、固体粒子形態の触媒成分の製造は、
(a1)
(a1−1)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)と上記の内部供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、第2族金属化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
又は
(a1−2)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)及び少なくとも第2のアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物と上記の内部供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、第2族金属化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物であり、前記第2のアルコキシ化合物(Bx)が、第2族金属化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、及び
(b1)前記溶液(S1)を少なくとも1種の遷移金属化合物(CT)と合わせる工程、
(c1)固体粒子形態の前記触媒成分を沈澱させる工程、及び
(d1)オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子を回収する工程
を有する。
【0082】
工程(a1)において、少なくとも1種の第2族金属化合物と、アルコール(A)とアルコール(B)の混合物、との反応生成物である、上記で規定したアルコキシ化合物(Ax)を使用することが可能である。(a1−1)
【0083】
第2の可能性(a1−2)は、アルコキシ化合物(Ax)及びアルコキシ化合物(Bx)の上記で規定した混合物であって、前記アルコキシ化合物(Ax)が、少なくとも1種の第2族金属化合物と一価アルコール(A)との反応生成物であり、前記アルコキシ化合物(Bx)が、少なくとも1種の第2族金属化合物とアルコール(B)との反応生成物である、上記混合物を使用することである。
【0084】
可能性(a1−2)が好ましい。
【0085】
工程(b1)において有機液体反応媒体(OM2)中に遷移金属化合物(CT)を溶解させ、それにより溶液(S2)を形成させることが可能である。
【0086】
固体沈澱の方法は、いくつかの方法により行うことができる。
実施形態の1つにおいて、工程(b1)における少なくとも1種の遷移金属化合物(CT)への溶液(S1)の添加は、少なくとも50℃の温度で、好ましくは50から110℃の温度範囲内、より好ましくは70から100℃の範囲内、最も好ましくは85から95℃の範囲内で行われ、この温度で、少なくとも1種の遷移金属化合物(CT)は液体形態であり、前記添加が前記固体触媒成分の沈澱をもたらす。
【0087】
この場合、溶液(S1)を少なくとも1種の遷移金属化合物と合わせた後、反応混合物全体を少なくとも50℃に保って、より好ましくは50から110℃の温度範囲内、より好ましくは70から100℃の範囲内、最も好ましくは85から95℃の範囲内に保って、固体粒子形態の触媒成分の完全な沈澱を確実にすることがとりわけ好ましい。
【0088】
この場合、工程(a1)又は工程(b1)において界面活性剤を添加することが可能である。
【0089】
界面活性剤の一般的な例は、ポリマー界面活性剤、例えば、ポリ(アルキルメタクリレート)及びポリ(アルキルアクリレート)等を含む。ポリアルキルメタクリレートは、1種又は2種以上のメタクリレートモノマー、例えば、少なくとも2種の異なるメタクリレートモノマー、少なくとも3種の異なるメタクリレートモノマー等を含んでもよいポリマーである。さらに、アクリレート及びメタクリレートポリマーは、ポリマー界面活性剤が少なくとも約40重量%のアクリレート及びメタクリレートモノマーを含む限り、アクリレート及びメタクリレートモノマー以外のモノマーを含んでもよい。
【0090】
市販されている界面活性剤の例は、RohMax Additives GmbHから入手できる商標VISCOPLEX(登録商標)のもの、とりわけ、製品名1−254、1−256を有するもの及びNoveon/Lubrizolから入手できる商品名CARBOPOL(登録商標)及びPEMULEN(登録商標)のものを含む。
【0091】
第2の実施形態において、溶液(S1)を、液体形態の少なくとも1種の遷移金属化合物(CT)と約−20℃から約30℃の温度で混合し、続いて温度を少なくとも50℃まで、好ましくは50から110℃の温度範囲内、より好ましくは70から100℃の範囲内、最も好ましくは85から95℃の範囲内までゆっくりと上げることにより固体触媒成分を沈澱させる。この際の温度上昇の速度は、毎分0.1℃から30℃までの範囲内、好ましくは毎分0.5から10℃である。
【0092】
この場合、界面活性剤を工程(b1)の前に溶液(S1)に添加することがとりわけ好ましい。適した界面活性剤は、上記に記載されている。
【0093】
両方の場合において、いくらかの沈澱剤を系に添加することが可能であるが、必要というわけではない。そのような沈澱剤は、沈澱工程中に形成される粒子のモルフォロジーに影響を及ぼすことができる。特定の方法において、沈澱剤は使用されていない。本発明の沈澱剤は、触媒成分の固体粒子形態での沈澱を促進する薬剤である。(OM2)として使用される有機液体媒体は、本出願において後で規定される通り、沈澱を促進することができ、よって沈澱剤として作用し使用される。しかしながら、最終的な触媒は、いかなるそのような媒体も含有しない。
【0094】
さらに、上述した方法において沈澱剤は使用されていないことが好ましい。
【0095】
好ましくは、前項において製造される触媒成分は、沈澱した固体粒子である。
【0096】
本発明の「沈澱」は、触媒成分製造中、溶液中で化学反応が起こり、前記溶液に不溶性の所望の触媒成分をもたらすことを意味する。
【0097】
適したアルコキシ化合物(Ax)及び(Bx)並びにそれらの製造は、上記に記載されている。
【0098】
適した電子供与体及びそれらの前駆体並びに適した遷移金属化合物もまた、上記に記載されている。
【0099】
好ましくは、TiClが遷移金属化合物として使用される。
【0100】
電子供与体自体を使用する場合、電子供与体を、アルコキシ化合物(Ax)又はアルコキシ化合物(Bx)に添加する。この場合、第2族金属化合物の溶媒として使用される反応媒体は、芳香族炭化水素又は芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素の混合物であることができ、後者は、5〜20個の炭素原子、好ましくは5〜16個の炭素原子、より好ましくは5〜12個の炭素原子、最も好ましくは5から9個の炭素原子を含む。好ましくは、芳香族炭化水素は、置換された及び未置換のベンゼンから、好ましくはアルキル化ベンゼンから、さらにより好ましくはトルエン及びキシレンから選択され、最も好ましくはトルエンである。
【0101】
電子供与体はまた、上記の通り、前駆体の形態で導入することもでき、これは次いで、対応するMgアルコキシドとの反応によりその場(in situ)で電子供与体に変換される。Mgアルコキシドは、上記の通り、マグネシウム化合物を対応するアルコール(A)又はアルコール(B)と反応させることにより製造される。
【0102】
所望であれば、追加の供与体を、工程(a1)から(b1)のいずれかにおいて触媒製造に添加することができる。使用される場合、好ましくは追加の供与体も非フタル酸エステルである。
【0103】
上記の供与体の混合物を使用することもまた可能である。
【0104】
反応媒体は、工程(a1)の有機液体反応媒体(OM1)に対応する。
【0105】
TiClを溶解することができる有機液体反応媒体(OM2)は、有機液体反応媒体(OM1)と同じであってもよく、又はそれと異なってもよいが、後者が好ましい。
【0106】
好ましくは、有機液体反応媒体(OM2)は、C〜C10炭化水素、より好ましくは、C〜C10アルカンであり、例えばヘプタン、オクタン若しくはノナン又はそれらの任意の混合物である。
【0107】
有機液体反応媒体(OM1)は、C〜C10芳香族炭化水素、最も好ましくはトルエンであり、有機液体反応媒体(OM2)は、C〜C10アルカン、最も好ましくはヘプタンであることが特に好ましい。
【0108】
さらに、有機液体反応媒体(OM1)及び(OM2)は、固体触媒粒子の即時の沈澱を補助するように選択されることが好ましい。
【0109】
溶液(S1)を少なくとも1種の遷移金属化合物(CT)に添加するとき、混合することが好ましい。適した混合技術は、当業者に公知の通り、機械的構造の使用並びに混合用の超音波の使用を含む。
【0110】
沈澱後、固体触媒粒子は公知のように洗浄される。
【0111】
したがって、固体触媒粒子を、少なくとも1回から6回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも3回、好ましくは芳香族及び脂肪族炭化水素から選択される炭化水素で、好ましくはトルエン、ヘプタン又はペンタン、より好ましくはトルエンで、特に、少量であれ多量であれTiClをその中に含んでもよい高温(例えば、80から100℃)トルエンで洗浄することが好ましい。TiClの量は、数vol%から50vol%を超える値まで様々とすることができ、例えば5vol%から50vol%、好ましくは5から15vol%である。少なくとも1回の洗浄を、100vol%のTiClで行うこともまた可能である。
【0112】
芳香族及び/又はTiCl洗浄後の1回又は数回のさらなる洗浄は、4から8個の炭素原子の脂肪族炭化水素で行うことができる。これらの後の洗浄は、好ましくは、ヘプタン及び/又はペンタンで実施される。洗浄は、高温(例えば、90℃)又は低温(室温)炭化水素又はそれらの組合せで行うことができる。すべての洗浄を、同じ溶媒、例えば、トルエンで行うこともまた可能である。
【0113】
加えて、触媒成分製造中、オレフィン重合触媒成分の前記凝固した粒子中に酸化状態+4で存在するチタンの量を減少させる還元剤を添加することができる。
【0114】
適した還元剤は、本明細書において規定するアルミニウムアルキル化合物、アルミニウムアルキルアルコキシ化合物並びにマグネシウム化合物である。
【0115】
適したアルミニウム化合物は、一般式AlR3−n(式中、Rは、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状アルキル又はアルコキシ基を表し、Xは独立に、ハロゲン、好ましくはクロリドの群より選択される残基を表し、nは、0、1又は2を表す。)を有する。R残基のうちの少なくとも1つは、アルキル基でなければならない。
【0116】
この化合物を、任意の化合物として触媒成分合成に添加することができ、工程(b1)から(c1)のいずれかにおいて、又は上記の洗浄工程中であるが工程(d1)の前に、添加することができる。
【0117】
好ましくは、還元化合物を、洗浄工程中、より好ましくは高温トルエンでの1回目の洗浄工程中に添加する。
【0118】
本発明において用いられるアルミニウムアルキル及びアルコキシ化合物の具体例は、
トリ−(C〜C)アルキルアルミニウム化合物及び塩素化アルミニウム(C〜C)アルキル化合物、特にジエチルアルミニウムクロリド;ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムプロポキシド、ジエチルアルミニウムブトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシドであり、そのうち特にジエチルアルミニウムエトキシドが好ましい。
【0119】
適したマグネシウム化合物は、第2族金属錯体に関連して本明細書において規定するマグネシウム化合物である。それぞれの開示は、本発明の方法に従って添加されるマグネシウム化合物に関して、参照により本明細書に援用される。特に、適したマグネシウム化合物は、ジアルキルマグネシウム化合物又は一般式MgR2−nのハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(式中、各nは、0又は1であり、各Rは、1から8個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基であり、Xは、ハロゲン、好ましくはClである。)である。好ましいマグネシウム化合物の1つは、ブチルオクチルマグネシウム(商品名BOMAGで市販されている)であり、これは、Mg錯体の製造において既に好ましく使用されている。
【0120】
任意のAl化合物の添加量は、オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子中に+4の酸化状態で存在するチタンの量の所望の減少の程度に依存する。触媒成分中のAlの好ましい量は、ある程度までAl化合物に依存し、例えば、Alアルコキシ化合物が使用される場合、好ましい最終的なAl量は、例えばAlアルキルクロリド化合物が使用される場合よりも少ないと考えられる。
【0121】
最終的な触媒成分粒子は、0.0から0.8wt%、好ましくは0.0から0.5wt%又は0.0から0.4wt%のAl含量を有する。
【0122】
本発明に従って添加されるマグネシウム化合物は、対応する量で添加される。
【0123】
好ましくは、塩素化アルミニウムアルキル化合物、とりわけジエチルアルミニウムクロリドが添加される。
【0124】
第2の実施形態において、固体粒子形態の触媒成分の製造は、
(a2)
(a2−1)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)と上記の内部供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、第2族金属化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)とヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)のアルコール混合物、との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
又は
(a2−2)少なくとも第1のアルコキシ化合物(Ax)及び少なくとも第2のアルコキシ化合物(Bx)のアルコキシ化合物混合物と上記の内部供与体、又はその混合物、又はその前駆体の有機液体反応媒体中の溶液(S1)を提供する工程であって、前記第1のアルコキシ化合物(Ax)が、第2族金属化合物と、式ROHの一価アルコール(A)(式中、RはC〜C10アルキルである。)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物であり、前記第2のアルコキシ化合物(Bx)が、第2族金属化合物と、ヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのエーテル基を有するアルコール(B)との任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、上記工程、
(b2)前記溶液(S1)を、少なくとも1種の遷移金属化合物に添加して、分散相が液滴の形態であり、前記分散相が、50mol%を超える第2族金属を前記アルコキシ化合物中に含有するエマルジョンを生成させる工程、
(c2)前記エマルジョンを撹拌して、前記分散相の液滴を2から500μmの前記所定の平均径範囲内に維持する工程、
(d2)分散相の前記液滴を凝固させる工程、
(e2)オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子を回収する工程
を有する。
【0125】
工程(a2)において、少なくとも1種の第2族金属化合物と、アルコール(A)とアルコール(B)の混合物、との反応生成物である、上記で規定したアルコキシ化合物(Ax)を使用することが可能である。(a2−1)
【0126】
第2の可能性(a2−2)は、アルコキシ化合物(Ax)及びアルコキシ化合物(Bx)の上記で規定した混合物であって、前記アルコキシ化合物(Ax)が、少なくとも1種の第2族金属化合物と一価アルコール(A)との反応生成物であり、前記アルコキシ化合物(Bx)が、少なくとも1種の第2族金属化合物とアルコール(B)との反応生成物である、上記混合物を使用することである。
【0127】
可能性(a2−2)が好ましい。
【0128】
適したアルコキシ化合物(Ax)及び(Bx)並びにそれらの製造は、上記に記載されている。
【0129】
適した電子供与体及びそれらの前駆体並びに適した遷移金属化合物もまた、上記に記載されている。
【0130】
上記で規定した内部供与体又はその前駆体を、好ましくは工程(a2)において、可能性(a2−1)のアルコキシ化合物(Ax)に、又は可能性(a2−2)のアルコキシ化合物(Ax)若しくは(Bx)に添加する。次いで、工程(a2)の溶液(S1)を、典型的には、少なくとも1種の遷移金属化合物、例えば四塩化チタン等に添加する。この添加は、好ましくは、低温、例えば−10から40℃まで、好ましくは−5から30℃まで、例えば約0℃から25℃等で行う。
【0131】
これらの工程のいずれの間も、上記の芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の中から典型的には選択される、有機反応媒体又は溶媒が存在してもよい。
【0132】
所望であれば、追加の供与体を、工程(a2)から(c2)のいずれかにおいて触媒製造に添加することができる。使用される場合、好ましくは追加の供与体も非フタル酸エステルである。
上記の混合物の混合物を使用することもまた可能である。
【0133】
本発明の方法は、中間段階として、上記に特定した通り、典型的には、10から100の遷移金属/第2族のmol比を有する油状分散媒相(oil disperse phase)中の、0.1から10の遷移金属/第2族のmol比を有するより高密度の遷移金属化合物/トルエン不溶性の油状分散相(oil dispersed phase)のエマルジョンを生じる。
【0134】
遷移金属化合物は、好ましくは第4族金属化合物であり、最も好ましくはTiClである。第2族金属は、好ましくはMgである。次いで、前記分散相の液滴を典型的には5から500μmの平均径範囲内に維持するために、通常、このエマルジョンを、場合により乳化安定剤及び/又は乱流最小化剤の存在下で撹拌する。分散相の前記粒子を、例えば加熱することにより凝固させた後、触媒粒子が得られる。
【0135】
よって、前記分散媒相及び分散相は、より高密度の油が、トルエン中の第4族金属化合物、好ましくはTiClの溶液と接触する場合、その中に溶解しないということにより、互いに区別できる。この基準を確立するために適した溶液は、0.1から0.3のトルエンmol比を有する溶液であろう。それらはまた、それぞれの第4族金属/Mgのmol比の比較から明らかになるように、第4族金属化合物との反応のために(錯体として)供給されたMgの大部分が分散相中に存在するということによっても区別できる。
【0136】
そのため、実際において、Mg錯体の第4族金属との反応生成物(これは、最終的な触媒成分の前駆体である。)の事実上全部が、分散相となり、さらなる処理工程を介して最終的な粒子状形態となる。有用な量の第4族金属をなお含有する分散媒相は、その金属の回収のために再処理することができる。
【0137】
2相反応生成物の生成は、Mg錯体/第4族金属化合物反応を低温、特に−10℃より高いが50℃未満、好ましくは−5℃より高く40℃未満の間で行うことにより促進される。2相は、下側の高密度の相と上澄みのより軽い相とに自然に分かれる傾向があるので、好ましくは乳化安定剤の存在下において、撹拌により、反応生成物をエマルジョンとして維持することが必要である。
【0138】
エマルジョン、すなわち2相液−液系は、本発明のすべての実施形態において、単純な撹拌、及び場合により(さらなる)溶媒及び添加剤、例えば乱流最小化剤(TMA)及び/又は以下にさらに記述する乳化剤等を添加することにより、形成することができる。
【0139】
乳化剤/乳化安定剤は、さらに、エマルジョンの形成及び/又は安定性を促進するために、当技術分野において知られているように使用することができる。前記目的のために、例えば、界面活性剤、例えば、アクリル又はメタクリルポリマーベースのクラスを使用することができる。好ましくは、前記乳化安定剤は、アクリル又はメタクリルポリマー、特に、エステル側鎖中に10個より多い、好ましくは12個より多い炭素原子、好ましくは30個未満、好ましくは12から20個の炭素原子を有する中型のエステル側鎖を有するものである。分枝していないC12〜C20(メタ)アクリレート、例えばポリ(ヘキサデシル)−メタクリレート及びポリ(オクタデシル)−メタクリレート等が特に好ましい。市販されている界面活性剤の好適な例は、例えば、本出願において前記したViscoplex(登録商標)の名称で販売されているもの、例えばViscoplex(登録商標)、1−124及び1−126である。
【0140】
上記の通り、乱流最小化剤(TMA)を、エマルジョン形成を向上させ、エマルジョン構造を維持するために、反応混合物に添加することができる。前記TMA剤は、反応条件下において、反応混合物中で不活性及び可溶性でなければならず、これは、直鎖状又は分枝状の脂肪族炭素骨格鎖を有するポリマーのような、極性基を有さないポリマーが好ましいことを意味する。
【0141】
前記TMAは、特に好ましくは、6から20個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーのα−オレフィンポリマー、例えば、ポリオクテン、ポリノネン、ポリデセン、ポリウンデセン又はポリドデセン又はそれらの混合物から選択される。これはポリデセンであることが最も好ましい。
【0142】
TMAは、反応混合物の全重量に対して、例えば、1から1,000ppm、好ましくは5から100ppm、より好ましくは5から50ppmの量でエマルジョンに添加することができる。
【0143】
高密度油状物の第4族金属/Mgのmol比が1から5、好ましくは2から4であり、分散媒相油状物の前記mol比が55から65であるとき、最良の結果が得られることが見いだされた。
【0144】
一般に、分散媒相油状物中の第4族金属/Mgのmol比の、高密度油状物中の前記mol比に対する比は、少なくとも10である。
【0145】
加熱による分散相液滴の凝固は、70から150℃、通常80から110℃、好ましくは90から110℃の温度で好適に行われる。
【0146】
凝固した粒子を単離するために、反応混合物を静置し、例えばサイホン吸引により又はインストリーム濾過ユニットにより、凝固した粒子をこの反応混合物から回収する。
【0147】
凝固した粒子状生成物は、少なくとも1回から6回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも3回、好ましくは、芳香族及び脂肪族炭化水素から選択される炭化水素で、好ましくはトルエン、ヘプタン又はペンタンで、より好ましくはトルエンで、特に、少量であれ多量であれTiClをその中に含んでもよい高温(例えば、80から100℃)トルエンで洗浄してもよい。TiClの量は、数vol%から50vol%を超える値まで様々とすることができ、例えば5vol%から50vol%、好ましくは5から15vol%である。少なくとも1回の洗浄を、100vol%のTiClで行うこともまた可能である。
【0148】
芳香族及び/又はTiCl洗浄後の1回又は数回のさらなる洗浄は、4から8個の炭素原子の脂肪族炭化水素で行うことができる。これらの後の洗浄は、好ましくは、ヘプタン及び/又はペンタンで実施される。洗浄は、高温(例えば、90℃)又は低温(室温)炭化水素又はそれらの組合せで行うことができる。すべての洗浄を、同じ溶媒、例えば、トルエンで行うこともまた可能である。
【0149】
洗浄を最適化して、新規の望ましい特性を有する触媒成分を得ることができる。
【0150】
最後に、洗浄された触媒成分を回収する。
【0151】
これは、蒸発又は窒素を用いたフラッシングによりさらに乾燥することができ、又はいかなる乾燥工程も用いずに油性液体にスラリー化することができる。
【0152】
加えて、触媒成分製造中に、オレフィン重合触媒成分の前記凝固した粒子中に酸化状態+4で存在するチタンの量を減少させる還元剤を添加することができる。
【0153】
適した還元剤は、本明細書において規定されているアルミニウムアルキル化合物、アルミニウムアルキルアルコキシ化合物並びにマグネシウム化合物である。
【0154】
適したアルミニウム化合物は、一般式AlR3−n(式中、Rは、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状アルキル又はアルコキシ基を表し、Xは独立に、ハロゲン、好ましくはクロリドの群より選択される残基を表し、nは、0、1又は2を表す。)を有する。R残基のうちの少なくとも1つは、アルキル基でなければならない。
【0155】
この化合物を、工程(e2)において凝固した粒子を回収する前に、任意の化合物として触媒成分合成に添加し、撹拌されたエマルジョンの分散相の液滴と接触させることができる。すなわち、Al化合物は、工程(b2)から(d2)のいずれかにおいて、又は上記の洗浄工程中であるが工程(e2)の前に、添加することができる。WO2004/029112、EP−A−1862480及びEP−A−1862481が参照される。
【0156】
本発明において用いられるアルミニウムアルキル及びアルコキシ化合物の具体例は、
トリ−(C〜C)−アルキルアルミニウム化合物及び塩素化アルミニウム(C〜C)−アルキル化合物、特にジエチルアルミニウムクロリド;ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムプロポキシド、ジエチルアルミニウムブトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシドであり、そのうち特にジエチルアルミニウムエトキシドが好ましい。
【0157】
適したマグネシウム化合物は、第2族金属錯体に関連して本明細書において規定されているマグネシウム化合物である。それぞれの開示は、本発明の方法に従って添加されるマグネシウム化合物に関して、参照により本明細書に援用される。特に、適したマグネシウム化合物は、ジアルキルマグネシウム化合物又は一般式MgR2−nのハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(式中、各nは、0又は1であり、各Rは、1から8個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基であり、Xは、ハロゲン、好ましくはClである。)である。好ましいマグネシウム化合物の1つは、ブチルオクチルマグネシウム(商品名BOMAGで市販されている)であり、これは、Mg錯体の製造において既に好ましく使用されている。
【0158】
任意のAl化合物の添加量は、オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子中に+4の酸化状態で存在するチタンの量の所望の減少の程度に依存する。触媒成分中のAlの好ましい量は、ある程度までAl化合物に依存し、例えば、Alアルコキシ化合物が使用される場合、好ましい最終的なAl量は、例えばAlアルキルクロリド化合物が使用される場合よりも少ないと考えられる。
【0159】
最終的な触媒成分粒子は、0.0から0.8wt%、好ましくは0.0から0.5wt%又は0.0から0.4wt%のAl含量を有する。
【0160】
本発明に従って添加されるマグネシウム化合物は、対応する量で添加される。
【0161】
好ましくは、上記で規定したAlアルキル又はAlアルキルアルコキシ化合物が添加される。
【0162】
アルミニウムアルキル又はアルコキシ化合物及びマグネシウム化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0163】
任意のAl又はMg又はその混合物は、好ましくは、工程(e2)の前、より好ましくは、洗浄媒体としての同じ又は好ましくは異なる炭化水素での少なくとも1回の、好ましくは2回の、より好ましくは3回の洗浄手順を含む洗浄工程中に添加する。
【0164】
本発明の触媒成分製造において使用されるアルミニウムアルキル又はアルコキシ化合物及び/又はマグネシウム化合物は、洗浄媒体のいずれかに添加することができ、この洗浄媒体は、上記の通り、好ましくはトルエン、ヘプタン及び/又はペンタンである。
【0165】
本発明の方法によるプロ触媒製造はバッチ式で行うことができるが、触媒成分を半連続的に又は連続的に製造することがまた好ましく、可能である。そのような半連続的又は連続的プロセスにおいては、第2族金属の化合物を前記電子供与体と有機液体反応媒体中で反応させることにより調製される、前記金属及び前記電子供与体の錯体の溶液を、少なくとも1種の遷移金属化合物と混合するが、上記遷移金属化合物は、同じ又は異なる有機液体反応媒体中に溶解させてもよい。次いで、そのように得られた溶液を、場合により乳化安定剤の存在下において撹拌し、次いでそのように撹拌したエマルジョンを温度勾配反応器中に供給し、この中でエマルジョンに温度勾配をかけ、このようにしてエマルジョンの分散相の液滴を凝固させる。任意のTMAは、好ましくは、錯体の溶液中に含有させるか、又は撹拌した溶液を温度勾配反応器に供給する前に溶液に添加する。
【0166】
前記撹拌したエマルジョンを温度勾配反応器に供給するとき、液滴が溶解しない不活性溶媒を勾配反応器中にさらに供給することにより、液滴形成を向上させ、よって、前記ラインを通過するときに温度勾配反応器中で形成される触媒成分の粒子の粒径を均一化する。そのような追加の溶媒は、既に詳細に説明した第2族金属の錯体の溶液を調製するために使用される有機液体反応媒体と同じであってもよい。
【0167】
続いて、オレフィン重合触媒成分の凝固した粒子は、インストリーム濾過ユニットにより回収することができ、次いで、場合により、未反応出発成分を除去するための数回の追加の洗浄及び乾燥工程の後、さらに使用するために保存することができる。実施形態の1つにおいて、触媒は、連続的製造及び反応器への供給を可能にするために、洗浄工程の後にオレフィン重合反応器中に供給することができる。凝固し、洗浄された触媒成分を油性の流動性液体と混合し、触媒成分を触媒成分−油状物スラリーとして保存及び使用することもまた可能である。このように、触媒成分モルフォロジーに時に不利益となり得る乾燥工程を回避することができる。この油状物−スラリー法は、本出願人のEP−A−1489110に一般的な記載がなされており、参照により本明細書に援用される。
【0168】
よって、半連続的又は連続的プロセスの上記の記載から分かるように、異なるプロセス工程のために別々の反応容器を使用し、それぞれの反応容器中で製造された反応生成物を移動させ、エマルジョン、続いて凝固した粒子を形成するために、それらをインラインでさらなる反応容器中に供給することが可能である。
【0169】
時間を大幅に節約できるため、完全連続プロセスを使用することが好ましい。そのような完全に連続的なプロセスにおいて、凝固した粒子の形成は、十分に長く、20から80℃のより低い範囲内の出発温度から70から150℃の「凝固」温度までの前記温度勾配にかけられる種類の管型反応器中で、温度勾配ラインにおいて行うことができる。温度勾配は、好ましくは、通常の加熱器、マイクロ波等を適用することにより管型反応器を外側から加熱することにより得られる。
【0170】
前記したように、凝固した粒子を溶媒流から濾過するために、好ましくは濾過ユニットを使用してもよい。前記濾過ユニットについては、特定の粒子径に応じて、様々なドラム及び篩分システムを使用することができる。
【0171】
両製造方法で、最終的に得られる固体触媒成分は、望ましくは、室温(20℃)でn−ヘプタンを媒体として用いてCoulter Counter LS200を使用することにより決定される、概して、2から500μm、好ましくは5から200μm、より好ましくは10から100μmの平均径範囲を有する粒子の形態であり、さらには20から60μmの平均径範囲も可能である。
【0172】
Coulter法により測定され、本発明の触媒のSPANとして規定される粒子径分布は、製造の方法に依存する。エマルジョン/凝固法では、粒子径分布は通常、沈澱法よりも小さい。それでもやはり、沈澱法により製造される固体触媒成分の粒子径分布は可能な限り小さいことが所望され、エマルジョン/凝固法により製造される固体触媒成分と同様であることがさらにより好ましい。
【0173】
好ましくは、粒子径分布は、0.5から最大4.0の範囲内であり、より好ましくは0.5から最大3.0、さらにより好ましくは0.5から最大2.0である。
【0174】
SPANは、
【数1】
と規定され、ここで、d90は、90%累積径での粒子直径を示し、d10は、10%累積径での粒子直径を示し、d50は、50%累積径での粒子直径を示す。
【0175】
本発明の方法により製造される触媒成分は、所望のモルフォロジー及び粒子径並びに粒子径分布を有し、所望のポリマー特性を有するポリマーを製造するのに適した触媒活性の増大した触媒をもたらす。
【0176】
驚くべきことに、所望のモルフォロジー及び粒子径並びに粒子径分布を有する触媒成分粒子は、チーグラー・ナッタ(ZN)タイプの触媒を製造する沈澱又はエマルジョン/凝固法のいずれかを介して共通の機構により得ることができ、任意にC〜C12モノマー、好ましくはC〜Cモノマーから選択される他のコモノマーとの、エチレン又はプロピレンのようなオレフィン重合、特にプロピレン重合において使用するのに適していることが本発明の発明者らにより見いだされた。
【0177】
本発明の方法は、所望の特性を有する触媒及びさらにポリマーの製造を可能にする、供与体タイプを変え、供与体濃度を調整するさらなる可能性を提供する。
【0178】
よって、上記の方法による固体粒子形態の触媒成分、及びオレフィン重合プロセスに適した触媒系の製造のためのその使用を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0179】
本発明の触媒成分が有用である重合プロセスは、重合が通常、溶液、スラリー、バルク又は気相中で行われる少なくとも1つの重合段階を有する。通常、重合プロセスは、追加の重合段階又は反応器を有する。特定の実施形態の1つにおいて、プロセスは少なくとも1つのバルク反応器領域及び少なくとも1つの気相反応器領域を有し、各領域は、少なくとも1つの反応器を有し、すべての反応器は、カスケード状に配置されている。特に好ましい実施形態の1つにおいて、オレフィン、特にプロピレンを、任意にエチレン又は他のα−オレフィンのようなコモノマーと重合させるための重合プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器及び少なくとも1つの気相反応器をその順序の配置で有する。好ましいプロセスのいくつかにおいて、プロセスは、1つのバルク反応器及び少なくとも2つの、例えば、2つ又は3つの気相反応器を有する。プロセスは、前反応器及び後反応器をさらに有してもよい。前反応器は、通常、前重合反応器を含む。これらの種類のプロセスにおいて、ポリマーにいくつかの特定の特性を付与するために、反応器カスケードのいくつかの又はすべての反応器において、より高い重合温度(70℃以上、好ましくは80℃以上、さらには85℃以上)を使用することが好ましい。
【0180】
本発明によるポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーの製造のために、使用される触媒系は、上記の固体粒子形態の触媒成分に加えて有機金属共触媒を含む。
【0181】
したがって、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチル又はジエチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムクロリド;及びアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群より共触媒を選択することが好ましい。より好ましくは、共触媒は、トリエチルアルミニウム又はジエチルアルミニウムクロリドであり、最も好ましくはトリエチルアルミニウムが共触媒として使用される。
【0182】
任意に1種又は2種以上の外部供与体が使用され、これは、通常、例えば、シラン又は当分野において周知の他の外部供与体から選択してよい。外部供与体は、当技術分野において公知であり、プロピレン重合において立体規則性制御剤として使用される。外部供与体は好ましくは、ヒドロカルビルオキシシラン化合物、アミノシラン化合物及びヒドロカルビルオキシアルカン化合物から選択される。
【0183】
典型的なヒドロカルビルオキシシラン化合物は、式(VII)を有する
Si(OR4−p (VII)
(式中
は、α−又はβ−分枝状C〜C12ヒドロカルビルであり、
は、C〜C12ヒドロカルビルであり、
pは、整数の1〜3である。)。
【0184】
本発明において外部電子供与体として有用であるヒドロカルビルオキシシラン化合物のより具体的な例は、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランである。
【0185】
最も好ましくは、式(VII)を有するアルコキシシラン化合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン又はシクロヘキシルメチルジメトキシシランである。
【0186】
典型的なアミノシラン化合物は、式(VIII)を有する
Si(OR(NR1011
(式中
は、1から6個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R10は、1から12個の炭素原子を有する炭化水素基又は水素原子であり、R11は、1から12個の炭素原子を有する炭化水素基である。)。
【0187】
好ましくはこれらの化合物は、式(IX)を有する
Si(OCH2CH3)3(NR1011
(式中
10及びR11は、1から12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族炭化水素基、1から12個の炭素原子を有する分枝状脂肪族炭化水素基及び1から12個の炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素基からなる群より独立に選択される。)。
【0188】
10及びR11は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、第三級ブチル、第三級アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群より独立に選択されることが特に好ましい。
【0189】
より好ましくは、R10及びR11は両方とも同じであり、1から6個の炭素原子を有し、いっそうより好ましくはR10及びR11は両方ともC〜Cアルキル基である。
【0190】
最も好ましくは、式(VIII)又は(IX)により表される外部供与体は、ジエチルアミノトリエトキシシランである。
【0191】
そのため、本触媒系に使用される外部供与体は、好ましくはジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン又はシクロヘキシルメチルジメトキシシランである。
【0192】
実験の項
1.方法
メルトフローレートMFR:ISO1133;230℃、2.16kg荷重
粒子径分布PSD:
室温でヘプタンを媒体として用いるCoulter Counter LS200
平均粒子径はμmで示し、Coulter Counter LS200により室温でn−ヘプタンを媒体として用いて測定する;100nm未満の粒子径は透過型電子顕微鏡法により測定する。
メジアン粒子径(d50)はμmで示し、Coulter Counter LS200により室温でn−ヘプタンを媒体として用いて測定する。
粒子径(d10)はμmで示し、Coulter Counter LS200により室温でn−ヘプタンを媒体として用いて測定する。
粒子径(d90)はμmで示し、Coulter Counter LS200により室温でn−ヘプタンを媒体として用いて測定する。
SPANは、以下の通り規定される:
【数2】
ICP分析(Al、Mg、Ti)
触媒の元素分析を実施するために、質量Mの固体試料をとり、ドライアイス上で冷却した。試料は、既知体積Vまで希釈するために、硝酸(HNO、65%、Vの5%)及び新たに脱イオン化された(DI)水(Vの5%)中に溶解した。溶液をさらに、DI水で最終体積Vまで希釈し、2時間安定化させた。
【0193】
分析は、ブランク(5%HNOの溶液)、及び0.5ppm、1ppm、10ppm、50ppm、100ppm及び300ppmの5%HNO溶液中のAl、Mg及びTiの標準試料を使用して較正したThermo Elemental iCAP 6300 Inductively Coupled Plasma−Optical Emission Spectrometer(ICP−OES)を使用して室温で実行した。
【0194】
分析の直前に、ブランク及び100ppmの標準試料を使用してキャリブレーションを「傾斜補正(reslope)」し、精度管理試料(quality control sample)(DI水中5%HNO、3%HF溶液中の20ppmのAl、Mg及びTi)を流して傾斜補正を確認する。QC試料はまた、5試料毎に、及び予定の分析セットの終了時にも流した。
【0195】
Mgの含量は285.213nmラインを使用して、Tiの含量は336.121nmラインを使用してモニターした。アルミニウムの含量は、ICP試料中のAl濃度が0〜10ppmの間であるとき167.079nmラインにより(100ppmに対してのみ較正)、10ppmを超えるAl濃度では396.152nmラインによりモニターした。
【0196】
レポートした値は、同じ試料から採取した3つの連続するアリコートの平均であり、試料の元の質量及び希釈体積をソフトウェアに入力することにより、元の触媒に関連づける。
【0197】
触媒成分中の供与体量の決定
触媒成分中の供与体量の決定は、HPLC(UV検出器、RP−8カラム、250mm×4mm)を使用して実施する。純粋な供与体化合物を使用して、標準溶液を調製する。
【0198】
50〜100mgの触媒成分を20mlバイアル中に計量する(計量精度0.1mg)。10mlのアセトニトリルを加え、試料懸濁液を超音波浴中で5〜10分間、超音波処理する。アセトニトリル懸濁液を適切に希釈し、液体試料を、0.45μmフィルターを使用してHPLC装置のサンプルバイアル内に濾過する。ピーク高さをHPLCから得る。
【0199】
触媒成分中の供与体の百分率は、以下の式を使用して計算する:
百分率(%)=A・c・V・A−1・m−1・0.1%
(式中
=試料ピークの高さ
c=標準溶液の濃度(mg/l)
V=試料溶液の体積(ml)
=標準試料ピークの高さ
m=試料の重量(mg))
【0200】
GCによる供与体分析
触媒の供与体分析を実施するために、質量Mの固体試料をとり、約2mlの溶媒、ジクロロメタンを加えた。この後、約1mlの脱イオン水をバイアルに加えた。最後に、既知の質量Nの内部標準試料、ノナンを加えた。次いで、混合物を15分間超音波処理して、完全な溶解を確実にした。
【0201】
超音波処理の後、試料を静置して2相にし、有機相のアリコートを取り出し、次いでこれを、0.45μmナイロンフィルターによりガスクロマトグラフィー装置に適したバイアル中に濾過する。
【0202】
分析は、スプリットループインジェクター及び水素炎イオン化検出器を備えたPerkin Elmer Auto System XL Gas Chromatographにおいて実施する。カラムは、長さ30mで内径が0.32mm及び相厚さが0.25μmのDB−1である。システムを40℃で5分間維持した後、10℃/minで250℃まで上昇させ、この温度でさらに4分間保つ。必要な場合は、ピーク温度を300℃まで上げる。結果は以下のように計算する:
【数3】
(式中:
Ax=成分面積
F=成分係数
N=内部標準試料(ノナン)の質量mg
Ay=内部標準試料(ノナン)の面積
Fistd=内部標準試料(ノナン)の係数
M=試料の質量mg)
【0203】
ランダム性
赤外(IR)分光法を、Nicolet Magna IR Spectrometer550において行った。220〜250μmフィルムを、230℃でポリマー粉末から調製し、その後、室温まで急速に冷却した。すべてのIR分析は、フィルム調製から2時間以内に行った。以前の13C NMRの結果に対して較正された内部参照バンドのピーク高さに対して正規化されたピーク面積を使用して定量的コモノマー含量を得た。エチレンを733cm−1のバンド(ベースライン690〜780cm−1)809cm−1の参照バンド(ベースライン750〜890cm−1)を使用して定量化した。孤立エチレン単位の量(ランダム性)は、733cm−1のバンド(ベースライン690〜780cm−1)及び上記の同じ参照バンドのピーク高さを使用して推定した。キャリブレーションは、以前に得られた13C NMRの結果に対して行った。
ランダム性=ランダムエチレン(−P−E−P−)含量/全エチレン含量×100%。
【0204】
キシレン可溶性成分XS:25℃での生成物のキシレン可溶性画分。
2.0gのポリマーを、250mlのp−キシレン中に135℃で撹拌しながら溶解する。30±2分後、溶液を15分間、周囲温度で冷まし、次いで、30分間、25±0.5℃で静置する。溶液を、濾紙で2つの100mlフラスコ中に濾過する。
【0205】
1つ目の100ml容器の溶液を、窒素流中で蒸発させ、残渣を90℃の真空下で恒量に達するまで乾燥する。
XS%=(100×m1×v0)/(m0×v1)
m0=初期ポリマー量(g)
m1=残渣重量(g)
v0=初期体積(ml)
v1=分析した試料の体積(ml)
【0206】
記載されている実施例におけるすべての反応は、不活性条件下で行う。
【実施例】
【0207】
実施例1:
Mgアルコキシドの調製
43.9mlの2−エチルヘキサノールを、300mlガラス反応器に添加した。Crompton GmbHから提供されたBOMAG(ブチルオクチルマグネシウム)のトルエン中20%溶液123.9mlを、よく撹拌された2−エチルヘキサノールにゆっくりと添加した。添加の間、温度は40℃未満に保った。次いで反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度で60分間続けた。最後に、Mgアルコキシドを、室温まで冷却した後、セプタム瓶に移した。
【0208】
実施例2:
供与体のその場(in−situ)製造
5.05ml(5.25g)の1,2−プロピレングリコールを、300mlガラス反応器に室温で添加した。Crompton GmbHから提供されたBOMAGのトルエン中20%溶液61.9mlを、よく撹拌されたプロピレングリコールにゆっくりと添加した。添加の間、温度は40℃未満に保った。次いで反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度で60分間続けた。反応混合物を室温まで冷却した後、17.80gの塩化ベンゾイルを添加した。反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度でさらに1時間続けた。最後に、このように得られた供与体懸濁液を、室温まで冷却した後、セプタム瓶に移した。
【0209】
実施例3:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド9.60ml(8.45g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例2に従って調製した供与体懸濁液6.40ml(5.63g)を室温で添加し、反応混合物を室温で1時間混合した。
【0210】
実施例4:(比較例CE1)
触媒成分の製造
6.5mlの四塩化チタンを、25℃で、メカニカルスターラー付きの300ml反応器に入れた。混合速度は400rpmに調整した。0.60mgのNecadd 447のトルエン中の溶液0.30ml、Viscoplex 1−254のトルエン中の50wt%溶液0.6ml及びヘプタン3.30mlからなる混合物4.2mlを一度に添加した。次いで反応器温度を5分間で90℃まで上げた。この温度に達したら、実施例3に従って調製されたMg錯体11.0mlを、一定の供給速度にて15分間で添加し、添加の間、温度は90℃に保った。反応混合物をさらに30分間、90℃で撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90℃で15分間静置した。
【0211】
静置及びサイホン吸引の後、固体を3回の洗浄工程に付した:
洗浄1:トルエン/DEAC洗浄
300rpmで撹拌しながら、90℃で30分間、0.03mlのジエチルアルミニウムクロリド及び33mlのトルエンの混合物による洗浄。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90℃で15分間静置し、その後サイホン吸引した。
【0212】
洗浄2:1回目のヘプタン洗浄
300rpmで撹拌しながら、90℃で7分間、20mlのヘプタンによる洗浄。その後、反応温度を13分間で25℃まで低下させる。次いで撹拌を停止し、反応混合物を25℃で15分間静置し、その後サイホン吸引した。
【0213】
洗浄3:2回目のヘプタン洗浄
300rpmで撹拌しながら、25℃で20分間、20mlのヘプタンによる洗浄。その後、撹拌を停止し、反応混合物を25℃で10分間静置し、その後サイホン吸引した。
最後に、温度を7分間で70℃まで上昇させ、続いて20分間Nでスパージして、空気に不安的な粉末を得た。
【0214】
実施例5:
Mgアルコキシドの調製
41.4mlのプロピレングリコールブチルエーテルを、300mlガラス反応器に添加した。Crompton GmbHから提供されたBOMAGのトルエン中20%溶液123.9mlを、よく撹拌されたプロピレングリコールブチルエーテルにゆっくりと添加した。添加の間、温度は40℃未満に保った。次いで反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度で60分間続けた。最後に、Mgアルコキシドを、室温まで冷却した後、セプタム瓶に移した。
【0215】
実施例6:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド6.27ml(5.52g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例2に従って調製した供与体懸濁液4.18ml(3.68g)を室温で添加した。次いで実施例5に従って調製したMgアルコキシド5.17ml(4.60g)を室温で添加し、反応混合物を室温で1時間混合した。
【0216】
実施例7:
触媒成分の製造
6.5mlの四塩化チタンを、25℃で、メカニカルスターラー付きの50mlガラス反応器に入れた。混合速度は400rpmに調整した。0.60mgのNecadd 447のトルエン中の溶液0.30ml、Viscoplex 1−254のトルエン中の50wt%溶液0.6ml及びヘプタン3.30mlからなる混合物4.2mlを一度に添加した。次いで反応器温度を5分間で90℃まで上げた。この温度に達したら、実施例6に従って調製されたMg錯体11.0mlを、一定の供給速度にて15分間で添加し、添加の間、温度は90℃に保った。反応混合物をさらに30分間、90℃で撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90℃で15分間静置した。
【0217】
静置及びサイホン吸引の後、固体を3回の洗浄工程に付した:
洗浄1:トルエン/DEAC洗浄
300rpmで撹拌しながら、90℃で30分間、0.03mlのジエチルアルミニウムクロリド及び33mlのトルエンの混合物による洗浄。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90℃で15分間静置し、その後サイホン吸引した。
【0218】
洗浄2:1回目のヘプタン洗浄
300rpmで撹拌しながら、90℃で7分間、20mlのヘプタンによる洗浄。その後、反応温度を13分間で25℃まで低下させる。次いで撹拌を停止し、反応混合物を25℃で15分間静置し、その後サイホン吸引した。
【0219】
洗浄3:2回目のヘプタン洗浄
300rpmで撹拌しながら、25℃で20分間、20mlのヘプタンによる洗浄。その後、撹拌を停止し、反応混合物を25℃で10分間静置し、その後サイホン吸引した。
最後に、温度を7分間で70℃まで上昇させ、続いて20分間Nでスパージして、空気に不安的な粉末を得た。
【0220】
実施例8:
供与体のその場(in−situ)製造
5.0ml(5.25g)の1,3−プロピレングリコールを、300mlガラス反応器に室温で添加した。Crompton GmbHから提供されたBOMAG(Mg(Bu)1,5(Oct)0,5)のトルエン中20%溶液61.9mlを、よく撹拌されたプロピレングリコールにゆっくりと添加した。添加の間、温度は40℃未満に保った。次いで反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度で60分間続けた。反応混合物を室温まで冷却した後、17.80gの塩化ベンゾイルを添加した。反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度でさらに1時間続けた。最後に、このように得られた供与体懸濁液を、室温まで冷却した後、セプタム瓶に移した。
【0221】
実施例9:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド9.60ml(8.45g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例8に従って調製した供与体懸濁液6.40ml(5.63g)を室温で添加し、反応混合物を室温で1時間混合した。
【0222】
実施例10:(比較例CE2)
触媒成分の製造
実施例9に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0223】
実施例11:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド6.27ml(5.52g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例8に従って調製した供与体懸濁液4.18ml(3.68g)を室温で添加した。次いで実施例5に従って調製したMgアルコキシド5.17ml(4.60g)を室温で添加し、反応混合物を室温で1時間混合した。
【0224】
実施例12:
触媒成分の製造
実施例11に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0225】
実施例13:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド30.0ml(26.4g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。2.24gのジエチル−2−シクロペンチルマレエートを室温でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で10分間混合した。
【0226】
実施例14:(比較例CE3)
触媒成分の製造
実施例13に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0227】
実施例15:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド10.04ml(8.87g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例5に従って調製されたMgアルコキシド4.96ml(4.33g)を室温で添加した。次いで1.13gのジエチル−2−シクロペンチルマレエートを室温で添加し、反応混合物を室温で1時間混合した。
【0228】
実施例16:
触媒成分の製造
実施例15に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0229】
実施例17:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド15.0ml(13.20g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。次いで1.19gのジエチル−2−シクロヘキシルマレエートを室温で添加し、反応混合物を室温で10分間混合した。
【0230】
実施例18:(比較例CE4)
触媒成分の製造
実施例17に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0231】
実施例19:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド10.04ml(8.87g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例5に従って調製されたMgアルコキシド4.96ml(4.33g)を室温で添加した。次いで1.19gのジエチル−2−シクロヘキシルマレエートを室温で添加し、反応混合物を室温で10分間混合した。
【0232】
実施例20:
触媒成分の製造
実施例19に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0233】
実施例21:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド15.0ml(13.20g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。次いで1.07gのジエチル−2−イソブチルマレエートを室温でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で10分間混合した。
【0234】
実施例22:(比較例CE5)
触媒成分の製造
実施例21に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0235】
実施例23:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド10.04ml(8.87g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例5に従って調製されたMgアルコキシド4.96ml(4.33g)を室温で添加した。次いで1.07gのジエチル−2−イソブチルマレエートを室温でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で10分間混合した。
【0236】
実施例24:
触媒成分の製造
実施例23に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0237】
実施例25:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド11.2ml(9.84g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例5に従って調製されたMgアルコキシド2.80ml(2.46g)を室温で添加した。次いで1.00gのジエチル−2−イソブチルマレエートを室温でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で5分間混合した。
【0238】
実施例26:
触媒成分の製造
実施例25に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0239】
実施例27:
Mgアルコキシドの調製
16.0mlのプロピレングリコールエチルエーテルを、300mlガラス反応器に添加した。Crompton GmbHから提供されたBOMAGのトルエン中20%溶液63.0mlを、よく撹拌されたプロピレングリコールエチルエーテルにゆっくりと添加した。添加の間、温度は40℃未満に保った。次いで反応混合物の温度を60℃まで上げ、混合をこの温度で60分間続けた。最後に、Mgアルコキシドを、室温まで冷却した後、セプタム瓶に移した。
【0240】
実施例28:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド8.30ml(7.30g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例27に従って調製されたMgアルコキシド4.17ml(3.66g)を室温で添加した。次いで0.89gのジエチル−2−イソブチルマレエートを室温でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で5分間混合した。
【0241】
実施例29:
触媒成分の製造
実施例28に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0242】
実施例30:
Mg錯体の調製
実施例1に従って調製されたMgアルコキシド11.2ml(9.84g)を、セプタム瓶(N雰囲気、磁気撹拌棒付き)に入れた。実施例27に従って調製されたMgアルコキシド2.80ml(2.46g)を室温で添加した。次いで1.00gのジエチル−2−イソブチルマレエートを室温でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で5分間混合した。
【0243】
実施例31:
触媒成分の製造
実施例30に従って調製されたMg錯体を使用したことを除いて、実施例7に記述されている通り触媒成分を製造した。
【0244】
【表1】
【0245】
)以下の式に従って計算した供与体の最大量:
100−(3.917*Mg%+4.941*Al%+3.962*Ti%)=供与体の最大量(%)
(これは、すべてのMgがMgClの形態であり、すべてのAlがAlClの形態であり、すべてのTiがTiClの形態であり、炭化水素は存在しないという仮定に基づいている。)。
【0246】
実施例32:ベンチスケールPP重合手順
5リットルのステンレス鋼反応器を、プロピレン重合に使用した。
共触媒として約0.9mlのトリエチルアルミニウム(TEA)(Witco製、受け取った状態で使用した)、外部供与体として約0.13mlのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCDS)(Wacker製、モレキュラーシーブで乾燥させた)及び30mlのn−ペンタンを混合し、5分間反応させた。次いで、混合物の半分を重合反応器に加え、残り半分を約20mgの触媒と混合した。さらに5分後、触媒/TEA/供与体/n−ペンタン混合物を反応器に添加した。Al/Ti比は250mol/molであり、Al/DCDS比は10mol/molであった。200mmolの水素及び1400gのプロピレンを、反応器中に導入し、温度を約15分間で重合温度(80℃)まで上げた。重合温度に達した後の重合時間は60分であり、その後、形成されたポリマーを反応器から取り出した。
【0247】
【表2】
【0248】
表2から分かるように、特別なアルコール混合物を用いて製造した触媒成分は、一価アルコールのみを使用して現在の技術水準に従って製造されたものよりも著しく高い活性を示す。