(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示されている技術及び回路によれば、オゾン発生器を含む誘電体バリア放電器の制御及び電力出力を改善することができる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、オゾンを生成するために必要な出力電力より低い電力から全出力電力までの範囲の電力で動作できるとともに、出力電力を増加させることが可能な電力系統及び電力制御技術が提供される。本発明の具体的な実施形態によれば、電力系統における20kHz以上40kHz以下の周波数範囲及び10kWの出力電力が提供される。出力電力は、10kWの1%以下もの低さまで制御される。具体的な実施形態によれば、5kWの電力を出力可能な2つのパワートレインを使用して、10kWの出力電力を実現することができる。
【0013】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る誘電体バリア放電器の電力段を示す基本図である。
図1Aに示す電力段において、4つのスイッチ121、122、123、及び124がフルブリッジとして配置され、取り込まれた直流バス電圧入力(Vbus)を、共振インダクタLr105及びオゾンセルスタック110によって表される並列共振タンクネットワークを通して正弦波形に変換する。スイッチ(121、122、123、及び124)としては、適切なスイッチであればどのようなスイッチを用いてもよい。例えば、バイポーラ接合トランジスタ(BJTs)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBTs)、並びに金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFETs)及び高電子移動度トランジスタ(HEMTs)等の電界効果トランジスタ(FETs)を用いることができるが、これに限られない。
【0014】
共振タンク(インダクタ105単独、又はインダクタ105と負荷110のコンデンサ111との組み合わせにより提供される)は、フルブリッジの電源から交流電圧を受け、制御された振幅の高電圧正弦波の形で誘電体バリア放電セル110に共振(又は実質的に共振の)交流電圧を供給する。信号を所望のレベルまで増幅させるために、変圧器(図示せず)を含めてもよい。変圧器による効果は、VoutをVout/N(Nは巻線比を示す)として表すことにより、単純化した構成に含めてもよい。
【0015】
誘電体バリア放電器のセル(又は負荷)110は、並列コンデンサ111及びレジスタ112により構成される。コンデンサ111はセル110の一部として示されているが、構成されたコンデンサ111の容量は、セル独自の容量に加えて、個別の容量を含んでもよい。
【0016】
図2Aは、オゾンを生成する前の出力に必要な電圧を説明するためのオゾンセルスタックの電気回路構成を示す図である。特に、オゾンを生成する誘電体バリア放電セルを構成する際に、電圧クランプDo213(
図1Aの基本図には示さず)を、レジスタ212(
図1Aのレジスタ112と同様に構成される)と直列に含んでもよい。オゾンの濃度は出力電力に比例して増減するため、レジスタ212と電圧クランプ213とを並列に配置してオゾンセルを構成してもよい(例えば、
図3に示すレジスタ312及び電圧クランプ313も参照)。動作時には、出力電圧が、レジスタRo212における電力の消耗として表される、クランプの電圧よりも大きい一定の電圧に達した場合に、オゾンを生成することができる。出力電圧がクランプの電圧(Do)よりも小さい場合、Ro212は電流を流して電力消費を行うことができず、オゾンは生成されない。
【0017】
出力容量Co(
図1Aのコンデンサ111として構成される)は、Co=Cd0
*Cd1/(Cd0+Cd1)として与えられる。Cd0は直列に配置された電圧クランプ213及びレジスタ212と並列なコンデンサ211であり、Cd1は接地されたコンデンサ214である。
【0018】
図2Bは、本明細書に記載されている電力段の構成を利用して高電圧の交流電力を供給する誘電体バリア放電セルの1種を示す図である。
図2Bに示すように、セル200は、交流電力201が印加されると第1の誘電体バリアフィルム203から間隙204を通って第2の電極205に放電202を生成する第1の電極(図示せず)を含んでもよい。また、第2の誘電体バリアフィルム(図示せず)を任意に第2の電極205上に配置してもよい。水を利用して電荷を第2の電極205から地面に運んでもよい。具体的な実施形態では、第1の誘電体バリアフィルム203はアルミナ酸化物(Al
2O
3)により構成され、第2の電極205はタングステンにより構成される。
【0019】
オゾン生成の用途のために、間隙を通過する酸素(O
2)を放電により原子に分解する。これにより、酸素原子が再結合し、オゾン(O
3)及び酸素(O
2)の生成が可能になる。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係る共振インバータの電力段を有する単一のパワートレインを示す模式図である。パワートレインは、本発明の一実施形態に係るオゾン発生器を構成するのに利用できる誘電体バリア放電セルの電子モデルを組み込んでいる。
図3に示すように、電力段インバータ320のスイッチは、IGBTs(321、322、323、及び324)を利用して実装され、フルブリッジとして配列され、取り込まれた直流バス電圧入力(Vbus)を、並列共振タンクネットワークを通して(共振タンク330、変圧器340、及びオゾンセルスタック310を介して)正弦波形に変換する。IGBTsは
図3に示す実施形態について記載されているが、この実施形態に限られず、他の適切なトランジスタを使用してもよいことが理解されよう。
【0021】
共振タンク330は、電力段320のフルブリッジのIGBT及び高電圧変圧器340を駆動回路、共振インダクタLr325(変圧器漏れインダクタンスを含むことができる)、高電圧増幅変圧器Xfm340(磁化インダクタンスLm341を有する)、及びオゾン負荷セルスタック310(容量Co311、インピーダンスRo312、及びクランプ電圧Do313を有する)内の非対称性による故障から保護するために、ブロッキングコンデンサCb331を含んでもよい。5kWの単一のパワートレインにより、変圧器の出力電圧は、最大出力の負荷動作において約30kHzのスイッチング周波数(fsw)で約8kV(pk−pk)まで増加させることができる。共振タンクの周波数fresは、
【数1】
で与えられる。Nは変圧器の巻線比である。Cb>>Co
*N
2、Lm>>Lr、及び線質係数Qが1より大きく
【数2】
で定義される場合、
図1Aに示す単純化した構成が有効となる。諸実施形態では、共振タンクの電流の再循環(エネルギー損失)を抑制するために、Qが3未満になるように選択される。このモデルの構成要素は、分析を簡単にするために高次波を(基本波のために)無視しているが、(第1次波のために)理想化されていることが理解されよう。
【0022】
図示はしないが、構成要素の性能の最適化又は改善のために(ただし、これに限られない)、別の回路を誘電体バリア放電の電力システムに含めてもよい。例えば、電力段共振タンクの回路内において、電力段の性能を劣化させる形でfresに影響を及ぼし得る構成要素の公差に変動があってもよい。これにより、ある実施形態では、共振周波数fresよりもわずかに高い周波数(40kHz以下)から始まるインバータ出力共振タンクの曲線を追跡することにより動作する同調回路を含むことができる。この追跡は、所望の入力電力に達したときに停止する。この種の回路は、ピーク電力点検索回路と呼ぶことができる。この回路を利用して、電力段の個別のインバータに確実に最大電力を出力させることができる。このような回路の例示的な実施形態は、米国特許出願番号第2007/0108040号に記載されており、その全体が本明細書に参照として組み込まれる。このような自動自己同調設計により、インバータ電力段の構成要素の公差、スイッチング周波数の変動、温度変動、オゾンセルスタックの老朽化に対処する上で有利な点がもたらされる。
【0023】
図1Aを再び参照すると、制御信号Aは第1のスイッチ121を駆動し、制御信号Bは第2のスイッチ122を駆動し、制御信号Cは第3のスイッチ123を駆動し、制御信号Dは第4のスイッチ124を駆動する。動作時には、制御信号A及びDを利用して、正弦波の下部レールのためにそれぞれ第1のスイッチ121及び第4のスイッチ124をオンにする。また、制御信号B及びCを利用して、正弦波の上部レールのためにそれぞれ第2のスイッチ122及び第3のスイッチ123をオンにする。単純化したタイミング図を
図1Bに示す。
図1Bは、本発明の一実施形態に係るゼロ電圧スイッチ(ZVS)スイッチング方式と、出力応答の結果とを示す図である。ZVSスイッチング方式は、ソフトスイッチング技術である。ソフトスイッチング技術では、共振技術を利用してゼロ電圧でスイッチをオンにし、ゼロ電流でスイッチをオフにする。この装置におけるスイッチングの損失は、無視できるほど小さい。
【0024】
図1Bに示すように、制御信号に位相シフトを組み込むことにより、全てのスイッチをオフにすることにより生じる出力電圧におけるリンギングを最小化することができる。制御信号A及びD並びに制御信号B及びCに使用される位相シフト量は、このシステムの機能であり、本電力段が使用される特定のシステムにおけるリンギングを抑制するのに適切な位相シフトであればどのようなものでもよい。
【0025】
本発明の様々な実施形態によれば、電力段の制御信号A、B、C、及びDは、パルス幅変調(PWM)方式と周波数変調(FM)制御方式との組み合わせにより、位相シフトZVSのために生成される。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態に係る誘電体バリア放電器の電力系統のブロック図である。
図4を参照すると、電力段410は、高電圧の交流電力を負荷420に供給するために、直流バス電圧V
DCを交流信号に変換する。諸実施形態では、電力段410及び負荷420は、
図1A及び/又は
図3に示すように配置される。生成された電力段の制御信号A、B、C、及びDは、フィードパックループの一部を形成する制御回路430により制御される。制御回路430は、PWM・FM制御方式の位相シフトZVSを含んでもよい。諸実施形態では、電力段の制御信号のための信号生成器は、位相調節及び周波数変動が可能なPWMチップである。ある実施形態では、位相、デューティサイクル、及び周波数の制御を可能にする回路又はチップを利用してもよいことは言うまでもない。回路又はチップへの1または複数の入力により、少なくともデューティサイクル及び出力信号の周波数を調整することができる。制御信号A、B、C、及びDのパルス幅は、制御回路430のPWMフィードバック制御方式により制御される。また、制御信号A、B、C、及びDの周波数は、制御回路430のFMフィードバック制御方式により制御される。本発明の諸実施形態において、PWM・FMフィードバック制御方式は、電流ループ制御方式として実施される。出力電流は電力段の出力で感知され、電力段に提供された信号のパルス幅及び周波数を制御するのに利用される。
【0027】
一実施形態によれば、FM制御方式にPWM制御方式を組み込むことで、PWMのみを基にした制御方式の低負荷ハードスイッチングの発生が抑制される。ハードスイッチングは、インバータが出力する電圧のパルス幅が低負荷で大幅に減少することにより生じる。これにより、共振インダクタの電流も大幅に減少する。したがって、半導体電力装置は、共振インダクタに十分なエネルギーが蓄積されていなければ、ソフトスイッチングを維持することができない。
【0028】
ハードスイッチングにおいて、接合容量に蓄積されたエネルギーは、スイッチがオンになる度にトランジスタに放出される。したがって、ハードスイッチングは電力喪失、電圧/電流スパイク、及び電磁干渉(EMI)の問題を生じる。本明細書に記載のソフトスイッチングトポロジーとPWM・FM制御方式との組み合わせにより、冷却システムを追加する必要性が少なくなる。例えば、上述のように、PWMのみを利用してスイッチング信号を制御すると、低負荷でハードスイッチングが生じることがある。対照的に、本発明の実施形態に係るPWM・FM制御方式は、すべての負荷(全負荷及び低負荷)においてソフトスイッチングを可能にする。
【0029】
「低負荷」条件は、特定のシステムに依存し、全負荷の約5%程度であると一般的に理解される。実際には、低負荷に対する特定の百分率は、依然としてオゾンを生成することができるものである。本開示の実施例に示すように、本発明の実施形態では、全負荷の5%未満でも動作し、オゾンが生成されていなくても機能することができる。
【0030】
動作時は、PWM・FM制御方式により、低負荷における周波数を増加させ、既に減少しているパルス幅を無視することできる。動作中において、PWM・FM制御方式は並列に動作するが、PWM及びFMに与えられた重量は、負荷条件が変わると変動する。これにより、ダイナミックレンジ性能が改善する。例えば、通常動作時(全負荷を含む)において、デューティサイクルを利用して、オゾン出力電力を制御する。一方、低負荷において、スイッチング周波数を増加させて電力をさらに低減する。また、諸実施形態では、電力系統の電力段はソフトスイッチ(例えば、ゼロ電圧スイッチ)により最大出力電力のゼロ%まで下げるように構成されるので、電力系統の信頼性を改善することができる。
【0031】
図5Aは、一実施形態に係る電流ループ制御方式のブロック図である。
図5Aは、全電流ループ制御方式のための各ゲインの転送機能ブロックを提供する。機能ブロックには、プリアンプゲインブロック501、電流ループ補償ゲインブロック502、PWMゲインブロック503、FMゲインブロック504、共振タンク&負荷ゲインブロック505、及びフィードバックゲインブロック506が含まれる。
【0032】
一実施形態によれば、電流ループにおける各ゲインブロックの式は以下のように表される。
「プリアンプゲインブロック」:
【数3】
電流ループ「補償ゲインブロック」:
【数4】
「共振タンク&負荷ゲインブロック」:
H(s)
*Gout(s)=Gpwr(s)
例えば、
【数5】
ただし、
【数6】
である。
電流「フィードバックゲインブロック」:
【数7】
PWMゲインブロック及びFMゲインブロックについて、Kpwm≠Kfm=定数である。
【0033】
図5Aを参照すると、電流設定値(Iset)に対して、一定の値が与えられる。諸実施形態では、これは、プロセッサ(
図5Bに関しては下記参照)を利用して達成される。また、インバータの電力段(
図4の410参照。また、
図5Aには共振タンク&負荷ゲインブロック505が含まれる)からの実電流(Iout)出力は、電流センサにより測定することができ、フィードバックゲインブロック506を通してフィードパックループに入力することができる。Iset(対応するプリアンプゲインブロック501によりプリアンプ段を介して増幅してもよい)及びフィードバックゲインブロック506から出力された電流(Ifbk)は、典型的なゲインブロック502により電流ループ補償器で付加される。そして、位相シフトPWM・FM制御回路又はチップ(対応するPWMゲインブロック503及びFMゲインブロック504を有する)は、このゲイン段の出力を利用して、電力段のゲートドライバ(
図6A及び
図6B参照)のためにスイッチング周波数(Fsw)を生成する。フィードバックループは、出力電流をIset値と等しいレベルに維持するように動作する。
【0034】
低負荷の場合、電流ループ補償ゲインブロック503からの出力を利用して、PWMチップのクロックの周波数時定数を変化させる。Fswは時定数に反比例するため、これにより、周波数調節を行うことができる。したがって、線上の電力が低下すると、周波数調節制御により周波数が下げられ、電力を適切なレベルに維持することが可能となる。
【0035】
図5Aに示す電流ループ図は、アナログ制御方式を示す。
図5Bに示すような他の実施形態では、
図5Aに示すアナログ制御方式の代わりに又は加えて、デジタル制御方式を利用することができる。
図5Bは、ZVS共振インバータのための制御方式の電力ループ及び内部電流ループを有するシステムレベル図である。電流ループ部分は、
図5Aに関して説明したものと同様に機能する。一実施形態によれば、電力ループはデジタル制御方式を利用し、プロセッサを用いて実施される。プロセッサは、低コストのマイクロプロセッサ(μP)又はデジタル信号プロセッサ(DSP)でもよいが、これに限られない。プロセッサの一部又は独立した構成要素として、メモリを含めてもよい。動作時において、プロセッサは、電力設定値(Pset)を供給する。また、直流バス電圧(
図4のV
DC又は
図1及び3に示すVbus)及び直流バス電流(
図1及び3のIbusを参照)を用いて実際の入力電力が測定され、2つの直流入力源(Kvb(s)508a及びKib(s)508b)からのゲインでスケーリングされ、入力電力ゲインブロックのために乗算される。スケーリングされて乗算された直流入力源の積は、電力フィードバック信号(Pfbk)となる。電力設定値Pset及び電力フィードバックPfbkが加算されて、デジタル電力ループ補償器(PID)に供給される。PIDの出力は、
図5Aに関して説明した電流設定値Isetである。
【0036】
図5Aと同様に、
図5Bは、全電力ループ(内部電流ループを含む)制御方式のための各ゲインの転送機能ブロックを示す。一実施形態によれば、電流ループにおける各ゲインブロックの式は、
図5Aに対して与えられたものと同様に表現することができる。電力ループのための各ゲインブロックの式は以下のとおりである。
「デジタル電力ループ補償ゲインブロック」:
【数8】
ただし、
【数9】
(「Fclk」はプロセッサからのクロックの周波数)
である。
入力電力ゲインブロックに対して、電力フィードバックバス電圧「Vbus」ゲインブロックは、
【数10】
で表され、電力フィードバックバス電流「Ibus」ゲインブロックは、
【数11】
で表される。
【0037】
モデルの構成要素は、分析を簡単にするために高次波を(基本波のために)無視しているが、(第1次波のために)理想化されていることが理解されよう。
【0038】
他の実施形態では、入力電力を制御する(及び
図5Bに示す電力ループを利用する)代わりに、出力負荷電力制御を利用してもよい。例えば、出力オゾン電圧及びインバータ段の出力で感知されたインバータ電流を制御ループの一部として用いることができる。オゾンセルは複雑なインピーダンスとして作用し、電流と電圧の両方が中程度の周波数であるため、電流及び電圧の積をリアルタイムで求めるために、帯域幅、スルーレート、サンプリング時間、及び他の因子が必要である。
【0039】
さらに別の実施形態では、
図5Bに示す電流ループは、オゾン濃度に基づいて閉じることができる。例えば、オゾンセルにおけるオゾン濃度は濃度変換器により測定することができ、その出力を利用して電力ループを閉じることができる。
【0040】
図6A及び6Bは、
図5Aについて説明した制御方式による電流ループ回路の2つの実施例を示す。
図6A及び6Bに示すように、インバータ段の出力における電流は、電流センサ601により測定され、Isetとともに電流ループエラーアンプ補償器602に(Ifbkとして)供給される。一実施形態では、
図6Aに示すように、Isetは電流ループエラーアンプ補償器602の正入力端への入力として供給され、Ifbkは、電流ループエラーアンプ補償器602の負入力端への入力として供給される。他の実施形態では、
図6Bに示すように、IsetとIfbkとは、電流ループエラーアンプ補償器602の負入力端へ供給されるように合計される。電流ループエラーアンプ補償器602の出力は、位相シフトPWMコントローラ603に対してデューティサイクルコマンドを供給し、位相シフトPWMコントローラ603がゲートドライバ604に対するスイッチング周波数Fswを生成するのを可能にする。スイッチング周波数は、電流ループエラーアンプ補償器602の出力を受け取り信号を位相シフトPWMコントローラ603に出力する反転増幅器605を介して調節された周波数でもよい。反転増幅器605の出力は、PWMクロックの周波数時定数を変化させ、周波数の調節を可能にする。
【0041】
ゲートドライバ604は、
図1A−1B(スイッチ121、122、123、及び124)及び
図3(電力段320のスイッチ321、322、323、及び324)に関して説明したようなフルブリッジのインバータ段のために制御信号A、B、C、及びDを生成する。
【0042】
PWMコントローラ603に接続されたキャパシタCt及びレジスタRtは、反転増幅器605からの電流補償信号によって調整される最初の固定周波数を供給する。
図6A及び6Bに示すような反転増幅器の構成において、オペアンプを使用して、デューティサイクル(パルス幅)を制御するのに使用される複数の(又はわずかな)信号により周波数調節を制御するために使用される信号を調整することができる。別の実施形態では、FM制御のための増幅器のゲインは、変数ゲイン増幅器を用いて変更することができる。このゲインは、プロセッサによって送信されたゲイン制御信号を用いて制御してもよい。一実施形態では、システムにおいて一定の条件が満たされた場合に、プロセッサに関連するメモリに保存された規定の変更を加えてもよい。他の実施形態では、ゲイン調整のユーザコントロールを可能にするためにユーザインタフェースを含んでもよい。ユーザインタフェースはプロセッサに接続して、通信させてもよい。また、ユーザインタフェースは、(例えば
図6AのR4又は
図6BのR4を調整できる)電位差計を介して抵抗の手動調整を含んでもよい。
【0043】
図7〜9は、本発明のいくつかの実施形態に係る電流ループの構成を示す。例えば、
図7を参照すると、第2の実施形態に係る電流ループ制御方式は、
図5Aに示す方式と同様の方式である。しかし、電力段のゲートドライバ(
図6A及び6Bの604参照)のためのスイッチング周波数(Fsw)を生成するための位相シフトPWM・FMコントローラで使用されている補償ゲインブロック702段の出力の代わりに、FMゲインブロック704段は、Iset(対応するプリアンプゲインブロック701を有するプリアンプ段を介して増幅してもよい)及び電流ループ補償器と並行してフィードバックゲインブロック706から出力された電流(Ifbk)を受け取る。
【0044】
図8に示す実施形態では、FMゲインブロック804段は、
図5A又は
図7に関して説明したIset電流及びフィードバックゲインブロック806からのフィードバック電流の代わりに周波数を制御するための入力電力を使用する。例えば、直流バス電圧(
図4のV
DC又は
図1及び3に示すVbus)及び直流バス電流(
図1及び3のIbusを参照)は、2つの直流入力源(Kvb(s)808a及びKib(s)808b)からのゲインによりスケーリングされ、乗算された後、FMゲインブロック804を通して入力される。
【0045】
図9に示す実施形態では、FMゲインブロック904段は、
図8に関して説明した入力電力の代わりに周波数を制御するための出力電力を使用する。
【0046】
諸実施形態では、
図5Bに関して説明した電力ループ部分は、
図7〜9に示す電流ループの1つにより構成することができる。
【0047】
諸実施形態では、有利なことに、スペースを取り他の冷却技術を必要とする電気回路や保護キャパシタを追加する必要なく、電力を維持しながら電力線変動を受け入れるための基準を満たすことができる。特に、周波数変調制御により、電力線上の負荷による変動は、スイッチを駆動する周波数及び線上の電力を維持する能力を変動させる。本PWM・FM制御方式により満たすことができる基準の例は、SEMI F47規格「半導体プロセス装置電圧サグイミュニティのための仕様」である。これは、半導体プロセス、計測、及び自動試験機器で使用されるツールは阻害なしに作動しなければならないという電圧サグライドスルー能力(又は閾値)を規定する。
【0048】
本電力システム及び電力制御技術の実施形態は、従来のシステムのサイズを増加させることなく実施することができる。様々な実施形態では、本電力システムは、従来と同等又はそれ以上の出力電力及び制御を可能にしながら、従来の非常駐電力コンバータより狭いスペースにも適合可能である。
【0049】
本発明及びその多くの利点は、例として示される下記の実施例によりさらに明らかになる。下記の実施例は、本発明の方法、応用、実施形態、変形を例示する。これらは本発明を限定するものとは見なされないことは言うまでもない。本発明について、多くの変更及び修正が可能である。
【0050】
PSpice(登録商標)回路シミュレータツール(ケイデンス・デザイン・システムズ社(Cadence Design Systems, Inc.)の登録商標)を使用して、本発明の一実施形態にしたがって設計された誘電体バリア放電器のシミュレーションを行った。
【0051】
実施例では、10kWの二重オゾン電力トレイン(電力トレイン1つにつき5kW)のためのPSpice(登録商標)によるシミュレーション結果を実験結果と比較して、本システム及び本発明の機能性を示した。
図10は、本発明の一実施形態に係る多目的ZVS共振インバータ電流ループデザインのPSpice(登録商標)によるシミュレーションのために用いたPSpice(登録商標)概略図である。
図10は
図6Bの実施形態と同様のものを示し、フィードバック電流及び電流設定点Isetが合計された後、補償器に入力される。また、電流は、コモンモードノイズを避けるために差動増幅器を用いて計測される。共振タンク及びオゾンセルのシミュレーションは、
図1Aに関して説明したインダクタ(105)、キャパシタ(111)、及びレジスタ(112)の構成を用いて行う。
【0052】
シミュレーションを行うために、入力Vbus電圧をローラインからハイライン(200〜350V
DC)に変化させ、Isetを0.5以上3.0以下のV
DC(0.5%〜110%負荷)で電圧源を用いて変更した。これら2つの条件は、期待される動作範囲をカバーする。
【0053】
(実施例1−低負荷)
低負荷での電流ループに対するシミュレーション結果を
図11A〜11Cに示し、低負荷での電流ループに対する実験結果を
図11Dに示す。
図11Aは、Vbusが350Vに設定され、低負荷条件が(5kWシステムの最大出力の5%オゾン濃度の250W以下の出力電力低負荷条件と比較して)25W未満の出力負荷電力を表していることを示す。
図11Bは、インバータ段の出力電圧(Vinv)及び電流(Iinv)のプロットを示す。
図11Cは、電力段の出力電圧(Vout)及び電流(Iout)(すなわち、オゾンセルに供給される電圧及び電流)のプロットを示す。
図11Dは、Vbus=300V、Ibus=0.8A、Pin=240Wである実験システムのためのインバータ段の出力電圧Vinv及び電流Iinvのスコープ波形を示す。
図11Cに示すように、また、
図11Dに示す波形から確認されるように、PWM・FM制御により、低負荷でもソフトスイッチングが可能になる。なお、シミュレーション波形は0.5%のIsetであったが、実験はオゾン生成のためのプロセスの制限により5%以下のIsetで実施したので、シミュレーション結果及び実験結果の波形のプロットのスケールは同一ではない。
【0054】
(実施例2−全負荷)
全負荷における電流ループのシミュレーション結果を
図12A〜12Cに示し、110%の全負荷における電流ループの実験結果を
図12Dに示す。
図12Aは、Vbusが350Vに設定され、全負荷条件が約5.5kWの出力負荷電力(単一段)を表すことを示す。
図12Bは、インバータ段の出力電圧(Vinv)及び電流(Iinv)のプロットを示す。
図12Cは、電力段出力電圧(Vout)及び電流(Iout)(すなわち、オゾンセルに供給される電圧及び電流)のプロットを示す。
図12Dは、Vbus=300V、Ibus=18.3A、Pin=5.5kW以下である実験システムのためのインバータ段の出力電圧Vinv及び電流Iinvのスコープ波形を示す。
図12Cに示すように、また、
図12Dに示す波形から確認されるように、PWM・FM制御により、ソフトスイッチング及び出力電力の増加が可能になる。
【0055】
本明細書における「一実施形態」、「実施形態」、「例示的実施形態」、「第2の実施形態」等の参照は、参照された実施形態に関して記載された特定の機能、構造、又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書のどこでこれらフレーズが出てきても、同一の実施形態を参照するとは限らない。また、本明細書に記載の発明や実施形態のあらゆる要素又は制限を、他の要素又は制限(個別に、又はあらゆる組み合わせにより)と組み合わせることができる。本明細書に記載の別の発明又は実施形態、及びこのような組み合わせの全ては、その制限なしに本発明の範囲に含まれることが期待される。
【0056】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示だけを目的とし、それに照らしてその種々の変形又は変更が当業者に示唆され、本願の精神及び範囲に含まれることが理解されよう。