(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量が、12.0重量%から28.0重量%の範囲内である、請求項1に記載の押出ブロー成形品。
プロピレンコポリマー(PC)が、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリクス(M)と、前記マトリクス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相プロピレンコポリマー(RAHECO)である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の押出ブロー成形品。
異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)を有し、さらに、ビスブレーキング前の前記ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、少なくとも2つの異なるランダムプロピレンコポリマー部分を有し、さらに、前記2つのランダムプロピレンコポリマー部分は、コモノマー含有量及び/又はメルトフローレートMFR2(230℃)が異なる、請求項13に記載の押出ブロー成形品。
前記2つのランダムポリマーコポリマー部分が、第1ランダムプロピレンコポリマー部分、(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)であり、さらに、
(a) 第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりも、コモノマー含有量及びメルトフローレートMFR2(230℃)が高いか;
又は
(b) 第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)よりも、コモノマー含有量及びメルトフローレートMFR2(230℃)が高いか;
又は
(c) 第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりも、コモノマー含有量が高いが、メルトフローレートMFR2(230℃)は低いか;
又は
(d) 第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)よりも、コモノマー含有量が高いが、メルトフローレートMFR2(230℃)は低い、
請求項14又は請求項15に記載の押出ブロー成形品。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の側面及び第2の側面を、さらに詳細に定義する。
【0018】
まず、押出ブロー成形品を構成するプロピレンコポリマー(PC)を定義する。続いて、押出成形品、そしてプロピレンコポリマー(PC)の、プロピレンコポリマー(PC)を有する押出成形品の光学特性を改良するための使用について説明する。
【0019】
プロピレンコポリマー(PC)/異相プロピレンコポリマー(RAHECO)
以下に詳細に定義されるように、本発明のプロピレンコポリマー(PC)は、好ましい実施形態によれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリクス(M)と当該マトリクス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相プロピレンコポリマー(RAHECO)である。したがって、プロピレンコポリマー(PC)についての全ての特性は、別段の指定が無い限り異相プロピレンコポリマー(RAHECO)にも適用可能である。
【0020】
したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、プロピレン以外にコモノマーも有する。好ましくは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、プロピレン以外に、エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィンを有する。したがって、本発明において、用語「プロピレンコポリマー(PC)」及び用語「異相プロピレンコポリマー(RAHECO)」は、
(a) プロピレン
及び
(b) エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン
由来の単位を有し、好ましくは当該単位からなるポリプロピレンと解される。
【0021】
よって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、プロピレンと重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のモノマーを有する。好ましくは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。好ましい実施形態によれば、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。
【0022】
加えて、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくはコモノマー含有量が極めて特定の範囲内にあることが好ましく、これが柔軟性と良好な光学特性に貢献している。よって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、4.5重量%から12.0重量%の範囲内であることを要し、例えば4.5重量%から12.0重量%未満の範囲内、より好ましくは4.5重量%から11.0重量%の範囲内、例えば4.5重量%から11.0重量%未満の範囲内、さらにより好ましくは4.5重量%又はそれより大きく10.0重量%までの範囲内、いっそうより好ましくは5.0重量%より大きく9.0重量%までの範囲内、例えば6.0重量%から9.0重量%の範囲内である。
【0023】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、低温キシレン可溶分(XCS)画分中のコモノマー量によりさらに定義することができる。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)画分中のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、12.0重量%から28.0重量%の範囲内であることが好ましく、さらにより好ましくは12.0重量%から22.0重量%の範囲内、いっそうより好ましくは14.0重量%から20.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは15.0重量%から19.0重量%の範囲内である。
【0024】
低温キシレン可溶分(XCS)画分中に存在するコモノマーに関しては、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)について記載される情報が参照される。したがって、具体的な実施形態によれば、低温キシレン可溶分(XCS)画分は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、低温キシレン可溶分(XCS)画分は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。好ましい実施形態によれば、低温キシレン可溶分(XCS)画分は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。
【0025】
上記の情報に関し、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、不等式(I)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(Ia)、さらにより好ましくは不等式(Ib)、いっそうより好ましくは不等式(Ic)を満たし、
【数1】
式中、
Co(total)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のコモノマー含有量[重量%];
Co(XCS)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量[重量%]である。
【0026】
更に好ましい実施形態によれば、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、加えて又は代わりに、低温キシレン可溶分(XCS)画分に対する全コモノマー含有量により定義される。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、不等式(II)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(IIa)、さらにより好ましくは不等式(IIb)を満たし、
【数2】
式中、
Co(total)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のコモノマー含有量[重量%];
XCSは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)画分の含有量[重量%]である。
【0027】
また、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)画分は、その固有粘度により特定されることが好ましい。固有粘度(IV)の低さは、重量平均分子量の低さを反映している。本発明では、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)画分は、固有粘度(IV)が1.3dl/gから3.0dl/gの範囲内であることを要することが好ましく、例えば1.5dl/gから3.0dl/gの範囲内、より好ましくは1.7dl/gから2.8dl/g未満の範囲内、いっそうより好ましくは1.8dl/gから2.7dl/gの範囲内である。
【0028】
加えて又はあるいは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)画分は、多分散性(Mw/Mn)が、3.5より大きく8.0までの範囲内、より好ましくは4.0から7.5の範囲内、いっそうより好ましくは4.5から7.0の範囲内である。
【0029】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の他の特有の特徴は、低温キシレン可溶分(XCS)画分がどちらかと言えば中程度であることである。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、低温キシレン可溶分画分が、20.0重量%から40.0重量%の範囲内であることが好ましく、好ましくは22.0重量%から35.0重量%の範囲内、例えば25.0重量%以上34.0重量%未満の範囲内、いっそうより好ましくは27.0重量%から33.5重量%の範囲内である。
【0030】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレンに不溶な部分は、低温キシレン不溶分(XCI)画分である。好ましくは、この画分もいくつかの特有の特性を示す。
【0031】
したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン不溶分(XCI)画分は、固有粘度(IV)が、1.8dl/g又はそれより大きく、より好ましくは1.8dl/gから3.0dl/g未満の範囲内、いっそうより好ましくは1.8dl/gから2.7dl/gの範囲内、さらにより好ましくは1.9dl/gから2.6dl/gの範囲内である。
【0032】
したがって、低温キシレン可溶分(XCS)画分と低温キシレン不溶分(XCI)画分の固有粘度は、概ね同程度であることが好ましい。よって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、不等式(III)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(IIIa)、さらにより好ましくは不等式(IIIb)を満たし、
【数3】
式中、
IV(XCS)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)の固有粘度(IV)[dl/g]、
IV(XCI)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン不溶分(XCI)の固有粘度(IV)[dl/g]である。
【0033】
好ましくは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン不溶分(XCI)画分は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が、2.0g/10分から6.0g/10分、例えば2.0g/10分より大きく6.0g/10分までの範囲内、より好ましくは2.5g/10分から6.0g/10分、例えば2.5g/10分より大きく5.0g/10分までの範囲内、いっそうより好ましくは2.0g/10分から5.0g/10分、例えば2.0g/10分より大きく5.0g/10分までの範囲内、さらにより好ましくは2.5g/10分から4.5g/10分、例えば2.5g/10分より大きく4.5g/10分までの範囲内である。
【0034】
加えて又はあるいは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン不溶分(XCI)画分は、多分散性(Mw/Mn)が、3.5より大きく8.0までの範囲内、より好ましくは4.0から7.5の範囲内、いっそうより好ましくは4.5から7.0の範囲内である。
【0035】
したがって、低温キシレン可溶分(XCS)画分と低温キシレン不溶分(XCI)画分の多分散性(Mw/Mn)は、概ね同程度であることが好ましい。よって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、不等式(IV)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(IVa)、さらにより好ましくは不等式(IVb)を満たし、
【数4】
式中、
P(XCS)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)の多分散性(Mw/Mn)、
P(XCI)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)の多分散性(Mw/Mn)である。
【0036】
好ましい実施形態の一つによれば、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン不溶分(XCI)画分中のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、2.0重量%から7.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは2.0重量%から6.0重量%の範囲内、いっそうより好ましくは2.5重量%から5.0重量%の範囲内である。
【0037】
また、これらの画分のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、特定の比率であることが好ましい。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、不等式(V)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(Va)、さらにより好ましくは不等式(Vb)、いっそうより好ましくは不等式(Vc)を満たし、
【数5】
式中、
Co(XCS)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン可溶分(XCS)のコモノマー含有量[重量%]、
Co(XCI)は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の低温キシレン不溶分(XCI)のコモノマー含有量[重量%]である。
【0038】
好ましくは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、機械的性質が熱的に安定であることが望ましく、これにより、例えば加熱滅菌処理を行うことができる。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、溶融温度が、少なくとも145℃であることが好ましく、例えば145℃から160℃、より好ましくは146℃から159℃の範囲内、いっそうより好ましくは148℃から158℃の範囲内、例えば148℃から155℃の範囲内である。
【0039】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が、2.0g/10分から6.0g/10分、例えば2.0g/10分より大きく6.0g/10分までの範囲内、より好ましくは2.0g/10分から5.0g/10分、例えば2.0g/10分より大きく5.0g/10分までの範囲内、いっそうより好ましくは2.5g/10分から4.5g/10分、即ち2.5g/10分より大きく4.5g/10分までの範囲内である。
【0040】
特に、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、その特定の光学特性をさらなる特徴とする。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、滅菌処理前のボトル外観ファクター(BAF)が、式(I)、好ましくは式(Ia)、より好ましくは式(Ib)であり、
【数6】
式中、
Hは、ヘイズ値、
Cは、明澄度値、
Gは、光沢度値であり、
さらに、
ヘイズ、明澄度及び光沢度は、ASTM D1003−07に準じ、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる壁厚0.3mmのボトルから切り出した大きさ0.3x60x60mm
3の試験片について求める。
【0041】
加えて又はあるいは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、滅菌処理後のボトル外観ファクター(BAF)が、式(II)、好ましくは式(IIa)、より好ましくは式(IIb)であり、
【数7】
式中、
Hは、ヘイズ値、
Cは、明澄度値、
Gは、光沢度値であり、
さらに、
ヘイズ、明澄度及び光沢度は、ASTM D1003−07に準じ、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる壁厚0.3mmの滅菌済みボトル(実施例に記載のもの)から切り出した大きさ0.3x60x60mm
3の試験片について求める。
【0042】
また、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ヘキサン可溶分含有量が、10.0重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%より多く8.0重量%未満、いっそうより好ましくは2.0重量%から6.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは2.5重量%以上5.5重量%未満の範囲内、さらにいっそうより好ましくは2.5重量%から5.2重量%の範囲内、例えば2.5重量%から5.0重量%の範囲内である。
【0043】
上記のように、プロピレンコポリマー(PC)は、低温キシレン可溶分(XCS)画分がかなりの量であることを特徴とする。一方で、プロピレンコポリマー(PC)は、好ましくは高温で溶融する結晶性画分の量がかなり多いことも特徴とする。したがって、プロピレンコポリマー(PC)は、結晶性ポリマーと非晶質材料の混合物である。そのようなタイプのポリマーは、異相プロピレンコポリマーに分類される。異相プロピレンコポリマーは、(半)結晶性ポリプロピレン等のポリマーマトリクスを有し、その中に弾性プロピレンコポリマー等の非晶質材料が分散している。よって、好ましい実施形態によれば、プロピレンコポリマー(PC)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)である。より正確には、プロピレンコポリマー(PC)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリクス(M)と、その中に分散する弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相プロピレンコポリマー(RAHECO)である。よって、マトリクス(M)には、(細かく)分散した当該マトリクス(M)では無い内包物が含まれ、当該内包物には、弾性プロピレンコポリマー(E)が含まれる。好ましくは、本発明における用語「内包物」とは、マトリクス(M)と内包物が異相プロピレンコポリマー(RAHECO)内で異なる相を形成し、当該内包物を、例えば電子顕微鏡又は原子間力顕微鏡等の高解像度顕微鏡又は動的機械的熱分析(DMTA)により観察できるものを指すものとする。具体的には、DMTAでは、少なくとも2つの異なるガラス転移温度の存在によって多相構造を同定することができる。
【0044】
好ましくは、本発明に係る異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ポリマー成分として、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)のみを有する。換言すれば、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、さらに添加剤、特にα−核形成剤を含有しうるが、他のポリマーを、全異相プロピレンコポリマー(RAHECO)に対して5重量%より大きく、より好ましくは3重量%より大きく、例えば1重量%より大きく含有しない。そのような低量で存在しうる付加的なポリマーの一つが、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造により得られる副反応生成物のポリエチレンである(詳細は下記参照)。したがって、本発明の異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、弾性プロピレンコポリマー(E)及びこの段落に記載される量の任意のポリエチレンのみを含有することが特に好ましい。
【0045】
好ましくは、マトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)の重量比は、60/40から90/10、より好ましくは70/30から85/15、さらにより好ましくは75/25から85/15である。
【0046】
以下、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)をさらに詳細に定義する。
【0047】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のコモノマーを有する。好ましくは、本発明に係るランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、本発明のランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。好ましい実施形態によれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。
【0048】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量は、7.0重量%以下、より好ましくは6.0重量%以下、いっそうより好ましくは1.0重量%から7.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.5重量%から6.0重量%の範囲内、いっそうより好ましくは2.5重量%から6.0重量%の範囲内、例えば3.0重量%から5.5重量%未満の範囲内である。
【0049】
また、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、不等式(VI)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(VIa)、さらに好ましくは不等式(VIb)、いっそうより好ましくは不等式(VIc)、さらにいっそうより好ましくは不等式(VId)を満たし、
【数8】
式中、
Co(total)は、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のコモノマー含有量[重量%]、
Co(RPP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量[重量%]である。
【0050】
用語「ランダム」は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)並びに第1プロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマーが、当該プロピレンコポリマー中にランダムに分散していることを指す。ランダムという用語は、IUPAC(ポリマー科学の基礎用語集、IUPAC recommendations、1996)に準じて解される。
【0051】
マトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量は、マトリクス(M)の低温キシレン可溶分の量にも影響を及ぼす。よって、マトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の低温キシレン可溶分(XCS)画分の量は、20.0重量%又はそれ未満であることが好ましく、好ましくは5.0重量%から20.0重量%以下(又は未満)の範囲内、より好ましくは8.0重量%から20.0重量%以下(又は未満)の範囲内、例えば10.0重量%から19.0重量%の範囲内である。
【0052】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、少なくとも2つのポリマー部分、例えば2つ又は3つのポリマー部分を有し、これらは全てプロピレンコポリマーである。好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、少なくとも2種の異なるランダムプロピレンコポリマー部分、例えば2種の異なるランダムプロピレンコポリマー部分を有し、さらに、これら2つのランダムプロピレンコポリマー部分は、コモノマー含有量が異なる。
【0053】
好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の2種のランダムプロピレンコポリマー部分のうち、一方はコモノマーが乏しい部分、他方はコモノマーが豊富な部分であり、さらに、当該コモノマーが乏しい部分及びコモノマーが豊富な部分が、不等式(VII)、より好ましくは不等式(VIIa)、いっそうより好ましくは不等式(VIIb)を満たし、
【数9】
式中、
Co(lean)は、コモノマー含有量が低いランダムプロピレンコポリマー部分、即ちコモノマーが乏しい部分のコモノマー含有量[重量%]、
Co(rich)は、コモノマー含有量が高いランダムプロピレンコポリマー部分、即ちコモノマーが豊富な部分のコモノマー含有量[重量%]である。
【0054】
さらにより好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、第1プロピレンコポリマー部分(R−PP1)と、第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)とを有し、好ましくはこれらの部分からなり、さらに、当該第1プロピレンコポリマー部分(R−PP1)と第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、コモノマー含有量が異なる。
【0055】
よって、実施形態の一つによれば、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりもコモノマー含有量が高い。
【0056】
他の実施形態によれば、第2ランダムコポリマー部分(R−PP2)は、第1ランダムコポリマー部分(R−PP1)よりもコモノマー含有量が高い。
【0057】
よって、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、共に不等式(VIII)を満たすことが特に好ましく、より好ましくは不等式(VIIIa)、いっそうより好ましくは不等式(VIIIb)を満たし、
【数10】
式中、
Co(R−PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のコモノマー含有量[重量%]、
Co(R−PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマー含有量[重量%]である。
【0058】
よって、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、コモノマー含有量が、4.0重量%又はそれ未満であることが好ましく、より好ましくは3.5重量%又はそれ未満、さらにより好ましくは0.2重量%から4.0重量%の間、いっそうより好ましくは0.5重量%から3.5重量%の間、例えば1.0重量%から3.0重量%の間である。
【0059】
一方、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、好ましくはコモノマー含有量が、1.0重量%から12.0重量%の範囲内、いっそうより好ましくは1.5重量%から10.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは2.5重量%から9.0重量%の範囲内であるが、但し、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマー含有量は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のコモノマー含有量よりも、少なくとも2.5重量%、より好ましくは少なくとも3.0重量%、例えば3.0重量%から7.0重量%高いものとする。
【0060】
第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のプロピレンと共重合可能なコモノマーは、それぞれ、エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセンである。好ましくは、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、それぞれ、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、それぞれ、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。好ましい実施形態によれば、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、同一のコモノマー、即ちエチレンのみを有する。
【0061】
好ましくは、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)と第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量比は、20/80から80/20、より好ましくは30/70から70/30、例えば40/60から60/40である。
【0062】
上記のように、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のさらなる成分は、マトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)である。弾性プロピレンコポリマー(E)に用いられるコモノマーについては、異相プロピレンコポリマー(RAHECO)及びランダムプロピレンコポリマー(R−PP)について記載した各情報が参照される。したがって、弾性プロピレンコポリマー(E)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のコモノマーを有する。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(E)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、弾性プロピレンコポリマー(E)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。よって、特に好ましい実施形態によれば、弾性プロピレンコポリマー(E)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)は、同じコモノマーを有することが特に好ましい。したがって、具体的な実施形態の一つによれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び弾性プロピレンコポリマー(E)は、プロピレン及びエチレンのみを有する。
【0063】
弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量は、好ましくは38.0重量%以下、例えば12重量%から38重量%の範囲内、より好ましくは12.0重量%から25.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは14.0重量%より大きく22.0重量%までの範囲内、いっそうより好ましくは15.0重量%より大きく20.0重量%までの範囲内である。
【0064】
詳細は後述するが、最終的なプロピレンコポリマー(PC)、即ち最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくはビスブレーキング工程により得られたものである。したがって、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)やその各部分、及び弾性プロピレンコポリマー(E)は、それ自体を得ることはできない。しかしながら、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー(R−PP1)及び異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、以下に定められる重合法によって、ビスブレーキング前に得ることができる。これらのビスブレーキングされていない材料から、コモノマー含有量を分析することができる。また、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマー含有量は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)から測定したコモノマー値から算出することでき、弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)及び異相プロピレンコポリマー(RAHECO)から測定したコモノマー値から算出することができる。ビスブレーキング工程は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)及び弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量を変化させるものではない。
【0065】
本発明に規定されるプロピレンコポリマー、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、α−核形成剤及び酸化防止剤、またスリップ剤やブロッキング防止剤等の添加剤を最大で5.0重量%含有しうる。好ましくは、添加剤含有量は、3.0重量%未満、例えば1.0重量%未満である。
【0066】
好ましくは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、α−核形成剤を有する。いっそうより好ましくは、本発明はβ−核形成剤を含まない。したがって、α−核形成剤は、好ましくは以下からなる群から選択される:
(i) モノカルボン酸及びポリカルボン酸の塩、例えばナトリウムベンゾエート又はアルミニウムtert−ブチルベンゾエート、及び
(ii) ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)及びメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール又はジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)等のC
1〜C
8アルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール等の置換ノニトール誘導体、及び
(iii) リン酸ジエステルの塩、例えば、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファート又はアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート]、及び
(iv) ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマー(詳細は後述)、及び
(v) これらの混合物。
【0067】
このような添加剤は、一般に市販されており、例えば「Plastic Additives Handbook」(第5版、2001年、Hans Zweifel)の871頁〜873頁に記載されている。
【0068】
好ましくは、プロピレンコポリマー(PC)、例えば最的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、α−核形成剤を最大5重量%含む。好ましい実施形態によれば、プロピレンコポリマー(PC)、例えば最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、α−核形成剤を200ppm以下、より好ましくは1ppmから200ppm、より好ましくは5ppmから100ppm含有しており、特に、当該α−核形成剤は、ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール等の置換ノニトール誘導体、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0069】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)等のビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを含有することが特に好ましい。具体的な実施形態の一つによれば、プロピレンコポリマー(PC)、例えば最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)等のビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを含有する。好ましくは、ビニルシクロアルカンはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーであり、BNTテクノロジーによりプロピレンコポリマー(PC)、例えば最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)へと導入される。
【0070】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは特定の方法により得られる。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば最終的な異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、好ましくは以下の工程を有する連続重合法により得られる:
(a) 第1反応器(R1)において、
プロピレン並びに
エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン、好ましくはエチレン
を重合して第1ポリマー部分、即ち第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を得る工程と、
(b) 第1ポリマー部分、即ち第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)を第2反応器(R2)に移す工程と、
(c) 前記第2反応器(R2)において、第1ポリマー部分、即ち第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の存在下、
プロピレン並びに
エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン、好ましくはエチレン
を重合して第2ポリマー部分、即ち第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)を得て、第1及び第2ポリマー部分がランダムプロピレンコポリマー(R−PP)を形成する工程と、
(d) 前記ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)を第3反応器(R3)に移す工程と、
(e) 前記第3反応器(R3)において、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の存在下、
プロピレン並びに
エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン、好ましくはエチレン
を重合して弾性プロピレンコポリマー(E)である第3ポリマー部分を得て;第3ポリマー部分及びランダムプロピレンコポリマー(R−PP)が、プロピレンコポリマー、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を形成する工程と、
(f) 第3反応器(R3)からプロピレンコポリマーを取り出す工程と、
(g) 任意で前記プロピレンコポリマー、即ち前記異相プロピレンコポリマー(RAHECO)をビスブレーキングする工程。
【0071】
好ましくは、第2反応器(R2)と第3反応器(R3)の間で、モノマーを除去(flash out)する。
【0072】
用語「連続重合法」は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、直列に接続された少なくとも3つの反応器、好ましくは3つの反応器において生成されることを指す。したがって、本方法は、少なくとも第1反応器(R1)、第2反応器(R2)及び第3反応器(R3)を有する。用語「重合反応器」は、主重合反応が起こることを指すものとする。よって、本プロセスが3つの重合反応器からなるとする場合、この定義は、プロセス全体に、例えばプレ重合反応器におけるプレ重合工程が含まれる可能性を除外するものではない。用語「からなる」は、主たる重合反応器について限定する表現にすぎない。
【0073】
上記のように、最初の2つの反応器では、マトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)が生成される。より正確には、第1反応器(R1)では、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)が生成される一方、第2反応器(R2)では、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)が生成される。
【0074】
第1反応器(R1)において使用されるコモノマーは、好ましくは、上記のように第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)に用いられるものと同じである。したがって、特に好ましいコモノマーは、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンである。具体的な実施形態の一つによれば、コモノマーはエチレンである。
【0075】
好ましくは、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)と第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量比は、20/80から80/20、より好ましくは30/70から70/30、さらにより好ましくは40/60から60/40である。
【0076】
したがって、第1反応器(R1)では、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)が生成される一方、第2反応器(R2)では、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)が生成され、これによりランダムプロピレンコポリマー(R−PP)が得られる。
【0077】
ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のプロピレンと共重合可能なコモノマーは、エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセンである。好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。好ましい実施形態によれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、同一のコモノマー、即ちエチレンのみを有する。
【0078】
また、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)、即ち第1反応器(R1)のポリマーは、低温キシレン可溶分(XCS)画分が、好ましくは10.0重量%又はそれ未満、より好ましくは1.0重量%から10.0重量%の範囲内、いっそうより好ましくは2.0重量%から9.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは2.5重量%から8.0重量%の範囲内である。
【0079】
一方、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)、即ち第2反応器(R2)において生成されるポリマーは、低温キシレン可溶分(XCS)画分が、好ましくは40重量%又はそれ未満、より好ましくは2.0重量%から35重量%の範囲内、いっそうより好ましくは3.0重量%から30重量%の範囲内である。
【0080】
したがって、第2反応器における低温キシレン可溶分(XCS)の全含有量、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の低温キシレン可溶分(XCS)画分は、好ましくは20.0重量%又はそれ未満、より好ましくは5.0重量%から20.0重量%以下(又は未満)、いっそうより好ましくは8.0重量%から20.0重量%以下(又は未満)、さらにより好ましくは10.0重量%から19.0重量%である。
【0081】
好ましくは、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が、0.3g/10分から7.0g/10分の範囲内、より好ましくは1.0g/10分から5.5g/10分の範囲内、さらにより好ましくは1.0g/10分から4.5g/10分の範囲内である。
【0082】
好ましくは、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が、好ましくは0.1g/10分から5.5g/10分の範囲内、より好ましくは0.3g/10分から4.5g/10分の範囲内である。
【0083】
したがって、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、少なくとも2つのポリマー部分、例えば2又は3つのポリマー部分を有し、これらは全てプロピレンコポリマーである。好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、少なくとも2種の異なるランダムプロピレンコポリマー部分、例えば2種の異なるランダムプロピレンコポリマー部分、即ち第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)を有し、さらに、これら2種のランダムプロピレンコポリマー部分は、コモノマー含有量及び/又はメルトフローレートMFR
2(230℃)、好ましくはコモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が異なる。
【0084】
好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の2つのランダムポリマーコポリマー部分のうち、一方はコモノマーが乏しい部分、他方はコモノマーが豊富な部分であり、さらに、コモノマーが乏しい部分及びコモノマーが豊富な部分は、不等式(VII)、より好ましくは不等式(VIIa)、いっそうより好ましくは不等式(VIIb)を満たし、
【数11】
式中、
Co(lean)は、コモノマー含有量が低いランダムプロピレンコポリマー部分、即ちコモノマーが乏しい部分のコモノマー含有量[重量%]、
Co(rich)は、コモノマー含有量が高いランダムプロピレンコポリマー部分、即ちコモノマーが豊富な部分のコモノマー含有量[重量%]である。
【0085】
不等式(VII)に加えて、又は不等式(VII)に代えて、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の2つのランダムポリマーコポリマー部分のうち、一方が低メルトフローレートMFR
2(230℃)部分、他方が高メルトフローレートMFR
2(230℃)部分であり、さらに、低フロー部分及び高フロー部分が、不等式(IX)、より好ましくは不等式(IXa)、いっそうより好ましくは不等式(IXb)を満たし、
【数12】
式中、
MFR(high)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が高いランダムプロピレンコポリマー部分のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(low)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が低いランダムプロピレンコポリマー部分のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0086】
さらにより好ましくは、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、第1プロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)を有し、好ましくはこれらの部分からなり、さらに、第1プロピレンコポリマー部分(R−PP1)と第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、コモノマー含有量及び/又はメルトフローレートMFR
2(230℃)、好ましくはコモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が異なる。
【0087】
よって、実施形態の一つによれば、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、コモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりも高い。
【0088】
他の実施形態によれば、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、コモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)よりも高い。
【0089】
さらに他の実施形態によれば、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりも、コモノマー含有量が高いが、メルトフローレートMFR
2(230℃)は低い。
【0090】
さらなる実施形態によれば、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)よりも、コモノマー含有量が高いが、メルトフローレートMFR
2(230℃)は低い。
【0091】
よって、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、共に不等式(VIII)を満たすことが特に好ましく、より好ましくは不等式(VIa)、いっそうより好ましくは不等式(VIIIb)を満たし、
【数13】
式中、
Co(R−PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のコモノマー含有量[重量%]、
Co(R−PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマー含有量[重量%]である。
【0092】
不等式(VIII)に加えて、又は不等式(VIII)に代えて、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、共に不等式(X)、より好ましくは不等式(Xa)、いっそうより好ましくは不等式(Xb)を満たし、
【数14】
式中、
MFR(R−PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(R−PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0093】
具体的な実施例の一つによれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)を有し、好ましくはこれらの部分からなり、さらに、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、
(a) 不等式(XI)、より好ましくは不等式(XIa)、いっそうより好ましくは不等式(XIb)を満たし、
【数15】
式中、
Co(R−PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のコモノマー含有量[重量%]、
Co(R−PP)は、ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP)のコモノマー含有量[重量%]であり、
及び/又は
(b) 不等式(XII)、より好ましくは不等式(XIIa)、いっそうより好ましくは不等式(XIIb)を満たし、
【数16】
式中、
MFR(R−PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(R−PP)は、ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0094】
ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP)、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)について記載される値は、ビスブレーキング前(工程(a)〜(d))の値である。
【0095】
第2反応器(R2)の後、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のマトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)が得られる。続いて、マトリクス(M)は、第3反応器(R3)へと移され、そこで弾性プロピレンコポリマー(E)が生成され(工程(e))、これにより本発明のプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が得られる。
【0096】
弾性プロピレンコポリマー(E)及びプロピレンコポリマー、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の各特性については、上記の情報が参照される。
【0097】
好ましくは、工程(c)後のマトリクス(M)、即ちランダムプロピレンコポリマー(R−PP)と工程(e)において生成される弾性プロピレンコポリマー(E)の重量比は、60/40から90/10、より好ましくは70/30から85/15である。
【0098】
第1反応器(R1)は、好ましくはスラリー反応器(SR)であり、バルク又はスラリーにて運転される、いかなる連続式又は単純バッチ式の撹拌槽反応器又はループ反応器であってもよい。バルクとは、少なくともモノマーを60%(w/w)有する反応媒中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0099】
第2反応器(R2)及び第3反応器(R3)は、好ましくはガス相反応器(GPR)である。このようなガス相反応器(GPR)は、いかなる機械混合式又は流動床式反応器であってもよい。好ましくは、ガス相反応器(GPR)は、ガス速度が少なくとも0.2m/秒の機械的に撹拌された流動床式反応器を有する。よって、ガス相反応器は、好ましくは機械式撹拌機を備えた流動床式の反応器であることが好ましい。
【0100】
よって、好ましい実施形態によれば、第1反応器(R1)はスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)である一方、第2反応器(R2)及び第3反応器(R3)はガス相反応器(GPR)である。したがって、本方法には、直列に接続された少なくとも3つ、好ましくは3つの重合反応器、即ちループ反応器(LR)等のスラリー反応器(SR)、第1ガス相反応器(GPR−1)及び第2ガス相反応器(GPR−2)が用いられる。必要に応じて、スラリー反応器(SR)の前にプレ重合反応器が備えられる。
【0101】
好ましい多段法は、Borealis A/S(デンマーク)により開発された方法(Borstar(登録商標)テクノロジーとして知られる)などの「ループ−ガス相」法であり、例えばEP0887379、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479及びWO00/68315等の特許文献に記載されている。
【0102】
さらなる好適なスラリーガス相法は、BasellのSpheripol(登録商標)法である。
【0103】
好ましくは、上記に定義される本発明のプロピレンコポリマー(PC)、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造方法において、工程(a)の第1反応器(R1)、即ちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)の条件は、以下のとおりであってよい:
− 温度は、40℃から110℃の範囲内、好ましくは60℃から100℃の間、例えば68℃から95℃であり、
− 圧力は、20barから80barの範囲内、好ましくは40barから70barの間であり、
− モル質量を制御するために、周知の方法にて水素を添加することができる。
【0104】
続いて、工程(a)からの反応混合物は、第2反応器(R2)、即ちガス相反応器(GPR−1)、即ち工程(c)に移されるが、工程(c)の条件は、好ましくは以下のとおりである:
− 温度は、50℃から130℃の範囲内、好ましくは60℃から100℃の間であり、
− 圧力は、5barから50barの範囲内、好ましくは15barから35barの間であり、
− モル質量を制御するために、周知の方法にて水素を添加することができる。
【0105】
第3反応器(R3)、好ましくは第2ガス相反応器(GPR−2)における条件は、第2反応器(R2)と同様である。
【0106】
滞留時間は、これら3つの反応ゾーンによって様々である。
【0107】
プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造方法に係る実施形態の1つによれば、第1反応器(R1)、即ちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)での滞留時間は、0.2時間から4時間、例えば0.3時間から1.5時間の範囲内であり、ガス相反応器での滞留時間は、通常0.2時間から6.0時間、例えば0.5時間から4.0時間になるであろう。
【0108】
所望に応じて、重合は、第1反応器(R1)、即ちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)において、及び/又はガス相反応器(GPR)の凝縮モードとして、公知の方法により超臨界状態で行ってもよい。
【0109】
好ましくは、本方法は、チーグラー−ナッタプロ触媒、外部ドナー及び任意の助触媒を有する触媒系(詳細は後述)を用いたプレ重合も有する。
【0110】
好ましい実施形態によれば、プレ重合は液体プロピレン中におけるバルクスラリー重合として行われる。即ち、液相は、主にプロピレンと、そこに溶解した少量の他の反応物及び任意の不活性成分とを有する。
【0111】
プレ重合反応は、一般に0℃から50℃、好ましくは10℃から45℃、より好ましくは15℃から40℃の温度にて行われる。
【0112】
プレ重合反応器内の圧力は、重要ではないが、反応混合物を液相に維持するのに十分な高さでなければならない。よって、圧力は、20barから100bar、例えば30barから70barであってよい。
【0113】
触媒の各成分は、好ましくはすべてプレ重合工程に導入される。しかし、固体触媒成分(i)と助触媒(ii)を別個に供給できる場合は、助触媒の一部のみをプレ重合段階に導入し、残りの部分を続く重合段階に導入することも可能である。この場合でも、プレ重合段階には、そこで十分な重合反応が起こる量の助触媒を導入する必要がある。
【0114】
プレ重合段階に、他の成分を添加することも可能である。よって、公知であるように、プレ重合段階に水素を添加して、プレポリマーの分子量を制御してもよい。また、帯電防止添加剤を用いて、粒子同士又は粒子が反応器の壁に付着するのを防止してもよい。
【0115】
プレ重合の条件及び反応パラメータの正確な制御は、当業者の技能の範疇である。
【0116】
本発明によれば、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)は、上記のように、チーグラー−ナッタ触媒と任意の外部ドナーとを有する触媒系、好ましくは成分(i)としてチーグラー−ナッタプロ触媒と、任意の成分(ii)として有機金属助触媒と、成分(iii)として式(IIIa)又は式(Iamb)、好ましくは式(IIIa)により表される外部ドナーとの3成分を有する触媒系の存在下、連続重合法により得られる。
【0117】
本方法は、チーグラー−ナッタ触媒系、好ましくは本明細書において以下に詳述するチーグラー−ナッタ触媒系を用い、第2反応器(R2)及び/又は第3反応器(R3)におけるコモノマー/プロピレン比をそれぞれ特定の値とすることにより、特に効果的に行うことができる。したがって、
(a) 第1反応器(R1)、即ち工程(a)におけるコモノマー/プロピレン比[Co/C3]、例えばエチレン/プロピレン比[C2/C3]は、1mol/kmolから15mol/kmolの範囲内、より好ましくは2mol/kmolから8mol/kmolの範囲内であり、
及び/又は
(b) 第2反応器(R2)、即ち工程(c)におけるコモノマー/プロピレン比[Co/C3]、例えばエチレン/プロピレン比[C2/C3]は、10mol/kmolから65mol/kmolの範囲内、より好ましくは20mol/kmolから60mol/kmolの範囲内であり、
及び/又は
(c) 第3反応器(R3)、即ち工程(e)におけるコモノマー/プロピレン比[Co/C3]、例えばエチレン/プロピレン比[C2/C3]は、120mol/kmolより大きく400mol/kmolまでの範囲内、より好ましくは120mol/kmolから300mol/kmolの範囲内、さらにより好ましくは120mol/kmolから200mol/kmolの範囲内、さらにより好ましくは130mol/kmolから180mol/kmolの範囲内、
であることが好ましい。
【0118】
以下、使用する触媒についてより詳細に定義する。
【0119】
好ましくは、成分(i)は、低級アルコールとフタル酸エステルとのエステル交換反応生成物を含むチーグラー−ナッタプロ触媒である。
【0120】
本発明において使用されるプロ触媒は、
a) MgCl
2とC
1〜C
2アルコールのスプレー結晶化又はエマルジョン固化付加物をTiCl
4と反応させ、
b) 工程a)の生成物を、前記C
1〜C
2アルコールと式(I)のフタル酸ジアルキルのエステル交換が起こって内部ドナーが形成されるような条件下で、式(I)のフタル酸ジアルキルと反応させ、
【化1】
(式中、R
1’及びR
2’は、独立に少なくともC
5アルキルである。)
c) 工程b)の生成物を洗浄するか、又は
d) 任意で工程c)の生成物をさらなるTiCl
4と反応させる
ことにより製造される。
【0121】
プロ触媒は、例えば特許出願WO87/07620、WO92/19653、WO92/19658及びEP0491566に定められるようにして製造する。これらの文書の記載内容は、ここに本明細書の一部を構成するものとして援用される。
【0122】
まず、式MgCl
2*nROH(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1〜6である。)で表されるMgCl
2とC
1〜C
2アルコールの付加物を形成する。アルコールとしては、好ましくはエタノールが用いられる。
【0123】
当該付加物(まず溶融し、次いでスプレー結晶化又はエマルジョン固化したもの)を、触媒担体して用いる。
【0124】
次の工程では、式MgCl
2*nROH(式中、Rはメチル又はエチル、好ましくはエチルであり、nは1〜6である。)のスプレー結晶化又はエマルジョン固化した付加物を、TiCl
4と接触させてチタン化担体を形成し、その後、
− 前記チタン化担体に、
(i) R
1’及びR
2’が、独立に少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
又は好ましくは
(ii) R
1’及びR
2’が、同一の少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
又はより好ましくは
(iii) フタル酸プロピルヘキシル(PrHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)及びフタル酸ジトリデシル(DTDP)からなる群より選択される式(I)のフタル酸ジアルキル、さらにより好ましくは、フタル酸ジオクチル(DOP)、例えばフタル酸ジイソオクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、特にフタル酸ジエチルヘキシルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
を添加して第1生成物を形成する工程と、
− 前記第1生成物を、好適なエステル交換反応条件、即ち100℃を超える温度、好ましくは100℃から150℃、より好ましくは130℃から150℃の間の温度に供して、前記メタノール又はエタノールを、式(I)の前記フタル酸ジアルキルのエステル基とエステル交換反応させて、内部ドナーである式(II)のフタル酸ジアルキルを少なくとも80モル%、より好ましくは90モル%、最も好ましくは95モル%形成する工程と、
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、メチル又はエチル、好ましくはエチルである。)
− 前記エステル交換反応物を、プロ触媒組成物(成分(i))として回収する工程を行う。
【0125】
好ましい実施形態によれば、式MgCl
2*nROH(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1から6である。)の付加物は、例えばWO87/07620に記載されるように、これを溶融し、次いで溶融物を、好ましくは冷却された溶媒又は冷却されたガス中にガスによって注入することで、形態的に有利な形状に結晶化される。
【0126】
この結晶化した付加物は、好ましくは触媒担体として用いられ、WO92/19658及びWO92/19653に記載されるように、本発明に有用なプロ触媒へと反応する。
【0127】
触媒残渣を抽出により除去すると、エステルのアルコール由来の基が変換された、チタン化された担体と内部ドナーの付加物が得られる。
【0128】
チタンは、十分な量が担体上に残されていれば、プロ触媒の活性元素として作用する。
【0129】
そうでなければ、十分なチタン濃度及びそれによる活性を得るために、上記の処理の後にチタン化を繰返す。
【0130】
好ましくは、本発明に用いられるプロ触媒は、チタンを最大で2.5重量%、好ましくは最大で2.2重量%、より好ましくは最大で2.0重量%含む。また、そのドナー含有量は、好ましくは4重量%から12重量%の間、より好ましくは6重量%から10重量%の間である。
【0131】
より好ましくは、本発明に用いられるプロ触媒は、アルコールとしてエタノールを用い、また、式(I)のフタル酸ジアルキルとしてフタル酸ジオクチル(DOP)を用いて、内部ドナー化合物としてフタル酸ジエチル(DEP)を得ることにより製造されたものである。
【0132】
いっそうより好ましくは、本発明に用いられる触媒は、実施例に記載される触媒;特に式(I)のフタル酸ジアルキルとしてフタル酸ジオクチルを用いた触媒である。
【0133】
本発明に係るプロピレンコポリマー(PC)、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造に用いられる触媒系は、特別なチーグラーナッタプロ触媒に加えて、好ましくは成分(ii)として有機金属助触媒を有する。
【0134】
したがって、助触媒は、トリエチルアルミニウム(TEA)等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロリド及びアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群から選択されることが好ましい。
【0135】
触媒系に用いる成分(iii)は、式(IIIa)又は(Iamb)により表される外部ドナーである。式(IIIa)は以下のように定義される。
Si(OCH
3)
2R
25 (IIIa)
式中、R
5は炭素原子数3〜12の分岐アルキル基、好ましくは炭素原子数3〜6の分岐アルキル基、又は炭素原子数4〜12のシクロアルキル、好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルキルを表す。
【0136】
R
5は、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロペンチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0137】
式(IIIb)は、以下のように定義される。
Si(OCH
2CH
3)
3(NR
xR
y) (IIIb)
式中、R
x及びR
yは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。
【0138】
R
x及びR
yは、炭素原子数1〜12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜12の分岐状脂肪族炭化水素基及び炭素原子数1〜12の環状脂肪族炭化水素基からなる群から独立に選択される。R
x及びR
yは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択されることが特に好ましい。
【0139】
より好ましくは、R
x及びR
yは同一であり、さらにより好ましくは、R
x及びR
yはどちらもエチル基である。
【0140】
より好ましくは、式(IIIb)の外部ドナーは、ジエチルアミノトリエトシキシランである。
【0141】
より好ましくは、外部ドナーは、ジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2]、ジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2]、ジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(CH(CH
3)
2)
2]及びこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、外部ドナーは、ジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2]である。
【0142】
所望に応じて、チーグラーナッタプロ触媒は、特別なチーグラーナッタプロ触媒(成分(i))、外部ドナー(成分(iii))及び任意の助触媒(成分(ii))を有する触媒系の存在下、ビニル化合物を重合することにより改質される。ここで、当該ビニル化合物は、以下の式により表される:
CH
2=CH−CHR
3R
4
式中、R
3及びR
4は、一緒に5又は6員の飽和、不飽和又は芳香族性の環を形成するか、又は独立に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。このようにして改質された触媒は、本発明に係るプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の製造に用いられる。
【0143】
工程(f)の後、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を任意でビスブレーキング工程(工程(g))に供することができ、これにより、メルトフローレートが改善された、即ち製品として規定されるメルトフローレートを有するプロピレンコポリマー(PC)、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が得られる。ビスブレーキングは、いかなる方法により行ってもよいが、本発明では、通常、過酸化物ビスブレーキング剤を用いた化学的ビスブレーキングを想定している。一般的なビスブレーキング剤は、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert.ブチル−ペルオキシ)ヘキサン(DHBP)(例えば、商品名Luperox101及びTrigonox101として市販)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert.ブチル−ペルオキシ)ヘキシン−3(DYBP)(例えば、商品名Luperox130及びTrigonox145として市販)、ジクミル−ペルオキシド(DCUP)(例えば、商品名Luperox DC及びPerkadox BCとして市販)、ジ−tert.ブチル−ペルオキシド(DTBP)(例えば、商品名Trigonox B及びLuperox Diとして市販)、tert.ブチル−クミル−ペルオキシド(BCUP)(例えば、商品名Trigonox T及びLuperox801として市販)及びビス(tert.ブチルペルオキシ−イソプロピル)ベンゼン(DIPP)(例えば、商品名Perkadox14S及びLupperox DCとして市販)である。本発明における過酸化物の好適な使用量は、原則として当業者に公知であり、ビスブレーキングに供する工程(f)のプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の量、ビスブレーキングに供する工程(g)のプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のMFR
2(230℃)値、及び得られる製品の所望の目標MFR
2(230℃)に基づき容易に算出することができる。したがって、過酸化物ビスブレーキング剤の量は、通常、対象ポリマーの量に対して0.001重量%から0.10重量%、より好ましくは0.002重量%から0.05重量%である。
【0144】
通常、本発明に係るビスブレーキングは、押出機内で行われ、好適な条件下、メルトフローレートが増加する。ビスブレーキングでは、出発物の高モル質量鎖が、低モル質量分子よりも統計的により多く切断されることで、平均分子量が全体的に減少し、メルトフローレートが増加する。
【0145】
ビスブレーキングにより、メルトフローレート、多分散性(Mw/Mn)、固有粘度(IV)及び低温キシレン可溶分(XCS)が影響を受ける。一方で、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の、溶融温度、全コモノマー含有量及び低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量は影響を受けない。よって、ビスブレーキングされていないプロピレンコポリマー(工程(f)後)と、ビスブレーキングされたプロピレンコポリマー(工程(g)後)は、同一の溶融温度、同一の全コモノマー含有量及び同一の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量を有する。よって、これらの実施形態については、上記の情報が参照される。
【0146】
上記の添加剤は、好ましくは押出しによりプロピレンコポリマー(PC)、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)に添加される。混合/押出しには、従来の調合又はブレンド装置、例えばバンバリーミキサー、2ロールラバーミル、ブスコニーダー又は2軸押出機を用いることができる。通常、ポリマー材料は、押出機からペレットとして回収される。次いで、このペレットは、例えば下記の押出ブロー成形によりさらに加工される。
【0147】
押出ブロー成形(EBM)品
本発明は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を有する押出ブロー成形品を特に対象とする。
【0148】
押出ブロー成形品は、射出ブロー成形品や射出延伸ブロー成形品とは本質的に異なる。例えば、押出ブロー成形品は、射出ブロー成形品や射出延伸ブロー成形品と、いくつか挙げるだけでも、表面外観、衝撃挙動、排出物(emissions)、揮発性物質量、ヘキサン抽出可能分からなる群から選択される特性の少なくとも1つが異なる。
【0149】
したがって、本発明は、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を好ましくは少なくとも75重量%有する、より好ましくは少なくとも80重量%有する、いっそうより好ましくは少なくとも90重量%有する、さらにより好ましくは少なくとも95重量%有する、いっそうさらにより好ましくは少なくとも99重量%有する、例えばプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる押出ブロー成形品を対象とする。
【0150】
したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が押出ブロー成形品の主成分であることから、押出ブロー成形品は、好ましくはプロピレンコポリマー(PC)及び異相プロピレンコポリマー(RAHECO)と同じ特性を有する。したがって、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)について述べたすべての特性は、押出ブロー成形品にも等しく適用することができる。これは、特に、メルトフローレートMFR
2(230℃)、コモノマー含有量(全体、XCSにおける、XCIにおける)、固有粘度(XCSにおける、XCIにおける)、多分散性(XCSにおける、XCIにおける)及び低温キシレン可溶分(XCS)含有量についてにいえるが、これらに限らない。
【0151】
好ましくは、押出ブロー成形品は、ボトル又は容器、好ましくは家庭用若しくは工業用の化学薬品用、化粧品用、医薬品包装用又は食品及び飲料用のボトルである。さらにより好ましくは、ボトルは、最大10L、例えば200mlから1Lの寸法、及び/又は0.1mmから1.0mm、例えば0.2mmから0.6mmの壁厚を有する。
【0152】
押出ブロー成形品の製造は周知であり、例えば「Propylene Handbook」(Nello Pasquinin(編)、第2版(2005)、445頁、Hasner)に記載されている。
【0153】
押出ブロー成形(EBM)では、ポリマーは、溶融され、押出されて、中空チューブ(パリソン)となる。次いで、このパリソンを冷却された成形型に閉じ込めて捕らえる。次いで、圧縮空気をパリソンに吹き込んで、中空のボトル、容器又はパーツの形状へと膨らませる。ポリマーが十分に冷却した後、型を開いてパーツを取り出す。
【0154】
プロピレンコポリマー(PC)の使用/異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用
本発明は、押出ブロー成形品の製造のための、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用をも対象とする。本発明は、特に、上記に定義されるプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)の使用であって、当該プロピレンコポリマー(PC)、例えば当該異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を好ましくは少なくとも75重量%有する、より好ましくは少なくとも80重量%有する、いっそうより好ましくは少なくとも90重量%有する、さらにより好ましくは少なくとも95重量%有する、さらにいっそうより好ましくは少なくとも99重量%有する、例えば当該プロピレンコポリマー(PC)、例えば当該異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる押出ブロー成形品、例えば押出ブロー成形ボトルの光学特性を改善するための使用を対象とする。
【0155】
この改善は、特に、当該プロピレンコポリマー(PC)、例えば当該異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を好ましくは少なくとも70重量%有する、より好ましくは少なくとも80重量%有する、いっそうより好ましくは少なくとも90重量%有する、さらにより好ましくは少なくとも95重量%有する、さらにいっそうより好ましくは少なくとも99重量%有する、例えば当該プロピレンコポリマー(PC)、例えば当該異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる押出ブロー成形品、例えば押出ブロー成形ボトルの、滅菌処理前のボトル外観ファクター(BAF)が、式(I)、より好ましくは(Ia)、いっそうより好ましくは(Ib)である場合に達成されているものとし、
【数17】
式中、
Hは、ヘイズ値、
Cは、明澄度値、
Gは、光沢度値であり、
さらに、
ヘイズ、明澄度及び光沢度は、ASTM D1003−07に準じ、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる壁厚0.3mmのボトルから切り出した大きさ0.3x60x60mm
3の試験片について求める。
【0156】
加えて又はあるいは、この改善は、特に、前段落に記載する量のプロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)を有する押出ブロー成形品の滅菌処理後のボトル外観ファクター(BAF)が、式(II)、より好ましくは(IIa)、さらに好ましくは(IIb)である場合に達成されているものとし、
【数18】
式中、
Hは、ヘイズ値、
Cは、明澄度値、
Gは、光沢度値であり、
さらに、
ヘイズ、明澄度及び光沢度は、ASTM D1003−07に準じ、プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)からなる壁厚0.3mmの滅菌済みボトル(実施例に記載のもの)から切り出した大きさ0.3x60x60mm
3の試験片について求める。
【0157】
以上の情報を考慮すると、以下の実施例が特に好ましい:
[1] プロピレンコポリマーを有する押出ブロー成形品であって、押出ブロー成形品及び/又はプロピレンコポリマー(PC)は、
(a) ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、2.0g/10分から6.0g/10分の範囲内であり、
(b) ISO16152(25℃)に準じて求められる低温キシレン可溶分(XCS)含有量が、20.0重量%から40.0重量%の範囲内であり、
(c) コモノマー含有量が、4.5重量%より多く12.0重量%までの範囲内であり、
さらに、
(d) 押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量及び/又はプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量は、12.0重量%から28.0重量%の範囲内である、
押出ブロー成形品。
【0158】
[2] 押出ブロー成形品が、プロピレンコポリマー(PC)を、押出ブロー成形品の全量に対して少なくとも90重量%有する、段落[1]に記載の押出ブロー成形品。
【0159】
[3] 押出ブロー成形品及び/又はプロピレンコポリマー(PC)が、
(a) α−核形成剤を有し;
及び/又は
(b) ヘキサン可溶分含有量が、10.0重量%未満であり;
及び/又は
(c) 示差走査熱量測定(DSC)により求められる溶融温度Tmが、145℃から160℃の範囲内である、
段落[1]又は段落[2]に記載の押出ブロー成形品。
【0160】
[4] 押出ブロー成形品の低温キシレン不溶分(XCI)画分及び/又はプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン不溶分(XCI)画分の、
(a) コモノマー含有量が、2.0から7.0の範囲内であり;
及び/又は
(b) DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度(IV)が、1.8dl/gから3.0dl/g未満の範囲内であり;
及び/又は
(c) 多分散性(Mw/Mn)が、3.5より大きく8.0までである、
段落[1]から段落[3]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0161】
[5] 押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)画分及び/又はプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)画分の、
(a) DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度(IV)が、1.3dl/gより大きく3.0dl/gまでの範囲内であり;
及び/又は
(b) 多分散性(Mw/Mn)が、3.5より大きく8.0までである、
段落[1]から段落[4]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0162】
[6] 押出ブロー成形品及び/又はプロピレンコポリマー(PC)が、
(a) 不等式(I)を満たし、
【数19】
式中、
Co(total)は、それぞれ、押出ブロー成形品のコモノマー含有量[重量%]及びプロピレンコポリマー(PC)のコモノマー含有量[重量%];
Co(XCS)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量[重量%]及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量[重量%]であり、
及び/又は
(b) 不等式(II)を満たし、
【数20】
式中、
Co(total)は、それぞれ、押出ブロー成形品のコモノマー含有量[重量%]及びプロピレンコポリマー(PC)のコモノマー含有量[重量%]、
XCSは、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)画分の含有量[重量%]及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)画分の含有量[重量%]であり;
及び/又は
(c) 不等式(V)を満たし、
【数21】
式中、
Co(XCS)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量[重量%]及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)画分のコモノマー含有量[重量%]、
Co(XCI)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン不溶分(XCI)のコモノマー含有量[重量%]及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン不溶分(XCI)のコモノマー含有量[重量%]である、
段落[1]から段落[5]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0163】
[7] 押出ブロー成形品及び/又はプロピレンコポリマー(PC)が、
(a) 不等式(III)を満たし、
【数22】
式中、
IV(XCS)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)の固有粘度(IV)[dl/g]及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)の固有粘度(IV)[dl/g];
IV(XCI)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン不溶分(XCI)の固有粘度(IV)[dl/g]及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン不溶分(XCI)の固有粘度(IV)[dl/g]であり、
(b) 不等式(IV)を満たし、
【数23】
式中、
P(XCS)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)の多分散性(Mw/Mn)及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)の多分散性(Mw/Mn);
P(XCI)は、それぞれ、押出ブロー成形品の低温キシレン可溶分(XCS)の多分散性(Mw/Mn)及びプロピレンコポリマー(PC)の低温キシレン可溶分(XCS)の多分散性(Mw/Mn)である、
段落[1]から段落[6]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0164】
[8] プロピレンコポリマー(PC)が、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)であるマトリクス(M)と、前記マトリクス(M)中に分散した弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相プロピレンコポリマー(RAHECO)であり、好ましくは、マトリクス(M)と弾性プロピレンコポリマー(E)の重量比が、60/40から90/10である、段落[1]から段落[7]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0165】
[9] ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、
(a) コモノマー含有量が、1.0重量%から7.0重量%の範囲内であり、
及び/又は
(b) 不等式(VI)を満たし、
【数24】
式中、
Co(total)は、プロピレンコポリマー(PC)、即ち異相プロピレンコポリマー(RAHECO)のコモノマー含有量[重量%]、
Co(RPP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量[重量%]であり、
及び/又は
(c) 低温キシレン可溶分(XCS)画分が、5.0重量%以上20.0重量%未満の範囲内である、
段落[8]に記載の押出ブロー成形品。
【0166】
[10] ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)が、少なくとも2つのランダムプロピレンコポリマー部分を有し、前記2つのランダムプロピレンコポリマー部分は、コモノマー含有量が異なり、即ち2種のランダムポリマーコポリマー部分のうち、一方はコモノマーが乏しい部分であり、他方はコモノマーが豊富な部分であり、
(a) コモノマーが乏しい部分とコモノマーが豊富な部分の重量比は、20/80から80/20であり;
及び/又は
(b) 前記乏しい部分と前記豊富な部分は、不等式(VII)を満たし、
【数25】
式中、
Co(lean)は、コモノマーが乏しい部分のコモノマー含有量[重量%];
Co(rich)は、コモノマーが豊富な部分のコモノマー含有量[重量%]であり;
及び/又は
(c) コモノマーが乏しい部分は、コモノマー含有量が、0.2重量%から4.0重量%の範囲内であり;
及び/又は
(d) コモノマーが豊富な部分は、コモノマー含有量が、1.0重量%から12.0重量%の範囲内である、
段落[8]又は段落[9]に記載の押出ブロー成形品。
【0167】
[11] 弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量が12.0重量%から38.0重量%の範囲内である、段落[8]から段落[10]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0168】
[12] プロピレンコポリマー(PC)、例えば異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、ビスブレーキングされている、段落[1]から段落[11]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0169】
[13] 異相プロピレンコポリマー(RAHECO)が、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)を有し、さらに、ビスブレーキング前の前記ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、少なくとも2つの異なるランダムプロピレンコポリマー部分を有し、さらに、前記2つのランダムプロピレンコポリマー部分は、コモノマー含有量及び/又はメルトフローレートMFR
2(230℃)が異なり、好ましくはコモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が異なる、段落[12]に記載の押出ブロー成形品。
【0170】
[14]
(a) 前記2つのランダムポリマーコポリマー部分の、一方がコモノマーが乏しい部分、他方がコモノマーが豊富な部分であり、さらに、コモノマーが乏しい部分及びコモノマーが豊富な部分は、不等式(VII)を満たし、
【数26】
式中、
Co(lean)は、コモノマー含有量が低いランダムプロピレンコポリマー部分のコモノマー含有量[重量%]、
Co(rich)は、コモノマー含有量が高いランダムプロピレンコポリマー部分のコモノマー含有量[重量%]であり、
及び/又は、好ましくは、
(b) 前記2つのランダムプロピレンコポリマー部分の一方が、低メルトフローレートMFR
2(230℃)部分、他方が高メルトフローレートMFR
2(230℃)部分であり、さらに、前記低フロー部分及び高フロー部分は、不等式(IX)を満たし、
【数27】
式中、
MFR(high)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が高いランダムプロピレンコポリマー部分のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(low)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が低いランダムプロピレンコポリマー部分のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である、
段落[13]に記載の押出ブロー成形品。
【0171】
[15] 前記2つのランダムポリマーコポリマー部分が、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)及び第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)であり、さらに、
(a) 第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりも、コモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が高いか;
又は
(b) 第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)よりも、コモノマー含有量及びメルトフローレートMFR
2(230℃)が高いか;
又は
(c) 第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)よりも、コモノマー含有量が高いが、メルトフローレートMFR
2(230℃)は低いか;
又は
(d) 第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)よりも、コモノマー含有量が高いが、メルトフローレートMFR
2(230℃)は低い、
段落[13]又は段落[14]に記載の押出ブロー成形品。
【0172】
[16] 押出ブロー成形品がボトルである、段落[1]から段落[15]のいずれか1つに記載の押出ブロー成形品。
【0173】
[17] 段落[1]及び段落[3]から段落[15]のいずれか1つに記載のプロピレンコポリマー(PC)の使用であって、前記プロピレンコポリマー(PC)を少なくとも90重量%有する押出ブロー成形品、例えば押出ブロー成形ボトルの光学特性を改善するための使用。
【0174】
[18] 滅菌処理前に、前記押出ブロー成形品、例えば押出ブロー成形ボトルのボトル外観ファクター(BAF)が、少なくとも70、好ましくは少なくとも110であるときに、前記改善が達成されているものとする、段落[17]に記載の使用。
【0175】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0176】
1. 測定方法
以下の用語の定義及び測定法は、別段の定義がない限り、上記の本発明の一般的な記載及び以下の実施例に適用される。
第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)のコモノマー含有量の
算出:
【数28】
式中、
w(PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の重量分率[重量%]、
w(PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量分率[重量%]、
C(PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のコモノマー含有量[重量%]、
C(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量[重量%]、
C(PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の算出されるコモノマー含有量[重量%]である。
【0177】
第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)の低温キシレン可溶分(XCS)含有量の
算出:
【数29】
式中、
w(PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の重量分率[重量%]、
w(PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量分率[重量%]、
XS(PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の低温キシレン可溶分(XCS)含有量[重量%]、
XS(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)の低温キシレン可溶分(XCS)含有量[重量%]、
XS(PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の算出される低温キシレン可溶分(XCS)含有量[重量%]である。
【0178】
第2プロピレンコポリマー部分(R−PP2)のメルトフローレートMFR
2(230℃)の
算出:
【数30】
式中、
w(PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)の重量分率[重量%]、
w(PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の重量分率[重量%]、
MFR(PP1)は、第1ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP1)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(PP2)は、第2ランダムプロピレンコポリマー部分(R−PP2)の算出されるメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0179】
弾性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含有量の
算出:
【数31】
式中、
w(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)、即ち第1及び第2反応器(R1+R2)において製造されたポリマーの重量分率[重量%]、
W(E)は、弾性プロピレンコポリマー(E)、即ち第3反応器(R3)において製造されたポリマーの重量分率[重量%]、
C(PP)は、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含有量[重量%]、即ち第1及び第2反応器(R1+R2)において製造されたポリマーのコモノマー含有量[重量%]、
C(RAHECO)は、プロピレンコポリマーのコモノマー含有量[重量%]、即ち第3反応器(R4)における重合後に得られたポリマーのコモノマー含有量[重量%]、
C(E)は、弾性プロピレンコポリマー(E)、即ち第3反応器(R3)において製造されたポリマーの算出されるコモノマー含有量[重量%]である。
MFR
2(230℃)は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)に準じて測定される。
【0180】
コモノマー含有量、特にエチレン含有量は、
13C−NMRにより較正したフーリエ変換赤外線スペクトル法(FTIR)により測定する。ポリプロピレン中のエチレン含有量を測定する際は、薄膜試料(約250μm厚)をホットプレスにより調製した。プロピレン−エチレンコポリマーの720cm
−1及び733cm
−1における吸収ピーク面積を、Perkin Elmer FTIR1600分光計により測定した。プロピレン−1−ブテンコポリマーは、767cm
−1にて評価した。この方法は、
13C−NMRにより測定したエチレン含有量データにより較正された。
【0181】
固有粘度は、DIN ISO1628/1、1999年10月(デカリン中、135℃)に準じて測定する。
【0182】
キシレン可溶分(XCS、重量%):低温キシレン可溶分(XCS)の含有量は、ISO16152;第1版;2005年7月1日に準じて25℃にて求める。残った不溶部分が低温キシレン不溶分(XCI)画分である。
【0183】
ヘキサン可溶分(C6可溶分、重量%):ヘキサン可溶分含有量は、European Pharmocopoeia6.0、EP316に準じて測定する。
0.3mm厚のボトルから取った試料10gを、300mlの三角フラスコに入れ、100mlのn−ヘキサンを添加した。混合物を、還流冷却器中にて4時間、撹拌しながら煮沸した。熱溶液を、撹拌しながら45分間冷却してから真空ろ過(G4ガラスフィルター)し、ろ液を丸底シュレンク管(shenk)(90℃の真空オーブンにて乾燥し、0.0001gまで正確に計量したもの)に入れる。次いで、窒素気流下、ロータリーエバポレーターにて、ヘキサンを蒸発させた。丸底シュレンク管を、90℃の真空オーブンにて一晩乾燥させ、少なくとも2時間デシケーター内に置いて冷却した。シュレンク管を再度計量し、そこからヘキサン可溶分を算出した。
【0184】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)
は、以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求める。
重量平均分子量Mw及び多分散性(Mw/Mn)(Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量である。)は、ISO16014−1:2003及びISO16014−4:2003に基づく方法により測定する。屈折率検出器及びオンライン粘度計を備えたWaters Alliance GPCV2000装置を用いた。TosoHaasのTSKゲルカラム(GMHXL−HT)x3、及び溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、200mg/Lの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノールにより安定化)を用い、145℃にて1mL/分の定流速とした。各分析につき、216.5μLの試料溶液を注入した。カラムセットは、0.5kg/molから11500kg/molの範囲内の19種のMWDの狭いポリスチレン(PS)標準試料及び特徴のはっきりした1組の広いポリプロピレン標準試料を用い、相対キャリブレーションにより較正した。試料は全て、5〜10mgのポリマーを10mL(160℃)の安定化TCB(移動相と同一)に溶解し、GPC装置に供する前に3時間連続して振盪しつづけて調製した。
【0185】
溶融温度(Tm)及び溶融熱(Hf)、結晶化温度(Tc)並びに結晶化熱(Hc):Mettler TA820示差走査熱量測定(DSC)を用い、5mg〜10mgの試料を測定する。DSCは、ISO3146/第3部/方法C2に準じて、加熱/冷却/加熱のサイクル、走査速度10℃/分、温度範囲+23℃〜+210℃にて行う。結晶化温度及び
結晶化熱(Hc)は、冷却ステップから求め、溶融温度及び
溶融熱(Hf)は、2回目の加熱ステップから求める。
【0186】
曲げ弾性率:曲げ弾性率は、ISO178に準じて、EN ISO1873−2のラインにて射出成形した80x10x4mm
3の棒状試験片について、23℃にて3点曲げ試験により求めた。
【0187】
ボトルの詳細/寸法
外径90mm、壁厚0.3mm、全高204mm、円筒部の高さ185mmの1リットル容ボトル。
【0188】
蒸気滅菌は、Systec Dシリーズ装置(Systec社、アメリカ合衆国)により行った。試料を、23℃から5℃/分の加熱速度で加熱した。121℃にて30分保持した後、直ちに試料を蒸気滅菌装置から取り出して、更なる処理まで室温にて保管した。
【0189】
ボトルの透明度、明澄度及びヘイズの測定
装置:BYK−GardnerのHaze−gard plus。
測定:ASTM D1003に準じる(射出成形プレートとして)。
方法:ボトルの外壁を測定する。ボトルの上部及び底部を切り落とす。次いで、得られる円形の壁部を水平に2分割する。次いで、この壁部の中央付近から、約60mmx60mmの同一試料を6個切り出す。試料を、凸面がhaze port側となるようにして装置内に置く。次いで、透明度、ヘイズ、明澄度を、6個の試料それぞれについて測定し、6個の平均値をヘイズ値とする。
【0190】
ボトルの光沢の測定
装置:BYK−Gardner20のSceen TRI−MICROGLOSS20−60−80。
測定:ASTM D2457(射出成形プレートとして)。
ボトル:ボトルの壁を測定する。ボトルの上部及び底部を切り落とす。次いで、円形の壁部を水平に2分割する。次いで、この壁部を、約90mmx90mmの同一の25個試料6個に切り分け、射出成形部品試験用の特製ライトトラップに取り付ける。次いで、これらの6個の試料について、20°における光沢度を測定し、その平均値を20°における光沢値とする。
【0191】
2.実施例
例CE1、CE2及びCE3の重合プロセスに用いた触媒は、次のように製造した:まず、0.1モルのMgCl
2x3EtOHを、不活性条件下、大気圧の反応器にて、250mlのデカンに懸濁させた。溶液を−15℃の温度に冷却し、同温度を維持しながら300mlの冷TiCl
4を添加した。次いで、スラリーの温度をゆっくりと20℃に上昇させた。この温度にて、スラリーに0.02モルのフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。フタレートの添加後、温度を90分かけて135℃に上昇させ、スラリーを60分間静置した。次いで、さらに300mlのTiCl
4を添加し、120分間温度を135℃に保った。その後、液相から触媒をろ別し、80℃のヘプタン300mlで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分をろ過し、乾燥した。一般的な触媒及びその調製法は、特許公報EP491566、EP591224及びEP586390に記載されている。助触媒としてトリエチル−アルミニウム(TEAL)、ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(Dドナー)を用いた。表1に、アルミニウムのドナーに対する比を示す。重合に先立ち、触媒を、最終ポリマー中のポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)濃度を200ppmとすることができる量のビニルシクロヘキサンとプレ重合させた。各プロセスは、EP1028984及びEP1183307に記載されている。
【0192】
得られたポリマーCE1、CE2及びCE3を、共回転二軸押出機(型番:Coperion ZSK57)において、適量の2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert.ブチルペルオキシ)ヘキサン(Trigonox(登録商標)101、AKZO Nobel、オランダ)を、ポリプロピレンパウダーにより濃度1重量%としたものを添加することによりビスブレーキングして、実施例IE1、IE2及びIE3とした。同工程において、添加剤として、0.04重量%の合成ハイドロタルサイト(DHT−4A、Kisuma Chemicals、オランダ)及び0.15重量%のIrganox B215(Irganox1010(ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシトルイル)−プロピオネートとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファート)フォスファイトの1:2混合物)(BASF AG、ドイツ)をポリマーに添加した。
【0193】
本発明における試験等に用いる1リットル容の円形ボトルの製造には、「Fischer Mueller」のブロー成形機を用いた。製造の主要なプロセスパラメータは以下のとおりである:
− 温度プロファイル:180℃から200℃、押出機、アダプター及びヘッドに適用、
− 測定された溶融温度:190℃から200℃、
− 押出機速度(分あたりの回転、rpm):13rpmから16rpm、
− ダイギャップ:ダイギャップは、BorealisのRB307MOグレード(密度が902kg/cm
3及びMFR
2が1.5g/10分のランダムプロピレンコポリマー)を用いて、重さ40gのボトルが得られるように調整、
− サイクル時間:12〜16秒。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
* 1重量%の2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert.ブチルペルオキシ)ヘキサン(AKZO Nobel、オランダから供給されているTrigonox(登録商標)101)を含むポリマーである。
【0197】
【表3】
【0198】
【表4】