特許第5923677号(P5923677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5923677コーティング液組成物、コーティング膜の形成方法、コーティング液組成物の製造方法、コーティング液組成物の製造装置、及び、二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物
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  • 特許5923677-コーティング液組成物、コーティング膜の形成方法、コーティング液組成物の製造方法、コーティング液組成物の製造装置、及び、二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5923677
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】コーティング液組成物、コーティング膜の形成方法、コーティング液組成物の製造方法、コーティング液組成物の製造装置、及び、二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20160510BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160510BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20160510BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
   B05D1/02
   B01F3/04
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-45654(P2016-45654)
(22)【出願日】2016年3月9日
【審査請求日】2016年3月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592115836
【氏名又は名称】加美電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】光本 政敬
(72)【発明者】
【氏名】早坂 宜晃
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−252449(JP,A)
【文献】 特開平7−096154(JP,A)
【文献】 国際公開第98/054397(WO,A1)
【文献】 特開2013−103151(JP,A)
【文献】 国際公開第95/021688(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/027544(WO,A1)
【文献】 特開平1−258770(JP,A)
【文献】 特開2012−086175(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B01F 1/00− 5/26
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と、
23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、
二酸化炭素と、
23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を含み、
前記第一の溶剤の平均沸点bpと前記第二の溶剤の平均沸点bpが、bp−bp>0を満たす、
コーティング液組成物。
【請求項2】
前記二酸化炭素の配合量が、前記コーティング液組成物の全量に対して23.5質量%以上である、請求項1に記載のコーティング液組成物。
【請求項3】
前記第二の溶剤の配合量が、前記二酸化炭素と前記第二の溶剤との合計量に対して、0.5質量%〜95質量%である、請求項1又は2に記載のコーティング液組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング液組成物をノズルから対象物に噴霧して液膜を形成する工程と、
前記液膜を固化してコーティング膜を形成する工程と、を備える、
コーティング膜の形成方法。
【請求項5】
樹脂成分と、
23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、
二酸化炭素と、
23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る工程を備え、
前記第一の溶剤の平均沸点bpと前記第二の溶剤の平均沸点bpが、bp−bp>0を満たす、
コーティング液組成物の製造方法。
【請求項6】
前記混合する工程が、
前記二酸化炭素と前記第二の溶剤とを混合する工程と、
前記二酸化炭素と前記第二の溶剤との混合物に、前記樹脂成分と前記第一の溶剤との混合物を混合する工程と、を備える請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記混合する工程が、前記樹脂成分と、前記第一の溶剤と、前記第二の溶剤との混合物に、前記二酸化炭素を混合する工程を備える、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
樹脂成分と、
23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、
二酸化炭素と、
23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る混合部を備え、
前記第一の溶剤の平均沸点bpと前記第二の溶剤の平均沸点bpが、bp−bp>0を満たす、
コーティング液組成物の製造装置。
【請求項9】
樹脂成分と、
23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、
23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を含有し、
前記第一の溶剤の平均沸点bpと前記第二の溶剤の平均沸点bpが、bp−bp>0を満たす、
二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むコーティング液組成物等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インキ又は塗料を対象物にコーティングする方法として、インキ又は塗料に二酸化炭素を混合してコーティング液組成物を調製し、得られたコーティング液組成物を対象物に噴霧する方法が知られている。この方法では、二酸化炭素が希釈剤として機能し、インキ又は塗料の粘度が噴霧可能なレベルまで低下される。
【0003】
このような二酸化炭素を用いたコーティングに関する技術は、例えば、特許文献1〜6のように数々開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4538625号公報
【特許文献2】特許第5429928号公報
【特許文献3】特許第5429929号公報
【特許文献4】特許第5660605号公報
【特許文献5】特許第5568801号公報
【特許文献6】特許第5608864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、コーティング液組成物の十分な検討はなされていなかった。このため、コーティング液組成物中で樹脂成分が析出し、しばしば、コーティング液組成物が通るラインの閉塞を引き起こしていた。また、コーティング液組成物を噴霧することによって形成される塗膜のレベリング性も充分なものではなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を希釈剤として用いた場合でも、樹脂成分の析出を軽減することができ、かつ、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができるコーティング液組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下のことを見出した。すなわち、二酸化炭素は10MPa、20℃で約15(MPa)0.5程度のSP値(溶解度パラメータ)を有する一方、樹脂は例えば17〜25(MPa)0.5程度の、真溶剤は例えば16〜23.3(MPa)0.5程度のSP値を有する。そのため、樹脂及び真溶剤の混合物に、二酸化炭素を混合した際に、混合溶剤のSP値が樹脂よりも下がる傾向にあり、樹脂が析出する傾向がある。
【0008】
本発明の一形態に係るコーティング液組成物は、樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5(MPa) 0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を含み、上記第一の溶剤の平均沸点bpと上記第二の溶剤の平均沸点bpが、bp−bp>0を満たす。
【0009】
このように、第一の溶剤に加えて、SP値の高い第二の溶剤を混合することにより、SP値の低い二酸化炭素が混合された場合にも、樹脂成分の析出を軽減でき、好適な噴霧が行える。また、このようなコーティング液組成物によれば、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。この理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。bp−bp<0の場合には、液膜から溶剤を除去してコーティング膜を形成する過程において、樹脂成分を溶解しやすい第一の溶剤が先に液膜から除去され、樹脂成分を溶解しにくい第二の溶剤が多く液膜に残る。したがって、溶剤の除去の過程で第二の溶剤を主とする液膜中で樹脂成分が不均一に析出し、表面平滑化作用が十分に得られにくくなる。これに対して、bp−bp>0の場合には、上記の過程において、樹脂成分を溶解しにくい第二の溶剤が液膜から先に除去され、樹脂成分を溶解しやすい第一の溶剤が液膜に残るので、溶剤除去過程での樹脂成分の不均一な析出が抑制され、平滑化作用が十分に得られることが考えられる。
【0010】
ここで、上記二酸化炭素の配合量は、上記コーティング液組成物の全量に対して23.5質量%以上であることができる。これにより、コーティング液組成物が噴霧されたときに、より細かい霧状になるため、よりレベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0011】
また、上記第二の溶剤の配合量は、上記二酸化炭素と上記第二の溶剤との合計量に対して、0.5質量%〜95質量%であることができ、1.0質量%〜84質量%であることができ、1.9質量%〜44.5質量%であることができる。これにより、コーティング液組成物中の各溶剤成分のSP値の大小のバランスをとることができるため、コーティング液組成物中の樹脂成分の析出を軽減することができる。
【0012】
本発明の一形態に係るコーティング膜の形成方法は、これらのコーティング液組成物をノズルから対象物に噴霧して液膜を形成する工程と、上記液膜を固化してコーティング膜を形成する工程と、を備える。
【0013】
本発明の一形態に係るコーティング液組成物の製造方法は、樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る工程を備え、上記第一の溶剤の平均沸点bpと上記第二の溶剤の平均沸点bpは、bp−bp>0を満たす。
【0014】
ここで、上記混合する工程は、上記二酸化炭素と上記第二の溶剤とを混合する工程と、上記二酸化炭素と上記第二の溶剤との混合物に、上記樹脂成分と上記第一の溶剤との混合物を混合する工程と、を備えることができる。これにより、低いSP値を有する二酸化炭素と高いSP値を有する第二の溶剤を先に混合し、これら混合溶剤のSP値がより均一になったところに樹脂成分を加えるため、樹脂成分の析出をより軽減できる。
【0015】
また、上記混合する工程は、上記樹脂成分と、上記第一の溶剤と、上記第二の溶剤との混合物に、上記二酸化炭素を混合する工程を備えることができる。
【0016】
本発明の一形態に係るコーティング液組成物の製造装置は、樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を混合してコーティング液組成物を得る混合部を備え、上記第一の溶剤の平均沸点bpと上記第二の溶剤の平均沸点bpは、bp−bp>0を満たす。
【0017】
本発明の一形態に係る二酸化炭素含有コーティング液組成物調製用組成物は、樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を含有し、上記第一の溶剤の平均沸点bpと上記第二の溶剤の平均沸点bpは、bp−bp>0を満たす。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、二酸化炭素を希釈剤として用いた場合でも、樹脂成分の析出を軽減することができ、かつ、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】3液連続混合式二酸化炭素塗装装置の構成を示すブロック図である。
図2】2液連続混合式二酸化炭素塗装装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
本実施形態において、溶解度パラメータとは、Hildebrandの溶解度パラメータである。溶解度パラメータ(以下、SP値とする。)とは、物質間の親和性の尺度を表す熱力学的なパラメータであり、類似したSP値を有する物質同士は溶解しやすい傾向にあることが知られている。
【0022】
本発明に係るコーティング液組成物は、樹脂成分と、第一の溶剤と、二酸化炭素と、第二の溶剤と、を含む。以下、各成分について説明する。
【0023】
<樹脂成分>
樹脂成分としては、通常用いられる樹脂であれば特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂(約22)、アクリル樹脂(約19)、アクリルウレタン樹脂(約17〜22)、ポリエステル樹脂(約22)、アクリルシリコン樹脂(約17〜22)、アルキッド樹脂(約17〜25)、UV硬化樹脂(約17〜23)、塩酢ビ樹脂(約19〜22)、スチレンブタジエンゴム(約17〜18)、ポリエステルウレタン樹脂(約19〜21)、スチレンアクリル樹脂(約19〜21)、アミノ樹脂(約19〜21)、ポリウレタン樹脂(約21)、フェノール樹脂(約23)、塩化ビニル樹脂(約19〜22)、ニトロセルロース樹脂(約22〜24)、セルロースアセテテートブチレート樹脂(約20)、スチレン樹脂(約17〜21)、及び、メラミン尿素樹脂(約19〜21)が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して使用してもよい。樹脂成分は、1液硬化型樹脂であっても、2液硬化型樹脂であってもよく、UV等の活性エネルギー線硬化型樹脂であってもよい。なお、上記括弧内の数値はSP値であり、その単位は(MPa)0.5である。
【0024】
樹脂成分は、17(MPa)0.5以上、18(MPa)0.5以上、19(MPa)0.5以上のSP値を有することができ、25(MPa)0.5以下、24(MPa)0.5以下、23.5(MPa)0.5以下のSP値を有することができる。
【0025】
樹脂成分のSP値は以下のようにして求めることができる。すなわち、樹脂を良溶媒Aに溶かしておき、良溶媒よりもSP値の高い貧溶媒H、及び、良溶媒よりもSP値の低い貧溶媒Lを別々に滴下して樹脂が析出し白濁するまでに要したそれぞれの貧溶媒の量を記録する。良溶媒AのSP値δ、貧溶媒HのSP値をδ、貧溶媒LのSP値をδとし、白濁した点での良溶媒A、貧溶媒H,貧溶媒Lの体積分率を、φ、φ、φとしたときに、2つの濁点における混合溶媒のSP値δ良溶媒A+貧溶媒H、δ良溶媒A+貧溶媒Lは、それぞれ、SP値の体積平均で表すことができ、下式が成立する。
δ良溶媒A+貧溶媒H=(φ・δ+φ・δ0.5
δ良溶媒A+貧溶媒L=(φ・δ+φ・δ0.5
したがって、樹脂のSP値SPは、
SP=((V良溶媒A+貧溶媒H・δ良溶媒A+貧溶媒H+V良溶媒A+貧溶媒L・δ良溶媒A+貧溶媒L)/(V良溶媒A+貧溶媒H+V良溶媒A+貧溶媒L))0.5
ここで、V良溶媒A+貧溶媒H、良溶媒A+貧溶媒Lは、混合溶媒の濁点における平均モル体積であり、例えば、前者は、次式により求められる。
1/V良溶媒A+貧溶媒H=φ/V+φ/V
ここで、V、Vはそれぞれ良溶媒A,及び、貧溶媒Hのモル体積である。
【0026】
<第一の溶剤>
第一の溶剤は、SP値が23.5(MPa)0.5未満の溶剤であり、樹脂成分を溶解することができる真溶剤である。第一の溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン(17.2)、酢酸3−メトキシブチル(20.5)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(18.7)、ソルベッソ100(S100)(東燃ゼネラル石油社製、商品名)(17.6)、ソルベッソ150(S150)(東燃ゼネラル石油社製、商品名)(17.4)、エチルジグリコールアセテート(18.5)、n−ブタノール(23.3)、ジイソブチルケトン(16)、酢酸エチル(18.6)、及び酢酸ブチル(17)、トルエン(18.2)、酢酸イソブチル(17)、MEK(メチルエチルケトン)(19)、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)(20.7)、キシレン(18)、イソブタノール(22.1)、ジアセトンアルコール(20.8)、シクロヘキサノール(23.3)、イソホロン(18.6)、エチル−3−エトキシプロピオネート(18.9)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(20.5)、メチルプロピレンジグリコール(20.1)、酢酸イソアミル(16)、N−メチル−2−ピロリドン(23.2)、酢酸イソプロピル(17.6)、メチルアミルケトン(17.8)、メチルジグリコール(22.1)、メチルセロソルブ(24.6)、セロソルブアセテート(19.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(19.5)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(18.7)、アセトン(20.3)、シクロヘキサン(16.8)、エチルベンゼン(18)等が挙げられる。なお、上記括弧内の数値はSP値であり、その単位は(MPa)0.5である。第一の溶剤は、SP値が23.5(MPa)0.5未満の溶剤の混合物であってもよい。
【0027】
第一の溶剤の配合量は、樹脂成分を溶解できる範囲であれば特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して、25質量部〜10000質量部であることができ、25質量部〜1000質量部であることができ、87質量部〜424質量部であることができる。
【0028】
第一の溶剤の平均沸点bpは、66℃〜400℃であることができ、100℃〜250℃であることができ、135.7℃〜167.8℃であることができる。bpが66℃〜400℃であると、後述するように、コーティング液組成物の噴霧によって形成されたコーティング液膜から第二の溶剤が揮発した後、第一の溶剤も速やかに揮発するため、コーティング膜の形成に好適である。
【0029】
なお、本実施形態において、溶剤の「平均沸点」とは、各溶剤の沸点を質量分率で乗じた値の和のことをいう。すなわち、例えば、溶剤a(質量Ma、沸点Ta)と、溶剤b(質量Mb、沸点Tb)とからなる混合溶剤の平均沸点Tは、T=Ta×Ma/(Ma+Mb)+Tb×Mb/(Ma+Mb)の式から求められる。
【0030】
<二酸化炭素>
二酸化炭素は、通常、コーティング液組成物中において液体又は超臨界流体として存在することができる。二酸化炭素は、温度20℃、圧力10MPaにおいて液体の状態で存在し、15(MPa)0.5程度のSP値を有する。一方、超臨界流体の二酸化炭素のSP値はこれより低く、気体の二酸化炭素のSP値はさらに低くなる。コーティング液組成物中の各成分のSP値の大小のバランスをとる観点から、二酸化炭素は液体であることが好ましい。すなわち、二酸化炭素が液体であると、コーティング液組成物中の混合溶剤のSP値が樹脂成分のSP値に対して低くなり過ぎないため、樹脂成分の析出を軽減することができる。また、コーティング液組成物が噴霧されて加圧状態から解放されると、圧縮されていた二酸化炭素が瞬時に気化して、その体積が大幅に膨張する。その際の力により、コーティング液組成物は細かい霧状になる。
【0031】
二酸化炭素の配合量は、コーティング液組成物の全量に対して、23.5質量%以上であることができ、28質量%以上であることができ、40質量%以上であることができ、70質量%以上であることができる。二酸化炭素の配合量が23.5質量%以上であると、コーティング液組成物が噴霧されたときにより細かい霧状になるため、よりレベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0032】
<第二の溶剤>
第二の溶剤は、23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5のSP値を有する。第二の溶剤としては、例えば、ホルムアミド(39.3)、ヒドラジン(37.3)、グリセリン(33.8)、N−メチルホルムアミド(32.9)、1,4−ジホルミルピペラジン(31.5)、エチレンシアノヒドリン(31.1)、マロノニトリル(30.9)、2−ピロリジン(30.1)、エチレンカーボネート(30.1)、メチルアセトアミド(29.9)、エチレングリコール(29.9)、メタノール(29.7)、ジメチルスルホキシド(29.7)、フェノール(29.3)、1,4−ジアセチルピペラジン(28)、無水マレイン酸(27.8)、2−ピペリドン(27.8)、ギ酸(27.6)、メチルエチルスルホン(27.4)、ピロン(27.4)、テトラメチレンスルホン(27.4)、プロピオラクトン(27.2)、炭酸プロピレン(27.2)、N−ニトロソジメチルアミン(26.8)、N−ホルミルモルホリン(26.6)、3−メチルスルホラン(26.4)、ニトロメタン(26)、エタノール(26)、ε−カプロラクタム(26)、プロピレングリコール(25.8)、ブチロラクトン(25.8)、クロロアセトニトリル(25.8)、メチルプロピルスルホン(25.6)、フルフリルアルコール(25.6)、フェニルヒドラジン(25.6)、亜リン酸ジメチル(25.6)、2−メトキシエタノール(25.4)、ジエチルスルホン(25.4)、エチレンジアミン(25.2)、エチルアセトアミド(25.2)、2−クロロエタノール(25)、ベンジルアルコール(24.8)、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(24.8)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル) (24.8)、ジメチルホルムアミド(24.8)、ジエチレングリコール(24.8)、1,4−ブタンジオール(24.8)、テトラヒドロ−2,4−ジメチルチオフェン1,1−ジオキシド(24.6)、アクリル酸(24.6)、1−プロパノール(24.3)、アセトニトリル(24.3)、アリルアルコール(24.1)、4−アセチルモルホリン(23.7)、1,3−ブタンジオール(23.7)、ホルミルピペリジン(23.5)、ペンタンジオール(23.5)、イソプロパノール(23.5)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(23.5)、及びエチルセロソルブ(23.5)が挙げられる。なお、上記括弧内の数値はSP値であり、その単位は(MPa)0.5である。第二の溶剤は、23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5のSP値を有する溶剤の混合溶剤であってもよい。第二の溶剤のSP値は、24(MPa)0.5以上であることができ、25(MPa)0.5以上であることができる。
【0033】
中でも、第二の溶剤は、ホルムアミド、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、プロピレングリコール、ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、アセトニトリル、及び、これらのうちの任意の組み合わせの混合溶剤であることが好ましい。
【0034】
樹脂成分として2液硬化型樹脂を用いる場合は、樹脂成分との反応を抑制する観点から、第二の溶剤として非プロトン性溶剤を用いることが好ましい。非プロトン性溶剤の例は、1,4−ジホルミルピペラジン、マロノニトリル、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、1,4−ジアセチルピペラジン、メチルエチルスルホン、ピロン、テトラメチレンスルホン、プロピオラクトン、炭酸プロピレン、N−ニトロソジメチルアミン、N−ホルミルモルホリン、3−メチルスルホラン、ニトロメタン、ブチロラクトン、クロロアセトニトリル、メチルプロピルスルホン、ジエチルスルホン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロ−2,4−ジメチルチオフェン1,1−ジオキシド、アセトニトリル、4−アセチルモルホリン、及びホルミルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種である。中でも、ジメチルスルホキシド、ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及び、これらのうちの任意の組み合わせの混合溶剤であることが好ましい。
【0035】
第二の溶剤の配合量としては、コーティング液組成物中の各成分のSP値の大小のバランスをとる観点から、二酸化炭素と第二の溶剤との合計量に対して、通常、0.5質量%〜95質量%であり、1.0質量%〜84質量%であることができ、1.9質量%〜44.5質量%であることができる。すなわち、第二の溶剤の配合量が0.5質量%〜95質量%であると、コーティング液組成物中の、第一の溶剤と、二酸化炭素と、第二の溶剤との混合溶剤のSP値が樹脂成分のSP値に近い値となるため、樹脂成分の析出を軽減することができる。
【0036】
第二の溶剤の平均沸点bpは、60℃〜385℃であることができ、62℃〜210℃であることができ、65℃〜167.8℃であることができる。bpが60℃〜385℃であると、後述するように、コーティング液組成物の噴霧によって形成されたコーティング液膜から第二の溶剤が速やかに揮発するため、コーティング液膜中の樹脂成分の析出が軽減され、よりレベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0037】
第一の溶剤の平均沸点bpと第二の溶剤の平均沸点bpは、bp−bp>0を満たす。これにより平坦性の高いコーティング膜が得られる。その理由は明らかではないが、以下のような理由が考えられる。コーティング液組成物が噴霧されると、二酸化炭素が瞬時に気化して微細なミストが形成され、ミストの付着により対象物にコーティング液膜が形成される。形成されたコーティング液膜は、樹脂成分に加えて、第一の溶剤と、高いSP値を有する第二の溶剤とを含む。その後、液膜からこれらの溶剤が除去されて固化したコーティング膜が得られる。この溶剤の除去の過程では、沸点の低い、すなわち、揮発性の高い溶剤が先に除去される。そして、bp−bp<0、すなわちbp<bpであると、SP値が樹脂成分のSP値に近く樹脂成分を溶解しやすい第一の溶剤が先に液膜から除去される。したがって、その後の乾燥過程において、SP値が高く樹脂成分を溶解しにくい第二の溶剤を主成分とする液膜中で樹脂成分が不均一に析出してしまい、得られるコーティング膜の表面平坦性が劣化する傾向がある。これに対して、bp−bpがbp−bp>0を満たす、すなわち、bp>bpであると、高いSP値を有して樹脂成分を溶解しにくい第二の溶剤が液膜から先に除去される。したがって、その後の乾燥過程において、SP値が樹脂成分のSP値に近く樹脂成分を溶解しやすい第一の溶剤を主成分とする液膜中では樹脂成分の不均一な析出が抑制され、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0038】
bpとbpは、bp−bp≧2を満たすことができ、bp−bp≧5を満たすことができ、bp−bp≧10を満たすことができ、bp−bp≧30を満たすことができる。
【0039】
コーティング液組成物は、コーティング液組成物中の混合溶剤のSP値に影響を与えない範囲で、上記以外に種々の添加剤を含むことが出来る。例えば、助溶剤、希釈剤、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、密着性付与剤、レオロジーコントロール剤、又は重合開始剤等、塗料又はインキに通常添加される添加剤を含んでいてもよい。樹脂成分として2液硬化型樹脂を用いた場合、添加剤として硬化剤を含んでいてもよい。2液硬化型樹脂の硬化剤としては、特に限定されないが、イソシアネート等、2液硬化型樹脂の硬化剤として一般に使用される硬化剤を用いることができる。
【0040】
このようなコーティング液組成物によれば、真溶剤である第一の溶剤に加えて、SP値の高い第二の溶剤を混合することにより、SP値の低い二酸化炭素が混合された場合にも、樹脂成分の析出を軽減でき、好適な噴霧が行える。また、このようなコーティング液組成物によれば、噴霧して形成されたコーティング液膜において第二の溶剤が優先的に揮発することにより、噴霧の際に二酸化炭素が気化した場合にも、樹脂成分の析出を軽減でき、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0041】
続いて、このようなコーティング液組成物の製造方法を説明する。このようなコーティング液組成物は、樹脂成分、第一の溶剤、二酸化炭素、及び、第二の溶剤を混合することにより得られる。混合方法の例はインラインミキサーを使用したラインブレンド法である。混合の順番は特に限定されないが、以下の例が好ましい。
【0042】
<3液連続混合方法>
本方法は、二酸化炭素と第二の溶剤とを混合して混合物を得る工程と、当該混合物に、樹脂成分及び第一の溶剤の混合物を混合する工程と、を備える。
【0043】
本実施形態では、図1に示すような3液連続混合式二酸化炭素塗装装置を用いることができる。COボンベ4に貯蔵された二酸化炭素はCO冷却器5によって冷却されて液化し、CO高圧ポンプ6によって所定の圧力まで加圧され、CO加熱器7によって所定の温度まで加温されてから、第一混合器12へと供給される。溶剤タンク10に貯蔵された第二の溶剤は、溶剤高圧ポンプ11によって所定の圧力まで加圧されてから、第一混合器12へと供給される。第一混合器12としては、例えば、インラインミキサーを使用できる。
【0044】
さらに、塗料タンク1に貯蔵された樹脂成分と第一の溶剤との混合物は、塗料高圧ポンプ2によって所定の圧力まで加圧され、塗料加熱器3によって所定の温度まで加温されてから、第二混合器8へと供給される。第二混合器8としては、例えば、インラインミキサーを使用できる。塗料タンク1に貯留された混合物は、上述した添加剤を含有することができる。
【0045】
すなわち、二酸化炭素と第二の溶剤は第一混合器12内で混合され、次いで、この混合物が第二混合器8内で樹脂成分と第一の溶剤との混合物と混合され、コーティング液組成物ができる。本実施形態では、SP値の低い二酸化炭素とSP値の高い第二の溶剤とを先に混合しておくので、樹脂成分と二酸化炭素とを混合する際の樹脂成分の析出を軽減しやすい。
【0046】
第二混合器8により得られたコーティング液組成物は、後述する方法により、ノズル又はオリフィスを有する噴霧ガン9から被塗装物へ噴霧され、コーティング膜を形成することができる。樹脂成分と二酸化炭素とが混合されて(すなわち、コーティング液組成物の調製)から、噴霧されるまでのコーティング液組成物の滞留時間は60秒以下であることが好ましく、5秒以下であることが好ましい。滞留時間は、第二混合器8と噴霧ガン9とを接続する配管の容量を変えることによって調整してもよい。
【0047】
本実施形態の方法によれば、低いSP値を有する二酸化炭素と高いSP値を有する第二の溶剤を先に混合し、これら混合溶剤のSP値がより均一になったところに樹脂成分を混合するため、連続式二酸化炭素塗装装置内における樹脂成分の析出をより効果的に軽減できる。
【0048】
<2液連続混合方法>
続いて、別の混合方法について説明する。第二の実施形態に係る方法は、樹脂成分と、第一の溶剤と、第二の溶剤との混合物に、二酸化炭素を混合する工程を備える。
【0049】
本実施形態では図2に示すような、2液連続混合式二酸化炭素塗装装置を用いることができる。塗料タンク1に貯蔵された、樹脂成分と、第一の溶剤と、第二の溶剤との混合物(コーティング液組成物調製用組成物)は、塗料高圧ポンプ2によって所定の圧力まで加圧され、塗料加熱器3によって所定の温度まで加温されてから、第二混合器8へと供給される。一方、COボンベ4に貯蔵された二酸化炭素は、CO冷却器5によって冷却されて液化し、CO高圧ポンプ6によって所定の圧力まで加圧され、CO加熱器7によって所定の温度まで加温されてから、第二混合器8へと供給される。塗料タンク1内の混合物は、上述の添加剤を含むことができる。
【0050】
第二混合器8内で樹脂成分、第一の溶剤、二酸化炭素、及び、第二の溶剤が混合され、コーティング液組成物となる。コーティング液組成物は、前述と同様に噴霧ガン9によって被塗装物へ噴霧される。上記以外の条件等は、3液連続混合方法と同様にすることができる。
【0051】
樹脂成分と二酸化炭素とが混合されて(すなわち、コーティング液組成物の調製)から、噴霧するまでのコーティング液組成物の滞留時間は600秒以下であることが好ましい。滞留時間は、第二混合器8と噴霧ガン9とを接続する配管の容量を変えることによって調整してもよい。本方法では、滞留時間を多くすることにより、樹脂成分が析出したとしても噴霧ガン9のノズルに到達するまでに再溶解することにより、析出による閉塞が起こりにくい傾向がある。
【0052】
本実施形態の方法によれば、予め、樹脂成分、第一の溶剤、及び、第二の溶剤の混合物を作り、これに対して二酸化炭素を混合するので、連続式二酸化炭素塗装装置内における樹脂成分の析出をより効果的に軽減できる。
【0053】
さらに、このように製造されたコーティング液組成物から、コーティング膜を形成する方法について説明する。コーティング膜は、コーティング液組成物をノズルから対象物に噴霧して液膜を形成する工程と、液膜を固化してコーティング膜を形成する工程と、を備える。
【0054】
図1及び図2において、第二混合器8により得られたコーティング液組成物は加圧状態にあり、噴霧ガン9を通じて大気中に噴霧されることができる。コーティング液組成物が噴霧されると、圧縮されていた二酸化炭素が瞬時に気化して、その体積が大幅に膨張する。その際の力により、コーティング液組成物は細かい霧状(ミスト)になる。このミストを被塗布物に接触させることにより、被塗布物の表面に、コーティング液膜が形成される。コーティング液膜は、第一の溶剤と第二の溶剤との混合溶剤と、この混合溶剤に溶解した樹脂成分を含む。その後、第二の溶剤が揮発し、第一の溶剤とこれに溶解した樹脂成分を含む液膜を、例えば、乾燥、加熱、又はUV等の活性エネルギー線による硬化により固化させることにより、コーティング膜ができる。このような方法により、被塗布物に対する塗装又は印刷等が可能である。
【0055】
噴霧させるコーティング液組成物の温度としては、0℃〜60℃が好ましく、10℃〜30℃であることがより好ましい。2液硬化型樹脂の場合は、温度が60℃より高いと、コーティング液組成物の使用可能時間(ポットライフ)が短くなる傾向がある。コーティング液組成物の温度を調整する熱交換器は、第二混合器8よりも下流に設けても良いが、第二混合器8より下流には設けず、第二混合器8、又は、第二混合器8よりも上流に設けることが好ましい。即ち、樹脂成分に対して二酸化炭素を混合する前のラインに熱交換器を設けることにより、熱交換器に樹脂成分が析出することを軽減できる。コーティング液組成物の温度が10℃〜30℃の場合は、CO加熱器7や塗料加熱器3はなくてもよく、コーティング液組成物の温度を調整する熱交換器もなくてもよい。
【0056】
噴霧させるコーティング液組成物の圧力としては、2MPa以上であることが好ましく、2MPa〜15MPaであることがより好ましい。
【0057】
本実施形態の方法によれば、噴霧ガン9内部のノズルを詰まらせることなく、かつ、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、上記の3液連続混合方法では、塗料タンク1内には第二の溶剤は含まれていないが、予め一部の第二の溶剤が塗料タンク内に混合されていても良い。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づき発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜69)
表4〜11に示すような割合で、樹脂組成物、溶剤(溶剤A及び溶剤B)、二酸化炭素、及び、添加剤を混合した。なお、本実施例及び比較例で用いる樹脂組成物を表1に、添加剤を表2に、溶剤を表3に示す。表1におけるNVは、樹脂組成物の非揮発成分(すなわち、樹脂成分)の質量割合を意味し、NVが100%でない場合には、樹脂組成物に樹脂成分を溶解する酢酸ブチル等の第一の溶剤成分が含まれる。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】
【0072】
図1に示すような3液連続混合式二酸化炭素塗装装置において、塗料タンク1にあらかじめ表4〜11の各実施例にしたがって調製しておいた樹脂組成物、添加剤、及び、溶剤A(第一の溶剤)の混合物1を仕込んだ。塗料高圧ポンプ2の流量を50g/分に設定した。溶剤タンク10に溶剤B(第二の溶剤)を仕込み、溶剤高圧ポンプ11の流量を表4〜11の混合比となるように設定した。CO高圧ポンプ6の流量を、表4〜11の混合比となるように設定した。なお、各表の各成分の混合比の単位は質量部である。そして、第一混合器12内で、温度20℃、圧力10MPaの条件下、二酸化炭素と、第二の溶剤とを混合して混合物2を得た。その後、第二混合器8内で、温度20℃、圧力10MPaの条件下、この混合物2と混合物1とを混合し、コーティング液組成物を得た。コーティング液組成物の調製から噴霧塗装までの液の滞留時間は5秒となるように設定し、5分間の塗装試験を3回ずつ行い、レベリング性、霧化の様子、及び樹脂の析出の評価を行った。結果を表4〜11に示す。
【0073】
レベリング性は、塗装後、10分間20℃で放置後、60℃の乾燥機で乾燥させた塗膜(コーティング膜)の表面を目視で確認して評価した。表4〜11に示すレベリング性の評価において、○は表面に凹凸(ゆず肌)がなく平坦である場合、△は表面に若干の凹凸(ゆず肌)がみられる場合、×は表面に激しい凹凸(ゆず肌)がみられる場合をそれぞれ意味する。
【0074】
霧化の様子は、噴霧によって生じたコーティング液組成物の霧の細かさを目視で観察することで評価した。表4〜11に示す霧化の様子の評価において、○は細かい霧状となった場合、△は細かい霧状とならず、例えば糸状又は大きな粒子となった場合、×はノズルの閉塞により霧とならなかった場合をそれぞれ意味する。
【0075】
樹脂の析出は、ノズルの閉塞の有無によって評価した。表4〜11に示す樹脂の析出の評価において○は3回成功、△は1回又は2回成功、×は成功なしをそれぞれ意味する。成功とは、5分間の塗布をノズルの閉塞なく完了できたことを意味する。
【0076】
(比較例1〜11)
各成分の混合比を表6〜8に示すような値にした以外は、実施例1〜69と同様の操作で、塗装試験を行った。結果を表6〜8に示す。
【符号の説明】
【0077】
1…塗料タンク、2…塗料高圧ポンプ、3…塗料加熱器、4…COボンベ、5…CO冷却器、6…CO高圧ポンプ、7…CO加熱器、8…第二混合器、9…噴霧ガン、10…溶剤タンク、11…溶剤高圧ポンプ、12…第一混合器。
【要約】
【課題】二酸化炭素を希釈剤として用いた場合でも、樹脂成分の析出を軽減することができ、かつ、レベリング性の高いコーティング膜を形成することができるコーティング液組成物等を提供する。
【解決手段】本発明のコーティング液組成物は、樹脂成分と、23.5(MPa)0.5未満の溶解度パラメータを有する第一の溶剤と、二酸化炭素と、23.5(MPa)0.5〜40(MPa)0.5の溶解度パラメータを有する第二の溶剤と、を含み、上記第一の溶剤の平均沸点bpと上記第二の溶剤の平均沸点bpが、bp−bp>0を満たす。
【選択図】図1
図1
図2