(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主センサは、基準面から第1の高さに位置するように配置され、前記複数のセンサは、基準面から第2の高さに位置するように配置される、請求項1に記載の気象観測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシャドウバンドを備えた気象観測装置は、設置される場所の緯度・経度を考慮して太陽の理論的な位置を算出し、これに対応するシャドウバンドの位置(回転角度)を算出する。しかしながら、その前提として、気象観測装置の軸を南北方向に正しく一致させなければ、日射量を測定するセンサとシャドウバンドとの間の位置的関係に誤差が含まれてしまい、精度良く気象データを測定することができない。
【0006】
また、実際には、シャドウバンドを回転制御する際の位置決め精度は十分ではなく、結果として、精度の高い気象観測データを得ることができないという課題があった。これに対処するため、シャドウバンドの位置決め精度を、機械的精度を高めて向上させるというアプローチは、より高価な部品を用いる必要があり、気象観測装置のコストが高くなるという課題に直面する。
【0007】
そこで、本発明は、高精度の気象データを得ることができる気象観測装置を提供することを目的としている。
【0008】
より具体的には、本発明の一つの目的は、日射センサに対する理論的な太陽の位置とシャドウバンドの位置とのずれ量を求め、該ずれ量を補正したシャドウバンドの位置で日射量(散乱日射量)を測定することにより、高精度の気象データを得ることができる気象観測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点に従う本発明は、日射量を測定するための主センサと、前記主センサの近傍に配置され、日射量を測定するための複数の副センサと、回転機構と、前記回転機構の軸に連結され、該軸の方向に延伸し、該軸を中心にして前記主センサ及び前記複数の副センサの頂上を経由して回転するように構成されたシャドウバンドと、前記軸の回転角度を制御するために、前記回転機構の駆動を制御する制御回路と、前記主センサによって測定される日射量に関するデータ及び前記軸の回転角度に関するデータに基づいて、所定の気象データを算出する演算装置と、を備える気象観測装置である。前記演算装置は、前記複数の副センサのうちの第1副センサ及び第2副センサのそれぞれによって測定される日射量に関するデータ及び前記回転角度に関するデータに基づいて、補正値を算出し、算出した前記補正値に基づいて、前記軸の回転角度を補正するように構成される。
【0010】
また、前記演算装置は、前記回転角度に関するデータの変化に対する、前記第1副センサ及び前記第2副センサのそれぞれによって測定された日射量に関するデータの変化に基づいて、前記補正値を算出する。
【0011】
また、前記演算装置は、前記第1副センサ及び前記第2副センサのそれぞれについての、前記日射量に関するデータの変化における少なくとも2つのピーク値を算出し、該少なくとも2つのピーク値に基づいて、前記補正値を算出する。
【0012】
また、前記演算装置は、前記第1副センサについての前記日射量に関するデータの変化における正及び負のピーク値のそれぞれに対応する前記回転角度の第1の中間値及び前記第2副センサについての前記日射量に関するデータの変化における正及び負のピーク値のそれぞれに対応する前記回転角度の第2の中間値を算出し、該第1の中間値及び該第2の中間値から算出される中間値に基づいて、前記ずれ量を算出する。
【0013】
前記第1副センサ及び前記第2副センサは、前記主センサを点対称の中心として、前記軸の方向に沿ってそれぞれ配設されても良いし、前記第1副センサ及び前記第2副センサは、前記主センサを点対称の中心として、前記軸に対して直交する方向にそれぞれ配設されても良い。
【0014】
また、前記主センサ及び前記複数の副センサは、基準面から所定の高さに位置するように配置されても良いし、前記主センサは、基準面から第1の高さに位置するように配置され、前記複数のセンサは、基準面から第2の高さに位置するように配置されても良い。
【0015】
第2の観点に従う本発明は、回転機構の軸方向に延伸し、該軸を中心にして回転するシャドウバンドを備えた気象観測装置におけるデータ処理方法である。かかる方法は、日射量を測定するための主センサ、及び該主センサの近傍に配置された、光量を測定するための複数の副センサの頂上を経由するように、前記シャドウバンドを回転させるステップと、 前記軸の回転角度に併せて前記複数の副センサのそれぞれによって光量を測定するステップと、前記測定された光量に関するデータ及び前記軸の回転角度に関するデータに基づいて、補正値を算出するステップと、前記主センサにより散乱日射量を測定するためのシャドウバンドの回転角度を、前記算出された補正値に基づいて、補正するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、日射量を測定するセンサとシャドウバンドとの間の位置的な誤差量を求めるので、該誤差量を補正したシャドウバンドの位置で日射量(散乱日射量)を測定することができ、従って、高精度の気象データを得ることができるようになる。特に、シャドウバンドを回転させる機構の機械的誤差や南北方向に対して軸がずれている場合であっても、シャドウバンドを正しい位置に補正するので、高精度の気象データを得ることができる。
【0017】
本発明の他の技術的特徴及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば、各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置の外観の一例を概略的に示す斜視図である。また、
図2は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置の外観の一例を概略的に示す平面図である。
【0021】
図1に示すように、気象観測装置10は、筐体11と、筐体11の前面端部から延在するアーム12上に設けられたセンサユニット13と、該前面端部からアーム12と同方向に延在する軸14に取り付けられたシャドウバンド15と、を備える。図示されてはいないが、軸14は、筐体11内に設けられた回転機構32の軸と連結されている。回転機構32は、典型的には、モータ321を含み、演算処理装置34の制御の下、駆動回路33により駆動制御される(
図3参照)。
【0022】
センサユニット13は、気象観測に関する少なくとも1つ以上のセンサを含んで構成される。本例のセンサユニット13は、少なくとも1つの主センサ131と、少なくとも2つの副センサ132A及び132Bとを備える。本明細書では、主センサ131並びに副センサ132A及び132Bをまとめて「複数のセンサ130」ということもある。主センサ131は、例えば、熱電素子(サーモパイル)を用いた熱センサであり、日射による熱量を電気信号に変換し、これを測定データとして出力する。一方、副センサ132A及び132Bは、例えば、シリコンフォトダイオードを用いた光センサであり、光量を電気信号に変換し、これを測定データとして出力する。なお、主センサ131は、熱センサの代わりに、光センサや分光放射計であっても良く、また、副センサ132A及び132Bは、光センサの代わりに、熱センサであっても良い。複数のセンサ130は、日射量やスペクトルを測定するために用いることができるセンサであれば、これらに限られない。
【0023】
主センサ131は、気象観測装置10が所望の場所に設置されたときに概ね天頂を向くように設けられている。主センサ131は、筐体11がセンサ視野に入らないよう、典型的には、気象観測装置10底面を基準面として、該基準面から所定の高さに位置するようにアーム12上に設けられる。なお、水平線近くに位置する太陽による日射量を測定するため、水平方向に向く別の主センサ131が設けられても良い。
【0024】
副センサ132A及び132Bは、例えば、軸14の延伸方向に一致するように整列してアーム12上に設けられている。本例では、副センサ132A及び132Bは、主センサ131を点対称の中心として、軸14の軸線上に整列して設けられている。従って、気象観測装置10は、アーム12(及び軸14)の延伸方向が南北に一致するように、設置される。従って、気象観測装置10がこのように設置された場合、主センサ131と副センサ132A及び132Bとは南北方向に一列に並ぶことになる。他の例として、副センサ132A及び132Bは、主センサ131を点対称の中心として、軸方向に直交する方向に整列して設けられても良い。
【0025】
主センサ131と副センサ132A及び132Bとは、例えば、同一水平面に位置するように設けられる。即ち、主センサ131と副センサ132A及び132Bとは、基準面から同じ高さに位置するように設けられる。或いは、主センサ131は、基準面から第1の高さに位置するように設けられ、副センサ132A及び132Bは、当該第1の高さと異なる第2の高さに(例えば、第1の高さより低く又は高く)設けられても良い。
【0026】
なお、本例では、センサユニット13は、主センサ131と副センサ132A及び132Bとを含む一体のデバイスとして構成されたが、これに限られず、それぞれ別体のセンサとして構成されても良い。
【0027】
シャドウバンド15は、複数のセンサ130に対する遮蔽部材であり、軸14に取り付けられている。シャドウバンド15は、同図から明らかなように、円弧状に所定の幅を持って形成され、軸14の回転に伴って複数のセンサ130の頂上を経由して回転するように構成される。言い換えれば、シャドウバンド15が描く軌跡は、主センサ131を中心とする仮想的な略半球面を形成する。シャドウバンド15の幅は、概して、複数のセンサ130の有効感度領域の大きさによって決定される。
【0028】
図示されてはいないが、気象観測装置10は、その筐体11内部に、シャドウバンド15を軸回転させ、複数のセンサ130から出力される測定データを処理するための各種の機械的・電気的構成要素を含んで構成される。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置の機能的な構成要素の一例を示すブロックダイアグラムである。
【0030】
上述したように、主センサ131は、日射量を測定する熱センサであり、測定した日射量に応じた電気信号を出力する。一方、副センサ132A及び132Bは、光量を測定する光センサであり、測定した光量に応じた電気信号を出力する。これらの電気信号は、測定データとして、A/D変換器31に入力される。
【0031】
A/D変換器31は、センサ130から送られるアナログの測定データを、デジタルの測定データに変換する。測定データは、例えば、16ビットのデータセットからなる。A/D変換器31によりデジタルに変換された測定データは、演算処理装置34に入力される。
【0032】
回転機構32は、シャドウバンド15を回転させるためのモータ321を含む。本例では、モータ321は、減速機つきのステッピングモータであるが、これに限られるものではない。モータ321の軸は軸14に連結されている。回転機構32はまた、エンコーダ322を含むこともできる。エンコーダ322は、軸14の回転角度の変化量を非接触で検出し、これを演算処理装置34に出力する。エンコーダ322は、例えば、回転角度0.4度の分解能を有する。
【0033】
駆動回路33は、モータ321を駆動制御するための回路であり、演算処理装置34の制御の下、例えばパルス状の駆動信号をモータ321に出力する。駆動回路33は、例えば、シャドウバンド15を東側水平面以下(例えば天頂から−100度)から西側水平面以下(例えば天頂から+100度)までの範囲の任意の角度に移動させる。
【0034】
演算処理装置34は、気象観測装置10の動作を統括的に制御して、気象観測装置10に所望の気象データを測定させ、算出させるように構成された回路である。演算処理装置34は、典型的には、プロセッサ341と、プログラムメモリ342と、データメモリ343とを含み、これらは内部バス344を介して相互に接続されている。なお、同図には示されていないが、演算処理装置34は、プロセッサ341の利用に供されるキャッシュメモリや主メモリを含む。これらは、プロセッサ341の一部として構成されても良い。
【0035】
具体的には、演算処理装置34は、プロセッサ341がプログラムメモリ342に記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することにより、駆動回路33を制御してシャドウバンド15を回転させながら、複数のセンサ130のそれぞれから送られる測定データを、A/D変換器31を介して、受け付ける。制御プログラムは、補正値を算出するために、副センサ132A及び132Bを用いた測定動作を行うためのシーケンス(補正値算出のための前処理シーケンス)と、気象データを測定するために、主センサ131を用いた測定動作を行うためのシーケンス(気象データ測定処理シーケンス)とを含む。気象データは、例えば、全天日射量データ及び散乱日射量データである。プログラムメモリ342はまた、太陽位置情報を記憶している。太陽位置情報は、気象観測装置10が設置された場所(緯度・経度)及び測定日時に対応する太陽の理論的な位置を示す情報(例えば、方位及び仰角等)である。太陽位置情報は緯度・経度・時刻をもとに制御プログラムによって求められも良い。制御プログラムは、該太陽位置情報を用いて、シャドウバンド15の位置(回転角度)を制御する。演算処理装置34は、プロセッサ341の制御の下、受け付けた測定データをデータメモリに記憶し、必要な処理を行う。
【0036】
プログラムメモリ342及びデータメモリ343は、例えば、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリにより構成されるが、これに限られるものではない。本例では、プログラムメモリ342及びデータメモリ343は別体のメモリとして表されているが、これに限られるものでなく、一体的に構成されたものであっても良い。
【0037】
また、気象観測装置10は、外部のコンピュータデバイスと通信するための外部インターフェース345を備えても良い。外部インターフェース345は、例えば、有線/無線LANの規格に準拠した回路を含み、外部デバイスと所定のプロトコルで通信を行うことができるように構成される。これにより、例えば、ユーザは、パーソナルコンピュータ上のWebブラウザから気象観測装置10にリモートアクセスし、種々の設定等を行うための操作をすることができるようになる。また、外部インターフェース345は、例えば、カードメモリのような外部記録媒体とのアクセスを可能にするスロットを含んでいても良い。
【0038】
本例では、演算処理装置34は、気象観測装置10の筐体11内部に設けられているものとして説明されているが、これに限られるものではない。他の例として、演算処理34装置は、気象観測装置10とは独立に構成されても良く、例えば、外部インターフェース345を介して接続されたパーソナルコンピュータにより実現されてもよい。
【0039】
また、図示されていないが、気象観測装置10は、時計機構を含んで構成される。時計機構は、例えば、演算処理装置34の機能の一部として組み込まれていても良い。演算処理装置34は、時計機構によって得られる日時情報を気象データの測定に用いる。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置の動作の一例を示すフローチャートである。気象観測装置10のかかる動作は、例えば、演算処理装置34のプロセッサ341がプログラムメモリ342に記憶された制御プログラムを実行することにより、実現される。
【0041】
即ち、同図に示すように、気象観測装置10は、稼働中、予め決められた測定時刻になったか否かを監視している(STEP401)。一例として、測定時刻は、日の出から日の入りまでの間の毎時0分と設定される。或いは、測定時刻は、10分おき、15分おき、30分おき、又はそれ以上の間隔というように設定される。気象観測装置10は、予め決められた測定時刻になったと判断した場合(STEP401のYes)、補正値を算出するための前処理を行う(STEP402)。補正値算出のための前処理の詳細は、
図5及び
図6を参照して説明される。補正値算出のための前処理の後、気象観測装置10は、気象データを測定するための処理を行う(STEP403)。気象データ測定処理は、全天日射量の測定と散乱日射量の測定を含む。気象データ測定処理の詳細は、
図7を参照して説明される。気象観測装置10は、当該測定時刻での気象データ測定処理の後、次の測定時刻まで待機することとなる。
【0042】
上記の例においては、補正値算出のための前処理は、気象データ測定処理の前に必ず実行されるように構成されているが、これにこだわるものではない。例えば、測定時刻の間隔が比較的短い場合には、数回の気象データ観測処理の前に1回の割合で補正値算出のための前処理が実行されるように構成されても良い(例えば、気象データ測定処理が10分おきに設定されている場合、1時間おきに補正値算出のための前処理が実行される。)。かかる構成によれば、補正値算出のための前処理の回数が省略されるため、真の測定処理である気象データ測定処理が終了するまでの時間を短縮することができるようになる。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置における補正値算出のための前処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
同図に示すように、気象観測装置10は、まず、シャドウバンド15を回転させて、所定の開始位置まで移動させる(STEP501)。開始位置は、例えば、シャドウバンド15の回転範囲限界の一方端の位置(即ち、−100度)である。次に、気象観測装置10は、シャドウバンド15を回転させながら、副センサ132A及び132Bから出力される測定データをサンプリングし(STEP502)、サンプリングされた測定データをシャドウバンド15の回転角度と関連付けてデータメモリ343に記録する(STEP503)。
【0045】
即ち、気象観測装置10は、シャドウバンド15を所定の回転角度の位置で停止させ、副センサ132A及び132Bから出力される測定データを収集し、所定の時間経過した後、次の位置までシャドウバンド15を段階的に回転(例えば0.4度)、停止させ、同様に、測定データを収集するという処理を繰り返す。所定の時間内に収集された測定データは、回転角度毎の日射量(光量)の大きさを示すことになる。シャドウバンド15の回転速度は、副センサ132A及び132Bの出力動作が追随できる速度であれば良い。従って、一般に、副センサ132A及び132Bに応答速度の速い光センサが用いられた場合、比較的早い回転速度でシャドウバンド15を連続的に回転させることができる。
【0046】
このようにして、気象観測装置10は、シャドウバンド15が終了位置(回転範囲限界の他方端の位置(即ち、+100度)に到達するまで、測定データをサンプリングし、記録する(STEP504のNo)。気象観測装置10は、シャドウバンド15の掃引による測定データの収集が終了すると(STEP504のYes)、(回転角度と関連付けられた)測定データに基づいて補正値を算出する(STEP505)。
【0047】
本例では、シャドウバンド15の開始位置及び終了位置をそれぞれ、回転範囲限界の両端位置としたが、これに限られるものではない。他の例として、気象観測装置10は、太陽位置情報に基づく測定時刻の太陽の位置を中心に東西方向にそれぞれ例えば20度の範囲内で測定データをサンプリング、記録するようにしても良い。これにより、太陽の位置から大きく外れた、補正値算出に実質的に影響を及ぼさないような位置にシャドウバンド15を移動させる必要がなく、測定データの収集時間を短縮することができ、また、補正値の算出時間を短縮することができる。
【0048】
図6は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置における補正値算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
同図に示すように、気象観測装置10は、まず、データメモリ343に記録された測定データに基づいて、副センサ132A及び132Bのそれぞれについての回転角度毎の傾きを算出する(STEP601)。本例では、回転角度を段階的に等角度で増分させているので、傾きは次の簡易な式を用いることができる。即ち、回転角度A(x-2)、A(x-1),A(x),A(x+1)及びA(x+2)のそれぞれにおける測定データをa(x-2),a(x-1),a(x),a(x+1)及びa(x+2)とした場合、回転角度A(x)における傾きD(x)は、
傾きD(x)=−{(a(x-2)+a(x-1))−(a(x+1)+a(x+2))} … 式1
として定義される。
【0050】
次に、気象観測装置10は、算出された傾きD(x)に基づいて、正負のピーク値(極大値及び極小値)を特定する(STEP602)。ここで、極大値及び極小値は、副センサ132A及び132Bのそれぞれについて特定される正負のピーク値であることに留意されたい。
【0051】
続いて、気象観測装置10は、特定した極大値及び極小値がシャドウバンド15を用いた測定により現れたものか否かを判断する。即ち、予期しない遮蔽物(例えば、人、鳥、雲等)が副センサ132A及び132Bの上方を遮った場合であっても、測定データは傾きを含み、意図しない極大値及び極小値が特定される可能性があるからである。本例では、次の2つの条件によって判断される。
【0052】
第1に、気象観測装置10は、極大値及び極小値を特定するために用いた測定データについて、所定のしきい値を超えているか否かを判断する(STEP603)。本例では、気象観測装置10は、個々の測定データと所定のしきい値とを比較し、所定のしきい値を超えている個々の測定データの数が所定の数以上である場合に、所定のしきい値を超えていると判断している。第2に、気象観測装置10は、特定した極大値及び極小値が太陽の理論位置から所定の範囲内にあるか否かを判断する(STEP604)。気象観測装置10は、STEP603または604のいずれかで、条件を満たさないと判断する場合には、例えば収集した測定データをリセットする等のエラー処理を行う(STEP607)。
【0053】
なお、本例では、極大値及び極小値を特定した後に、それらが意図したものであるか否かの判断を行ったが、これに限られるものでない。例えば、測定データが得られた時点で、その測定データの特徴(例えば、光量の減少量及びその減少期間)に基づいて、正しい測定データが収集されたか否かを判断するように構成しても良い。
【0054】
気象観測装置10は、上記条件を満たすと判断する場合(STEP604のYes)、続いて、極大値及び極小値のそれぞれを示す回転角度間の差分値を算出し、さらに、該差分値に基づいて中間値(個別中間値)を算出する(STEP605)。例えば、ある副センサ132について、極大値を示す回転角度が1.4度であり、極小値を示す回転角度が12.2度であれば、その個別中間値は5.4度となる。副センサ132A及び132Bのそれぞれについて個別中間値を算出すると、気象観測装置10は、これらの個別中間値間のさらなる中間値(共通中間値)を算出する(STEP606)。例えば、副センサ132Aについての個別中間値が5.4度であり、副センサ132Bについての個別中間値が5.1度であるとすると、共通中間値は5.25度となる。共通中間値は、補正値として、気象データ測定処理におけるシャドウバンド15の位置を補正するために用いられる。気象観測データ10は、算出された補正値をデータメモリ343の所定の領域に記憶する。
【0055】
上記の補正値算出処理は、次の考え方に基づくものである。即ち、副センサ132Aによって得られた測定データに基づく傾きのピーク値は、最も急峻な変化点を示しており、ここがシャドウバンド15の影のエッジということができる。従って、正及び負のピーク値はそれぞれ影に入るエッジ及び影から出るエッジを示し、これらピーク値の中心位置が当該副センサ132Aに対する影の中心位置と考えることができる。同様に、副センサ132Bに対する正負のピーク値の中心位置は当該副センサ132Aに対する影の中心位置となる。そして、主センサ131は、これら副センサ132A及び132Bの中心に配置されているため、副センサ132A及び132Bの影の中心位置どうしの中心位置は、主センサ131に対して正確な影を作るシャドウバンド15の位置としてみなすことができる。
【0056】
図7は、本発明の一実施形態に係る気象観測装置における気象データ観測処理の一例を示すフローチャートである。
【0057】
即ち、同図に示すように、気象観測装置10は、まず、主センサ131が全天日射の状態となる位置にシャドウバンド15を移動させる(STEP701)。即ち、主センサ131がシャドウバンド15による影の影響を受けないように、気象観測装置10は、シャドウバンド15を、例えば、回転範囲限界の一方端に移動させる。この状態で、気象観測装置10は、所定の時間、主センサ131から出力される測定データ(即ち、全天日射量データ)を収集し、データメモリ134に記録する(STEP702)。
【0058】
次に、気象観測装置10は、太陽位置情報に基づいて、太陽の理論的な位置に対応するシャドウバンド15の回転角度を算出する(STEP703)。太陽の理論的な位置とは、気象観測装置10が設置された場所の緯度・経度及び測定日時に基づいて算出された、主センサ131から見た太陽の位置であり、例えば、方位及び仰角で特定される。続いて、気象観測装置10は、該理論的な位置に対応する回転角度を補正値で示される回転角度で置換し、該補正値で示される回転角度の位置にシャドウバンド15を移動させる(STEP704)。これにより、太陽光はシャドウバンド15で遮られ、主センサ131上に影が形成されることになる。そして、気象観測装置10は、主センサ131から出力される測定データ(散乱日射量データ)を収集し、記録する(STEP705)。
【0059】
図示されていないが、気象観測装置10は、得られた全天日射量データ及び散乱日射量データに基づいて、直達日射量を算出することができる。他の例としては、気象観測装置10は、得られた全天日射量データ及び散乱日射量データを外部のコンピュータに出力し、外部のコンピュータが、直達日射量を算出するようにしても良い。
【実施例】
【0060】
図5に示したように、気象観測装置10は、シャドウバンド15を開始位置から終了位置まで掃引させながら、副センサ132A及び132Bから出力される測定データをサンプリングし、該サンプリングされた測定データをシャドウバンド15の回転角度と関連付けてデータメモリ343に記録する。このようにして収集された、ある測定場所及び測定時刻における測定データと回転角度との関係をグラフに示すと
図8のようになる。本例では、シャドウバンド15の回転範囲は、−100度から+100度、回転角度0.4毎で、測定データは501個である。同図において、縦軸は副センサ132によって測定された光量の大きさを示し、横軸はシャドウバンド15の回転角度を示す。同図では、回転角度約+0〜20度付近において、2個の副センサ132A及び132Bの光量が大きく減少変化した特徴が示されている。
【0061】
気象観測装置10は、データメモリ343に記録された、
図8に示すような特徴を有する測定データに基づいて、副センサ132A及び132Bのそれぞれについての回転角度毎の傾きを算出する(STEP601)。上述したように、ここでは式1を用いる。式1を用いて、
図8に示したグラフにおける回転角度毎の傾きを示すと
図9のようになる。同図では、副センサ132A及び132Bのそれぞれについて、正負のピーク値が示されている。即ち、正負のピーク値は、傾きの急峻な変化点を示しており、シャドウバンド15の影のエッジに対応する。従って、正及び負のピーク値はそれぞれ影に入るエッジ及び影から出るエッジを示している。
【0062】
図10は、上述した
図8及び
図9に示したグラフを1つにして拡大したグラフである。気象観測装置10は、副センサ132A及び132Bのそれぞれについて、特定された正負のピーク値に対応する回転角度の差分値d1及びd2を算出し、その中間値(個別中間値)i1及びi2を算出する。そして、気象観測装置10は、個別中間値i1とi2との間の中間値(共通中間値)Cを算出する。この共通中間値Cが、補正値として、気象データ測定処理におけるシャドウバンド15の位置を補正するために用いられる。つまり、正負ピーク値の中心位置が当該副センサ132に対する影の中心位置と考えることができる。主センサ131は、これら副センサ132A及び132Bの中心に配置されているため、副センサ132A及び132Bの影の中心位置どうしの中心位置は、主センサ131に対して正確な影を作るシャドウバンド15の位置としてみなすことができる。