特許第5923807号(P5923807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5923807物体の支持面が容器の底に断続的に接近する動きを含む、3次元物体を造形するための光造形方法、およびその方法を用いる光造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923807
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】物体の支持面が容器の底に断続的に接近する動きを含む、3次元物体を造形するための光造形方法、およびその方法を用いる光造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20160516BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20160516BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20160516BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20160516BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20160516BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B33Y50/00
   B33Y50/02
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-522182(P2015-522182)
(86)(22)【出願日】2013年7月15日
(65)【公表番号】特表2015-526320(P2015-526320A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】IB2013001540
(87)【国際公開番号】WO2014013312
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】VI2012A000172
(32)【優先日】2012年7月16日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512014740
【氏名又は名称】ディーダブリューエス エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】フォルツナト,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ゼネレ,セルジオ
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−315214(JP,A)
【文献】 特表2014−501648(JP,A)
【文献】 特開2012−206513(JP,A)
【文献】 特開2008−155477(JP,A)
【文献】 特開平07−001595(JP,A)
【文献】 特表2009−542484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00−67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 所定の放射線(4)に曝露して凝固させるのに適した液体物質(3)を入れるための容器(2);
− 前記所定の放射線(4)を放出するのに適した手段であって、所定の厚みを有する前記液体物質(3)の層(6)に選択的に照射するのに適し、前記液体物質を凝固させるために前記容器(2)の底(2a)の近辺に配置される手段(5);
− 前記容器(2)の底(2a)に対面している、凝固層(6’)の支持面(6a、7a);
− 少なくとも前記底(2a)に垂直な方向(Z)に沿って前記支持面(6a、7a)を前記底(2a)に対して動かすのに適したアクチュエータ手段(8);
を備えるタイプの光造形装置(1)を用いて3次元物体を層状に造形する方法であって、
以下の動作:
− 相互の位置決め運動(11;11’)によって前記支持面(6a、7a)を前記底(2a)の近くまで動かして、前記支持面を所定の動作位置(17)で液体物質の前記層(6)と接触させて配置すること;
− 前記支持面(6a、7a)が前記動作位置(17)にある状態で、前記層(6)に選択的に照射して前記層を凝固すること、
を含む方法において、
前記位置決め運動(11;11’)は、該当する所定の長さ(13、13a、13b、13c)を有する複数の接近運動(12、12a、12b、12c)を含み、該接近運動は、該当する所定の時間間隔(15、15a、15b)にわたる該当する中間停止(14、14a、14b)を間に挟み、前記中間停止(14、14a、14b)は、前記支持面(6a、7a)が前記液体物質(3)中に少なくとも部分的に浸漬しているときに実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記接近運動(12、12a、12b、12c)の前記長さ(13、13a、13b、13c)の中から選択した少なくとも1つのパラメータの値、前記中間停止(14、14a、14b)の数および該当する時間間隔(15、15a、15b)は、前記位置決め運動(11;11’)を開始する前に決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択したパラメータ(13、13a、13b、13c、14、14a、14b、15、15a、15b)の値は、前記支持面(6a、7a)の表面積に応じて計算されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択したパラメータ(13、13a、13b、13c、14、14a、14b、15、15a、15b)の値は、前記支持面(6a、7a)の前記表面積と周囲との比率に応じて計算されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記選択したパラメータ(13、13a、13b、13c、14、14a、14b、15、15a、15b)の前記計算は、以下の動作:
− 前記支持面(6a、7a)の前記表面積を複数の区画に分割すること;
− 前記区画に隣接する区画数に比例する重み係数を各区画に割り当てること;
− 前記重み係数を合計して形状パラメータを得ること;
− 前記選択したパラメータ(13、13a、13b、13c、14、14a、14b、15、15a、15b)の値を前記形状パラメータに従って計算すること
を含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。

【請求項6】
前記中間停止(14)の第1の停止に続く接近運動(12a、12b、12c)は、互いに等しいそれぞれの長さ(13a、13b、13c)を有することを特徴とする、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持面(6a)は、前記3次元物体の前記凝固層(6’)に属することを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持面(7a)は、前記アクチュエータ手段(8)に属するモデル作製プレート(7)に属することを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接近運動(12c)の最後の運動は、前記支持面(6a、7a)を前記動作位置(17)を超えて動かすような運動であり、前記位置決め運動(11’)は、前記支持面(6a、7a)を前記底(2a)から離す後退運動(12d)で終わることを特徴とする、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
データサポートを含み、ソフトウェア部を備えるITプログラミング製品であって、前記ソフトウェア部が、プログラム可能な装置で実行された際に、請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の方法に従って光造形装置(1)を制御するように構成された前記プログラム可能な装置を作製するように構成される、ITプログラミング製品。
【請求項11】
− 所定の放射線(4)に曝露して凝固させるのに適した液体物質(3)を入れるための容器(2);
− 前記所定の放射線(4)を放出するのに適した手段であって、所定の厚みを有する前記液体物質(3)の層(6)に選択的に照射するのに適し、前記液体物質を凝固させるために前記容器(2)の前記底(2a)の近辺に配置される手段(5);
− 前記底(2a)に垂直な方向(Z)に沿って前記凝固層(6’)を前記底(2a)に対して動かすのに適したアクチュエータ手段(8)、
を備える光造形装置であって、
前記放出手段(5)および前記アクチュエータ手段(8)に作動的に接続した論理回路制御部(9)を備え、前記論理回路制御部(9)は、請求項10に記載のITプログラミング製品を搭載したプログラム可能な装置であることを特徴とする、
光造形装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元物体を造形するための光造形方法、および該方法を用いる光造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、光造形装置は、所定の放射線、通常は光線に曝露して凝固させるのに適した液体物質用の容器を備えている。
【0003】
前述の放射線は、放射線放出手段によって生成され、同手段は、所定の厚みを有する液体物質の層であって、凝固させるために容器の底の近辺にあるように配置された液体物質の層に選択的に照射される。
【0004】
本装置は、容器の底に対面しているモデル作製プレートであって、仕上げる3次元物体用の支持面を備えるモデル作製プレートも備えている。
【0005】
前述のモデル作製プレートは、容器の底に垂直な方向に沿って動かすのに適した移動手段と連結している。
【0006】
前述のタイプの装置を用いて、物体は、所定の厚みを有する一連の層を重ねて製造される。
【0007】
さらに正確には、本造形方法によれば、モデル作製プレートはまず、物体の第1の層の厚みに等しい距離を容器の底から隔てた所で、支持面を液体物質中に浸漬した状態に配置される。
【0008】
そのため、液体物質の層は、容器の底の近辺にあり、物体の第1の層の表面積に相当する部分で放射線放出手段によって選択的に照射されて、これに該当する凝固層を形成し、この凝固層が、モデル作製プレートを支持する面に接着する凝固層を形成するものと規定される。
【0009】
引き続き、モデル作製プレートはまず、容器の底から離れるように動いて、凝固層を底自体から離す。
【0010】
このようにすると、液体物質はモデル作製プレートの下に流れることができ、その結果、物体の連続層の形成に必要な液体層が復活する。
【0011】
引き続き、モデル作製プレートは、再び容器の底近くまで動き、仕上げる連続層の厚みに等しい距離だけ底から離れた所に、前回凝固した層を配置する。
【0012】
物体の新たな層の凝固は、前回の層の凝固と同様に、前回の層の面と接触した状態で実行され、前回の層が新たな層の支持面としての役割を果たす。
【0013】
前述の工程は、物体を作り上げる層がすべて凝固するまで繰り返される。
【0014】
前述の方法には、モデル作製プレートおよびすでに凝固した物体の部分が容器の底に接近する動きが、液体物質の粘性が原因で、ある程度の抵抗に遭うという欠点があり、この粘性はこの動きの最中に排除しなければならないものである。
【0015】
この抵抗により、被形成3次元物体に圧縮力がかかるとともに、容器の底に押力がかかる。これらの力の実体は主に、プレートが動く速度、プレートの表面積およびすでに凝固した物体の表面積、ならびに液体物質の物理的特性に左右される。
【0016】
所与の閾値を超えると、前記圧縮力は被形成3次元物体の破損を招くおそれがあり、その結果、この手順を一からやり直して繰り返す必要がある。
【0017】
そのような状況を回避するため、モデル作製プレートが容器の底に接近する速度を制限する必要がある。
【0018】
当然ながら、前記速度制限により、プレートが各層に接近するのに必要な時間を、所与の値を超えて短縮することは不可能になり、これは物体の全体的な造形時間に負の影響を及ぼす。
【0019】
また、圧縮力を破損閾値より低い値に制限したとしても、前記圧縮力により、被形成物体はやはりある程度の弾性変形を受け、これは、光造形方法を用いて造形される物体には総じて典型的である、断面が比較的小さいという理由によるものである。
【0020】
圧縮力およびそれに伴い弾性変形は、プレートを停止してすぐには消滅せず、消滅するまでにはある程度の量の時間が必要で、この時間の量は、液体物質が完全に流出し、その結果物体が弾性回復するのに必要であることが理解できる。
【0021】
前記弾性変形が、被形成3次元物体に一切の歪みをもたらさないような残差値に下がるまで、連続層の凝固は起こり得ないことは明らかである。
【0022】
よくあるように、液体物質が極めて高粘性である場合、前記流出には比較的長い時間が必要になり、これによって物体の造形工程の時間が増す。
【0023】
前述した装置に伴うもう1つの欠点は、モデル作製プレートが大きいほど液体物質にかかる圧縮力が強くなり、それによって、プレートが浸漬している間に物質自体が容器の外部へ飛散するリスクがあることである。
【0024】
したがって、接近運動の速度は、プレートサイズの増大に比例して低下しなければならず、これによって造形工程の時間はさらに長くなる。
【0025】
もう1つの欠点は、前述した押力で容器の底に疲労応力が生じ、これが容器の劣化を招き、時間の経過とともに破壊を招くことである。
【0026】
したがって、これでは容器を定期的に交換する必要性が生じ、造形を停止して交換費用を負担しなければならないという不都合が伴う。
【0027】
前述の装置の公知の変形実施形態では、容器を支持するためにガラス壁が設けられる。
【0028】
このガラス壁は、容器の変形を制限するほか、容器が時期を誤って何らかの形で破損して装置に入っている液体物質が流れ出て、一般に容器の下に配置されている放射線放出手段を損傷するのを防止する。
【0029】
この変形例では、前述した圧縮応力および何らかの損傷は、いずれにしてもガラス壁に伝達され、ガラス壁は、容器と同じように徐々に劣化にさらされるおそれがあることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、上に述べた公知の欠点をすべて克服しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
特に、本発明の第1の目的は、光造形装置を用いて3次元物体を層状に作製する方法であって、被形成3次元物体が受ける圧縮応力と、モデル作製プレートが底自体に接近する過程で容器の底または任意の支持ガラス壁にかかる押力との両方を制限することを可能にする方法を提供することである。
【0032】
本発明のもう1つの目的は、前述した方法を公知タイプの光造形装置に容易に適用できるように発展させることである。前述の目的は、主要請求項に従って実装する3次元物体を造形する方法によって達成される。
【0033】
本発明の主題である方法のその他の特徴および詳細は、該当する従属請求項に記載されている。
【0034】
前述の目的は、請求項11に従って作製した光造形装置によっても達成される。
【0035】
有利には、応力を低減することで、被形成物体が容器の底に接近するのに必要な時間を短縮し、このようにして物体の各層の処理時間を短縮し、その結果、処理サイクルの全体的な時間を短縮することが可能になる。
【0036】
引き続き有利には、応力を低減することで、被形成物体の弾性変形を制限し、このようにして物体の弾性回復時間を短縮することが可能になる。引き続き有利には、物体の層が受ける応力を小さくすることで、公知の方法で得られる物体よりも断面の大きい物体ができると同時に、同じ接近時間を維持し、使用する液体物質の同じ物理的特徴を維持することが可能になる。
【0037】
引き続き有利には、容器または支持ガラス壁にかかる応力を小さくすることで、容器の寿命を延ばすことが可能になり、このようにして交換の必要性を低減する。
【0038】
引き続き有利には、浸漬している間にモデル作製プレートが液体物質にかける圧縮力を小さくすることにより、物質自体が飛散するリスクが低減する。
【0039】
前記目的および利点は、以下に強調するその他の目的および利点と合わせて、本発明の2つの好適な実施形態についての記載の中で説明し、この2つの実施形態は、添付の図面を参照して非限定的な例として提供している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による光造形装置の図である。
図2図1に示した光造形装置が別の動作構成になっている図である。
図3】本発明の主題である方法を適用している過程で物体の凝固層を支持している面が動く様子を示す概略図である。
図4】本発明の主題である方法の一変形例を適用している過程で物体の凝固層を支持している面が動く様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の主題である3次元物体を造形する方法を、全体的に図1に1で表記した光造形装置を参照して説明する。
【0042】
前述の光造形装置1は、所定の放射線4に曝露して凝固させるのに適した液体物質3を入れるための容器2を備えている。
【0043】
本装置1は、前記所定の放射線4を放出するのに適した手段5であって、所定の厚みを有し、容器2の底2aの近辺に配置される液体物質3の層6に選択的に照射することができる手段も備えている。
【0044】
液体層6に照射すると、図2に概略的に示したように、それに該当する物体の凝固層6’が形成される。
【0045】
前記所定の放射線4は、前述の放出手段5によって、被造形物体の体積に該当する領域に向かって選択的に誘導されるレーザー光線であることが好ましいが、必須ではない。
【0046】
一方、本明細書には示していない本発明の変形実施形態では、放出手段はこれ以外の任意の公知のものであってよいことは明らかである。
【0047】
本装置1は、底2aに垂直な運動方向Zに沿って凝固層6’を容器2の底2aに対して動かすのに適したアクチュエータ手段8も備えている。
【0048】
前記アクチュエータ手段8は、容器2の底2aに対面している面7aを有するモデル作製プレート7を備えて前記凝固層6’を支持することが好ましい。
【0049】
光造形装置1は、放出手段5およびアクチュエータ手段8に作動的に接続した論理回路制御部9であって、以下に記載する本発明による方法を実施するように構成された論理回路制御部も備えている。
【0050】
前記論理回路制御部9は、プログラム可能な装置であり、前述した構成は、実行されると本発明の方法を実施するITプログラムを前記装置に搭載することによって実現されることが好ましい。
【0051】
本発明の方法によれば、モデル作製プレート7の面7aはまず、所定の範囲を有する第1の相互位置決め運動11であって、時間Tに応じた運動方向Zに対する面7aの位置を表す図3のグラフに示した運動によって、容器2の底2aの近くまで動く。
【0052】
モデル作製プレート7の面7aが底2aに接近するにつれて、液体物質3をプレート7の縁に向かって流出させる2つの要素間の空気層は薄くなり、これによってますます流出しにくくなることが理解できる。
【0053】
その結果、前述したように、この反応により液体物質3が面7aおよび底2aを押す力は、前記接近運動中に徐々に増大する。
【0054】
底2aが例えばガラス製の支持壁上で静止している場合、底2aにかかる押力は、明らかに前記壁に伝達される。
【0055】
面7aが、底2aからの距離が液体物質3の層6の所定の厚みに等しい所に相当する、図1に示した所定の動作位置17に達すると、この層は所定の放射線4を照射されて、これに該当する凝固層6’ができる。
【0056】
面7aは、完全に凝固する間、前記動作位置17に保持され、この動作位置は、図2に示し図3に18で表記した位置である。
【0057】
続いてアクチュエータ手段8は、相互後退運動19によって凝固層6’を容器2の底2aから離す。物体の連続層を形成するために、前記凝固層6’は、第2の類似の位置決め運動11によって再び容器2の底2aの近くまで動くが、この運動は前述の運動と必ずしも同じではない。
【0058】
当然ながら、連続的に凝固する層は、底2aに対面してすでに凝固している層6’の面6aで支持される。
【0059】
明らかに、第2の位置決め運動11の間、容器2の底2aは、第1の位置決め運動11に関して記載したものと類似の押力を受ける。
【0060】
前記押力は、凝固層6’にも作用し、凝固層を前述の応力にさらして凝固層を弾性的に変形させる。
【0061】
当然ながら、前記押す作用は、3次元物体の連続層の各層に発生する。
【0062】
特に、凝固層の数が増え、これに伴い形成される物体の高さが増すにつれて、底2aに接近する過程で物体に引き起こされる弾性変形は、液体物質3の反応が原因で、それに応じて増大する。
【0063】
本発明の方法によれば、1回以上の前述の位置決め運動11が複数の接近運動12、12a、12b、12cを含み、それぞれが所定の長さ13、13a、13b、13cにわたって動く。
【0064】
前記接近運動12、12a、12b、12cは、中間停止14、14a、14bを間に挟み、この中間停止は、それぞれ所定の時間間隔15、15a、15bが続き、連続凝固層6’を支持するための面6aまたは7aが液体物質3中に少なくとも部分的に浸漬している際に実行される。
【0065】
先に説明したように、位置決め運動11が最初に行われる場合、つまり、この運動が物体の第1の層の凝固よりも前に行われる場合、前記支持面はプレート7の面7aであるのに対し、位置決め運動が物体の第1の層の凝固の後に行われる場合、前記支持面は凝固層6’の面6aである。
【0066】
有利には、それぞれの中間停止で液体物質3を支持面6aまたは7aの両側に流出させ、その支持面および容器2の底2aにかかる圧力を制限する。
【0067】
したがって、前記中間停止14、14a、14bには、被形成物体への圧縮応力および容器2の底2aにかかる押力を制限して、位置決め運動11が公知タイプの装置の場合のように連続運動である場合に生じる値よりも値を低くする効果があり、このようにして本発明の目的の1つを達成する。
【0068】
有利には、被形成物体への応力を制限することで、この物体の弾性変形も制限することができ、このようにして物体が連続的に弾性回復するのに必要な時間を短縮する。
【0069】
さらに、有利には、モデル作製プレート7によって液体物質3にかかる圧縮力を低減することは、容器2の外部に飛散するリスクを低減するということである。
【0070】
引き続き有利には、停止時間間隔15、15a、15bによって、3次元物体および容器2の底2aへ内部応力を再分配することができ、これによって前記応力の有害作用をさらに制限する。
【0071】
その結果、有利に、本発明の方法では、造形不良品数を公知の方法で実現する数よりも少なくすることが可能になる。
【0072】
さらに、有利に、本発明の方法で実現した低応力で、公知の光造形方法で実現可能な断面よりも断面の大きい物体を造形することが可能になり、液体物質の処理時間および種類は同じままになる。
【0073】
同様に、前述の方法により、容器2の底2aに対する引っ張り力のほか、容器2の支持壁(ある場合)に対する引っ張り力も低減することが可能になり、これらの構成要素の耐用年数が延びる利点が伴う。
【0074】
上記の利点はすべて、中間停止14、14a、14bがあることによって得られ、したがってアクチュエータ手段8の速度を修正する必要はない点に注意すべきである。
【0075】
したがって、本発明の方法は、単純に論理回路制御部9のプログラミングを修正することによって公知タイプの光造形装置に使用でき、アクチュエータ手段8の速度を調整するために機械的な修正をしたり複雑なシステムを加えたりする必要がなく、よって本方法を公知タイプの装置に適用しやすくするというもう1つの目的が達成される。
【0076】
接近運動12、12a、12b、12cの数および中間停止14、14a、14bの数のほか、これに対応する所定の長さ13、13a、13b、13cおよび時間間隔15、15a、15bは、どのように規定されてもよい。
【0077】
さらに、前記接近運動12のうちの第1の運動は、支持面が液体物質3の外部にある初期位置から、支持面が液体物質3中に少なくとも部分的に浸漬する最終位置まで、支持面6aまたは7aを動かすために利用されることが好ましい。
【0078】
一方、本発明の変形実施形態では、前記第1の接近運動12は、液体物質3中にすでに浸漬している支持面6aまたは7aから始まってよい。
【0079】
本発明の変形実施形態によれば、図4のグラフに示した位置決め運動11’では、最終接近運動12cは、支持面6a、7aを動作位置17を超える所まで持っていくような運動である。
【0080】
位置決め運動11’は、支持面6a、7aを容器2の底2aから13dの長さだけ離すように動かす後退運動12dで終わる。
【0081】
前記後退運動12dは、最終接近運動12cから継続時間15cの中間停止14cだけ間隔が開いていることが好ましい。
【0082】
有利には、直前に記載した位置決め運動11’により、被形成物体の弾性回復時間を短縮することが可能になる。
【0083】
実際、最終接近運動12cは、凝固させる液体物質3の層6の厚みよりも短い距離だけ底2aから離れた所に支持面6a、7aを位置決めし、このようにして液体物質3を支持面6a、7aの縁からより迅速に流出させる。
【0084】
連続的な後退運動12dは、支持面6a、7aを動作位置17に配置することに加え、被形成物体および底2aにかかる応力を低減する効果も有する。
【0085】
最終接近運動12cの範囲および後退運動12dの範囲、ならびに中間停止14cの継続時間は、後退運動12dの後に被形成物体に残っている弾性変形により、後退運動12dが完了してすぐに被形成3次元物体の歪みを引き起こすことなく層6に照射できるように決定されることが好ましい。
【0086】
採用した位置決め運動11、11’とは無関係に、接近運動12、12a、12b、12cの長さおよび後退運動12dの長さ、中間停止14、14a、14b、14cの数およびこれに対応する時間間隔15、15a、15b、15cの中から選択した1つ以上のパラメータの値は、位置決めの動きを開始する前に決定されることが好ましい。
【0087】
このようにして、前記選択したパラメータは、アクチュエータ手段8のどのようなフィードバックとも関係なく、本方法の精度および信頼性を有利にするために、中間停止に起こり得る遅延を回避する。
【0088】
前記選択したパラメータの値は、支持面6aまたは7aの表面積に応じて計算されることが好ましいが、必須ではない。有利には、前記計算により、それぞれの位置決め運動11、11’の最適化が可能になり、このようにして位置決め運動の範囲を最小まで低減し、その結果、位置決め運動の継続時間を短縮する。
【0089】
特に、本方法によれば、前記選択したパラメータの1つ1つを支持面6aまたは7aの表面積に応じて表現するために、曲線グラフを規定することが好ましい。
【0090】
前記所定の曲線グラフは、光造形装置1の論理回路制御部9に格納されてよく、このようにして前記計算を簡易化する。選択したパラメータの値は、前記表面積とその周囲との比率に応じて計算されることが好ましく、これが層の形状になる。
【0091】
このようにして、有利には、液体物質3の流出時間は、支持面6aまたは7aの表面積だけでなく、支持面の周囲にも左右されるという事実を考慮することができる。
【0092】
さらに正確には、同じ表面積を有する可能性のある全形状のうち、支持面の円形は、周囲が最短の形状であり、よって液体物質3が漏れる機会が少なくなり、これによって流出時間が長くなる形状である。
【0093】
逆に、同じ表面積を有する円形の層よりも周囲が長いことを特徴とする支持面では、液体物質3が漏れる機会が多くなり、これによって前述の場合よりも流出時間が短くなる。
【0094】
その結果、中間停止14、14a、14bの数および/またはそれに対応する時間間隔15、15a、15bは、支持面6a、7aの形状が円形から徐々に異なってくるにつれて低減されてよく、その状況は接近運動12、12a、12b、12cの長さの真逆である。
【0095】
前述の形状比に対して可能な式は、以下の通りである。
R=4πA/P
式中、Rは形状比、Aは支持面の表面積、Pは支持面の周囲を表す。
【0096】
前述の形状比は、支持面が円形のときの最大値が1であると仮定し、支持面が平坦になるほど0(ゼロ)に向かって次第に低下することは明らかである。
【0097】
本発明の方法の変形実施形態によれば、前述の選択したパラメータの計算は、上記の式よりも簡易な式を有するもう1つの形状パラメータを考慮して実施されてよい。
【0098】
前述の形状パラメータの計算には、支持面6aまたは7aの表面積を所定の寸法である複数の区画に分割する必要があり、1つ1つの区画にそれと隣接する区画数に比例する重さを割り当てることが好ましい。
【0099】
区画の重さを合計して前述の形状パラメータを得て、この形状パラメータを使用して、前記形状比の代わりに選択したパラメータの値を計算する。
【0100】
当然ながら、選択したパラメータの計算は、前述の方法を合わせても、つまり表面積、形状比および/または形状パラメータを互いに組み合わせて使用しても実行できる。
【0101】
この簡易化した方法は、支持面が複雑な立体形状であるときに使用するのに特に適していることは明らかである。
【0102】
支持面が互いに離れている複数の領域で構成されている場合、選択したパラメータの計算において、表面積、形状比および/または表面積が所定値を超えている部分に相当する形状パラメータ、または表面積が最大の部分のみに相当する形状パラメータのみを考慮することが好ましい。
【0103】
有利には、これによって、被形成物体を破損するリスクが増大することなく、接近時間および/またはそれぞれの動きの範囲を最小にすることが可能になる。
【0104】
実際、前記部分の1つ1つが押力を受け、この押力は、残りの部分に作用する押力とは実質的に無関係であることを考慮するとともに、これによって、押力がより大きい部分、つまり表面積がより大きい(1つまたは複数の)部分のみに応じて選択したパラメータを規定することが可能になることを考慮すべきである。
【0105】
本発明の方法のその他の変形例では、接近運動および後退運動12、12a、12b、12cおよび12dの長さ、中間停止14、14a、14bおよび14cの数および/またはそれに対応する時間間隔15、15a、15bおよび15cは、モデルの作製を開始する前に1回に決定でき、全層に対して変更しないまま維持できる点も明らかである。
【0106】
いずれの場合も、最初の中間停止14に続く接近運動12a、12b、12cの長さは、計算を簡易化するために、同じになるように規定されることが好ましいが、必須ではない。
【0107】
さらに、前述のパラメータの値は、前述のパラメータに加えて、残りのパラメータ、例えば液体物質3の粘性および密度、アクチュエータ手段8の運動速度、容器2内にある液体物質3の最大深さ、底2aまたはそれぞれの支持壁の機械耐性、および凝固層6’の機械耐性に応じて規定できる。
【0108】
例として、公知タイプの光造形装置1の場合、1から20までの中間停止数、5から200ミクロンまでの各接近運動12a、12b、12cの長さ、および0.01秒から1秒までの時間間隔15、15a、15bの継続時間であれば、ほとんどの用途にふさわしいものとなり得る。
【0109】
前述の方法の適用例によれば、被造形物体の各層の数的表現が処理され、論理回路制御部9に供給される。
【0110】
提供されたデータによれば、論理回路部9は、中間停止14、14a、14b、14cの数、その継続時間15、15a、15b、15cのほか、接近運動13、13a、13b、13c、13dの範囲も決定してモデル作製プレート7の支持面7aを動作位置17に配置し、その結果、アクチュエータ手段8を動作させる。
【0111】
連続的に、論理回路部9は、第1の凝固層6’を形成するように放出手段5を作動させる。
【0112】
次にモデル作製プレート7は、底2aから離れるように動き、凝固層6’は底から離れる。
【0113】
連続層が凝固する前に、第2の位置決め運動11が、面6aを有する前回の凝固層6’を動作位置17に位置決めする。
【0114】
上記のことから、3次元物体を造形する方法および前述の光造形装置は、設定した目的をすべて達成することがわかる。特に、断続的な位置決め運動により、凝固層および容器の底が互いに近づくように動く際にこの両要素への応力を低減することが可能になる。
【0115】
したがって、接近運動の継続時間を、公知タイプの装置を使用する場合に必要な継続時間に対して短縮することができ、物体の立体形状は同じになる。
【0116】
さらに、本発明の方法は、装置の設定を単純に修正することで公知タイプの光造形装置に適用しやすくなる断続的な動きに基づいている。
【0117】
実装にあたり、本発明の主題である方法および装置は、その他の変更を受けることがあり、その変更が特許請求の範囲内に収まる場合には、本明細書には記載されず図面に示されていないものであっても、すべて本特許によって保護されるものとみなさなければなければならない。
【0118】
いずれかの請求項に記載した技術的特徴に符号が付随している場合、その符号は、請求項の理解度を増すことのみを目的に添えたものであるため、そのような符号は、そのような符号で例として識別した各要素の保護を何ら制限する効果を持たない。
図1
図2
図3
図4