(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
首部の頭部と対向する面に関節部材の切欠溝に嵌り込んで関節部材の水平方向への回転を規制する突起が設けられており、頭部の前後方向の傾きに伴って関節部材が切欠溝を突起に嵌め込んだ状態で回転する請求項3記載の首関節構造。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、関節を可動できる人形のスタンダードな構造の一つとして、人形を関節に当たる位置で分割して各部材を中空状に形成し、各部材の中空部に弾性体を通して牽引することによって連結する構造がある。この構造を採用した人形は、人形の関節に当たる部分に複雑な機構を使用する必要がなく、各関節に部材の接合線や機構が多く露出せず、外観がスマートになるため、従来から多くの人形に採用されている。
【0003】
例えば、後出特許文献1には、空洞状の胴体部と、この胴体部の上部に屈曲自在に弾発的に連繋する頭体部とを有しており、胴体部の上部面は外部に開口されていると共に、その開口部分における外側面はほぼ球面状に抉られている頭体連結凹部が形成されており、頭体部は、頭体連結凹部内に下端面が当接しながらいずれの方向へも旋回、回転、揺動する筒状の頸部分を一体状に有しており、胴体部と頭体部とは弾性紐材によって互いに牽引されるように連繋されている人形が開示されている。
【0004】
また、後出特許文献2には、頭部の下面部を凸球面状に形成すると共にフックを下方に向けた状態で突設し、胴体部に上面の中央部から下面に至る貫通孔であって少なくとも上面即ち首部位置の開口部が頭部下部の首部直径よりもやや小さい内径にした貫通孔を形成し、胴体部の貫通孔に挿通したコイルばねの一端を下面の開口部位置で係止ピンに係止すると共に他端を頭部のフックに係止し、頭部と胴体部とを接合した人形が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1及び2に開示された人形のように頭部材と胴部材とを弾性体によって互いに牽引して連結した構造の首関節においては、首関節を大きく屈曲させるために、例えば、頭部材の胴部材に対向する面を下向き凹状に形成し、首関節をある程度屈曲させるまで弾性体が頭部材の下端に干渉しないように構成する必要があるが、このような構成を採用すると、首関節を屈曲しない状態においては、頭部材と胴部材との接触面積が小さくなり、かつ、頭部材から胴部材に渡される弾性体が下向き凹部内を自由に動くことができるため、胴部材に対して頭部材を安定して固定させることができず、また、首関節を屈曲した状態においては、頭部材から胴部材に渡される弾性体が一箇所で大きく屈曲することになり、これに伴って弾性体の折れ曲がった部分に強い弾発力が働くため、胴部材に対して頭部材を安定して固定させることができず、人形を好みの姿勢に維持することが困難であるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明者は、首関節が屈曲した状態・屈曲していない状態にかかわらず首部に対して頭部を安定して固定させることができ、かつ、首関節を大きく屈曲させることができる首関節構造を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試行錯誤的に試作・実験を重ねた結果、頭部と首部とが別部材によって構成されており、頭部は首部と対向する面に開口する通孔を有しており、首部は頭部と対向する面に開口する通孔を有しており、頭部と首部がそれぞれの通孔に渡された弾性体によって互いに牽引するように連結されている首関節構造において、頭部と首部との間に関節部材が設け、関節部材に頭部の通孔と首部の通孔とを連通させる貫通孔を形成すると共に該貫通孔に頭部と首部の間に渡される弾性体を通し、関節部材の
貫通孔
を頭部側から首部側に向かって幅広になるように形成すれば良いという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0009】
すなわち、本発明に係る首関節構造は、頭部と首部とが別部材によって構成されており
、両部が弾性体によって互いに牽引するように連結されている首関節構造であって、頭部と首部との間に関節部材が設けられており、
頭部には関節部材と接触する面に向かって開口する通孔が形成されており、首部には関節部材と接触する面に向かって開口する通孔が形成されており、関節部材には頭部の通孔と首部の通孔とを連通させる貫通孔が形成されており、
弾性体は、関節部材の貫通孔に通され、かつ、頭部の通孔に通された一端が該通孔の開口よりも内方に位置付けられていると共に首部の通孔に通された一端が該通孔の開口よりも内方に位置付けられているものである。
また、本発明は、前記首関節構造において、関節部材の貫通孔が頭部側から首部側に向かって幅広になるように形成されているものである。
【0010】
また、本発明は、前記
いずれかの首関節構造において、関節部材の周面に貫通孔まで達する切欠溝が形成されており、関節部材が切欠溝を介して弾性体に着脱可能に設けられているものである。
【0011】
また、本発明は、前記首関節構造において、首部の頭部と対向する面に関節部材の切欠溝に嵌り込んで関節部材の水平方向への回転を規制する突起が設けられており、頭部の前後方向の傾きに伴って関節部材が切欠溝を突起に嵌め込んだ状態で回転するものである。
【0012】
また、本発明は、前記いずれかの首関節構造において、関節部材の切欠溝が貫通孔に向かって幅狭になるように形成されているものである。
【0013】
また、本発明は、前記いずれかの首関節構造において、関節部材に頭部の開口に嵌り込む突起が設けられているものである。
【0014】
また、本発明は、前記いずれかの首関節構造において、首部の頭部と対向する面の上端が前方から後方に向かって下がるように傾斜しているものである。
【0015】
また、本発明に係る人形は、前記いずれかの首関節構造を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、頭部と首部との間に関節部材を設け、関節部材に頭部の通孔と首部の通孔とを連通させる貫通孔を形成して該貫通孔に頭部から首部に渡される弾性体を通し、関節部材の
貫通孔を頭部側から首部側に向かって幅広になるように形成したので、首関節を屈曲させた際に、頭部と首部との間で関節部材が自由に回転し、首関節内部に形成された弾性体が通される連通孔が首関節の屈曲に応じて湾曲した状態となり、頭部から首部に渡された弾性体が連通孔に沿って複数箇所で折り曲げられた状態となって該弾性体の折れ曲がった部分に生じる弾発力が軽減され、これにより、首関節の屈曲した状態が安定する。また、前記のように関節部材の回転によって連通孔を湾曲させる構成となっているため、各部材を密着させたとしても弾性体が大きく屈曲させることなく首関節を屈曲することができ、これにより、首関節の屈曲しない状態が安定する。
【0017】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1に係る首関節を示した分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す首関節における頭部材の本体を示した斜視図である。
【
図3】
図1に示す首関節における頭部材の蓋体を示した斜視図である。
【
図4】
図1に示す首関節における関節部材を示した斜視図である。
【
図5】
図1に示す首関節における胴部材を示した斜視図である。
【
図6】実施の形態1に係る首関節の動作を示した縦断面図である。
【
図7】実施の形態2に係る変形例1の関節部材を示した斜視図である。
【
図8】
図7に示す関節部材を前方から目視した状態を示した正面図である。
【
図9】実施の形態2に係る変形例1の関節部材を採用した首関節の動作を示した縦断面図である。
【
図10】実施の形態2に係る変形例2の関節部材を示した斜視図である。
【
図11】
図10に示す関節部材を前方から目視した状態を示した正面図である。
【
図12】実施の形態3に係る変形例2の関節部材を採用した首関節を示した縦断面図である。
【
図13】実施の形態3に係る関節部材を示した斜視図である。
【
図14】
図12に示す関節部材を前方から目視した状態を示した正面図である。
【
図15】実施の形態3に係る胴部材の首部を示した斜視図である。
【
図16】実施の形態3に係る首関節の動作を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
本実施の形態に係る首関節は、
図1に示すように、人形の頭部を構成する頭部材1と、人形の首部、胸部、腹部及び腰部を構成する胴部材2(腹部及び腰部は図示せず)と、頭部材1と胴部材2の首部3との間に位置付けられる関節部材4と、頭部材1と胴部材2の首部3との間に関節部材4を挟んだ状態で頭部材1と胴部材2を互いに牽引する弾性体5とを備えている。なお、胴部材2に両腕部材(
図5参照)及び両脚部材(図示せず)を連結することによって人形を構成することができる。
【0022】
頭部材1は、中空状に形成されている(
図6の(a)参照)。また、頭部材1の中空部6は、頭部材1の首部3と対向する面に形成された略球面状の下向き凹部7に向かって開口する通孔8と繋がっている。そして、頭部材1は、人形の頭部における顔部、前頭部の下部、両側頭部の下部及び後頭部の下部に当たる部分を構成する本体9と、人形の頭部における頭頂部、前頭部の上部、両側頭部の上部及び両後頭部部の上部に当たる部分を構成する蓋体10とに二分割されている。
【0023】
本体9は、
図2に示すように、蓋体10と接合される端面11の両側頭部に当たる位置に嵌合受け部12が形成されている。さらに、本体9の内面には、通孔8を跨いで横切るように保持溝13が形成されており、前頭部に当たる位置に鉤爪受け部14が形成されている。なお、保持溝13には、通孔8の横幅よりも幅広に形成されたS字状の掛け具15の下端が嵌め込まれており、掛け具15には、通孔8に通される弾性体5の一端が掛け止められる。
【0024】
蓋体10は、
図3に示すように、本体9と接合される端面16に本体9の端面11と接合させた状態で該本体9の端面11の内側に嵌り込む段差部17が突出している。なお、段差部17は、本体9と接合される端面16の後頭部側を除く内周に形成されている。また、蓋体10には、両側頭部に当たる位置に段差部17よりも高く突出して本体9の端面11に形成された嵌合受け部12に嵌り込む嵌合部18が形成されており、また、前頭部に当たる位置の内面から段差部17を乗り越えるように鉤爪を伸ばす鉤爪部19が形成されている。
【0025】
関節部材4は、
図4に示すように、球体状に形成されている。そして、関節部材4には、上下方向に貫通するように貫通孔20が形成されており、貫通孔20は、上側の開口21から下側の開口22に向かうに従って直径が広がるように形成されている。
【0026】
胴部材2は、中空状に形成されており、
図5に示すように、胸部から上方に伸びるように首部3が形成されている。そして、胴部材2の中空部(図示せず)は、首部3を通って該首部3の頭部材1と対向する面に形成された略球面状の上向き凹部23に向かって開口する通孔24と繋がっている。また、首部3の上端は、側面視した状態で前側から後側に向かって下がるように傾斜しており、首部3の上向き凹部23には、通孔24の開口を囲むように環状の滑り止め25が固定されている。
【0027】
弾性体5としては、例えば、ゴム紐、バネなどを使用することができるが、これらのものに限らず、首部3に対して頭部材1を揺動させた際に、頭部材2を所定位置で固定できる程度に各部材を強く牽引することができる張力を有するものであればよい。
【0028】
次に、実施の形態1に係る首関節の組み立て手順を説明する。
【0029】
先ず、胴部材2の中空部内に固定された掛け具(図示せず)に弾性体5の一端を引っ掛け、弾性体5の他端を首部3の通孔24を介して胴部材2の外方へ引き出す。次に、首部3の通孔24から胴部材2の外方へ引き出された弾性体5の他端を関節部材4の貫通孔20に通し、関節部材4を首部3の上向き凹部23に嵌め込む。なお、弾性体5の他端を関節部材4の貫通孔20に通す際には、関節部材4の直径が大きい下側の開口22から直径が小さい上側の開口21へと通す。次に、関節部材4の貫通孔20から引き出された弾性体5の他端を頭部材1における本体9の通孔8を介して該本体9の内方へ引き入れ、関節部材4を頭部材1の下向き凹部7に嵌め込む。次に、本体9の通孔8から本体9の内方へ引き入れられた弾性体5を引っ張った状態を維持し、そのままの状態で弾性体5の他端をS字状の掛け具15に引っ掛け、掛け具15を保持溝13に固定する。最後に、本体9に蓋体10を被せて固定する。なお、本体9に蓋体10を被せる際には、蓋体10の鉤爪部19の先端を本体9の鉤爪受け部14に嵌め込み、さらに、本体9の端面11と蓋体10の端面16を合わせることにより、蓋体10の端面16に形成された段差部17を本体9の端面11の内側に嵌め込むと共に、蓋体10の端面16に形成された嵌合部18を本体9の端面11の嵌合受け部12に嵌め込む。
【0030】
次に、実施の形態1に係る首関節の動作を説明する。
【0031】
首関節を組み立てると、
図6の(a)に示すように、首関節内部に頭部材1の通孔8、関節部材4の貫通孔20及び首部3の通孔24が連通してなる連通孔26が形成され、連通孔26に弾性体5が通された状態となる。そして、頭部材1の顔部が正面を向くように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、首関節内部の連通孔26が上下に向かって直線状に伸びた状態となり、連通孔26に通された弾性体5は屈曲することなく上下に伸びる。
【0032】
次に、頭部材1の顔部を正面に向けた状態から俯けるように首部3に対して頭部材1を前方(
図6の(a)における矢印A方向)に傾けると、頭部材1の傾きが増すに従って連通孔26に通された弾性体5も前方へ大きく倒れ込むように傾き、この時、前方へ倒れ込むように傾いた弾性体5が関節部材4の貫通孔20内面前側に接触して該関節部材4を前方へ回転させる。これにより、頭部材1の顔部が俯くように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、
図6の(b)に示すように、首関節内部の連通孔26が関節部材4の回転に伴って前方へ湾曲した状態となり、連通孔26に通された弾性体5は関節部材4の貫通孔20における上側の開口21及び下側の開口22の二箇所で前方へと屈曲する。
【0033】
次に、頭部材1の顔部を正面に向けた状態から仰向けるように首部3に対して頭部材1を後方(
図6の(a)における矢印B方向)に傾けると、頭部材1の傾きが増すに従って連通孔26に通された弾性体5も後方へ大きく倒れ込むように傾き、この時、後方へ倒れ込むように傾いた弾性体5が関節部材4の貫通孔20内面後側に接触して該関節部材4を後方へ回転させる。これにより、頭部材1の顔部が仰向くように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、
図6の(c)に示すように、首関節内部の連通孔26が関節部材の回転に伴って後方へ湾曲した状態となり、連通孔26に通された弾性体5は関節部材4の貫通孔20における上側の開口21及び下側の開口22の二箇所で後方へと屈曲する。
【0034】
また、頭部材1の顔部を正面に向けた状態から左(右)に傾げるように首部3に対して頭部材1を左方(右方)に傾けると、頭部材1の傾きが増すに従って連通孔26に通された弾性体5も左方(右方)へ大きく倒れ込むように傾き、この時、左方(右方)へ倒れ込むように傾いた弾性体5が関節部材4の貫通孔20内面左側(右側)に接触して該関節部材4を左方(右方)へ回転させる。これにより、頭部材1の顔部が左(右)に傾げるように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、首関節内部の連通孔26が関節部材4の回転に伴って左方(右方)へ湾曲した状態となり、連通孔26に通された弾性体5は関節部材4の貫通孔20における上側の開口21及び下側の開口23の二箇所で左方(右方)へと屈曲する。
【0035】
なお、本実施の形態に係る首関節においては、関節部材の貫通孔を上側の開口から下側の開口に向かうに従って直径が大きくなるように形成したので、首部に対して頭部材を前後左右いずれの方向に傾けた場合においても、関節部材の回転に伴う連通孔の湾曲を比較的小さく抑えることができ、連通孔に通された弾性体を大きく屈曲させる必要がなく、首部に対して頭部材を傾けた際に弾性体の各屈曲箇所に働く弾発力を軽減することができる。また、関節部材が頭部材及び胴部材の首部のいずれにも固定されず自由に回転するので、弾性体の関節部材の両開口における屈曲度合いがいずれか一方に偏らないように自動的に調整され、弾性体が関節部材の両開口で均等に屈曲されるようになり、これによっても首部に対して頭部材を傾けた際に弾性体の各屈曲箇所に働く弾発力を軽減することができる。
【0037】
本実施の形態は実施の形態1における関節部材の変形例である。なお、
図7〜
図9は本実施の形態における変形例1を示しており、
図10〜
図12は本実施の形態に係る変形例2を示しており、
図7〜
図12において
図1〜
図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0038】
変形例1:本変形例に係る関節部材27は、
図7及び
図8に示すように、略球体状に形成されている。そして、関節部材27には、上下方向に貫通するように貫通孔20が形成されており、貫通孔20は、上側の開口21から下側の開口22に向かうに従って直径が広がるように形成されている。また、関節部材27の周面には、貫通孔20まで達する切欠溝28が形成されている。切欠溝28は、関節部材27の上側から下側に向かうに従って幅が広くなるように形成されており、切欠溝28の上端は貫通孔20の上側の開口21よりも幅が狭く、切欠溝28の下端は貫通孔20の下側の開口21と同じ幅になっている。そして、切欠溝28の上部29は、貫通孔20に向かうに従って幅が狭くなるように形成されており、切欠溝28の幅狭に形成された上部29の上側端部30は、
図9の(a)に示すように、貫通孔20に通される弾性体5の幅よりも狭くなっている。
【0039】
次に、本変形例に係る関節部材27を採用した首関節の組み立て手順を説明する。
【0040】
先ず、胴部材2の中空部内に固定された掛け具(図示せず)に弾性体5の一端を引っ掛け、弾性体5の他端を首部3の通孔24を介して胴部材2の外方へ引き出す。次に、首部3の通孔24から胴部材2の外方へ引き出された弾性体5の他端を頭部材1における本体9の通孔8を介して該本体9の内方へ引き入れる。次に、本体9の通孔8から本体9の内方へ引き入れられた弾性体5を引っ張った状態を維持し、そのままの状態で弾性体5の他端をS字状の掛け具15に引っ掛け、掛け具15を保持溝13に固定する。次に、本体9に蓋体10を被せて固定する。なお、本体9に蓋体10を被せる際には、蓋体10の鉤爪部19の先端を本体9の鉤爪受け部14に嵌め込み、さらに、本体9の端面11と蓋体10の端面16を合わせることにより、蓋体10の端面16に形成された段差部17を本体9の端面11の内側に嵌め込むと共に、蓋体10の端面16に形成された嵌合部18を本体9の端面11の嵌合受け部12に嵌め込む。次に、弾性体5の張力に抗する力を加えて頭部材1と胴部材2とを引き離した状態とし、この状態において頭部材1と胴部材2との間に露出した弾性体5に関節部材27を嵌め込む。なお、弾性体5は、弾性体5の弾力性を利用して切欠溝28の弾性体5の幅よりも幅狭に形成された部分に押し込んで貫通孔20まで嵌め込む。最後に、弾性体5の張力に抗する力を取り除き、頭部材1の下向き凹部7に関節部材27の上部を嵌め込むと共に、胴部材2における首部3の上向き凹部23に関節部材27の下部を嵌め込み、頭部材1と胴部材2の首部3との間に関節部材27を挟み込む。
【0041】
次に、本変形例に係る関節部材27を採用した首関節の動作を説明する。
【0042】
首関節を組み立てると、
図9の(a)に示すように、首関節内部に頭部材1の通孔8、関節部材27の貫通孔20及び首部3の通孔24が連通してなる連通孔26が形成され、連通孔26に弾性体5が通された状態となる。そして、頭部材1の顔部が正面を向くように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、首関節内部の連通孔26が上下に向かって直線状に伸びた状態となり、連通孔26に通された弾性体5は屈曲することなく上下に伸びる。
【0043】
次に、頭部材1の顔部を正面に向けた状態から俯けるように首部3に対して頭部材1を前方(
図9(a)における矢印A方向)に傾けると、頭部材1の傾きが増すに従って連通孔26に通された弾性体5も前方へ大きく倒れ込むように傾き、この時、前方へ倒れ込むように傾いた弾性体5が関節部材27の切欠溝28における弾性体5の幅よりも幅狭に形成された部分に引っ掛かって該関節部材27を前方へ回転させる。これにより、頭部材1の顔部が俯くように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、
図9の(b)に示すように、首関節内部の連通孔26が関節部材27の回転に伴って前方へ湾曲した状態となり、連通孔26に通された弾性体5は関節部材27の切欠溝28における弾性体5の幅よりも幅狭に形成された部分(上側端部30)の上・下端の二箇所で前方へと屈曲する。この時、関節部材27の切欠溝28における弾性体5の幅よりも幅広に形成された部分に連通孔26に通された弾性体5が嵌り込んだ状態となる。
【0044】
次に、頭部材1の顔部を正面に向けた状態から仰向けるように首部3に対して頭部材1を後方(
図9の(a)における矢印B方向)に傾けると、頭部材1の傾きが増すに従って連通孔26に通された弾性体5も後方へ大きく倒れ込むように傾き、この時、後方へ倒れ込むように傾いた弾性体5が関節部材27の貫通孔20内面後側に接触して該関節部材27を後方へ回転させる。これにより、頭部材1の顔部が仰向くように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、
図9の(b)に示すように、首関節内部の連通孔26が関節部材27の回転に伴って後方へ湾曲した状態となり、連通孔26に通された弾性体5は関節部材27の貫通孔20における上側の開口21及び下側の開口22で後方へと屈曲する。
【0045】
また、頭部材1の顔部を正面に向けた状態から左(右)に傾げるように首部3に対して頭部材1を左方(右方)に傾けると、頭部材1の傾きが増すに従って連通孔26に通された弾性体5も左方(右方)へ大きく倒れ込むように傾き、この時、左方(右方)へ倒れ込むように傾いた弾性体5が関節部材27の貫通孔20内面左側(右側)に接触して該関節部材27を左方(右方)へ回転させる。これにより、頭部材1の顔部が左(右)に傾げるように首部3に対する頭部材1の傾きを調整した状態では、首関節内部の連通孔26が関節部材27の回転に伴って左方(右方)へ湾曲した状態となり、連通孔26に通された弾性体5は関節部材27の貫通孔20における上側の開口21及び下側の開口22で左方(右方)へと屈曲する。
【0046】
変形例2:本変形例に係る関節部材31は、
図10及び
図11に示すように、略球体状下部32と傘状上部33とが一体に形成されており、前記変形例1に係る関節部材27よりも傘状上部33の分だけ上下方向に長くなっている。そして、関節部材31には、上下方向に貫通するように貫通孔20が形成されており、貫通孔20は、上側の開口21から下側の開口22に向かうに従って直径が広がるように形成されている。また、関節部材31の周面には、貫通孔20まで達する切欠溝34が形成されている。切欠溝34は、関節部材31の上側から下側に向かうに従って幅が広くなるように形成されており、切欠溝34の上端は貫通孔20の上側の開口21よりも幅が狭く、切欠溝34の下端は貫通孔20の下側の開口21と同じ幅になっている。そして、切欠溝34の上部35は、貫通孔20に向かうに従って幅が狭くなるように形成されている。さらに、切欠溝34の幅狭に形成された上部35の上側端部36は、
図12に示すように、貫通孔20に通される弾性体5の幅よりも狭くなっている。
【0047】
本変形例に係る関節部材31を採用した首関節も前記変形例1に係る関節部材を採用した首関節と同様に組み立てることができると共に同様の動作を行うことができる。
【0048】
本実施の形態に係る関節部材によれば、関節部材に貫通孔と繋がる切欠溝を形成したので、人形に着用させる衣装の襟形状に合わせて関節部材を容易に変更して人形の首部分の長さを調節することができる。また、関節部材における切欠溝に貫通孔に通される弾性体の幅よりも狭くなっている部分を設けたので、首部に対して頭部材を前方へ傾けた際に、前方へ倒れ込むように傾いた弾性体が関節部材の切欠溝における弾性体の幅よりも幅狭に形成された部分に引っ掛かって該関節部材を前方へ回転させるため、前記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、関節部材に形成された切込溝の一部(上側端部)に貫通孔に通される弾性体の幅よりも狭くなっている部分を設けたが、切込溝の上端から下端までを貫通孔に通される弾性体の幅よりも狭くなるようにしてもよい。
【0051】
本実施の形態は、前記実施の形態2における変形例2の関節部材を採用した首関節の変形例であり、
図13〜
図15において
図1〜
図9と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0052】
本実施の形態に係る関節部材37は、
図13及び
図14に示すように、略球体状に形成されている。そして、関節部材37には、上下方向に貫通するように貫通孔20が形成されており、貫通孔20は、上側の開口21から下側の開口22に向かうに従って直径が広がるように形成されている。また、関節部材35の周面には、貫通孔20まで達する切欠溝28が形成されている。切欠溝28は、関節部材37の上側から下側に向かうに従って幅が広くなるように形成されており、切欠溝28の上端は貫通孔20の上側の開口21よりも幅が狭く、切欠溝28の下端は貫通孔20の下側の開口21と同じ幅になっている。そして、切欠溝28の上部29は、貫通孔20に向かうに従って幅が狭くなるように形成されている。さらに、切欠溝28の幅狭に形成された上部29の上側端部30は、
図16の(a)に示すように、関節部材37を頭部材1と胴部材2における首部3との間に挟み込むように位置付けた状態において貫通孔20に通される弾性体5の幅よりも狭くなっている。また、関節部材37の上端には、貫通孔20の切欠溝28が形成された面と対向する面を上方に延長させてなる突起38が形成されている。
【0053】
本実施の形態に係る胴部材2は、中空状に形成されており、
図15に示すように、胸部から上方に伸びるように首部3が形成されている。そして、胴部材2の中空部(図示せず)は、首部3を通って該首部3の頭部材1と対向する面に形成された略球面状の上向き凹部23に向かって開口する通孔24と繋がっている。また、首部3の上端は、側面視した状態で前側から後側に向かって下がるように傾斜しており、首部3の上向き凹部23には、開口を囲むように環状の滑り止め25が固定されていると共に、開口の前側に上方へと伸びる突起39が形成されている。なお、突起39は、首部3の上向き凹部23に関節部材37を嵌め込んだ状態において関節部材37における切欠溝28の下部に遊びを持たせた状態で嵌り込む形状に形成されている。
【0054】
本実施の形態によれば、関節部材37に頭部材1の通孔8に嵌り込む突起38を形成したので、首部3に対して頭部材1を前方へ傾けた際に、
図16の(b)に示すように、頭部材1の通孔8の後端が突起38に接触して関節部材37を前方へ押すため、関節部材37が切欠溝28における弾性体5の引っ掛かりのみによって前方へ回転する場合に比べて関節部材37の貫通孔20から弾性体5が外れ難くなる。また、首部3に関節部材37の切欠溝28に嵌まり込む突起39を形成したので、首部3に対して頭部材1を水平方向に回転させたとしても、切欠溝28に嵌り込んだ突起39によって関節部材37が大きく水平方向に回転することが阻止され、切欠溝28の開口方向が一方向に固定される。なお、首部3の突起39は、関節部材37における切欠溝28の下部に遊びを持たせた状態で嵌り込む形状になっているため、首部3に対して頭部材1を左右方向に傾けた際に、関節部材37の左右方向への回転を阻害しない。