(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下方向に貫通する貫通孔を有する臼体と、該臼体の貫通孔に下側から摺動自在に挿入される下杵と、該臼体の貫通孔に上側から挿脱自在に挿入される上杵とを含んで構成される型を用い、該臼体と該貫通孔内の該下杵の杵先とで画成されるキャビティに少なくとも石鹸成分を含有する粉体原料を充填し、該下杵の杵先と該上杵の杵先とで該粉体原料を加圧成形して固形洗浄剤を得、該固形洗浄剤を該貫通孔から排出する工程を有する、固形洗浄剤の製造方法であって、
前記キャビティに前記粉体原料を充填する前に、前記下杵の杵先及び前記上杵の杵先の少なくとも一方の表面に水を付与し、
前記杵先への水の付与を、該杵先をその周辺雰囲気の露点温度以下に冷却することにより実施する固形洗浄剤の製造方法。
前記水の付与を、前記下杵の杵先の表面に対して実施し、且つ前記固形洗浄剤の前記貫通孔からの排出を、該下杵を前記上杵に向けて前記貫通孔内を移動させることにより実施する請求項1〜4の何れか一項に記載の固形洗浄剤の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に固形石鹸は、石鹸成分に水や熱を加えて混練、溶解、流動させて、金型(枠)内に流し込み、固化させて製造する、いわゆる枠練り法や、ニートソープを加熱乾燥することにより得られる石鹸素地に練りと圧縮を加えて棒状に押し出したものを型打ちすることにより製造する、いわゆる機械練り法によって製造される。枠練り法は、固化工程が必要となるため多大な時間を要すという欠点や、熱に弱い成分を配合しづらいという欠点を有する。また、機械練り法では、石鹸成分以外の副成分を多量に配合しづらいという欠点を有する。
【0003】
枠練り法や機械練り法に対して、石鹸成分単体又は石鹸成分と該石鹸成分以外の副成分の1種又は2種以上とを含む粉末混合物を加圧成形することによって固形石鹸を製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。このような粉体圧縮成形法によれば、固化工程が必要ないため生産性を向上させることが可能である。また、熱に弱い成分であっても配合することができ、更に石鹸成分以外の副成分を多量に配合することも容易である。
【0004】
ところで、粉体圧縮成形法においては、型を用いて粉体原料を圧縮して得られた成形体を該型から離型するときの離型性が問題となる。成形体の離型性が悪く、離型後の型の表面に粉体原料が付着するようでは、成形体の外観が悪化する等、品質の低下を招くことになる。また、型に粉体原料が付着した状態で加圧成形を続けると、品質が低下した不良品を大量に製造することになるおそれがある他、付着した粉体原料によって、加圧成形時に型に作用する力のバランスが崩れるため、型の欠損につながるおそれもある。
【0005】
成形体の離型性を向上させる方法として、型における成形体と接触する部分の表面をエラストマー塗料で被覆することにより、表面エネルギーを低下させて成形体を型から離型し易くする方法が知られている(例えば特許文献2及び3参照)。また、別の方法として、型における成形体を成形する部分(キャビティ)に金属粉末(粉体原料)を充填する前に、ノズルから潤滑剤を噴霧する方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の固形洗浄剤の製造方法をその好ましい一実施態様に基づき図面を参照して説明する。
図1には、本実施態様の製造方法の実施に使用可能な成形装置10の要部である型1が示されている。
図1(a)に示すように、型1は、上下方向(鉛直方向、図中のX方向)に貫通する貫通孔2を有する臼体3と、臼体3の貫通孔2に下側から摺動自在に挿入される下杵4と、臼体3の貫通孔2に上側から挿脱自在に挿入される上杵5とを含んで構成されている。成形装置10は、下杵4及び上杵5を上下方向に移動させる公知の移動手段(図示せず)を具備している。
【0013】
臼体3は、アルミニウム等の金属製の剛体からなり、臼体3を支持するテーブル7にボルト等の固定手段により固定されている。貫通孔2は、臼体3を鉛直方向に貫通しており、貫通孔2によって、臼体3には内壁面3aが形成されている。図示していないが、貫通孔2の平面視形状(鉛直方向の上側又は下側から見たときの形状)は、製造目的物である固形洗浄剤の平面視形状と略一致している。
【0014】
下杵4は、その杵先(貫通孔2への挿入方向の先端部)41に、粉体原料の加圧成形時に該粉体原料と接触する加圧面4aを有しており、また、上杵5は、その杵先51に、粉体原料の加圧成形時に該粉体原料と接触する加圧面5aを有している。両加圧面4a,5aは、何れも凹凸の無い平坦な水平面となっている。両杵先41,51は、それぞれ、アルミニウム等の金属製の剛体からなる。貫通孔2と下杵4(杵先41)及び上杵5(杵先51)とは、平面視形状が略一致しており、貫通孔2に比して杵先41,51を若干小さめにして、臼体3と杵先41,51との間に微小なクリアランスを確保しながら、貫通孔2に各杵先41,51を挿入可能に構成されている。
【0015】
下杵4を、貫通孔2より下側の所定の待機位置(
図1(a)参照)から上方に移動させ、その杵先41を、
図1(b)に示すように、臼体3の貫通孔2に挿入することにより、貫通孔2内に、臼体3(内壁面3a)と杵先41(加圧面4a)とで画成される空隙部であるキャビティ6が形成される。下杵4は、杵先41が貫通孔2に挿入された状態で上下方向に移動(摺動)することが可能であり、
図1(b)に示す状態から下杵4を更に上方に移動させ、加圧面4aを臼体3の上端面(テーブル7の表面)と同位置にすることにより、キャビティ6を消失させることが可能である。
【0016】
図2には、成形装置10を用いた本実施態様の固形洗浄剤の製造方法が示されている。本実施態様の製造方法は、臼体3と貫通孔2内の下杵4の杵先41とで画成されるキャビティ6に粉体原料15を充填し、下杵4の杵先41と上杵5の杵先51とで粉体原料15を加圧成形して固形洗浄剤20を得、固形洗浄剤20を貫通孔2から排出する工程を有する。
【0017】
先ず、下杵4を貫通孔2より下側の所定の待機位置(
図1(a)参照)から上方に移動させ、その杵先41を貫通孔2に挿入してキャビティ6を形成する(
図1(b)参照)。このときの下杵4の位置を、以下、原料充填位置ともいう。次いで、
図2(a)に示すように、キャビティ6に粉体原料15を所定量充填する。粉体原料15の充填時には、上杵5は、貫通孔2より上側の所定の待機位置に存していて貫通孔2に挿入されておらず、それによってキャビティ5の上方には開口が設けられているので、この開口から粉体原料15を充填する。キャビティ6に充填された粉体原料15は、下杵4の加圧面4aの全域を覆うように該加圧面4a上に堆積する。
【0018】
次いで、
図2(b)に示すように、下杵4の杵先41と上杵5の杵先51とで粉体原料15を圧縮する。具体的には、下杵4を前記原料充填位置に待機させつつ、貫通孔2より上側の所定の待機位置に存している上杵5を下方に移動させ、その杵先51をキャビティ6(貫通孔2)に挿入して加圧面5aを粉体原料15に押し付ける。このときの上杵5の位置を、以下、成形位置ともいう。こうして、キャビティ6の粉体原料15は、杵先41(加圧面4a)と杵先51(加圧面5a)とによって、所定時間、所定圧力で圧縮され、成形体である固形洗浄剤20とされる。粉体原料15への加圧力は、粉体原料15の種類等に応じて適宜設定され、例えば、5〜100MPa、好ましくは10〜60MPaに設定することができ、その場合、加圧時間は0.01〜30秒、好ましくは0.1〜10秒に設定することができる。
【0019】
次いで、
図2(c)に示すように、上杵5を前記成形位置から上方に移動させて所定の待機位置に戻すと共に、
図2(d)に示すように、下杵4を前記原料充填位置から上杵5に向けて貫通孔2内を移動させ、加圧面4aを臼体3の上端面と同位置か、又は該上端面よりも上方に位置させる。これにより、固形洗浄剤20が貫通孔2から排出される。
【0020】
こうして固形洗浄剤20が排出された後、下杵4は前記原料充填位置に戻され、型1は
図1(b)に示す状態(キャビティ6が形成された状態)とされる。以後、前述した手順が繰り返すことにより、固形洗浄剤20を連続的に製造することができる。
【0021】
このような工程を有する本実施態様の主たる特長の1つとして、キャビティ6に粉体原料を充填する前に、下杵4の杵先41及び上杵5の杵先51の少なくとも一方の表面に水を付与する点が挙げられる。粉体原料の充填前に杵先41及び/又は杵先51の表面に水を付与することにより、その後の両杵先41,51による粉体原料の加圧成形において、付与された水が粉体原料の離型剤として機能するため、杵先41,51に粉体原料が付着し難くなり、固形洗浄剤の離型性が向上し、それによって、型1(杵先41,51)の欠損等の不都合を生じることなく、高品質の固形洗浄剤を効率良く連続的に製造することが可能となる。また、キシレンやトルエン等の芳香族系の炭化水素、ベンジンや石油エーテル等の石油系炭化水素等を溶媒としたシリコン系やフッ素系等の市販の離型剤を用いた場合には、該離型剤が固形洗浄剤に含有されるため、該離型剤の種類によっては、該固形洗浄剤の使用により肌への悪影響が懸念されるが、離型剤として水を用いることによりそのような懸念は払拭され、しかも、市販の離型剤を用いる場合に比して低コストで固形洗浄剤を製造できる。また、本実施態様で用いる粉体原料15は少なくとも石鹸成分を含有しているところ、離型剤として水を用いると、固形洗浄剤の表層部分に存在する石鹸成分が水溶性であるため該水によって若干溶ける場合があり、それによって粉体原料どうしがより緻密に結合するようになり、結果として、固形洗浄剤の表面光沢性や強度の向上効果が期待できる。
【0022】
水による前記作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、水は、少なくとも、加圧成形時に粉体原料と必ず接触する、下杵4(杵先41)の加圧面4a及び/又は上杵5(杵先51)の加圧面5aに付与することが好ましい。また特に、前述したように、固形洗浄剤20の貫通孔2からの排出を、下杵4を上杵5に向けて貫通孔2内を移動させることにより実施する場合には、水の付与は、下杵4の杵先41の表面(加圧面4a)に対して実施することが好ましい。尚、貫通孔2を画成する臼体3の内壁面3aについては、水による前記作用効果の観点からは特に水を付与する必要はなく、内壁面3aには水を付与してもしなくても構わない。
【0023】
杵先41,51の表面に付与する水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、超純水等を用いることができる。杵先41,51の表面に付与する水は、通常他の成分を含まないが、固形洗浄剤に含有されても問題の無い他の成分(例えば、植物油脂、ソルビタン脂肪酸エステルなど)を含んでいても良い。特に、固形洗浄剤が固形石鹸のように肌に使用されるものである場合、杵先41,51の表面に付与する水には、キシレンやトルエン等の芳香族系の炭化水素、ベンジンや石油エーテル等の石油系炭化水素等を溶媒としたシリコン系、フッ素系等の市販の離型剤を含有させないことが好ましい。
【0024】
水の付与量は、杵先41,51の表面(加圧面4a,5a)に対し、好ましくは1〜30g/m
2、更に好ましくは4〜15g/m
2である。
【0025】
水の付与量は次のようにして測定される。例えば、下杵4の杵先41の表面(加圧面4a)に水を付与する場合、予め、水を付与する前の状態の下杵4の重量Y1を測定しておき、該下杵4(加圧面4a)に水を付与してその重量Y2を測定し、重量Y2から重量Y1を差し引いて水重量Y3(=Y2−Y1)を算出し、水重量Y3を加圧面4aの面積で除して得られた数値を水の付与量とする。上杵5の杵先51の表面(加圧面5a)に水を付与する場合は、前記方法に準じて水の付与量を求める。
【0026】
杵先41,51への水の付与方法は、加圧面4a,5aに確実に水を付与し得る方法であれば良く、特に制限されないが、好ましい水の付与方法として、1)杵先に水を噴霧する方法、及び2)刷毛を用いて杵先に水を塗布する方法が挙げられる。前記1)の方法は、公知のスプレー、ノズル等の噴霧手段を用いて実施できる。
【0027】
また、他の好ましい水の付与方法として、3)杵先をその周辺雰囲気の露点温度以下に冷却する方法が挙げられる。前記3)の方法により、杵先41,51の周辺の空気中の水分が凝縮してその表面(加圧面4a,5a等)上に結露し、結果として該表面に水が付与される。固形洗浄剤を連続的に製造する場合、前記1)及び2)の方法では、基本的に、粉体原料をキャビティ6に充填する度毎に杵先41,51の表面に水を付与する作業が必要となるが、前記3)の方法では、杵先41,51を常時冷却していれば良く、そのような作業は不要である。杵先41,51の冷却方法としては、i)クーラー等の公知の冷却装置を用いて型1の全体を冷却する方法、ii)下杵4(杵先41),上杵5(杵先51)の内部に冷却水の循環路(図示せず)を設けて、これらの内部に冷却水を循環させる方法等が挙げられる。
【0028】
また、水による前記作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、水が付与される杵先の表面は極酸化被膜で被覆されていることが好ましい。例えば、杵先41の加圧面4aに水を付与する場合は、該加圧面4aが極酸化被膜で被覆されていることが好ましく、また、加圧面4aに加えて杵先51の加圧面5aに水を付与する場合は、両加圧面4a,5aそれぞれが極酸化被膜で被覆されていることが好ましい。
【0029】
極酸化被膜の形成方法としては、例えば、臼体あるいは上杵、下杵がアルミニウムの場合には、希硫酸やシュウ酸(蓚酸)等を処理浴に用いて、アルミニウムを陽極として電気分解することにより、アルミニウムの表面(杵先の表面等)を電気化学的に酸化させ、該表面に酸化アルミニウムAl
2O
3の皮膜を生成させる方法等が挙げられる。極酸化被膜の厚みは、好ましくは5〜80μmである。
【0030】
本発明の製造目的物である固形洗浄剤について説明すると、固形洗浄剤の一例として固形石鹸が挙げられる。固形石鹸以外の固形洗浄剤としては、例えば中性の固形洗浄剤、トイレ用オンタンク固形洗浄剤、食器洗浄機用固形洗浄剤等が挙げられ、本発明の固形洗浄剤の製造方法は、これら固形石鹸以外の固形洗浄剤の製造にも適用できる。固形石鹸は、パーム核脂肪酸ナトリウム等の脂肪酸誘導体を石鹸成分として含有し、更に必要に応じ、副成分を含有する。副成分としては、石鹸成分以外の界面活性剤、香料、保湿剤、着色剤、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、防腐剤、脱臭剤、研磨剤等が挙げられる。これらの副成分が固形石鹸に占める割合は、それらの合計量で表して1〜89質量%、特に2〜69質量%であることが好ましい。
【0031】
固形石鹸の副成分の1つである研磨剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、珪酸塩、シリカ、コーンスターチ等が挙げられる。これらの研磨剤の中でも、特に炭酸水素ナトリウムは、水に溶解した際アルカリ性となり、酸性の皮脂や油汚れ等に対する洗浄効果を高めることができるため、本発明で好ましく用いられる。固形洗浄剤として固形石鹸を製造する場合の粉体原料の好ましい一例として、石鹸成分としてパーム核脂肪酸ナトリウム、副成分(研磨剤)として炭酸水素ナトリウムを含むものが挙げられる。
【0032】
本発明で用いる粉体原料は、少なくとも、前記石鹸成分を含有する粒子からなる。前記副成分は、前記石鹸成分と共に該粒子中に含有されていても良く、あるいは該粒子とは別の粒子中に含有されていても良い。後者の場合、本発明で用いる粉体原料は、前記石鹸成分を含有する粒子と前記副成分を含有する粒子とからなる。
【0033】
本発明で用いる粉体原料(前記石鹸成分を含有する粒子、前記石鹸成分を含有する粒子とは別の粒子)の粒径は、特に制限されないが、製造効率と石鹸強度とのバランスの観点から、好ましくは20〜500μm、更に好ましくは20〜200μmである。粉体原料の粒径は、JIS K 0069に規定される化学製品のふるい分け試験法、顕微鏡等を用いて寸法を測る方法、沈降速度から求める方法、慣性力から求める方法、媒体に分散させて回折光や散乱光を利用して測定する方法等によって測定される。また、粉体原料の形状に関しても特に制限はなく、球状、立方体形状あるいは不定形状等、様々な形状のものを用いることができる。
【0034】
本発明の固形洗浄剤の製造方法は、前記実施態様に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。例えば、前記実施態様では、下杵4(杵先41)の加圧面4a及び上杵5(杵先51)の加圧面5aは、何れも凹凸の無い平坦な水平面(鉛直方向に対して直交する面)であったが、凹凸面であっても良く、あるいは鉛直方向(図中のX方向)に対して直交せずに斜行する傾斜面であっても良い。また、加圧面4aと加圧面5aとは同じで無くても良く、例えば、一方が平坦な水平面、他方が凹凸面であっても良い。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔実施例1〕
図1に示す成形装置(型)を用い、
図2に示す方法(前記実施態様と同じ方法)により固形石鹸を製造した。粉体原料として、粒径20〜200μmのパーム核脂肪酸ナトリウム(石鹸成分)50質量%と粒径20〜75μmの炭酸水素ナトリウム(研磨剤)50質量%との混合物を、1成形品あたり70g用いた。杵先の表面への水の付与は、前記1)の方法(杵先に水を噴霧する方法)により、下杵4の杵先41の加圧面4aに対して実施し、水の付与量を4.3g/m
2とした。水の噴霧手段としてスプレーを用いた。成形装置の各部の寸法、製造条件等は下記の通り。
・臼体3(貫通孔2):φ53mm、貫通孔距離65mm。
・下杵4:φ52.9mm、母材A5052、硬質アルマイト、膜厚24μm。
・上杵5:φ52.9mm、母材A5052、硬質アルマイト、膜厚22μm。
・粉体原料への加圧力22MPa、加圧時間10秒。
【0037】
〔実施例2〜5〕
水の付与量を変更した以外は実施例1と同様にして固形石鹸を製造した。尚、実施例2については、水の付与量のみならずその付与方法も変更し、前記3)の方法(杵先をその周辺雰囲気の露点温度以下に冷却する方法)により、下杵4の杵先41の加圧面4a及び上杵5の杵先51の加圧面5aそれぞれに水を付与した。杵先の冷却は、下杵4(杵先41)及び上杵5(杵先51)それぞれの内部に冷却水の循環路(図示せず)を設けて、これらの内部に5℃に冷却した水を循環させることにより実施した。
【0038】
〔比較例1〕
杵先の表面に水を付与しなかった以外は実施例1と同様にして固形石鹸を製造した。
【0039】
〔評価〕
型への粉体原料の付着量、並びに実施例及び比較例で得られた固形石鹸の表面光沢性及び強度を下記方法により評価した。その結果を下記表1に示す。
【0040】
<粉体原料の付着量の評価方法>
固形石鹸の製造前(粉体原料の加圧成形前)に、予め、下杵及び上杵の合計重量Z1を測定しておき、固形石鹸の製造後に改めて下杵及び上杵の合計重量Z2を測定し、重量Z2から重量Z1を差し引いて得られた数値(=Z2−Z1)を、粉体原料の付着量とする。粉体原料の付着量が少ないほど、高評価となる。
【0041】
<表面光沢性の評価方法>
固形石鹸を目視で観察し、表面がなめらかで光沢がある場合をA(最高評価)、表面がなめらかで光沢がない場合をBとした。
【0042】
<強度の評価方法>
テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製 RTA−500)を用いて行った。試験機に2枚の平板を、互いに平行になるように取り付け、2枚の平板間に、固形石鹸を、その成形時の圧縮方向が平板の互いに対向する平面と平行になるように設置した。そして、5mm/minの速度で固形石鹸を圧縮し、そのときのピーク強度を測定し、その値を石鹸の強度とした。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜5は比較例1に比して、杵先への粉体原料の付着量が少なく且つ得られた固形石鹸の表面光沢性に優れるものであった。このことから、キャビティに粉体原料を充填する前に杵先の表面に水を付与することは、型への粉体原料の付着量を減少させ、固形洗浄剤の強度のみならず表面光沢性も向上させる上で有効であることがわかる。また、実施例1〜3は、比較例4及び5に比して、杵先への粉体原料の付着量が少ない結果となったことから、杵先への水の付与量は4〜15g/m
2程度が好ましいといえる。