特許第5923835号(P5923835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923835
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】手乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/48 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   A47K10/48 A
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-64141(P2013-64141)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-198741(P2013-198741A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2013年3月26日
(31)【優先権主張番号】1205263.5
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508032310
【氏名又は名称】ダイソン テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ディヴィッド ガマック
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ベンジャミン コートニー
(72)【発明者】
【氏名】リー マイケル ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ステュアート ジェイムズ スティール
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−290529(JP,A)
【文献】 特開2000−000180(JP,A)
【文献】 特開2007−143584(JP,A)
【文献】 特開2007−098106(JP,A)
【文献】 特開2000−184987(JP,A)
【文献】 特開2004−215879(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの手から水を拭き取るエアナイフを使用する形式の壁に取り付け可能な手乾燥装置であって、
前記手乾燥装置は、前記手乾燥装置が前記壁内に埋め込まずに壁面に取り付けられる場合に前後方向150mm以下の最大奥行きを有するように構成され、
前記エアナイフは、移動する空気のシート又はカーテンの形態であり、80m/sを超える速度で前記手乾燥装置の1つ又はそれ以上の放出開口から下向きに放出され、前記放出開口は、前記エアナイフが前記壁の前方に又は前記手乾燥装置の後部の前方に放出されるように構成され、前記放出開口は、前記エアナイフを下向き角度で前記ユーザに向かって前向きに放出し、前記エアナイフの下向き角度は、前記エアナイフが前記壁の前方に又は前記手乾燥装置の前記後部の前方に少なくとも75mmの距離まで突出するようになっており、前記放出開口の幅は、2mm未満である、手乾燥装置。
【請求項2】
少なくとも2つの前記放出開口を備え、前記放出開口は、2つの別個のエアナイフを放出するように構成され、各エアナイフは、下向き角度で前記ユーザに向かって前向きに前記壁の前方に又は前記手乾燥装置の後部の前方に放出され、各エアナイフの前記下向き角度は、前記エアナイフが前記壁面の前方に又は前記手乾燥装置の前記後部の前方に少なくとも75mmの距離まで突出するようになっている、請求項1に記載の手乾燥装置。
【請求項3】
使用時に、前記放出開口は、前記エアナイフを末広がりの方向に放出するように構成され、第1の方向は前記手乾燥装置の左側に外向きに延び、第2の方向は、前記手乾燥装置の右側に外向きに延びる、請求項2に記載の手乾燥装置。
【請求項4】
前記2つのエアナイフの間の末広がり角度は、少なくとも100度である、請求項3に記載の手乾燥装置。
【請求項5】
前記放出開口は、前記手乾燥装置の前方から見てV字形構成で配置される、請求項1から4のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項6】
前記放出開口は、前記壁から、場合によっては前記手乾燥装置の前記後部から最低75mmだけ離間する、請求項1から5のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項7】
前記手乾燥装置は、前記最大奥行きが4インチ(101.6mm)以下であるように構成される、請求項1から6のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項8】
前記手乾燥装置は、使用時に、前記壁から又は前記手乾燥装置の後部から突出する突起部を有し、前記放出開口は、前記突起部の底面上に設けられる、請求項1から7のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項9】
前記放出開口は、前記手乾燥装置の下部に向かい合い、前記放出開口は、前記手乾燥装置の前記下部から少なくとも120mmだけ離間する、請求項8に記載の手乾燥装置。
【請求項10】
前記放出開口は、前記手乾燥装置が前記壁面上に取り付けられる場合、床面に向かい合うように、外側ケーシングの前記底面上に設けられる、請求項8に記載の手乾燥装置。
【請求項11】
各エアナイフは、細長いスロットの形態の単一の開口を通じて放出される、請求項1から10のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項12】
前記スロットの長さは、少なくとも80mmである請求項11に記載の手乾燥装置。
【請求項13】
前記手乾燥装置は、各手に対して1つのエアナイフを放出する、2つのそれぞれ別個のエアナイフを放出するための2つの前記スロットを備える、請求項11又は12に記載の手乾燥装置。
【請求項14】
各エアナイフは、個々の空気孔の細長いラインを通じて放出される、請求項1から10のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項15】
前記空気孔の細長いラインの合体長さは、少なくとも80mmである請求項14に記載の手乾燥装置。
【請求項16】
前記手乾燥装置は、各手に対して1つのエアナイフを放出する、2つのそれぞれ別個のエアナイフを放出するための2つの前記空気孔の細長いラインを備える、請求項14又は15に記載の手乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの手の表面から水を拭き取るのにエアナイフを使用する形式の壁に取り付け可能な手乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手乾燥装置は、一般に、ペーパータオルの代替品として公共トイレに設置される。
【0003】
市場には3つの主な形式の手乾燥装置、すなわち「温風」手乾燥装置、「高速」手乾燥装置、及び「エアナイフ」手乾燥装置がある。
【0004】
温風手乾燥装置は良く知られている。これは、常に、空気の加熱に依存して手の表面の蒸発乾燥作用を助長する低流量、低速機械である。一例として、World Dryer Corporationによって製造され、市販されている手乾燥装置のModel A Seriesを挙げることができる。一般に、加熱空気流は、単一ノズルを通って放出され、乾燥動作は、「手を交互に動かす」動作であり、ユーザは蒸発乾燥作用を促すためにノズルの下で両手を一緒に擦り合わせる必要がある。
【0005】
高速手乾燥装置は、名前が示唆するように、高速空気流(>80m/s)を使用して手の表面での運動量乾燥作用をもたらす。一例としては、Excel Dryer Incによって製造され、市販されているXlerator(登録商標)手乾燥装置を挙げることができる。この場合も同様に、空気流は、一般に単一のノズルを通って放出され、使用様式は、温風乾燥装置の「手を交互に動かす」動作に幾分似ており、ノズルの真下で両手を一緒に揃えて保持し又はカップ形状にして乾燥させる。しかしながら、蒸発する代わりに、手の表面上の大部分の水は、高運動量空気流によって手から追いやられ又は吹き飛ばされ、蒸発は、ごく一部の水の除去を担う。空気流は、ほとんど加熱されないが、空気流をある程度まで加熱するためにモータからの廃熱を使用することもできる。
【0006】
第3の一般的な形式の手乾燥装置は、エアナイフ手乾燥装置であり、一例として、Dyson (UK) Limitedによって製造される手乾燥装置の領域のDyson Airblade、及びMitsubishi Electric Corporationによって製造されるJet Towel手乾燥装置を挙げることができる。
【0007】
これらの手乾燥装置は、事実上、移動する空気のシート又はカーテンであるエアナイフを使用してユーザの手から水を除去する。動作様式は、産業界のエアナイフの確立した用途に類似しており、製品の表面からデブリ又は液体を除去するようになっており(例えば、エアナイフを使用してガラスシートからのデブリの除去を開示する欧州特許公開第2394123号参照)、エアナイフは、手の表面を横切って移動するので、手の表面から水を拭き取る又は擦り落とす。
【0008】
Dyson Airblade及びMitsubishi Jet Towelの両方において、2つの対向する静止エアナイフは、ユーザの手の各側面の一方に使用さる。手をエアナイフの間に挿入し、次に、ゆっくり引き戻して、手とエアナイフとの間に所要の相対移動をもたらす。
【0009】
図1に示すダイソンの装置において、エアナイフは、各々が1mm未満の幅の狭い連続スロット(図1には後側スロットaだけが見える)を通って放出される。図2に示すMitsubishiの機械において、エアナイフは、この場合は個々の放出開口(図2には後側列bだけが見える)の対向する列を通って放出され、個々の噴流は、放出開口の下流にエアナイフを生成するように合体する。いずれの場合でも、エアナイフは、高速(>80m/s)で放出されて、手の表面を横切って効率的に拭き取り動作を可能にする。
【0010】
本発明は、特にエアナイフ手乾燥装置に関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許公開第2394123号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Americans with Disablities Act1990(ADA)
【非特許文献2】ADA Accesibility Guidelines for buildings and facilities(ADAAG)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、ユーザの手から水を拭き取るためにエアナイフを使用する形式の壁に取り付け可能な手乾燥装置が提供され、手乾燥装置は、該手乾燥装置が前記壁内に埋め込まれるのではなく壁面に取り付けられる場合に、前後に150mm以下の最大奥行きを有するように構成され、エアナイフは、乾燥装置の1つ又はそれ以上の放出開口を通じて下向きに放出され、放出開口は、エアナイフがユーザに向かって前向き角度で壁の前方又は乾燥装置の後部の前方に放出されるように構成され、エアナイフの角度は、エアナイフが壁の前方に又は場合によっては乾燥装置の後部の前方に少なくとも75mmの距離まで突出するようになっている。
【0014】
手乾燥装置は、薄型設計であるという利点を有する。手乾燥装置が壁面に取り付けられる場合の150mmの最大奥行きは、図1に示すDyson Airblade手乾燥装置(約250mmの前後奥行き)、又は図2に示すMitsubishi Jet Towel手乾燥装置(約220mmの前後方向奥行き)よりも著しく小さい。特に、乾燥装置の最大奥行きは、4インチ(101.6mm)以下とすることができ、Americans with Disablities Act1990(ADA)に準拠して、手乾燥装置の壁面取り付けが可能になる。これにより、ADAに準拠するために壁内に手乾燥装置を埋め込む不都合及びそのための費用を避けることができ、特に手乾燥装置を据え付ける場合に好都合である。
【0015】
外形奥行きが著しく低減するにもかかわらず、乾燥装置は、効率的なエアナイフ乾燥動作を可能にする。ユーザは、手のひらを開いて手を放出開口の真下で前後方向に移動させて手を乾燥させる。エアナイフは手の上に下向きに指向され、手が放出開口に対して移動すると、エアナイフは、ユーザの手の表面から機械的に水を拭き取って手を乾燥させる。
【0016】
乾燥動作は、前後動作であるので、ユーザは、手を下方に縦傾斜させることによって乾燥装置の有効奥行きを増大させることができる。最適な縦傾斜角は、ユーザが必要とする有効奥行きにより様々であり、大きな手のユーザは、手を急角度で縦傾斜させることになる。エアナイフが壁の前方又は乾燥装置の後部の前方から少なくとも75mmだけ突出することを保証することで、縦傾斜角は、殆どのユーザにとって快適な範囲に維持される。従って、本発明は、依然として効率的なエアナイフ乾燥動作を可能にする薄型手乾燥装置を提供する。
【0017】
放出開口は、好ましくは、エアナイフがユーザの手の全幅だけ拭き取り動作を与えるように、ユーザの手の幅にわたって延びるように配置される。少なくとも80mmの横方向スパンは、ほとんどの場合には十分であると考えられる。同時に両手を乾燥させることが意図される場合、放出開口は、放出開口の真下で横並びの両手の幅にわたって延びるように配置することができる。少なくとも200mmの横方向スパンがこの場合には好ましいと考えられるが、この場合も同様に必須ではなく、例えば特定の国では短いスパンが適する場合がある。
【0018】
放出開口を通る出口空気速度は、好ましくは80m/sを超えて、エアナイフが手の表面において効率的に拭き取り動作を行うことを保証する。特に効率的な拭き取り動作は、150m/sを超える空気速度で得ることができる。出口空気速度は、放出開口の放出面積及び背圧による一般的なエアナイフ原理に基づいて決まる。従って、例えば、放出面積を増やすと、所定の圧力において出口空気速度が低下することになる。所定の放出面積に対して圧力を高くすると、出口空気速度が高まることになる。
【0019】
放出開口は、列に配置された空気孔、又は代替的に細長い空気スロットの形態をとることができる。例えば、単一の細長い空気スロット又は空気孔の列を設けて、単一のエアナイフを放出して手を順に乾燥させることができ、一対の空気スロット又は空気孔の列を設けて、2つの別個のエアナイフを発生させて、手を同時に乾燥させることができ、又は単一の細長い空気スロット又は空気孔の列を設けて、十分に長い単一エアナイフを発生させて、同時に横並びに手を乾燥させることができる。
【0020】
スロット又は空気孔は、最小ウインド・シアを有する層流の明確に定義されたエアナイフをもたらすことを意図する2mm未満の幅とすることができる。1つの実施形態において、スロットの長さ又は空気孔の列の長さは、少なくとも80mmである。
【0021】
少なくとも2つの放出開口を設けることができ、放出開口は、各手に対して1つの2つの別個のエアナイフを放出するように構成される。この場合、放出開口は、使用時にユーザへの逆流を低減するために、ユーザの両側にエアナイフを指向するように配置することができる。従って、エアナイフは、末広がりの方向に放出することができ、第1の方向は乾燥装置の左側へ外向きに延び、第2の方向は、乾燥装置の右側へ外向きに延びる。2つの方向の間の角度は、好ましくは100度を超える。100−120度の角度が好ましいと考えられる。
【0022】
放出開口は、乾燥装置の前方から見てV字形構成で配置することができる。これにより、ユーザは使用時に快適な角度で彼の(又は彼女の)手を傾けることができる。
【0023】
放出開口は、乾燥装置の壁、又は場合によっては後部から75mm以上離間することができるが、これは必須ではない。
【0024】
乾燥装置は、使用時に乾燥装置の壁又は後部から突出する突起部を有することができ、放出開口は、突起部の底面上に設けられる。これが、本発明による所定の角度で下向きにエアナイフを指向するための好都合な配置である。
【0025】
放出開口は、乾燥装置の下部に向かい合うことができ、放出開口は、前述の乾燥装置の下部から少なくとも120mmだけ離間する。乾燥装置の下部を放出開口から少なくとも120mmだけ離間することによって、大部分のユーザが乾燥装置の下部に触れることなく自分の手を十分に下向きに縦傾斜させることができる。
【0026】
1つの実施形態において、放出開口は、手乾燥装置の下部ではなくて床面に向かい合うように、手乾燥装置の外側ケーシングの底面上に設けられる。この配置は、放出開口の真下に使用時に手を縦傾斜させるための大きな距離間隔をもたらす。
【0027】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来のエアナイフ手乾燥装置の概略斜視図である。
図2】従来のエアナイフ手乾燥装置の概略斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態による、壁に取り付け可能な手乾燥装置の概略斜視図である。
図4図3に対応する側面図である。
図5図3に示す手乾燥装置を見下ろした概略図であり、手乾燥装置の使用モードを示す。
図6】壁に取り付け可能な手乾燥装置の底部の側面図である。
図7】本発明の第2の実施形態による、壁に取り付け可能な手乾燥装置の概略斜視図である。
図8図7に対応する側面図である。
図9】本発明の第3の実施形態による、壁に取り付け可能な手乾燥装置の斜視図である。
図10】本発明の第4の実施形態による、壁に取り付け可能な手乾燥装置の斜視図である。
図11】本発明の第5の実施形態による、壁に取り付け可能な手乾燥装置の斜視図である。
図12】本発明の第6の実施形態による、壁に取り付け可能な手乾燥装置の斜視図である。
図13図12に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
簡略化のために、以下の説明において特に説明しない限り、対応する特徴要素には対応する参照番号が付与される。
【0030】
図3及び図4は、移動する空気のカーテン又はシートであるエアナイフ3を使用して機能して、ユーザの手から水を拭き取る壁に取り付け可能な手乾燥装置1を示す。
【0031】
手乾燥装置1は、標準的な壁取り付け方向で示されている。
【0032】
手乾燥装置1は、壁面7から距離Xだけ突出する外側箱形ケーシング5を備える(図4)。外側ケーシング5は、Xが4インチ(101.6mm)であるように構成される。従って、乾燥装置は「ADA準拠」であり、この乾燥装置はADA(Americans with Disablities Act1990)に準拠する。
【0033】
4.4.1 概要 仕上げ床面上に27インチから80インチ(685mmから2030mm)の前縁を有する、壁から突出する物体は(例えば、電話)、歩道、ホール、廊下、通路、又は側廊に4インチ(100mm)を超えて突出しないものとする。
【0034】
出典:ADA Accesibility Guidelines for buildings and Facilities(ADAAG)
【0035】
エアナイフ3は、ケーシング5の底面上の放出開口9を通って角度αで下向きに放出される。従って、エアナイフ3は、壁の前方に放出される。
【0036】
放出開口9は、細長い放出スロットの形態であり、細長い放出スロットは、乾燥装置1を横切って横方向に延びる(この場合、壁7と略平行)。放出スロット9の前壁及び後壁は、エアナイフ3が所要の下向きの角度αで放出されるように対応して角度が付いている。
【0037】
ユーザは、手のひらを開いて放出スロット9の真下で前後方向に手を移動させて手を乾燥させる。手は、一度に片面を乾燥し(図1及び図2に示す従来の両面配置と比較)、手のひらを上に向けて1度又はそれ以上の移動を行い、次いで、手を裏返して、手の甲を上に向けて1度又はそれ以上の移動を行う。これは、乾燥装置1を見下ろした図5に示されている。
【0038】
放出スロット9は、放出スロットの下で横並びに保持した両手の全域にわたって延びることが意図される250mm長である。代替的に、例えば長さ120mmの長さの短い放出スロットを使用して、最初に一方の手を乾燥させて次いで他方の手を乾燥させることができる。
【0039】
手が放出スロット9に対して移動すると、エアナイフ3は、ユーザの手の表面から水を機械的に拭き取って手を乾燥させる。
【0040】
壁7上の乾燥装置1の浅い奥行きは、手が乾燥装置1の真下で水平に保持される場合、一般的なユーザの指が壁7と接触する傾向があることを意味する。しかしながら、前後乾燥動作は、ユーザが手を放出スロット9の真下を移動させる際に角度θだけ下向きに縦傾斜させることによって接触を回避できることを意味し、乾燥装置の有効奥行きを増加させる(図6)。
【0041】
エアナイフが壁の前方に距離Dだけ突出する場合、有効奥行きdは、D=dcosθとなる。ほとんどの場合、快適な縦傾斜角θをもたらすために、本発明によればエアナイフ3の下向き角度αは、Dが75mmとなるように設定され、このことはエアナイフが壁7の前方に75mmだけ突出する(ある1点で)ことを意味する。
【0042】
正確な縦傾斜角θは、Dの所定値に対してユーザ毎に様々である。比較的大きな手をもつユーザは、D=75mmの場合、60度の縦傾斜角θに一致する有効奥行きd、例えば150mmを好む場合があるのに対して、小さな手をもつユーザは、D=75mmの場合、約50度の縦傾斜角θに一致する120mmの有効奥行きdを必要とする場合がある。
【0043】
図3及び図4の配置では、放出スロット9は、壁7の前方に50mmだけ離間している。乾燥装置の前方に向かって更に放出開口を移動させることによって、より浅い縦傾斜角θを使用してDに関する所定の値をもたらすことができる。乾燥装置の前縁に沿って放出開口を配置することで、角度αを最小にすることになる。それにもかかわらず、放出開口の所定の位置に対して、エアナイフを所定の下向き角度で前向きに放出すると距離Dは最小になるはずである。
【0044】
放出スロット9は、乾燥装置1の外側ケーシング5の内側に収容されたダクテッドモータ駆動式ファンを用いて給送され、ファンは、ケーシング5の側面上の吸気口11を通じて空気を引き込み、放出スロット9を通じて空気を強制的に送り出してエアナイフ3を発生させる。
【0045】
放出スロット9は、2mm未満の幅である。モータ駆動式ファンは、放出スロット9を通じて80m/sを超える出口空気速度をもたらすように構成される。このことは、低いウインド・シアを呈する明確に定義された高速層流のエアナイフを提供することが意図される。特に効率的な拭き取り動作は、150m/sを超える空気速度で得ることができる。
【0046】
代替的に、圧縮空気の発生源を使用して、スロット9の後側のプレナムチャンバを経由して放出スロット9に給送することができる。
【0047】
放出スロット9は、ケーシング5の壁に直接形成される。必須ではないが、これにより、ケーシング5の掃除が容易になり、ケーシング9自体をスロット9に給送するためのダクト又はプレナムとして利用することが可能になる。
【0048】
好ましくは、スロット9は、ケーシング5の壁に機械加工され、これは良好な寸法公差をもたらすが、ケーシング5が成形される場合、スロット9自体をケーシング5の一部として成形することができる。
【0049】
図7は、エアナイフ3が壁7の前方ではなくて手乾燥装置の後部の前方に放出される代替的な配置を示す。後部はエアナイフ3の後側にあるという意味であり、この場合、手乾燥装置の外側ケーシング13の前面13aである。図9は、手乾燥装置の後部が後方プレート15である異なる配置を示し、放出スロットは、後方プレート15から突出する乾燥装置の突起部25の底面上に設けられる(放出スロットが乾燥装置の突起部すなわち外側ケーシング上に同様に設けられるが、代わりに壁7から突き出る図3の配置と比較して)。いずれの場合にも、それぞれの下向き角度αは、エアナイフ3が乾燥装置の後部の前方に少なくとも75mmの距離だけ突出するようになっている(D=75mmである図8を参照)。
【0050】
放出開口は、細長いスロットである必要はない。図9の配置では、例えば、エアナイフ3は、狭い間隔の丸い孔17の形態の放出開口の列を通って放出される。
【0051】
図10は、放出開口が床面に向かい合うのではなく、乾燥装置の下部に向かい合うように構成された配置を示す。ここで、乾燥装置の下部は、廃水を集めるためのドリップトレイ23である。乾燥装置は、突起部25とドリップトレイ23との間で両側が開いているが、これは必須ではなくて、図11に示すように、取り囲まれた乾燥キャビティ27を形成するように側壁を設けることができる。この場合、突起部25は、キャビティ27の天井を形成し、放出スロット9は、乾燥キャビティ27の基部29に向かい合う。
【0052】
図10の配置では、2つの別個の放出スロット19、21、すなわち単一の「2倍スパン」放出スロットではなく、各手に対して1つの形態をとる。
【0053】
図9及び図10の配置の両方において、放出スロット9、19、21は、壁から最大奥行きXだけ離間するように、突起部分25の前側下縁に沿って設けられ、最大奥行きXは、この場合、ADAに準拠するために4インチ(101.6mm)である。この配置において、150mmの有効奥行きは48度の縦傾斜角θと一致し、120mmの有効奥行きは34度の縦傾斜角θと一致する。
【0054】
図11及び図12は、乾燥装置がV字構成(乾燥装置の前方から見ると)で配置される放出スロット29、31を備える配置を示す。これは、ユーザが使用時に手を傾けることを可能にし、乾燥動作をユーザにとって更に快適なものにする。
【0055】
放出スロット29、31は、手乾燥装置の前側下縁に沿って設けられ、手乾燥装置の縁部は、スロット29、31の所要のV字構成をもたらすようにV字形である。手乾燥装置は、手乾燥装置が壁面上に取り付けられる場合に4インチ(101.6mm)の最大奥行きXを有する。
【0056】
放出スロット29、31は、それぞれのエアナイフが角度βで末広がりになるように配置される。これは、ユーザ(通常の使用時に乾燥装置の真正面に立つことになる)の両側にエアナイフを指向する助けになる。βの好ましい範囲は、100−120度である。
【0057】
案内縦傾斜33は、この配置でスロット29、31の後側に追加的に設けられる。これは必須ではないが、ユーザが使用時に手を放出開口の真下で下方に縦傾斜させることを促すという利益をもたらす。
【0058】
ADA準拠は、本発明の本質的な部分ではない。乾燥装置の奥行きXは、乾燥装置が壁面に取り付ける場合に最大150mmとすることができ、これは、依然として図1及び図2に示す従来のエアナイフ手乾燥装置よりも非常に浅い形状である。
【符号の説明】
【0059】
1 乾燥装置
3 エアナイフ
5 ケーシング
9 放出開口
11 吸気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13