(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923907
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】車両用ドアフレーム
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
B60J5/04 M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-206034(P2011-206034)
(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-67232(P2013-67232A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康治
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 知志
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−063250(JP,A)
【文献】
特表2005−511395(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/013322(WO,A1)
【文献】
特開2010−105531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスランを収納するガラスラン収納部と、
ウェザストリップを保持するウェザストリップ保持部と、
車両外側の意匠面を形成するガーニッシュと、
前記ガラスラン収納部と前記ウェザストリップ保持部に挟まれる第1平面部と、
前記第1平面部から屈曲して延びる内側壁部と、前記内側壁部から屈曲して外方に延びる後側壁部と、前記後側壁部から屈曲して前記ガラスラン収納部に延びる外側壁部との内部に中空空間を持つ中空部と、
を一体として有する一枚の長尺状の板材から形成されるフレーム部材を備える車両用ドアフレームであって、
前記板材は、前記板材の短手方向の両側端に長手方向に沿って延びる第1薄肉部及び第2薄肉部と、第1薄肉部及び第2薄肉部との間において該第1薄肉部及び第2薄肉部よりも肉厚に設定された中央部とからなり、
前記第1薄肉部は、前記第1平面部を形成し、
前記中央部は、前記第1平面部から連続する前記中空部と該中空部から連続する前記ガラスラン収納部と該ガラスラン収納部から連続する前記ガーニッシュを形成し、
前記第2薄肉部は、前記ガーニッシュから連続する前記ウェザストリップ保持部を形成する車両用ドアフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記第1薄肉部及び前記第2薄肉部の板厚は、前記中央部の板厚の5分の3であることを特徴とする車両用ドアフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開口に装着される車両用ドアフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアフレームとして種々のものが提案されている。例えば特許文献1では、ドアフレームが一枚の板材からロール成形により形成され、ドアフレームのフロントピラー部からルーフピラー部にかけて、車両幅方向の厚みを徐々に薄くし、センタピラー部の車両幅方向の厚みを下方から上方にかけて徐々に薄くしているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−329572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用ドアフレームでは、ドアフレームを形成する板材の厚みを変更してドアフレームの軽量化を図る場合において、板材の厚みが一定である為、板材の厚みを薄くするとドアフレームの剛性が板材の厚みに比例して低下する問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、ドアフレームの剛性を維持するとともにドアフレームを軽量化する車両用ドアフレームを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、ガラスランを収納するガラスラン収納部と、ウェザストリップを保持するウェザストリップ保持部と、車両外側の意匠面を形成するガーニッシュと、前記ガラスラン収
納部と前記ウェザストリップ保持部に挟まれる第1平面部と、前記第1平面部から屈曲して延びる内側壁部と、前記内側壁部から屈曲して外方に延びる後側壁部と、前記後側壁部から屈曲して前記ガラスラン収
納部に延びる外側壁部との内部に中空空間を持つ中空部と、を一体として有する一枚の長尺状の板材から形成されるフレーム部材を備える車両用ドアフレームであって、前記板材は、前記板材の短手方向の両側端に長手方向に沿って延びる第1薄肉部及び第2薄肉部と、第1薄肉部及び第2薄肉部との間において該第1薄肉部及び第2薄肉部よりも肉厚に設定された中央部とからなり、前記第1薄肉部は、前記第1平面部を形成し、前記中央部は、前記第1平面部から連続する前記中空部と該中空部から連続する前記ガラスラン収
納部と該ガラスラン収
納部から連続する前記ガーニッシュを形成し、前記第2薄肉部は、前記ガーニッシュから連続する前記ウェザストリップ保持部を形成する構成である。
【0009】
本発明の第
2の課題解決手段は、前記第1薄肉部及び第2薄肉部の板厚は、前
記中央
部の板厚の5分の3以下である構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ドアフレームでは、フレーム部材を形成する板材に板材の短手方向の中央の厚みより薄い第1薄肉部及び第2薄肉部が形成される。これにより板材を軽量化することができ、ドアフレームを軽量化することができる。また、フレーム部材を構成する部位の中で剛性を落としてもドアフレームの機能を満足できる部位が第1薄肉部及び第2薄肉部により形成されている。これによりドアフレームの剛性を維持しながらドアフレームを軽量化することができる。
【0013】
また、第1薄肉部及び第2薄肉部の板厚は、板材の中央の板厚の5分の3であり、第1薄肉部及び第2薄肉部の板厚を板材の中央の板厚と比較して更に薄くすることができ、ドアフレームの重量を更に軽量化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
尚、以降において、車両前方向を単に「前方」、車両後方を単に「後方」、鉛直方向上方を単に「上方」、及び鉛直方向下方を単に「下方」と称する。また、車両幅方向内側を単に「内側」、車両幅方向外側を単に「外側」と称する。
【0017】
図1に示すように、前ドア1は、車両本体に対して開閉可能に取り付けられるドア本体2と、ドア本体2の上部に連結されるドアフレーム3(車両用ドアフレーム)と、ドア本体2及びドアフレーム3に対して上下方向に変位可能に設けられる窓ガラス4とからなる。ドアフレーム3は、ドア本体2の後端に連結されるとともに斜め後上方に延びる縦枠部3aと、縦枠部3aの上端部に連結されて前方に延び、その前端から徐々に斜め前下方に延びる上枠部3bとを有している。上枠部3bは、ドア本体2の前端に連結されている。
【0018】
ドアフレーム3は、
図2に示す一枚の長尺状の板材10をロール成形することにより形成される。板材としては、鉄系材料からなるものを用いる。板材10は、長手方向Lに沿って短手方向W両側に第1薄肉部11と第2薄肉部12が形成され、長手方向Lの断面形状が凸形状となっている。第1薄肉部11及び第2薄肉部12の板厚H1は、板材10の短手方向Wの中央部13の板厚H2の5分の3に設定されており、具体的には、第1薄肉部11及び第2薄肉部12の板厚H1が0.6mm、中央部13の板厚H2が1.0mmである。なお、第1薄肉部11、第2薄肉部12及び中央部13は、それぞれ一定の板厚を有する。
【0019】
次に、
図3を参照して、本実施形態のドアフレーム3の断面構造について説明する。
図3は、
図1のA−A断面図である。ドアフレーム3は、フレーム部材20により構成される。フレーム部材20は、フレーム部材20の内側において、前外方から後内方に向けて、すなわち図中D方向に向けて延びる第1平面部21、第1平面部21の内側端から屈曲して後方に延びる内側壁部22、及び内側壁部22の後側端から屈曲して外方に延びる後側壁部23、後側壁部23の外側端から屈曲して前方に延びる外側壁部24を有している。ここで、第1平面部21は、板材10の第1薄肉部11にて形成される。これら第1平面部21、内側壁部22、後側壁部23、外側壁部24によって、内部に中空空間を持つ中空部33が構成される。外側壁部24の前側端は、D方向における第1平面部21の略中央位置において第1平面部21の後端面に当接している。また、外側壁部24は、前側部分が内側に凹設された係止凹部25が形成される。また、外側壁部24の前側端部から屈曲してD方向に沿って前外方に延びる第2平面部26、第2平面部26の外側端から屈曲して後方に延びる後側基部27が形成される。また、第2平面部26の前側面は、第1平面部21の後側面と当接する。これにより、ガラスラン収納部40は、外側壁部24、係止凹部25、第2平面部26、後側基部27とで構成され、図示しないガラスランが取り付けられる。
【0020】
フレーム部材20の外側には、後側基部27と、後側基部27の後側端において時計回りに180度屈曲して前方に延びる意匠面部28、意匠面部28の前側端において時計回りに180度屈曲して後方に延びる前側基部29が形成される。ちなみに、前側基部29には、前側基部29の前後方向における中央位置にて内側に突出する突出部30を有している。また、後側基部27及び前側基部29の外側面は意匠面部28の内側面に当接している。これにより、ガーニッシュ41は、後側基部27、意匠面部28、前側基部29とで構成され、車両外側の意匠面を形成する。
【0021】
フレーム部材20の前側には、前側基部29の後側端から屈曲して内側に延びるとともに略平面状をなす第3平面部31が第1平面部21の前側面と当接して形成される。つまり、第1薄肉部11にて形成される第1平面部21は、第2平面部26と第3平面部31とに挟まれる位置に形成される。また、第3平面部31は、D方向において第2平面部26の内側端と同一の位置において屈曲して前方に延び、更にその前側端にて屈曲して前外方に延びる係止部32を有する。また、前側基部29、突出部30、第3平面部31、係止部32は板材10の第2薄肉部12により形成され、ウェザストリップを取り付ける為のウェザストリップ保持部42は、これらの前側基部29、突出部30、第3平面部31、係止部32とで構成される。つまり、ウェザストリップ保持部42は、第2薄肉部12により形成される。このウェザストリップ保持部42とガラスラン収納部40に挟まれる位置に第1薄肉部11にて形成される第1平面部21が形成される。
【0022】
次に、本実施形態の製造工程について説明する。
【0023】
フレーム部材20は、一つの工程において圧延加工、曲げ加工の順に加工が行われて形成される。まずは、
図2に示すように圧延加工では、一枚の板材10を熱間圧延することにより長手方向Lの断面が凸形状の板材10が形成される。具体的には、一定の板厚H2を有する加工前の板材10の短手方向W両側に長手方向Lに沿って第1薄肉部11及び第2薄肉部12を有するものとして形成される。また、第1薄肉部11及び第2薄肉部12は一定の板厚H1で形成される。なお、長手方向Lの断面形状が板材10の全体に亘り凸形状となっている為、板材10の全体の説明を省略する。
【0024】
次に、曲げ加工工程では、一枚の長尺状の板材10をロール成形することにより、フレーム部材20を形成する。具体的には、フレーム部材20は、中空部33と、ガラスラン収納部40と、ガーニッシュ41と、ウェザストリップ保持部42とを一体として有するものとして形成される。ここで、第1薄肉部11は、ガラスラン収納部40とウェザストリップ保持部42とに挟まれる位置に形成され、ウェザストリップ保持部42は、第2薄肉部12にて形成される。
【0025】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0026】
(1)本発明の車両用ドアフレームでは、フレーム部材20を形成する板材10に板材10の短手方向Wの中央部12の板厚H2より薄い第1薄肉部11及び第2薄肉部12が形成される。これにより板材10を軽量化することができ、ドアフレーム3を軽量化することができる。また、フレーム部材20を構成する部位の中で剛性を落としてもドアフレーム3の機能を満足できる部位が第1薄肉部11及び第2薄肉部12により形成されている。これによりドアフレーム3の剛性を維持しながらドアフレーム3を軽量化することができる。
【0027】
(2)ドアフレーム3は、板材10のロール成形により形成される為、大量生産が可能となり製造コストを低減することができる。
【0028】
(3)圧延加工と曲げ加工を一つの工程で行うことができる為、加工時間の短縮、製造スペースを縮小することができ、製造コストの低減が可能となる。
【0029】
(4)第1薄肉部11及び第2薄肉部13の板厚H1は、板材10の中央部13の板厚H2の5分の3であり、第1薄肉部11及び第2薄肉部12の板厚H1を板材10の中央部13の板厚H2と比較して更に薄くすることができ、ドアフレーム3の重量を更に軽量化することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0031】
・上記実施形態では、第1薄肉部11と第2薄肉部12の板厚H1は等しく設定されているが、中央部13の板厚H2より薄ければ第1薄肉部11と第2薄肉部12の板厚H1が異なる設定でも良い。
【0032】
・上記実施形態では、板材10を鉄系材料からなるものにしているが、アルミニウム系材料からなるものとしても良い。
【符号の説明】
【0033】
3 ドアフレーム
10 板材
11 第1薄肉部
12 第2薄肉部
13 中央部
20 フレーム部材
40 ガラスラン収納部
41 ガーニッシュ
42 ウェザストリップ保持部
H1 板厚
H2 板厚