特許第5923998号(P5923998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923998
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】車両のステップ
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
   B60R3/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-13927(P2012-13927)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-151253(P2013-151253A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 力也
(72)【発明者】
【氏名】門田 豪郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎司
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−013596(JP,U)
【文献】 実開平07−004180(JP,U)
【文献】 特開平10−329608(JP,A)
【文献】 特開2001−001953(JP,A)
【文献】 特開2003−054319(JP,A)
【文献】 特開2005−231385(JP,A)
【文献】 特開2006−297978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口部に設けたステップであって、樹脂製の平板形状であり、かつその片面若しくは両面に格子状の補強リブを備えて、前記ドア開口部を開閉するスライドドアのロアローラステーと、車両のフロアを支持するサイドメンバーとの間に配置されており、
前記ロアローラステーに、車両側突時の側突荷重により当該ロアローラステーが前記ステップの端部に当接した際に、該ステップの端部を嵌り込ませてその板厚方向の変位を規制するステップ変位規制部を設けて、該ステップ変位規制部により板厚方向の変位を規制した状態で前記車両側突時に前記スライドドアが受ける側突荷重を受ける構成としたステップ。
【請求項2】
請求項1記載のステップであって、前記サイドメンバーに対向する端部を該サイドメンバーの側部に対して平行に設けて、該端部を前記サイドメンバーの側部に面当たりさせて前記車両側突時に前記スライドドアが受ける側突荷重を受ける構成としたステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばワンボックスカーのスライドドア開口部に装備されて主として乗降用の踏み台として機能するステップに関する。
【背景技術】
【0002】
スライドドア開口部に設けられるステップに関する技術が下記の特許文献に開示されている。係るスライドドア開口部及びスライドドアに対する側突対策が従来よりなされている。スライドドアは、その上部と下部に取り付けたスライドローラーを介してその重量を受けつつ車両前後方向にスライド可能に支持されている。
上下の各スライドローラーは、ドア開口部の上部及び下部に沿って設けたスライドレールに係合されている。下部側のスライドレールは、車室内フロアよりも一段低い位置に設けた乗降用のステップの下面に沿って設けられている。
このように支持されたスライドドアの側突対策としては、その上下のスライド支持機構に直接剛性を持たせることが困難であり、また通常ステップが鋼板製であり側突時の大きな衝撃荷重(側突荷重)に対して剛性を持たせることが困難である等の理由により、一般的にはドア開口部の前部を区画するいわゆるBピラー(運転席後方のピラー)について剛性を高めることによりスライドドアに対する側突荷重を間接的に受ける構成となっていた。従来、Bピラーの剛性を高めるために、補強用のリインフォースの板厚を厚くし、あるいはアウトリガーと称される補強部材をさらにパッチによって補強する等して、スライドドアに付加される側方からの衝撃(側突荷重)を間接的にこのBピラーで受ける構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−105263号公報
【特許文献2】特開2011−105265号公報
【特許文献3】特開2011−183834号公報
【特許文献4】特開2005−212625号公報
【特許文献5】特開2009−138386号公報
【特許文献6】実開昭61−53249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来は、Bピラーの剛性を高めることにより間接的にスライドドアの側突対策を行う構成であったため、Bピラーの剛性を高めるために補強用のリインフォースを追加する等して、その側突荷重に対する分担比率が過度に高まってコスト高及び重量増大を招く問題があった。
本発明は、係る従来の問題に鑑みてなされたもので、スライドドアに付加される側突荷重をステップで受けることによりBピラーの側突荷重の分担比率を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は下記の発明により解決される。
第1の発明は、車両のドア開口部に設けたステップであって、樹脂成形により平板形状に形成されており、かつその片面若しくは両面に格子状の補強リブを備えて、ドア開口部を開閉するスライドドアのロアローラステーと、車両のフロアを支持するサイドメンバーとの間に配置されており、ロアローラステーに、車両側突時の側突荷重により当該ロアローラステーがステップの端部に当接した際に、この端部を嵌り込ませてその板厚方向の変位を規制するステップ変位規制部を設けて、該ステップ変位規制部により板厚方向の変位を規制した状態で車両側突時にスライドドアが受ける側突荷重を受ける構成としたステップである。
第1の発明によれば、車両側突時にスライドドアに付加される衝撃が、格子状の補強リブにより従来の鋼板製ステップよりも面方向の剛性が高められた樹脂製ステップでより確実に受けられることから、その分だけBピラーの側突荷重に対する分担比率を軽減することができる。側突荷重に対するBピラーの荷重分担比率を軽減することができることから、当該Bピラーを補強するためのリインフォース等の板厚を従来よりも薄くし、あるいは同じくBピラーを補強するアウトリガーのパッチ(補強板)を省略する等してコストの低減及び車両の軽量化を図ることができる。
ステップは樹脂製であることから、その片面若しくは両面に格子状の補強リブを容易に設けることができる。格子状の補強リブを設けることによりステップはその面方向(側突荷重方向)の強度を高めることができる。係る格子状の補強リブを有しない従来の鋼板製のステップでは、側突荷重に対して十分な剛性を持たせることができないため、Bピラーで係る側突荷重を受ける構成となっていた。
しかも、第1の発明によれば、面方向に十分な剛性を有するステップの端部がスライドドアのロアローラステーに設けたステップ変位規制部に嵌り込んでその板厚方向(上下方向)変位が規制されることにより、当該ステップにより側突荷重が効率よく受けられる。
第2の発明は、第1の発明において、サイドメンバーに対向する端部をサイドメンバーの側部に対して平行に設けて、端部をサイドメンバーの側部に面当たりさせて車両側突時にスライドドアが受ける側突荷重を受ける構成としたステップである。
第2の発明によれば、スライドドアのロアローラステーからステップに入力される車両側突時の側方からの衝撃がより効率よくサイドメンバーに付加されて吸収される。このように樹脂製のステップ介して衝撃をサイドメンバーで受けることができるので、Bピラーの側突荷重に対する分担比率を軽減してコストの低減及び車両の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係るステップを備えたドア開口部の下部付近の斜視図である。本図ではスライドドアの図示が省略されて、ロアローラステーのみが示されている。
図2図1の(II)-(II)線矢視図であって、ドア開口部の下部付近の縦断面図である。
図3】ステップ単独の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1図3に基づいて説明する。図1に示すようにワンボックス車両1の右側部であって運転席の後ろ側にドア開口部2が設けられている。このドア開口部2は、ワンボックス車両1の右側部に沿って前後方向にスライドさせるスライドドア(図示省略)によって開閉される。ドア開口部2はBピラー3によってその前部が区画されている。
ドア開口部2の下部には、乗降時に踏み台として機能するステップ10が設けられている。本実施形態のステップ10は樹脂の一体成形により概ね平板形状に形成されている。図3に示すようにこのステップ10の上面及び下面の両面には、多数の補強リブ11〜11が格子状に設けられている。この補強リブ11〜11によって、ステップ10はその面方向(前後左右方向)の外力に対して高い剛性を発揮する。
図2に示すようにステップ10は乗降口プレート4上に固定されている。ステップ10は、スライドドアの下部をスライド可能に支持するロアローラステー12と、車両ボディの下部を構成するサイドメンバー5との間に位置している。ロアローラステー12の先端側は、ステップ10の下面側に進入している。ロアローラステー12の先端部に縦ローラ13と横ローラ14がそれぞれ回転自在に支持されている。縦ローラ13は、乗降口プレート4上に転動可能に当接されている。横ローラ14は、ステップ10の下面に設けた横レール部10aに転動可能に支持されている。
【0008】
スライドドアを閉じた状態では、ロアローラステー12がステップ10の右端部10bの側方に位置する。ロアローラステー12には、ステップ変位規制部12aが設けられている。このステップ変位規制部12aは、図示するようにステップ10の右端部10bを挿入可能な凹形状に形成されている。車両側突によりこのロアローラステー12がスライドドアとともに左方へ変位すると、ステップ10の右端部10bがこのステップ変位規制部12a内に嵌り込む。ステップ10の右端部10bがステップ変位規制部12a内に嵌り込むことにより、その板厚方向(上下方向)の変位が規制される。
ステップ10の右端部10bについて板厚方向の変位が規制されることにより、ロアローラステー12を経て付加される大きな側突荷重Fが当該ステップ10に対してより確実に面方向の荷重として付加され、これにより当該ステップ10によって大きな側突荷重Fを受けることができる。
また、ステップ10の左端部10cの側方にサイドメンバー5の右側部5aが位置する。図示するようにサイドメンバー5はいわゆるハット形を有している。このため、サイドメンバー5の右側部5aは、下側ほど左方へ変位する方向に僅かに傾斜している。この右側部5aの傾斜角度に合わせてステップ10の左側部10cも傾斜している。このため、ステップ10の左側部10cはサイドメンバー5の右側部5aに対して平行に設けられている。
ステップ10の左側部10cが、対向するサイドメンバー5の右側部5aに平行に傾斜していることから、車両側突時にステップ10が左方へ変位すると、その左端部10cがサイドメンバー5の右側部5aに全面当たり状態で当接する。ステップ10の左側部10cがサイドメンバー5の右側部5aに全面当たり状態で当接されることにより、当該ステップ10に対して付加される車両側突時の側突荷重Fが効率よくサイドメンバー5で受けられる。
【0009】
以上のように構成した本実施形態のステップ10によれば、格子状の補強リブ11〜11により従来の鋼板製のステップよりも面方向の剛性が高められている。このため、車両側突時にスライドドアに付加される側突荷重Fがこのステップ10によって受けられ、その分だけBピラー3の側突荷重Fに対する分担比率を従来よりも軽減することができる。車両側突時の側突荷重Fに対するBピラー3の荷重分担比率を軽減することができることから、当該Bピラー3を補強するためのリインフォース等の板厚を従来よりも薄くし、あるいは同じくBピラー3を補強するアウトリガーのパッチ(補強板)を省略する等してコストの低減及び車両の軽量化を図ることができる。
本実施形態のステップ10は樹脂製であることから、その片面若しくは両面に格子状の補強リブ11〜11を容易に設けることができる。格子状の補強リブ11〜11を設けることによりステップ10はその面方向(側突荷重Fの付加方向)の剛性を高めることができる。係る格子状の補強リブ11を有しない従来の鋼板製のステップでは、側突荷重Fに対して十分な剛性を持たせることができないため、Bピラーの剛性を高めることにより係る側突荷重Fの大部分を受ける構成となっていた。
【0010】
また、本実施形態のステップ10によれば、その右端部10bがロアローラステー12に設けたステップ変位規制部12a内に嵌り込んでその板厚方向(上下方向)変位が規制されることにより、当該ステップ10により側突荷重Fが面方向の外力として効率よく受けられる。
さらに、ステップ10の、サイドメンバー5の右側部5aに対向する左端部10cがサイドメンバー5の右側部5aに対して平行に設けられている。このため、車両側突時の側突荷重Fによりステップ10が左方向へ押されると、その左端部10cがサイドメンバー5の右側部5aに全面当たり状態で当接される。このことから、車両側突時の側方からの衝撃的な側突荷重Fがより効率よくサイドメンバー5に付加されて吸収される。このように樹脂製のステップ10を介して側突荷重Fをサイドメンバー5でも効率よく受けることができるので、Bピラー3の荷重分担比率を一層軽減してコストの低減及び車両の軽量化を図ることができる。
以上説明した実施形態には種々変更を加えて実施することができる。例えば、運転席後方の右ドア開口部2について説明したが、これに代えて若しくは追加して車両左側部のスライドドア開口部について同様のステップを装備することにより、左方からの側突に対するBピラーの荷重分担比率を軽減することができる。
また、ステップ10の両面に補強リブ11〜11を設けた構成を例示したが、何れか一方の片面にのみ補強リブを設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0011】
1…車両(ワンボックス車両)
2…ドア開口部
3…Bピラー
4…乗降口プレート
5…サイドメンバー、5a…右側部
10…ステップ
10a…横レール部、10b…右側部、10c…左側部
11…補強リブ
12…ロアローラステー、12a…ステップ変位規制部
13…縦ローラ
14…横ローラ
F…側突荷重
図1
図2
図3