特許第5924016号(P5924016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924016
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】車両の超音波センサー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/31 20130101AFI20160516BHJP
   G01S 7/52 20060101ALI20160516BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   B60R25/31
   G01S7/52 D
   G01S7/521 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-27872(P2012-27872)
(22)【出願日】2012年2月11日
(65)【公開番号】特開2013-163464(P2013-163464A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】橘高 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】古澤 明洋
(72)【発明者】
【氏名】稲田 貴裕
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01995114(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0046584(US,A1)
【文献】 特開2003−237540(JP,A)
【文献】 特開2009−031031(JP,A)
【文献】 実開平03−060092(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00 − 25/40
B60R 11/02
G01S 7/52 − 7/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置において、
前記超音波発信手段と前記超音波受信手段との少なくとも一方に、末広がり状のコーンが付設され、
前記コーンの先端部における一方側端部位置よりも、該一方側端部位置に略対向する他方側端部位置の方が、該コーンの基端部寄りとなるように形状設定され、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段はそれぞれ、車室内のルーフ部に配設され、
前記他方側端部位置が、前記一方側端部位置よりも下方に位置するように設定されている、
ことを特徴とする車両の超音波センサー装置。
【請求項2】
請求項において、
前記コーンの軸線が、斜め下方を向くように設定されている、ことを特徴とする車両の超音波センサー装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記コーンは、該コーンの軸線に対して傾斜する面に沿って斜めにカットされた形状とされている、ことを特徴とする車両の超音波センサー装置。
【請求項4】
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置において、
前記超音波発信手段と前記超音波受信手段との少なくとも一方に、末広がり状のコーンが付設され、
前記コーンの先端部における一方側端部位置よりも、該一方側端部位置に略対向する他方側端部位置の方が、該コーンの基端部寄りとなるように形状設定され、
前記コーンは、前記一方側端部位置が上方に前記他方側端部位置が下方に位置するようにして見た側面視において、該コーンの基端部から先端部に向けて該コーンの軸線と平行に伸びる底壁面を有する形状とされて、該底壁面の先端部が該他方側端部位置とされることにより、該底壁面よりも下方には末広がり状部分が存在しない形状に設定されている、
ことを特徴とする車両の超音波センサー装置。
【請求項5】
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置において、
前記超音波発信手段と前記超音波受信手段との両方に、末広がり状のコーンが付設され、
前記両方のコーンはそれぞれ、その先端部における一方側端部位置よりも、該一方側端部位置に略対向する他方側端部位置の方が、該コーンの基端部寄りとなるように形状設定され、
前記超音波発信手段および超音波受信手段はそれぞれ、車室内の前端部または後端部における高所に互いに近接して配設され、
前記両方のコーンはそれぞれ、該両方のコーンの配設位置よりも車室内の前後方向反対側端部に向かうようにかつ斜め下方を向くように配設され、
前記両方のコーンはそれぞれ、前記他方側端部位置が前記一方側端部位置よりも下方に位置するように設定されている、
ことを特徴とする車両の超音波センサー装置。
【請求項6】
請求項5において、
車室内の高所に取付けられる取付部材を有し、
前記取付部材に、前記超音波発信手段と前記超音波受信手段とが保持され、
前記取付部材に、車室内に臨むと共に前記コーンの内面形状を有するコーン形成用凹部が形成されて、該取付部材が前記両方のコーンを兼用している、
ことを特徴とする車両の超音波センサー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内の状態を検出するため、超音波発信手段から車室内に超音波を発信すると共に、車室内に発信された超音波を超音波受信手段で受信することが行われている。特に、受信状態の変化によって、車室内に動く物が存在することが検出できる。すなわち、例えば窃盗者が車室内に手を差し入れたり体ごと侵入した際に、少なからず車室内に動きが生じることとなって受信手段による超音波の受信状態が変化され、窃盗の危険があるということを検出することができる。
【0003】
特許文献1には、車体外部下方に設けた超音波センサによって車体の傾斜状態を検出するものが開示されている。そして、特許文献1のものでは、整流部材およびカバーによって、路面から跳ね上げられる泥等から超音波センサを保護することも開示されている。ただし、特許文献1は、車室内の状態検出とはなんら関係のないものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−171002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波センサによって車室内の状態を検出する場合、検出エリア拡大のため、超音波センサの発信範囲や受信範囲を極力広くする必要がある。このため、超音波発信手段や超音波受信手段に、末広がり状のコーン(アンテナ)を付設することが考えられる。しかしながら、コーンを単に末広がり状に形成したのでは、超音波の指向方向がコーンの軸線方向となるメインビームの他に、上下左右の広い範囲に渡ってサイドロブ(サイドローブ)が生じて、超音波が広く分散してしまうことになる。
【0006】
例えば、超音波発信手段と超音波受信手段とを、車室内前端部におけるルーフ部に近接配設すると共に、メインビームを後方かつ斜め下方を向くように設定した場合を考える。この場合、メインビームによって車室内の前後方向への広い範囲を検出エリアとしてカバーできると共に、下方に向かうサイドロブによって、特に前席(のシートクッション)部分をも検出エリアとしてカバーできることになる。しかしながら、同時に、上方に向かうサイドロブもかなり強いものとなり、この分超音波発信手段や超音波受信手段のエネルギ(消費電力)を無駄に消費してしまうことになる。上方に向かうサイドロブを弱めるために、超音波発信手段や超音波受信手段のエネルギ強度を下げると、下方に向かうサイドロブも弱くなり、前席付近の検出感度が低下してしまうことになる。
【0007】
このような問題を解消するため、例えば、エネルギ強度を弱めた超音波発信手段や超音波受信手段の少なくとも一方を複数設けることも考えられるが、この場合は、超音波発信手段あるいは超音波受信手段の設置数が多くなり、コストや設置スペースの点で好ましくないものとなる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、車室内の状態を超音波を利用して検出する場合に、所望方向とは反対方向のサイドロブを弱めつつ、所望方向のサイドロブを強くできるようにした車両の超音波センサー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、末広がり状のコーンの形状を工夫して、コーンの先端部において、その一方側端部位置よりも他方側端部位置の方がコーンの基端部寄りとなるようにしてある。これにより、一方側端部位置方向へのサイドロブを十分に弱めつつ(不要方向へのサイドロブの低減)、他方側端部位置方向へのサイドロブを十分に強めることができる。
【0010】
具体的には、本発明にあっては、次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置において、
前記超音波発信手段と前記超音波受信手段との少なくとも一方に、末広がり状のコーンが付設され、
前記コーンの先端部における一方側端部位置よりも、該一方側端部位置に略対向する他方側端部位置の方が、該コーンの基端部寄りとなるように形状設定され、
前記超音波発信手段および前記超音波受信手段はそれぞれ、車室内のルーフ部に配設され、
前記他方側端部位置が、前記一方側端部位置よりも下方に位置するように設定されている、
ようにしてある。
【0011】
上記第1の解決手法によれば、コーンの軸線方向への強いメインビームが得られるのは勿論のこと、一方側端部位置方向へのサイドロブを十分に弱めつつ、他方側端部位置方向へのサイドロブを十分に強めることができる。つまり、メインビームの方向の他に、他方側端部位置方向へのサイドロブを利用して検出エリアを設定することができ、この結果、一方側端部位置方向への無駄な超音波を発信あるいは受信しないようにして、超音波発信手段や超音波受信手段のエネルギ強度を高めることなく、かつその設置数を増加させることなく、広い範囲に渡っての検出エリアを設定することが可能となる。勿論、コーン形状を設定するだけでよいので、容易かつ安価に実施化することができる。
【0012】
以上に加えて、車室内の上方空間を有効に利用して超音波の発信手段と受信手段とを配設しつつ、基本的にメインビームによって車室内の広い範囲を検出エリアとしてカバーしつつ、他方側端部位置方向の強いサイドロブによって、検出エリアとして設定するのが難しい車室内の低いエリア、特に超音波の発信手段あるいは受信手段の近くにある足下付近やシートクッション上を検出エリアとしてカバーする上で好ましいものとなる。
【0013】
上記解第1の決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2、請求項3に記載のとおりである。すなわち、
前記コーンの軸線が、斜め下方を向くように設定されている、ようにしてある(請求項対応)。この場合、請求項に対応した効果をより効果的に発揮させる上で好ましいものとなる。
【0014】
前記コーンは、該コーンの軸線に対して傾斜する面に沿って斜めにカットされた形状とされている、ようにしてある(請求項対応)。この場合、コーンの具体的な形状が提供されると共に、コーン形状としても極力簡単なものとすることができる。
【0015】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項4に記載のように、
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置において、
前記超音波発信手段と前記超音波受信手段との少なくとも一方に、末広がり状のコーンが付設され、
前記コーンの先端部における一方側端部位置よりも、該一方側端部位置に略対向する他方側端部位置の方が、該コーンの基端部寄りとなるように形状設定され、
前記コーンは、前記一方側端部位置が上方に前記他方側端部位置が下方に位置するようにして見た側面視において、該コーンの基端部から先端部に向けて該コーンの軸線と平行に伸びる底壁面を有する形状とされて、該底壁面の先端部が該他方側端部位置とされることにより、該底壁面よりも下方には末広がり状部分が存在しない形状に設定されている、
ようにしてある。
上記第2の解決手法によれば、コーンの軸線方向への強いメインビームが得られるのは勿論のこと、一方側端部位置方向へのサイドロブを十分に弱めつつ、他方側端部位置方向へのサイドロブを十分に強めることができる。つまり、メインビームの方向の他に、他方側端部位置方向へのサイドロブを利用して検出エリアを設定することができ、この結果、一方側端部位置方向への無駄な超音波を発信あるいは受信しないようにして、超音波発信手段や超音波受信手段のエネルギ強度を高めることなく、かつその設置数を増加させることなく、広い範囲に渡っての検出エリアを設定することが可能となる。勿論、コーン形状を設定するだけでよいので、容易かつ安価に実施化することができる。
以上に加えて、末広がり状とならない底壁面を有するコーン形状が提供される。また、メインビームをコーンの軸線方向により指向させつつ、他方側端部位置方向へのサイドロブの強さをより強めることができる。
【0016】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項に記載のように、
超音波発信手段から車室内空間に向けて発信された超音波を超音波受信手段で受信して車室内の状態を検出するようにした車両の超音波センサー装置において、
前記超音波発信手段と前記超音波受信手段との両方に、末広がり状のコーンが付設され、
前記両方のコーンはそれぞれ、その先端部における一方側端部位置よりも、該一方側端部位置に略対向する他方側端部位置の方が、該コーンの基端部寄りとなるように形状設定され、
前記超音波発信手段および超音波受信手段はそれぞれ、車室内の前端部または後端部における高所に互いに近接して配設され、
前記両方のコーンはそれぞれ、該両方のコーンの配設位置よりも車室内の前後方向反対側端部に向かうようにかつ斜め下方を向くように配設され、
前記両方のコーンはそれぞれ、前記他方側端部位置が前記一方側端部位置よりも下方に位置するように設定されている、
ようにしてある。
【0018】
上記第の解決手法によれば、超音波発信手段および超音波受信手段のいずれも、請求項1に対応した効果を得ることのできるコーン形状を有するので、請求項1に対応した効果をより一層十分に発揮させる上で好ましいものとなる。
【0019】
以上に加えて、車室内の高所を有効に利用して超音波の発信手段および受信手段を配設することができ、また車室内の前後方向の広い範囲に渡ってメインビームによって検出エリアを設定でき、さらに他方側端部位置方向のサイドロブによって車室内の低所、特に超音波の発信手段および受信手段に近い位置における低所を検出エリアとして設定する上で好ましいものとなる。
【0020】
上記第3の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項6に記載のとおりである。すなわち、
車室内の高所に取付けられる取付部材を有し、
前記取付部材に、前記超音波発信手段と前記超音波受信手段とが保持され、
前記取付部材に、車室内に臨むと共に前記コーンの内面形状を有するコーン形成用凹部が形成されて、該取付部材が前記両方のコーンを兼用している、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、取付部材を超音波の発信手段および受信手段の両方についてのコーンとして兼用させて、コスト低減や設置スペース低減等の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所望方向とは反対方向のサイドロブを弱めつつ、所望方向のサイドロブを強くできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す簡略側面図。
図2】車室内前端部におけるルーフ部に設けられると共に超音波発信手段と超音波受信手段とが組み込まれたユニット体を後下方から見た要部斜視図。
図3図2のユニット体の分解斜視図。
図4】超音波センサー装置を用いた盗難防止用の制御系統例を示すブロック図。
図5】コーンの一例を示す側面図。
図6図5に示すコーンの超音波発信(超音波受信)状態を示す特性図。
図7図5に示すコーンを車載用に具体化した場合の斜視図。
図8図7に示すコーンをその先端部側から見た正面図。
図9図7に示すコーンの側面図。
図10図7に示すコーンの側面断面図。
図11図7に示すコーンを上方から見た上面図。
図12図10のX12−X12線相当断面図。
図13】コーンの別の例を示す側面図。
図14図13に示すコーンの超音波発信(超音波受信)状態を示す特性図。
図15図13に示すコーンを車載用に具体化した場合の斜視図。
図16図13に示すコーンをその先端部側から見た正面図。
図17図13に示すコーンの側面図。
図18図13に示すコーンの側面断面図。
図19図13に示すコーンを上方から見た上面図。
図20図18のX20−X20線相当断面図。
図21】コーンのさらに別の例を示す側面図。
図22図21に示すコーンの側面断面図。
図23図21に示すコーンをその先端部側から見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1において、Vは、本発明が適用された車両である、車両Vは、実施形態ではワゴン型の自動車とされているが、セダン型、2ドア型、1ボックス型、バス、トラック等、車両Vの形式は特に問わないものである。
【0024】
車両Vの車室内の前端部高所(実施形態ではルーフ部)のうち左右方向(車幅方向)中間部には、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとが互いに近接して配設されている。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとによる検出エリアAがハッチングを付して示される。この検出エリアAは、車室内の前後方向ほぼ全範囲で、かつ超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとの直下方付近における車室内低所(足下や前席のシートクッション上等)も検出エリアAとして含まれるようになっている。このような検出エリアAの設定のため、超音波発信手段Tによる超音波発信方向と超音波受信手段Rによる超音波受信方向とが、大別して、後方かつ斜め下方を向いたメインビーム方向X1と、斜め下方を向く下向きサイドロブ方向X2となるように設定されている。
【0025】
図3に示すように、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとは、車室内前端部のルーフ部に固定されるユニット体Uに組み込まれ、車体への組込み状態が図2に示される。このユニット体Uは、センサユニット1と、取付部材2と、カバー部材3とを有する。取付部材2の前面側に対して、センサユニット1が固定される。また、取付部材2の後面側に、カバー部材3が固定される。
【0026】
取付部材2は、左右一対の取付孔部4,5を有する。取付孔部4に、センサユニット1に接続された超音波発信手段T(の超音波振動子)が嵌合,保持される。また、取付孔部5に、センサユニット1に接続された超音波受信手段R(の超音波振動子)が嵌合、保持される。なお、超音波発信手段T(超音波振動子)は、センサユニット1から駆動電圧を受けて振動されて、超音波を発信する。また、超音波受信手段R(超音波振動子)は、超音波を受けると電圧を発生し、発生された電圧はセンサユニット1によってA/D変換されて、後述する盗難防止の制御のための信号として用いられる。
【0027】
取付部材2には、取付孔部4(つまり超音波発信手段T)に連なると共に後方が車室内に開口された発信用のコーン形成用凹部6が形成されている。同様に、取付部材2には、取付孔部5(つまり超音波受信手段R)に連なると共に後方が車室内に開口された受信用のコーン形成用凹部7が形成されている。このように、取付部材2は、超音波発信手段Tおよび超音波受信手段Rのコーンを兼用している。なお、コーン形成用凹部6,7の具体的な形状については後述する。
【0028】
取付部材2の後面側に固定されたカバー部材3は、コーン形成用凹部6,7に対応した位置において、超音波通過用のスリット状の開口部10,11を有する。また、カバー部材3は、左右一対の車室照明ランプ12が組み込まれており、この照明ランプ12は、例えばプッシュ式のスイッチを兼用していて、押圧操作される毎に、ON、OFF(点灯、消灯)が繰り返される他、切換スイッチ13によって、常時消灯、常時点灯、ドアを開いたときにのみ点灯の3つものモードが切換えられる。
【0029】
図4は、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとが組み込まれた盗難防止用の制御系統例が示される。この図4において、Cはマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)、20は警報器である。超音波発信手段Tから車室内に発信された超音波が超音波受信手段Rによって受信されるが、この受信状態は、車室内に動くものが存在しない定常状態と、動くものが存在する異常状態とで相違される。すなわち、車室内に動くものが存在すると、定常状態に比してドップラー効果が変化されるので、盗難の危険がある異常状態であると判断可能である。上記定常状態であるか異常状態であるかの判断は、コントローラCで行われる。
【0030】
コントローラCによって異常状態であると判断されると、警報器20が作動される。警報器20の作動としては、周囲に異常を伝達する手法であれば適宜のものを採択することができ、例えば大音量での警報音を発生させたり(警報器20としてスピーカを利用)、スモールランプを点滅させる等(警報器20として車幅灯を利用)、これらを組み合わせて作動させることもできる。なお、警報器20の作動条件として、車両Vのドアが全てロックされている状態であることが前提とされる。なお、センサユニットUにコントローラCの機能を持たせて、センサユニットUによって直接的に警報器20の作動を制御するようにしてもよい。
【0031】
次に、図5を参照しつつ、超音波発信手段Tおよび超音波受信手段Rに付設されるコーン30について説明する。なお、コーン30は、発信用と受信用とで共通の形状(大きさも同じ)とされており、したがって以下説明では、超音波発信手段Tに着目した説明を行うこととする。勿論、コーン30は、前述した取付部材2に形成されたコーン形成用凹部6,7の形状に相当するものである(コーン30の内面形状と同じ形状となるように、コーン形成用凹部6,7の形状が設定される)。なお、コーン30の基端部側には、超音波発信手段Tが嵌合保持される取付筒部31(取付部材2の取付孔部4、5に対応)が一体的に形成されている。
【0032】
コーン30は、取付筒部31の先端部から円錐状に広がる末広がり状の形状としつつ、その先端部における一方側端部位置αよりも、これに対向する他方側端部位置βの方が、コーン30の基端部寄り(取付筒部31寄り)に位置するように形状設定されている。換言すれば、図5中、破線で示す部分を含む円錐状の末広がり形状に対して、コーン30の軸線に対して傾斜する傾斜面γに沿ってカットされた形状とされている。一方側端部位置αが上方に位置され、他方側端部位置βが下方に位置されるようにした図5の側面視状態において、発信される超音波は、図6に示すように、コーン30のほぼ軸線方向に沿って進むメインビームMと、メインビームMよりも斜め下方に進む下向きサイドロブSとされる。そして、メインビームMが、図1におけるX1方向となるように、かつ下向きサイドロブSが図1におけるX2方向となるように、車室内におけるコーン30の向きが設定される。
【0033】
コーン30の形状設定に際しては、次のような条件を満足するようにされている。すなわち、超音波発信手段Tの直径(つまり取付筒部31の内径)をD、コーン30の開口直径をL、コーン30の指向角度(広がり角度)をθ、超音波の波長をλとすると、次の(1)式を満足するようにされている。
【0034】
θ=70×(λ/D)かつL≧2λ ・・・(1)
上述したコーン30を、車載用としてより具体化して構造が、図7図12に示される。この図7図12から、コーン30の形状がより明確に理解される。なお、図7図12では、図8から理解されるように、コーン30は円錐状に末広がりとなっていて、コーン30の軸線方向への伸びる長さが、一方側端部位置α方向には長くされ、他方側端部位置β方向には短くされている。なお、平面視(車室内を上方から見たとき)において、コーン30の左右方向(車室内左右方向に相当)には、サイドロブが左右ほぼ均等に広がって進むことになり、検出エリアAが車室内の左右方向においては十分に確保されるものである。
【0035】
ここで、コーンの周壁部について補足説明する。コーン30の先端面がコーン30の基端部に対してなす距離は、他方側端部位置βに対して周方向に離間するに従って(一方側端部位置αに近づくにしたがって)徐々に大きくなるようにされる。この徐々なる離間距離の変化は、線形的に変化するようにしてもよく、コーン30の先端側に向けて凸となるように湾曲して変化するようにしてもよく、コーン30の基端側に向けて凸となるように湾曲して変化するようにする等、適宜選択できるものである。
【0036】
図13は本発明の別の実施形態を示すものである。本実施形態では、コーン30B(前記実施形態におけるコーン30に対応)が、円錐状に末広がりとされている形状(図中破線を含む形状)から、破線で示す部分を除去した形状となっている。具体的には、破線を含む形状から、コーン30Bの軸線に対して傾斜する傾斜面に沿ってカットされて、他方側端部位置βが、コーン30Bの基端部になるように形成されている。換言すれば、コーン30Bは、その底壁面が実質的に存在しない形状とされている。
【0037】
図14に示すような形状のコーン30Bを用いて発信される超音波は、図14に示すように、コーン30Bのほぼ軸線方向に沿って進むメインビームM2と、メインビームM2よりも斜め下方に進む下向きサイドロブS2とされる。そして、メインビームM2が、図1におけるX1方向となるように、かつ下向きサイドロブS2が図1におけるX2方向となるように、車室内におけるコーン30Bの向きが設定される。本実施形態の場合、図6と比較して明かなように、下向きサイドロブS2とメインビームM2とがより明確に分離されたものとなる。
【0038】
上述したコーン30Bを、車載用としてより具体化した構造が、図15図20に示される。この図15図20からコーン30Bの形状がより明確に理解される。なお、図15図20では、図16から理解されるように、コーン30Bは円錐状に末広がりとなっていて、コーン30Bの軸線方向への伸びる長さが、一方側端部位置α方向には長くされ、他方側端部位置β方向には極端に短くされて、実質的に底壁面を殆ど有しない形状とされている。なお、平面視(車室内を上方から見たとき)において、コーン30Bの左右方向(車室内左右方向に相当)には、サイドロブが左右ほぼ均等に広がって進むことになり、検出エリアAが車室内の左右方向においては十分に確保されるものである。なお、取付部材2に形成されたコーン形成用凹部6、7の形状は、コーン30Bの形状(内面形状)に対応した形状とされる。
【0039】
図21図23は、本発明のさらに別の実施形態を示すものである。本実施形態では、コーン30Cが、図13に示す実施形態の形状に対して、底壁面32を長く有することである。具体的には、底壁面32は、末広がりとされることなく、コーン30Cの軸線方向に沿って該軸線と平行に伸びている。そして、コーン30Cは、その先端側から見た図23から理解されるように、左右方向に細長い扁平形状とされている(略半楕円形状)。このようなコーン30Cを用いて発信される超音波の特性は、図6図14の中間の特性となる。勿論、左右方向にはサイドロブがほぼ均等に広がって進むことになる。なお、取付部材2に形成されたコーン形成用凹部6、7の形状は、コーン30Cの形状(内面形状)に対応した形状とされる。なお、コーン30Cをその先端面側から見た形状は、円形の場合よりも、上下方向(位置αとβとを結ぶ方向)に扁平な形状(例えば図23に示すような略楕円形状等)とした方が、下向きサイドロブをより強く得る上で好ましいものとなる。
【0040】
図6図14に示す超音波の発信特性は、超音波発信手段Rについては超音波の受信特性となる。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rを車両Vに搭載した設置状態では、超音波発信手段T用と超音波受信手段R用とでコーン30(30B、30C)が共通とされる(取付部材2に形成されたコーン形成用凹部6と7の形状が互いに同じ)。また、メインビームM(M2)と下向きサイドロブS(S2)との向きが、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとで互いに同一方向となるように設定される。これにより、発信された超音波を効率的に受信する上で好ましいものとなる。
【0041】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。取付部材2を利用することなく、コーン30、30Bあるいは30Cに対応した部材を別途独立して設けるようにすることもできる。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとのいずれか一方のコーンを、図5図13あるいは図21に示すようなものとして、他方のコーンについては従来同様の形状としてもよい(例えば図5図13破線部分を含む形状に設定)。
【0042】
超音波発信手段Tを複数設けてもよく、超音波受信手段Rを複数設けてもよい。また、超音波発信手段Tの数と超音波受信手段Rの数とが相違していてもよいものである。超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとの設置位置は適宜選択できるものであり、例えば、フロントウインドガラスの上部位置、リアウインドガラスの上部位置、車室内後端部のルーフ部、リアパッケージトレイ上、インストルメントパネル上面等々、適宜選択でき、また超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとを離れた場所に設置するようにしてもよい(例えば、超音波発信手段Tを車室内前端部におけるルーフ部に設置し、超音波受信手段Rを車室内後端部のルーフ部に設置する等)。もっとも、超音波発信手段Tと超音波受信手段Rとは、互いに近接配置しておくことが、超音波発信方向と超音波受信方向とを一致させる上で好ましく、また制御系を含めて関連部品を集中配置する等の上で好ましいものとなる。本発明装置は、盗難防止以外に、乗員の有無検出や、乗員の居る位置の検出等、適宜の用途に利用できる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば車両の盗難防止装置用として適用して好適である。
【符号の説明】
【0044】
V:車両
T:超音波発信手段
R:超音波受信手段
X1:メインビーム方向
X2:下向きサイドロブ方向
A:検出エリア
U:ユニット体
C:コントローラ
1:センサユニット
2:取付部材
3:カバー部材
4、5:取付孔部
6、7:コーン形成用凹部
20:警報器
30:コーン(図5図7図12
30B:コーン(図13図15図20
30C:コーン(図21図23
31:取付筒部
32:底壁面(図21図23
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23