(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924024
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】服薬確認装置および服薬確認システム
(51)【国際特許分類】
A61J 7/00 20060101AFI20160516BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
A61J7/00 L
G06T1/00 200B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-33955(P2012-33955)
(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-169277(P2013-169277A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 洋一
(72)【発明者】
【氏名】今井 潤
(72)【発明者】
【氏名】松永 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】小原 拓
(72)【発明者】
【氏名】川合 洋子
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 典子
【審査官】
久郷 明義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−170504(JP,A)
【文献】
特開2011−212231(JP,A)
【文献】
実開昭62−027624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬を服用するときに使用されるコップやスプーンなどの服薬補助具に取り付けて使用される服薬確認装置であって、
前記服薬補助具を使用するときに口内の画像を含む画像情報を取得可能に設けられた画像取得手段を有することを特徴とする服薬確認装置。
【請求項2】
前記画像取得手段は、前記画像として、口内の薬の形、薬の色、舌の色、舌の表面状態、顔面の状態および唇の状態のうち少なくとも一つを記録可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の服薬確認装置。
【請求項3】
前記画像取得手段は口内の動画または静止画像を連続的または所定の時間間隔で取得可能であり、
前記画像情報は前記画像の取得日時を含むことを
特徴とする請求項1または2記載の服薬確認装置。
【請求項4】
前記画像取得手段に稼働用の電力を供給する電源と、
前記服薬補助具を使用するときに、前記画像取得手段を稼働させるよう構成された制御手段と、
前記画像取得手段で取得した画像情報の、無線送信および保存の少なくともいずれか一方を行うよう構成された保持処理手段とを、
有することを特徴とする請求項1、2または3記載の服薬確認装置。
【請求項5】
前記服薬補助具は水を飲むための容器から成り、
前記制御手段は、前記画像取得手段による画像取得のタイミングを得るためのセンサを有していることを
特徴とする請求項4記載の服薬確認装置。
【請求項6】
前記センサは、前記容器内に設けられた傾きセンサまたは水検知センサから成ることを特徴とする請求項5記載の服薬確認装置。
【請求項7】
前記服薬補助具に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の服薬確認装置。
【請求項8】
充電部を有し、
前記電源は充電式電池から成り、
前記充電部は、少なくとも前記服薬補助具の未使用時に、前記電源を充電可能に設けられていることを
特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の服薬確認装置。
【請求項9】
薬を服用するときに使用されるコップやスプーンなどの服薬補助具と、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の服薬確認装置と、受信部13と、保存部とを有し、
前記保持処理手段は前記画像取得手段で取得した画像情報を無線送信可能に設けられ、
前記受信部13は前記保持処理手段から無線送信された画像情報を受信可能に設けられ、
前記保存部は前記受信部13で受信された画像情報を保存可能に設けられていることを
特徴とする服薬確認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服薬確認装置および服薬確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬の服用について、薬の飲み忘れや飲み間違いにより治療効果が上がらない、健康を損なうなどの事例が多く見られ、医療費における経済的損失が莫大なものになっている。また、副作用を過度に嫌うことや、医師への気遣いによる飲んだふりもあり、信頼性の高い服薬記録が求められる新薬治験の際には、特に大きな問題となっている。そこで、薬による治療効果を高めるため、また、治療や治験を行う際の薬の効果を正確に把握するために、患者や治験の被験者が、与えられた薬を時間通りにきちんと服用したかどうかを正確に確認することが重要な課題となっている。
【0003】
服薬を確認する方法として、一般に、「お薬手帳」等に自己申告で記録する方法や、患者や被験者に面接して聞き取りを行う方法が行われている。しかし、これらの方法では、手帳への記入ミスや、データベースに入力する際の入力ミスが発生したり、記憶が曖昧になって正確な情報が得られなかったり、虚偽の報告をしたりすることがあるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、1回の服用分毎に薬を分けて収納できる薬ケースに薬を入れておき、薬ケースから薬が取り出されたのを検知して、取出時間を記録する服薬確認装置が提案されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−181137号公報
【特許文献2】特開2007−175263号公報
【特許文献3】特開2011−30934号公報
【特許文献4】特開2010−170504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1乃至4に記載の服薬確認装置では、薬ケースから薬を取り出したにもかかわらずその薬を飲み忘れたり、取り出してから服用するまでに時間がかかったりした場合には、正確な服薬情報を得ることができないという課題があった。また、使用方法によっては、薬ケースを含む確認装置に対して、患者や被験者による操作が必要になる場合もあり、患者や被験者の負担が増すという課題もあった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、患者や被験者の負担が少なく、正確な服薬情報を得ることができる服薬確認装置および服薬確認システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る服薬確認装置は、薬を服用するときに使用されるコップやスプーンなどの服薬補助具に取り付けて使用される服薬確認装置であって、前記服薬補助具を使用するときに口内の画像を含む画像情報を取得可能に設けられた画像取得手段を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る服薬確認装置は、薬を服用するためにコップやスプーンなどの服薬補助具を使用する際、画像取得手段で口内の画像を含む画像情報を取得することにより、薬を口の中に入れて、今まさに飲もうとする状態の画像を得ることができる。このため、得られた画像により、薬を服用したことを確実に確認することができ、正確な服薬情報を得ることができる。これにより、治療や治験を行う際の薬の効果や、薬による治療状況を正確に把握することができ、以後の治療計画や治験計画に役立てることができる。
【0010】
また、画像取得手段が服薬補助具に取り付けられており、患者や被験者がいつも通りに薬を服用する動作の中で、口内の画像を取得することができるため、患者や被験者が何らかの特別な行動をする必要がなく、患者や被験者の負担が少ない。本発明に係る服薬確認装置は、薬の服用状態を画像として取得するため、錠剤やカプセル、散剤、液体薬など、薬の形態によらず使用することができる。画像取得手段は、取得した画像から薬の種類が把握できる解像度を有していることが好ましい。また、画像取得手段は、画像情報の取得を手動で行うよう構成されていてもよく、自動で行うよう構成されていてもよい。取得する画像は、動画であっても静止画であってもよい。
【0011】
本発明に係る服薬確認装置で、画像取得手段は、その視野範囲が口の周辺を超えて広がっていてもよい。この場合、使用者により異なる最適な撮像範囲の違いに広く対応することができ、かつ、誰が飲んでいるかを判断するための画像情報も取得することができる。また、誰が飲んでいるかを判断するための画像情報を得るため、使用者の顔の画像を取得可能に設けられた顔面画像取得手段を有していてもよい。この場合、誰が飲んでいるか判断できるため、1つの服薬補助具を複数の使用者で共用して使用することができる。
【0012】
本発明に係る服薬確認装置で、前記画像取得手段は、前記画像として、口内の薬の形、薬の色、舌の色、舌の表面状態、顔面の状態および唇の状態のうち少なくとも一つを記録可能に構成されていることが好ましい。この場合、口内の薬の形や薬の色を画像として記録することにより、薬の種類を把握することができ、正確な服薬情報を得ることができる。また、服薬記録に加えて、舌の色や表面状態、顔面や唇の状態を画像として記録することにより、より精度の高い診断や、より適切な健康管理を行うことができる。
【0013】
本発明に係る服薬確認装置で、前記画像取得手段は口内の動画または静止画像を連続的または所定の時間間隔で取得可能であり、前記画像情報は前記画像の取得日時を含むことが好ましい。この場合、口内の画像を、連続画像から成る映像や、所定の時間間隔で撮影する連写により得られた複数の画像などにより得ることができる。このため、口内に薬が入っている状態から、薬を飲むまでの状態を画像として取得することができ、薬を服用したことをより確実に確認することができる。また、画像とともにその画像の取得日時を取得することにより、正確な服薬日時を得ることができる。また、画像情報は、患者または治験の被験者自身の姿を含んでもよい。
【0014】
本発明に係る服薬確認装置は、前記画像取得手段に稼働用の電力を供給する電源と、前記服薬補助具を使用するときに、前記画像取得手段を稼働させるよう構成された制御手段と、前記画像取得手段で取得した画像情報の、無線送信および保存の少なくともいずれか一方を行うよう構成された保持処理手段とを、有することが好ましい。この場合、制御手段により、薬を服用するときの画像情報のみを自動的に取得するよう画像取得手段を制御することができる。これにより、保持処理手段による無線送信や保存の際に扱う画像情報の情報量をできるだけ小さくすることができる。
【0015】
保持処理手段で画像情報を無線送信する場合、送信先で画像情報を利用したり保存したりすることができる。また、保持処理手段で画像情報を保存する場合、後で保存された画像情報を取り出して、利用したり別の場所に保存したりすることができる。保持処理手段で画像情報を無線送信および保存の双方が可能な場合、無線送信できないときに画像情報を保存しておき、無線送信可能になったとき保存していた画像情報を無線送信するよう構成されていることが好ましい。無線送信を利用することにより、服薬補助具を使用する際に、ケーブル等が邪魔にならない。
【0016】
本発明に係る服薬確認装置で、前記服薬補助具は水を飲むための容器から成り、前記制御手段は、前記画像取得手段による画像取得のタイミングを得るためのセンサを有していることが好ましい。また、前記センサは、前記容器内に設けられた傾きセンサまたは水検知センサから成っていてもよい。センサが傾きセンサから成る場合、水を飲むために容器を傾けたとき、傾きセンサが傾きを検知している間、画像取得手段を稼働させるよう構成されていることが好ましい。また、センサが水検知センサから成る場合、水を飲むために容器を傾けたとき容器の内部の水を検知可能に、容器の内面に水検知センサを取り付け、水検知センサが水を検知している間、画像取得手段を稼働させるよう構成されていることが好ましい。これらの場合、口内に薬を入れて、今まさに水で薬を飲もうとしている状態から、薬を飲むまでの状態を画像として取得することができる。このため、短い画像取得時間でも、薬を服用したことを確実に確認することができる。
【0017】
本発明に係る服薬確認装置は、前記服薬補助具に着脱可能に設けられていてもよい。この場合、既存の服薬補助具に後付けで取り付けることができる。このため、例えば、患者や被験者が普段使用している服薬補助具に取り付けたり、服薬補助具を交換する際に新しい服薬補助具に付け替えたりすることができる。これにより、製造コストや運用コストを低減することができる。
【0018】
本発明に係る服薬確認装置は、充電部を有し、前記電源は充電式電池から成り、前記充電部は、少なくとも前記服薬補助具の未使用時に、前記電源を充電可能に設けられていることが好ましい。この場合、服薬補助具の未使用時に電源の充電式電池が充電されるため、次に服薬補助具を使用するときに、電池切れにより画像情報が得られなくなるのを防ぐことができる。充電部および電源は、互いに無接点で充電可能に構成されていることが好ましい。この場合、充電用の端子が露出しないため、充電用の端子が水で濡れるのを防ぐことができ、服薬補助具を洗いやすい。
【0019】
また、本発明に係る服薬確認装置は、服薬補助具を使用するときに、口唇粘膜を介した計測または唾液を用いた成分分析を行う計測分析手段を有し、保持処理手段は、計測分析手段によるデータを画像情報に含めて、無線送信および保存の少なくともいずれか一方を行うよう構成されていてもよい。この場合、口唇粘膜を介した計測や、唾液を用いた成分分析を行うことにより、より精度の高い診断や、より適切な健康管理を行うことができる。
【0020】
本発明に係る服薬確認システムは、薬を服用するときに使用されるコップやスプーンなどの服薬補助具と、本発明に係る服薬確認装置と、受信部と、保存部とを有し、前記保持処理手段は前記画像取得手段で取得した画像情報を無線送信可能に設けられ、前記受信部は前記保持処理手段から無線送信された画像情報を受信可能に設けられ、前記保存部は前記受信部で受信された画像情報を保存可能に設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る服薬確認システムは、本発明に係る服薬確認装置を有しているため、患者や被験者の負担が少なく、正確な服薬情報を得ることができる。得られた画像情報は、服薬補助具に内蔵された保存部に記録されてもよく、また、受信部と一体に設けられた保存部に保存されてもよく、また、受信部からゲートウェイを介して接続されたサーバーに保存されてもよい。受信部と一体に設けられた保存部に保存することにより、送信に時間がかかる動画も撮像後に時間をかけて送ることが可能になる。また、サーバーに保存することにより、使用者以外の集約した記録の参照や管理が可能になる。
【0022】
本発明に係る服薬確認システムは、保存部に保存された画像情報を表示する表示部や、画像情報に対して画像処理や各種解析などを行うための解析処理部を有していてもよい。解析処理部を有する場合、同じ種類で複数個の薬や、複数種の薬が同時に画像情報として得られた場合であっても、画像情報に対して薬の形態や色などの画像処理や各種解析などを行い、あらかじめ登録したデータベースを用いて薬の種類や数を区別することもできる。また、種類ごと個別に薬を格納し、蓋の開閉を記録送信する機能を持った電子薬箱と組み合わせることにより、使用者が飲む直前に薬箱から取り出した薬の情報と照らし合わせることができ、薬の種類や数などを判断する精度を高めることができる。解析処理部は、服薬補助具に内蔵されていてもよい。
【0023】
本発明に係る服薬確認システムは、取得画像に薬が含まれる確率を上げるため、使用開始前に患者や被験者が練習することが可能な学習システムを有していてもよい。この学習システムとしては、例えば、患者や被験者が口内の画像を見ながら練習することができる構成など考えられる。また、取得画像に薬が含まれる確率を上げるため、薬を飲む直前に、十分口が開いていないことを警告可能な警告部や、服薬後に取得画像に薬が含まれていなかったことを報告する報告部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、患者や被験者の負担が少なく、正確な服薬情報を得ることができる服薬確認装置および服薬確認システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態の服薬確認システムの、服薬補助具および服薬確認装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態の服薬確認システムの、全体構成を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態の服薬確認システムの、使用後の状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態の服薬確認システムの、服薬確認装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図4は、本発明の実施の形態の服薬確認装置および服薬確認システムを示している。
図1乃至
図3に示すように、服薬確認システム10は、服薬補助具11と服薬確認装置12と受信部13と処理装置14と充電部15とを有している。
【0027】
図1に示すように、服薬補助具11は、薬を服用するときに使用される、水を飲むためのコップから成っている。服薬補助具11は、取っ手付きのコップ形状の本体21と、水を入れる容器部22と、本体21と容器部22との隙間に形成された収納部23とを有している。容器部22は、上部に開口を有する形状を成し、本体21の内部に設けられている。容器部22は、取っ手を持って本体21から水を飲むときに口を付ける側の側縁寄りに配置されている。また、容器部22は、底面と本体21の底部との間に隙間をあけて配置されている。
【0028】
収納部23は、本体21の内側面と容器部22の外側面との間の空間と、容器部22の底面と本体21の底部との間の空間とで構成されている。なお、服薬補助具11は、コップ以外でも、薬を服用するときに使用されるものであればいかなるものから成っていてもよく、例えば、スプーン等から成っていてもよい。また、服薬補助具11は、使用者の負担を軽減するため、水を含めた重量が300g以下であることが好ましい。容器部22の容量は、使用者が薬を飲むときに十分な水の量として150ml以上であることが好ましい。
【0029】
服薬確認装置12は、主に服薬補助具11の収納部23に取り付けられており、画像取得手段24と電源25と保持処理手段26と制御手段27とを有している。画像取得手段24は、小型のJPEGカメラから成り、高解像度で、防水性能およびオートフォーカス機能を有している。画像取得手段24は、容器部22とは反対側の本体21の上部に取り付けられている。画像取得手段24は、取っ手を持って服薬補助具11の容器部22から水を飲むとき、開けた口の内部を撮影可能に、位置や角度を調整して取り付けられている。画像取得手段24は、撮影時に口の内部を照らすための照明を有していてもよい。画像取得手段24は、所定の時間間隔で連写し、画像の撮影日時を画像中に記録可能になっている。なお、画像取得手段24は、口内の映像を連続的に撮影可能なビデオカメラから成っていてもよい。
【0030】
電源25は、無接点での充電が可能な充電式電池から成り、防水性を有している。電源25は、収納部23内の服薬補助具11の底部に取り付けられている。電源25は、画像取得手段24、制御手段27および保持処理手段26に電力を供給するよう設けられている。
【0031】
保持処理手段26は、デジタルデータを無線送信および保存可能な、市販のデータカードから成り、容器部22とは反対側の本体21の内側面に設けられている。保持処理手段26は、水に濡れないよう、防水処理が施されている。保持処理手段26は、データを送信するための送信部26aを有している。保持処理手段26は、取得したデータを一旦保存し、受信部13との間で無線送信可能なときには送信部26aから無線送信し、無線送信できないときにはデータをそのまま保存しておき、無線送信可能になったときに保存していたデータを無線送信するよう構成されている。無線送信の規格は、通信距離や通信速度などに応じて、Bluetooth(登録商標)や無線LANなど、いかなるものであってもよい。
【0032】
制御手段27は、水検知センサ28とマイクロプロセッサ29とを有している。水検知センサ28は、電極から成り、取っ手を持って服薬補助具11の容器から水を飲むときの、口を付ける側の容器部22の内面上部に取り付けられている。水検知センサ28は、清潔さを保つため、絶縁体を介して静電容量変化を検知する静電型センサから成っている。水検知センサ28は、水を飲むために服薬補助具11を傾けたとき、容器部22の内部の水の移動による電極の静電容量の変化を計測することにより水を検知可能になっている。
【0033】
マイクロプロセッサ29は、水検知センサ28と画像取得手段24と保持処理手段26とに接続され、容器部22とは反対側の本体21の内側面に設けられている。マイクロプロセッサ29は、水に濡れないよう、防水処理が施されている。マイクロプロセッサ29は、水検知センサ28が水を検知していないとき、電源25から画像取得手段24への電力供給を止め、水検知センサ28が水を検知している間は、画像取得手段24に電源25からの電力を供給して画像取得手段24を稼働させるよう構成されている。
【0034】
また、マイクロプロセッサ29は、画像取得手段24で画像を取得したとき、その画像と撮影日時とを含む画像情報を画像取得手段24から受け取って保持処理手段26に送るよう構成されている。これにより、保持処理手段26に画像情報を一旦保存して、保持処理手段26から画像情報を無線送信するようになっている。なお、画像取得手段24による撮影時に撮影日時を画像中に記録するのではなく、マイクロプロセッサ29が、画像取得手段24から画像を受け取ったときに、その日時を撮影日時として画像データに付与し、画像情報としてもよい。
【0035】
受信部13は、保持処理手段26から無線送信された画像情報を受信可能に設けられたルータから成っている。受信部13は、保持処理手段26の無線通信の規格に合わせて、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどの規格を有している。なお、受信部13は、ルータの他にも、例えば、携帯端末やパーソナルコンピュータ端末に装備された無線受信装置等から成っていてもよい。
【0036】
図2に示すように、処理装置14は、パーソナルコンピュータまたは携帯電話から成り、保存部31と解析処理部32と表示部33とを有している。処理装置14は、LANやインターネットなどの有線または無線で、受信部13に接続されている。また、処理装置14は、データ保存用のサーバー16を介して受信部13に接続されていてもよい。保存部31は、メモリから成り、受信部13で受信された画像情報を直接、またはサーバー16を介して受け取って保存可能に設けられている。解析処理部32は、保存部31に保存された画像情報に対して画像処理や各種解析などを行うよう構成されている。解析処理部32は、例えば、同じ種類で複数個の薬や、複数種の薬が同時に画像情報として得られた場合であっても、画像情報に対して薬の形態や色などの画像処理や各種解析などを行い、あらかじめ登録したデータベースを用いて薬の種類や数を区別可能になっていてもよい。表示部33は、モニタから成り、保存部31に保存された画像情報や、解析処理部32による処理結果等を表示するよう構成されている。
【0037】
図3に示すように、充電部15は、服薬補助具11を載置可能な台から成っている。充電部15は、服薬補助具11の使用後や未使用時に服薬補助具11を載せたとき、電源25を充電可能に構成されている。充電部15は、誘電結合を用いた無接点のワイヤレス給電により、電源25を充電可能になっている。なお、充電部15および電源25は、互いに無接点で充電可能であるため、それぞれ充電用の端子を露出させないように構成されている。また、充電部15は、服薬確認装置12の構成要素であってもよい。
【0038】
なお、
図1および
図2に示す具体的な一例では、保持処理手段26は、無線LANによる無線通信が可能な、Eye−Fi社製の「Eye−Fi(登録商標)」カードから成っている。また、受信部13は、ゲートウェイの一種である、無線LANを受信可能なルータから成っている。画像取得手段24は、連写により、0.8乃至0.9秒に1枚、画像を取得可能になっている。これにより、一回の服薬時に、10〜20枚程度の画像が得られる。
【0039】
服薬確認システム10は、以下のようにして使用される。
図2に示すように、患者1や被験者が薬を飲むときには、まず服薬補助具11の容器部22に水を入れ、薬を口の中に入れ、服薬補助具11を傾けて水を飲み、水と共に薬を飲み込む。服薬補助具11から水を飲むとき、服薬補助具11を傾けると、制御手段27の水検知センサ28が作動して水を検知し、画像取得手段24へ電源25から電力が供給される。電力が供給されると画像取得手段24が連写による撮影を開始し、水を飲み終わって水検知センサ28が水を検知しなくなるまで、撮影を続ける。これにより、口内に薬を入れて、今まさに水で薬を飲もうとしている状態から、薬を飲むまでの状態を、短時間間隔で撮影された複数の画像として自動で取得することができる。このため、薬を服用する瞬間を逃さず確実に、画像で確認することができる。また、画像とともにその画像の取得日時も得られるため、服薬日時を含む正確な服薬情報を得ることができる。
【0040】
画像取得手段24により得られた画像情報は、無線通信を介して、保持処理手段26から受信部13に送られ、さらにサーバー16や処理装置14に送られて、サーバー16や保存部31に保存される。これにより、得られた画像情報をいつでも利用することができる。得られた画像情報に基づいて、患者1や被験者本人、医療関係者2、支援者3らが、治療や治験を行う際の薬の効果や、薬による治療状況を正確に把握することができ、以後の治療計画や治験計画に役立てることができる。
【0041】
なお、
図3に示すように、服薬後は、服薬補助具11を洗って、充電部15に載せておく。このとき、充電用の端子が露出しておらず、また、画像取得手段24、電源25、保持処理手段26およびマイクロプロセッサ29が防水性を有しているため、服薬補助具11を洗いやすく、洗っても故障しない。また、服薬補助具11を充電部15に載せておくことにより、服薬補助具11の未使用時に電源25の充電式電池を充電することができ、次に服薬補助具11を使用するときに、電池切れにより画像情報が得られなくなるのを防ぐことができる。
【0042】
服薬確認システム10は、画像取得手段24が服薬補助具11に取り付けられており、患者1や被験者がいつも通りに薬を服用する動作の中で、口内の画像を取得することができるため、患者1や被験者が何らかの特別な行動をする必要がなく、患者1や被験者の負担が少ない。照明を有する場合には、画像取得手段24で撮影するとき、照明で口内を照らすことにより、明るく鮮明な画像を得ることができる。画像取得手段24により高解像度の画像が得られるため、口の内部に存在する薬の種類を把握することができ、服薬情報の精度を高めることができる。
【0043】
服薬確認システム10は、制御手段27により、薬を服用するときの画像情報のみを取得することができるため、保持処理手段26による無線送信や保存の際に扱う画像情報の情報量をできるだけ小さくすることができる。また、無線送信を利用するため、服薬補助具11を使用する際に、ケーブル等が邪魔にならない。服薬確認システム10は、薬の服用状態を画像として取得するため、錠剤やカプセル、散剤、液体薬など、薬の形態によらず使用することができる。
【0044】
服薬確認システム10は、画像取得手段24、電源25、保持処理手段26、水検知センサ28およびマイクロプロセッサ29として、比較的安価な市販製品を利用することができ、コストの低減を図ることができる。また、服薬確認システム10は、薬の飲み忘れや飲み間違い、飲んだふりを定量的に把握することができるため、それらによる影響の分析を効果的に行うことができ、ひいては医療費の削減に貢献することができる。服薬確認システム10は、特に、薬の種類が1種類でありながら、信頼性の高い服薬記録が求められる新薬治験において、その効果が大いに期待できる。
【0045】
なお、
図4に示すように、服薬確認システム10は、コップから成る服薬補助具11の開口の上に、服薬確認装置12を着脱可能に載せて使用可能に構成されていてもよい。この場合、例えば、以下のように服薬確認装置12を構成することができる。すなわち、服薬確認装置12は、水を飲むときに口を付ける側とは反対側の服薬補助具11の開口の上方を覆うよう設けられた収納部41と、収納部41から環状に伸びて、服薬補助具11の開口の、水を飲むときに口を付ける側の周縁に沿って配置される環状部42とを有し、画像取得手段24で口の内部を撮影可能に、画像取得手段24、電源25、保持処理手段26およびマイクロプロセッサ29が収納部41に収納され、水検知センサ28が環状部42の内面に設けられていてもよい。
【0046】
この
図4に示す場合、既存の服薬補助具11に服薬確認装置12を後付けで取り付けることができる。このため、例えば、服薬確認装置12を、患者1や被験者が普段使用している服薬補助具11に取り付けたり、服薬補助具11を交換する際に新しい服薬補助具11に付け替えたりすることができる。これにより、製造コストや運用コストを低減することができる。また、服薬後に服薬確認装置12を取り外すことにより、服薬補助具11を洗いやすい。
【0047】
また、服薬確認システム10で、画像取得手段24は、その視野範囲が口の周辺を超えて広がっていてもよい。この場合、使用者により異なる最適な撮像範囲の違いに広く対応することができ、かつ、誰が飲んでいるかを判断するための画像情報も取得することができる。また、画像取得手段24は、画像として、舌の色、舌の表面状態、顔面の状態および唇の状態のうち少なくとも一つを記録可能に構成されていてもよい。服薬記録に加えて、舌の色や表面状態、顔面や唇の状態を画像として記録することにより、より精度の高い診断や、より適切な健康管理を行うことができる。
【0048】
また、制御手段27は、水検知センサ28ではなく、傾きセンサを有していてもよい。この場合、水を飲むために容器を傾けたとき、傾いたことを傾きセンサが検知するため、傾きセンサが傾きを検知している間、画像取得手段24を稼働させることができる。これにより、口内に薬を入れて、今まさに水で薬を飲もうとしている状態から、薬を飲むまでの状態を、短時間間隔で撮影された複数の画像として自動で取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る服薬確認装置および服薬確認システムは、医薬品や治験に関わる機関などで、服薬確認や服薬管理を行うために使用されると効果的である。例えば、製薬会社、医薬品開発業務受託機関(CRO)、病院、薬局、老人福祉施設、児童福祉施設、保険会社などの機関での使用が効果的であると考えられる。
【符号の説明】
【0050】
1 患者
10 服薬確認システム
11 服薬補助具
21 本体
22 容器部
23 収納部
12 服薬確認装置
24 画像取得手段
25 電源
26 保持処理手段
27 制御手段
28 水検知センサ
29 マイクロプロセッサ
13 受信部
14 処理装置
31 保存部
32 解析処理部
33 表示部
15 充電部
16 サーバー
41 収納部
42 環状部