(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多くの場合、車両用の操作部材は、経年変化により操作力が変化することから、その操作速度が必ずしも利用者の意図を反映するものにならない可能性がある。また、ドア等のように、その作動位置を全閉位置(又は全開位置)で拘束する開閉体については、そのロック機構(ラッチ機構)を解除するために強い操作力が要求される。このため、その操作速度を意図的に調整することは困難である。そして、その操作速度を検出するための構成が製造コストを押し上げる要因にもなることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より確実に、利用者が所望する適切な速度で開閉体を作動させることのできる車両用開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の開閉体を駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えた車両用開閉体制御装置において、前記制御手段は、作動中の前記開閉体を加速させるべき外力の入力を検知して前記開閉体の作動速度が速くなるように
前記駆動手段を制御する速度可変手段を備えること、を要旨とする。
前記制御手段は、前記開閉体の作動速度がそれぞれ異なる速度に設定された複数の駆動モードで前記駆動手段を制御可能である。前記速度可変手段は、前記開閉体を加速させるべき外力の入力を検知した場合には、該外力の入力を検知する前のモードよりも前記作動速度の速い高速作動モードに前記駆動モードを切り替える。
【0008】
上記構成によれば、開閉体を作動方向に押圧する、或いは引っ張る等といった直感的な操作によって、その開閉体を速く作動させることができる。その結果、より確実に、利用者が所望する適切な速度で開閉体を開閉作動させることができる。
また、開閉体を加速させるべき外力の入力を検知した場合に、その検知する前よりも速い速度で開閉体を作動させることができる。
【0009】
また、請求項
1に記載の発明は、作動方向における前記開閉体の加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記速度可変手段は、前記加速度が所定値以上となった場合に前記開閉体を加速させるべき外力の入力があると判定して前記開閉体の作動速度が速くなるように前記駆動手段を制御する加速度感応速度可変手段を備えること、を要旨とする。
【0010】
即ち、その作動方向に作用する外力によって、開閉体の加速度が変化する(大となる)。従って、上記構成によれば、精度よく、その開閉体を加速させるべき外力の入力を検知して開閉体の作動速度が速くなるように制御することができる。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、前記開閉体の作動負荷を検出する作動負荷検出手段を備え、前記速度可変手段は、前記作動負荷が所定値以下となった場合に前記開閉体を加速させるべき外力の入力があると判定して前記開閉体の作動速度が速くなるように前記駆動手段を制御する作動負荷感応速度可変手段を備えること、を要旨とする。
【0012】
即ち、その作動方向に作用する外力によって、開閉体の作動負荷が変化する(小となる)。従って、上記構成によれば、精度よく、その開閉体を加速させるべき外力の入力を検知して開閉体の作動速度が速くなるように制御することができる。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、前記開閉体の作動位置を検出する位置検出手段を備え、前記速度可変手段は、前記開閉体がその作動開始位置から所定範囲内に存在する場合には、前記開閉体の作動速度が速くなる制御を行わないこと、を要旨とする。
【0014】
即ち、作動開始時における停止状態からの加速区間においては、開閉体がモータ駆動による加速状態にあることに起因して、その「加速させるべき外力の入力」を誤検知する可能性がある。この点、上記構成によれば、その加速区間に対応して所定範囲を設定することで、誤検知による開閉体の高速作動を防止することができる。その結果、より確実に、利用者が所望する適切な速度で開閉体を開閉作動させることができる。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、前記開閉体の作動位置を検出する位置検出手段を備え、前記速度可変手段は、前記開閉体の全開位置及び全閉位置の少なくとも何れか一方に対応する減速領域を設定し、前記開閉体が前記減速領域に突入したときの前記駆動モードが前記高速作動モードである場合には、該高速作動モードよりも前記作動速度の遅いモードに前記駆動モードを切り替えること、を要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、開閉体が停止前に減速することで、その質感が向上する。そして、特に全閉作動時においては、その開閉体による挟み込み荷重を軽減することができる。
請求項
5に記載の発明は、前記制御手段は、前記作動速度の変化を報知する報知手段を備えること、を要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、作動速度の変化が報知される。そして、これにより、例えば、開閉体の作動速度が速くなったことを利用者に知らしめて、その注意を喚起することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より確実に、利用者が所望する適切な速度で開閉体を作動させることが可能な車両用開閉体制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、開閉体としてのスライドドア1は、車両前後方向に移動することにより車両のボディ側面に設けられた開口部(図示略)を開閉できるように構成されている。具体的には、このスライドドア1は、車両前方側(同図中、左側)に移動することにより、ボディの開口部を閉塞する閉状態となり、車両後方側(同図中、右側)に移動することにより、その開口部を介して乗降可能な開状態になる。そして、スライドドア1の外表面(意匠面)を構成するアウターパネル2には、当該スライドドア1を開閉すべく操作されるハンドル装置としてのドアハンドル3が設けられている。
【0022】
詳述すると、スライドドア1には、当該スライドドア1を全閉位置で拘束するためのフロントロック5a及びリアロック5b(全閉ロック)が設けられている。また、スライドドア1には、当該スライドドア1を全開位置で拘束するための全開ロック5cが設けられている。そして、これらの各ロック機構(ラッチ機構)5は、リモコン6から延びるワイヤ等の伝達部材を介して機械的にドアハンドル3と連結されている。
【0023】
具体的には、操作入力手段を構成するドアハンドル3には、可動式のハンドグリップ10が設けられており、ドアハンドル3に対する操作入力は、その把持部を構成するハンドグリップ10の動作に基づいて、各ロック機構5へと伝達される。尚、このハンドグリップ10は、スライドドア1の開方向となる車両後方側に操作することにより、その先端側(車両前方側の端部)が引き起こされる周知の構成を有している。そして、その操作力に基づいてスライドドア1の拘束が解除されることにより、全閉位置にあるスライドドア1の開方向への移動、又は全開位置にあるスライドドア1の閉方向への移動が許容されるようになっている。
【0024】
また、スライドドア1には、当該スライドドア1を駆動して開閉作動させることが可能な駆動手段としてのドア開閉アクチュエータ(開閉ACT)20が設けられている。そして、このドア開閉アクチュエータ20は、その駆動源であるモータ21に対し、制御手段としてのドアECU22が駆動電力を供給することにより、その駆動対象となるスライドドア1を開閉作動させることが可能となっている。
【0025】
詳述すると、本実施形態のドアハンドル3には、ハンドグリップ10の動作に基づいて作動する接点式の操作検知スイッチ23が設けられており、ドアECU22は、この操作検知スイッチ23が出力する操作入力信号Scに基づいて、ドアハンドル3に対する操作入力(の有無)を検知する。また、ドアECU22には、作動位置センサ25が接続されており、ドアECU22は、この作動位置センサ25の出力信号(作動位置信号Sp)に基づいて、スライドドア1の作動位置(開閉位置)を検出する。そして、ドアECU22は、その検知したドアハンドル3に対する操作入力、及び検出したスライドドア1の作動位置に基づいて、当該スライドドア1を開閉作動(又は停止)させるべく、ドア開閉アクチュエータ20の作動を制御する。
【0026】
本実施形態では、このようにして車両用開閉体制御装置としてのドア制御装置30が構成されている。尚、本実施形態では、上記操作検知スイッチ23とドアECU22とにより操作入力検知手段が構成される。そして、作動位置センサ25とドアECU22とにより作動位置検出手段が構成される。
【0027】
次に、本実施形態におけるドア開閉制御の態様及びその処理手順について説明する。
図2のフローチャートに示すように、ドアECU22は、先ず、操作入力信号Scに基づく操作入力検知処理(ステップ101)、及び作動位置信号Spに基づく作動位置検出処理(ステップ102)を実行する。次に、ドアECU22は、ドアハンドル3に対する操作入力の有無を判定し(ステップ103)、操作入力がある(検知した)と判定した場合(ステップ103:YES)には、続いてスライドドア1が全開位置にあるか否かを判定する(ステップ104)。そして、スライドドア1が全開位置にあると判定した場合(ステップ104:YES)には、ドア開閉アクチュエータ20によりスライドドア1を閉作動させるべく、その閉作動制御を実行する(ステップ105)。
【0028】
一方、上記ステップ104において、スライドドア1が全開位置にないと判定した場合(ステップ104:NO)、ドアECU22は、ドア開閉アクチュエータ20によりスライドドア1を開作動させるべく、その開作動制御を実行する(ステップ106)。尚、このスライドドア1が「全開位置にない場合」には、スライドドア1が全閉位置にある場合の他、例えば、挟み込み検知等を要因として、スライドドア1が全開位置と全閉位置との間で停止している場合も含まれる。そして、上記ステップ103において、操作入力が無い(検知していない)と判定した場合(ステップ103:NO)、ドアECU22は、ステップ104以降の各処理を実行しない。
【0029】
本実施形態のドアECU22は、上記ステップ101〜ステップ106に示される演算処理を周期的に実行する。そして、本実施形態のドア制御装置30は、これにより、その状況に応じてスライドドア1を開作動又は閉作動させることによって、利用者の負担を低減することが可能となっている。
【0030】
(作動速度可変制御)
次に、本実施形態における作動速度可変制御の態様について説明する。
本実施形態のドアECU22は、スライドドア1の作動速度が異なる複数の駆動モードでドア開閉アクチュエータ20(
図1参照)を制御する機能を有している。具体的には、ドアECU22は、その駆動モードとして、基本的な駆動モードとなる通常モードと、この通常モードよりもスライドドア1の作動速度が速い高速作動モードとを備えている。そして、上記のようなスライドドア1の開閉制御(開作動制御又は閉作動制御)は、これら二つの駆動モードのうちの通常モードで開始されるようになっている。
【0031】
また、本実施形態のドアECU22は、作動中のスライドドア1について、その作動方向における加速度(G)を検出する。具体的には、
図3に示すように、ドアECU22は、ドア開閉アクチュエータ20のモータ21に設けられたモータ回転センサ31が出力するパルス信号をカウントすることにより、スライドドア1の作動位置を検出する。即ち、本実施形態では、このモータ回転センサ31によって作動位置センサ25が構成されている。尚、このようなモータ回転センサ31には、例えば、ホールIC等を用いることができる。そして、ドアECU22は、その検出されるスライドドア1の作動位置を二回微分することにより、作動方向におけるスライドドア1の加速度Gを検出する。
【0032】
さらに、ドアECU22は、その加速度Gの検出に基づいて、スライドドア1の作動方向に作用する外力の入力、即ち当該スライドドア1を加速させるべき外力の入力を検知する。具体的には、ドアECU22は、検出される加速度Gが所定値G0以上となった場合に、スライドドア1を加速させるべき外力の入力があると判定する。そして、このようなスライドドア1を加速させるべき外力の入力を検知した場合には、その駆動モードを開閉制御開始時の通常モードから高速作動モードに切り替える構成となっている。
【0033】
即ち、本実施形態では、ドアECU22により速度可変手段、加速度検出手段及び加速度感応速度可変手段が構成される。
つまり、利用者がスライドドア1の作動速度を上げようとして当該スライドドア1を作動方向に押圧する又は引っ張ることにより、その加速度Gが変化する(大となる)。本実施形態のドアECU22は、そのスライドドア1の加速度Gを監視することにより、このような「加速させるべき外力」がスライドドア1に入力されたか否かを判定する。そして、本実施形態では、その「加速させるべき外力の入力」が示す加速要求に応じてスライドドア1の作動速度を速くすることにより、その利便性の向上を図る構成となっている。
【0034】
詳述すると、
図4のフローチャートに示すように、ドアECU22は、スライドドア1の作動中(開作動制御又は閉作動制御の実行中)は、その作動方向におけるスライドドア1の加速度検出処理を実行する(ステップ201)。そして、その加速度Gが所定値G0以上であるか否かを判定する(ステップ202)。
【0035】
さらに、本実施形態のドアECU22は、このステップ202において、所定値G0以上の加速度Gが検出された場合(G≧G0、ステップ202:YES)には、続いて、スライドドア1の作動位置が、その作動開始位置(全閉位置又は全開位置、或いは途中停止位置)から所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップ203)。具体的には、
図5に示すように、この「作動開始位置から所定範囲」は、通常モードにおいて、その停止状態から定常速度に達するまでにスライドドア1が進む距離X1、即ち作動開始時における停止状態からの加速区間αに対応して設定されている。そして、ドアECU22は、スライドドア1の作動位置が、既に「作動開始位置から所定範囲」の外、即ち加速区間αの外にある場合(ステップ203:NO)には、その駆動モードを高速作動モードに切り替えるべく、高速フラグをセットする(ステップ204)。
【0036】
一方、上記ステップ202において、操作入力の加速度Gが所定値G0に満たない場合(G<G0、ステップ202:NO)、ドアECU22は、ステップ203及びステップ204の処理を実行しない。そして、上記ステップ203において、スライドドア1の作動位置が「作動開始位置から所定範囲(加速区間α)」内にある場合(ステップ203:YES)は、ステップ204の処理を実行しない。
【0037】
本実施形態のドアECU22は、上記ステップ201〜ステップ204の各処理を、その実行中の閉閉制御処理(開開作動制御又は開作動制御)において実行する。そして、
図6のフローチャートに示すように、ドアECU22は、高速フラグがセットされている場合(ステップ301:YES)には、その開閉制御を高速作動モードで実行し(ステップ302)、高速フラグがセットされていない場合(ステップ301:NO)には、その開閉制御を通常モードで実行する(ステップ303)。
【0038】
本実施形態では、このようにして、その「加速させるべき外力の入力」の検知に基づいた駆動モードの切り替えが行われる。そして、その際、作動開始時におけるスライドドア1の加速区間αを除外し、モータ駆動による加速状態にあることに起因した加速度変化の影響を排除することにより、その「加速させるべき外力の入力」の誤検知を回避する構成となっている。
【0039】
また、
図3に示すように、ドアECU22には、スピーカー32が接続されており、報知手段としてのドアECU22は、駆動モードを高速作動モードに切り替えた場合には、そのスピーカー32から作動音を出力する(通常モードでは作動音出力なし、
図6参照、ステップ302及びステップ303)。そして、本実施形態では、これにより、その駆動モードの切り替えによってスライドドア1の作動速度が変化したことを報知する構成になっている。
【0040】
また、
図7に示すように、本実施形態では、スライドドア1の全開位置及び全閉位置の近傍には、それぞれ減速領域β1,β2が設定されている。具体的には、これらの減速領域β1,β2は、スライドドア1が全閉位置又は全開位置に到達するまでの残りの距離が所定値X2以下となる範囲に設定されている。そして、本実施形態のドアECU22は、これら減速領域β1,β2にスライドドア1が突入したときの駆動モードが高速作動モードである場合には、その駆動モードを当該高速作動モードから通常モードに切り替えるようになっている。
【0041】
詳述すると、
図8のフローチャートに示すように、ドアECU22は、高速フラグがセットされているか否かを判定し(ステップ401)、高速フラグがセットされている場合(ステップ401:YES)には、先ずスライドドア1の作動位置が全閉側の減速領域β1にあるかを判定する(ステップ402)。また、このステップ402において、スライドドア1の作動位置が全閉側の減速領域β1にあると判定した場合(ステップ402:YES)、ドアECU22は、続いてスライドドア1が閉作動中であるかを判定する(ステップ403)。そして、スライドドア1が閉作動中であると判定した場合、即ちスライドドア1が全閉側の減速領域β1に突入した場合(ステップ403:YES)には、高速フラグをリセットする(ステップ404)。
【0042】
一方、上記ステップ402において、スライドドア1の作動位置が全閉側の減速領域β1にはないと判定した場合(ステップ402:NO)、ドアECU22は、スライドドア1の作動位置が全開側の減速領域β2にあるかを判定する(ステップ405)。また、このステップ405において、スライドドア1の作動位置が全開側の減速領域β2にあると判定した場合(ステップ405:YES)、ドアECU22は、続いてスライドドア1が開作動中であるかを判定する(ステップ406)。そして、スライドドア1が開作動中であると判定した場合、即ちスライドドア1が全開側の減速領域β2に突入した場合(ステップ406:YES)には、上記ステップ404において高速フラグをリセットする。
【0043】
尚、上記ステップ403において、スライドドア1が閉作動中ではないと判定した場合(ステップ403:NO)、及び上記ステップ406において、スライドドア1が開作動中ではないと判定した場合(ステップ406:NO)には、ドアECU22は、上記ステップ404の処理を実行しない。また、上記ステップ405において、スライドドア1の作動位置が全開側の減速領域β2にない、即ち何れの減速領域β1,β2にもないと判定した場合(ステップ405:NO)には、上記ステップ406の処理を実行しない。そして、上記ステップ401において、高速フラグがセットされていないと判定した場合(ステップ401:NO)には、ステップ402以降の処理を実行しない。
【0044】
本実施形態のドアECU22は、上記ステップ401〜ステップ406の各処理を、その実行中の閉閉制御処理(開開作動制御又は開作動制御)において実行する。そして、上記ステップ404において高速フラグをリセットした場合には、その駆動モードを、高速作動モードから通常モードに切り替えることにより、減速領域β1,β2に突入したスライドドア1を減速させる構成となっている。
【0045】
尚、本実施形態では、スライドドア1の作動位置に関わらず、当該スライドドア1が停止することで、高速フラグがリセットされる。そして、その駆動モードが通常モードに切り替わることで、次回の開閉制御が、常に通常モードで開始されるようになっている。
【0046】
次に、上記のように構成された本実施形態のドア制御装置の作用について説明する。
図9に示すように、ドアハンドル3に対する操作入力が検知されることにより、通常モードでスライドドア1の開閉制御が開始される(作動開始、t=0)。
【0047】
また、この例では、その後、利用者がスライドドア1の作動速度を上げようとして当該スライドドア1を作動方向に押圧する又は引っ張ることにより、そのスライドドア1の加速度Gが変化する(大となる)。そして、その加速度Gに基づきスライドドア1を加速させるべき外力の入力が検知され、その駆動モードが高速作動モードに切り替わることにより、スライドドア1の作動速度が上昇する(t=t1)。
【0048】
さらに、本実施形態では、その後、スライドドア1が減速領域に突入し、その駆動モードが高速作動モードから通常モードに切り替わることにより、スライドドア1の作動速度が減速される(t=t2)。そして、その減速された状態のままスライドドア1が停止位置となる全閉位置又は全開位置に到達するようになっている(t=t3)。
【0049】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ドアECU22は、作動中のスライドドア1について、その作動方向における加速度Gを検出する。そして、その検出される加速度Gが所定値G0以上である場合(G≧G0)には、スライドドア1を加速させるべき外力の入力があると判定(検知)して、当該スライドドア1の駆動モードを開閉制御開始時の通常モードから高速作動モードに切り替える。
【0050】
即ち、その作動方向に作用する外力によって、スライドドア1の加速度Gが変化する。従って、上記構成によれば、スライドドア1を作動方向に押圧する、或いは引っ張る等といった直感的な操作によって、そのスライドドア1の作動速度を上昇させることができる。また、モータ21により駆動された状態にあるスライドドア1そのものを操作入力部とすることで、そのスライドドア1を開閉動作させるための操作力が不要となり、純粋に加速力を付与するためのだけの比較的小さな操作力(押圧力・引張力)で、スライドドア1に「加速させるべき外力」を入力することができる。そして、これにより、操作力に関する経年変化の影響を抑えることができる。その結果、より確実に、利用者が所望する適切な速度でスライドドア1を開閉作動させることができる。
【0051】
(2)ドアECU22は、スライドドア1の作動位置が「作動開始位置から所定範囲(加速区間α)」内にある場合(ステップ203:YES)には、高速フラグをセットしない。そして、これにより、その通常モードから高速作動モードへの駆動モードの切り替え、つまりスライドドア1の作動速度が速くなる制御を実行しない。
【0052】
即ち、作動開始時における停止状態からの加速区間αにおいては、そのモータ駆動による加速度変化によって、上記「加速させるべき外力の入力」を誤検知する可能性がある。従って、上記構成によれば、その加速区間αに対応して所定範囲を設定することで、誤検知によるスライドドア1の高速作動を防止することができる。その結果、より確実に、利用者が所望する適切な速度でスライドドア1を開閉作動させることができる。
【0053】
(3)スライドドア1の全開位置及び全閉位置の近傍には、それぞれ減速領域β1,β2が設定される。そして、ドアECU22は、これら減速領域β1,β2にスライドドア1が突入したときの駆動モードが高速作動モードである場合には、その駆動モードを高速作動モードから通常モードに切り替える。
【0054】
上記構成によれば、スライドドア1が停止位置となる全開位置又は全閉位置の前で減速することで、その質感が向上する。そして、特に全閉作動時においては、そのスライドドア1による挟み込み荷重を軽減することができる。
【0055】
(4)ドアECU22は、その駆動モードを高速作動モードに切り替えた場合には、そのスピーカー32から作動音を出力する。
上記構成によれば、利用者に対し、駆動モードの切り替えによってスライドドア1の作動速度が変化したことを報知することができる。その結果、例えば、スライドドア1の作動速度が速くなったことを利用者に知らしめて、その注意を喚起することができる。
【0056】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態は、上記第1の実施形態との比較において、そのスライドドア1を「加速させるべき外力の入力」の検知方法が相違する。
詳述すると、
図10に示すように、本実施形態のドアECU22は、作動中のスライドドア1について、その作動負荷(F)を検出する。具体的には、ドアECU22は、電力供給経路の途中に設けられた電流センサ33の出力信号に基づいて、そのモータ21に供給するモータ電流Iを検出する。そして、このモータ電流Iに示される作動負荷Fに基づいて、スライドドア1の作動方向に作用する外力の入力、即ち当該スライドドア1を加速させるべき外力の入力を検知する。
【0058】
即ち、モータ21の駆動トルクは、モータ電流Iに依存する。従って、その検出されるモータ電流Iに基づいて、モータ21(ドア開閉アクチュエータ20)が駆動するスライドドア1の作動負荷Fを検出(推定)することができる。そして、本実施形態では、これにより、その作動負荷検出手段及び作動負荷感応速度可変手段が構成される。
【0059】
具体的には、利用者がスライドドア1の作動速度を上げようとして当該スライドドア1を作動方向に押圧する又は引っ張ることにより、その作動負荷Fが変化する(小さくなる)。本実施形態のドアECU22は、このようなスライドドア1の作動負荷Fを監視することにより、上記のようなスライドドア1を「加速させるべき外力」が当該スライドドア1に入力されたか否かを判定する。そして、その「加速させるべき外力」を検知した場合には、駆動モードを開閉制御開始時の通常モードから高速作動モードに切り替える。
【0060】
具体的には、
図11のフローチャートに示すように、ドアECU22は、上記のように作動負荷Fを検出すると(ステップ501)、その作動負荷Fが所定値F0以下であるか否かを判定する(ステップ502)。そして、その作動負荷Fが所定値F0以下である場合(F≦F0、ステップ502:YES)には、スライドドア1を加速させるべき外力の入力があると判定して高速フラグをセットする(ステップ503)。
【0061】
尚、上記ステップ502において、作動負荷Fが所定値F0よりも大きい場合(F>F0、ステップ502:NO)には、スライドドア1を加速させるべき外力の入力はないと判定し、ステップ503の処理を実行しない。
【0062】
本実施形態のドアECU22は、上記ステップ501〜ステップ503の各処理を、その実行中の閉閉制御処理(開開作動制御又は開作動制御)において実行する。そして、このスライドドア1を「加速させるべき外力の入力」の検知に基づく駆動モードの切り替えによって、その外力の入力が示す加速要求に応じてスライドドア1の作動速度が速くなるように制御する構成となっている。
【0063】
以上、本実施形態の構成によっても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、作動負荷Fに基づいて、そのスライドドア1を「加速させるべき外力の入力」を検知する構成とすることで、作動開始時における停止状態からの加速区間αにおける誤検知の発生を抑制することができる。即ち、加速区間αは基本的に作動負荷Fが高くなるため、その値が所定値F0以下になり難い。従って、その加速区間αの除外を行うことなく、より簡素な構成にて、利用者が所望する適切な速度でスライドドア1を開閉作動させることができる。
【0064】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を、車両のボディ側面に設けられたスライドドア1を開閉作動させるドア制御装置30に具体化した。しかし、これに限らず、スイング式のドア、或いは車両後部に設けられたバックドアやラゲッジドア等、その他のドア制御装置に適用してもよい。そして、サンルーフ装置やパワーウィンドウ装置等、ドア以外の開閉体を対象とする車両用開閉体制御装置に適用してもよい。
【0065】
・上記第1の実施形態では、モータ回転センサ31が作動位置センサ25を構成することとしたが、変位センサを用いて、より直接的にスライドドア1を作動位置を検出する構成であってもよい。また、その検出方法についてもパルスカウントでなくともよく、絶対角検知によるものであってもよい。
【0066】
・また、上記第1の実施形態では、モータ回転センサ31が出力するパルス信号をカウントすることにより、スライドドア1の作動位置を検出する。そして、その作動位置を二回微分することにより、作動方向におけるスライドドア1の加速度Gを検出することとした。しかし、これに限らず、例えば、
図12に示すように、そのスライドドア1に加速度センサ35を設け、より直接的に加速度Gを検出する構成としてもよい。
【0067】
・さらに、上記第2の実施形態では、モータ電流Iに基づいて、モータ21(ドア開閉アクチュエータ20)が駆動するスライドドア1の作動負荷Fを検出(推定)することとした。しかし、これに限らず、モータ速度(或いはスライドドア1の作動速度)に基づいて作動負荷Fを検出してもよく、両者を組み合わせてもよい。
【0068】
また、例えば、
図13に示すように、モータ21の駆動力をスライドドア1に伝達する駆動伝達系37の途中に荷重センサ38を設ける。尚、このような荷重センサ38は、周知の歪みゲージ等を用いて構成することができる。そして、その荷重センサ38の出力信号に基づいて、より直接的に作動負荷Fを検出する構成としてもよい。
【0069】
・上記第1の実施形態では、スライドドア1の加速度Gに基づいて、また、上記第2の実施形態では、作動負荷Fに基づいて、そのスライドドア1を加速させるべき外力の入力を検知することとした。しかし、これに限らず、加速度G及び作動負荷Fの両方に基づいて、その「加速させるべき外力の入力」を検知する構成としてもよい。そして、その他の方法により「加速させるべき外力の入力」を検知する構成についても、これを排除しない。
【0070】
・上記各実施形態では、スライドドア1の全開位置の近傍及び全閉位置の近傍に、それぞれ減速領域β1,β2が設定されることとしたが、何れか一方のみに減速領域を設定する構成であってもよい。また、このような減速領域を設定しない構成についても、これを排除しない。
【0071】
・上記各実施形態では、スライドドア1の開閉作動時、その駆動モードを高速作動モードに切り替えた場合には、そのスピーカー32から作動音を出力する。そして、通常モードでは作動音の出力を行なわないこととした。しかし、これに限らず、当該スライドドア1の作動速度に応じて間隔が変化するパルス音を出力する、或いはその音量(大小)や音程(高低)等を変化させる等によって、その作動速度の変化を報知する構成としてもよい。また、音出力以外にも、例えば、光出力(点滅間隔、色調)等により、その作動速度の変化を報知する構成としてもよい。そして、その作動速度の変化(駆動モード)を報知しない構成についても、これを排除しない。
【0072】
・上記各実施形態では、ドアECU22は、その駆動モードとして、通常モード及び高速作動モードを備えることとした。しかし、これに限らず、3つ以上の駆動モードを備える構成であってもよい。
【0073】
尚、この場合、複数段階のモード切替についても、これを排除しない。そして、「高速作動モードへの切替」については、その「加速させるべき外力の入力」の検知前のモードが何れであれ、そのモードよりもスライドドア1の作動速度の速い別のモードに切り替われるものであればよい。
【0074】
・また、減速領域β1,β2にスライドドア1が突入したときの駆動モードが高速作動モードである場合には、その駆動モードを通常モードに復帰させることとしたが、高速作動モードよりもスライドドア1の作動速度の遅いモードであれば、その切替先は、必ずしも通常モードでなくともよい。
【0075】
・さらに、上記スライドドア1を「加速させるべき外力の入力」を検知している間のみモータ出力を強化することで、スライドドア1を加速させる構成としてもよい。
・上記第2の実施形態では、上記「加速させるべき外力の入力」の検知において、作動開始時におけるスライドドア1の加速区間αを除外しないこととしたが、上記第1の実施形態と同様、その加速区間αに対応した所定範囲を除外する構成としてもよい。このような構成とすることで、より確実に誤検知によるスライドドア1の高速作動を防止することができる。
【0076】
・また、上記第1の実施形態では、加速度Gに基づいて上記「加速させるべき外力の入力」を検知することから、その「加速させるべき外力の入力」の検知において、作動開始時におけるスライドドア1の加速区間αを除外することとした。しかし、加速度Gに基づき上記「加速させるべき外力の入力」を検知するものにおいて、その加速区間αの除外を行わない構成も排除しない。
【0077】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記加速度検出手段は、前記開閉体に設けられた加速度センサの出力信号に基づいて、前記加速度を検出すること、を特徴とする。
【0078】
(ロ)前記加速度検出手段は、前記駆動手段に設けられたモータ回転センサの出力信号に基づいて、前記加速度を検出すること、を特徴とする。
(ハ)前記加速度検出手段は、前記開閉体の作動位置を検出する変位センサの出力信号に基づいて、前記加速度を検出すること、を特徴とする。
【0079】
上記各構成によれば、その検出される加速度に基づいて、精度よく、作動中の前記開閉体を加速させるべき外力の入力を検知することができる。
(ニ)前記作動負荷検出手段は、前記駆動手段の駆動伝達系に設けられた荷重センサの出力信号に基づいて、前記作動負荷を検出すること、を特徴とする。
【0080】
(ホ)前記作動負荷検出手段は、前記駆動手段のモータ電流に基づいて、前記作動負荷を検出すること、を特徴とする。
上記各構成によれば、その検出される作動負荷に基づいて、精度よく、作動中の前記開閉体を加速させるべき外力の入力を検知することができる。
【0081】
(ヘ)前記速度可変手段は、減速領域においては、前記開閉体の作動速度が速くなる制御を行わないこと、を特徴とする。これにより、開閉体が高速で停止位置に到達すること防止することができる。