【実施例】
【0042】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準であり。また、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、厚さ4.5μmの片面易接着処理済ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に、下記組成の耐熱滑性層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように塗布し、100℃で1分間乾燥することで耐熱滑性層付き基材を得た。
【0044】
<耐熱滑性層形成用塗布液>
シリコン変性アクリル樹脂(東亜合成(株)製US−350)50.0部
メチルエチルケトン 50.0部
【0045】
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層形成用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層形成用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0046】
<下引き層形成用塗布液−1>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
【0047】
<染料層形成用塗布液−1>
C.I.ソルベントブルー63(アントラキノン系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0048】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−2にて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0049】
<下引き層形成用塗布液−2>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 1.5部
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
1.5部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
【0050】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−3にて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0051】
<下引き層形成用塗布液−3>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
3.0部
純水 56.4部
イソプロピルアルコール 37.6部
【0052】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−4にて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
【0053】
<下引き層形成用塗布液−4>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.2部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
5.8部
純水 54.6部
イソプロピルアルコール 36.4部
【0054】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−5にて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
【0055】
<下引き層形成用塗布液−5>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径0.5μm)
0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
【0056】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−6にて形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0057】
<下引き層形成用塗布液−6>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径3.0μm)
0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
【0058】
(比較例1)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0059】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−7にて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0060】
<下引き層形成用塗布液−7>
ポリビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマー)
3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
【0061】
(比較例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−8にて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0062】
<下引き層形成用塗布液−8>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
溶融シリカ(熱伝導率3W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
3.0部
純水 56.4部
イソプロピルアルコール 37.6部
【0063】
(比較例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−9にて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
【0064】
<下引き層形成用塗布液−9>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 4.0部
窒化アルミニウム(熱伝導率200W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
0.4部
純水 57.4部
イソプロピルアルコール 38.2部
【0065】
(比較例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−10にて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
【0066】
<下引き層形成用塗布液−10>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径1.0μm)
6.0部
純水 54.6部
イソプロピルアルコール 36.4部
【0067】
(比較例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層形成用塗布液−11にて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0068】
<下引き層形成用塗布液−11>
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−117) 3.0部
マグネシア(熱伝導率55W/(m・K)、平均粒子径4.0μm)
0.9部
純水 57.7部
イソプロピルアルコール 38.4部
【0069】
(比較例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、染料層を下記組成の染料層形成用塗布液−2にて形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
【0070】
<染料層形成用塗布液−2>
C.I.ソルベントブルー266(アゾ系染料) 6.0部
ポリビニルアセタール 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
【0071】
<被転写体の作製>
基材として、厚さ188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層形成用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m
2になるように塗布し、乾燥することで、感熱転写用の被転写体を作製した。
【0072】
<受像層形成用塗布液>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0073】
<熱伝導率測定>
熱伝導率測定基板上に、実施例1〜6、比較例2〜7と同様にして下引き層を形成し、光交流法熱拡散率測定装置「LaserPIT」(アルバック理工(株)製)にて測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
<熱伝導性微粒子の体積含有率の算出>
実施例1〜6、比較例2〜7の感熱転写記録媒体について、以下の計算式(1)から、下引き層内に占める熱伝導性微粒子の体積占有率を算出した。その結果を表1に示す。
(W1/D1)/((W1/D1)+(W2/D2))×100 ・・・(1)
W1:熱伝導性微粒子の配合量(重量部)
D1:熱伝導性微粒子の密度(g/cm
3)
W2:水溶性高分子化合物の配合量(重量部)
D2:水溶性高分子化合物の密度(g/cm
3)
【0075】
<下引き層の厚みと染料層の厚みとを合わせた総厚に対する熱伝導性微粒子の平均粒子径の倍率の算出>
実施例1〜6、比較例2〜7の感熱転写記録媒体について、以下の計算式(2)から、下引き層の厚みと染料層の厚みとを合わせた総厚に対する熱伝導性微粒子の平均粒子径の倍率を算出した。その結果を表1に示す。なお、総厚は、日立走査電子顕微鏡「S−4500」((株)日立製作所製)による断面写真から計測した。
PD/TT ・・・(2)
PD:熱伝導性微粒子の平均粒子径
TT:下引き層の厚みと染料層の厚みとを合わせた総厚
【0076】
<転写感度評価>
実施例1〜6、比較例1〜7の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーター((株)ウェッジ製)にてベタ印画を行い、最高反射濃度である255階調を11分割した各階調の反射濃度を評価した。その結果を表2に示す。なお、低濃度部における転写感度は23〜93階調における反射濃度にて、高濃度部における転写感度は255階調における反射濃度にて評価した。また、反射濃度は分光濃度計「X−Rite528」(エックスライト(株)製)にて測定した値である。また表3中、転写感度が良好である場合を○、不良である場合を×とする。
【0077】
なお、印画条件は以下の通りである。
印画環境:23℃、50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi、副走査300dpi
【0078】
<転写濃度の均一性評価>
前記<転写感度評価>にて印画した印画物を目視にて観察し、転写濃度の均一性(濃淡ムラの有無)を判断した。その結果を表3に示す。表3中、均一性が良好である場合を○、不良である場合を×とする。
【0079】
【表1】
【表2】
【表3】
【0080】
まず、転写感度について表1〜3に示すように、実施例1〜6の感熱転写記録媒体は、いずれも下引き層の熱伝導率が1.0〜5.0W/(m・K)である。そのため、下引き層が設けられていない比較例1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに転写感度が低濃度部および高濃度部ともに高い結果を得た。
【0081】
実施例2の感熱転写記録媒体は、水溶性高分子化合物を、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドン=50/50となるようにして用い、下引き層を形成したため、ポリビニルアルコールを単独で用いて下引き層を形成した実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、高濃度部の転写感度が若干低下しているが、転写感度としては十分な濃度であった。
【0082】
実施例3の感熱転写記録媒体は、下引き層において、ポリビニルアルコールと熱伝導性微粒子であるマグネシアとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/マグネシア=100/100であり、ポリビニルアルコール/マグネシア=100/30である実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層の熱伝導率が3.7W/(m・K)と高くなっているためか、低濃度部の転写感度がさらに高くなっており、転写感度としては良好な結果であった。
【0083】
実施例4の感熱転写記録媒体は、下引き層において、ポリビニルアルコールと熱伝導性微粒子であるマグネシアとの質量基準での含有比率が、ポリビニルアルコール/マグネシア=100/180であり、ポリビニルアルコール/マグネシア=100/100である実施例3の感熱転写記録媒体よりも、下引き層の熱伝導率が4.8W/(m・K)とさらに高くなっているためか、低濃度部および高濃度部ともに転写感度がさらに高くなっている。
【0084】
一方で、比較例2の感熱転写記録媒体は、水溶性高分子化合物としてポリビニルアルコールを用いず、ポリビニルピロリドンのみを用いて下引き層を形成した結果、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、高濃度部の転写感度が著しく低く、転写感度としては不十分な結果であった。
【0085】
比較例3の感熱転写記録媒体は、マグネシアのかわりに溶融シリカを用いて下引き層を形成しており、マグネシアと比較すると溶融シリカの熱伝導率は低いため、ポリビニルアルコールと溶融シリカとの質量基準での含有比率が、実施例3と同様にポリビニルアルコール/溶融シリカ=100/100であるにも係らず、下引き層の熱伝導率は1.0W/(m・K)未満であった。そのため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると低濃度部の転写感度が著しく低く、比較例1と同様に熱伝導性微粒子の添加効果が全く見られず、転写感度としては不十分な結果であった。
【0086】
比較例5の感熱転写記録媒体は、下引き層の熱伝導率が5.0W/(m・K)を超えていたため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、低濃度部、特に23階調において転写感度が大幅に上昇しており、転写感度としては過剰な結果であった。
【0087】
比較例7の感熱転写記録媒体は、アントラキノン系化合物を用いず、アゾ系化合物のみを用いて染料層を形成した結果、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、高濃度部の転写感度が著しく低下していることがわかる。したがって、下引き層にポリビニルアルコールを含有させる以外に、染料層に熱移行性染料としてアントラキノン系化合物を含有させることで、高濃度部の転写感度がさらに向上することがわかった。
【0088】
次に、転写濃度の均一性について、表1、3に示すように、実施例1〜6の感熱転写記録媒体は、いずれも熱伝導性微粒子の体積含有率が3.0〜40.0%であり、さらに熱伝導性微粒子の平均粒子径が下引き層の厚みと染料層の厚みとを合わせた総厚の4.0倍以下である。そのため、いずれも良好な転写濃度の均一性を示す結果であった。
【0089】
一方で、比較例4〜6の感熱転写記録媒体は、いずれも転写濃度の均一性の低下、すなわち濃度ムラが確認できる結果であった。
【0090】
比較例4の感熱転写記録媒体は、転写感度は十分であったが、熱伝導性微粒子の体積含有率が0.4%と低く、熱伝導性微粒子が点在している状態であり、その点在している部分が濃度ムラとなったと考えられる。
【0091】
比較例5の感熱転写記録媒体は、熱伝導性微粒子の体積含有率が40.0%を超えているため、下引き層内の樹脂成分が少なくなり、下引き層と基材との間の接着性が低下したことで、異常転写が発生したと考えられる。
【0092】
比較例6の感熱転写記録媒体は、熱伝導性微粒子の平均粒子径が下引き層の厚みと染料層の厚みとを合わせた総厚の4.0倍を超えているため、評価までの工程や保管中に熱伝導性微粒子が層内から脱落したか、熱伝導性微粒子の大きさに起因して、形成される染料層表面にうねりが生じ、転写濃度に微少な濃淡ムラが発生したと考えられる。