(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層の表面に、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子を含む第1粒子層と、平均一次粒子径が5nm以上200nm以下の疎水性粒子と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層とを有することを特徴とする撥水性積層体。
基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層は、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子を含み、ヒートシール樹脂層の表面に、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層を有することを特徴とする撥水性積層体。
前記第1の粒子は、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子、シリカ粒子、合成シリカ粒子、アルミナ粒子、ナイロン粒子、アクリル樹脂粒子の少なくとも一つ、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性積層体。
前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物中の金属は、珪素、アルミニウム、チタニウムから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性積層体。
前記疎水性粒子は、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの官能基で疎水化表面処理された、酸化珪素または酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の撥水性積層体。
前記ヒートシール樹脂層は、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、変性オレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の撥水性積層体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された蓋材は、撥水性微粒子層を形成する塗布液自体にバインダーを使用していないため、微粒子層が熱接着層に十分に固着できず、微粒子が脱落しやすいという問題がある。このため食品などの内容物に微粒子が異物として入り込んでしまうため、特に食品の場合、安全性が十分に担保できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された蓋材は、微粒子層自体の撥水性はあるものの、水以外の食品などの実際の内容物では、弾き性が不十分であるという問題もあった。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、実際の食品などに対しても十分な弾き性を有し、撥液層が脱落して内容物に混入することがない撥水性積層体を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層の表面に、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子を含む第1粒子層と、平均一次粒子径が5nm以上
200nm以下の疎水性粒子と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層とを有することを特徴とする撥水性積層体である。
【0011】
本発明に係る撥水性積層体は、撥水層として、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子を、金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物中に分散させた複合物からなる層を用い、この撥水層を、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子を含む第1粒子層上に設けたので、撥水層の層内凝集力が強く、また第1粒子層に強固に付着しているため、脱落して内容物に混入することがない。また表面には、第1粒子層の凹凸に起因するμmオーダーの凹凸と疎水性粒子に起因するnmオーダーの凹凸が混在するため、表面積が大きくなる。このため、十分な撥水性が発揮され、粘度の高い食品など実際の内容物に対しても高い撥水性を示す。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層は、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子を含み、ヒートシール樹脂層の表面に、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層を有することを特徴とする撥水性積層体である。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記第1の粒子が、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子、シリカ粒子、合成シリカ粒子、アルミナ粒子、ナイロン粒子、アクリル樹脂粒子の少なくとも一つ、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性積層体である。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記シリコーン樹脂粒子が、球状シリコーンゴムパウダー、ポリスチレン、アクリル、ポリウレタン、シリカ、アルミナ、酸化チタンのいずれかからなるコア粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆した粒子、またはジメチルポリシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、または(RSiO
3/2)
nで表されるポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粒子、のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の撥水性積層体である。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物中の金属が、珪素、アルミニウム、チタニウムから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性積層体である。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記疎水性粒子が、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの官能基で疎水化表面処理された、酸化珪素または酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の撥水性積層体である。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、前記ヒートシール樹脂層が、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、変性オレフィン樹脂から選択される1種以上の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の撥水性積層体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る疎水性積層体は、基材層とヒートシール樹脂層を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層の表面に、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の
第1の粒子を含む第1粒子層と、平均一次粒子径が5nm以上1000nm以下の疎水性粒子と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる撥水層とを有するので、撥水層の表面は、疎水性粒子に起因するnmオーダーの微細な凹凸と、第1粒子層の凹凸に起因するμmオーダーの凹凸が重なる結果、自然界におけるフラクタル構造に類似した表面形状となり、その結果内容物に対して十分な撥水性を発揮すると共に、撥水層の凝集力が高まり、容易に脱落しない撥水層とすることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明においては、ヒートシール樹脂層を、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子を含むものとしたので、ヒートシール樹脂層に前記第1粒子層の役割を兼ねさせることができ、前記第1粒子層を省略することができる。
【0020】
また請求項3に記載の発明のように、第1の粒子が、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子、シリカ粒子、合成シリカ粒子、アルミナ粒子、ナイロン粒子、アクリル樹脂粒子の少なくとも一つ、あるいはこれらの混合物である場合、第1粒子層あるいはヒートシール樹脂層を形成する際の加工適性や撥水層の撥水性が良好となる。
【0021】
また請求項4に記載の発明のように、シリコーン粒子が、球状シリコーンゴムパウダー、ポリスチレン、アクリル、ポリウレタン、シリカ、アルミナ、酸化チタンのいずれかからなるコア粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆した粒子、またはジメチルポリシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、または(RSiO
3/2)
nで表されるポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粒子、のいずれかである場合には、撥水層の弾き性においてさらに好ましい結果を与えるものとなる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明のように、前記金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物中の金属が、珪素、アルミニウム、チタニウムから選択される1種類以上である場合には、撥水層の第1粒子層またはヒートシール樹脂層に対する接着性が良好となり、また撥水層内の凝集力が高まり、より強固な膜とすることができる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明のように、前記疎水性粒子が、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの官能基で疎水化表面処理された酸化珪素または酸化アルミニウムである場合には、撥水層に対してより優れた撥水性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本発明に係る撥水性積層体について詳細に説明する。
図1は、本発明の請求項1に係る撥水性積層体の基本的な実施態様における断面構造を示
した断面模式図である。また、
図2は、本発明の請求項2に係る撥水性積層体の基本的な実施態様における断面構造を示した断面模式図である。
図3は、本発明に係る撥水性積層体の他の実施態様における断面構造を示した断面模式図である。
【0026】
本発明に係る撥水性積層体(1)は、
図1に示したように、少なくとも基材層(2)とヒートシール樹脂層(3)を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層(3)の表面に、第1粒子層(4)と、撥水層(5)を設けた構造を有する。
【0027】
第1粒子層(4)は、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子(6)を含む層である。
【0028】
撥水層(5)は、平均一次粒子径が10nm以上500nm以下の疎水性粒子(7)と、M(OR)n(Mは金属元素、Oは酸素、Rは有機基を表す)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物と、を含む複合物からなる層である。
【0029】
撥水層(5)に含まれる疎水性粒子(7)と、前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物を金属酸化物に換算した時の重量比は、5:95〜95:5の範囲であり、撥水層(5)の膜厚は、100nm以上5000nm以下であることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る撥水性積層体(1)は、粒径の小さい疎水性粒子(7)を、バインダーとしての金属アルコキシド(またはその加水分解物)中に分散した撥水層(5)を、凹凸を有する第1粒子層(4)の表面に形成したので、撥水層(5)の表面積が大きくなり、撥水性に優れる。また撥水層(5)の層内凝集力が高いため、撥水層(5)が脱落して、内容物に混入するようなことがない。
【0031】
またさらに、撥水層(5)の膜厚を100nm以上5000nm以下としたことにより、ヒートシール樹脂層(3)のヒートシール性を妨げることがない。
【0032】
図2は、本発明の請求項2に係る撥水性積層体の基本的な実施態様における断面構造を示した断面模式図である。
【0033】
本発明の請求項2に係る撥水性積層体(1)は、基材層(2)とヒートシール樹脂層(3)を有する積層体であって、ヒートシール樹脂層(3)は、平均一次粒子径が1000nm以上50000nm以下の第1の粒子(6)を含み、ヒートシール樹脂層(3)の表面に、撥水層(5)を設けたことを特徴とする。撥水層(5)の仕様は請求項1に係る撥水性積層体(1)と同様である。
【0034】
図2に示した撥水性積層体(1)では、ヒートシール樹脂層(3)が
図1に示した撥水性積層体(1)における第1粒子層(4)の働きを兼ねている。このため、第1粒子層を省略することができる。
【0035】
この場合、ヒートシール樹脂層(3)における第1の粒子(6)と樹脂分の重量比率を5:95〜95:5の範囲とすることが好ましい。この範囲であれば、第1の粒子(6)を添加したヒートシール樹脂層(3)を安定して形成することが可能となる。
【0036】
基材層(2)としては、紙、プラスチックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムなど、及びこれらを適宜組み合わせて積層したものを使用することができる。
【0037】
基材層(2)の表面には、商品を示す印刷が施されていてもよい。基材層(2)の材質、厚さ、構成などは、目的とする積層体の要求品質や加工適性によって適宜選択される。
【0038】
図3に示した実施態様においては、基材層(2)とヒートシール樹脂層(3)との間にバリア層(8)を設けてある。バリア層(8)としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムなどのガスバリア性の材料を用いる。なおこれらのガスバリア性材料は、前述の通り、単体で基材層(2)として用いることもできる。
【0039】
ヒートシール樹脂層(3)は、積層体の用途が蓋材であれば被着体となる容器の材質や、内容物、必要とされるヒートシール強度などによって、また積層体の用途が包装袋であれば、包装袋の大きさ、形状、内容物、必要とされるヒートシール強度などによって決定される。
【0040】
積層体の用途が蓋材である場合のヒートシール樹脂層(3)の材質としては、容器の材質がポリエチレン樹脂であれば、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)等が使用できる。容器の材質がポリプロピレン樹脂であれば、PE、EVA、変性オレフィン樹脂等が使用できる。また容器の材質がポリスチレン樹脂であれば、アクリル樹脂、EVA、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)、PE、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等が使用できる。
【0041】
積層体の用途が包装袋である場合のヒートシール樹脂層(3)の材質としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、EVA、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用できる。
【0042】
ヒートシール樹脂層(3)と、基材となる紙またはプラスチックフィルムとの密着性を高めるために、基材層(2)の表面にプライマー層を設けてもよい。プライマー層の樹脂系としては、EVA、アクリルアミン、ポリエステル、ウレタンエステル、塩酢ビ、変性オレフィン、イミン、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エチル(EAA)等が用いられる。
【0043】
第1の粒子(6)としては、シリコーン粒子、フッ素樹脂粒子、シリカ粒子、合成シリカ粒子、アルミナ粒子、ナイロン粒子、アクリル樹脂粒子から選択される1種以上を用いることができる。
【0044】
第1の粒子(6)の平均一次粒子径は、1000nm以上50000nm以下であることが好ましく、加工適性や弾き性の観点からは、5000nm以上30000nm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
シリコーン粒子としては、球状シリコーンゴムパウダー、ポリスチレン、アクリル、ポリウレタン、シリカ、アルミナ、酸化チタンのいずれかからなるコア粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆した粒子、またはジメチルポリシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、または(RSiO
3/2)
nで表されるポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粒子が好ましく使用できる。
【0046】
第1の粒子(6)としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂などの有機樹脂粒子や、シリコーンゴム、及び珪素酸化物、チタン酸化物などの無機酸化物粒
子の表面をポリメチルシルセスキオキサンなどのポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子も好ましく使用できる。
【0047】
アクリル樹脂粒子としては、(架橋)ポリメタクリル酸メチル、(架橋)ポリメタクリル酸ブチル、(架橋)ポリアクリル酸エステルが好ましく使用できる。
【0048】
フッ素樹脂粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、EFEP(ダイキン工業株式会社製特殊フッ素樹脂)などの粒子が好ましく使用できる。
【0049】
第1粒子層(4)とヒートシール樹脂層(3)の接着強度あるいは、第1粒子層(4)中での凝集力を高めるために、第1の粒子(6)としては、シリカ粒子、合成シリカ粒子、アルミナ粒子などの無機粒子が良く、さらに強い密着性を求める場合は、ナイロン粒子、アクリル樹脂粒子などが好ましい。これらを混合して用いてもよい。
【0050】
次に第1粒子層(4)を形成する方法について説明する。上記に挙げたような粒子をその種類に応じて、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、またはアセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶剤、または酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール系溶剤、或いは水を溶媒として、分散液を作成し、これを塗布する。続いて乾燥工程で溶媒を揮発させれば良い。この時の第1の粒子(6)と溶媒の重量比率は、5:95〜95:5の範囲が適当である。
【0051】
塗布後の第1の粒子(6)は、単独で存在しても、または凝集して存在しても良いが、より均一に分布させることが好ましい。
【0052】
第1粒子層(4)とヒートシール樹脂層(3)との接着性を高めたい場合や、第1粒子層内における凝集力を高めたい場合、バインダーとしてアクリル樹脂、EVA樹脂、塩酢ビ樹脂、ポリウレタン樹脂、SBR樹脂、変性オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびこれらの変性樹脂を使用することが好ましい。より強い接着力や凝集力を確保するためには、ヒートシール樹脂層と同一の樹脂をバインダーとして用いることが良い。第1の粒子(6)とバインダー樹脂の重量比率は、5:95〜95:5の範囲が適当である。
【0053】
第1粒子層(4)の塗工方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、ディッピングコート法、スプレーコート法など任意の塗工方法を用いることができる。実験室的にはスピンコート法でもよい。
【0054】
疎水性粒子(7)としては、疎水官能基で表面処理した無機酸化物粒子が良く、コアとなる粒子が酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの酸化物であり、コアとなる粒子の表面をシランカップリング剤で処理して、疎水性の官能基を付与したものが良い。
【0055】
疎水官能基としては、ジメチルシリル(CH
3)
2Si(O−R)
2、トリメチルシリル(CH
3)
3SiO−R、ジメチルポリシロキサン(CH
3)
2−Si−O−Si(O−R)
3、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルなどが好ましいが、より好ましくはメチル基(CH
3)が多いトリメチルシリル官能基が良い。
【0056】
疎水性粒子(7)の平均一次粒子径は、5nm以上1000nm以下が好ましく、加工適性、弾き性の観点から、10nm以上500nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。疎水性粒子(7)は、単独で存在しても、または凝集して存在しても良いが、より均一に分布させることが好ましい。
【0057】
疎水性粒子(7)を第1粒子層(4)に強固に接着させたり、撥水層(5)の層内凝集力を高めるために、バインダーとして金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの加水分解物(7)を添加することは、非常に有効である。
【0058】
金属アルコキシドは、テトラエチルオルソシリケート(Si(OC
2H
5)
4)(TEOS)、トリイソプロピルアルミニウム(Al(OC
3H
7)
3)などの、一般式M(OR)n(Mは珪素、チタニウム、アルミニウム、ジルコニウムなどの金属、Oは酸素、Rはメチル基、エチル基などのアルキル基)で表されるものである。その中でも、Mが珪素、アルミニウム、チタニウムである金属アルコキシドの特性が優れている。
【0059】
撥水層(5)に含まれる疎水性粒子(7)とバインダーの比率については、疎水性粒子(7)と前記金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物を金属酸化物に換算した時の重量比が、5:95〜95:5の範囲であることが好ましい。
【0060】
撥水層(4)の膜厚については、100nm以上5000nm以下であることが好ましい。100nm未満では、十分な撥水性が期待できない。また5000nm以上であると、ヒートシール樹脂層(3)のヒートシール性を低下させる恐れがある。
【0061】
第1粒子層(4)またはヒートシール樹脂層(3)の表面に撥水層(5)を形成する方法としては、公知のロールコート法、グラビアコート法、ディッピングコート法、スプレーコート法などを用いることができる。実験室的にはスピンコート法も使用できる。
以下実施例に基づいて、本発明に係る撥水性積層体について更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0062】
基材層(2)として坪量52.3g/m
2の模造紙と厚さ7μmのアルミニウム箔を貼り合せたものを使用した。アルミニウム箔面にプライマー層を介して、ヒートシール樹脂層(3)としてヒートシールニスを塗布し、次いで第1粒子層(4)、撥水層(5)を順次設けた。
【0063】
プライマー層は、ポリエステル樹脂とイソシアネート硬化剤を混合し、乾燥後の塗布量で1g/m
2となるようにバーコーターで塗布し、80℃1分の熱風乾燥を行った。
【0064】
ヒートシールニス:ポリアクリレート樹脂系で、乾燥後の塗布量が3g/m
2となるように、バーコーターで塗布し、80℃1分の熱風乾燥を行った。
【0065】
第1粒子層:アクリル粒子(平均一次粒子径5000nm)と、バインダーとしてのアクリル樹脂を、固形分重量比で粒子/樹脂=50/50とした。乾燥後の固形分塗布量を2g/m
2となるようにバーコーターで塗布し、80℃1分の熱風乾燥を行った。
【0066】
撥水層(5)を形成するための塗工液を以下の処方に基づいて調製した。
・疎水性粒子:トリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径15nm)を用いた。
・金属アルコキシド加水分解液:TEOSに、塩酸でpHを1に調整した水を加えて撹拌し、加水分解液を作成した後、水を加えてSiO
2分として固形分濃度が5%となるように調整した。
・撥水層塗工液:金属アルコキシド加水分解液に、疎水性粒子を固形分重量比(アルコキシドはSiO
2換算)で50/50となるように混合、分散して塗工液を作成した。
【0067】
上記基材の第1粒子層面に、バーコーターを用いて、上記塗工液を固形分塗布量2g/m
2となるように塗工し、100℃10分の熱風乾燥を行い、目的とする撥液性積層体を作成した。
【0068】
評価方法としては、以下の評価を実施した。
撥水性評価:水の転落角を測定。60°>:○、60°≦:×、水とヨーグルトで実施。粒子密着性:セロファン粘着テープ剥離。粒子の取られなし:○、取られあり:×
【実施例2】
【0069】
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径15000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例3】
【0070】
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径30000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例4】
【0071】
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径5000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=10/90とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例5】
【0072】
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径5000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=90/10とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例6】
【0073】
第1粒子層の仕様を、ナイロン粒子(平均一次粒子径5000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例7】
【0074】
第1粒子層の仕様を、シリカ粒子(平均一次粒子径5000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例8】
【0075】
第1粒子層の仕様を、メチルシリコーン粒子(平均一次粒子径5000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例9】
【0076】
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径5000nm)+EVA樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例10】
【0077】
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径5000nm)+ポリウレタン樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例11】
【0078】
疎水性粒子としてトリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径50nm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例12】
【0079】
疎水性粒子としてトリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径100nm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例13】
【0080】
疎水性粒子としてトリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径200nm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例14】
【0081】
実施例1において、撥水層塗工液を、金属アルコキシド加水分解液に、疎水性粒子を固形分重量比(アルコキシドはSiO
2換算)で10/90となるように混合、分散して作成した。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例15】
【0082】
実施例1において、撥水層塗工液を、金属アルコキシド加水分解液に、疎水性粒子を固形分重量比(アルコキシドはSiO
2換算)で90/10となるように混合、分散して作成した。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例16】
【0083】
疎水性粒子としてジメチルポリシロキサンを付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径15nm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【実施例17】
【0084】
疎水性粒子としてトリメチルシリル基を付与したアルミナ粒子(平均一次粒子径15nm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【0085】
<比較例1>
実施例1において、第1粒子層を省略した以外は実施例1と同様にして、積層体を作成した。
【0086】
<比較例2>
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径500nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【0087】
<比較例3>
第1粒子層の仕様を、アクリル粒子(平均一次粒子径80000nm)+アクリル樹脂、固形分重量比 粒子/樹脂=50/50とした。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【0088】
<比較例4>
実施例1において、撥水層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【0089】
<比較例5>
実施例1において、撥水層に金属アルコキシドを用いなかった。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【0090】
<比較例6>
疎水性粒子として、トリメチルシリル基を付与したシリカ(SiO
2)粒子(平均一次粒子径1000nm)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、撥水性積層体を作成した。
【0091】
以上で得られた積層体について、評価を行った結果を表1に示す。なお表中でバインダーと記したのは、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの加水分解物の意味である。
【表1】
【0092】
表1の結果から、第1粒子層のない比較例1や、第1の粒子の粒子径が不適当な比較例2や、疎水性粒子の粒径が不適当な比較例6では、撥水性はあるものの、ヨーグルトに対する撥液性が不十分である。第1の粒子が大きすぎる比較例3や、撥水層のない比較例4では、撥水性も不十分である。また撥水層にバインダーを用いなかった比較例5では、撥水層の密着性が不十分である。
【0093】
これに対して、本発明に係る積層体である実施例1〜17の積層体は、いずれも弾き性、密着性とも良好な結果が得られた。