(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、本体部材と蓋部材とを溶接する場合には、溶接時の熱がケースに収容された電極体に伝達され、当該電極体を構成するセパレータが破損してしまう虞がある。このため、従来から、ケースを溶接する際の熱が電極体に伝達されることを抑制し、これによりセパレータが破損することを抑制することが期待されている。
【0006】
この発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケースを溶接する際の熱によってセパレータが破損することを抑制できる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、セパレータを間に挟んだ状態で正極及び負極が積層された電極体と、前記電極体及び電解質を収容するケースと、を備えた蓄電装置であって、前記ケースは、底壁及び当該底壁の周縁部から延出形成された側壁を含み、一面に開口部を有する箱状であって前記電極体を収容する本体部材と、前記本体部材の開口部を覆う蓋部材と、を含み、前記本体部材は、前記側壁における先端部の内側に前記開口部の全周にわたって段部が形成されており、前記蓋部材は、主部と当該蓋部材の周縁部に沿って前記主部よりも板厚が薄い段部とを備え、前記本体部材の段部と前記蓋部材の段部と
が、互いの2つの面で接した状態で嵌め合わ
されていることにより、前記蓋部材は前記本体部材に組み付けられており、前記蓋部材の内側には、前記主部、前記蓋部材の段部と前記本体部材とにより前記電極体側に開口する溝部が構成され、前記本体部材と前記蓋部材とは、前記蓋部材の段部に沿って溶接されており、前記溝部は、前記蓋部材の周縁部の全周にわたって形成されていることを要旨とする。
【0008】
これによれば、蓋部材は、主部と、蓋部材の周縁部に沿って主部よりも板厚が薄い段部とを備え、蓋部材の内側には、主部と、段部と、本体部材とにより電極体側に開口する溝部が構成され、本体部材と蓋部材とは、段部に沿って溶接される。このため、蓋部材の内側には、本体部材と蓋部材とを溶接する溶接部に沿って溝部による空間が形成され、これにより蓋部材の内側のうち接合部に沿った領域において、蓋部材と電極体とを離間させることができる。したがって、ケースを溶接する際に、熱が蓋部材から電極体に伝達されることを抑制し、ケースを溶接する際の熱によってセパレータが破損することを抑制できる。
また、溝部は、蓋部材の周縁部の全周にわたって形成されていることから、熱が蓋部材から電極体に伝達されることを抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電装置において、前記電極体は、前記蓋部材の内面と対向する対向面を有しており、前記溝部は、前記対向面の周縁部に対向していることを要旨とする。
【0010】
これによれば、溝部は、蓋部材の内面と対向する電極体の対向面の周縁部に対向している。このため、電極体と蓋部材との間に溝部による空間を介在させ、蓋部材から電極体に熱が伝達されることをより確実に抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の蓄電装置において、前記蓋部材の内面と前記対向面とは、直接的に又は絶縁シートを介して間接的に接触していることを要旨とする。
【0012】
これによれば、蓋部材の内面と電極体の対向面とは、直接的に又は絶縁シートを介して間接的に接触していることから、電極体と蓋部材との間における熱交換を促進できる。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の蓄電装置において、前記電極体の積層方向の端面が前記対向面であることを要旨とする。
【0013】
これによれば、電極体の積層方向の端面が、蓋部材の内面に対向する対向面となる。このため、電極体を構成する正極及び負極の面に沿った方向の端面を蓋部材の内面に対向させる構成と比較して、正極及び負極の間に配設されるセパレータを蓋部材から離間させ、当該セパレータがケースを溶接する際の熱によって破損することをより抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記蓋部材と前記本体部材とは前記蓋部材の周縁部の全周にわたって溶接され
ていることを要旨とする。
【0015】
これによれば、蓋部材と本体部材とを蓋部材の周縁部の全周にわたって溶接することにより、より強固に接合することができ
る。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記溝部の幅は、前記蓋部材の前記溝部に隣接する主部の板厚と同じ寸法に形成されていることを要旨とする。
【0017】
本体部材と蓋部材とを溶接する場合、蓋部材の外面の周縁部に対して付与される熱は、当該熱が付与される部位から、蓋部材の内側(電極体側)に向かって拡散しながら伝達される。本発明によれば、溝部の幅は、蓋部材の溝部に隣接する主部の板厚と同じ寸法に形成されていることから、上述のように拡散しながら伝達される熱が電極体に伝達されることを好適に抑制できる。さらに、溝部の幅を蓋部材の溝部に隣接する主部の板厚を超える寸法に形成する場合と比較して、電極体と蓋部材との間における熱交換が溝部(空間)によって妨げられることを抑制できる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記蓄電装置は二次電池であることを要旨とする。したがって、この発明の二次電池は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明の効果を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケースを溶接する際の熱によってセパレータが破損することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図4にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置としてのリチウムイオン二次電池(以下、単に「二次電池」と示す)11は、全体として扁平な略直方体状(直方体状)をなすケース13を備えている。以下の説明では、矢印Y1に示すケース13の長手方向を左右方向と示し、矢印Y2に示すケース13の高さ方向を上下方向と示し、矢印Y3に示すケース13の短手方向を前後方向と示す。
【0022】
ケース13は、矩形の平坦な平板状をなす底壁14aと、当該底壁14aを囲う4つの各縁部(周縁部)からそれぞれ前方へ向かって直角に延出形成された4つの側壁14bとからなり、全体として一面(一端)に開口部14cを有する扁平な四角箱状(有底筒状)をなす本体部材14を備えている。本体部材14は、金属材料(例えばステンレスやアルミニウムなど)から形成されている。また、各側壁14bにおける先端部の内側には、開口部14cの全周にわたって階段状(段状)をなす段部14dが形成されている。
【0023】
また、側壁14bのうち1つの側壁14b(本実施形態では上側に配置される側壁14b)には、当該側壁14bを厚さ方向(上下方向)に貫通する略円柱状をなし、一端がケース13の外側に突出する正極端子15、及び負極端子16が形成されている。本実施形態の正極端子15及び負極端子16は、金属材料からなるとともに、ケース13(本体部材14)からそれぞれ絶縁された状態で固定されている。本実施形態の二次電池11では、外部端子となる正極端子15及び負極端子16を介して充電及び放電がなされる。
【0024】
また、ケース13は、本体部材14に組み付けられ、本体部材14の開口部14cを覆って密閉する正面視で四角形の略平板状に形成された蓋部材17を備えている。蓋部材17は、金属材料(例えばステンレスやアルミニウムなど)から形成されている。
【0025】
図2に示すように、蓋部材17の内側には、当該蓋部材17の周縁部の全周にわたって階段状の段部17bが形成されている。そして、蓋部材17の内側には、段部17bに囲まれるように、主部17dが本体部材14側へ突出形成されている。本実施形態において、主部17dの板厚は、例えば0.8mm〜4mm(本体部材14の板厚の1倍〜5倍)であり、好ましくは1mm〜3mm(本体部材14の板厚の1.25倍〜3.75倍)とされている。
【0026】
この主部17dは、平坦な蓋部材17の内面17aをなしている。主部17dの上下方向の寸法(長さ)は、開口部14cにおける上下方向の寸法(長さ)より小さく形成されているとともに、主部17dの左右方向の寸法(長さ)は、開口部14cにおける左右方向の寸法(長さ)より小さく形成されている。
【0027】
図1に示すように、蓋部材17は、当該蓋部材17に形成された段部17bと、側壁14bに形成された段部14dとを相互に嵌め合わせることにより、主部17dを開口部14cから本体部材14へ挿入させた状態で本体部材14に組み付けられている。そして、蓋部材17と本体部材14とは、蓋部材17の周縁部の全周にわたってレーザ溶接によって溶接されて、段部17bに沿った溶接部17cを形成している。溶接部17cは、正面視(底壁14aに垂直な方向から見て)において、開口部14cの内周面と略一致する位置に設定されている。
【0028】
また、本体部材14と蓋部材17との間には、直方体状の収容空間Saが形成されている。このケース13内に形成される収容空間Saには、正極としての正極シート21、負極としての負極シート31、及びこれら正極シート21と負極シート31との間に介装されたセパレータ18からなる電極体19が収容されている。電極体19では、それぞれ複数の正極シート21及び負極シート31が間にセパレータ18を挟んだ状態で積層されている。また、電極体19は、全体として上下方向及び左右方向に扁平な直方体状をなしている。
【0029】
図3に示すように、正極シート21は、矩形のシート状をなす正極金属箔22を備えている。正極金属箔22は、例えばアルミニウムからなる。正極金属箔22の両表面(前面及び後面)には、正極金属箔22の1辺となる上縁部23から左右方向の全幅にわたって一定幅で設定された未塗工部としての非塗布領域24aを除き、その全面に正極活物質を含む活物質合剤が塗布され、正極活物質を含む正極活物質層24(塗布領域24b)が形成されている。
【0030】
また、正極シート21は、正極金属箔22の上縁部23から上方へ向かって延出形成された四角形をなす正極リード部25を備えている。本実施形態の正極リード部25は、正極シート21において正極金属箔22と一体に形成されている。また、正極リード部25は、上縁部23における左右方向の左側に形成されている。そして、正極リード部25の両表面には、正極活物質層24が形成されておらず、正極リード部25は、非塗布領域24aの一部を構成する。
【0031】
また、負極シート31は、矩形のシート状をなす負極金属箔32を備えている。負極金属箔32は、例えば銅からなる。負極金属箔32の両表面(前面及び後面)には、負極金属箔32の1辺となる上縁部33から左右方向の全幅にわたって一定幅で設定された未塗工部としての非塗布領域34aを除き、その全面に負極活物質を含む活物質合剤が塗布され、負極活物質を含む負極活物質層34(塗布領域34b)が形成されている。
【0032】
また、負極シート31は、負極金属箔32の上縁部33から上方へ向かって延出形成された四角形をなす負極リード部35を備えている。本実施形態の負極リード部35は、負極シート31において負極金属箔32と一体に形成されている。また、負極リード部35は、上縁部33における左右方向の右側に形成されている。そして、負極リード部35の両表面には、負極活物質層34が形成されておらず、負極リード部35は、非塗布領域34aの一部を構成する。
【0033】
また、セパレータ18は、ポリプロピレンからなり、多孔質のシート状の基材層の両面に、ポリエチレンからなり、基材層よりも微細な空孔構造(細孔)を有する多孔質のシート状の細孔層を形成した3層構造である。セパレータ18は、細孔層を構成する樹脂材料(ポリエチレン)の融点(例えば135℃〜140℃)に達すると、当該細孔層が溶融し、空孔構造が崩壊して細孔が塞がれる。これにより、正極シート21と負極シート31との間における電流(イオンの通過)が遮断される(所謂シャットダウン機能)。以下の説明では、セパレータ18の細孔層を構成するポリエチレンの融点を特にシャットダウン温度と示す。
【0034】
そして、電極体19は、正極シート21及び負極シート31の間にセパレータ18を挟んだ状態で、正極シート21及び負極シート31を前後方向(厚さ方向)に交互に積層して形成されている。本実施形態の電極体19は、複数枚(例えば80枚)の正極シート21と、複数枚(例えば81枚)の負極シート31を積層して形成される。
【0035】
また、電極体19では、その積層方向の両端に負極シート31が配置されている。なお正面視において、各正極シート21の正極金属箔22は、各負極シート31の負極金属箔32よりも小さく形成されているとともに、電極体19における積層方向から見た場合において、各正極シート21の塗布領域24bは、負極シート31の塗布領域34bに内包されている。
【0036】
本実施形態では、矢印Y1に示す左右方向、及びY2に示す上下方向が正極シート21、負極シート31、及びセパレータ18の面に沿った方向(積層方向に直角)となり、矢印Y3に示す前後方向が電極体19における正極シート21、負極シート31、及びセパレータ18の積層方向となる。
【0037】
そして、
図1に示すように、電極体19の上縁部において、左右方向の中央より左側には、正極リード部25がセパレータ18を介装させない状態で前記積層方向に積層された正極集電部(正極リード群)28が形成されている。また、電極体19の上縁部において左右方向の中央より右側には、負極リード部35がセパレータ18を介装させない状態で前記積層方向に積層された負極集電部(負極リード群)38が形成されている。
【0038】
また、
図4に示すように、電極体19は、絶縁シート(絶縁フィルム)からなる絶縁袋13aに覆われた状態で収容空間Sa(本体部材14)に収容されている。絶縁袋13aをなす絶縁シートは、セパレータ18を形成する材料の融点より高い温度の融点、又は熱分解温度を有する材料から形成されている。
【0039】
また、電極体19は、当該電極体19をなす正極シート21及び負極シート31の積層方向と、側壁14bの延出方向とを一致させた状態でケース13(本体部材14)に収容されている。即ち電極体19は、本体部材14に対する電極体19の挿入方向(開口部14cから底壁14aへ向かう方向)と、電極体19における積層方向とを一致させた状態で本体部材14に収容されている。
【0040】
そして、電極体19は、当該電極体19をなす正極シート21及び負極シート31の積層方向の端面(本実施形態では前面19a)が蓋部材17の内面17aに沿った状態でケース13に収容されている。即ち、ケース13内において電極体19は、間に絶縁袋13aを挟んだ状態で、前面19aが蓋部材17の内面17aに対向し、且つ後面19bが底壁14aの内面14eに対向した状態で配置されている。本実施形態では、電極体19の前面19aが対向面となる。
【0041】
また、電極体19の前面19a、絶縁袋13a、及び蓋部材17の内面17aは、相互に面接触している。また、電極体19の後面19b、絶縁袋13a、及び底壁14aの内面14eは、相互に面接触している。即ち、電極体19の前面19aと蓋部材17の内面17a、及び電極体19の後面19bと底壁14aの内面14eは、絶縁袋13aを介して間接的に接触している。
【0042】
そして、
図1に示すように、正極集電部28(正極リード部25)は、四角形の平板状をなす集電部材としての正極集電端子40の一端(先端)に対し、例えば抵抗溶接などにより接合され、電気的に接続されている。また、正極集電端子40の他端(基端)は、正極端子15においてケース13の収容空間Saに突出する他端(基端)側に連結され、電気的に接続されている。
【0043】
負極集電部38(負極リード部35)は、四角形の平板状をなす集電部材としての負極集電端子41の一端(先端)に対し、例えば抵抗溶接などにより接合され、電気的に接続されている。また、負極集電端子41の他端(基端)は、負極端子16においてケース13の収容空間Saに突出する他端(基端)側に連結され、電気的に接続されている。ケース13(収容空間Sa)内には、電解質(電解液)が充填されている。
【0044】
そして、
図4に示すように、蓋部材17の内側には、段部17bと主部17dと本体部材14に囲まれ、電極体19側に開口する溝部45が蓋部材17と本体部材14との溶接部17cに沿って形成されている。本実施形態の溝部45は、主部17dよりも板厚が薄い段部17bが各側壁14bとの嵌合部より広い範囲に形成されることにより構成されている。溝部45は電極体19を収容する収容空間Saと段部17bとの間に空間Sbを構成する。なお、段部17bの板厚は、段部17bに隣接する主部17dの例えば2分の1である。
【0045】
また、溝部45は、開口部14cの内周面(蓋部材17の周縁部)から一定幅(蓋部材17の面に沿った方向であって、蓋部材17の周縁部と直交する方向)で形成されている。溝部45の幅は、蓋部材17における溝部45の非形成領域となる主部17dの板厚と同じ寸法に形成されている。この溝部45の幅は、例えば0.8mm〜4mmとされ、好ましくは1mm〜3mmとされている。
【0046】
ここで本実施形態において、本体部材14と蓋部材17とは、蓋部材17の外面に対して直交する方向から、溶接部17cに沿って加工用のレーザ光46を照射することにより、蓋部材17における溶接部17c及び側壁14bにおける段部14dを溶融させ、溶接されている。そして、溶接部17cにレーザ光46が照射されて発生した熱は、主にレーザ光46の照射点(部位)から電極体19側へ向かって、レーザ光46の照射点を頂点とし、レーザ光46の照射方向と直交する方向から見た場合に頂点の角度が90°の円錐状をなすように蓋部材17を伝達される(図中に破線で示す)。
【0047】
前述のように、本実施形態の溝部45は、その幅が蓋部材17における主部17dの板厚と同じ寸法に形成されている。このため、溝部45の開口部(開口領域)は、蓋部材17の内側において、溶接部17cを通過し且つ蓋部材17の外面と直交する軸線と、蓋部材17の外面との交点から軸線に対して45°の範囲における投影部(投影領域)に形成されていると言える。
【0048】
そして、正面視において、電極体19の前面19aにおける左右方向の両縁部は、蓋部材17において左右方向の両縁部に形成された溝部45の略中央にそれぞれ位置している。同様に、電極体19の前面19aにおける下縁部は、蓋部材17の下縁部に形成された溝部45の略中央に位置している。即ち、本実施形態において、溝部45は、電極体19における前面19aの周縁部に対向させて形成されている。
【0049】
次に、上記のように構成した二次電池11の作用について説明する。
図4に示すように、本実施形態の二次電池11は、収容空間Saに電極体19を収容し且つ蓋部材17を本体部材14に組み付けた状態において、蓋部材17の外面に設定された溶接部17cに沿って加工用のレーザ光46を照射し、本体部材14と蓋部材17とを溶接して形成される。
【0050】
このとき、レーザ光46の照射によって溶接部17cに生じた熱は、レーザ光46の照射点から電極体19側へ向かって蓋部材17を伝達される(図中に破線で示す)。しかしながら、蓋部材17の内側には、溶接部17cに沿って溝部45が形成されている。このため、蓋部材17の内側には、溶接部17cに沿って溝部45による空間Sbが形成され、これにより蓋部材17の内側のうち溶接部17cに沿った領域(溝部45)において、蓋部材17と電極体19とを離間させることができる。このため、ケース13を溶接する際に、熱が蓋部材17から電極体19に伝達されることを抑制できる。
【0051】
前述のように、電極体19を構成するセパレータ18は、温度がシャットダウン温度に達すると、細孔層が溶融してシャットダウン機能が働くようになっている。仮に、ケース13を溶接する際の熱が電極体19に伝達され、電極体19の温度が前記シャットダウン温度に達した場合には、セパレータ18においてシャットダウンが発生し、二次電池11としての内部抵抗が高くなってしまうという問題が発生する。
【0052】
しかしながら、本実施形態では、ケース13の溶接時における熱が電極体19に伝達されることを抑制し、ケース13の溶接時にセパレータ18が溶融したり、当該セパレータ18の溶融に伴ってシャットダウン機能が働いてしまうなど、セパレータ18が破損してしまうことを好適に抑制できる。
【0053】
また、蓋部材17と本体部材14とは、蓋部材17の周縁部に沿って設定された溶接部17cにおいて溶接されているとともに、溝部45は、蓋部材17の内面17aと対向する電極体19の前面19aにおける周縁部に対向させて形成されている。このため、電極体19と蓋部材17との間に空間Sb(溝部45)を介在させ、蓋部材17から電極体19に熱が伝達されることをより確実に抑制できる。
【0054】
また、蓋部材17の内面17aと、電極体19の前面19aとは、絶縁袋13aを介して間接的に接触していることから、電極体19と蓋部材17との間において前面19aを介して行われる熱交換を促進できる。即ち、本実施形態では、電極体19と蓋部材17とを、相互に熱的に(熱交換可能に)連結できる。なお、本実施形態では、電極体19と底壁14aについても絶縁袋13aを介して間接的に接触し、相互に熱的に(熱交換可能に)連結されている。
【0055】
また、本実施形態では、電極体19をなす正極シート21及び負極シート31の積層方向の端面(前面19a)が、蓋部材17の内面17aに対向している。このため、電極体19の面に沿った方向(積層方向に直角)の端面を蓋部材17の内面17aに対向させる構成と比較して、正極シート21及び負極シート31の間に配設されるセパレータ18を溶接部17c(蓋部材17)から離間させることができる。
【0056】
また、本実施形態において、蓋部材17と本体部材14とは、蓋部材17における周縁部の全周にわたって溶接されていることから、蓋部材17と本体部材14とをより強固に接合することができる。そして、このような構成を採用する場合であっても、溝部45は、蓋部材17の周縁部に沿って形成される溶接部17cの全体にわたって形成されていることから、熱が蓋部材17から電極体19に伝達されることを抑制できる。
【0057】
また、溝部45の幅は、蓋部材17のうち主部17dの板厚と同じ寸法に形成されている。前述のように、レーザ光46の照射によって発生した熱は、レーザ光46の照射点(溶接部17c)から90°の角度で拡散されつつ伝達される。これに対し、本実施形態では、溝部45の幅を主部17dの板厚と同じ寸法に形成することで、蓋部材17における熱の伝達範囲の略全体にわたって溝部45(空間Sb)を介在させている。したがって、ケース13の溶接時に、熱が蓋部材17から電極体19に伝達されることを好適に抑制できる。
【0058】
ここで、例えば溝部45の幅を主部17dの板厚を超える寸法に形成する場合には、ケース13を溶接する際に、熱が蓋部材17から電極体19へ伝達されることをさらに抑制できると考えられる。しかしながら、このような構成を採用した場合には、二次電池11の使用時において、二次電池11を温度調節する際にも蓋部材17と電極体19との間における熱の移動を妨げ、二次電池11を適切に温度調節できなくなる虞がある。
【0059】
これに対して、本実施形態の溝部45(空間Sb)は、蓋部材17の内側において当該蓋部材17の周縁部(開口部14cの内周面)に沿った領域にのみ、主部17dの板厚と同じ幅で形成されている。即ち、本実施形態では、レーザ光46の照射による熱が伝達されやすい蓋部材17の周縁部にのみ溝部45(空間Sb)を形成している。このため、本実施形態では、ケース13の溶接時における熱の伝達を抑制しながらも、二次電池11としての使用時において、温度調節をする際の熱の移動を好適に行い得るようになっている。さらに、本実施形態の蓋部材17では、溝部45を除く主部17dの全体において板厚が確保されることから、蓋部材17の強度を好適に保つことができる。
【0060】
そして、本実施形態の二次電池11では、二次電池11としてケース13を溶接する際の熱によってセパレータ18が破損することを抑制できる結果、当該セパレータ18の破損に起因する電気容量の低下に伴って、充電サイクルが短くなることを抑制できる。また、二次電池11として、温度調節を容易に行うことができることから、二次電池11の動作に適した温度に温度調節することにより、二次電池11の電気容量が低下することを好適に抑制することができる。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)蓋部材17と本体部材14とが溶接されることによってケース13が形成されるとともに、蓋部材17の内側には、電極体19側に開口する溝部45が蓋部材17と本体部材14との溶接部17cに沿って形成されている。このため、蓋部材17の内側には、溶接部17cに沿って溝部45による空間Sbが形成され、これにより蓋部材17の内側のうち溶接部17cに沿った領域において、蓋部材17と電極体19とを離間させることができる。したがって、ケース13を溶接する際に、熱が蓋部材17から電極体19に伝達されることを抑制し、ケース13を溶接する際の熱によってセパレータ18が破損することを抑制できる。
【0062】
(2)蓋部材17と本体部材14とは、蓋部材17の周縁部(溶接部17c)に沿って溶接されているとともに、溝部45は、蓋部材17の内面17aと対向する電極体19の前面19aにおける周縁部に対向させて形成されている。このため、電極体19と蓋部材17との間に溝部45による空間Sbを介在させ、熱が蓋部材17から電極体19に伝達されることをより確実に抑制できる。
【0063】
(3)蓋部材17の内面17aと、電極体19の前面19aとは、絶縁袋13aを介して間接的に接触していることから、電極体19と蓋部材17との間における熱交換を促進できる。したがって、二次電池11の温度調節をより容易に行うことができる。
【0064】
(4)電極体19の積層方向の端面(前面19a)が、蓋部材17の内面17aに対向している。このため、電極体19の積層方向に直交する方向(正極シート21及び負極シート31の面に沿った方向)の端面が蓋部材17の内面17aに対向する構成と比較して、正極シート21及び負極シート31の間に配設されるセパレータ18を溶接部17c(蓋部材17)から離間させ、当該セパレータ18がケース13を溶接する際の熱によって破損(溶融)することをより抑制できる。
【0065】
(5)蓋部材17と本体部材14とを、蓋部材17における周縁部(溶接部17c)の全周にわたって溶接することにより、より強固に接合することができる。そして、このような構成を採用する場合であっても、溝部45は、蓋部材17の周縁部に沿って形成される溶接部17cの全周にわたって形成されていることから、蓋部材17から熱が電極体19に伝達されることを抑制することができる。
【0066】
(6)溝部45において蓋部材17の周縁部と直交する方向の幅は、蓋部材17における主部17dの板厚と同じ寸法に形成されている。このため、レーザ光46の照射点(溶接部17c)から、電極体19側へ拡散しながら伝達される熱が電極体19に伝達されることを好適に抑制できる。さらに、溝部45の幅を蓋部材17における主部17dの板厚を超える寸法に形成する場合と比較して、電極体19と蓋部材17との間における熱交換が溝部45(空間Sb)によって妨げられることを抑制できる。
【0067】
(7)二次電池11として、ケース13を溶接する際の熱によってセパレータ18が破損することを抑制できるとともに、電極体19の温度調節を容易に行うことができる。
(8)二次電池11としてケース13を溶接する際の熱によってセパレータ18が破損することを抑制できる結果、当該セパレータ18の破損に起因する電気容量の低下に伴って、充電サイクルが短くなることを抑制できる。また、二次電池11として、温度調節を容易に行うことができることから、二次電池11の動作に適した温度に温度調節することにより二次電池11の電気容量が低下することを好適に抑制することができる。
【0068】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○
図5に示すように、電極体19は、正極シート21、負極シート31、及びセパレータ18を帯状(長尺のシート状)に形成するとともに、これらを渦まき状に捲回し、正極シート21及び負極シート31が積層構造をなすように形成してもよい。この場合、正極シート21の上縁部23には、正極シート21の長さ方向において所定間隔で正極リード部25を延出形成する一方で、負極シート31の上縁部33には、負極シート31の長さ方向において所定間隔で負極リード部35を延出形成する。
【0069】
そして、セパレータ18、正極シート21、及び負極シート31を積層した状態で捲回することにより、電極体19において上縁部の左側には、複数の正極リード部25がセパレータ18を間に挟まない状態で層状の構造をなす正極集電部28が上方に向かって延出形成される。また、電極体19において上縁部の右側には、複数の負極リード部35がセパレータ18を間に挟まない状態で層状の構造(層状)をなす負極集電部38が形成される。
【0070】
○
図6に示すように、正極端子15及び負極端子16は、蓋部材17に形成してもよい。この場合、本体部材14は、上面に開口部14cを有する有底筒状に形成する。また、電極体19は、正極シート21及び負極シート31の面に沿った方向のうち、正極集電部28(正極リード部25)及び負極集電部38(負極リード部35)の延出方向(ここでは上下方向)と、側壁14bの延出方向(ここでは上下方向)とを一致させた状態でケース13に収容させる。そして、蓋部材17の内側には、溶接部17cに沿って溝部45を形成するとよい。このように形成しても、ケース13を溶接する際の熱が蓋部材17から電極体19へ伝達されることを抑制できる。なお、本別例では、電極体19のうち、当該電極体19を構成する正極シート21及び負極シート31の面に沿った方向における端面(ここでは上端面)が内面17aと対向する対向面となる。
【0071】
○ 絶縁袋13aに代えて、シート状の絶縁シート(絶縁フィルム)を電極体19と蓋部材17との間、及び電極体19と底壁14aとの間に介在させてもよい。また、絶縁袋13aを省略してもよい。この場合、電極体19の前面19aと蓋部材17の内面17aとを直接的に接触させ、熱的に連結するとよい。
【0072】
○ 溝部45は、蓋部材17の内側において溶接部17cに沿って形成されておれば断続的に形成されていてもよい。また、溝部45は、電極体19の前面19aに対向しない領域について省略してもよい。
【0073】
○ 溝部45は、本体部材14における開口部14cの内周面から離間させて形成されていてもよい。
○ 溝部45の幅は、主部17dの板厚より小さい寸法や大きい寸法に形成されていてもよい。即ち溝部45は、溶接部17cに沿って形成されておればよい。
【0074】
○ 溶接部17cは、蓋部材17の周縁部に沿って設定されておればよく、正面視(底壁14aに垂直な方向から見て)において、開口部14cの内周面に一致されていなくてもよい。
【0075】
○ ケース13(本体部材14及び蓋部材17)は、例えばアーク溶接などを用いて溶接してもよい。
○ 正極金属箔22としたが、二次電池11における電気容量(電池容量)の低下や電池作製時に影響しない程度の厚みのある薄板であってもよい。負極金属箔32についても同様に変更できる。
【0076】
○ 電極体19を構成する正極シート21、及び負極シート31の枚数は適宜変更してもよい。
○ ケース13(本体部材14)の形状は、円柱状や、左右方向に扁平な楕円柱状に形成してもよい。
【0077】
○ 本発明は、蓄電装置及び二次電池としてのニッケル水素二次電池や、蓄電装置としての電気二重層キャパシタとして具体化してもよい。