特許第5924154号(P5924154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924154
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】硬貨出金機及び硬貨出金装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/02 20060101AFI20160516BHJP
   G07G 1/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   G07D9/02
   G07G1/00 331A
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-140240(P2012-140240)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-6598(P2014-6598A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
【審査官】 鈴木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−198290(JP,A)
【文献】 実開平06−056862(JP,U)
【文献】 特開2001−297351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/02
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出金すべき硬貨を所定の繰出方向へ繰り出す繰出部に隣接配置され、水平面に対し傾斜された傾斜面を有し、当該繰出部から繰り出された上記硬貨の円板面を当該傾斜面と対向させ当該傾斜面に沿って下降させる傾斜部と、
上記傾斜部と連接され複数の上記硬貨を貯える貯留部と、
上記傾斜面における上記硬貨の進行経路に少なくとも一部がかかるよう立設され、上記繰出部側よりも上記貯留部側の方が上記傾斜面から大きく突出し、且つ上記貯留部側における上記傾斜面からの突出量が上記硬貨の厚さよりも大きい突出部と
を具えることを特徴とする硬貨出金機。
【請求項2】
上記突出部は、
上記硬貨と当接する部分が上記硬貨の進行経路における左右の中心から左右いずれかに偏った位置に配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨出金機。
【請求項3】
上記突出部は、
上記繰出部側に形成され上記傾斜面と略平行な稜線又は上面を有する平行部と、
上記貯留部側に形成され上記傾斜面に対し上記平行部よりも大きく隆起した隆起部と
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨出金機。
【請求項4】
上記突出部は、
少なくとも上記繰出部側において上記傾斜部からの最大突出部分が当該傾斜部と略平行な平行体と、
上記傾斜部に上記平行体と分離して配置され、少なくとも上記貯留部側において上記傾斜部からの突出量が上記平行体における突出量よりも大きくなるよう、上記貯留部側の方が上記傾斜面から大きく突出するよう傾斜した傾斜体と
を具えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨出金機。
【請求項5】
上記繰出部は、
一の金種の硬貨と他の金種の硬貨とを互いに隣接する箇所から繰り出し、
上記突出部は、
上記一の金種の硬貨及び上記他の金種の硬貨のいずれをも傾斜させる
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨出金機。
【請求項6】
上記突出部は、
上記傾斜部からの突出部分が三角錐状に形成されると共に、当該三角錐における一の頂点が上記一の金種の硬貨の進行経路上に位置し、他の一の頂点が上記他の金種の硬貨の進行経路上に位置する
ことを特徴とする請求項5に記載の硬貨出金機。
【請求項7】
上記硬貨を上記傾斜部における傾斜方向と異なる方向へ導く導側壁
をさらに具え、
上記突出部は、
上記傾斜面における上記導側壁からの間隔が、上記硬貨の直径よりも短い
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨出金機。
【請求項8】
上記突出部は、
上記傾斜部における上記繰出方向と直交する幅方向への移動範囲を規制する側壁からの距離が、上記硬貨の半径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨出金機。
【請求項9】
出金すべき硬貨を所定の繰出方向へ繰り出す繰出部と、
上記繰出部に隣接配置され、水平面に対し傾斜された傾斜面を有し、当該繰出部から繰り出された上記硬貨の円板面を当該傾斜面と対向させ当該傾斜面に沿って下降させる傾斜部と、
上記傾斜部と連接され複数の上記硬貨を貯える貯留部と、
上記傾斜面における上記硬貨の進行経路に少なくとも一部がかかるよう立設され、上記繰出部側よりも上記貯留部側の方が上記傾斜面から大きく突出し、且つ上記貯留部側における上記傾斜面からの突出量が上記硬貨の厚さよりも大きい突出部と
を具えることを特徴とする硬貨出金装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨出金機及び硬貨出金装置に関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ釣銭システムにおいては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されたPOSレジに、紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭機が組み合わされたものが普及しつつある。
【0003】
この釣銭機のうち硬貨を処理する硬貨処理部は、例えばレジ係員に硬貨を投入させる硬貨入金口、投入された硬貨の種類や真偽等を鑑別する鑑別部、硬貨を金種別に収納する収納部、当該収納部から釣銭用の硬貨を繰り出す繰出部、及び繰出部から繰り出された硬貨を貯留してレジ係員に取り出させる硬貨出金口等を有したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば図17(A)に示す硬貨出金口216は、水平面に対し所定の角度で傾斜した傾斜面を有する傾斜部42と、椀状の窪みが形成された貯留部45とにより構成されている。また傾斜部42には、傾斜方向に沿って細長く伸びるリブ250が複数形成されている。
【0005】
硬貨出金口216は、釣銭として出金すべく繰出部(図示せず)から繰り出された硬貨CNを、傾斜部42の傾斜面に沿って下降するよう進行させた後、貯留部45に貯留する。
【0006】
このとき硬貨CNは、リブ250と線接触することにより、傾斜部42の傾斜面と面接触する場合よりも接触抵抗が小さくなるため、当該傾斜部42の途中で停止することなく貯留部45に到達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−242663公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで小売店舗では、営業時間の終了後などに、集計処理が行われることがある。このとき硬貨処理部は、収納している硬貨CNを全て外部へ出金することになる。
【0009】
具体的に硬貨処理部は、例えばレジ係員の操作に基づき、金種毎に、収納している全ての硬貨CNを繰出部から順次繰り出し、硬貨出金口216から出金する。このとき出金される硬貨CNの枚数は、例えば数百枚程度となることがある。
【0010】
しかしながら硬貨出金口216では、例えば図17(B)に示すように、新たに出金された硬貨CNの周側面が直前に出金された硬貨CNの周側面と当接することにより、多数の硬貨CNが貯留部45から傾斜部42に渡って次々と連なってしまう場合がある。
【0011】
このとき硬貨処理部では、連なった硬貨CNが内部の繰出部にまで到達することにより、収納部に収納されている硬貨CNを外部へ出金できなくなってしまう、という問題があった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、多数の硬貨を円滑に出金し得る硬貨出金機及び硬貨出金装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨出金機においては、出金すべき硬貨を所定の繰出方向へ繰り出す繰出部に隣接配置され、水平面に対し傾斜された傾斜面を有し、当該繰出部から繰り出された硬貨の円板面を当該傾斜面と対向させ当該傾斜面に沿って下降させる傾斜部と、傾斜部と連接され複数の硬貨を貯える貯留部と、傾斜面における硬貨の進行経路に少なくとも一部がかかるよう立設され、繰出部側よりも貯留部側の方が傾斜面から大きく突出し、且つ貯留部側における傾斜面からの突出量が硬貨の厚さよりも大きい突出部とを設けるようにした。
【0014】
これにより本発明は、出金済の複数の硬貨が貯留部から傾斜部へ渡って連なっていたとしても、新たに繰り出される硬貨を突出部によって傾斜面上の既存の硬貨よりも高く持ち上げることにより、既存の硬貨の上方に乗り上げさせ貯留部まで下降させることができる。
【0015】
また本発明の硬貨出金装置においては、出金すべき硬貨を所定の繰出方向へ繰り出す繰出部と、繰出部に隣接配置され、水平面に対し傾斜された傾斜面を有し、当該繰出部から繰り出された硬貨の円板面を当該傾斜面と対向させ当該傾斜面に沿って進行させる傾斜部と、傾斜部と連接され複数の硬貨を貯える貯留部と、傾斜面における硬貨の進行経路に少なくとも一部がかかるよう立設され、繰出部側よりも貯留部側の方が傾斜面から大きく突出し、且つ貯留部側における傾斜面からの突出量が硬貨の厚さよりも大きい突出部とを設けるようにした。
【0016】
これにより本発明は、出金済の複数の硬貨が貯留部から傾斜部へ渡って連なっていたとしても、新たに繰り出される硬貨を突出部によって傾斜面上の既存の硬貨よりも高く持ち上げることにより、既存の硬貨の上方に乗り上げさせ貯留部まで下降させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、出金済の複数の硬貨が貯留部から傾斜部へ渡って連なっていたとしても、新たに繰り出される硬貨を突出部によって傾斜面上の既存の硬貨よりも高く持ち上げることにより、既存の硬貨の上方に乗り上げさせ貯留部まで下降させることができる。かくして本発明は、多数の硬貨を円滑に出金し得る硬貨出金機及び硬貨出金装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レジ釣銭システムの外観構成を示す略線的斜視図である。
図2】レジ釣銭システムのブロック構成を示す略線的ブロック図である。
図3】硬貨処理部の構成を示す略線図である。
図4】硬貨出金トレイの構成を示す略線的斜視図である。
図5】硬貨出金トレイの構成を示す略線的斜視図である。
図6】硬貨出金トレイの構成を示す略線的平面図である。
図7】硬貨出金トレイの構成を示す略線的断面図である。
図8】第5リブの構成を示す略線図である。
図9】第1リブの構成を示す略線図である。
図10】第3リブの構成を示す略線図である。
図11】第8リブの構成を示す略線図である。
図12】第9リブの構成を示す略線図である。
図13】硬貨出金の様子(1)を示す略線的斜視図である。
図14】硬貨出金の様子(2)を示す略線的断面図である。
図15】硬貨出金の様子(3)を示す略線的断面図である。
図16】他の実施の形態による硬貨出金トレイの構成を示す略線的断面図である。
図17】従来の硬貨出金口の構成を示す略線的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0020】
[1.レジ釣銭システムの構成]
図1に外観を示すように、レジ釣銭システム1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭システム1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作されるようになされている。
【0021】
なお以下では、レジ係員が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0022】
POSレジ2は、内蔵されたレジ制御部5により全体を統括制御するようになされている。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、当該商品を認識するようになされている。
【0023】
表示操作部6は、液晶ディスプレイ等でなる表示部と、当該液晶ディスプレイに重ねて配置されたタッチパネル等でなる操作部とにより構成されている。
【0024】
表示操作部6は、認識した商品の名称や金額等を液晶ディスプレイに表示する。また表示操作部6は、表示画面の一部に数字等の入力キーを表示しており、タッチパネル上の入力キーに対応する箇所が押下操作されると、当該入力キーに対応した入力操作を受け付けてレジ制御部5へ送信する。これに応じてレジ制御部5は、商品の数量の増減や金額の修正等の各処理を行うようになされている。
【0025】
またPOSレジ2には、レシート処理部7が内蔵されている。レシート処理部7は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口7Aから排出するようになされている。
【0026】
一方、釣銭機3は、大きく分けて、左側の硬貨処理部11と、右側の紙幣処理部12と、前側上部の表示操作部13とにより構成されている。
【0027】
硬貨処理部11の前面には、上段に硬貨入金口14が設けられ、その下方にリジェクト口15及び硬貨出金口16が設けられている。
【0028】
硬貨処理部11は、レジ係員により硬貨入金口14から投入された硬貨CNを取り込んで内部の硬貨収納庫に収納すると共に、レジ制御部5から指示された金種の硬貨CNを硬貨出金口16から釣銭として出金するようになされている(詳しくは後述する)。
【0029】
紙幣処理部12は、レジ係員により紙幣入出金口18から入金された紙幣を取り込んで内部の紙幣収納庫に収納すると共に、レジ制御部5から指示された紙幣を内部の紙幣収納庫から取り出し、これを紙幣入出金口18から釣銭として出金するようになされている。
【0030】
表示操作部13は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。
【0031】
表示操作部13の表示パネルは、硬貨処理部11及び紙幣処理部12における稼働状況を表示するようになされており、例えば硬貨処理部11において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。
【0032】
表示操作部13の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付けるようになされている。
【0033】
また釣銭機3の内部には、釣銭制御部21が設けられている。釣銭制御部21は、図2にブロック構成を示すように、CPU(Central Processing Unit)22を中心に構成されており、フラッシュメモリ等でなるメモリ23から釣銭出金プログラム等の各種プログラムを読み出して実行することにより、釣銭機3を統括制御するようになされている。
【0034】
また釣銭制御部21のCPU22は、I/O(Input / Output)ポート24及び25を介して硬貨処理部11及び紙幣処理部12に組み込まれている複数のモータ、ソレノイド及びセンサとそれぞれ接続され、I/Oポート26を介して操作部13の操作スイッチ及び表示パネルとそれぞれ接続されている。
【0035】
さらに釣銭制御部21のCPU22は、POSレジ2のレジ制御部5とも接続されており、互いに連携して各種処理を実行するようになされている。
【0036】
[2.硬貨処理部の構成]
図3(A)及び(B)に平面図及び側面図を示すように、硬貨処理部11の内部には、硬貨搬送路31、硬貨認識部32、選別搬送路33、硬貨収納庫34及び繰出部35が設けられている。因みに図中の矢印は、硬貨CNの搬送経路を表している。
【0037】
硬貨入金口14は、すり鉢状にえぐられたような形状に形成されると共に、その底部に硬貨CNを1枚ずつ排出する排出機構が組み込まれている。また硬貨入金口14には、所定箇所に硬貨CNの有無を検出するセンサ(図示せず)が組み込まれている。
【0038】
実際の精算処理において、レジ係員等が顧客から商品の代金として硬貨CNを預かると、この硬貨CNは、レジ係員等によりまとめて硬貨入金口14へ入金される。硬貨入金口14は、センサにより硬貨CNが投入されたことを検出すると、釣銭制御部21の制御に基づき、硬貨CNを1枚ずつ硬貨搬送路31に受け渡す。
【0039】
硬貨搬送路31は、硬貨入金口14に投入された硬貨CNを後方へ搬送することにより硬貨認識部32の直近を通過させる。このとき硬貨認識部32は、通過する硬貨CNについて金種(例えば1円、5円、10円、50円、100円及び500円の6種類)や真偽等を判別し、その判別結果を釣銭制御部21へ通知する。
【0040】
これに応じて釣銭制御部21は、正常と判別されなかった硬貨CN(いわゆるリジェクト硬貨)を硬貨搬送路31によりリジェクト口15へ搬送させる。
【0041】
一方釣銭制御部21は、正常と判別された硬貨CNについては、その金種及び枚数を記憶した上で、硬貨搬送路31により後方へ搬送させ、選別搬送路33へ受け渡す。選別搬送路33は、硬貨CNを後方へ搬送させた後、右方向へ搬送させながら選別することにより、金種毎に硬貨収納庫34へ収納させていく。
【0042】
因みに釣銭制御部21は、正常と判別された硬貨CNの金種及び枚数から金額を算出し、この金額を預かり金額としてレジ制御部5へ通知する。これ応じてレジ制御部5は、預かり金額から商品の代金を差し引くことにより釣銭額を算出し、これを釣銭制御部21へ通知するようになされている。
【0043】
硬貨収納庫34は、右から順に1円収納庫34A、10円収納庫34B、100円収納庫34C、500円収納庫34D、5円収納庫34E、及び50円収納庫34Fに区切られている。この硬貨収納庫34には、選別搬送路33により、1円硬貨CN1、10円硬貨CN10、100円硬貨CN100、500円硬貨CN500、5円硬貨CN5及び50円硬貨CN50がそれぞれ分別された状態で収納される。
【0044】
かくして入金された硬貨CNは、硬貨収納庫34に金種毎に分別された状態で収納される。
【0045】
また硬貨収納庫34には、各金種毎に、収納されている硬貨CNを硬貨出金口16へ繰り出す繰出部35が設けられている。この繰出部35は、繰出ベルト35A及びリバースローラ35Bにより構成されている。
【0046】
繰出ベルト35Aは、釣銭制御部21の制御に基づき反時計回り(図3(B))に回転することにより、硬貨収納庫34に収納されている硬貨CNを前方へ搬送する。このとき搬送される硬貨CNは、繰出ベルト35A上で1枚ずつに分離されている場合もあり、また複数枚が積み重なっている場合もある。
【0047】
リバースローラ35Bは、繰出ベルト35Aの上側に、当該繰出ベルト35Aとの間に硬貨CN約1枚分の隙間を空ける位置に設けられている。このリバースローラ35Bは、釣銭制御部21の制御に基づいて反時計回り(図3(B))に回転することにより、繰出ベルト35A上で複数枚が積み重なっている硬貨CNのうち、最下層の硬貨CNを除いた上層の硬貨CNを後方へ戻し、最下層の硬貨CNをそのまま前端まで搬送させる。
【0048】
これにより硬貨CNは、1枚ずつに分離され、繰出ベルト35上に寝かされた状態で、すなわち円板面をほぼ上下に向けた状態で、硬貨出金口16へ順次繰り出される。
【0049】
実際上、釣銭制御部21は、レジ制御部5から釣銭額の通知を受けると、出金すべき硬貨CNの金種及び枚数を決定し、硬貨収納庫34から繰出部35により硬貨出金口16へ繰り出す。
【0050】
因みに釣銭制御部21は、釣銭に紙幣が含まれる場合には、紙幣入出金口18から釣銭額に応じた紙幣を出金させる。
【0051】
これに応じてレジ係員は、レシート処理部7(図1)により精算内容を印字したレシートと共に、紙幣入出金口18から取り出した紙幣及び硬貨出金口16から取り出した硬貨CNを釣銭として顧客に手渡すことにより、一連の精算処理を完了する。
【0052】
このように硬貨処理部11は、顧客から預かった硬貨CNの金種及び枚数を判別し、金種毎に分別して収納すると共に、釣銭額に応じた金種及び枚数の硬貨CNを出金するようになされている。
【0053】
[3.硬貨出金部の構成]
硬貨出金口16は、図4及び図5に示すように、リジェクト口15と一体に、硬貨出金トレイ41として成型されるようになされている。
【0054】
すなわち硬貨出金トレイ41は、右側から中央までの広い範囲に渡り、比較的大きな開口部を有する硬貨出金口16が占めており、左側の狭い範囲に比較的小さな開口部を有するリジェクト口15が隣接している。
【0055】
硬貨出金トレイ41の硬貨出金口16側は、大きく分けて後側の傾斜部42及び前側の貯留部45により構成されている。またリジェクト口15側は、大きく分けて後側の傾斜部47及び手前側の貯留部48により構成されている。
【0056】
硬貨出金口16側の傾斜部42は、平面状であるものの、図6に示す平面図におけるA1−A2断面及びB1−B2断面をそれぞれ図7(A)及び(B)に示すように、前後方向を傾斜方向として前側へ進むに連れて下降している。すなわち傾斜部42は、重力が作用する方向である鉛直方向と直交する水平面に対して傾斜されている。
【0057】
また傾斜部42には、その表面である傾斜面42Sから上方へ盛り上がったリブ50が突設されている(詳しくは後述する)。
【0058】
このため傾斜部42は、繰出部35(図3)から繰り出された硬貨CNを、重力の作用により傾斜面に沿って前下方へ進行させる。
【0059】
また傾斜部42は、その後側で金種毎に設けられた繰出部35(図3)と連接するため、6種類の硬貨CNがそれぞれ寝かされた状態で、すなわち硬貨CNの円板面をほぼ上下に向けた状態で、当該繰出部35から受け渡される。このため傾斜部42の後側は、6種類の硬貨CNを互いに干渉させないよう、左右方向の長さが比較的長くなっている。
【0060】
一方、レジ釣銭システム1(図1)では、全体の大きさをできるだけ小さく抑えつつ、その前面に紙幣入出金口18、硬貨出金口16及びリジェクト口15を配置することにより、レジ係員の操作性を確保する必要がある。
【0061】
すなわち硬貨出金口16は、紙幣入出金口18において紙幣の長辺の長さに応じた横幅を確保させ、且つリジェクト口15の貯留部48からレジ係員がリジェクト硬貨を取り出し得る程度の横幅を確保させるため、貯留部45における左右方向の長さが比較的短く抑えされている。
【0062】
これに応じて傾斜部42は、図6に示したように、前側へ進むに連れて左右方向の長さを徐々に短くするような形状、換言すれば後側の横幅よりも前側の横幅の方が短い台形状に形成されている。
【0063】
この図6において、左右方向に区切られた領域R1、R10、R100、R500、R5及びR50は、それぞれ硬貨収納庫34(図3)の1円収納庫34A、10円収納庫34B、100円収納庫34C、500円収納庫34D、5円収納庫34E、及び50円収納庫34Fとそれぞれ対応している。
【0064】
このため領域R1、R10、R100、R500、R5及びR50は、それぞれ1円硬貨CN1、10円硬貨CN10、100円硬貨CN100、500円硬貨CN500、5円硬貨CN5及び50円硬貨CN50が繰出部35から受け渡されるおおよその位置を表している。
【0065】
また傾斜部42は、右端に側壁43が立設され、左端に案内側壁44が立設されている。側壁43は、その内側面がほぼ左方向を向いた、すなわち傾斜面42Sにおける傾斜方向である前後方向とほぼ平行な平面状に形成されている。これにより側壁43は、傾斜部42の傾斜面42Sに沿って下降する硬貨CNを右外へ落下させないよう規制している。
【0066】
一方、案内側壁44は、その内側面が右後ろ方向を向いた平面状に、すなわち傾斜面42Sにおける傾斜方向である前後方向に対し約40度の角度をなすように傾斜している。
【0067】
このため案内側壁44は、領域R50から繰り出される50円硬貨CN50及び領域R5から繰り出される5円硬貨CN5が、傾斜面42Sの傾斜方向に沿って前方へ進行した後に当該案内側壁44に当接すると、これらを右方向へ寄せながら前下方へ進行させることにより、すなわち斜め右下へ斜行させることにより、貯留部45へ案内するようになされている。
【0068】
貯留部45は、椀状に窪んでおり、多数(例えば50枚以上)の硬貨CNを貯留し得るようになされている。また貯留部45の底部には、比較的大きな角孔でなる回収孔45Hが穿設されている。
【0069】
貯留部45は、通常の精算処理が行われる際には、図示しない底板により回収孔45Hを閉塞しておくことにより、繰出部35から繰り出された硬貨CNを貯留し、レジ係員により取り出させる。
【0070】
因みに貯留部45は、集計処理が行われる場合等、貯留可能枚数よりも多い(例えば数百枚の)硬貨CNを連続して繰り出す際には、この底板を取り外す等して回収孔45Hを開放することにより、繰出部35から繰り出された硬貨CNを貯留せずに落下させ、その下方に設置された所定の回収袋等に収納させるようになされている。
【0071】
このように硬貨出金口16の傾斜部42は、繰出部35により繰り出された硬貨CNを傾斜面42Sに沿って下降させることにより、当該硬貨CNを貯留部45に貯留させるようになされている。
【0072】
[4.リブの構成]
次に、傾斜部42に設けられたリブ50について説明する。リブ50は、右側から順に第1リブ51、第2リブ52、第3リブ53、第4リブ54、第5リブ55、第6リブ56、第7リブ57、第8リブ58及び第9リブ59といった9個のリブにより構成されている。
【0073】
以下では、基本的な形状である第5リブ55について説明した後、これと大きく異なった形状である第1リブ51、第3リブ53、第8リブ58及び第9リブ59についてそれぞれ説明する。
【0074】
[4−1.第5リブの構成]
第5リブ55は、図6に示したように、傾斜部42における中央から僅かに右側に偏った箇所に立設されており、100円硬貨CN100が繰り出される領域R100におけるほぼ中央に配置されている。
【0075】
この第5リブ55は、従来のリブ250(図17)と同様、傾斜方向に沿った直線状に形成されている。すなわち第5リブ55は、図6におけるB1−B2断面の一部を図8(A)に、そのJ1−J2断面を図8(B)にそれぞれ示すように、三角柱がその一側面を傾斜面42Sに密着させるよう取り付けられ、且つ傾斜面42Sから突出している各頂点や各辺が丸められたような形状となっている。
【0076】
また第5リブ55は、傾斜面42Sから突出した高さH5が比較的小さく、例えば硬貨CNの厚さよりも小さくなっている。
【0077】
このため第5リブ55は、傾斜面42Sから最も突出した部分(すなわち稜線)又はその近傍において、繰出部35(図3)から繰り出された硬貨CNと極めて狭い面積で当接し、傾斜面42Sから僅かに持ち上げることにより、当該硬貨CNが円板面により傾斜面42Sと面接触する場合よりも接触抵抗を減少させる。これにより傾斜部42は、硬貨CNを傾斜面42Sの途中で停止させることなく円滑に下降させ、貯留部45まで到達させることができる。
【0078】
また第2リブ52、第4リブ54、第6リブ56及び第7リブ57は、いずれも第5リブ55と同様、傾斜方向に沿った三角柱状に構成されており、当該第5リブ55と比較して、傾斜方向の長さや当該傾斜方向と直交する幅方向(すなわち左右方向)の長さ等が多少相違している。
【0079】
このため第2リブ52、第4リブ54、第6リブ56及び第7リブ57は、いずれも第5リブ55と同様、繰出部35(図3)から繰り出された硬貨CNを傾斜面42Sから僅かに持ち上げて円滑に下降させ、貯留部45まで到達させることができる。
【0080】
[4−2.第1リブの構成]
第1リブ51は、図6に示したように、傾斜部42における右端近傍に立設されており、1円硬貨CN1が繰り出される領域R1における右寄りに配置されている。ここで第1リブ51と側壁43との間隔は、1円硬貨CN1の半径よりも短くなっている。因みに領域R1における左寄りには、第2リブ52が立設されている。
【0081】
第1リブ51は、図6におけるC1−C2断面の一部を図9(A)に、そのK1−K2断面を図9(B)にそれぞれ示すように、大きく分けて上側の約1/3を占める平行部51Aと、下側約2/3を占める隆起部51Bとにより構成されている。
【0082】
平行部51Aは、第5リブ55と同様、三角柱を傾斜方向に沿って寝かせて各頂点や各辺を丸めたような形状となっている。このため平行部51Aの断面形状は、第5リブ55(図8(B))とほぼ同様となる。また平行部51Aにおける傾斜面42Sからの高さH1Aは、第5リブ55の場合と同様、1円硬貨CN1の厚さよりも小さくなっている。
【0083】
一方、隆起部51Bは、第5リブ55と同様の三角柱を、下側(前側)へ進むに連れて傾斜面42Sからの突出量(すなわち高さ)が徐々に増加するよう隆起させたような形状となっている。すなわち隆起部51Bは、繰出部35側よりも貯留部45側の方が、傾斜面42Sから大きく突出している。また隆起部51Bにおける傾斜面42Sからの高さH1Bは、1円硬貨CN1の厚さよりも十分に大きくなっている。
【0084】
このように第1リブ51は、傾斜面42Sからの突出量が、上側の平行部51Aにおいては第5リブ55等と同様に低く、下側の隆起部51Bにおいては下側が徐々に高められていくよう隆起した構成となっている。
【0085】
[4−3.第3リブの構成]
第3リブ53は、図6に示したように、傾斜部42における中央よりも右側に立設されており、10円硬貨CN10が繰り出される領域R10において、中央から僅かに左へ偏った箇所に配置されている。
【0086】
第3リブ53は、図6におけるD1−D2断面の一部を図10(A)に、そのL1−L2断面を図10(B)にそれぞれ示すように、大きく分けて上側の約3/4を占める平行部53Aと、下側約1/4を占める隆起部53Bとにより構成されている。
【0087】
平行部53Aは、第5リブ55及び第1リブ51の平行部51Aと同様、三角柱を傾斜方向に沿って寝かせて各頂点や各辺を丸めたような形状となっている。平行部53Aにおける傾斜面42Sからの高さH3Aは、やはり第5リブ55及び平行部51Aの場合と同様、10円硬貨CN10の厚さよりも小さくなっている。
【0088】
一方、隆起部53Bは、第1リブ51の隆起部51Bと同様、第5リブ55と同様の三角柱を、下側(前側)へ進むに連れて傾斜面42Sからの突出量(すなわち高さ)が徐々に増加するよう隆起させたような形状となっている。すなわち隆起部53Bは、隆起部51Bと同様、繰出部35側よりも貯留部45側の方が、傾斜面42Sから大きく突出している。また隆起部53Bにおける傾斜面42Sからの高さH3Bは、やはり隆起部51Bの場合と同様、10円硬貨CN10の厚さよりも十分に大きくなっている。
【0089】
このように第3リブ53は、第1リブ51と同様、傾斜面42Sからの突出量が、上側の平行部53Aにおいては第5リブ55等と同様に低いものの、下側の隆起部53Bにおいては下側が徐々に高められていくよう隆起した構成となっている。
【0090】
[4−4.第8リブの構成]
第8リブ58は、図6に示したように、傾斜部42における中央よりも左側に立設されており、500円硬貨CN500が繰り出される領域R500と5円硬貨CN5が繰り出される領域R5との境界に跨るように配置されている。
【0091】
また第8リブ58は、傾斜部42の傾斜面42S上において、第7リブ57の左側近傍であって、その最後端(最上端)が第7リブ57の最後端(最上端)よりもやや前方(下方)となるよう配置されている。
【0092】
第8リブ58は、図6におけるE1−E2断面の一部を図11(A)に、また拡大した平面図を図11(B)にそれぞれ示すように、大きく分けて中央から左側に渡る広い範囲を占める三角錐部58Aと、右端近傍の狭い範囲を占める三角板部58Bとにより構成されている。
【0093】
三角錐部58Aは、三角錐の一側面を傾斜面42Sに密着させるよう取り付けたような形状となっており、残る側面をそれぞれ左後方、左前方及び右方へ向けている。
【0094】
すなわち三角錐部58Aは、後側(上側)の頂点から上側の頂点へ向けて、その高さが徐々に増加すると共に、後側(上側)の頂点から左側の頂点へ向けて、左右の幅も徐々に広がっていく。
【0095】
三角板部58Bは、板面を左右方向に向けた三角形の薄板状に形成されており、その左板面を三角錐部58Aと接合させ、且つ一側面を傾斜面42Sに密着させている。
【0096】
ここで三角板部58Bは、最も後側(上側)の頂点及び傾斜面42Sから最も突出した頂点を三角錐部58Aと一致させる一方、最も前側(下側)の頂点を三角錐部58Aにおける最も下側の頂点よりも前方(下方)に位置させている。すなわち三角板部58Aは、いわば三角錐部58Aよりも僅かに下方へ延長されたような形状となっている。他の観点から見れば、三角錐部58A及び三角板部58Bは、隆起部51B及び53Bと同様、繰出部35側よりも貯留部45側の方が、傾斜面42Sから大きく突出している。
【0097】
因みに第8リブ58の傾斜面42Sから突出した頂点及び各辺は、それぞれ適宜丸められている。
【0098】
また第8リブ58の傾斜面42Sからの高さH2は、硬貨CNの厚さよりも十分に大きく、すなわち第5リブ55の高さH5(図8(A))よりも十分に大きくなっている。
【0099】
このように第8リブ58は、三角錐部58A及び三角板部58Bを互いに接合させたような形状となっており、後側(上側)の端部から前方(下方)へ進むに連れて、傾斜面42Sからの突出量(高さ)及び左右方向の幅が、徐々に拡大していく構成となっている。
【0100】
[4−5.第9リブの構成]
第9リブ59は、図6に示したように、傾斜部42における左端近傍に立設されており、5円硬貨CN5が繰り出される領域R5のほぼ全域から50円硬貨CN50が繰り出される領域R50の一部に跨る比較的広い範囲に渡って配置されている。
【0101】
第9リブ59は、図6におけるF1−F2断面の一部を図12(A)に、また拡大した平面図を図12(B)にそれぞれ示すように、直進部59A、59B、59C、59D及び59Eと、案内側壁44に沿った細長い斜行部59Fとにより構成されている。
【0102】
直進部59A、59B、59C、59D及び59Eは、いずれも傾斜部42における傾斜方向に沿った、すなわち前後方向若しくは上下方向に沿った細長い棒状に形成されているものの、傾斜方向の長さが当該直進部59Aから59Eにかけて段階的に短くなっている。
【0103】
また直進部59A、59B、59C、59D及び59Eは、互いの後端部(上端部)の高さを揃えて、左右方向にほぼ等間隔に並ぶよう、配置されている。
【0104】
斜行部59Fは、直進部59A等と同様の細長い棒状に形成されているものの、その延長方向が、傾斜部42における傾斜方向に対して傾斜し、案内側壁44とほぼ平行をなすように斜行している。
【0105】
また斜行部59Fは、傾斜面42S上において、案内側壁44から間隔DSだけ離れた箇所に形成されている。この間隔DSは、50円硬貨CN50の直径よりも小さくなっている。
【0106】
さらに斜行部59Fは、直進部59A、59B、59C、59D及び59Eの前端部(下端部)とそれぞれ連結されている。
【0107】
また第9リブ59の傾斜面42Sからの高さH9は、硬貨CNの厚さよりも僅かに大きくなっている。換言すれば、第9リブ59は、第1リブ51の隆起部51B、第3リブ53の隆起部53B及び第8リブ58よりも低く形成されている。
【0108】
このように第9リブ59は、細長い棒状でなる複数の直進部59A〜59E及び斜行部59Fを組み合わせることにより、比較的広い範囲に広がった形状となっている。
【0109】
[5.動作及び効果]
以上の構成において、硬貨処理部11は、硬貨収納庫34において金種毎に収納された
1円硬貨CN1、10円硬貨CN10、100円硬貨CN100、500円硬貨CN500、5円硬貨CN5及び50円硬貨CN50を、繰出部35により領域R1、R10、R100、R500、R5及びR50から硬貨出金口16へそれぞれ繰り出す。
【0110】
硬貨出金口16は、傾斜面42Sにリブ50(第1リブ51〜第9リブ59)を形成した傾斜部42に沿って各硬貨CNを下降させた後、貯留部45に到達させて貯留させる。
【0111】
ここで繰出部35から1円硬貨CN1が繰り出されると、第1リブ51は、図13(A)に示すように、まず平行部51Aの傾斜面42Sから最も突出した稜線部分又はその近傍において僅かな面積で当該1円硬貨CN1と当接し、傾斜面42Sから僅かに持ち上げて接触抵抗を低減させ、その円板面を傾斜面42Sとほぼ平行に対向させた状態で下降させることにより、徐々に下降速度を高めていく。
【0112】
その後第1リブ51は、1円硬貨CN1が隆起部59Bに到達すると、図14(A)に示すように、当該隆起部59Bにより当該1円硬貨CN1の当接部分を傾斜面42Sから徐々に引き離すように持ち上げながら、すなわち傾斜面42Sに対し起こしながら、下降させていく。
【0113】
このため硬貨出金口16は、1円硬貨CN1が大量に出金される場合に、既に貯留部45から傾斜部42にかけて多数の1円硬貨CN1が連なっていたとしても、新たに繰り出される1円硬貨CN1の先端(下端)部分を既存の1円硬貨CN1よりも高い位置に持ち上げた状態で第1リブ51の下端側から貯留部45へ下降させることができる。
【0114】
これにより硬貨出金口16は、新たに繰り出される1円硬貨CN1を既存の1円硬貨CN1の上側に乗り上げさせることができるので、当該1円硬貨CN1の連なりをこれ以上延長させることなく、順次貯留部45に貯留させていくことができる。
【0115】
また硬貨出金口16では、繰出部35により繰り出される1円硬貨CN1の中央から右側に偏った箇所に第1リブ51を配置しているため、図14(A)に示したように、下降する1円硬貨CN1の右側のみを持ち上げることになる。
【0116】
このため1円硬貨CN1は、左側部分において周側面の一部が傾斜面42Sと当接しているため、場合によっては当該傾斜面42Sとの摩擦により車輪のように回転することもできるので、既存の1円硬貨CN1の上側に容易に乗り上げることができ、連なりの延長を回避することができる。
【0117】
また第1リブ51は、その後ろ側(上側)の平行部51Aにおける傾斜角(水平面に対する角度)が傾斜面42Sと同等である一方、前側(下側)の隆起部51Bにおける傾斜角が傾斜面42Sよりも小さくなっている。
【0118】
このため第1リブ51は、仮に後ろ側(上側)を隆起させた場合には、その傾斜角が小さくなるために1円硬貨CN1の下降速度を低下させ、途中で停止させてしまう恐れがある。
【0119】
この点において第1リブ51は、後ろ側(上側)を平行部51Aとしたことにより、1円硬貨CN1が繰出部35から繰り出された直後に、傾斜角が比較的大きい部分により下降に伴ってその速度を高めることができ、十分に速度を高めてから傾斜角が小さな隆起部51Bに到達させることができるので、途中で停止する恐れを格段に低減することができる。
【0120】
また、繰出部35から10円硬貨CN10が繰り出されると、第3リブ53は、第1リブ51の場合と同様、まず平行部53Aにより当該10円硬貨CN10の円板面を傾斜面42Sとほぼ平行に対向させた状態で下降させる。
【0121】
その後第3リブ53は、図14(B)に示すように、隆起部53Bにより10円硬貨CN10の当接部分を傾斜面42Sから徐々に引き離すように持ち上げながら、すなわち傾斜面42Sに対し起こしながら、下降させていく。
【0122】
このため硬貨出金口16は、10円硬貨CN10が大量に出金される場合に、貯留部45から傾斜部42にかけて多数の10円硬貨CN10が連なっていたとしても、1円硬貨CN1の場合と同様、新たに繰り出される10円硬貨CN10の先端(下端)部分を既存の10円硬貨CN10よりも高い位置に持ち上げることができる。
【0123】
これにより硬貨出金口16は、新たに繰り出された10円硬貨CN10を既存の10円硬貨CN10の上側に乗り上げさせることができ、連なりの延長を回避させることができる。
【0124】
このように硬貨出金口16では、繰出部35により同一箇所から連続的に多数の硬貨CNが出金される際に、傾斜部42に立設した第1リブ51及び第3リブ53のように貯留部45側を隆起させることにより、新たに繰り出される硬貨CNの一部を持ち上げて既存の硬貨CNの上側に乗り上げさせることができる。
【0125】
このとき硬貨出金口16では、硬貨CNの中心から左右のいずれかへ偏った箇所を1箇所のみ持ち上げることにより、傾斜面42Sに対し硬貨CNを傾けると共にその周側面の一部を傾斜面42Sに当接させることができるので、硬貨CNの回転作用により乗り上げさせることも可能となる。
【0126】
因みに繰出部35から100円硬貨CN100が繰り出されると、第5リブ55は、図14(C)に示すように、当該100円硬貨CN100と線接触しながら、その円板面を傾斜面42Sとほぼ平行に対向させた状態で下降させる。
【0127】
このとき第5リブ55は、第1リブ51及び第3リブ53ように前側(下側)が隆起していないものの、貯留部45における左右のほぼ中央に位置しているため、多数の100円硬貨CN100が連なっていたとしても、衝突等により左右に振り分けるよう下降させることができるので、連なりの延長を防止することができる。
【0128】
また、繰出部35から500円硬貨CN500が繰り出されると、まず第7リブ57は、第5リブ55と同様、500円硬貨CN500と線接触しながら、その円板面を傾斜面42Sとほぼ平行に対向させた状態で下降させることにより、徐々に下降速度を高めていく。
【0129】
その後第8リブ58は、図15(A)に示すように、三角板部58Bの後側(上側)部分により、500円硬貨CN500の左側部分を傾斜面42Sから徐々に引き離すように持ち上げながら下降させていく。
【0130】
すなわち硬貨出金口16は、500円硬貨CN500については、まず第7リブ57を第1リブ51における平行部51Aと同様に作用させ、その後第8リブ58を第1リブ51における隆起部51Bと同様に作用させる。
【0131】
このため硬貨出金口16は、500円硬貨CN500が大量に出金される場合に、貯留部45から傾斜部42にかけて多数の500円硬貨CN500が連なっていたとしても、1円硬貨CN1の場合と同様、新たに繰り出される500円硬貨CN500の先端(下端)部分を既存の500円硬貨CN500よりも高い位置に持ち上げ、その上側に乗り上げさせることができる。
【0132】
また、繰出部35から5円硬貨CN5が繰り出されると、まず第9リブ59は、第5リブ55と同様、5円硬貨CN5と線接触しながら、その円板面を傾斜面42Sとほぼ平行に対向させた状態で下降させることにより、徐々に下降速度を高めていく。
【0133】
その後第8リブ58は、図15(B)に示すように、三角錐部58Aにおける後側(上側)の側面により、5円硬貨CN5の右端部分を傾斜面42Sから徐々に引き離すように持ち上げながら下降させていく。その後5円硬貨CN5は、案内側壁44に当接し、案内側壁44に沿って回転するように右前方(右下方)へ下降していく。
【0134】
このため硬貨出金口16は、5円硬貨CN5が大量に出金される場合に、貯留部45から傾斜部42にかけて多数の5円硬貨CN5が連なっていたとしても、1円硬貨CN1の場合と同様、新たに繰り出される5円硬貨CN5の先端(下端)部分を既存の5円硬貨CN5よりも高い位置に持ち上げ、その上側に乗り上げさせることができる。
【0135】
特に硬貨出金口16の斜面部42では、領域R500から繰り出され、ほぼ直進する500円硬貨CN500の進行経路と、当該領域R500と隣接する領域R5から繰り出され、ほぼ直進した後案内側壁44に沿って斜行する5円硬貨CN5の進行経路とが互いに隣接し、一部合流している(図6)。
【0136】
そこで硬貨出金口16は、第8リブ58を三角錐部58A及び三角板部58Bを組み合わせたような形状とし、500円硬貨CN500の走行経路及び5円効果CN5の走行経路の両方にかかるように配置したことにより、500円硬貨CN500及び5円効果CN5の進行を妨げることなく、その一部をそれぞれ持ち上げることができる。
【0137】
また、繰出部35から50円硬貨CN50が繰り出されると、第9リブ59は、直進部59E等により50円硬貨CN50と線接触しながら、その円板面を傾斜面42Sとほぼ平行に対向させた状態で下降させる。
【0138】
その後50円硬貨CN50は、案内側壁44に当接すると、当該案内側壁44に沿って傾斜面42S上を右前(右下)方向へ下降する。このとき第9リブ59は、図15(C)に示すように、斜行部59Fにより50円硬貨CN50の一部を傾斜面42Sから引き離すように持ち上げた状態で、案内側壁44に沿って回転させるように下降させていく。
【0139】
このため硬貨出金口16は、図13(B)に示すように、50円硬貨CN50が大量に出金される場合に、貯留部45から傾斜部42にかけて多数の50円硬貨CN50が連なっていたとしても、新たに繰り出される50円硬貨CN50の先端(下端)部分を既存の5円硬貨CN5よりも高い位置に持ち上げ、その上側に乗り上げさせることができる。
【0140】
特に第9リブ59は、50円硬貨CN50の進行経路と5円硬貨CN5の進行経路とが合流する箇所に配置されているため、第1リブ51や第3リブ53のように貯留部45側を大きく隆起させることはできないものの、新たに繰り出された50円硬貨CN50を既存の50円硬貨CN50よりも僅かに高く持ち上げて乗り上げさせることにより、連なりの延長を防止することができる。
【0141】
以上の構成によれば、硬貨処理部11の硬貨出金口16は、硬貨収納庫34に収納された硬貨CNが繰出部35により繰り出されると、傾斜部42に沿って下降させた後、貯留部45に到達させて貯留させる。このとき硬貨出金口16は、傾斜部42に立設した第1リブ51等の一部において貯留部45側を隆起させることにより、硬貨CNの一部を持ち上げながら下降させ、既存の硬貨CNの上側に乗り上げさせることができる。このため硬貨出金口16は、繰出部35により同一箇所から連続的に多数の硬貨CNが繰り出される際に、連なりの延長を回避させることができる。
【0142】
[6.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、第5リブ55の形状を、三角柱を傾斜面42Sに沿って寝かせ、傾斜面42Sから突出している各頂点や辺を丸めたような形状とする場合について述べた。
【0143】
しかしながら本発明はこれに限らず、第5リブ55の形状を、例えば半円中の平面部分を傾斜面42Sに密着させ、各辺を丸めたような形状や、台形柱における下底側の側面部分を傾斜面42Sに密着させ、各頂点や各辺を丸めたような形状等、種々の形状としても良い。この場合、例えば第1リブ51を、平行部51Aについては第5リブ55と同様の形状とし、隆起部51B等については第5リブ55と同様の形状を傾斜面42Sから隆起させたような形状とすれば良い。
【0144】
これらの場合、要は、リブ50において、下降する硬貨CNに対し極力少ない面積、望ましくは線や点によって接触することにより、接触抵抗を極力低減できれば良い。第2リブ52や第3リブ53等についても同様である。また、複数のリブ同士で断面形状を互いに相違させるようにしても良い。
【0145】
また上述した実施の形態においては、第1リブ51において、繰出部35側に傾斜面42Sからの高さをほぼ一定に保つ平行部51Aを設け、貯留部45側の一部分のみを隆起部51Bとするようにした場合について述べた。
【0146】
しかしながら本発明はこれに限らず、第1リブ51における繰出部35側の端部から貯留部45側までの全範囲に渡って、傾斜面42Sからの高さを徐々に高めるように、換言すればリブ51全体を隆起部51Bとするようにしても良い。この場合、水平面に対するリブ51の上面又は稜線のなす角度を比較的大きくすることにより、繰出部35から放出された硬貨CNを途中で停止させることなく下降させることができれば良い。第3リブについても同様である。
【0147】
さらに上述した実施の形態においては、第1リブ51の隆起部51Bにおける、傾斜面42Sからの高さが徐々に高くなる部分の稜線を直線状とするようにした場合について述べた。
【0148】
しかしながら本発明はこれに限らず、当該部分の稜線を例えば曲線状とするようにしても良い。第3リブ53及び第8リブ58についても同様である。
【0149】
さらに上述した実施の形態においては、領域R1における中央よりも右側に配置された第1リブ51において、貯留部45側を隆起させることにより、下降する1円硬貨CN1の右側を持ち上げるようにした場合について述べた。
【0150】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第1リブ51を第5リブ55と同様に隆起させないようにし、第2リブ52における貯留部45側を隆起させるようにしても良い。これにより第2リブ52は、下降する1円硬貨CN1の左側を持ち上げることができる。
【0151】
さらに上述した実施の形態においては、第8リブ58を、三角錐状の三角錐部58Aと三角板状の三角板部58Bとを接合させたような形状とするようにした場合について述べた。
【0152】
しかしながら本発明はこれに限らず、第8リブ58を、例えば2つの三角錐部を接合させたような、すなわち四角錐のような形状とするようにしても良い。
【0153】
さらに上述した実施の形態においては第9リブ59について、案内側壁44の存在により硬貨CNの進行経路同士を合流させるため、傾斜面42Sからの高さH9を硬貨CNの厚さよりも僅かに大きい程度とし、隆起部51Bの高さH1B等よりも大幅に低くするようにした場合について述べた。
【0154】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図16に模式的な断面図を示す第9リブ159のように、第1リブ51の隆起部51B等と同様に比較的大きく隆起させるようにしても良い。この場合第9リブ159は、硬貨CNの傾斜面42Sに対する傾き角度を大きくでき、水平面に対し直立に近い角度まで起こした状態で、傾斜部42と案内側壁44との接合部分に沿って転がるように進行させることができるので、硬貨CNの連なりを殆ど発生させることなく、貯留部45まで進行させることができる。
【0155】
さらに上述した実施の形態においては、5本の直進部59A〜59Eと1本の斜行部51Fとの組み合わせにより第9リブ59を構成するようにした場合について述べた。
【0156】
しかしながら本発明はこれに限らず、種々の形状の組み合わせにより第9リブ59を構成するようにしても良い。この場合、要は硬貨CNに対する接触面積を極力少なくすることにより、接触抵抗を削減して、途中で停止させることなく下降させることができれば良い。
【0157】
さらに上述した実施の形態においては、傾斜部42の傾斜面42Sを平面状とするようにした場合について述べた。
【0158】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば傾斜面42Sを左右方向又は前後方向に湾曲させる等、任意の曲面状とするようにしても良い。この場合、リブ50としては、傾斜面42Sの形状に合わせて湾曲させれば良く、隆起部51B及び53B等については、例えば貯留部45へ近づくに連れて傾斜面42Sからの高さを高めるようにすれば良い。
【0159】
さらに上述した実施の形態においては、繰出部35により、異なる種類の硬貨CNが互いに異なる領域R(領域R1、領域R10等)からそれぞれ繰り出されるようにした場合について述べた。
【0160】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば異なる種類の硬貨CNが同一の領域Rから繰り出されるようにしても良い。
【0161】
さらに上述した実施の形態においては、繰出部35から複数の金種の硬貨CNを硬貨出金口16へ繰り出すようにした場合について述べた。
【0162】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば精算金額が100円単位となる販売店等において、繰出部35から一種類の硬貨CNのみを繰り出すようにしても良い。
【0163】
さらに上述した実施の形態においては、本発明を小売店等において精算処理を行う際に釣銭を出金するレジ釣銭システム1に適用するようにした場合について述べた。
【0164】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば自動販売機や現金自動預払機(ATM)等、指示された金額の硬貨CNを出金する種々の装置に適用することができる。
【0165】
さらに上述した実施の形態においては、傾斜部としての傾斜部42と、貯留部としての貯留部45と、突出部としての第1リブ51及び第3リブ53とによって硬貨貯留器としての硬貨出金口16を構成する場合について述べた。
【0166】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる傾斜部と、貯留部と、突出部とによって硬貨貯留器を構成するようにしても良い。
【0167】
さらに上述した実施の形態においては、繰出部としての繰出部35と、傾斜部としての傾斜部42と、貯留部としての貯留部45と、突出部としての第1リブ51及び第3リブ53とによって硬貨出金装置としての硬貨処理部11を構成する場合について述べた。
【0168】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる繰出部と、傾斜部と、貯留部と、突出部とによって硬貨出金装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明は、硬貨を外部へ出金する機構を有する種々の装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0170】
1……レジ釣銭システム、3……釣銭機、11……硬貨処理部、15……リジェクト口、16……硬貨出金口、21……釣銭制御部、34……硬貨収納部、35……繰出部、41……硬貨出金トレイ、42……傾斜部、42S……傾斜面、43……側壁、44……案内側壁、45……貯留部、50……リブ、51……第1リブ、51A、53A……平行部、51B、53B……隆起部、53……第3リブ、57……第7リブ、58……第8リブ、59……第9リブ、CN……硬貨。
図1
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