(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁ハウジング内に挿入された信号伝送媒体の表面上に、ロック部材が乗り上げるようにしてコネクタ高さ方向に弾性変位した後、当該ロック部材が弾性復帰することにより前記信号伝送媒体に係合される構成を備えたものであって、
前記絶縁ハウジングに操作連結アームを介して連結されたロック解除操作部を、前記コネクタ高さ方向と反対の方向に押し込む操作を行うことによって、前記ロック部材の係合状態を解除させる構成になされた電気コネクタにおいて、
前記操作連結アームが、前記コネクタ高さ方向における第1及び第2の段差部を介して前記絶縁ハウジング及び前記ロック解除操作部にそれぞれ連結されたものであって、
当該操作連結アームにおける前記コネクタ高さ方向の上表面が、前記絶縁ハウジング及び前記ロック解除操作部における前記コネクタ高さ方向の上表面より前記第1及び第2の段差分だけ前記コネクタ高さ方向に低い位置に配置されているとともに、
前記ロック部材は、前記信号伝送媒体に乗り上げた状態において、前記操作連結アームの上表面よりも前記コネクタ高さ方向において高い位置で、かつ前記第1及び第2の段差部の上表面よりも低い位置まで突出するように弾性変位する構成になされていることを特徴とする電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器等において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等の各種信号伝送媒体を電気的に接続するための手段として種々の電気コネクタが広く用いられている。例えば、下記の特許文献1のように印刷配線基板上に実装されて使用される電気コネクタでは、FPCやFFC等からなる信号伝送媒体が、絶縁ハウジング(ハウジング)の前端側開口部から内部に挿入され、その後にアクチュエータ(加圧部材)が、作業者の操作力でコネクタ前方側又は後方側の接続作用位置に向かって押し倒されるように回動される。これによって、信号伝送媒体の端末部分に設けられた係合部にロック部材(補強金具)の一部が落ち込んで係合状態になされ、信号伝送媒体の端末部分がロック部材により略不動状態に保持される構成になされている。
【0003】
このように、アクチュエータを備えた電気コネクタは、接続解除位置と接続作用位置との間でアクチュエータを回動操作することによってロック部材の係合・離脱を操作する構成になされているが、信号伝送媒体(FPC,FFC等)の挿入作業とは別個にアクチュエータを操作する必要があるために作業効率が問題となる場合がある。そのため、例えば下記の特許文献2及び3のように、絶縁ハウジングの内部に挿入された信号伝送媒体に対してロック部材の一部が乗り上げるようにして弾性変位し、その後に信号伝送媒体の係合部にロック部材の一部が落ち込んで係合が行われるように構成された、いわゆるワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタが従来から開発されている。このようなワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタを用いれば、電気コネクタの内部の所定位置まで信号伝送媒体を挿入するだけで、信号伝送媒体が略不動状態に保持されることとなり、作業効率の向上が図られる。
【0004】
しかしながら、従来の電気コネクタに採用されているワンアクションオートロック機構においては、上述したように信号伝送媒体(FPC,FFC等)を電気コネクタに挿入するだけでロックが行われる利点がある一方、係止ロック部を有するロック機構、及び係合状態を解除するためのロック解除操作機構の構成が複雑化する傾向があり、部品点数の増大から生産性の低下を招来するおそれがある。
【0005】
また、係止ロック部の係合状態を解除するにあたっては、例えば、特許文献3のようにコネクタ上面に配置されたロック解除操作部を押し込む操作が作業者の指先等により行われることがあるが、特に小型化が図られた電気コネクタに対してロック解除操作が行われる場合には、作業者の指先によりコネクタ全体が覆われる状態となってしまう(本発明の実施形態を表した
図12及び
図13参照)。このような状態においては、ロック解除操作部を構成する各部における本来的には変位が行われない部分、例えば当該ロック解除操作部を変位可能に支持しているアーム部が設けられている場合は、その根本部分等に対しても、ロック解除の操作力が付加されることとなり、折れ等の破損の原因になるおそれがある。
【0006】
また、ロック解除操作によるロック部材の弾性変位が、当該ロック部材の一部が絶縁ハウジングから突出するような構成が採用されている場合には、ロック部材に対しても破損が生じるおそれがある。具体的には、前述したように作業者の指先等による押圧力によりロック解除操作部が押し込まれることで、ロック部材が弾性変位して絶縁ハウジングから突出する状態となるが、このとき、そのロック部材の外方突出部分に対しても作業者の指先等による押圧力が付加されることとなり、ロック部材が塑性変形し破損するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、簡易な構成で、ロック解除操作時における破損等の回避することができるようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明では、絶縁ハウジング内に挿入された信号伝送媒体の表面上に、ロック部材が乗り上げるようにしてコネクタ高さ方向に弾性変位した後、当該ロック部材が弾性復帰することにより前記信号伝送媒体に係合される構成を備えたものであって、前記絶縁ハウジングに操作連結アームを介して連結されたロック解除操作部を、前記コネクタ高さ方向と反対の方向に押し込む操作を行うことによって、前記ロック部材の係合状態を解除させる構成になされた電気コネクタにおいて、前記操作連結アームが、前記コネクタ高さ方向における第1及び第2の段差部を介して前記絶縁ハウジング及び前記ロック解除操作部にそれぞれ連結されたものであって、当該操作連結アームにおける前記コネクタ高さ方向の上表面が、前記絶縁ハウジング及び前記ロック解除操作部における前記コネクタ高さ方向の上表面より前記第1及び第2の段差分だけ前記コネクタ高さ方向に低い位置に配置されているとともに、前記ロック部材は、前記信号伝送媒体に乗り上げた状態において、前記操作連結アームの上表面よりも前記コネクタ高さ方向において高い位置で、かつ前記第1及び第2の段差部の上表面よりも低い位置まで突出するように弾性変位する構成が採用されている。
【0010】
このような構成を有する本発明によれば、信号伝送媒体が絶縁ハウジング内に挿入された際に、ロック部材は、操作連結アームの上表面から上方に突出するように弾性変位した後に信号伝送媒体に係合されることから、ロック部材が係合する直前の状態がコネクタ外方側から目視で確認されることとなる。従って、信号伝送媒体の挿入が不十分である場合には、操作連結アームの外表面からロック部材が外方に突出したままになり、信号伝送媒体の挿入情況の適否が容易に識別される。
【0011】
一方、作業者の指先等がロック解除操作部を押圧することによりロック解除操作が行われるにあたっては、その作業者の指先等が、第2の段差部を介して高められたロック解除操作部に接触する一方、絶縁ハウジングの表面から高く盛り上がるように形成された第1の段差部の上表面に接触することとなり、それらよりも低い位置に配置された操作連結アームに対しては、作業者の指先等が強く接触することがなくなる。また、ロック解除操作部に対する押圧操作によって操作連結アームから外方に突出するロック部材が、第1及び第2の段差部の上表面から突出することがないことから、そのロック部材に対しても作業者の指先等が強く接触することはなくなる。その結果、操作連結アームに対する直接的な押圧力が作用しなくなり、操作連結アームを破損させるおそれが大幅に低減されるようになっている。
【0012】
また、本発明においては、前記ロック部材が前記操作連結アームに沿って延在するように配置されているとともに、前記第1の段差部が前記ロック部材の一部に隣接して対面するように配置されていることが望ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明によれば、操作連結アームに対して作業者の指先等が、より確実に接触しなくなり、操作連結アームの破損のおそれが一層低減される。
【0014】
また、本発明においては、前記第1の段差部が前記絶縁ハウジングの長手方向における両側部分に形成されていることが望ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明によれば、絶縁ハウジングの長手方向における中央部分が、コネクタ高さ方向において低い面に形成されることとなり、その低い面に形成された部分に作業者の指先等が入り込むことによってロック解除操作の押し込み作業が円滑に行われる。
【0016】
また、本発明においては、前記第1及び第2の段差部の上表面が、前記コネクタ高さ方向において略等しい高さ位置となるように形成されていることが望ましい。
【0017】
このような構成を有する本発明によれば、ロック解除操作を行う際の作業者の指先等が、第1及び第2の段差部同士の間において略水平状態となるように接触することとなり、ロック解除操作が円滑に行われる。
【0018】
さらに、本発明においては、前記第1の段差部が前記絶縁ハウジングの長手方向における両側部分に形成され、前記絶縁ハウジングの長手方向における中央部分が前記両側部分よりも前記コネクタ高さ方向において低いことが望ましい。
【0019】
このような構成を有する本発明によれば、ロック解除操作を行う際における作業者の指先等の押し込み作業が、第1段差部に邪魔されることなく良好に行われる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、絶縁ハウジングにロック解除操作部を連結している操作連結アームの高さを低い位置に設定し、その低い高さの操作連結アームからロック部材の一部が外方に突出可能とすることで、信号伝送媒体の挿入情況の適否を目視可能としているとともに、絶縁ハウジングに、操作連結アームから突出したロック部材よりも高くなるように段差部を形成し、ロック解除操作を行う作業者の指先等をロック解除操作部と絶縁ハウジングの段差部とに接触させることで、それらよりも低い操作連結アームやロック部材に作業者の指先等が強く接触しないようにしたことによって、操作連結アームの破損のおそれを大幅に低減した構成を有するものであるから、簡易な構成で、ロック解除操作時における破損等の回避することができ、電気コネクタの信頼性を低廉かつ大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体の電気接続を行うべく印刷配線基板上に実装して使用される電気コネクタに本発明を適用した実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
[電気コネクタの全体構成について]
まず、
図1〜
図14に示されている本発明の一実施形態にかかる電気コネクタ10は、いわゆるノン・ジフ(NON-ZIF)タイプのワンアクションオートロック機構を備えた電気コネクタからなるものであって、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を、絶縁ハウジング11の前端縁部(
図1の左端縁部)に設けられた媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11の内部の所定位置まで挿入した際に、信号伝送媒体Fのロックが自動的に行われる構成になされたものである。
【0024】
[絶縁ハウジングについて]
絶縁ハウジング11は、細長状に延在する中空枠体状の絶縁部材から形成されたものであるが、その絶縁ハウジング11における長手の横幅方向を、以下において「コネクタ長手方向」と呼び、また信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入・離脱させる方向を「コネクタ前後方向」と呼ぶこととする。
【0025】
その絶縁ハウジング11の前端縁部分(
図1左端縁部分)には、上述したようにフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fの端末部分が挿入される媒体挿入口11aが、コネクタ長手方向に沿って細長状をなすように設けられている。また、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向の両端部分であって前記媒体挿入口11aの両側外方部分には、後述するロック機構及びロック解除機構を構成するロック部材12,12’が装着されている。さらに、絶縁ハウジング11の後端側部分(
図1の右端縁部分)、すなわち上述した媒体挿入口11aに対してコネクタ前後方向の反対側部分には、導電コンタクト13を装着するための縦孔スリット状の部品取付口11bが、コネクタ長手方向に沿って適宜の間隔をなし、媒体挿入口11aに露出する形で多極状に設けられている。
【0026】
[導電コンタクトについて]
導電コンタクト13は、適宜の形状をなす薄板状金属製部材により形成されていて、それら複数体の導電コンタクト13が、絶縁ハウジング11の後端側の部品取付口11bから前方側(
図3の左方側)に向かって挿入され、絶縁ハウジング11の内部においてコネクタ長手方向に適宜の間隔をなして多極状に配置されている。これらの導電コンタクト13の各々は、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に対して半田接合により実装された状態で使用される。
【0027】
一方、上述した媒体挿入口11aを通して絶縁ハウジング11の内部側に挿入される信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fには、信号伝送用導電路(信号線パッド)又はシールド用導電路(シールド線パッド)からなる配線パターンFbが適宜のピッチ間隔で配列されており、それらの各配線パターンに対応した位置に上述した導電コンタクト13がそれぞれ配置されていることによって、信号伝送媒体Fに対して導電コンタクト13が電気的に接続されるようになっている。
【0028】
それらの各導電コンタクト13は、信号伝送媒体Fの挿入・離脱方向(
図3の左右方向)であるコネクタ前後方向に沿って延在する形状になされており、絶縁ハウジング11のコネクタ後端部分に対して固定基部13aが略不動状態となるように固定されている。この固定基部13aの後方側の下端縁部からは、コネクタ後方側(
図3の右方側)に向かって基板接続部13bが突出するように設けられており、その基板接続部13bが、主印刷配線基板(図示省略)上に形成された信号伝送用導電路(信号線パッド)に半田接続されるようになっている。
【0029】
また、上述した固定基部13aの前端縁部からは、一対の上コンタクトビーム13c及び下コンタクトビーム13dが、コネクタ前方側(
図3の左方側)に向かって二股状をなすように延出している。これら一対の上コンタクトビーム13c及び下コンタクトビーム13dは、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入・抜去の方向(
図3の左右方向)であるコネクタ前後方向に沿って略平行に延在する片持ち状のビーム部材からなり、上述した絶縁ハウジング11の内部空間において図示上下方向であるコネクタ高さ方向に適宜の間隔をなして互いに対向するように配置されている。
【0030】
それらの上コンタクトビーム13c及び下コンタクトビーム13dは、コネクタ前方側(
図3の左方側)に向かうに従って、絶縁ハウジング11の内壁面から離間する方向に反った形状をなして延在しており、上述した固定基部13aとの連結部分、又はその近傍を回動中心として、上下方向に適宜の量だけ揺動するように弾性変位する構成になされている。そのときの両コンタクトビーム13c,13dの揺動は、
図3の紙面内において上下の方向であるコネクタ高さ方向に行われることとなる。
【0031】
また、上述した上コンタクトビーム13c及び下コンタクトビーム13dの前端側部分(
図3の左端側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの上下表面に形成された配線パターン(信号伝送用又はシールド用の導電路)Fbのいずれかに接続される上端子接触凸部13c1,及び下端子接触凸部13d1が、図示下向き及び上向きの突形状をなして上下に対向するように設けられている。これらの導電コンタクト13に設けられた上端子接触凸部13c1及び下端子接触凸部13d1は、上述したように信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入されて来た際に、当該信号伝送媒体Fに設けられた配線パターンFb上に乗り上げる配置関係になされており、その信号伝送媒体Fが所定の最終位置まで挿入されたときに両コンタクトビーム13c,13d同士の弾性力によって圧接されることによって、それら上端子接触凸部13c1と下端子接触凸部13d1との間に、信号伝送媒体Fが挟持されて電気的に接続された状態に維持される構成になされている。
【0032】
なお、これらの上端子接触凸部13c1と下端子接触凸部13d1との対向位置は、コネクタ前方側(
図3の左方側)或いはコネクタ後方側(
図3の右方側)に互いにずらして配置することも可能であり、また、電気的に接続される状態になされるのは、上端子接触凸部13c1、あるいは下端子接触凸部13d1のいずれか一方としても良い。
【0033】
[ワンアクションオートロック機構について]
本実施形態にかかる電気コネクタ10は、前述したようにワンアクションオートロック機構を備えたものであるが、その前提として信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分には、例えば
図6に示されているように、幅方向両側の端縁部分に、切り欠き状の凹部からなる係合位置決め部Fa,Faが形成されている。そして、この信号伝送媒体Fに設けられた係合位置決め部Fa,Faに対応して電気コネクタ10側には一対のロック部材12,12’(
図1参照)が設けられており、それらロック部材12,12’の係止作用(ロック作用)によって、信号伝送媒体Fの挿入状態が挿入位置に保持される構成になされている。なお、ロック部材12と12’とは左右対称形状の関係となっていることから、以下においては正面右方側に配置されたロック部材12についてのみ説明を行い、他方のロック部材12’については説明を省略することとする。
【0034】
[ロック部材について]
上述したように絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向における両側部分に配置されたロック部材12は、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに対するロック機構及びロック解除機構を構成するものであって、電気コネクタ10の内部に信号伝送媒体Fが差し込まれた際に、当該ロック部材12の一部、より具体的には後述する係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの表面上に乗り上げ、その係止ロック部12aを支持しているロックアーム部材12bが上方に弾性変位した状態となり、その後に係止ロック部12aが、信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faの内部に向かって落ち込み、それによって係合状態(ロック状態)になされるようになっている。
【0035】
このときのロック部材12は、特に
図4及び
図5に示されているような薄板金属部材の一体折曲げ構造体から構成されており、絶縁ハウジング11に固定された平板状の固定基板12cを有しているとともに、その固定基板12cに対して、基板接続部12d、ロックアーム部材12b、係止ロック部12a及びロック解除操作部12eが、一体的に形成されている。
【0036】
より具体的には、上述した固定基板12cが、当該固定基板12cに設けられた固定爪12c1を介して絶縁ハウジング11の底面板に固定されているとともに、その固定基板12cの前端縁(
図6の左端縁)から基板接続部12dが一体的に延出している。また、固定基板12cの後端縁(
図6の右端縁)からは、ロックアーム部材12bの折返し部12b1が一体的に延出しているとともに、さらにその折返し部12b1に連設された可動上板12b2の先端部に、上述した係止ロック部12aが一体に設けられている。また、ロックアーム部材12bの可動上板12b2の後端側から分岐するようにして一対のロック解除操作部12e,12eが一体的に設けられている。
【0037】
上述した基板接続部12dは、固定基板12cの前端縁(
図6の左端縁)から下降段差部を介してコネクタ前方側に略水平に延出しており、その基板接続部12dが、主配線基板(図示省略)に載置された状態で半田接合される構成になされている。
【0038】
また、ロックアーム部材12bは、片持ち構造をなす長尺帯状部材から形成されており、上述した固定基板12cの後端縁(
図6の右端縁)からコネクタ後方側に向かって突出した後に、側面形状が略U字状をなすように折り曲げ形成された折返し部12b1を介してコネクタ前方側に反転するように延出している。また、その折返し部12b1から一体的に繋げられた可動上板12b2は、コネクタ前方側(
図6の左方側)に向かって略水平に延在しており、当該可動上板12b2の自由端部分である前端部分(
図6の左端部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fを保持する係止ロック部12aが一体的に設けられている。
【0039】
このような折返し部12b1及び可動上板12b2を有する片持ち構造のロックアーム部材12bは、折返し部12b1又はその近傍を中心として回動する方向に弾性変位可能になされており、当該ロックアーム部材12bの弾性変位に伴って前記係止ロック部12aが、
図6の紙面内において上下の方向であるコネクタ高さ方向に揺動される構成になされている。
【0040】
その係止ロック部12aは、ロックアーム部材12bの可動上板12b2から下方に突出するフック状部材からなり、可動上板12b2の前端部分におけるコネクタ中心側の端縁部分を下方に向かって略三角形状に突出するように折曲げ形成した板状部材から形成されている。当該係止ロック部12aには、下端側の頂点部から前方側に向かって斜め上方に延在する傾斜案内辺が設けられている。
【0041】
このような構成を有する係止ロック部12aは、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに設けられた係合位置決め部Faが直下位置に配置されたときに、ロックアーム部材12bの弾性力により係合位置決め部Faの内部に向かって押し下げられ、それによって係合状態(ロック状態)になされるように構成されており(
図8参照)、その係合状態となった係止ロック部12aの係合力により、信号伝送媒体Fの挿入状態が保持される構成になされている。
【0042】
このとき、ロックアーム部材12bの可動上板12b2には、絶縁ハウジング11の内部に挿入された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fを目視可能とする開口部12b3が設けられている。この開口部12b3は、上述した係止ロック部12aの後方側に形成されたものであって、可動上板12b2におけるコネクタ中心側の端縁部分を細長矩形状に切り欠くように形成されていることにより、絶縁ハウジング11内に挿入された信号伝送媒体Fの端末部分が、当該開口部12b3を通して上方側から目視されるようになっている。
【0043】
このように、ロックアーム部材12bに開口部12b3を設けておけば、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入が完了した際に、当該信号伝送媒体Fの挿入状態が開口部12b3を通して目視可能となり、信号伝送媒体Fの挿入不足や、係止ロック部12aの係合不良が直ちに確認される。
【0044】
一方、前述したようにロック解除操作部12eも、ロックアーム部材12bと一体的に形成されている。より具体的には、上述した可動上板12b2の後端縁部(
図6の右端縁部)から一対の解除連結アーム片12e1,12e1が、板幅方向(コネクタ長手方向)の両側に分岐するようにして後方側に延出しており、それら一対の解除連結アーム片12e1,12e1を介して一対のロック解除操作部12e,12eが、コネクタ後方側(
図6の右方側)に向かって延出するように設けられている。
【0045】
上述した一対の解除連結アーム片12e1,12e1は、可動上板12b2の板幅方向(コネクタ長手方向)における両側の端縁から、一旦下方に向かって折れ曲がった後に、前記可動上板12b2の板幅方向(コネクタ長手方向)の外方側に開くように傾斜して延在する折曲形状になされており、されにその外方側へ折り曲げられた傾斜段差状部分からコネクタ後方側(
図6の右方側)に向かって略直線状に延出している。それら一対の解除連結アーム片12e1,12e1の延出端部分には、上述したロック解除操作部12eが一体的に設けられている。
【0046】
このように、一対の解除連結アーム片12e1,12e1の延出端部に設けられたロック解除操作部12eと、上述した係止ロック部12aとは、ロックアーム部材12bの全体構成からみたときに、折返し部12b1に関して互いに反対側の領域に配置された関係になされており、ロックアーム部材12bの前端部分に係止ロック部12aが配置されている一方、ロックアーム部材12bの後端部分にはロック解除操作部12eが配置されている。そして、後述する操作カバー11cを介してロック解除操作部12eが下方に押し下げられることで(
図9参照)、上述した折返し部12b1が、下方に押し縮められるようにして変形され、その折返し部12b1と反対側に配置されている係止ロック部12aが、可動上板12b2を有するロックアーム部材12bの弾力に抗して上方に押し上げられるように変位する構成になされている。この時、ロック解除操作部12eの下端部と絶縁ハウジング11の底面板とが当接することで、ロック解除操作の際のロック部材12の変位量が必要な範囲内に規制され、塑性変形を防止することができる。
【0047】
一方、上述したように一対のロック解除操作部12e,12eの直上位置には、絶縁ハウジング11に連結された操作カバー11cが、ロック解除操作部の一部を構成するように配置されている。それらロック解除操作部の一部をなす各操作カバー11cは、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向における両側部分に一体的に設けられており、絶縁ハウジング11の前端縁部分(
図10の左端縁部分)からコネクタ後方側(
図10の右方側)に向かって延出する一対の操作連結アーム片11c1,11c1を介してコネクタ後端部分に当該操作カバー11cが配置されている。
【0048】
そのロック解除操作部としての操作カバー11cは、上述した一対のロック解除操作部12e,12eの双方をコネクタ高さ方向の上方側から覆うように配置されていて、それら一対のロック解除操作部12e,12eの上縁部分を掛け渡すようにして当該操作カバー11cが上方側から当接可能に配置されている。そして、コネクタ長手方向の両側部分に配置された操作カバー11c,11cのコネクタ高さ方向における上表面に作業者の指先Q等が載せられてロック解除操作が行われることにより下方向への押圧操作が行われると、上述したようにロック部材12のロック解除操作部12e,12eとともに折返し部12b1が下方に押し縮められるように変形し、前端側に設けられた係止ロック部12aが上方に移動する。これによって、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの係合位置決め部Faから、係止ロック部12aが上方に離脱してロック状態の解除が行われる。
【0049】
ここで、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挿入から係合までの状態を具体的に説明しておく。まず、
図6に示されているように、絶縁ハウジング11の媒体挿入口11aを通して信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入されてくると、その信号伝送媒体Fの挿入側の先端縁部が、ロック部材12に設けられた係止ロック部12aの傾斜案内辺に当接し、
図7に示されているように、当該係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの表面上に乗り上げる。これにより、ロック部材12の可動上板12b2を含むロックアーム部材12bが、折返し部12b1及びその近傍の揺動支点を中心として上方側に押し上げられるように弾性変位する。さらに、その状態から信号伝送媒体Fの端末部分が後方側に向かって更に押し込まれると、当該信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faが係止ロック部12aの直下位置まで移動した際に、
図8に示されているように、ロックアーム部材12bの弾性復元力によって係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faの内部に押し下げられるように移動される。その結果、信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faに対して係止ロック部12aが係合状態となり、信号伝送媒体Fが抜け出すことのないように保持される。
【0050】
また、上述したように信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが、ロック部材12によって係合状態(ロック状態)になされて信号伝送媒体Fが保持された状態から、
図9及び
図11に示されているように操作カバー11cを介してロック解除操作部12eが下方に押し下げられることでロック解除操作が行われると、ロック部材12においては、可動上板12b2を含むロックアーム部材12bの弾性力に抗して係止ロック部12aが、コネクタ高さ方向の上方に移動し、当該係止ロック部12aが信号伝送媒体Fの係合位置決め部Faから離脱され、ロック部材12による係合状態(ロック状態)が解除される。
【0051】
このとき、特に
図10及び
図11に示されているように、上述したロック解除操作部12e上に配置された操作カバー11cと操作連結アーム片11c1とは、第2段差部11c2を介して一体的に連結されている。その操作連結アーム片11c1と操作カバー11cとの連設部分に配置された第2段差部11c2は、コネクタ後方側の操作カバー11cからコネクタ前方側の操作連結アーム片11c1にかけて、コネクタ高さ方向(
図10の上方向)における高さ寸法が連続的に低くなる傾斜面を有している。そして、その第2段差部11c2が低くなるように形成された段差分h1(
図1及び
図10参照)にわたって、操作連結アーム片11c1の上側外表面が、コネクタ高さ方向において操作カバー11cの上側外表面よりも低い位置をなして延在する構成になされている。
【0052】
このコネクタ高さ方向において低くなるように配置された操作連結アーム片11c1は、上述した第2段差部11c2からコネクタ前方側に延出しており、絶縁ハウジング11の前端部分に操作保護部をなすように形成された後述の第1段差部11dに対して一体的に連結されている。なお、前述したロック部材12の可動上板12b2は、両操作連結アーム片11c1,11c1の間部分に沿って延在する配置関係になされている。
【0053】
このようにコネクタ前後方向に段差分h1だけ低い位置をなして延在している操作連結アーム片11c1の上側外表面は、特に
図7及び
図10に示されているように、ロック部材12が信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの表面上に乗り上げた状態における係止ロック部12aの上端頂部Pよりもコネクタ高さ方向において下方に位置している。すなわち、信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11内に挿入された際に、ロック部材12の一部である係止ロック部12aの上端頂部Pが、操作連結アーム片11c1の上側外表面から上方に突出するように弾性変位する構成になされている。従って、信号伝送媒体Fの挿入が不十分である状態にあっては、操作連結アーム片11c1の上側外表面からロック部材12の一部である係止ロック部12aの上端頂部Pが上方に突出したままになり、それを目視することによって信号伝送媒体Fの挿入情況の適否が容易に識別される。
【0054】
また、上述したように絶縁ハウジング11の前端縁部分に設けられた操作保護部としての第1段差部11dは、当該絶縁ハウジング11の上側外表面から、コネクタ高さ方向の上方に突出する段差形状をなすように一体的な肉盛り状態をなすように形成されたものであって、媒体挿入口11aの長手方向両側部分からコネクタ外端面までコネクタ長手方向に延在しているとともに、前述した一対の操作連結アーム片11c1,11c1のうち、コネクタ長手方向の内方側に配置された操作連結アーム片11c1の内方側に沿ってコネクタ後方側の途中位置まで延出している。
【0055】
一方、絶縁ハウジング11の上側表面のうち、媒体挿入口11aの長手方向中央部分を画成する上側壁部に対応した部分は、上述した第1段差部11dに対して、コネクタ高さが低い平面をなすように形成されており、その絶縁ハウジング11の中央部分の上側表面に対して、第1段差部11dが、コネクタ高さ方向において高さh2(
図1及び
図10参照)をなすように形成されている。このときの第1段差部11dの上側表面の高さ位置は、前述した第2段差部11c2の上側表面の高さ位置と略等しくなるように設定されている。また、当該第1段差部11dは、ロック部材12の係止ロック部12aに対して、コネクタ前方側から隣接するように設けられており、当該第1段差部11dのコネクタ後方側端面が、係止ロック部12aに対して前方側から対面するように配置されている。
【0056】
このとき、特に
図7及び
図10に示されているように、第1段差部11dの上側外表面は、上述したロック部材12が信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの表面上に乗り上げたときの係止ロック部12aの上端頂部Pよりもコネクタ高さ方向において上方に位置するように形成されている。従って、信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング11内に挿入された際には、ロック部材12の一部である係止ロック部12aの上端頂部Pが、第1段差部11dの上側外表面の下方位置までしか突出することがない。また、当然のことながら、操作連結アーム片11c1の上側外表面よりも上方の位置に、第1段差部11dの上側外表面が位置する配置関係になされている。
【0057】
このように本実施形態においては、ロック部材12が信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに乗り上げた状態において、係止ロック部12aの上端頂部Pが、操作連結アームの上表面よりもコネクタ高さ方向において高い位置で、かつ第1段差部11d及び第2段差部11c2の上側表面よりも低い位置まで突出するように弾性変位する構成になされていることから、例えば
図14に示されているように、ロック解除操作が行われる際にあたって作業者の指先Q等は、コネクタ後端側の操作カバー11cに接触するとともに、操作保護部としての第1段差部11dに強く接触した場合でも、それらよりも低い位置にある係止ロック部12aや操作連結アーム片11c1に対して、作業者の指先Q等が強く接触することはない。
【0058】
以上のような構成を有する本実施形態によれば、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが絶縁ハウジング11の内部に挿入された際に、ロック部材12の一部である係止ロック部12aが、操作連結アーム片11c1の上側外表面から上方に突出するように弾性変位し、その後に信号伝送媒体Fに対して係合されることから、ロック部材12の係止ロック部12aが係合する直前の状態がコネクタ外方側から目視で確認されることとなる。従って、信号伝送媒体Fの挿入が不十分である場合には、操作連結アーム片11c1の外表面からロック部材12の係止ロック部12aが上側外方に突出したままになり、信号伝送媒体Fの挿入情況の適否が容易に識別される。
【0059】
一方、作業者の指先Q等によりロック解除操作部12eを押圧してロック解除操作を行うにあたっては、その作業者の指先Q等は、第2の段差部11c2を介して高められたロック解除操作部12eに接触するとともに、絶縁ハウジング11の表面から高く盛り上がるように形成された第1段差部11dの上側表面に接触することとなる。従って、それらよりも低い位置に延在している操作連結アーム片11c1に対しては、作業者の指先Q等が強く接触することがない。また、ロック解除操作部12eの押圧操作によって操作連結アーム片11c1から突出するロック部材12の係止ロック部12aに対しても、第1段差部11d及び第2段差部11c2の上側表面より上方に突出することがないことから、作業者の指先Q等が強く接触することがない。その結果、従来のような操作連結アーム片11c1及びロック部材12に対する直接的な押圧力が発生することがなくなり、それらを破損させるおそれが大幅に低減される。
【0060】
また、本実施形態においては、ロック部材12の可動上板12b2が、操作連結アーム片11c1に沿って延在し、そのロック部材12の先端部分に設けられた係止ロック部12aに、絶縁ハウジング11に設けられた第1段差部11dが近接するように対面配置されていることから、ロック解除操作を行う作業者の指先Q等が、操作連結アーム片11c1に、より確実に接触しなくなる構造になされており、操作連結アーム片11c1やロック部材12の破損のおそれが一層低減される。
【0061】
さらに、本実施形態では、絶縁ハウジング11に設けられた第1段差部11dが、絶縁ハウジング11の長手方向両側部分に形成されており、絶縁ハウジング11の長手方向における中央部分が、コネクタ高さ方向において低い面に維持されていることから、ロック解除操作を行う際における作業者の指先Q等の押し込み作業が、第1段差部11dに邪魔されることなく良好に行われる。
【0062】
また、本実施形態においては、絶縁ハウジング11に設けられた第1段差部11dの上側表面と、操作カバー11cに設けられた第2段差部11c2の上側表面とが、略等しい高さ位置となるように設定されていることから、ロック解除操作を行う際の作業者の指先Qが、第1及び第2の段差部11d,11c2同士の間において略水平状態となるように接触することとなり、ロック解除操作が円滑に行われる。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0064】
例えば、上述した各実施形態では、電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0065】
さらに、上述した実施形態にかかる電気コネクタには、同一形状の導電コンタクトが用いられているが、異なる形状の導電コンタクトを交互に配置した構造であっても本発明は同様に適用することが可能である。