(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における発電電力推定装置、発電電力推定方法、及び発電電力推定プログラムを説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における発電電力推定装置1の構成を示す概略ブロック図である。発電電力推定装置1は、予め定められた電力系統の供給エリア内に広範囲に普及した太陽光発電設備に対して出力抑制を行った際における各太陽光発電設備の出力の合計値を算出する。発電電力推定装置1は、供給エリア内に設けられたnp箇所の観測地点において測定された観測値(V
1,V
2,…,V
np)と、太陽光発電設備の設備定格に対する出力の割合である出力指定値とに基づいて、出力抑制を行った際におけるPV出力の合計値の推定値を算出する。ここで、観測値(V
1,V
2,…,V
np)は、例えば、各観測地点において観測された日射強度から推定される太陽光発電設備の出力の時系列を示す値であって、設備定格に対する割合を示す値である。また、観測値は、観測地点に設置された観測用の太陽光発電設備の出力の時系列を示す値であって、当該太陽光発電設備の定格出力に対する割合を示す値であってもよい。また、観測用の太陽光発電設備は、その観測地点での潜在的な太陽光発電設備の出力を把握するための設備であり、出力抑制が行われる場合であっても出力指定値による制御が行われない特別な太陽光発電設備とする。
【0021】
発電電力推定装置1は、同図に示すように、総発電電力推定部10と、面的分布推定部15と、出力抑制時電力算出部18とを具備している。総発電電力推定部10は、観測値(V
1,V
2,…,V
np)に基づいて、供給エリア内に普及した太陽光発電設備が発電する電力の総和である総発電電力の推定値を算出する。面的分布推定部15は、観測値(V
1,V
2,…,V
np)に基づいて、供給エリア内における太陽光発電設備が発電する電力の分布(ばらつき)を示す
面的分散(σ
SP2)を算出する。出力抑制時電力算出部18は、総発電電力推定部10が算出する総発電電力の推定値と、面的分布推定部15が算出する分散とから、出力指定値で示される出力抑制を各太陽光発電設備に対して行った場合における発電電力の推定値を算出する。
【0022】
総発電電力推定部10は、同図に示すように、nb(nb≧1)個の推定値算出部11(推定値算出部11−1、…、推定値算出部11−nb)と、加算部12とを備えている。nbは、観測値に含まれる周波数成分をいくつの周波数帯域に分けて、総発電電力を推定するかに応じて定められる。複数の周波数帯域は、例えば、20分未満の周期として現れる変動、20分以上1時間未満の周期として現れる変動、1時間以上3時間未満の周期として現れる変動、及び、3時間以上の周期として現れる変動、それぞれの周期に対応する周波数帯域とする。この場合、総発電電力推定部10は、4つの推定値算出部11(推定値算出部11−1〜推定値算出部11−4、nb=4)を備えることになる。そして、総発電電力推定部10は、周波数帯域ごとに算出した発電電力の総和を総発電電力として出力する。また、各推定値算出部11に対して定める周波数帯域は、重複しないようにかつ漏れのないように定められる。
【0023】
推定値算出部11は、各観測地点に対応して設けられた帯域通過フィルタ部111及びゲイン乗算部112と、加算部113とを備えている。
帯域通過フィルタ部111には、自身に対応する観測地点における観測値V
j(j=1,2,…,np)が入力される。帯域通過フィルタ部111は、入力される観測値V
jに含まれる所定の周波数帯域の成分を、対応するゲイン乗算部112に出力する。すなわち、帯域通過フィルタ部111は、所定の周波数帯域の成分(信号)を抽出するバンドパスフィルタである。ここで、各推定値算出部11が備えるnp個の帯域通過フィルタ部111は、入力される観測値V
jに含まれる同じ周波数帯域の成分を、対応するゲイン乗算部112に出力する。なお、帯域通過フィルタ部111を通過する成分の周波数帯域は、推定値算出部11ごとに異なる。
【0024】
ゲイン乗算部112は、帯域通過フィルタ部111から入力される成分に対して、予め定められた観測ゲインを乗算し、乗算結果を加算部113に出力する。ここで、ゲイン乗算部112が乗算する観測ゲインは、観測地点と、帯域通過フィルタ部111が成分を通過させる周波数帯域との組み合わせごとに設定される。加算部113は、各ゲイン乗算部112から出力される乗算結果の総和を算出し、算出した値を加算部12に出力する。
【0025】
加算部12は、各推定値算出部11から出力される値(各周波数帯域に対応する発電電力)の総和を算出し、算出した値を総発電電力として出力する。このように、総発電電力推定部10は、供給エリアにおける太陽光発電設備の総発電電力の推定値を複数の周波数帯域に分けて算出し、各周波数帯域の推定値を合計することにより総発電電力の推定値を算出する。
【0026】
以下、本実施形態の各ゲイン乗算部112における観測ゲインの算出方法について説明する。ここでは、供給エリアをメッシュ状に複数の領域(セル)に分割し、一つの周波数帯域に着目して説明をする。すなわち、複数の推定値算出部11のうち一つの推定値算出部11が備えるゲイン乗算部112における観測ゲインの算出方法について説明する。
図2は、本実施形態において総発電電力を推定する対象の供給エリアの一例を示す概略図である。ここでは、供給エリアを複数の矩形領域(セル)に分割した例を示している。各セルは、観測地点を有するセルと、観測地点を有していないセルとに分けられる。同図において、観測地点を有するセルは黒で塗りつぶされた矩形で示され、観測地点を有しないセルは白抜きの矩形で示されている。以下の説明において、供給エリア内のセルの数をncとする。
【0027】
<推定誤差の定式化>
供給エリア内の太陽光発電設備の直流発電電力の合計(以下、設備量合計という。)に対する、電力系統に入力される交流電力の変動量の比であるPV交流変動量x
Tは次式(1)で与えられる。
【0029】
式(1)におけるPV交流変動量x
Tは、設備量合計[kW]に対する交流電力の変動量[kW]の比であるので、単位のない物理量(無次元量)である。PV交流変動量は、例えば、種々の太陽光発電パネルの定格出力に対する交流電力の変動量の比を平均した値を用いるようにしてもよい。また、PV交流変動量には、直流−交流変換に伴うロスも含まれるようにしてもよい。
x
iはi(i=1,2,…,nc)番目のセルにおけるPV交流変動量であり、ρ
iはi番目のセルにおけるPV分布係数である。PV分布係数は、供給エリア全体での合計が1であり、供給エリア内におけるPVの分布の比率を示す値である。このPV交流変動量x
Tに設備量合計を乗算すれば太陽光発電設備による総発電電力の変動量が得られる。なお、ほとんどのPV交流変動量x
iは観測できないので、実時間でも実績値としてもPV交流変動量x
Tを得ることは現実的には困難である。
そこで、PV交流変動量x
Tの推定値x
Teを次式(2)で与える。
【0031】
式(2)の左辺における列ベクトルwは、次式(3)で与えられる。
【0033】
また、式(2)の右辺におけるp
j(j=1,2,…,np)は、観測地点を有するセル(以下、観測セルという。)の番号である。観測セル数npは供給エリア内のセル数nc以下である。実際には、nc≫npである。w
jは特定の周波数成分に着目したときのj番目の観測地点(セル番号p
j)に対する観測ゲインである。また、対象とするnb個の周波数帯域のうちi番目の周波数帯域に着目するときw
j=W
i,j(j=1,2,…,np)である。観測ゲインは物理量としてPV分布係数と同じ次元をもち、無単位である。なお、観測地点において得られる情報が日射強度変動である場合、
観測セルp
jにおける太陽光発電設備の定格容量(以下、設備量という。)当たりの交流変動量x
pj(t)は、日射強度やその他の情報から推定する必要がある。
ここで、PV交流変動量の推定値x
Teに含まれる推定誤差x
Eは次式(4)で定義される。推定誤差x
Eは無単位の値である。
【0035】
図3は、式(4)において算出される推定誤差x
Eを説明する図である。式(2)により算出される推定値は、供給エリア内の観測地点を有するセルのPV交流変動量に対して観測ゲインを掛けて足し合わせた値である。また、式(1)により算出される真値は、nc個のセルそれぞれのPV交流変動量の合計値である。
ここに推定誤差x
Eの分散σ
E2(w)は次式(5)で与えられる。
【0037】
ここで、式(5)における、行列A、ベクトルb、及び分散σ
T2は次式(6−1)〜(6−3)で与えられる。
【0039】
式(6−1)〜(6−3)における、σ
iはPV交流変動量x
iの標準偏差であり、無単位の値である。r
i,jはPV交流変動量x
iとx
jとの相関係数であり、無単位の値である。n
tは時系列の点数である。
このように、PV交流変動量x
Tの時系列を実時間で把握することができなくても、セル別の標準偏差σ
i及びPV分布係数ρ
iと、セル間相関係数r
i,jが分かれば、推定誤差の分散又は標準偏差を得ることができる。そして、この相関係数にセル同士の相対的な位置関係を反映することにより、推定誤差x
Eはセルの位置関係を反映した妥当な値となる。
【0040】
なお、現実的には変動の標準偏差やPV普及量をセルごとに得ることが難しい場合、供給エリア全体で、あるいはセルを複数のグループに分けたサブエリアごとに共通の値を用いるようにしてもよい。これは、供給エリア又はサブエリアにおいて気象条件やPVの普及の様相が同様であることを仮定することに相当する。サブエリアとして、例えば、地方自治体(都道府県、又は市区町村)ごとにセルをグループに分け、地方自治体ごとの標準偏差やPV普及量を対応するセルの標準偏差やPV普及量として用いて、観測ゲインを算出するようにしてもよい。
【0041】
式(5)において、ベクトルw(観測ゲイン)に依存しない定数項であるσ
Tは、観測を行わない場合のPV出力変動合計(総発電電力)の標準偏差σ
E(0)である。すなわち、観測ゲインを求めるとともに、PV出力変動合計の見積もりも得られる。
【0042】
<観測ゲインの最適化>
観測ゲインwの決め方として二通りの方法がある。一方は推定誤差x
Eの分散を最小化する決め方である。これにより二乗尺度の意味で、PV交流変動量x
Tの真値に最も近い推定値x
Teが得られると期待できる。
他方は標準偏差σ
EをPV出力変動合計の標準偏差σ
Tに一致させる決め方である。これは、シミュレーション検討等を行う際に、すなわち電力系統全体のPV変動をできるだけリアルに再現した場合などに有効であると考えられる。
【0043】
はじめに推定誤差を最小化する観測ゲインwを求める。推定誤差が最小になる観測ゲインwをw
0とする。分散σ
E2(w)をwで偏微分すると次式(7)が得られる。
【0045】
分散σ
E2(w)が最小となるための必要条件は、式(7)が零になることである。この条件から観測を最適化するw
0が式(8)として得られる。なお十分性については後述する。
【0047】
なお、式(8)の導出には行列Aの対称性を利用した。
次に、標準偏差σ
EをPV出力変動合計の標準偏差σ
Tに一致させる観測ゲインwを求める。標準偏差σ
Eが標準偏差σ
Tに一致する観測ゲインwをw
dとする。推定値自体の変動σ
02(w)は、次式(9)で与えられる。
【0049】
これがPV出力変動合計に一致する条件は次式(10)である。
【0051】
観測ゲインをこの方法で決める場合、最低限の条件は式(10)である。これに対し決めるべき観測ゲインの数は一般的に多い。そこで式(10)を制約条件とした上で、推定誤差σ
E2を極力小さくする問題に置き換えて観測ゲインを決める。この最適化問題は等式制約付き最適化問題なので、ラグランジュの未定定数法で解ける。ラグランジュ関数は次式(11)となる。
【0053】
式(11)が最小となるための必要条件は次式(12)である。
【0055】
式(12)と式(8)とから次式(13)を得る。
【0057】
すなわち観測ゲインw
dは推定誤差を最小化した最適解w
0の定数倍となる。
【0058】
ここまでで、式(2)を用いて限られた数の観測値の時系列に適用して推定を行う際の観測ゲインを二通りの目的に対して求めた。これらと異なる目的に対して異なる観測ゲインを求めて、推定を行うようにしてもよい。
なお、全周波数帯域を考慮した総発電電力の推定値X
E(t)は次式(14)となる。
【0060】
式(14)において、X
pj(j=1,2,…,np)はp
j番目の観測セルにおいて得られた観測値である。また、関数BPF(x)は、時系列xに含まれる所定の周波数成分を算出する関数である。
式(14)から分かるように、関数BPF()と観測ゲインW
i,jの乗算とは線形要素であれば順序を入れ替えることが可能である。すなわち、
図1では、各推定値算出部11において帯域通過フィルタ部111の後段にゲイン乗算部112を設けて乗算結果を加算する構成を示したが、処理の順序を入れ換えてもよい。
また、全ての周波数帯域を考慮した推定誤差の分散、推定値の分散、及びPV出力変動の分散は、それぞれσ
E2、σ
02、及びσ
T2を全ての周波数帯域について加算することで得られる。
【0061】
<相関係数の同定>
着目する周波数帯域における相関係数は、次式(15)から求めることができる。
【0063】
式(15)において、S
i,i、S
j,jは、それぞれi番目のセル、j番目のセルにおけるPV交流変動量のパワースペクトルである。S
i,jは、i番目のセルとj番目のセルとの間のクロススペクトルである。S
i,jは、例えば、DFT(x
i(t))・DFT
*(x
j(t))から求めた離散的なものである。ここにDFT()はデジタルフーリエ変換関数であり、DFT
*()は、デジタルフーリエ変換で得られた結果の複素共役を算出する関数である。なお、式(15)における各積算は、Σ記号の下に示すとおり着目する周波数帯域の範囲で、負の周波数の側も対象に含めて行う。
【0064】
式(15)は、参考文献1(日野幹雄著、「スペクトル解析(統計ライブラリー)」、朝倉書店、2011年)を参考に導出したものであり、時間領域で求めた相関係数と数値的に一致する。上記の方法で相関係数を得るのと同時に、2つのセル間の離隔距離も当然決まる。よって多数の観測地点において同期した観測により得られた観測値があれば、距離と相関係数とで構成される平面上に多数の点が得られる。
【0065】
なお、観測値にはバイアス分(直流成分)が含まれる。バイアス分以外の周波数帯域については、最低限一組の(同期計測された複数の観測地点の)DFT処理を行う演算器があれば相関係数を求めることができる。これに対しバイアス分については、一組のDFT処理からは一つの値しか得られないため、相関係数を求めることができない。そのため、バイアス分の相関係数を求めるには、複数組のDFT処理が必要となる。
【0066】
図1に戻り、発電電力推定装置1の構成の説明を続ける。
面的分布推定部15は、供給エリア内においてPV出力がどのように分布しているかを推定する。気象条件によっては供給エリアの各セルにおける天気が異なるため、PV出力の分布は天気に応じて異なる。
図4は、PV出力の分布の例を示すグラフである。同図において、横軸はPV出力[pu]を示し、縦軸はPV出力の面的分布密度[1/pu]を示している。同図には、天気が安定せずに晴れているセルや曇っているセル等が存在する例と、供給エリアにおけるほとんどが晴天のセルである例とが示されている。同図に示されているように、各セルの天気にばらつきが多い場合にはPV出力の分布は広くなり、各セルの天気にばらつきが少ない場合にはPV出力の分布は狭くなる。なお、PV出力の分布は、各セルの天気の変動に応じて時々刻々と変化する。
【0067】
図5は、
図4に示したPV出力の分布に対応する累積分布関数を示すグラフである。同図において、横軸はPV出力を示し、縦軸はPV設備の量を示している。同図に示す累積分布関数は、ある出力値を指定した際に「その出力値以上を出力しているPV設備の量」を表している。よって、出力抑制を行う際に与えられる出力指定値が与えられると、累積分布関数の領域A1(出力指定値よりPV出力が小さい領域)の面積を積分により求めることで、供給エリア内の出力抑制時におけるPV出力の合計値を得ることができる。また、累積分布関数の領域A2(出力指定値よりPV出力が大きい領域)の面積を積分により求めることで発電機会逸失電力を得ることができる。
【0068】
すなわち、本実施形態における発電電力推定装置1では、総発電電力推定部10が算出するPV出力の合計値の推定値と、面的分布推定部15が算出するPV出力の分布とから上述したようにPVに対する出力抑制を行った際におけるPV出力の合計値を出力抑制時電力算出部18が推定する。
以下、面的分布推定部15が行うPV出力の分布の推定について説明する。
【0069】
<面的分布の定式化>
以下、
図4に示したPV出力の分布の中央値を代表値という。代表値は理想的には平均値であるが、平均値を取得できない場合もあるためこのようにいう。また、各時刻における面的な平均値からの分散を面的分散という。以下では、代表値と面的分散とを定式化した上で近似的に求める手法について説明する。また、総発電電力推定部10がPV出力の合計値の推定値を算出したように、平均値及び面的分散を周波数帯域ごとに扱う。
【0070】
着目する周波数帯域において、時刻tにおける供給エリア内のPV出力の
面的分散
(瞬時値)σ
S2(t)は、次式(16)で表される。なお、分散の算出に対してセルごとのPV設備量をρ
iで重み付けしているのは、同じ出力x
i(t)を有するPV設備の量を考慮するためである。
【0072】
式(16)により分散σ
S2(t)を算出することは、各セルにおけるPV出力を把握する必要があるため困難である。ここで、分散σ
S2(t)の時間方向の平均σ
ST2を求めると次式(17)として得られる。
【0074】
式(17)におけるσ
i2は各セルにおけるPV出力の時間方向の分散である。すなわち、式(17)は、面的な分散σ
S2(t)の時間方向の平均σ
ST2が、時間的な分散の面的平均として得られることを示している。以下、時間方向の平均σ
ST2を時間的・面的分散という。この時間的・面的分散σ
ST2の真値を求めることは、分散σ
S2(t)を求めるのと同様に困難であるが、限られた地点の分散σ
i2から近似的に求めることについて検討する。
【0075】
時間的・面的分散σ
ST2はある時間内における統計値である。よってこの時間内の各時刻における面的平均値は変化している。そこで、時間的・面的分散σ
ST2と面的平均値との関係を調べる。面的な平均値は、pu(per unit)表現されたPV出力の合計値x
T(t)である。合計値x
T(t)
を基準にした各PV出力xi(t)の偏差の面的分散(瞬時値)の時間平均(以下、面的分散という。)σ
SP2は次式(18)のようになる。pu表現は、太陽光発電設備におけるパネル定格ベース値である。
【0077】
式(18)におけるσ
T2は合計値x
T(t)の分散であるから、面的に平滑化されずに残った成分である。すなわち式(18)は、時間平均の意味で、時間的・面的分散σ
ST2が平面的に平滑化されずに残る成分σ
T2と面的分散σ
SP2とに分解できることを示している。
【0078】
以下、PV出力の面的な分布を、合計値x
T(t)を代表値としてσ
SP2を面的分散とするモデルで表すことについて述べる。すなわち、PV出力の実際の面的な分布は時々刻々と変化して推定が困難であるため、分散σ
T2を中心とした面的な分散に対する時間平均値σ
SP2で代用することになる。面的分散σ
SP2の算出に最低限の時間幅の統計値を用いることで、時々刻々の各PV出力の状況変化が徐々に反映されると考えられる。
【0079】
図6は、本実施形態における分散σ
T2、σ
SP2、σ
ST2それぞれの関連を表す概略図である。同図において、横軸は時間を示し、縦軸はPV出力を示している。同図に示すように各時刻における面的なばらつきは、その分散の平均値であり一定値の
面的分散σ
SP2で近似することにはなるが、このような形で面的分布を捉えることができる。
【0080】
なお複数の周波数帯域を考慮する際には、総発電電力推定部10についての説明したように、各周波数帯域の代表値の和を算出することにより、全周波数帯域を考慮した代表値を得ることができる。
面的分散σ
SP2についても、周波数帯域同士は互いに独立と考えることができるため、単純な和を算出すればよいことになる。
【0081】
出力抑制の効果を見積もる際には、PV出力の分布の形状を仮定する必要がある。
図6に示した例では、横軸に平行な出力指定値に対応する直線を引けば、各時刻における分布のうち直線を超える領域(上側の領域)が抑制の対象となり、その領域が示す電力量が発電機会逸失電力量となる。また、この出力指定値の直線を下回る領域(下側の領域)の電力量が出力抑制を行った際においてPV設備から得られる電力量になる。面的分布に関する情報(例えば、分布の形状)は、過去のPV出力に基づいて得られた統計情報を用いてもよいし、正規分布を用いるようにしてもよい。
【0082】
<限られた情報からの推定>
本実施形態における発電電力推定装置1では、全てのPV設備における出力が得られない、又は困難であるという現実的な制約の下で面的分布に関する物理量の取得について説明する。
【0083】
分散σ
ST2は、観測値の時間的分散から重み付き平均として推定する。ここで用いる重みとしては、観測地点が代表する面積やPVの普及量などいくつかの候補が考えられる。例えば、観測地点が代表する面積とは、その観測地点が最近接観測地点であるセルの面積の合計である。また、観測地点が代表するPVの普及量についても同様であり、その観測地点が最近接観測地点であるセルにおける普及量の合計である。
【0084】
本実施形態では、上述の観測ゲインwを重みとして用いる。この理由は以下のとおりである。ある観測値が広い範囲のセルを代表していたとしても、実際には特に短周期域においてその観測値は近傍の情報しか含んでいないため、面積比例などの大きな重みを設定する根拠には乏しい。一方で観測ゲインwは、このような条件下でも大きな値とならず、推定誤差の二乗を小さくするという似た目的の下で設定されており、観測値ごとの重み付けとして一定の妥当性がある。観測ゲインを用いることにより、分散σ
ST2の近似値は式(19)として表される。
【0086】
式(19)における分散σ
ST2のように「 ̄(オーバライン)」が付されたものは、観測可能な量(又は物理量)から求めた推定値、またそこから派生する量(又は物理量)を示す。式(19)は観測値から推定された「分散σ
ST2」ということになる。
【0087】
分散σ
T2は、平均出力の時間的分散であり観測することは困難である。そこで、分散σ
T2に対する測定値であるσ
02(w
d)を用いる。観測値から求めることを前提とした「σ
02」は、式(9)から次式(20)となる。
【0089】
式(20)において「 ̄」が付された対角行列Sと、行列Rとは次式(21−1)と次式(21−2)である。
【0091】
これらから、分散σ
ST2の近似値が式(22)として得られる。
【0093】
さらなる近似としては、全てのPV出力の標準偏差σ
STの推定値を用いることとすれば、次式(23)が成立する。次式(23)を用いることにより、
面的分散σ
SP2の推定値を算出することができる。
【0095】
<出力分布推定の数値例>
現実の日射強度やPV出力に基づく検証は難しいため、擬似的な数値検討(計算機シミュレーション)の結果を以下に示す。ここでは、PV出力抑制に適用した場合について説明する。計算機シミュレーションでは、数値シミュレーションソフトウエア等で用意されている正規乱数(時間的・空間的分布が正規分布に漸近するもの)を用いて、空間的に500点、時間的に500点の時系列を用意した。この時系列群に適当な優対角行列を掛けて、互いに相関のある時系列群を生成した。最終的には、500箇所のPV設備群の出力に対するある周波数帯域の信号を想定した。これにより、平均が約0であり分散が約1であり互いに相関のある500個の信号源を用意したことになる。このとき各PV設備の出力の時間的分布はおおむね±3σ(≒±3)の範囲に分布する。
【0096】
500ステップの時間経過に対して、1を出力指定値とする出力抑制をシミュレートした。真値は各時刻で500個の信号源に対し個別に出力を評価した結果を積算したものである。これに対して、上述した手法を適用したものは、各時刻における出力分布を仮定して、
図5に示したような累積分布関数に対する積分計算により発電機会逸失電力を求めて積算した。各時刻の出力分布は、平均値x
T(t)、
面的分
散σSP2(σ
ST2及びσ
T2から算出したもの)
が一定値で正規分布とした。なお、このシミュレーションにおいて出力指定値「1」をすることは、出力の範囲が概ね±3σ≒±3の範囲に分布していることを考慮すると、平均を0から3に、出力指定値を1から4にそれぞれをずらして考えれば、0〜6の範囲の分布に対して出力指定値を4として出力を抑制していることになる。よって、上記の条件をPVの設備定格ベースで考えれば、概ね、各PVの出力が平均(1/2)、標準偏差(1/6)の正規分布に従うとき出力を(2/3)以下に抑制する場合をシミュレートしていていることになる。
【0097】
図7は、計算機シミュレーションにより発電機会逸失電力の誤差を評価した結果を示す図である。この結果は、信号間の相関性の設定を一様乱数により100通り生成し、それぞれ500ステップのシミュレーションを行い、発電機会逸失電力量にて誤差を評価したものである。同図において、横軸は上述した手法による面的分散を示し、縦軸は真値を基準とした推定誤差を示している。面的分散は、平滑化効果の強さの尺度でもある。同図に示される結果のように、様々な平滑化の様相に対して、実際の面的分布を把握せずとも、±5%の誤差に収まる推定を行うことができる。
【0098】
なお、上記のシミュレーションにおいて信号源間の相関性が強い場合には、各時刻の面的分布は正規分布とかけ離れた分布となっていたが、正規分布を仮定したシミュレーションにおいても一定の精度で推定ができることが分かる。
【0099】
図1に戻り、発電電力推定装置1の構成の説明を続ける。
面的分布推定部15は、nb(nb≧1)個の面的分散推定部16(面的分散推定部16−1、…、面的分散推定部16−nb)と、加算部17とを備えている。面的分散推定部16の個数は、総発電電力推定部10と同様に、観測値に含まれる周波数成分をいくつの周波数帯域に分けて扱うかに応じて定められる。
【0100】
面的分散推定部16は、帯域通過フィルタ部161と、観測点別分散算出部162と、面的分散算出部163とを有している。帯域通過フィルタ部161には、np個の観測値が入力される。帯域通過フィルタ部161は、自身を有する面的分散推定部16に割り当てられている周波数帯域の成分を、入力される観測値から観測地点ごとに抽出する。帯域通過フィルタ部161は、抽出した周波数帯域の成分であって観測地点ごとの成分を観測点別分散算出部162に出力する。
【0101】
観測点別分散算出部162は、帯域通過フィルタ部161から入力される周波数帯域の成分を予め定められた期間に亘って記憶し、記憶している成分系列から時間的分散(σ
p12,σ
p22,…,σ
pnp2)を観測地点ごとに算出する。
面的分散算出部163は、観測点別分散算出部162が算出する観測地点ごとの時間的分散(σ
p12,σ
p22,…,σ
pnp2)に基づいて、供給エリア内の面的分散の推定値を算出し、算出した面的分散の推定値を加算部17に出力する。具体的には、面的分散算出部163は、式(22)又は式(23)のいずれかを用いて、面的分散の推定値を算出する。
【0102】
上述の構成により、面的分散推定部16−1〜16−nbは、それぞれがnp個の観測値(V
1,V
2,…,V
np)を入力し、自身に割り当てられる周波数帯域におけるPV出力の面的なばらつき(分散)をnp個の観測値から推定する。
加算部17は、各面的分散推定部16が算出する各周波数帯域における面的分散の推定値を加算して、供給エリア内の面
的分散(σ
SP2)を算出する。
面的分布推定部15は、供給エリア内における時々刻々のPV出力の面的な分散の推定値として、観測値から供給エリア内における
合計値xT(t)を基準にした各PV出力の
偏差の面的分散(瞬時値)の時間平均(σ
SP2)を算出する。
【0103】
図8は、本実施形態における発電電力推定装置1が行う発電電力推定処理を示すフローチャートである。
発電電力推定装置1は、発電電力推定処理が開始されると、np個の観測地点において得られた時系列情報である観測値(V
1,V
2,…,V
np)が入力される(ステップS101)。
【0104】
総発電電力推定部10において、各推定値算出部11の帯域通過フィルタ部111は、自身に対応する観測値に含まれる所定の周波数の成分(信号)を通過させて、ゲイン乗算部112に出力する(ステップS102)。
各ゲイン乗算部112は帯域通過フィルタ部111から入力される信号に観測ゲインを乗算し(ステップS103)、加算部113は各ゲイン乗算部112による乗算結果の総和を算出する(ステップS104)。
加算部12は、各推定値算出部11の加算部113が算出した総和を加算する(ステップS105)。
【0105】
面的分布推定部15の各面的分散推定部16において、帯域通過フィルタ部161は、入力された観測値に対して、所定の周波数の成分を通過させるフィルタリング処理を観測地点ごとに行い、観測点別分散算出部162に出力する(ステップS111)。
観測点別分散算出部162は、帯域通過フィルタ部161から入力された各観測地点に対応する信号から、観測地点ごとに観測値の時間方向のばらつき(分散)を算出する(ステップS112)。
面的分散算出部163は、観測点別分散算出部162が算出した各観測地点の分散に基づいて、供給エリア内のPV出力の面的な分散を算出する(ステップS113)。
加算部17は、各面的分散推定部16の面的分散算出部163が算出した分散を加算することにより、周波数ごとに算出された分散から供給エリア内のPV出力の面的な分散の推定値を算出する(ステップS114)。
【0106】
出力抑制時電力算出部18は、ステップS105において算出された総和(総発電電力)と、ステップS114において算出されたPV出力の面的な分散とに基づいて、出力指定値による出力抑制が行われた際のPV設備による発電電力の推定値を算出して出力する(ステップS121)。
【0107】
このように、本実施形態における発電電力推定装置1は、総発電電力推定部10が観測値から得られる複数の周波数帯域の成分に基づいてPV設備による発電電力の推定値を算出する。また、各ゲイン乗算部112において用いる観測ゲインは、周波数帯域ごとに予め算出する。観測ゲインを算出する際には、供給エリアを複数の領域(セル)に分ける。また、セル間の離隔距離に応じて算出された相関係数(r
i,j)、各セルにおけるPV分布係数(ρ
i)、PV交流変動量の標準偏差(σ
i)に基づいて、観測ゲイン(w)を算出する。
また、発電電力推定装置1は、供給エリア内の全PV設備の出力を測定等により把握せずとも、面的分布推定部15が供給エリア内におけるPV出力の分布を分散として扱い、観測値から面的分散(σ
SP2)を算出する。
また、発電電力推定装置1は、
図5に示したように、出力抑制時電力算出部18が出力抑制時において部分抑制の対象となる太陽光発電設備の割合を特定することができるので、PV出力の
面的分散(σ
SP2)と、推定したPV出力の合計値とを用いることにより、出力抑制時におけるPV出力の合計値(発電電力推定値)を算出することができる。また、発電電力推定装置1は、出力抑制時における発電機会逸失電力を算出することができる。
【0108】
なお、
図8に示した発電電力推定処理では、総発電電力推定部10が総発電電力の推定値を算出した後に、面的分布推定部15がPV出力の分布を算出するフローを説明した。しかし、総発電電力推定部10が行う処理(ステップS102〜ステップS105)と、面的分布推定部15が行う処理(ステップS111〜ステップS114)とは独立に行うことができるので、ステップS111〜ステップS114を行った後にステップS102〜ステップS105を行うようにしてもよいし、並列に処理するようにしてもよい。
【0109】
また、
図1に示した総発電電力推定部10では、帯域通過フィルタ部111により所定の周波数の成分を抽出した後に観測ゲインを乗じる構成を説明したが、観測ゲインを乗じた後に所定の周波数の成分を抽出するようにしてもよい。この場合、観測値ごとに観測ゲインを乗算し、乗算結果の総和から所定の周波数の成分を抽出することになる。これにより、推定値算出部11において観測地点の数に応じた帯域通過フィルタ部111を設けずとも、同じ演算処理を行うことができ、総発電電力推定部10における演算量を削減することができる。
【0110】
また、発電電力推定装置1は、複数の気象条件に対応する観測ゲインを記憶する観測ゲイン記憶部を更に具備し、ユーザの操作等により入力される気象条件に対応する観測ゲインをゲイン乗算部112が観測ゲイン記憶部から読み出して、総発電電力の推定値を算出するようにしてもよい。これにより、様々な気象条件に対応した発電電力の推定値を算出することができ、推定値の精度を向上させることができる。
【0111】
また、発電電力推定装置1において算出したPV出力の
面的分散(σ
SP2)及び推定したPV出力の合計値を、
図6に示したように、グラフ化して出力するようにしてもよい。これにより、電力系統を運用、管理するオペレータ等にPV出力の合計値の推移及び分布を視覚的に提供することができる。また、時々刻々の面的分布は、天気の荒れ具合などと相関が高いので、グラフ化して出力することにより過去の遷移と合わせて近い将来のPV出力の変動に対する指標とすることができる。その結果、PV出力のより有効な利用の促進を図ることが可能となる。
【0112】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態における発電電力推定装置2の構成を示す概略ブロック図である。発電電力推定装置2は、第1の実施形態における発電電力推定装置1と同様に、予め定められた電力系統の供給エリア内に広範囲に普及した太陽光発電設備に対して出力抑制を行った際における各太陽光発電設備の出力の合計値を算出する。
発電電力推定装置2は、供給エリア内に設けられたnp箇所の観測地点において得られた観測値(V
1,V
2,…,V
np)と、太陽光発電設備の設備定格に対する出力の割合である出力指定値とに基づいて、出力抑制を行った際におけるPV出力の合計値の推定値を算出する。なお、本実施形態における発電電力推定装置2は、
図2に示したように、供給エリアをnc個の矩形領域(セル)に分割して扱う。また、本実施形態における観測値(V
1,V
2,…,V
np)は、第1の実施形態における観測値と同様に、各観測地点において観測された日射強度から推定されるPV出力の推定値か、又は観測用のPV設備の出力値などである。
【0113】
発電電力推定装置2は、同図に示すように、観測地点の数npと同数の低域通過フィルタ部21(低域通過フィルタ部21−1〜21−np)と、np個の抑制値算出部22(抑制値算出部22−1〜22−np)と、np個の重み乗算部23(重み乗算部23−1〜23−np)と、出力抑制時電力算出部24とを具備している。
低域通過フィルタ部21−1〜21−npは、それぞれがいずれかの観測地点と重複することなく対応付けられている。また、抑制値算出部22−1〜22−np、及び重み乗算部23−1〜23−npは、同様に、それぞれがいずれかの観測地点と重複することなく対応付けられている。
【0114】
低域通過フィルタ部21は、自身が対応する観測地点の観測値(V
i;1≦i≦np)が時系列に入力され、入力される時系列に含まれる所定の周波数の成分(信号)を抽出する。低域通過フィルタ部21は、自身が対応する観測地点と同じ観測地点に対応する抑制値算出部22に抽出した信号を出力する。低域通過フィルタ部21が抽出する周波数帯域は、例えば、20分以上の周期や、1時間以上の周期、3時間以上の周期などに対応する周波数帯域が予め定められる。すなわち、低域通過フィルタ部21が出力する信号は、観測値(PV出力の推定値)に含まれる短時間の変動(高周波成分)が抑えられたPV出力の推定値である。
【0115】
抑制値算出部22には、低域通過フィルタ部21において抽出された信号(PV出力の推定値)と、出力指定値とが入力される。抑制値算出部22は、入力された信号と出力指定値とを比較して値が小さい方を、自身が対応する観測地点と同じ観測地点に対応する重み乗算部23に出力する。抑制値算出部22が出力する値は、出力抑制時において観測地点が位置するセルのPV設備から出力される電力に対応する。ただし、この電力は、セルに位置するPV設備の定格出力の合計に対する割合で表される。
【0116】
重み乗算部23は、抑制値算出部22から入力される値(電力)に対して、観測地点ごとに予め定められた重みを乗じて出力抑制時電力算出部24に出力する。重み乗算部23において用いられる重みは、観測地点を有するセルと当該セルに関連付けられた他のセルにおけるPV設備の分布係数ρ
iの和である。供給エリアの各セルは、最も近い観測地点を有するセルに関連付けられる。分布係数ρ
iの和には、観測地点を有するセルの分布係数も含まれる。換言すると、各重み乗算部23は、観測値の低周波成分に重みを乗じることにより、観測地点数で供給エリアを分割した各領域のPV出力、すなわち供給エリア内のおけるPV出力のばらつき(分布)を算出する。
出力抑制時電力算出部24は、各重み乗算部23が重み付けした値の総和を算出する。
【0117】
上述のように、発電電力推定装置2は、観測地点ごとに、観測地点を有するセルのPV出力を、各観測地点を有するセル及び当該セルに関連付けられた他のセルにおけるPV設備の分布係数で重み付けして集計する。これにより、発電電力推定装置2は、供給エリア内の全PV設備の出力を測定等により把握せずとも、観測地点を代表として観測値から供給エリア内におけるPV出力の分布を把握する。発電電力推定装置2は、抑制値算出部22による出力指定値との比較によって、観測地点を有するセル及び当該セルに関連付けられた他のセルが部分抑制の対象となっているか特定しているので、出力抑制時におけるPV出力の合計値(発電電力推定値)を算出することができる。
発電電力推定装置2が算出する発電電力推定値は供給エリア内におけるPV設備の出力定格の合計値に対する割合であるので、その合計値に発電電力推定値を乗じることにより、PVに対する出力抑制を行った際におけるPVの出力の合計値を得ることができる。
【0118】
また、発電電力推定装置2では、観測値に含まれる高周波成分を低域通過フィルタ部21で抑えることにより、観測値から観測地点の近傍における局所的な天気の変化による影響を除いて観測地点が位置するセルに関連付けられたセルにおける天気(又は日射強度)を反映させることができ、供給エリア内における全PV出力の合計値を推定することができる。
【0119】
なお、本発明における発電電力推定装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより発電電力推定処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0120】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。更に、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。