特許第5924187号(P5924187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000002
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000003
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000004
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000005
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000006
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000007
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000008
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000009
  • 特許5924187-車載用バッテリパックの冷却装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924187
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】車載用バッテリパックの冷却装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/06 20060101AFI20160516BHJP
   B60K 1/04 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   B60K11/06
   B60K1/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-184244(P2012-184244)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-40214(P2014-40214A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 弘二
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−50155(JP,A)
【文献】 特開2012−96716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電気機器へ電力を供給する電池がバッテリケース内に収容されているバッテリパックに設置されて、エアクリーナによって浄化した外気を冷却風として電動ファンにより前記バッテリケース内に導入する冷却装置であって、
前記バッテリケースの上面、側面または底面の何れかの一面に、前記エアクリーナと、前記バッテリケースの内部に冷却風を取り込む吸気口と、前記バッテリパックのメンテナンス時に操作する少なくとも1つ以上の操作部材と、が設置されており、
前記吸気口と少なくとも1つ以上の前記操作部材とを前記バッテリケースの長手方向の辺に沿って配置し、
前記エアクリーナのダーティサイド室とフィルタ部材とを前記バッテリパックの長手方向に長い形状に形成して前記吸気口と前記操作部材とに並列に配置した
ことを特徴とする車載用バッテリパックの冷却装置。
【請求項2】
前記エアクリーナは、前記ダーティサイド室内に外気を直接取り込む空気流入口を備えており、
該空気流入口は、当該エアフィルタの長手方向と同一方向に延長されている長尺形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用バッテリパックの冷却装置。
【請求項3】
前記エアクリーナは、前記空気流入口が前記フィルタ部材の長手寸法と同等の長さに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車載用バッテリパックの冷却装置。
【請求項4】
前記エアクリーナは、前記フィルタ部材が前記空気流入口と斜めに対向するように取り付けられていること特徴とする請求項3に記載の車載用バッテリパックの冷却装置。
【請求項5】
前記バッテリパックは、前記車両のリアシートより後方に配置されてフロアパネル位置よりも上方に突出する空間を形成するカバーパネル内に収納され、
該カバーパネルは、内部の前記バッテリパックに対する作業空間を開放または閉止するように蓋部材で開閉可能な開口部を上面側に備え、
前記エアクリーナは、当該蓋部材に対面する前記バッテリケースの上面に配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車載用バッテリパックの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリパックの冷却装置に関し、詳しくは、エアフィルタと電動ファンとを備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源として電動モータを搭載する電気自動車やハイブリッド自動車は、電動モータや車載の電装部品に電力供給することから、大容量の電力を蓄電可能な電池を収容したバッテリパックを車両に搭載する必要がある。
バッテリパック内の電池は、電力の出入力時に発熱することから、冷却する必要がある。また、電動ファンによって外気をバッテリパック内に吸入して電池を冷却する際、内部に塵埃等が進入しないよう、エアクリーナで外気を浄化してバッテリパック内に取り込む必要がある。
このことから、特許文献1では、バッテリケースにパイプ状の吸気ダクトを連結して、その吸気ダクト途中にフィルタ部材を介在させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−73256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような車載用バッテリパックの冷却装置にあっては、パイプ形状の吸気ダクトを設置しているので、吸気ダクトで発生する圧力損失が大きく、十分な風量を得るにはかなり送風量の大きい電動ファンを使用する必要がある。このため、電動ファンの電力消費が大きくなってしまう、という問題がある。
そこで、本発明は、小さな電力消費で稼働する電動ファンでも必要十分な風量の外気を冷却風として内部に取り込むことのできる車載用バッテリパックの冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車載用バッテリパックの冷却装置に係る発明の第1の態様は、車両に搭載される電気機器へ電力を供給する電池がバッテリケース内に収容されているバッテリパックに設置されて、エアクリーナによって浄化した外気を冷却風として電動ファンにより前記バッテリケース内に導入する冷却装置であって、前記バッテリケースの上面、側面または底面の何れかの一面に、前記エアクリーナと、前記バッテリケースの内部に冷却風を取り込む吸気口と、前記バッテリパックのメンテナンス時に操作する少なくとも1つ以上の操作部材と、が設置されており、前記吸気口と少なくとも1つ以上の前記操作部材とを前記バッテリケースの長手方向の辺に沿って配置し、前記エアクリーナのダーティサイド室とフィルタ部材とを前記バッテリパックの長手方向に長い形状に形成して前記吸気口と前記操作部材とに並列に配置したことを特徴とするものである。
【0006】
上記課題を解決する車載用バッテリパックの冷却装置に係る発明の第2の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記エアクリーナは、前記ダーティサイド室内に外気を直接取り込む空気流入口を備えており、該空気流入口は、当該エアフィルタの長手方向と同一方向に延長されている長尺形状であることを特徴とするものである。
上記課題を解決する車載用バッテリパックの冷却装置に係る発明の第3の態様は、上記第2の態様の特定事項に加え、前記エアクリーナは、前記空気流入口が前記フィルタ部材の長手寸法と同等の長さに形成されていることを特徴とするものである。
上記課題を解決する車載用バッテリパックの冷却装置に係る発明の第4の態様は、上記第3の態様の特定事項に加え、前記エアクリーナは、前記フィルタ部材が前記空気流入口と斜めに対向するように取り付けられていること特徴とするものである。
【0007】
上記課題を解決する車載用バッテリパックの冷却装置に係る発明の第5の態様は、上記第1から第4のいずれか1つの態様の特定事項に加え、前記バッテリパックは、前記車両のリアシートより後方に配置されてフロアパネル位置よりも上方に突出する空間を形成するカバーパネル内に収納され、該カバーパネルは、内部の前記バッテリパックに対する作業空間を開放または閉止するように蓋部材で開閉可能な開口部を上面側に備え、前記エアクリーナは、当該蓋部材に対面する前記バッテリケースの上面に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記の第1の態様によれば、吸気口や操作部材を前記バッテリケースの長手方向の辺に沿って配置し、エアクリーナのダーティサイド室とフィルタ部材とを前記バッテリパックの長手方向に長い形状に形成して前記吸気口と前記操作部材と並列に配置することにより吸気口や操作部材の影響を受けずにフィルタ部材の外気を通気させる濾過面積を大きく確保することができる。したがって、電動ファンは、小さな通気抵抗で外気を取り込んで大面積のフィルタ部材内で通気濾過させることができ、小さな電力消費で吸気する冷却風でバッテリパック内の電池を冷却することができる。また、濾過面積を大きく確保することによりフィルタ部材の長寿命化も図ることができる。
【0009】
本発明の上記の第2の態様によれば、空気流入口をエアクリーナの長手方向に大きく開口させて外気を流入させることができ、パイプなどを介すことなく小さな通気抵抗で内部に外気を取り込むことができる。したがって、小さな電力消費で冷却風を内部に取り込んでバッテリパックを冷却することができる。
本発明の上記の第3の態様によれば、空気流入口がフィルタ部材の長手寸法と同等の長さであることから、その空気流入口から取り込んだ外気を小さな抵抗でフィルタ部材内を通気させることができる。したがって、小さな電力消費で冷却風を内部に取り込んでバッテリパックを冷却することができる。
本発明の上記の第4の態様によれば、空気流入口から流入空間内に取り込んだ外気を斜めの姿勢のフィルタ部材の大面積の一面側に向けて流し、他面側に抜けるように通気させることができ、屈曲量の小さな通気流路にして通気抵抗を小さくすることができる。したがって、小さな電力消費で冷却風を内部に取り込んでバッテリパックを冷却することができる。
【0010】
本発明の上記の第5の態様によれば、車両後方でフロアパネルレベルから車室内に突出するカバーパネル内に設置されて蓋部材に対面するようにバッテリパックの上面に配置される。したがって、フィルタ部材内への塵埃の侵入量を抑制することができ、フィルタ部材を長寿命化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車載用バッテリパックの冷却装置の一実施形態を搭載する車両の透視側面図である。
図2】そのバッテリパックの拡大透視側面図である。
図3】そのバッテリパック内における冷却風の流れを説明するバッテリパックの透視側面図である。
図4】そのバッテリパック内に冷却風を取り込む吸気口と、冷却風をバッテリパックから排出する排気口の位置を示す車両の正面側から見たバッテリパックの正面図である。
図5】そのバッテリパックを覆うカバーパネルからサービスリッドを外した状態の車両の平面図である。
図6】そのバッテリパックを覆うカバーパネルを外した状態の車両の平面図である。
図7】その冷却装置の構成部品であるエアクリーナとバッテリパックとを示す図であり、(a)はそのバッテリパックへのエアクリーナの組付構造を示すエアクリーナとバッテリパックの斜視図、(b)はそのエアクリーナの外気流出口を示すエアクリーナの下面図である。
図8】そのエアクリーナの分解斜視図である。
図9】そのエアクリーナへの外気(冷却風)の取り込みを説明する図であり、(a)はその流入口を示すエアクリーナの正面図、(b)はその外気の流れを示すエアクリーナの断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1図9は本発明に係る車載用バッテリパックの冷却装置の一実施形態を搭載する車両の一例を示す図である。ここで、本実施形態では、上下左右や前面、背面を含めて、車両の進行方向を基準として位置関係を説明し、都度、「車両の進行方向に対して」という文言を付すことは割愛する。
図1および図2において、車両100は、フロントシート101と、リアシート102とを設置するフロアパネル105の上方に車室Rを備えている。この車室Rの後方は、ハッチバックドア109の開閉により開放可能な荷室(ラゲッジルーム)Lとして利用可能に構築されている。この車両100は、その荷室L内に大容量のバッテリパック10を搭載するハイブリッド自動車に構築されている。ここで、ハイブリッド自動車は、図示することは省略するが、車載する空調装置などの電装部品にバッテリパック10から電力供給して車室R内の空調処理などを実行するとともに、駆動源となる電動モータにバッテリパック10から電力を供給して内燃機関と共に電動モータを駆動させることによりハイブリッド自動車を所望の速度で走行させる。なお、本実施形態では、ハイブリッド自動車を一例として説明するが、これに限るものではなく、同様な構造を電動モータの駆動力のみで走行する電気自動車にも適用可能であることは言うまでもない。
【0013】
バッテリパック10は、上部ケース11と下部ケース12の上下2分割したバッテリケース10C内に複数のバッテリモジュール(電池)BM列を収容している。この上部ケース11と下部ケース12は、フランジ形状の開口縁部11a、12aを互いに突き合わせることにより内部にバッテリモジュール(電池)BM列を収納する収容空間を形成する。
バッテリモジュールBM列は、複数個のバッテリモジュールBMを水平方向に並列させている。このバッテリモジュールBM列は、バッテリパック10内では上下2段に積んだ状態にして収納することにより大容量の電力を蓄電できる構造とされている。
このように、バッテリパック10は、このバッテリモジュールBM列を2段積みで収納可能な収容空間を上部ケース11と下部ケース12の内部に形成することにより、バッテリパック10が車両100の荷室L内で車両前後方向に占有する空間をできるだけ小さくしつつ十分な収容空間を確保している。
【0014】
また、バッテリパック10は、上部及び下部ケース11、12の開口縁部11a、12aを車体に固定されるサブフレーム21に支持させることにより、車両100の荷室Lにおけるフロアパネル105の設置レベルよりも、上部ケース11の一部が上側に位置するように取り付けられている。下部ケース12は、全体がフロアパネル105の設置レベルよりも下側に位置するように取り付けられている。
このバッテリパック10の上部は、荷室Lのフロアパネル105に取付けられる突形状の上カバーパネル106内に挿入されている。上カバーパネル106は、上部ケース11が荷室L内に露出しないように覆っている。
同様に、このバッテリパック10の下部は、このバッテリパック10自体を車体に支持するサブフレーム21の下面に固定される下カバーパネル108内に挿入されている。この下カバーパネル108は、下部ケース12が車両100の下側に露出しないように覆っている。
【0015】
また、上カバーパネル106は、フランジ形状の開口縁部106aをフロアパネル105の開口部105aの周縁部に対面させつつ固定させて開口部105aを閉じる。一方、下カバーパネル108は、フランジ形状の開口縁部108aがサブフレーム21の下面に対面固定されている。
尚、フロアパネル105とサブフレーム21の間に開口空間Soが形成される。この開口空間Soは、上カバーパネル106と上ケース11との間の隙間空間Ss内への外気の出入りを可能にしている。
【0016】
ところで、図3に示すようバッテリパック10の頂面には空気を浄化してバッテリパック10へ送るエアクリーナ16が取り付けられている。このエアクリーナ16は、フロアパネル105よりも上方の、しかもカバーパネル106の天井付近(サービスリッド107内側)に位置するので、車両100の走行時に路面から巻き上がる塵埃のエアクリーナ16への到達を少なくしてエアクリーナ16への侵入量を抑制することができ、後述するフィルタ部材33の寿命を長期化することができる。
【0017】
さらに、上カバーパネル106には、上部のほぼ全面が開口可能な蓋部材のサービスリッド107(図3および図4を参照)が着脱可能に取り付けられている。上カバーパネル106からサービスリッド107を取り外して開口部の全面を開放することによりバッテリパック10やエアクリーナ16などの各種メンテナンス作業を行えるようになっている(図3図6を参照)。
【0018】
ここで、車両100は、図3図6に示すように、フロアパネル105の下方に配設されているサスペンションビーム111の両端部に車輪110が取り付けられて走行を実現している。サスペンションビーム111は、車両100本体側の両側方で前後方向に延在するように配設されている左右一対のサイドメンバ(骨格部材)115に、車両前後方向に延在するアーム部112がその前端側を回動自在に支持されている。車輪110は、そのアーム部112の後端側に回転自在に支持されている。
また、車両100は、車両前部に設置されている内燃機関から排出される高温の排気ガスを車両後方に案内する排気管118が前後方向に延長されている。また、この排気管118は、車両100の右側でバッテリパック10に隣接するように配置され、バッテリパックの側方に消音器118aを備えている。このため、バッテリパック10を設置するフロアパネル105の開口部105aは、バッテリパック10が排気管118の熱によって加熱されないように、荷室Lの左側にオフセットされている。このフロアパネル105の開口部105aの下方には、その開口部105aの開口縁に沿う枠形状のサブフレーム21が配置され、このサブフレーム21は車両100の骨格部材として機能する左右一対のサイドメンバ115やこれに連結されている不図示のクロスメンバに取付固定されている。バッテリパック10は、このサブフレーム21を介してサイドメンバ115などに取付されている。
なお、サブフレーム21は、サイドメンバ115やクロスメンバに対し、スペーサ的に機能するブラケット28を介在させてネジ止めされるようになっている。この際、上記の上カバーパネル106の開口縁部106aとフロアパネル105との間にはフロアパネル105とサブフレーム21の設置高さの差の分だけの開口空間Soが確保される。
【0019】
そして、バッテリパック10は、空気を内部に取り入れる吸気口10aを上部ケース11の上面左側に開口させて、また、空気を外部へ排出する排気口10bを上部ケース11の後部右側に開口させている。このバッテリパック10は、その内部に配置した冷却装置の冷却ファン15により吸気口10aから外気を内部に導入してバッテリモジュールBM列を冷却し、バッテリモジュールBM列を冷却した外気を排気口10bから排気することにより、電流の出入力時の発熱を冷却するようになっている。
この冷却装置は、バッテリパック10に設けられた吸気口10aの上方にエアクリーナ16を配置し、エアクリーナ16で浄化した外気を冷却ファン15によってバッテリパック10内に導入して内部を循環させた後に排気ダクト17から排気する通気流路Frを備えている。
冷却ファン15は、バッテリパック10内における上段のバッテリモジュールBM列の上方に位置するように、上部ケース11内に配置されて、その上部ケース11上面の吸気口10aから外気を吸入するように設置されている。
エアクリーナ16は、その高さが幅及び奥行きに比べて小さい箱型に形成されており、車両上下方向に嵩張ることなく、上部ケース11上にコンパクトに設置することができるように作製されている。このエアクリーナ16は、上部ケース11上面の吸気口10aを覆う位置に設置されて、下面側に開口する流出口16aを直接その吸気口10aに連通させるようになっている。また、このエアクリーナ16は、後述するケース外面の前面側に開口する流入口(空気流入口)16bから直接外気を取り込むようになっている。
そして、上部ケース11の後部右側に開口する排気口10bには排気ダクト17が連結されている。排気ダクト17は、排気口10bに一端側開口17aを連結して、他端側開口17bが本体管部17cを介してフロアパネル105より下方の開口空間So内に位置するように設置されている。
【0020】
ここで、バッテリパック10の冷却装置は、排気管118から放出される排熱の影響を少なくするように、排気管118とは反対側の車両左側から外気を冷却風として取り込むように構築されている。このため、バッテリパック10は、上部ケース11の左前側を窪ませて走行風(外気)を上方へ導く通路を形成し、フロアパネル105より下方の開口空間Soを車両後方へ流れる走行風をエアクリーナ16へ案内するようになっている。
また、バッテリパック10の冷却装置は、左側窪み箇所10dの外側に、走行風を上方へ導く導風板19が鉛直姿勢で設置されている。この導風板19は、左側窪み箇所10dより左外側を流れる走行風を捕捉し、エアクリーナ16の流入口16bに向かって流入させるように案内する。
この構造から、バッテリパック10の吸気口10aは、排気管118からできるだけ離隔する、上部ケース11上面の左後側に配置され、エアクリーナ16の前面側の流入口16bから取り込んだ外気を冷却風として取り入れるようにレイアウトされている。また、バッテリパック10の排気口10bは、上部ケース11後部の右上側に配置され、吸気口10a側から離隔する位置に開口する排気ダクト17を介して冷却風をバッテリパック10の外部に排気するようにレイアウトされている。
このバッテリパック10は、上下2段のバッテリモジュールBM列を冷却ファン15によって引き込んだ外気で冷却する流体流路Frを備えている。この流体流路Frは、吸気口10aから下方へ延びてバッテリモジュールBMの後側空間に冷却風を送る入口側流路と、バッテリモジュールBMに沿って冷却風を後ろから前へ流してバッテリモジュールBMの冷却を行う冷却流路と、バッテリモジュールBMの前側空間から上方へ延びた後車両後方に向かって延びてバッテリモジュールBMを冷却した後の冷却風を排気口10bに導く出口側流路とを備える。なお、図4中に示すように、バッテリパック10の外側を覆う下カバーパネル108の排気管118に隣接する箇所には、遮熱板119が設けられている。
【0021】
また、このバッテリパック10の冷却装置は、図7及び図8に示すように、上部ケース11上面の左後側に開口する吸気口10aを覆うエアクリーナ16を配置し、エアクリーナ16のダーティサイド室31aとフィルタ部材33とを吸気口10aの前方側に配置するとともに上部ケース11の長手方向である左右方向に長い形状に形成している。
エアクリーナ16は、上部ケース11上面の右側前後に配置されている12V用端子23とサービスプラグ25(操作部材)とに隣接するように設置されている。なお、このエアクリーナ16は、その本体部より外方に突出する張出片44のネジ孔44a内に不図示のボルトを差し込んでネジ止めすることにより、上部ケース11上面に固定するようになっている。なお、そのエアクリーナ16の下には、不図示のヒューズをセットするヒューズボックス18が配置されている。
【0022】
これにより、バッテリパック10の冷却装置は、車両100のハッチバックドア109を跳ね上げて荷室Lを開放し、上カバーパネル106の上部からサービスリッド107を外すことにより各種メンテナンス作業を行うことができる。このとき、作業者は、車両100の後方から12V用端子23やサービスプラグ25と共にエアクリーナ16に対してアプローチでき、これら部品のメンテナンス作業が容易になる。また、ヒューズボックス18は、エアクリーナ16と共にそのカバーを外すことで容易にヒューズの点検や交換作業を行うことができる。
エアクリーナ16は、外気を導入するダーティサイド室31aとフィルタ部材33とを上側ケース11の長手方向である車両幅方向に長い形状に形成して吸気口10a及びサービスプラグ25と並列に配置していることにより、フィルタ部材33の濾過面積を大きくし、その通気抵抗を減少させることができる。また、エアクリーナ16は、その前面側にこのエアクリーナ16の車両幅方向の全長に亘るような空気流入口16bを開口させ、ダクトを介さず外気をダーティサイド室31aへ取り入れる構造である。通気抵抗となるダクトがなく、空気流入口16b及びフィルタ部材33が通気抵抗の少ない構造のため、大量の外気を冷却風として小さな通風抵抗でエアクリーナ16内に取り込む(引き込む)ことができる。尚、本発明のエアクリーナ16においては、その通気抵抗を内燃機関に使用されるエアクリーナの1/10程度に低減することが可能である。
このことから、冷却ファン15は、送風量が少なく、消費電力も少ないものを選択して設置することができる。このため、バッテリパック10の冷却装置は、冷却ファン15の駆動により蓄電電力が大きく消費されてしまうことを回避することができる。
【0023】
また、エアクリーナ16は、図8および図9に示すように、小スペースに設置可能に上下方向に扁平した箱形状に形成されているフィルタケース16C内に板状のフィルタ部材33を収容する。このエアクリーナ16は、クリーナケースとしてその厚さ方向に2分割された下側ケース31と上側ケース32を備え、これら両者の間にフィルタ部材33を挟んで接合することにより、フィルタ部材33の下側に浄化前の外気が導入されるダーティサイド室31aが形成され、フィルタ部材33の上側にフィルタ部材33にて浄化された外気が導入されるクリーンサイド室31bが形成されている。
【0024】
具体的には、下側ケース31は、エアクリーナ16の空気流入口16bが開口するダーティサイド室31aと、クリーンサイド室31bの一部を成すとともにバッテリパック10の吸気口10aに連通する空気流出口16aを有する通路部と、に境界壁35で仕切られている。
この下側ケース31の空気流入口16bは、その横幅が下側ケース31の長手方向全長に亘り、かつフィルタ部材33の長手寸法と同等の上下2段の上流入口16baと下流入口16bbに分割されている。この上流入口16baと下流入口16bbには、各流入口の下縁部と上縁部との間を連結する支持リブ16brが適宜複数形成されて、下側ケース31の強度を確保するようになっている。
また、フィルタ部材33はその濾過面が水平状態からやや後傾した状態でダーティサイド室31aの天井部に配置され、下面33b側から上面33a側へ空気を流通させる。
また、下側ケース31は、ネジ止めする張出片44が外方に突出しているのに加えて、流出口16aの周縁から外方に突出するフランジ形状部45が形成されている。フランジ形状部45は、ネジ孔45a内に不図示のボルトを差し込んでネジ止めすることにより、流出口16aと上部ケース11上面の吸気口10aの周縁部同士を不図示のシール材を介して圧接させて気密に連通固定するようになっている。
【0025】
これにより、エアクリーナ16は、フィルタ部材33を介在させても、空気流入口16bを大きく開口させて小さな通気抵抗にすることができる。このフィルタ部材33は、その濾過面が車両幅方向へ延びる長辺と車両前後方向に延びる短辺とを有する長方形に形成され、濾過面の長辺がバッテリパック10の車両幅方向で12V用端子23の部分を除く略全域に亘る長さに形成されているため、流入口16bから十分な容量の外気(冷却風)を小さな通気抵抗で流通させることができる。このため、フィルタ部材33は、小さな電力消費の冷却ファン15でも、大容量の冷却風をバッテリパック10内に導入することができる。また、フィルタ部材33は、濾過面が大面積であるため、フィルタ部材33を長寿命化することができる。
なお、エアクリーナ16の空気流出口16aは、クリーンサイド室31bの底面内で大面積に開口しており、また、この流出口16aからはフィルタ部材33内を流通通過した清浄な冷却風を流出させることから、その開口面積で通気抵抗を発生させてしまうことはない。
【0026】
上側ケース32は、その内部にクリーンサイド室31bを備えている。そして、上側ケース32は、下側ケース31の側壁面部31sに対し、この側壁面部31sよりも1周り大き目の相似形状に形成されている側壁面部32sを接合するように形成されている。この上側ケース32は、下側ケース31との間に配置され、互いの周縁部を周回するように設けられている不図示のシール部材をその全周に亘って圧接することにより、クリーンサイド室31bを閉塞するようになっている。
フィルタ部材33で浄化されてクリーンサイド室31bに流入した外気は、クリーンサイド室31b内で反転して境界壁35によってダーティサイド室31aと区画された下側ケース31の通路部に流入し、その後空気流出口16aからバッテリパック10の吸気口10aへと流れる。なお、この上側ケース32は、側壁面部32sの端部32bを幅広に形成するとともに、端部32bの上面と側壁面部32sの外面とを繋ぐリブ形状部32cを適宜形成して強度を向上させている。
【0027】
この上側、下側ケース32、31は、上側の側壁面部32sの外面に一体形成されている突部46に下側の側壁面部31sの外面に設けているバネフック47を引っ掛けて内部空間を閉塞する閉止状態を維持するようになっている。突部46は、一対のリブ形状部46a間にそれより窪んだ湾曲形状部46bが形成されている。バネフック47は、外側に開く案内形状の先端部47aを備えて、基端部47bを突部46の湾曲形状部46bに沿う湾曲形状に形成している。
これにより、バネフック27は、先端部47aを突部46のリブ形状部46a間に差し込んで位置決めさせつつ湾曲形状部46bに案内させて基端部47bを撓ませた後に弾性復帰させることにより引っ掛けた状態にすることができ、上下ケース32、31の閉塞閉止状態を維持することができる。
【0028】
また、上側、下側ケース32、31は、下側ケース31側の境界壁35に形成されている雌ネジ孔35aに、上面ケース32の対応位置に開口する貫通孔36aに不図示のボルトを差し込んでネジ止めすることにより、より確実に閉塞閉止状態を維持することができる。なお、この貫通孔36aは、孔周りを境界壁35の雌ネジ孔35a周りに密接させて気密性を確保することができるようになっている。
【0029】
さらに、このエアクリーナ16は、フィルタ部材33が下側ケース31のダーティサイド室31a内で、下面33bを空気流入口16bに斜めの姿勢で対面させてセットするようになっている。
これにより、エアクリーナ16は、空気流入口16bから取り込んだ冷却風をそのままフィルタ部材33の下面33bに流し、下面33bから上面33aに向かうように流すことができ、冷却風の流路の屈曲をできるだけ少なくして小さな通気抵抗で流出口16a側に流すことができる。
【0030】
このように本実施形態においては、バッテリパック10の冷却装置における通気抵抗を低減して、バッテリパック10に設置することができる。また、その冷却装置(冷却ファン15)は、バッテリパック10の蓄電電力を浪費してしまうことなく、小さな消費電力で駆動してエアクリーナ16で清浄にした大容量の冷却風を小さな通気抵抗でバッテリパック10内に取り込むことができる。したがって、バッテリパック10内のバッテリモジュールBMを効果的に効率よく冷却することができる。
ここで、本実施形態では、エアクリーナ16をバッテリパック10の上面側に設置する場合を一例にして説明するが、これに限るものではない。例えば、エアクリーナをバッテリパックの側面や底面などの同一面に吸気口と共にサービスプラグなどを配置する場合にも適用することができる。
【0031】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
10 バッテリパック
10a 吸気口
10b 排気口
15 冷却ファン
16 エアクリーナ
16a 空気流出口
16b 空気流入口
17 排気ダクト
23 12V用端子
25 サービスプラグ
31 下側ケース
32 上側ケース
33 フィルタ部材
33a 上面
33b 下面
44 張出片
45 フランジ形状部
46 突部
47 バネフック
100 車両
102 リアシート
105 フロアパネル
106 上カバーパネル
107 サービスリッド
108 下カバーパネル
109 ハッチバックドア
BM バッテリモジュール
Fr 流体流路
L 荷室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9