特許第5924198号(P5924198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924198
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/321 20060101AFI20160516BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20160516BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   H01L21/88 K
   H01L21/304 622X
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-195231(P2012-195231)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-53372(P2014-53372A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】308014341
【氏名又は名称】富士通セミコンダクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091672
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 啓三
(72)【発明者】
【氏名】川口 慎一
(72)【発明者】
【氏名】三沢 信裕
(72)【発明者】
【氏名】内藤 謙仁
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−272560(JP,A)
【文献】 特開2005−217320(JP,A)
【文献】 特開2010−212525(JP,A)
【文献】 特開2007−115834(JP,A)
【文献】 特表2007−519828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304、21/3205−21/3213、21/463、
21/768、23/52−23/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の周縁を含む第1の領域と、該第1の領域よりも前記半導体基板の中央側に位置する第2の領域とに、第1の絶縁膜を形成する工程と、
少なくとも前記第2の領域における前記第1の絶縁膜の表面に溝を形成する工程と、
前記溝を形成する工程の後に、前記第1の絶縁膜に第1の金属膜を形成する工程と、
前記第2の領域の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
前記第1の領域の前記第1の金属膜上に、前記第2の金属膜より研磨レートが小さい第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を形成する工程の後に、前記第2の領域の前記溝内に前記第2の金属膜を残すように、前記第2の領域の前記第1の絶縁膜の前記表面の上方の前記第2の金属膜を研磨して除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の膜は、前記第1の金属膜と同一の種類の金属膜であり、
前記第1の領域における前記第1の金属膜と前記第1の膜の合計膜厚は、前記第2領域における前記第1の金属膜の膜厚より大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の膜を形成する工程は、
前記第1の領域の前記第1の金属膜上及び前記第2の領域の前記第2の金属膜上に、第1の導電体を形成する工程と、
前記第2の領域における前記第2の金属膜上の前記第1の導電体を除去して前記第1の膜とする工程と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の金属膜を除去する工程は、
前記第1の領域において前記第1の絶縁膜が露出しないように、前記第2の領域において前記第2の金属膜を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の金属膜を形成する工程は、
前記第1の領域及び前記第2の領域の前記第1の金属膜上に、第2の導電体を形成する工程と、
前記第1の領域の前記第2の導電体を除去して、前記第2の金属膜とする工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体装置の製造方法は、
前記第2の金属膜を除去する工程の後に前記第1の金属膜を研磨することにより、前記第2の領域において、前記溝の内部に前記第1の金属膜を残しつつ前記第1の金属膜を除去する工程をさらに含み、
前記第1の金属膜を除去する工程は、
前記第1の領域において前記第1絶縁膜が露出しないように、前記第2領域において前記第1金属膜を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板の周縁を含む第1の領域と、該第1の領域よりも前記半導体基板の中央側に位置する第2の領域とに、第1の絶縁膜を形成する工程と、
少なくとも前記第2の領域における前記第1の絶縁膜に溝を形成する工程と、
前記溝を形成する工程の後に、前記第1の絶縁膜に第1の金属膜を形成する工程と、
前記第2の領域の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
前記第1の領域の前記第1の金属膜上及び前記第2の領域の前記第2の金属膜上に、第1の材料膜を形成し、前記第2の領域における前記第2の金属膜上の前記第1の材料膜を除去して、前記第1の領域の前記第1の金属膜上に、前記第2の金属膜より研磨レートが小さい第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を形成する工程の後に、前記第2の領域の前記溝内に前記第2の金属膜を残すように、前記第2の金属膜を研磨して除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の材料膜は、導電体であることを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の材料膜は、絶縁体であることを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の膜を形成する工程において、前記第2の金属膜よりも薄く、かつ、前記第1の金属膜よりも厚く前記第1の膜を形成することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記溝を形成する工程において、前記第1の領域における前記第1の絶縁膜にも前記溝を形成することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の高集積化に伴い、半導体装置の配線を形成する方法としてダマシン法が採用されつつある。ダマシン法は、絶縁膜に形成された配線溝に金属膜を埋め込み、その金属膜を研磨することで配線溝内に配線を形成する方法であり、エッチングで金属膜をパターニングする必要がないので配線の微細化に有利である。
【0003】
ダマシン法で金属膜を研磨するにはCMP(Chemical Mechanical Polishing)法が使用される。そのCMP法では、研磨対象の金属膜の他に、配線溝の周囲の絶縁膜も研磨されて絶縁膜の上面の平坦性が低下し、ひいては半導体装置の歩留まりが低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造方法において、絶縁膜の平坦性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の開示の一観点によれば、半導体基板の周縁を含む第1の領域と、該第1の領域よりも前記半導体基板の中央側に位置する第2の領域とに、第の絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記第2の領域における前記第1の絶縁膜の表面に溝を形成する工程と、前記溝を形成する工程の後に、前記第の絶縁膜に第1の金属膜を形成する工程と、前記第2の領域の前記第の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、前記第1の領域の前記第1の金属膜上に、前記第2の金属膜より研磨レートが小さい第の膜を形成する工程と、前記第1の膜を形成する工程の後に、前記第2の領域の前記溝内に前記第2の金属膜を残すように、前記第2の領域の前記第1の絶縁膜の前記表面の上方の前記第2の金属膜を研磨して除去する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
さらに、以下の開示の一観点によれば、半導体基板の周縁を含む第1の領域と、該第1の領域よりも前記半導体基板の中央側に位置する第2の領域とに、第1の絶縁膜を形成する工程と、少なくとも前記第2の領域における前記第1の絶縁膜に溝を形成する工程と、前記溝を形成する工程の後に、前記第1の絶縁膜に第1の金属膜を形成する工程と、前記第2の領域の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、前記第1の領域の前記第1の金属膜上及び前記第2の領域の前記第2の金属膜上に、第1の材料膜を形成し、前記第2の領域における前記第2の金属膜上の前記第1の材料膜を除去して、前記第1の領域の前記第1の金属膜上に、前記第2の金属膜より研磨レートが小さい第1の膜を形成する工程と、前記第1の膜を形成する工程の後に、前記第2の領域の前記溝内に前記第2の金属膜を残すように、前記第2の金属膜を研磨して除去する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
以下の開示によれば、第2の金属膜を研磨するとき、第1の領域の絶縁膜が第1の膜によって保護されるので、研磨によって絶縁膜の上面の平坦性が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1(a)、(b)は、検討に使用した半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
図2図2(a)、(b)は、検討に使用した半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
図3図3(a)、(b)は、検討に使用した半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
図4図4(a)、(b)は、検討に使用した半導体装置の製造途中の断面図(その4)である。
図5図5(a)、(b)は、検討に使用した半導体装置の製造途中の拡大平面図(その1)である。
図6図6(a)、(b)は、検討に使用した半導体装置の製造途中の拡大平面図(その2)である。
図7図7(a)、(b)は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その1)である。
図8図8(a)、(b)は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その2)である。
図9図9(a)、(b)は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図(その3)である。
図10図10(a)、(b)は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の拡大平面図(その1)である。
図11図11は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の拡大平面図(その2)である。
図12図12(a)、(b)は、本実施形態において配線と絶縁膜との積層方法の別の例について説明するための拡大断面図(その1)である。
図13図13(a)、(b)は、本実施形態において配線と絶縁膜との積層方法の別の例について説明するための拡大断面図(その2)である。
図14図14は、本実施形態において配線と絶縁膜との積層方法の別の例について説明するための拡大断面図(その3)である。
図15図15は、本実施形態において配線と絶縁膜との積層数を更に増やして得られた半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が行った検討結果について説明する。
【0009】
図1図4は、この検討に使用した半導体装置の製造途中の断面図であり、図5図6はその拡大平面図である。
【0010】
この半導体装置は、ダマシン法で形成された配線を備えるものであり、以下のようにして製造される。
【0011】
まず、図1(a)に示すように、半導体基板1としてシリコン基板を用意する。半導体基板1は、その周縁を含む第1の領域Iと、第1の領域Iよりも基板の中央寄りの第2の領域IIとを有する。
【0012】
これらの領域のうち、第1の領域Iは、半導体基板1の端1eから1mm〜4mm、例えば2mmだけ基板の内側に入った領域であって、当該領域には製品用の半導体装置は作製されない。なお、半導体基板1の欠けを防止するため、第1の領域Iの半導体基板1には面取り加工が施されている。
【0013】
一方、第2の領域IIは複数の製品用の半導体装置が切り出される領域であって、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタTRが予め形成される。
【0014】
そのトランジスタTRは、半導体基板1の表面を熱酸化してなるゲート絶縁膜2の上にポリシリコン膜をパターニングしてなるゲート電極4を備え、そのゲート電極4の横には絶縁性サイドウォール6として酸化シリコン膜が形成される。そして、例えばゲート電極4と絶縁性サイドウォール6とをマスクにして半導体基板1にn型不純物をイオン注入することにより、ゲート電極4の横の半導体基板1にn型導電型のソース領域8aとn型導電型のドレイン領域8bとが形成される。なお、ソース領域8a及びドレイン領域8bは、n型の導電型に代えてp型の導電型を有するものでもよい。
【0015】
次に、半導体基板1の上に下層絶縁膜としてCVD(Chemical Vapor Deposition)法で酸化シリコン膜を成膜し、必要に応じてCMP法で酸化シリコン膜の平坦化を行い、例えば400nm程度の厚さに形成する(図示せず)。
【0016】
次に、ゲート電極4及びソース領域8a、ドレイン領域8bのそれぞれに接続するコンタクトプラグ(図示せず)を、下層絶縁膜中に形成する。
【0017】
次に、下層絶縁膜上に、絶縁膜10としてCVD(Chemical Vapor Deposition)法で酸化シリコン膜を例えば400nm程度の厚さに形成する。
【0018】
図5(a)は本工程を終了後の平面図であり、上記の図1(a)は図5(a)のA1−A1線に沿う断面図に相当する。
【0019】
続いて、図1(b)に示すように、絶縁膜10の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像してレジスト膜12を形成する。
【0020】
図5(b)は本工程を終了後の平面図であり、上記の図1(a)は図5(b)のA2−A2線に沿う断面図に相当する。
【0021】
図5(b)に示すように、上記のフォトレジストの露光はチップ領域C毎に行われ、半導体基板1の周縁の第1の領域Iにおいてもチップ領域Cが設定される。
【0022】
そして、図2(a)に示すように、上記のレジスト膜12をマスクにしながら、例えばフッ化炭素(CF)系のエッチングガスを使用するRIE(Reactive Ion Etching)により絶縁膜10をエッチングし、第1の領域Iと第2の領域IIの各々の絶縁膜10に例えば深さが250nm程度の溝10aを形成する。
【0023】
図5(b)を参照して説明したように、この例では露光の単位となるチップ領域Cを半導体基板1の周縁にも設定したため、第1の領域Iと第2の領域IIとで溝10aの粗密差が生じない。そのため、その粗密差が原因で第1の領域Iと第2の領域IIとの間でエッチングレートに差が発生せず、第2の領域IIにおいて溝10aの幅や深さが不均一になることを防止できる。
【0024】
このエッチングを終了後、図2(b)に示すように、酸素プラズマを用いるアッシングによりレジスト膜12を除去する。
【0025】
次いで、図3(a)に示すように、絶縁膜10の上と溝10a内とにバリアメタル膜14として例えばタンタル膜をスパッタ法で30nm程度の厚さに形成する。
【0026】
なお、バリアメタル膜14は、第1の金属膜の一例であって、溝10a内に後で形成される配線中の銅が絶縁膜10に拡散するのを防止する機能を有する。そのような機能を有する材料としては、例えばチタン、タンタル、及びこれらの窒化物がある。
【0027】
そして、このバリアメタル膜14の上に銅のシード層16sをスパッタ法で50nm程度の厚さに形成する。その後に、シード層16sを給電層にする電解メッキ法によりバリアメタル膜14の上に第2の導電体16xとして銅膜を800nm程度の厚さに形成し、この第2の導電体16xで溝10aを完全に埋める。
【0028】
ここで、クリーンルーム内において半導体基板1を移動するときには不図示のカセットが用いられる。カセットは、1ロットの半導体基板1をまとめて収容するものであって、移動時等における振動によって半導体基板1の第1の領域Iがカセットに擦れる。
【0029】
特に、銅を材料とする第2の導電体16xは他の金属と比較して柔らかいため、第2の導電体16xが擦れることでカセットが銅で汚染されてしまう。
【0030】
このような汚染を防止するため、次の工程では、図3(b)に示すように、第1の領域Iにおける第2の導電体16xをウエットエッチングして除去すると共に、第2の領域IIに残された部分の第2の導電体16xを第2の金属膜16とする。このウエットエッチングはEBR(Edge Bevel Rinse)とも呼ばれる。
【0031】
このEBRで使用し得るエッチング液としては、例えば、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等のような酸性溶液がある。このエッチング液を第1の領域Iに対してのみ滴下することで、第2の領域IIに第2の金属膜16を残しながら、カセットを汚染する原因となる第2の導電体16xを第1の領域Iから除去することができる。
【0032】
なお、このエッチング液に対してバリアメタル膜14はエッチング耐性があるため、バリアメタル膜14は第1の領域Iに残存する。バリアメタル膜14は、銅を材料とする第2の金属膜16よりも硬いため、第2の金属膜16と比べてバリアメタル膜14による汚染は起こりにくい。
【0033】
図6(a)は、本工程を終了後の平面図であり、上記の図3(b)は図6(a)のA3−A3線に沿う断面図に相当する。
【0034】
図6(a)に示すように、本工程でEBRを行ったことにより、第1の領域Iにバリアメタル膜14が露出する。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、絶縁膜10の上の余分な第2の金属膜16とバリアメタル膜14とをCMP法で研磨して除去し、これらの膜を第2の領域IIの溝10a内のみに配線16aとして残す。このようにCMP法により溝10a内に配線16aを形成する方法はダマシン法と呼ばれる。
【0036】
ここで、この例ではEBRによって第1の領域Iから第2の金属膜16が除去されているため、第1の領域Iにおいては溝10aが第2の金属膜16で覆われておらず、溝10aの周囲の絶縁膜10が容易に研磨される。
【0037】
その結果、第1の領域Iにおける絶縁膜10は、本工程のCMPによって第2の領域IIにおけるよりも過剰に研磨され、第1の領域Iの絶縁膜10の上面の平坦性が低下することになる。
【0038】
図6(b)は、本工程を終了後の平面図であり、上記の図4(b)は図6(a)のA4−A4線に沿う断面図に相当する。
【0039】
図6(b)に示すように、第1の領域Iにおいては溝10aが配線16aで埋め込まれず、溝10aは空洞の状態となる。
【0040】
この後は、上記の図1(a)〜図4(a)の工程を繰り返すことにより、図4(b)に示す断面構造を得る。
【0041】
図4(b)では絶縁膜10と配線16aとをそれぞれ3層ずつ積層した多層構造を例示しているが、このように絶縁膜10を積層すると上記した平坦性の低下が最上層の絶縁膜10で顕著となり、第2の領域IIにおいても絶縁膜10の平坦性が低下することになる。
【0042】
そのため、第2の領域IIにおける配線16aの形状が崩れてしまい、第2の領域IIにおいて製品仕様を満たす半導体装置の数が減り、半導体装置の歩留まり低下を招いてしまう。
【0043】
以下に、このような絶縁膜10の平坦性の低下を防止することができる実施形態について説明する。
【0044】
(本実施形態)
図7図9は、本実施形態に係る半導体装置の製造途中の断面図であり、図10図11はその拡大平面図である。なお、図7図11において図1図6で説明したのと同じ要素にはこれらにおけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0045】
まず、上記の図1(a)〜図3(b)の工程を行うことにより、図7(a)に示すように、第2の金属膜16として形成した銅膜がEBRで第1の領域Iから除去された状態とする。
【0046】
そして、図7(b)に示すように、第2の金属膜16の上と、第1の領域Iにおけるバリアメタル膜14の上と溝10a内とにスパッタ法でタンタル膜を50nm程度の厚さに形成し、そのタンタル膜を第1の導電体20xとする。
【0047】
なお、第1の導電体20xはタンタル膜に限定されず、第2の金属膜16との間でCMPの研磨レートに差が生じるような任意の材料を第1の導電体20xの材料として採用し得る。そのような材料としては、バリアメタル膜14と同一種類の金属、例えば、チタン、タンタル、及びこれらの窒化物がある。また、第1の導電体20xに代えて絶縁体を形成してもよい。
【0048】
これ以降の工程では、第2の金属膜16と第1の導電体20xとを以下の第1〜第3のステップで研磨し、第2の領域IIから第1の導電体20xを除去する。
【0049】
最初の第1のステップでは、図8(a)に示すように、CMP法により第1の導電体20xを研磨することにより第2の領域IIから第1の導電体20xを除去し、第1の領域Iに残された部分の第1の導電体20xを第1の膜20とする。
【0050】
そのCMPでは不図示の研磨パッドを使用するが、第2の領域IIは第2の金属膜16の厚みによって第1の領域Iよりも研磨パッドに強く押圧される。よって、このCMPでは、第2の領域IIの第1の膜20が優先的に研磨され、第1の領域Iに第1の膜20を残すことができる。
【0051】
また、このCMPで使用するスラリは特に限定されないが、バリアメタル用のシリカ系のスラリを使用するのが好ましい。シリカ系のスラリを用いることにより、第1の膜20の研磨レートが第2の金属膜16の研磨レートよりも大きくなるため、第2の金属膜16を残しながら、第2の領域IIにおける第1の膜20を選択的に研磨することができる。
【0052】
なお、第1の膜20が厚すぎると、本ステップにおいて第2の領域IIから第1の膜20を除去するのが困難となる。よって、例えば第2の金属膜16よりも薄く、より好ましくはバリアメタル膜14と同程度の厚さに第1の膜20を形成し、本ステップで第1の膜20を容易に除去できるようにするのが好ましい。
【0053】
また、本工程の終了時点では、第1の領域Iにおけるバリアメタル膜14と第1の膜20との合計膜厚は、第2領域IIにおけるバリアメタル膜14の膜厚より大きい状態となる。
【0054】
図10(a)は、本ステップを終了後の平面図であり、上記の図8(a)は図10(a)のA4−A4線に沿う断面図に相当する。
【0055】
図10(a)に示すように、本ステップを行うことにより、第2の領域IIに第2の金属膜16が露出する。
【0056】
次の第2のステップでは、図8(b)に示すように、上記の第1のステップにおけるよりも砥粒濃度が低いコロイダルシリカスラリを用いて、第2の領域IIに残されていた第2の金属膜16を研磨する。
【0057】
本ステップで使用するコロイダルシリカスラリに対し、第1の膜20の研磨レートは第2の金属膜16の研磨レートよりも小さい。よって、本ステップでは、第1の領域Iにおいて絶縁膜10が露出しないように第1の領域Iに第1の膜20を残しながら、第2の金属膜16を選択的に研磨することができる。その結果、第2の領域IIにおいて絶縁膜10の上の余分な第2の金属膜16を除去して溝10a内のみに第2の金属膜16を配線16aとして残すことができる。
【0058】
なお、上記のコロイダルシリカスラリを用いると、バリアメタル膜14の研磨レートは第2の金属膜16の研磨レートよりも小さくなるので、本ステップの終了後には第2の領域IIにバリアメタル14が残存する。
【0059】
図10(b)は、本ステップを終了後の平面図であり、上記の図8(b)は図10(b)のA5−A5線に沿う断面図に相当する。
【0060】
図10(b)に示すように、第1の領域Iは第1の膜20で保護された状態となる。
【0061】
次の第3のステップでは、図9(a)に示すように、第2の領域IIに残存するバリアメタル膜14を研磨する。これにより、第2の領域IIにおいて、溝10aの内部にバリアメタル膜14を残しつつ、絶縁膜10の上からバリアメタル膜14が除去される。
【0062】
本ステップで使用し得るスラリとしては、例えばシリカ系のスラリがある。
【0063】
ここで、本ステップの開始時においては、第1の領域Iにおける絶縁膜10が第1の膜20(図8(b)参照)で保護されているため、不図示の研磨パッドで絶縁膜10が直接研磨されるのを第1の膜20で防止できる。これにより、第1の領域Iにおいて絶縁膜10が露出しないようになるため、第1の領域Iにおいて絶縁膜10の上面が低下するのを防止でき、本ステップが終了した後においても絶縁膜10の平坦性を維持することが可能となる。
【0064】
なお、薄い第1の膜20では研磨パッドから第1の領域Iにおける絶縁膜10を保護で
きないので、第1の膜20による第2の金属膜16の保護の実効を図るためには、第1の膜20のある程度の厚さが求められる。そのため、第1の膜20はバリアメタル膜14の膜厚と同程度、又はやや厚くするのが好ましい。
【0065】
図11は、本ステップを終了後の平面図であり、上記の図9(a)は図11のA6−A6線に沿う断面図に相当する。
【0066】
図11に示すように、本ステップを行っても第1の領域Iにはバリアメタル膜14が残存するが、本ステップの研磨条件によってはバリアメタル膜14の一部が除去される場合もある。
【0067】
この後は、図7(a)〜図9(a)の工程を繰り返すことにより、図9(b)に示すような絶縁膜10と配線16aとの積層構造を得る。
【0068】
上記したように、本実施形態では第1の膜20(図8(b)参照)によって各絶縁膜10の上面の平坦性が維持されているため、このように複数の絶縁膜10を積層しても、最上層の絶縁膜10の上面の平坦性が第2の領域IIにおいて顕著に低下することはない。
【0069】
よって、絶縁膜10の平坦性の低下が原因で第2の領域IIにおいて配線16aの形状が崩れるのを防止でき、第2の領域IIに作製される半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0070】
なお、配線16aと絶縁膜10との積層方法は上記に限定されない。これらの積層方法の別の例について、図12図14を参照しながら説明する。図12図14は、図9(a)のA部の拡大断面図に相当する図である。
【0071】
まず、上記のように図9(a)の断面構造を得た後、図12(a)に示すように、上記の絶縁膜10と配線16aの上に、新たに別の絶縁膜10を形成する。その絶縁膜10は、例えばTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)ガスを使用するCVD法で形成された厚さが約500nmの酸化シリコン膜である。
【0072】
次いで、図12(b)に示すように、絶縁膜10をパターニングして配線16aに至る深さのホール10bを形成する。
【0073】
その後、図13(a)に示すように、絶縁膜10を再びパターニングすることにより、ホール10bに重なる溝10aを形成する。
【0074】
次に、図13(b)に示すように、溝10aとホール10bの各々の内面と絶縁膜10の上とにスパッタ法でタンタル膜を約30nmの厚さに形成し、そのタンタル膜をバリアメタル膜14とする。
【0075】
そして、このバリアメタル膜14の上に銅のシード層16sをスパッタ法で50nm程度の厚さに形成する。その後に、シード層16sを給電層にする電解メッキ法によりバリアメタル膜14の上に第2の金属膜16として銅膜を1000nm程度の厚さに形成し、この第2の金属膜16で溝10aとホール10bの各々を完全に埋める。
【0076】
この後は、上記した図7(a)〜図9(a)と同一の工程を行うことにより、図14に示す断面構造を得る。
【0077】
この例では、溝10aの下にホール10bを形成したため、溝10a内の配線16aがホール10bを介してその下の配線16aと電気的に接続される。
【0078】
図15は、配線16aと絶縁膜10との積層数を更に増やして得られた半導体装置の断面図である。なお、図15において、図1図14で説明したのと同じ要素にはこれらの図におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0079】
この半導体装置では、最上層の絶縁膜10のホール10b内にタングステンを材料とするコンタクトプラグ30を形成し、そのコンタクトプラグ30と絶縁膜10の上に電極パッド31を形成する。
【0080】
その電極パッド31は、スパッタ法で形成された第1の窒化チタン膜31a、銅含有アルミニウム膜31b、及び第2の窒化チタン膜31cをこの順に積層してなり、その中央付近では銅含有アルミニウム膜31bが露出する。
【0081】
そして、この電極パッド31の上には、酸化シリコン膜等の第1のパシベーション膜33と窒化シリコン膜等の第2のパシベーション膜34がCVD法でこの順に形成され、これらのパシベーション膜33、34の開口33aから上記の電極パッド31が露出する。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、図7(b)に示したように、EBR後に形成した第1の膜20によって第1の領域Iの絶縁膜10が保護される。よって、図8(a)〜図9(a)のようにダマシン法で配線16aを形成するときに、第1の領域Iにおける絶縁膜10がCMPで研磨されるのを防止できる。その結果、研磨が原因で絶縁膜10の上面の平坦性が第1の領域Iで低下せず、第1の領域Iに隣接する第2の領域IIにおいても絶縁膜10の上面を平坦な状態に維持できる。
【0083】
これにより、図9(b)や図15のように複数の絶縁膜10を積層しても最上層の絶縁膜10で平坦性が低下することがないため、平坦性の低下が原因で配線16aの形状が崩れることがなく、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0084】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態は上記に限定されない。
【0085】
例えば、図15ではソース領域8aとドレイン領域8bとに接続されるコンタクトプラグ35を例示しているが、そのコンタクトプラグ35を形成するときに上記実施形態を適用してもよい。
【0086】
コンタクトプラグ35は、コンタクトホール10a内にチタン膜等のバリアメタル膜35aとタングステン膜35bとを順に形成し、コンタクトホール10a以外のこれらの膜35a、35bをCMPで研磨して除去することで形成され得る。その研磨の際、本実施形態を適用することで、最下層の絶縁膜10の平坦性を維持することができる。
【0087】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0088】
(付記1) 半導体基板の周縁を含む第1の領域と、該第1の領域よりも前記半導体基板の中央側に位置する第2の領域とに、第1の絶縁膜を形成する工程と、
少なくとも前記第2の領域における前記第1の絶縁膜に溝を形成する工程と、
前記溝を形成する工程の後に、前記第1の絶縁膜に第1の金属膜を形成する工程と、
前記第2の領域の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
前記第1の領域の前記第1の金属膜上に、前記第2の金属膜より研磨レートが小さい第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を形成する工程の後に、前記第2の領域の前記溝内に前記第2の金属膜を残すように、前記第2の金属膜を研磨して除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【0089】
(付記2) 前記第1の膜は、前記第1の金属膜と同一の種類の金属膜であり、
前記第1の領域における前記第1の金属膜と前記第1の膜の合計膜厚は、前記第2領域における前記第1の金属膜の膜厚より大きいことを特徴とする付記1記載の半導体装置の製造方法。
【0090】
(付記3) 前記第1の膜を形成する工程は、
前記第1の領域の前記第1の金属膜上及び前記第2の領域の前記第2の金属膜上に、第1の導電体を形成する工程と、
前記第2の領域における前記第2の金属膜上の前記第1の導電体を除去して前記第1の膜とする工程と、
を有することを特徴とする付記1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【0091】
(付記4) 前記第2の金属膜を除去する工程は、
前記第1の領域において前記第1の絶縁膜が露出しないように、前記第2の領域において前記第2の金属膜を研磨する工程を含むことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【0092】
(付記5) 前記第2の金属膜を形成する工程は、
前記第1の領域及び前記第2の領域の前記第1の金属膜上に、第2の導電体を形成する工程と、
前記第1の領域の前記第2の導電体を除去して、前記第2の金属膜とする工程と、
を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【0093】
(付記6) 前記半導体装置の製造方法は、
前記第2の金属膜を除去する工程の後に前記第1の金属膜を研磨することにより、前記第2の領域において、前記溝の内部に前記第1の金属膜を残しつつ前記第1の金属膜を除去する工程をさらに含み、
前記第1の金属膜を除去する工程は、
前記第1の領域において前記第1絶縁膜が露出しないように、前記第2領域において前記第1金属膜を研磨する工程を含む
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【0094】
(付記7) 前記第1の膜を形成する工程において、前記第2の金属膜よりも薄く、かつ、前記第1の金属膜よりも厚く前記第1の膜を形成することを特徴とする付記1乃至付記6いずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【0095】
(付記8) 前記溝を形成する工程において、前記第1の領域における前記第1の絶縁膜にも前記溝を形成することを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【0096】
(付記9) 前記第2の金属膜として銅膜を形成することを特徴とする付記1乃至付記8のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【0097】
(付記10) 前記第1の膜として、チタン膜、タンタル膜、及びこれらの窒化膜のいずれかを形成することを特徴とする付記1乃至付記9のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【0098】
(付記11) 前記第1の絶縁膜を形成する工程、前記溝を形成する工程、前記第1の金属膜を形成する工程、前記第2の金属膜を形成する工程、前記第1の膜を形成する工程、及び前記第2の金属膜を研磨して除去する工程を複数回行うことにより、前記溝内に残された前記第2の金属膜と前記第1の絶縁膜との積層構造を形成することを特徴とする付記1乃至付記10のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0099】
1…半導体基板、1e…端、2…ゲート絶縁膜、4…ゲート電極、6…絶縁性サイドウォール、8a…ソース領域、8b…ドレイン領域、10…絶縁膜、10a…溝、10b…ホール、12…レジスト膜、14…バリアメタル膜、16…第2の金属膜、16a…配線、16s…シード層、20…第1の膜、30…コンタクトプラグ、31…電極パッド、31a…第1の窒化チタン膜、31b…銅含有アルミニウム膜、31c…第2の窒化チタン膜、33…第1のパシベーション膜、33a…開口、34…第2のパシベーション膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15