(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記台座部と前記タイヤトレッド部の内表面には、互いに嵌合する留め具が設けられ、前記留め具によって前記台座部は前記タイヤトレッド部の内表面に固定されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、タイヤがパンクしたときに、タイヤとリムとにより挟まれたタイヤ空洞領域内に注入するパンク修理液がよく用いられている。このパンク修理液は液体であるため、パンク修理液がタイヤ空洞領域に注入されると、タイヤ空洞領域内に面するタイヤ内表面の他、タイヤ空洞領域に設けられた送信装置にもパンク修理液が付着し、場合によっては固化して送信装置に設けられた開口部を塞ぎ、空気圧の計測に影響を与えるといった問題がある。
【0006】
特に、送信装置がタイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定される場合、大きな問題が発生し易い。具体的には、タイヤが低速回転するとき、タイヤ空洞領域の下部には余分になったパンク修理液が溜まり易い。タイヤトレッド部の内表面に固定された送信装置は、タイヤの回転によってタイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液を横切る。このとき、パンク修理液の一部が送信装置の通過に伴って液滴となって送信装置に降りかかり、送信装置に設けられた開口部に付着し開口部を塞ぐ場合が多い。
送信装置の高さを高くして、パンク修理液の液滴を自ら被り難くすることもできるが、送信装置がタイヤ空洞領域内の突出高さが大きくなり、重量も大きくなることから、タイヤのユニフォーミティに悪影響を与える。
【0007】
本発明は、タイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定される形態の送信装置であって、パンク修理液を用いてタイヤのパンクを修理しても、タイヤ空洞領域と送信装置の内部空間とを接続する通気孔等の開口部をパンク修理液が塞ぎ難い送信装置、およびこの送信装置を用いてタイヤの異常の有無を判定するタイヤ情報監視システム、及び、この送信装置を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、タイヤ空洞領域に設けられ、タイヤの状態に関するタイヤ情報を送信する送信装置である。当該送信装置は、
タイヤとリムで囲まれたタイヤ空洞領域に充填される気体の状態を、タイヤ情報として検出するセンサと、
検出した前記タイヤ情報を無線により送信する送信機と、
前記タイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定するための固定部が、第1の方向に向いた台座部と、前記タイヤ空洞領域と通気孔を介して連通した内部空間と、を備え、前記内部空間に面して前記センサが設けられるとともに、前記送信機が設けられる装置ケースと、を有する。
前記装置ケースは、前記第1の方向と直交する指定された第2の方向が装着されるタイヤのタイヤ周方向に一致するように配置の向きが定められている。
前記第1の方向及び前記第2の方向に直交する前記装置ケースの断面方向の幅に関して、前記装置ケースの前記第2の方向の端部から中央部に進むほど前記装置ケースの幅は徐々に広くなっている。
さらに、前記装置ケースは、前記タイヤトレッド部の前記内表面に最も近い前記台座部の前記固定部から前記台座部は前記第2の方向の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。
【0009】
このとき、前記装置ケースの前記第2の方向に沿った最長部分の長さは、前記装置ケースの断面方向の最も広い部分の幅に比べて長いことが好ましい。
【0010】
また、前記通気孔の前記タイヤ空洞領域側の開口部は、前記装置ケースの表面から一方向に突出した突出部の頂部に設けられる。さらに、前記第1の方向を高さ方向とし、前記台座部の固定部を基準として前記高さ方向に沿った高さを定めたとき、前記開口部の高さは20mm以上であることが好ましい。
【0011】
前記第2の方向に沿った前記装置ケースの最長部分の両端は、前記装置ケースの最大高さの2分の1以上の高さの位置にあることが好ましい。
【0012】
また、前記第1の方向を高さ方向としたとき、前記通気孔の前記タイヤ空洞領域側の開口部は、前記装置ケースの表面から前記高さ方向に突出した突出部の頂部に設けられ、前記台座部の固定部を基準として前記高さ方向の高さを定めたとき、前記突出部が設けられる前記装置ケースの表面は前記装置ケースの縁に対して凹むように、前記装置ケースの縁は前記突出部が設けられる領域の前記装置ケースの表面に対して高く延びていることが好ましい。
【0013】
より好ましい形態では、前記通気孔の前記開口部に対して、前記装置ケースの縁は高い。
【0014】
本発明の他の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、
タイヤ本体と、
タイヤトレッド部の前記タイヤ空洞領域に面する内表面に固定されて設けられ、タイヤの状態に関するタイヤ情報を送信する送信装置と、を有する。
前記送信装置は、
検出した前記タイヤ情報を無線により送信する送信機と、
前記タイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定するための固定部が、第1の方向に向いた台座部と、前記タイヤ空洞領域と通気孔を介して連通した内部空間と、を備え、前記内部空間に面して前記センサが設けられるとともに、前記送信機が設けられる装置ケースと、を有する。
前記装置ケースは、前記第1の方向と直交する指定された第2の方向が装着されるタイヤのタイヤ周方向に一致するように配置されている。
前記第1の方向及び前記第2の方向に直交する前記台座部の断面方向の幅に関して、前記台座部の前記第2の方向の端部から中央部に進むほど前記台座部の幅は徐々に広くなっている。
前記装置ケースは、前記タイヤトレッド部の前記内表面に最も近い前記台座部の前記固定部から、前記台座部はタイヤ周方向の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。
【0015】
その際、前記傾斜面は、前記タイヤトレッド部の前記内表面に対して20〜60度傾斜していることが好ましい。
【0016】
また、前記空気入りタイヤにおいて、前記台座部と前記タイヤトレッド部の内表面には、互いに嵌合する留め具が設けられ、前記留め具によって前記台座部は前記タイヤトレッド部の内表面に固定されていることが好ましい。
【0017】
本発明のさらに他の一態様は、タイヤ状態監視システムである。当該システムは、前記システムは、送信装置と、受信装置と、監視部と、を備える。
前記送信装置は、
タイヤとリムで囲まれたタイヤ空洞領域に充填される気体の状態を、タイヤ情報として検出するセンサと、
検出した前記タイヤ情報を無線により送信する送信機と、
前記タイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定するための固定部が、第1の方向に向いた台座部と、前記タイヤ空洞領域と通気孔を介して連通した内部空間と、を備え、前記内部空間に面して前記センサが設けられるとともに、前記送信機が設けられる装置ケースと、を有する。
前記受信装置は、前記送信機から送信された前記タイヤ情報を受信する。
前記監視部は、前記タイヤ情報に基づいて、タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する。
前記送信装置における前記装置ケースは、前記第1の方向と直交する指定された第2の方向が装着されるタイヤのタイヤ周方向に一致するように配置の向きが定められている。
前記第1の方向及び前記第2の方向に直交する前記装置ケースの断面方向の幅に関して、前記台座部の前記第2の方向の端部から中央部に進むほど前記台座部の幅は徐々に広くなっている。
前記装置ケースは、前記タイヤトレッド部の前記内表面に最も近い前記台座部の前記固定部からタイヤ周方向の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の送信装置、タイヤ状態監視システム、及び空気入りタイヤによれば、パンク修理液を用いてタイヤのパンクを修理してもパンク修理液が通気孔等の開口部を塞ぎ難くい。このため、依然としてタイヤの空気圧情報等のタイヤ情報を適切に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の送信装置及びタイヤ状態監視システムについて、添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0021】
(タイヤ空気圧モニタリングシステムの概要)
図1は、タイヤ情報監視システムの実施形態であるタイヤ空気圧モニタリングシステム10の全体概要を示す図である。
タイヤ空気圧モニタリングシステム(以下、システムという)10は、車両12に搭載されている。システム10は、車両12の各タイヤ14a,14b,14c,14dのタイヤ空洞領域に設けられた空気圧情報送信デバイス(以下、送信デバイスという)16a,16b,16c,16dと、監視装置18と、を有する。
【0022】
送信デバイス16a,16b,16c,16dのそれぞれは、タイヤ14とリム19(
図2参照)で囲まれたタイヤ空洞領域に充填される空気の圧力に関する情報を、タイヤ情報として検出し、このタイヤ情報を監視装置18に無線で送信する。以降、送信デバイス16a,16b,16c,16dをまとめて説明するとき、送信デバイス16a,16b,16c,16dを総称して送信デバイス16という。
【0023】
(送信デバイスの構成)
図2(a)は、本実施形態の送信デバイス16の配置を説明する図であり、(b)は本実施形態の送信装置の一例の外観斜視図である。
送信デバイス16は、タイヤとリムで囲まれたタイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定されている。送信デバイス16のタイヤトレッド部の内表面への固定は後述するように、内表面に設けられた留め具と送信デバイス16の台座部に設けられた留め具同士が係合することにより送信デバイス16はタイヤトレッド部の内表面に固定される。すなわち、留め具は、送信デバイス16をタイヤトレッド部の内表面に固定する固定部に設けられている。
図2に示すように、本実施形態のタイヤには、タイヤ本体部のタイヤトレッド部の内表面に送信デバイス16が固定されている。
送信デバイス16は、装置ケース17を有する。装置ケース17の内部には、センサユニット28(
図3参照)と、送信機30(
図3参照)と、処理ユニット32(
図3参照)と、電源部34(
図3参照)と、アンテナ40(
図3参照)と、を有する。
装置ケース17は、上述したセンサユニット28、送信機30、処理ユニット32、電源部34、及びアンテナ40を含む回路を覆った樹脂製の筐体である。装置ケース17は、台座部17aと、内部空間17bとを有する。装置ケース17については後述する。
【0024】
(送信デバイスの構成)
図3は、送信デバイス16の回路構成図である。
センサユニット28は、空気圧センサ28aとA/D変換器28bを有する。空気圧センサ28aは、筐体22内の内部空間18bの空気圧を感知し、圧力信号を出力する。装置ケース17内の内部空間17bは、装置ケース17を貫通した通気孔36を介してタイヤ空洞領域の空間と連通している。
A/D変換器28bは、空気圧センサ28aから出力された圧力信号をデジタル変換し、圧力データを出力する。
【0025】
処理ユニット32は、中央処理部32aと記憶部32bとを有する。中央処理部32aは、記憶部32bの半導体メモリに格納されているプログラムに基づいて動作する。中央処理部32aは、電力が供給されて駆動すると、センサユニット28から送られてくる圧力データを所定時間間隔、例えば5分毎に、送信機30を介して監視装置18に空気圧の情報である圧力データを送信するように制御する。記憶部32bには送信デバイス16に固有の識別情報が予め記憶されており、中央処理部32aは圧力データと共に識別情報を監視装置18に送信するように制御する。
【0026】
記憶部32bは、中央処理部32aを動作するプログラムが記録されているROMと、例えばEEPROM等の書き換え可能な不揮発性のメモリとを備える。送信デバイス16の固有の識別情報は、記憶部32bの書き換え不可領域に記憶されている。
【0027】
送信機30は、発振回路30aと、変調回路30bと、増幅回路30cとを有する。
発振回路30aは、搬送波信号、例えば315MHz帯の周波数のRF信号を生成する。
変調回路30bは、中央処理部32aから送られた圧力データと送信デバイス16に固有の識別情報とを用いて、搬送波信号を変調して送信信号を生成する。変調方式は、振幅偏移変調(ASK)、周波数変調(FM)、周波数偏移変調(FSK)、位相変調(PM)、位相偏移変調(PSK)等の方式を用いることができる。
増幅回路30cは、変調回路30bで生成された送信信号を増幅し、アンテナ40を介して、送信信号を監視装置18に無線で送信する。
電源部34は、例えば二次バッテリが用いられ、略半永久的にセンサユニット28と、送信機30と、処理ユニット32と、に電力を供給する。
【0028】
このような回路24を覆う装置ケース17の表面には、装置ケース17の内部空間17bとタイヤ空洞領域との間を接続する通気孔36の開口部36aが設けられている。
【0029】
なお、本実施形態の送信デバイス16は、タイヤ空洞領域内に充填された空気圧を、空気の状態として検出するが、検出する空気の状態は、空気圧の他に、タイヤ空洞領域内の空気の温度であってもよい。
【0030】
(監視装置の構成)
図4は、監視装置18の回路構成図である。
監視装置18は、例えば車両10の運転席の位置に配置され、ドライバーに空気圧の情報を報知する。監視装置18は、アンテナ52と、受信部54と、受信バッファ56と、中央処理部58と、記憶部60と、操作部62と、スイッチ64と、表示制御部66と、表示部68と、電源部70と、を有する。
【0031】
アンテナ52は、送信デバイス16の送信周波数と同じ周波数に整合され、受信部54に接続されている。
受信部54は、送信デバイス16から送信された所定の周波数の送信信号を受信し、復調処理をして圧力データと識別情報のデータを取り出す。このデータは、受信バッファ56に出力する。
受信バッファ56は、受信部54から出力された圧力データと識別情報のデータを一時的に格納する。格納された圧力データと識別情報のデータは、中央処理部58からの指示にしたがって、中央処理部58に出力される。
【0032】
中央処理部58は、主にCPUで構成され、記憶部60に記憶されているプログラムに基づいて動作する。中央処理部58は、受信した圧力データと識別情報のデータに基づいて、識別情報毎にタイヤ14a〜14dの空気圧を監視する。具体的には、圧力データに基づいて、タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する。タイヤの異常の有無を判定するとは、例えば、空気圧が異常に低くなり、あるいは短時間に急激に低下して、タイヤがパンクしているか否かを判定することをいう。
【0033】
中央処理部58は、判定結果を表示制御部66に出力し、表示制御部66を介して判定結果を表示部68に出力させる。
さらに、中央処理部58は、操作部62からの情報やスイッチ64からの情報に応じて、送信デバイス16との間で通信方式等の初期設定を行う。また、操作部62からの情報により、中央処理部58においてタイヤの異常の有無の判定を行うための判定条件を設定することもできる。
記憶部60は、中央処理部58のCPUを動作するプログラムが記憶されたROMと、EEPROM等の不揮発性メモリとを有する。この記憶部60には、製造段階で、送信デバイス16との間の通信方式のテーブルが記憶されている。送信デバイス16と監視装置18は、初期段階において、上記通信方式で通信する。通信方式テーブルには、送信デバイス16のそれぞれの固有の識別情報に対応して、通信プロトコル、転送ビットレート、データフォーマット等の情報が含まれている。これらの情報は、操作部62からの入力により自在に設定変更をすることができる。
【0034】
操作部62は、キーボード等の入力デバイスを含み、各種情報や条件を入力するために用いられる。スイッチ64は、初期設定の開始を中央処理部58に指示するために用いられる。
表示制御部66は、中央処理部58からの判定結果に応じて、タイヤの装着位置に対応させてタイヤの空気圧を表示部68に表示させるように制御する。その際、表示制御部66は、タイヤがパンク状態にあるといった判定結果も、表示部68に同時に表示させるように制御する。
電源部70は、車両10に搭載されているバッテリから供給された電力を、監視装置18の各部分に適した電圧に制御して電力を供給する。
このように、送信デバイス16と監視装置18は構成される。
【0035】
(装置ケース)
図5(a)〜(c)は、装置ケース17を説明する図である。
装置ケース17は、台座部17aと、内部空間17bとを備える。台座部17aは、タイヤ空洞領域に面するタイヤトレッド部の内表面に固定するための固定部17dを有する。固定部17dは、
図5(a)に示すZ方向(第1の方向)に向いている。内部空間17bは、タイヤ空洞領域と通気孔36を介して連通している。装置ケース17は、内部空間17bに面して空気圧センサ28aを有するセンサユニット28と、送信機30と、処理ユニット32と、電源部34と、アンテナ40(
図5(a)では不図示)とが設けられる。送信機30、処理ユニット32、電源部34、及びアンテナ40は、装置ケース17に設けられて空間内に封止樹脂剤17cが充填されて装置ケース17に固定されている。
装置ケース17は、
図2(a)に示すように、X方向(第2の方向:
図5(a)の紙面に垂直方向)、すなわち、Z方向と直交する方向が、装着されるタイヤのタイヤ周方向に一致するように配置の向きが定められている。すなわち、装置ケース17においてX方向がタイヤ周方向に一致するようにタイヤに配置される。X方向とは、装置ケース17の長さが最も長くなる方向である。
X方向(第2の方向)及びZ方向(第1の方向)に直交する装置ケース17の断面方向(Y方向)の幅に関して、装置ケース17のX方向(第2の方向)の端部から中央部に進むほど装置ケース17の幅(Y方向の長さ)は徐々に広くなっている。より具体的には、装置ケース17の幅は、Z方向のいずれの高さの位置で切断しても、装置ケース17の切断面において、装置ケース17のX方向の端部から中央部に進むほど広がっている。
【0036】
装置ケース17は、タイヤトレッド部の内表面に最も近い台座部17aの基部である固定部17dからX方向(第2の方向)の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。
装置ケース17の表面のうち、Z方向において台座部17aから遠い側の面(Z方向上方に位置する面)には、突出部17eが設けられている。突出部17eの頂部には、内部空間17bとタイヤ空洞領域とを連通する通気孔36の開口部36aが設けられている。突出部17eに通気孔36の開口部35aを設けるのは、突出部17eの周辺の装置ケース17の表面にパンク修理液が付着することがあっても、突出部17eの開口部36aの周りに付着し難くするためである。このため、突出部17eの頂部の突出高さは、例えば3mm以上であることが好ましい。本実施形態の装置ケース17には、突出部17eが設けられるが、突出部17eは設けられなくてもよい。この場合、通気孔36の開口部36aは縁17fで囲まれた装置ケース17の中央部の表面上に設けられる。
また、突出部17eが設けられる領域の装置ケース17の表面は装置ケース17の縁17fに対して凹むように、装置ケース17の縁17fが、装置ケース17の中央部の表面に対してZ方向に高く延びている。さらに、突出部17eの頂部に設けられた通気孔36の開口部36aに対して、装置ケース17の縁17fは高い。
【0037】
このような構成にすることにより、タイヤトレッド部の内表面に装着された装置ケース17が、タイヤの回転によりタイヤ空洞領域の下部に溜まった余分なパンク修理液の中を通過する際、パンク修理液を乱して液滴を形成することを抑えることができる。万が一液滴が形成されたとしても、縁17fが液滴の飛散を遮るので、液滴が装置ケース17に降りかかって、通気孔36の開口部36aの周辺に付着して、通気孔36を塞ぐことは殆どなくなる。
本実施形態では、少なくとも、装置ケース17のX方向(第2の方向)の端部から中央部に進むほど装置ケース17の幅は徐々に広くなっており、装置ケース17は、タイヤトレッド部の内表面に最も近い台座部17aの固定部17dからX方向(第1の方向)の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。このため、装置ケース17が、タイヤの回転によりタイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液の中を通過しても、パンク修理液を乱して液滴が形成され難くなる。
装置ケース17のX方向の両端の縁より下方に位置する傾斜面は、船舶の舳先のように、フレア形状を成していることが、タイヤ下部に溜まったパンク修理液を通過する際、パンク修理液の液滴の形成を抑制する点で好ましい。
【0038】
突出部17eが設けられる中央部の領域の装置ケース17の表面は装置ケース17の縁17fに対して凹むように、装置ケース17の縁17fは装置ケース17の中央部の表面に対してZ方向に高く延びている。万が一、パンク修理液の液滴が形成されても、液滴が装置ケース17に降りかかり難い。このため、通気孔36の開口部36aの周辺に液滴が付着して、通気孔36を塞ぐことは殆どない。特に、通気孔36の開口部36aに対して、装置ケース17の縁17fを高くすることにより、パンク修理液の液滴が装置ケース17により一層降りかかり難い。
台座部17aの基部である固定部17d(固定部17dの最下端)を基準としてZ方向(高さ方向)に沿った高さを定めたとき、通気孔36の開口部36aの高さは20mm以上であることが、上記効果を発揮する点で好ましい。特に上限は設けられないが、低扁平率のタイヤのタイヤ空洞領域を考慮して、50mmを上限とすることが好ましい。
【0039】
また、X方向(第2の方向)に沿った装置ケース17の最長部分の両端は、装置ケースの最大高さの2分の1以上の高さの位置にあることが好ましい。本実施形態では、
図5(c)に示すように、装置ケース17の最長部分の両端は、装置ケース17の最大高さH
1の位置に概略あるので、本実施形態の場合、装置ケース17の最長部分の両端は、装置ケースの最大高さH
1の2分の1以上の高さの位置にある。
【0040】
また、
図5(c)に示すように、本実施形態では、装置ケース17は、X方向(第1の方向)の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。このとき、上記傾斜面は、タイヤトレッド部の内表面に対して20〜60度傾斜していることが好ましい。上記傾斜面の上記20〜60度の傾斜角度とは、具体的には、固定部17dのX方向の両端からX方向の両側に向かって直線を引いたとき、2つの直線A,Bが上記傾斜面と接するときの
図5(c)の水平面に対する角度θをいう。
タイヤの回転中、
図5(d)に示すように、タイヤトレッド外表面は、円弧状のタイヤ形状から水平な接地面の形状に移行し、この後、水平な接地面の形状から円弧状のタイヤ形状に戻る。同様に、タイヤトレッド内表面においても、円弧形状、水平な接地面の形状、円弧形状に順に変化する。このとき、接地面の前端及び後端でタイヤトレッド部の内表面は急激に角度が変化する。タイヤトレッド部の内表面に設けられた装置ケース17は接地面の前端及び後端を通過するとき、上記角度の変化によって、装置ケース17の両端が、タイヤトレッド部の内表面に接触することを防ぐために、装置ケース17における上記角度θを20以上とすることが好ましい。角度θの上限は、パンク修理液が効率的にY方向に排除され、通気孔36に液滴がかかりにくくなる点から60度に設定されることが好ましい。
【0041】
図6(a)〜(c)は、装置ケース17をタイヤトレッド部の内表面に装着する方法を説明する図である。
図6(a)に示すように、タイヤトレッド部の内表面には、留め具42が設けられている。留め具42の基部は、タイヤトレッド部の内表面側に位置するインナーライナ部材を通してタイヤ内部に埋め込まれている。一方、装置ケース17の台座部17aの固定部17dには、
図6(b)に示すように、留め具42に係合する留め具17gが設けられている。このため、
図6(c)に示すように、固定部17dに設けられている留め具17gが、タイヤトレッド部の内表面に装着された留め具42に係合することにより、装置ケース17はタイヤトレッド部の内表面に装着され固定される。なお、このような留め具17g,42を用いた装着方法は、特開2012−25318号において詳細に開示されている。
【0042】
本実施形態では、
図5(a)に示すように、通気孔36は、同じ断面積を維持して、突出部17eの内部空間17bに向けて延びているが、
図7に示すように、通気孔36は、突出部17eの頂部から内部空間17bの方向に進むにつれて、その断面が徐々に大きくなる形態であってもよい。このような通気孔36の形態では、通気孔36の内部にパンク修理液が進入したとしても、タイヤの回転による遠心力により内部空間17eに押し込まれやすくなり、通気孔36が塞がることは少なくなる。この場合、通気孔36の体積は、例えば2mm
3以上であることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態では、
図2(b)に示すように、縁17fがその周囲に比べて高い形態であるが、
図8に示すように、縁17fは、周囲に比べて高くなく、突出部17eが設けられる装置ケース17の表面と同じ平面上に位置してもよい。この場合においても、装置ケース17のX方向(第2の方向)の端部から中央部に進むほど装置ケース17の幅は徐々に広くなっており、装置ケース17は、タイヤトレッド部の内表面に最も近い台座部17aの固定部17dから、X方向(第1の方向)の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有している。したがって、
図8に示す形態においても、装置ケース17が、タイヤの回転によりタイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液の中を通過しても、パンク修理液を乱して液滴が形成され難い。
【0044】
以上、本実施形態についてまとめると、本実施形態では、装置ケース17は、X方向(第2の方向)が装着されるタイヤのタイヤ周方向に一致するように配置の向きが定められており、装置ケース17のY方向(断面方向)の幅に関して、装置ケース17のX方向の端部から中央部に進むほど装置ケース17の幅は徐々に広くなり、タイヤトレッド部の内表面に最も近い台座部17aの固定部17dから台座部17aはX方向の両側に向かって拡がるように延びる傾斜面を有する。この構成により、装置ケース17が、タイヤの回転によりタイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液の中を通過しても、パンク修理液を乱して液滴が形成され難い。このため、パンク修理液が通気孔36の開口部を塞ぎ難くい。
【0045】
装置ケース17のX方向に沿った最長部分の長さは、装置ケース17のY方向(断面方向)の最も広い部分の幅に比べて長い。このため、タイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液を乱す機会は少なくなり、液滴がより一層形成され難くい。
【0046】
通気孔36のタイヤ空洞領域側の開口部36aは、装置ケース17の表面から一方向に突出した突出部17eの頂部に設けられ、Z方向を高さ方向とし、台座部17aの固定部17dを基準として高さ方向に沿った高さを定めたとき、開口部36aの高さは20mm以上とする。このため、万が一、装置ケース17がタイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液を通過したときパンク修理液の液滴を形成したとしても、通気孔36の開口部36aにパンク修理液の液滴が付着し難い。
【0047】
X方向(第2の方向)に沿った装置ケース17の最長部分の両端は、装置ケース17の最大高さの2分の1以上の高さの位置にあるので、液滴が装置ケース17の両端から乗り越えて開口部36aに飛散することは少ない。
【0048】
また、通気孔36の開口部36aは、装置ケース17の表面から高さ方向に突出した突出部17eの頂部に設けられ、台座部17aの固定部17dを基準としてZ方向(高さ方向)の高さを定めたとき、突出部17eが設けられる領域の装置ケース17の表面は装置ケース17の縁17fに対して凹むように、装置ケース17の縁17fが、突出部17eの設けられる領域の装置ケース17の表面に対して高く延びている。このため、タイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液を装置ケース17が通過するとき、パンク修理液の液滴が装置ケース17の両端から乗り越えて開口部36aに飛散することは少ない。
【0049】
さらに、通気孔36の開口部36aに対して、装置ケース17の縁17fは高い。このため、タイヤ空洞領域の下部に溜まったパンク修理液を装置ケース17が通過するとき、パンク修理液の液滴が装置ケース17の両端から乗り越えて開口部36aに飛散することはより一層少ない。
【0050】
タイヤ本体部に装着した送信デバイス16の装置ケース17の傾斜面は、タイヤトレッド部の内表面に対して20〜60度傾斜しているので、タイヤトレッド部の内表面に設けられた装置ケース17が接地面の前端及び後端を通過するとき、タイヤトレッド部の内表面の向く角度の変化によって、装置ケース17の両端が、タイヤトレッド部の内表面に接触することはない。
台座部17aとタイヤトレッド部の内表面には、互いに嵌合する留め具17g,42が設けられているので、留め具17g,42によって台座部17aを含む装置ケース17はタイヤトレッド部の内表面にしっかりと固定され得る。
【0051】
(実験例)
本実施形態の効果を調べるために、
図2(b)に示す形態の装置ケースを用い、通気孔36の開口部36aの、固定部17dを基準として高さを種々変えた装置ケースを作製した。装置ケース17を有する送信デバイス16は195/65R15のタイヤのタイヤトレッド部の内表面に固定された後、タイヤはリムサイズ15×6Jのリムに組まれた。その後、パンク修理液をタイヤ空洞領域に450ml注入した。タイヤの空気圧は210kPaとした。この後、車両に装着してテストコースの舗装路にて30〜80km/時の走行速度で1時間走行した。走行後リム解きして、装置ケース17の通気孔36及び開口部36aに付着するパンク修理液の量を調べた。パンク修理液の付着量は、「無し」、「少ない」、「付着目立つ〜多い」、及び「非常に多い」、の4段階評価をし、「無し」及び「少ない」を合格レベルとした。下記表は、各例の仕様とその結果を示す。
【0053】
図2(b)に示す装置ケースを用いた例1〜4では、いずれもパンク修理液の通気孔36及び開口部36aに付着する量は少なく、合格レベルであった。したがって、
図2(b)に示す装置ケース17を用いることで、パンク修理液が通気孔36の開口部を塞ぎ難くいことがわかる。
また、例3,4に示すように、開口部36aの高さが20mmを超えることで、パンク修理液の付着の量が無くなることがわかる。これより、開口部36aの高さは20mm以上とすることが好ましいことがわかる。
【0054】
以上、本発明の送信装置、空気入りタイヤ、およびタイヤ状態監視システムについて詳細に説明したが、本発明の送信装置、空気入りタイヤ、およびタイヤ状態監視システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。