特許第5924206号(P5924206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924206
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】パイプ被覆層の折り返し用治具
(51)【国際特許分類】
   B29C 53/02 20060101AFI20160516BHJP
   B25B 33/00 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   B29C53/02
   B25B33/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-202455(P2012-202455)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-54821(P2014-54821A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年6月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年6月27日、パイプシステム工業株式会社岡山工場、同群馬工場、同柏工場に対し、パイプ被覆層の折り返し用治具を販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】井村 元
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−071593(JP,A)
【文献】 特開平06−064040(JP,A)
【文献】 実開平06−081725(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/00 − 53/84
B25B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周面を覆う被覆層をパイプの端部において折り返すための治具であって、
前記パイプと被覆層との間に挿入される円筒状の内筒部と、該内筒部がパイプと被覆層との間に挿入された状態でパイプ端部の被覆層を囲む円筒状の外筒部とを一体的に形成し、該外筒部の内周部と内筒部の外周部との間には複数のメインガイドリブを架設し、各メインガイドリブの間にはメインガイドリブを補助するサブガイドリブを設けるとともに、前記メインガイドリブの内周部には被覆層の折り返しを案内する折り返し用弧状部を設け、内筒部をパイプと被覆層との間に挿入し、回転しながら押し込むことにより被覆層をサブガイドリブで補助しながら折り返し用弧状部で折り返すように構成したことを特徴とするパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項2】
前記メインガイドリブの折り返し用弧状部は、メインガイドリブの内周部の内端側を内筒部の挿入側端部から断面円弧状に切欠き形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項3】
前記メインガイドリブ及びサブガイドリブは、それぞれ径方向に対して内筒部側が外筒部側よりも回転方向の進行方向に位置するように傾斜配置され、その傾斜角度は径方向に対して20〜40°であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項4】
前記メインガイドリブは、周方向に等間隔で5〜7本設けられ、サブガイドリブはメインガイドリブ間の中央位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項5】
前記サブガイドリブは、メインガイドリブより低く、かつ幅狭に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項6】
前記サブガイドリブは、その内端部が切欠かれてサブ切欠部が形成され、そのサブ切欠部の外周側には被覆層の折り返しを補助する折り返し用サブ弧状部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項7】
前記内筒部はその外周面が内奥部から挿入側端部に向かって縮径するようにテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【請求項8】
ハンドルの筒部内に回転不能に装着され、メインガイドリブ及びサブガイドリブの少なくとも内周側をハンドルの外端側から視認できるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系や給湯系におけるパイプ接続用の継手に対して被覆層を有するパイプを接続する際に、予め被覆層を捲って折り返すためのパイプ被覆層の折り返し用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
給水用や給湯用のパイプとして、パイプ外周面に被覆層を有するものが知られている。この被覆層は、パイプの傷付きを抑えるとともに、ウォーターハンマー現象による振動や衝撃音を抑制する働きを有している。このような被覆層を有するパイプを継手に接続する場合には、パイプの端部において被覆層を切り取ったり、捲って折り返したりしなければならない。
【0003】
そのようなパイプ端部の被覆層を除去するための発明が種々提案されている。例えば、特許文献1には給水・給湯管の配管方法が示されている。すなわち、その配管方法は、パイプの外周に剥離可能な緩衝層が積層され、その緩衝層にはパイプの長手方向に延びる多数の突条が一体形成されて、その突条に指を掛けて緩衝層を捲るものである。
【0004】
また、特許文献2には被覆材剥離工具が示されている。この被覆材剥離工具は、回転する本体に切刃を設けるとともに、その切刃で剥がされた被覆材を本体外側方へ向かって押し出すための押出部を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−303516号公報
【特許文献2】特開平9−192901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来構成の給水・給湯管の配管方法では、パイプ外周を被覆する緩衝層が一定の厚みと強度を有し、パイプを周囲から締付けていることから、パイプの端部において突条に指を掛けて緩衝層全体を捲って折り返すことは容易ではないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に示されている従来構成の被覆材剥離工具は、その軸線に対して斜め方向に延びる切刃を用いて被覆材を切り剥し、その切り剥された被覆材を押出部で本体外側方へ押し出すものである。このため、被覆材は工具の軸線に対して斜め方向に切り剥され、管の端部を継手に装着したとき、管の外周に被覆材が形成されていない部分が存在する。
【0008】
さらに、この被覆材剥離工具では、切刃による切り込みが浅いときには被覆材を十分に切り剥すことができなかったり、切刃による切り込みが深いときには管に傷を付けてしまったりするおそれがあった。従って、この被覆材剥離工具では、被覆材を有する管の端部を継手に接続するために、被覆材を剥離するための工具として適切ではないという問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的とするところは、パイプ端部における被覆層を極めて容易に折り返すことができるとともに、継手へのパイプの接続を迅速かつ円滑に行うことができるパイプ被覆層の折り返し用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、パイプの外周面を覆う被覆層をパイプの端部において折り返すための治具であって、前記パイプと被覆層との間に挿入される円筒状の内筒部と、該内筒部がパイプと被覆層との間に挿入された状態でパイプ端部の被覆層を囲む円筒状の外筒部とを一体的に形成し、該外筒部の内周部と内筒部の外周部との間には複数のメインガイドリブを架設し、各メインガイドリブの間にはメインガイドリブを補助するサブガイドリブを設けるとともに、前記メインガイドリブの内周部には被覆層の折り返しを案内する折り返し用弧状部を設け、内筒部をパイプと被覆層との間に挿入し、回転しながら押し込むことにより被覆層をサブガイドリブで補助しながら折り返し用弧状部で折り返すように構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1に係る発明において、前記メインガイドリブの折り返し用弧状部は、メインガイドリブの内周部の内端側を内筒部の挿入側端部から断面円弧状に切欠き形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記メインガイドリブ及びサブガイドリブは、それぞれ径方向に対して内筒部側が外筒部側よりも回転方向の進行方向に位置するように傾斜配置され、その傾斜角度は径方向に対して20〜40°であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記メインガイドリブは、周方向に等間隔で5〜7本設けられ、サブガイドリブはメインガイドリブ間の中央位置に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、前記サブガイドリブは、メインガイドリブより低く、かつ幅狭に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項5のいずれか一項に係る発明において、前記サブガイドリブは、その内端部が切欠かれてサブ切欠部が形成され、そのサブ切欠部の外周側には被覆層の折り返しを補助する折り返し用サブ弧状部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項6のいずれか一項に係る発明において、前記内筒部はその外周面が内奥部から挿入側端部に向かって縮径するようにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明のパイプ被覆層の折り返し用治具は、請求項1から請求項7のいずれか一項に係る発明において、ハンドルの筒部内に回転不能に装着され、メインガイドリブ及びサブガイドリブの少なくとも内周側をハンドルの外端側から視認できるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のパイプ被覆層の折り返し用治具では、パイプと被覆層との間に挿入される内筒部と、被覆層を囲む外筒部とが一体的に形成され、外筒部と内筒部との間には複数のメインガイドリブが架設され、各メインガイドリブ間にはサブガイドリブが設けられている。さらに、前記メインガイドリブの内周部には折り返し用弧状部が設けられている。
【0019】
そして、この折り返し用治具を用いてパイプ端部の被覆層を折り返す場合には、内筒部をパイプと被覆層との間に挿入し、回転しながら押し込むことにより、パイプ端部の被覆層はメインガイドリブの折り返し用弧状部に沿って移動しながら反転される。このとき、メインガイドリブ間に位置する被覆層は、サブガイドリブに沿って案内されながら折り返し方向に移動する。このため、パイプ端部の被覆層はメインガイドリブに案内されて折り返されるとともに、メインガイドリブ間の被覆層がサブガイドリブにより案内されて折り返される。すなわち、パイプ端部の被覆層を、折り返し用治具のメインガイドリブとサブガイドリブとの協働作用により容易に折り返すことができる。従って、被覆層が折り返されてパイプが露出された部分を継手内に差し込んで接続することができる。
【0020】
よって、本発明のパイプ被覆層の折り返し用治具によれば、パイプ端部における被覆層を極めて容易に折り返すことができるとともに、継手へのパイプの接続を迅速かつ円滑に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態における折り返し用治具を樹脂パイプの端部に対向させた状態を示す斜視図。
図2】(a)はその折り返し用治具を示す正面図、(b)は折り返し用治具を示す断面図。
図3】(a)は折り返し用治具のメインガイドリブを示す拡大断面図、(b)は折り返し用治具のサブガイドリブを示す拡大断面図。
図4】外周部に被覆層を有する樹脂パイプを示す正面図。
図5】折り返し用治具のハンドルを示す斜視図。
図6】ハンドルの第1筒部と、折り返し用治具の内筒部と、樹脂パイプ及びその被覆層との関係を示すハンドルの背面図。
図7】折り返し用治具をハンドルの第2筒部内に嵌め込んだ状態を示す断面図。
図8】折り返し用治具の作用を示す図であって、(a)は折り返し用治具の内筒部をパイプと被覆層との間に挿入した状態を示す斜視図、(b)はその状態を示す断面図。
図9図8に続く作用図であって、(a)は被覆層がメインガイドリブで折り返される状態を示す斜視図、(b)はその状態を示す断面図。
図10図9に続く作用図であって、(a)は被覆層がメインガイドリブで折り返され、サブガイドリブで案内される状態を示す斜視図、(b)はその状態を示す断面図。
図11図10に続く作用図であって、(a)は被覆層が折り返されて樹脂パイプの被覆層上に重ねられる状態を示す斜視図、(b)はその状態を示す断面図。
図12】被覆層が折り返された樹脂パイプを継手に装着する作用を示す図であって、(a)はその樹脂パイプの端部を継手の差込空間に対向させた状態を示す断面図、(b)は樹脂パイプを継手内に差し込んだ状態を示す断面図、(c)は継手内への樹脂パイプの差し込みが完了した状態を示す断面図。
図13】(a)は本発明の別例の折り返し用治具を示す正面図、(b)はその折り返し用治具を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1図12に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、この実施形態の折り返し用治具10は、円筒状の樹脂パイプ11の外周面を覆う被覆層12を樹脂パイプ11の端部において折り返すための治具である。図4に示すように、前記被覆層12の内周面には断面三角形状をなし、樹脂パイプ11の長手方向に延びる突条12aが周方向に一定間隔をおいて多数形成されている。樹脂パイプ11は架橋ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂により形成され、被覆層12はオレフィン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーにより形成されている。
【0023】
図2(a),(b)に示すように、この折り返し用治具10は、樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入される円筒状の内筒部13と、該内筒部13が樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入された状態で樹脂パイプ11端部の被覆層12を取り囲む円筒状の外筒部14とにより一体形成されている。内筒部13の外周面は、挿入側端部ほど縮径するテーパ面13aとなっており、内筒部13が樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入されやすく、また被覆層12を徐々に拡径するようになっている。外筒部14の外周面には、周方向に120°の間隔をおいて3つの面取部14aが設けられている。折り返し用治具10は、アクリル系樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂等の合成樹脂又は銅合金、アルミニウム等の金属により形成される。
【0024】
前記外筒部14の内周部と内筒部13の外周部との間には、複数本(本実施形態では6本)のメインガイドリブ15が周方向に一定間隔をおいて架設されている。このメインガイドリブ15は、樹脂パイプ11端部の被覆層12を案内して折り返す機能を果たすようになっている。
【0025】
このメインガイドリブ15は、周方向に等間隔をおいて5〜7本(本実施形態では6本)設けることが望ましい。メインガイドリブ15が5本未満の場合には、被覆層12の全周を折り返すように案内する力が不足して好ましくない。その一方、メインガイドリブ15が7本を超える場合には、メインガイドリブ15と被覆層12との周方向への係合力が強くなる傾向があり、被覆層12の折り返しを継続して行うことが困難になって好ましくない。
【0026】
各メインガイドリブ15間の周方向中央位置には、メインガイドリブ15より低く、幅狭に形成されたサブガイドリブ16が外筒部14と内筒部13との間に架設されている。このサブガイドリブ16は、メインガイドリブ15の機能を補助し、メインガイドリブ15間において樹脂パイプ11端部の被覆層12を折り返す機能を果たすようになっている。
【0027】
また、図2(a)に示すように、メインガイドリブ15及びサブガイドリブ16は、それぞれ内筒部13又は外筒部14の径方向に対して内筒部13側が外筒部14側よりも折り返し用治具10の回転方向〔図2(a)の反時計方向〕の進行方向に位置するように傾斜配置されている。このメインガイドリブ15の傾斜角度α及びサブガイドリブ16の傾斜角度βは、径方向に対して20〜40°であることが望ましい。これらの傾斜角度α、βが20°を下回る場合には、被覆層12に対するメインガイドリブ15又はサブガイドリブ16の摺接力が強くなる傾向があり、被覆層12に皺が形成されて被覆層12の折り返しをスムーズに行うことが難しくなって好ましくない。その一方、傾斜角度α、βが40°を上回る場合には、被覆層12に対するメインガイドリブ15又はサブガイドリブ16の摺接力が低下して被覆層12を連続して折り返すことが困難になって好ましくない。
【0028】
前記メインガイドリブ15の傾斜角度αは25〜35°であることがさらに好ましく、サブガイドリブ16の傾斜角度βは30〜40°であることがさらに好ましい。すなわち、サブガイドリブ16の傾斜角度βをメインガイドリブ15の傾斜角度αよりも大きく設定することが、サブガイドリブ16及びメインガイドリブ15の機能をそれぞれ適切に発揮する上で望ましい。なお、本実施形態では、メインガイドリブ15の傾斜角度αは30°、サブガイドリブ16の傾斜角度βは35°に設定されている。
【0029】
図2(a),(b)及び図3(a)に示すように、前記メインガイドリブ15の内周部には、被覆層12の折り返しを案内する折り返し用弧状部17が形成されている。この折り返し用弧状部17は、メインガイドリブ15の内周部の内端側を内筒部13の挿入側端部から断面円弧状に切欠き形成されている。この折り返し用弧状部17の円弧の大きさは、樹脂パイプ11の被覆層12の厚み、材質等を考慮して設定される。この場合、折り返し用弧状部17の内周側は内筒部13のテーパ面13aに沿うように、すなわち該テーパ面13aが折り返し用弧状部17の略接線方向に延びるように形成されている。なお、折り返し用弧状部17の開口端部には断面円弧状の面取面17aが形成され、被覆層12を折り返し用弧状部17へ円滑に導くようになっている。そして、図3(a)の二点鎖線に示すように、内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入して回転しながら押し込むことにより、樹脂パイプ11から剥された被覆層12を折り返し用弧状部17に沿って移動させ、折り返すように構成されている。
【0030】
また、図3(b)に示すように、前記サブガイドリブ16は、その内端部が切欠かれてサブ切欠部18が形成されるとともに、そのサブ切欠部18の外周側には被覆層12の折り返しを補助する断面円弧状の折り返し用サブ弧状部19が設けられている。そして、図3(b)の二点鎖線に示すように、樹脂パイプ11から剥されたメインガイドリブ15間の被覆層12をサブガイドリブ16のサブ切欠部18から折り返し用サブ弧状部19に沿って移動させ、折り返すように構成されている。
【0031】
図5に示すように、折り返し用治具10の操作を容易にするためのハンドル20は、ABS樹脂等の合成樹脂により略有底六角筒状に形成され、その中心部にはハンドル20の軸線方向に延びる円筒状の第1筒部21が設けられている。該第1筒部21の外周部には所定間隔をおいて円筒状の第2筒部22が第1筒部21よりも内端側へ長く延びるように同心円状に形成されている。この第2筒部22の内周面には、周方向に120度間隔をおいて3つのカット面22aが形成されている。
【0032】
そして、図7に示すように、第2筒部22の内側に折り返し用治具10が嵌め込まれ、その背面が第1筒部21の内端面に当たって位置決めされるようになっている。図8(a)に示すように、折り返し用治具10が第2筒部22内に嵌め込まれるときには、折り返し用治具10の3つの面取部14aが第2筒部22の3つのカット面22aに係合し、折り返し用治具10の回転が規制されている。
【0033】
図6に示すように、ハンドル20の第1筒部21は折り返し用治具10の内筒部13よりも大きく形成されている。そして、図6の二点鎖線に示すように、樹脂パイプ11とその被覆層12との間に折り返し用治具10の内筒部13を挿入し、被覆層12を折り返す状態をハンドル20の外端側(背面側)から視認できるようになっている。
【0034】
図5に示すように、前記外筒部14の外周部には周方向に120°間隔をおいてビス挿通用の貫通孔23が透設されている。図7に示すように、前記貫通孔23には、ビス24が外筒部14の内端側からワッシャ25を介して挿通され、ナット26に螺合されて締付固定される。この場合、ワッシャ25の内周側がハンドル20の第2筒部22内に装着された折り返し用治具10の外筒部14の内端面に係合して、折り返し用治具10の軸線方向への移動を規制するように構成されている。
【0035】
図5に示すように、ハンドル20の周壁27外周面には複数の指掛け用凹部28が設けられ、その指掛け用凹部28に指を掛けることにより折り返し用治具10の回転操作を容易にしている。なお、第1筒部21と第2筒部22との間及び第2筒部22と周壁27との間には、放射状に延びる複数の補強リブ29が各々架設されている。
【0036】
ここで、被覆層12が折り返されて露出された樹脂パイプ11の端部が差し込まれる継手30について簡単に説明する。
図12(a)に示すように、この継手30は樹脂パイプ11接続用の円筒状をなす継手本体31が三方に設けられて構成されている。該継手本体31は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の合成樹脂により形成されている。各継手本体31は同一構成であることから、一つの継手本体31について説明する。
【0037】
この継手本体31には、樹脂パイプ11の差込空間32を形成するための内側筒33及び外側筒34が内周及び外周に間隔をおいて突出形成されている。外側筒34内にはスペーサ35が配置されるとともに、内側筒33の外周面にはシールリング36が外嵌されている。前記内側筒33の内側空間は、水などの流体が流通する流路37となっている。前記外側筒34の外周面には、蓋体38が嵌合されている。
【0038】
前記外側筒34と蓋体38との間には、差込空間32に差し込まれる樹脂パイプ11を抜け止めする抜け止め機構39が設けられている。この抜け止め機構39を構成する抜け止めリング40には、複数の抜け止め片が内端側へ傾斜するように突出形成されている。前記差込空間32には、樹脂パイプ11の先端面に押圧されて樹脂パイプ11の差し込みを案内する差込ガイド41が配置されている。また、蓋体38の外周面には、締付用カバー43が装着されている。
【0039】
次に、以上のように構成された折り返し用治具10についてその作用を説明する。
さて、図7及び図8(a),(b)に示すように、樹脂パイプ11端部の被覆層12を折り返すときには、ハンドル20の第2筒部22内に折り返し用治具10を嵌め込み、その外端面を第1筒部21の内端面に押し当てる。このとき、折り返し用治具10の面取部14aが第2筒部22のカット面22aに係合することにより、折り返し用治具10に対するハンドル20の相対回転が規制される。
【0040】
次いで、図7に示すように、ハンドル20の貫通孔23に内端側からワッシャ25を介してビス24を挿通し、外端側のナット26に螺合して締付ける。締付後には、ワッシャ25の内周側が折り返し用治具10の外筒部14の内端面に係合することから、折り返し用治具10はハンドル20の軸線方向への移動が規制される。
【0041】
図8(a),(b)に示すように、折り返し用治具10がハンドル20に装着された状態で、ハンドル20を把持して折り返し用治具10を樹脂パイプ11端面に対向させ、その内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入する。このとき、折り返し用治具10の内筒部13の外周面は、内奥部から挿入側端部に向かって縮径するテーパ面13aとなっていることから、内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に容易に挿入できるとともに、被覆層12を樹脂パイプ11から離間させて次第に拡げることができる。
【0042】
図9(a),(b)に示すように、ハンドル20を把持した状態で、折り返し用治具10を樹脂パイプ11の端面に押し付けるようにして回転させると、被覆層12はメインガイドリブ15の折り返し用弧状部17に沿って案内されると同時に、樹脂パイプ11は内筒部13の内側に挿入される。このとき、メインガイドリブ15の折り返し用弧状部17は内筒部13の挿入側端部から断面円弧状に切欠き形成されていることから、内筒部13が樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入されると被覆層12は直ちに折り返し用弧状部17に沿って進行して折り返される。同時に、サブガイドリブ16上に位置する被覆層12はサブ切欠部18に案内されて進む。
【0043】
図10(a),(b)に示すように、折り返し用治具10を樹脂パイプ11の端面にさらに押し付けるようにしてハンドル20を回転させると、被覆層12はメインガイドリブ15の折り返し用弧状部17に沿って半円状に折り返されると同時に、樹脂パイプ11は内筒部13の内側に深く挿入される。このとき、折り返し用弧状部17の円弧の大きさが樹脂パイプ11及び被覆層12に対して適切に設定されるとともに、メインガイドリブ15は内周部が外周部よりも回転方向に位置するように傾斜配置されていることから、被覆層12の折り返し操作を小さい力で円滑に行うことができる。同時に、サブガイドリブ16上に位置する被覆層12は、サブ切欠部18から折り返し用サブ弧状部19に向けて進む。
【0044】
図11(a),(b)に示すように、ハンドル20の回転操作を継続すると、メインガイドリブ15の折り返し用弧状部17により樹脂パイプ11の被覆層12が完全に折り返されて折り返し被覆層12Aが形成され、その折り返し被覆層12Aが樹脂パイプ11外周の折り返されていない被覆層12上に重なるように移動する。同時に、サブガイドリブ16の折り返し用サブ弧状部19に沿って被覆層12が移動し、被覆層12の皺発生を抑えながらメインガイドリブ15による被覆層12の折り返しを補い、被覆層12の全周が円滑に折り返される。加えて、折り返し用治具10のメインガイドリブ15及びサブガイドリブ16は、周方向に均等間隔をおいて各々6箇所に設けられていることから、被覆層12は全体が均等に折り返される。このように、折り返し用治具10のメインガイドリブ15とサブガイドリブ16とが協働して作用することにより、樹脂パイプ11の被覆層12を、樹脂パイプ11の端部から所定長さだけ速やかに折り返すことができる。
【0045】
このようにして、樹脂パイプ11の端部で被覆層12が所定長さだけ折り返されることにより、樹脂パイプ11の端部が露出される。折り返し被覆層12Aの端縁は、樹脂パイプ11の軸線に直交する方向に形成される。また、この樹脂パイプ11端部の露出量は、継手30に差し込まれる差し込み長さにより決定される。
【0046】
その後、被覆層12が一定長さだけ折り返された樹脂パイプ11の端部を継手30に接続する。すなわち、図12(a)に示すように、樹脂パイプ11端部の露出した部分を継手30の差込空間32に対向させる。続いて、図12(b)に示すように、樹脂パイプ11の先端部を継手30の差込空間32に差し込むと、樹脂パイプ11は蓋体38の内側空間を通り、その先端部が差込ガイド41に当たる。図12(c)に示すように、樹脂パイプ11を継手30の差込空間32にさらに差し込むと、樹脂パイプ11が差込ガイド41に案内されて差込空間32の内奥部に達する。このとき、樹脂パイプ11の露出量が予め継手30への差し込み長さに基づいて設定されていることから、折り返し被覆層12Aが継手30の蓋体38外端面に密着する。このように、樹脂パイプ11の端部が継手30の差込空間32に装着された状態では、樹脂パイプ11は抜け止め機構39により抜け止め保持される。
【0047】
以上の実施形態により得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の折り返し用治具10では、内筒部13と外筒部14とが一体形成され、外筒部14と内筒部13との間には複数のメインガイドリブ15が架設され、各メインガイドリブ15間にはサブガイドリブ16が設けられている。さらに、メインガイドリブ15の内周部には折り返し用弧状部17が設けられている。
【0048】
そして、樹脂パイプ11端部の被覆層12を折り返す場合には、折り返し用治具10の内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入し、回転しながら押し込むことにより、被覆層12はメインガイドリブ15の折り返し用弧状部17に沿って移動しながら反転される。同時に、メインガイドリブ15間に位置する被覆層12は、サブガイドリブ16に沿って案内されながら折り返し方向に移動する。このため、被覆層12をメインガイドリブ15とサブガイドリブ16との協働作用により容易に折り返すことができる。従って、被覆層12が折り返されて樹脂パイプ11が露出された部分を継手30内に差し込んで簡単に接続することができる。
【0049】
よって、本実施形態の折り返し用治具10によれば、簡易な構成の治具により樹脂パイプ11端部における被覆層12を容易かつ速やかに折り返すことができ、継手30への樹脂パイプ11の接続を円滑に行うことができるという効果を奏する。
(2)前記メインガイドリブ15の折り返し用弧状部17は、メインガイドリブ15の内周部の内端側を内筒部13の挿入側端部から断面円弧状に切欠き形成されている。このため、内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入すると、樹脂パイプ11から離間された被覆層12を直ちに折り返し用弧状部17に沿って案内し、折り返すように導くことができる。
(3)前記メインガイドリブ15及びサブガイドリブ16は、それぞれ径方向に対して内筒部13側が外筒部14側よりも回転方向の進行方向に位置するように傾斜配置され、その傾斜角度α、βは径方向に対して20〜40°に設定される。従って、折り返し用治具10の内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に挿入して回転させるとき、メインガイドリブ15及びサブガイドリブ16が被覆層12に強く接触して皺を生ずることなく、被覆層12を良好に案内できて、被覆層12の折り返しを効果的に進めることができる。
(4)前記メインガイドリブ15は、周方向に等間隔で5〜7本設けられ、サブガイドリブ16はメインガイドリブ15間の中央位置に設けられている。そのため、メインガイドリブ15と被覆層12との係合を周方向に最も適切な間隔で行うことができ、被覆層12の折り返しを安定した状態で継続することができるとともに、サブガイドリブ16によりメインガイドリブ15間の被覆層12を適切に支持し、被覆層12の折り返しを良好に補助することができる。
(5)前記サブガイドリブ16は、メインガイドリブ15より低く、かつ幅狭に形成されている。このため、メインガイドリブ15の機能発現に支障を来たすことなく、メインガイドリブ15間に位置する被覆層12を支え、被覆層12全体の折り返しを円滑に進めることができる。
(6)前記サブガイドリブ16は、その内端部が切欠かれてサブ切欠部18が形成され、そのサブ切欠部18の外周側には折り返し用サブ弧状部19が設けられている。従って、サブガイドリブ16上に位置する被覆層12を、サブ切欠部18さらには折り返し用サブ弧状部19に沿って導き、簡単に折り返すことができる。
(7)前記内筒部13の外周面は内奥部から挿入側端部に向かって縮径するテーパ面13aとなっている。そのため、内筒部13を樹脂パイプ11と被覆層12との間に容易に挿入することができるとともに、被覆層12を樹脂パイプ11から離間させてメインガイドリブ15やサブガイドリブ16に導くことができる。
(8)前記折り返し用治具10は、ハンドル20の第2筒部22内に回転不能に装着され、メインガイドリブ15及びサブガイドリブ16の内周側をハンドル20の外端側から視認できるように構成されている。このため、折り返し用治具10による被覆層12の折り返し操作を、ハンドル20を把持して軽い操作力で行うことができるとともに、その折り返し操作をハンドル20の外端側から目視しながら容易かつ迅速に行うことができる。
【0050】
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
図13(a),(b)に示すように、折り返し用治具10のメインガイドリブ15を周方向に7本設けるとともに、サブガイドリブ16をメインガイドリブ15間の中央位置に設けるように構成してもよい。この場合、メインガイドリブ15の傾斜角度αは例えば31°、サブガイドリブ16の傾斜角度βは例えば34°に設定される。この折り返し用治具10は、前記実施形態の折り返し用治具10より大きく形成され、実施形態の樹脂パイプ11よりも直径の大きい樹脂パイプ11の被覆層12を折り返すために好適に用いることができる。
【0051】
・ 前記メインガイドリブ15の傾斜角度αとサブガイドリブ16の傾斜角度βとが同一になるように構成してもよい。
・ 前記サブガイドリブ16の折り返し用サブ弧状部19を省略してもよい。
【0052】
・ 前記サブガイドリブ16をメインガイドリブ15間において複数設けるように構成してもよい。
・ 前記メインガイドリブ15及びサブガイドリブ16の高さ及び幅を、樹脂パイプ11の被覆層12の厚み、材質、樹脂パイプ11の直径等に合せて適宜変更してもよい。
【0053】
・ 前記メインガイドリブ15及びサブガイドリブ16の傾斜方向を実施形態とは逆方向に設定し、折り返し用治具10を実施形態とは逆方向に回転させて被覆層12の折り返しを行うように構成してもよい。
【0054】
・ パイプとして、樹脂パイプ11のほかに銅パイプ等の軟らかい金属製のパイプを使用してもよい。
・ 前記継手30を、継手本体31が二方、四方等となるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…折り返し用治具、11…樹脂パイプ、12…被覆層、13…内筒部、13a…テーパ面、14…外筒部、15…メインガイドリブ、16…サブガイドリブ、17…折り返し用弧状部、α…傾斜角度、β…傾斜角度、18…サブ切欠部、19…折り返し用サブ弧状部、20…ハンドル、22…第2筒部。
図1
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図10
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