(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924216
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】収容音声チャネル高密度化構内電話交換機および高密度化方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 3/58 20060101AFI20160516BHJP
【FI】
H04Q3/58 101
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-214093(P2012-214093)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-68314(P2014-68314A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】荒田 祐輔
【審査官】
松平 英
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−014954(JP,A)
【文献】
特開平05−064242(JP,A)
【文献】
特開平07−245792(JP,A)
【文献】
特開平08−079215(JP,A)
【文献】
特開平09−219689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04Q 3/52
3/58−3/62
11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニットと回線ユニットとを含み、該回線ユニットには複数の収容スロットが配設された構内電話交換機において、該交換機は、
所定の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した複数の音声チャネルを有する1枚もしくは複数枚の基本回線パッケージが前記収容スロットに装着され、
前記周波数の所定倍の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した前記音声チャネルの所定倍の音声チャネル数を有する1枚もしくは複数枚の高密度回線パッケージが前記収容スロットに装着され、
前記音声チャネルの割付けを制御する制御パッケージが前記回線ユニットに搭載され、
前記収容スロットと前記制御パッケージとが前記基本回線パッケージの周波数クロックに対応する第1の音声バスで接続され、
前記収容スロットと前記制御パッケージとが前記高密度回線パッケージの周波数クロックに対応する第2の音声バスで接続され、
前記基本回線パッケージが前記収容スロットに装着されると、これに対応する第1のデータフォーマットに従い一方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが前記制御パッケージから前記第1の音声バスを介して前記基本回線パッケージに送られ、前記制御ユニットから供給される局データにより該基本回線パッケージの音声チャネルが前記該一方の方向から順番に割り付けられ、
前記高密度回線パッケージが前記収容スロットに装着されると、これに対応する第2のデータフォーマットに従い前記一方の方向とは反対の他方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが前記制御パッケージから前記第2の音声バスを介して前記高密度回線パッケージに送られ、該高密度回線パッケージの音声チャネルが前記局データにより該他方の方向から順番に割り付けられ、
これによって、前記回線ユニットに最大で所定倍の音声チャネルを確保することを特徴とする構内電話交換機。
【請求項2】
請求項1に記載の交換機において、
前記制御ユニットは、前記局データを管理する上位制御パッケージを含み、
該上位制御パッケージには、設定条件を入力するための保守コントローラが接続され、
前記基本回線パッケージまたは前記高密度回線パッケージを新たに増設または減設するときに、保守者が該保守コントローラから回線パッケージの種別、チャネル数を前記設定条件として入力することを特徴とする構内電話交換機。
【請求項3】
請求項1に記載の交換機において、前記一方の方向の側にタイムスロット割付けがされている前記基本回線パッケージ、または/および前記他方の方向の側にタイムスロット割付けがされている前記高密度回線パッケージが減設されたとき、該交換機の再起動によって、残存する基本回線パッケージに割り付けられたタイムスロットは前記一方の方向の空きスロットに、また残存する高密度回線パッケージに割り付けられたタイムスロットは前記他方の方向の空きスロットに、前記データフォーマットによって順次詰められることを特徴とする構内電話交換機。
【請求項4】
請求項1に記載の交換機において、前記回線ユニットに搭載される前記基本回線パッケージと前記高密度回線パッケージは、合計で所定の搭載枚数を超えないことを特徴とする構内電話交換機。
【請求項5】
請求項1に記載の交換機において、前記高密度回線パッケージのチャネル数が前記基本回線パッケージのチャネル数の2倍であることを特徴とする構内電話交換機。
【請求項6】
請求項1に記載の交換機において、前記基本回線パッケージに対応する所定のクロック周波数は8MHzであり、前記所定倍のクロック周波数は48MHzであることを特徴とする構内電話交換機。
【請求項7】
請求項1に記載の交換機において、前記第1の音声バスは、3本バス幅の8MHzクロック音声バスであり、前記第2の音声バスは、1本のバス幅の48MHzクロック音声バスであることを特徴とする構内電話交換機。
【請求項8】
請求項1に記載の交換機において、前記基本回線パッケージは16チャネルを有し、前記高密度回線パッケージは32チャネルを有していることを特徴とする構内電話交換機。
【請求項9】
請求項1に記載の交換機において、前記回線ユニットは、最大で768チャネルの音声チャネルを有していることを特徴とする構内電話交換機。
【請求項10】
制御ユニットと回線ユニットとを含み、該回線ユニットには複数の収容スロットが配設された構内電話交換機の音声チャネル数の高密度化方法において、該方法は、
所定の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した複数の音声チャネルを有する1枚もしくは複数枚の基本回線パッケージを前記収容スロットに装着し、
前記周波数の所定倍の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した前記音声チャネルの所定倍の音声チャネル数を有する1枚もしくは複数枚の高密度回線パッケージを前記収容スロットに装着し、
前記音声チャネルの割付けを制御する制御パッケージを前記回線ユニットに搭載し、
前記収容スロットと前記制御パッケージとを前記基本回線パッケージの周波数クロックに対応する第1の音声バスで接続し、
前記収容スロットと前記制御パッケージとを前記高密度回線パッケージの周波数クロックに対応する第2の音声バスで接続し、
前記基本回線パッケージが前記収容スロットに装着されると、これに対応する第1のデータフォーマットに従い一方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが前記制御パッケージから前記第1の音声バスを介して前記基本回線パッケージに送られ、前記制御ユニットから供給される局データにより該基本回線パッケージの音声チャネルが該一方の方向から順番に割り付けられ、
前記高密度回線パッケージが前記収容スロットに装着されると、これに対応する第2のデータフォーマットに従い前記一方の方向とは反対の他方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが前記制御パッケージから前記第2の音声バスを介して前記高密度回線パッケージに送られ、該高密度回線パッケージの音声チャネルが前記局データにより該他方の方向から順番に割り付けられ、
これによって、前記回線ユニットに最大で所定倍の音声チャネルを確保することを特徴とする構内電話交換機の音声チャネル数の高密度化方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記基本回線パッケージまたは前記高密度回線パッケージを新たに増設または減設するときに、保守者が保守コントローラから回線パッケージの種別、チャネル数を設定条件として入力することを特徴とする構内電話交換機の音声チャネル数の高密度化方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記一方の方向の側にタイムスロット割付けがされている前記基本回線パッケージ、または/および前記他方の方向の側にタイムスロット割付けがされている前記高密度回線パッケージが減設されたとき、該交換機の再起動によって、残存する基本回線パッケージに割り付けられたタイムスロットは前記一方の方向の空きスロットに、また残存する高密度回線パッケージに割り付けられたタイムスロットは前記他方の方向の空きスロットに、前記データフォーマットによって順次詰められることを特徴とする構内電話交換機の音声チャネル数の高密度化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内電話交換機、とくに収容音声チャネル数を高密度化した構内電話交換機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある従来例によれば、構内電話交換機は、制御ユニットおよび数個の回線ユニットが筐体に収容されて1つのキャビネットを構成し、制御ユニットはシステム全体で1台設けられる。回線を増やす場合は、回線ユニットのみが搭載されたキャビネットを単位として増設を行なう。個々の回線ユニットは、1枚の制御パッケージと、この制御パッケージに音声バスによって接続された収容スロットに脱着可能に装着された複数枚の回線パッケージとで構成されている。
【0003】
この従来例の場合、1つの回線ユニットには回線パッケージが最大で20枚搭載され、合計で384の音声チャネルを有している。個々の回線パッケージは、8MHzクロック対応の3本の音声バスによって制御パッケージと接続される。
【0004】
このような構成において、制御パッケージからは、タイムスロットテーブルに基づき8MHzのクロックに同期させたタイムスロット番号割付信号がハードウェアインタフェースおよび音声バスを介して回線パッケージに送られ、8MHzのクロックに同期したタイムスロットが音声チャネルに割り付けられる。したがって各回線パッケージは、それぞれに割り付けられたタイムスロットの音声チャネルのみを受信することになる。
【0005】
特許文献1には、低速回線や高速回線などの複数種類の回線を収容するために異なる種類の回線アダプタを制御する通信制御装置において、高速回線には若番から順に、また低速回線には老番から順にタイムスロットを設定する回線走査方式が開示されている。これによれば、高速回線と低速回線とが混在していても、高速回線のみ優先走査することができ、無駄な回線走査を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−57025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、構内端末を一人1台所有するなど回線の増設要求が増加している。回線を増設するためには、単純に回線パッケージを増設してチャネル数を増やせばよいが、それに比例して設置場所も必要となる。そこで、音声チャネル数を倍密化すれば、たとえば、従来の384チャネルを768チャネルに増すことができよう。そのようにするには、8MHzのクロックに同期しているタイムスロット毎の音声チャネル数を2倍にするか、または音声バスクロックの周波数を2倍の16MHzにしてタイムスロット数を2倍にする必要がある。いずれの方法でも、768chの音声チャネルは確保できるが、そのためには回線パッケージをすべてこの新たな条件に対応できるように作り変えなければならない。また、既存の設備も維持しながらそれらと両立させようとすると、パッケージの種類も多くなる。したがって、多大な費用と開発工数が必要となり、簡単に実現できる方策ではない。また、既存の交換機をそのような新たな条件に対応させるには、設備更改工事も大規模となり、顧客の使用に支障をきたしてしまう可能性もあるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、既設の構内電話交換機の回線パッケージと高密度化した回線パッケージとを収容効率を低下させることなく並列に利用でき、増設要求のチャネル数に合わせて回線パッケージ単位でチャネルを増設することができる構内電話交換機および高密度化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、制御ユニットと回線ユニットとを含み、回線ユニットには複数の収容スロットが配設された構内電話交換機は、所定の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した複数の音声チャネルを有する1枚もしくは複数枚の基本回線パッケージが回線ユニットに設置した収容スロットに装着され、周波数の所定倍の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した音声チャネルの所定倍の音声チャネル数を有する1枚もしくは複数枚の高密度回線パッケージが収容スロットに装着され、音声チャネルの割付けを制御する制御パッケージが回線ユニットに搭載され、収容スロットと制御パッケージとが基本回線パッケージの周波数クロックに対応する第1の音声バスで接続され、収容スロットと制御パッケージとが高密度回線パッケージの周波数クロックに対応する第2の音声バスで接続され、基本回線パッケージが収容スロットに装着されると、これに対応する第1のデータフォーマットに従い一方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが制御パッケージから第1の音声バスを介して基本回線パッケージに送られ、制御ユニットから供給される局データにより基本回線パッケージの音声チャネルが一方の方向から順番に割り付けられ、高密度回線パッケージが収容スロットに装着されると、これに対応する第2のデータフォーマットに従い一方の方向とは反対の他方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが制御パッケージから第2の音声バスを介して高密度回線パッケージに送られ、高密度回線パッケージの音声チャネルが局データにより他方の方向から順番に割り付けられ、これによって、回線ユニットに最大で所定倍の音声チャネルを確保することを特徴とする。
【0010】
本発明によればまた、制御ユニットと回線ユニットとを含み、回線ユニットには複数の収容スロットが配設された構内電話交換機の音声チャネル数の高密度化方法は、所定の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した複数の音声チャネルを有する1枚もしくは複数枚の基本回線パッケージを収容スロットに装着し、周波数の所定倍の周波数クロックに同期したタイムスロットに対応した音声チャネルの所定倍の音声チャネル数を有する1枚もしくは複数枚の高密度回線パッケージを収容スロットに装着し、音声チャネルの割付けを制御する制御パッケージを回線ユニットに搭載し、収容スロットと制御パッケージとを基本回線パッケージの周波数クロックに対応する第1の音声バスで接続し、収容スロットと制御パッケージとを高密度回線パッケージの周波数クロックに対応する第2の音声バスで接続し、基本回線パッケージが収容スロットに装着されると、これに対応する第1のデータフォーマットに従い一方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが制御パッケージから第1の音声バスを介して基本回線パッケージに送られ、制御ユニットから供給される局データにより基本回線パッケージの音声チャネルが一方の方向から順番に割り付けられ、高密度回線パッケージが収容スロットに装着されると、これに対応する第2のデータフォーマットに従い一方の方向とは反対の他方の方向から順番に割り付けられたタイムスロットデータが制御パッケージから第2の音声バスを介して高密度回線パッケージに送られ、高密度回線パッケージの音声チャネルが局データにより他方の方向から順番に割り付けられ、これによって、回線ユニットに最大で所定倍の音声チャネルを確保することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、好ましくは、制御ユニットは、局データを管理する上位制御パッケージを含み、これには、設定条件を入力するための保守コントローラが接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構内電話交換機において回線ユニットを構成する既設の回線パッケージの一部もしくは全部を倍密回線パッケージに交換し、または既設の回線パッケージに追加して倍密回線パッケージを搭載し、従来回線パッケージはタイムスロットの、たとえば若番から、また倍密回線パッケージはタイムスロットの、この例では老番からタイムスロットの割付けを行なう。これにより、既設の回線パッケージも利用しつつ、回線ユニット当たりの収容音声チャネルを、この例では最大で2倍のチャネルに倍密化できるという効果が得られる。
【0013】
また、既設の回線パッケージおよび倍密回線パッケージを減設した場合、既設の回線パッケージに割り付けられていた残りのタイムスロットはタイムスロットの、この例では若番方向へ、また倍密回線パッケージに割り付けられていた残りのタイムスロットはタイムスロットの老番方向へそれぞれ順次詰める。これによって、新規に増設するパッケージに割り付けるタイムスロットは、タイムスロットの空きを生ずることなく使用できるので、収容効率が下がらないという効果が得られる。
【0014】
さらに、本発明は既設の回線パッケージを利用しつつ、収容音声チャネルを倍密化することが可能となるので、開発工数を削減でき、また交換工事の簡易化を図れるという効果が得られる。
【0015】
ここで、既設の回線パッケージとは、運用に供され、またはすでに製造された構内交換機に搭載された回線パッケージを称し、基本回線パッケージと称することもある。倍密回線パッケージとは、基本回線パッケージの搭載チャネル数の数倍のチャネルを搭載した回線パッケージを言う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による構内電話交換機の実施例における回線ユニットの動作を説明するための回線ユニットのブロック図である。
【
図2】
図1に示す構内電話交換機の筐体の外観を示す概略斜視図である。
【
図3】
図2に示す回線ユニットの内部装置構成を示すブロック図である。
【
図4】同実施例における回線ユニットおよび制御ユニットの回路構成を示すブロック図である。
【
図5】同実施例におけるタイムスロット番号と音声チャネルの対応を説明するためのデータフォーマットの図である。
【
図6】同実施例における交換機の動作を説明するためのタイムスロット割付図である。
【
図7】同実施例におけるタイムスロット番号と音声チャネルの対応を説明するためのデータフォーマットの図である。
【
図8】同実施例における交換機の動作を説明するためのタイムスロット割付模式図である。
【
図9】同実施例における回線パッケージの動作を説明するための局データ部のタイムスロット割付図である。
【
図10】同実施例の回線ユニットにおける回線ユニットの減設動作を説明するための
図1と同様なブロック図である。
【
図11A】同実施例における交換機の動作を説明するためのタイムスロット割当レジスタの状態を示す模式図である。
【
図11B】
図11Aに示すタイムスロット割当レジスタの状態から更新された状態を示す模式図である。
【
図12】同実施例の交換機における回線パッケージの減設動作を説明するためのタイムスロット割付図である。
【
図13】同実施例の交換機における回線パッケージの減設動作を説明するためのタイムスロット割付図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に添付図面を参照にして、本発明による構内電話交換機の実施例を詳細に説明する。まず、本実施例の構成を
図1〜
図3を参照して説明する。
【0018】
図2を参照すると、実施例の構内電話交換機10は、一般民需向けの典型的な構内電話交換機であり、筐体12に1つの制御ユニット14と複数(本実施例では5台)の回線ユニット16が搭載されて1つのキャビネットを構成している。
【0019】
筐体12は、このような制御ユニット14や回線ユニット16等の構内電話交換機10の構成ユニットを収容する架台である。制御ユニット14はシステム全体で1ユニット設けられる。したがって、基本構成は、1つの筐体12に1つの制御ユニット14と5台の回線ユニット16を収容するものである。基本構成より回線を増設するときは、筐体12に回線ユニット16だけを本実施例では最大6台まで収容したキャビネットが増設される。
【0020】
制御ユニット14は、本実施例では、基本構成の筐体12に搭載され、システム全体の回線ユニット16を制御する制御装置である。これには、後述する上位制御パッケージ20(
図4)が搭載されている。
【0021】
回線ユニット16は、本実施例では、
図3に示すように、1つの回線ユニット16毎に通常各1枚配設される制御パッケージ18と、最大で20枚の回線パッケージ22とで構成されている。
【0022】
制御パッケージ18は、
図1に示すように、ハードウェアインタフェース(HW I/F)24を内蔵し、これを介して各回線パッケージ22に接続されている。より詳細には、ハードウェアインタフェース24から伸びる3本のバス幅の8MHzクロック音声バス26および1本のバス幅の48MHzクロック音声バス28が同じ回線ユニット16内の収容スロット23(
図3)に接続され、各収容スロット23に回線パッケージ22が装着される。
【0023】
回線パッケージ22には、本実施例では、8MHzクロック対応の回線パッケージ22a、および48MHzクロック対応の回線パッケージ22bがある。本願では説明の便宜上、8MHzクロック対応の回線パッケージ22aを基本回線パッケージと、また48MHzクロック対応の回線パッケージ22bを倍密回線パケージと称することがある。両者は、いずれの収容スロット23にも脱着可能に装着され、回線ユニット16全体として混載することができる。もちろん、回線ユニット16内でどちらか一方の回線パッケージ22だけを搭載してもよい。
【0024】
基本回線パッケージ22aは、本実施例では1枚で16音声チャネルを有し、回線ユニット16の収容スロット23に装着されることにより3本の8MHzクロック音声バス26に接続される。
【0025】
倍密回線パッケージ22bは、本実施例では1枚で32音声チャネルを有し、回線ユニット16の収容スロット23に装着されることにより1本の48MHzクロック音声バス28に接続される。
【0026】
制御パッケージ18は、後に詳述する上位制御パッケージ20からの信号に基づき回線パッケージ22のタイムスロット管理と回線パッケージ22への音声信号の割り振りを行なう制御機能部であり、
図4に示すように、上位側オーダ/イベントインタフェース(OE I/F) 34と制御回路36とを含む。上位側オーダ/イベントインタフェース34は、上位制御パッケージ20との間でオーダ/イベント(OE)信号を授受する機能部である。制御回路36は、OE信号を制御する機能部であり、たとえば中央処理装置(CPU)を含む処理システムで構成されている。
【0027】
制御パッケージ18はまた、タイムスロット(TS)を管理するタイムスロット割当レジスタ38と、このようなタイムスロットの管理されたOE信号を一時格納するオーダ/イベントレジスタ40と、オーダ/イベントバス52を介して基本回線パッケージ22aまたは倍密回線パッケージ22bとOE信号を授受する下位側オーダ/イベントインタフェース42とを含む。
【0028】
制御パッケージ18はさらに、上位制御パッケージ20との間で音声信号を授受するハードウェアインタフェース44と、時分割スイッチ回路(TSW) 46とを含む。時分割スイッチ回路46は、上位制御パッケージ20からの音声チャネルを基本パッケージ22aおよび倍密パッケージ22bへ振り分け、また音声チャネルを基本パッケージ22aおよび倍密パッケージ22bからの音声チャネルを相互に結合する回路である。
【0029】
制御パッケージ18はまた、2つのハードウェアインタフェース48および50を有している。ハードウェアインタフェース48は、基本回線パッケージ22aと8MHzの音声信号を授受する8MHz ハードウェアインタフェースである。また、ハードウェアインタフェース50は、倍密回線パッケージ22bと48MHzの音声信号を授受する48MHz ハードウェアインタフェースである。
【0030】
上位制御パッケージ20は、制御ユニット14に搭載され、回線パッケージ22の音声チャネルの割付けのためデータを管理し、さらにシステム外部との信号の授受を行なう制御機能部である。上位制御パッケージ20には、
図4に示すように保守コントローラ62が接続される。保守コントローラ62は、保守者が回線パッケージ22の種別やチャネル数等の設定条件を入力するための操作装置である。
【0031】
上位制御パッケージ20は、図示のように、局データ管理部54と上位制御パッケージオーダ/イベントインタフェース56とを含む。局データ管理部54は、各回線パッケージ22をどの音声チャネルに割り付けるかを管理する機能部である。上位制御パッケージオーダ/イベントインタフェース56は、局データ管理部54と制御パッケージ18とデータの授受を行なう機能部である。
【0032】
上位制御パッケージ20はさらに、システム全体の音声チャネルを繋ぎ換える時分割スイッチ回路(TSW) 58と、この時分割スイッチ回路(TSW) 58および制御パッケージ18の間で音声信号の授受を行なうハードウェアインタフェース60とを含んでいる。
【0033】
次に、本実施例における構内電話交換機10の動作について
図4〜
図13を参照して説明する。ここでは主に、倍密回線パッケージ22bの増設時におけるタイムスロットの割付け動作を説明する。説明を簡素化するために、例として、
図4に示すように2枚の基本回線パッケージ22a-1、22a-2が搭載されている状態の回線ユニット16に2枚の倍密回線パッケージ22b-1、22b-2を増設する場合を説明する。
【0034】
初期状態において、基本回線パッケージ22a-1、22a-2が搭載されている場合、システムには、それらの回線パッケージが基本回線パッケージであることが事前に登録されている。そこで、8MHzクロック音声バス26を経由して、
図5に示すデータフォーマットに従い8MHzクロックに同期したタイムスロットの中から必要なタイムスロットが一方の方向、本実施例では若番から昇順に割り付けられる。ここでは、2枚の基本回線パッケージ22a-1、22a-2が搭載されているので、
図6に示すように若番であるタイムスロット番号0から32チャネル分、すなわちタイムスロット番号10まで割り付けられている。
【0035】
ここで、新規に倍密回線パッケージ22b-1、22b-2を収容スロット23に挿入することによって回線を増設する。そこで保守者は、保守コントローラ62を操作して、回線パッケージ種別、チャネル数等の設定条件を必要情報110として入力し、これらは上位制御パッケージ20の局データ管理部54に登録される。
【0036】
必要情報110が登録されると、上位制御パッケージ20内の局データ管理部54は、必要情報110からその新規回線パッケージの種別が倍密であることを認識し、
図7に示す高クロック用データフォーマットに従い、48MHzクロックに同期したタイムスロットの空きタイムスロットが他方の方向、この例では老番から降順に音声チャネルを割り付ける。ここでは、2枚の倍密回線パッケージ22b-1、22b-2が増設されたので、
図8に示すように老番であるタイムスロット番号767から64チャネル分、すなわちタイムスロット番号704まで割り付けられる。このとき、基本回線パッケージ22a-1、22a-2についても、
図7に示す高クロック用データフォーマットに従い、
図8に示すように若番であるタイムスロット番号0から32チャネル分、すなわちタイムスロット番号タイムスロット番号31まで再割付けが行なわれる。
【0037】
上位制御パッケージ20から出るオーダにより、割り付けられた割付データ112は、上位制御パッケージオーダ/イベントインタフェース56、制御パッケージ18の上位側オーダ/イベントインタフェース34および制御回路36を介してタイムスロット割当レジスタ38に書き込まれる。
【0038】
ここで、制御パッケージ18から出るオーダにより、割付データ112は増設された倍密回線パッケージ22bに下位側オーダ/イベントインタフェース42を介して伝達され、老番から降順に設定された割付データ112に基づき音声チャネルが設定される。その結果、
図9に示すように基本回線パケージ22a-1、22a-2には、タイムスロット番号0〜31に32チャネルが、また倍密回線パッケージ22b-1、22b-2には、タイムスロット番号704〜767に64チャネルが設定されることになる。
【0039】
基本回線パッケージ22aへのタイムスロット割付けは、本実施例では、若番から昇順にのみ行なわれるため、倍密回線パッケージ22bへのタイムスロット割付けが老番から降順に設定される。これにより、基本回線パッケージ22aの使用できるチャネル数を減らしてしまうことを極力避けることができる。
【0040】
次に、回線パッケージを減設する際の動作について
図10〜
図13を参照して説明する。
図10に示すように、例えば、2枚の基本回線パッケージ22a-1、22a-2と2枚の倍密回線パッケージ22b-1、22b-2とが搭載されている状態から、タイムスロットの若番を割り付けられている基本回線パッケージ22a-1を1枚と、老番を割り付けられている倍密回線パッケージ22b-1を1枚とを減設するものとする。
【0041】
まず、保守コントローラ62を操作して上位制御パッケージ20の局データ管理部54に、これから減設する回線パッケージの種別、すなわちこの例では回線パッケージ22a-1および22b-1の種別、ならびにチャネル数等の必要情報110を入力する。必要情報110は制御ユニット14に登録される。次に、これら回線パッケージ22a-1および22b-1を回線ユニット16の収容スロット23から取り外す。
【0042】
そこで、上位制御パッケージ20から出力されるオーダにより、減設された回線パッケージに割り付けられていたタイムスロットの情報が制御パッケージ18のタイムスロット割当レジスタ38に送られる。これにより、
図11Aに示す状態から
図11Bに示す状態にその内容が更新され、減設された回線パッケージに割り付けられていたタイムスロット番号が残存回線パッケージ、この場合は基本回線パッケージ22a-2および倍密回線パッケージ22b-2に割り付けられる。
【0043】
減設処置の後、システムを再起動すると、タイムスロット割付情報が初期化され、
図12に示すように、減設されず搭載されている基本回線パッケージ22a-2に割り付けられていたタイムスロットすなわち音声チャネルが、空番になった若番のタイムスロット方向に順次詰められる。また
図13に示すように、減設されず搭載されている倍密回線パッケージ22b-2に割り付けられていたタイムスロットすなわち音声チャネルが、空番になった老番のタイムスロット方向に順次詰められる。
【0044】
この初期化により、搭載されている基本回路パッケージ22a-2および倍密回線パッケージ22b-2のタイムスロットは、若番および老番から空番なく割付けされることになる。
【0045】
このように、新たに回線パッケージが増設されたときにも、空きスロットを探すなどの新たな個別のタイムスロット割付制御を追加する必要もなく、基本的な割付け動作が行なわれればよい。すなわち、基本回線パッケージの場合は基本回線パッケージ22a-2に割り付けられていたタイムスロットに続き若番から昇順に、また倍密回線パッケージの場合は倍密回線パッケージ22b-2に割り付けられていたタイムスロットに続き老番から降順に割付けが行なわれる。
【0046】
上記実施例は、2枚の基本回線パッケージと2枚の倍密回線パッケージの場合の例であったが、もちろんそれらの枚数が2枚以外の枚数であっても同様の動作が行なわれ、要求されるチャネル数に対応することができる。また、すべての回線パッケージを倍密回線パッケージに切り替えた場合には、すべてが基本回線パッケージである場合に比べて2倍、すなわち筐体12を増設することなく従来の交換機の筐体12をそのまま使用して、2倍の音声チャネルを有する構内電話交換機を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 構内電話交換機
12 筐体
14 制御ユニット
16 回線ユニット
18 制御パッケージ
20 上位制御パッケージ
22 回線パッケージ
26 8MHzクロック音声バス
28 48MHzクロック音声バス
22a 基本回線パッケージ
22b 高密度回線パッケージ
36 制御回路
38 タイムスロット割当レジスタ
40 オーダ/イベントレジスタ
54 局データ管理部