(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが袋状に貼り合わされることにより形成されたヒートシール部と、開閉可能な開口部と、前記開口部よりも下側に配置された液状物を収容するための収容部とを含み、下端に排出口を有する、可撓性の袋部材と、
手の指を挿入可能な挿入路が形成されるように、その中央部を弛ませて、前記袋部材の一方の主面に固定された、袋部材支持部とを含み、
前記開口部には、前記開口部を開閉自在とするジップが備えられ、
前記袋部材が幅方向の長さが他の部分よりも短いくびれ部を含むことにより、前記袋部材のくびれ部よりも上側部分の幅方向両端部は、各々、前記袋部材が前記挿入路に挿入された前記手の指によって支持された時に、前記手の上に配置され得る補助支持部を含み、
前記挿入路に前記手を挿入して前記くびれ部を手で把持し且つ前記くびれ部を把持した前記手の甲を前記袋部材支持部に押し付けて前記袋部材を構成する前記軟質プラスチックシートを相互に離すことにより前記開口部の開口状態を維持でき、前記液状物の注入作業中に、前記袋部材支持部と1対の前記補助支持部の3箇所が、前記液状物の重みにより手に押しつけられる、医療用軟質容器。
前記補助支持部の前記ヒートシール部の外側輪郭線は、上部と、前記上部から前記くびれ部の幅方向の長さが最も短い箇所に向って前記袋部材の中心軸迄の距離が徐々に変化する下部とを含み、
前記袋部材の幅方向と同方向の直線のうちの外側輪郭線よりも前記中心軸から遠い部分に対する前記上部の傾斜角度は、前記袋部材の幅方向と同方向の直線のうちの外側輪郭線よりも前記中心軸から遠い部分に対する前記下部の傾斜角度よりも大きい請求項2に記載の医療用軟質容器。
前記補助支持部の前記ヒートシール部の内側輪郭線の、前記袋部材の幅方向と同方向の直線のうちの内側輪郭線よりも前記袋部材の中心軸から遠い部分に対する傾斜角度が0°を超えている請求項1〜4のいずれかの項に記載の医療用軟質容器。
【背景技術】
【0002】
経口によらずに患者に栄養や薬剤を投与する方法の一例として経腸栄養法又は静脈栄養法が知られている。経腸栄養法では、患者の鼻腔から胃又は十二指腸にまで通されたチューブを介して栄養剤、流動食、又は薬剤などの液状物が投与される。また、静脈栄養法では、患者の静脈に挿入された輸液回路を介してブドウ糖などの栄養成分及び/又は薬剤成分を含む液状物(一般に「輸液」と呼ばれる)が投与される。
【0003】
経腸栄養法又は静脈栄養法を行う際には、患者に投与する液状物を空の医療用軟質容器に予め注入する作業が必要である。
【0004】
図4は、従来の医療用軟質容器800の一例を示した斜視図であり、
図5は、
図4に示した医療用軟質容器800を開封し、その上端の開口部822を片手で把持して、開口部822を開口させた様子を示した図であり、
図6は、
図4に示した医療用軟質容器内800に液状物を注いでいる様子を示した側面図である。
【0005】
この医療用軟質容器800は、収容部821と、収容部821内に収納された液状物を取り出すための貫通孔が形成された排出ポート830とを備えている。収容部821は、柔軟な2枚のシートを重ね合わせて、それらの外周縁部をヒートシール(熱接着)により相互に接合してなる袋状物である。排出ポート830は収容部821を構成する上記シートに比べて相対的に硬い樹脂材料からなる。
【0006】
空の医療用軟質容器800への液状物の注入は以下のようにして行われる。まず、ノッチ828を始点として、切り取り線829に沿って開口部822の上部を切り取って開封し、ジップ823の係合を解除する。次いで、
図5に示されるように、開口部822の両側端縁を一方の手で把持しつつ、開口部822を開く。次いで、
図6に示されるように、他方の手(図示せず)で、薬や栄養剤等の液状物が入った容器898等を持ち、開口部822から収容部821内に液状物を注入する。
【0007】
図7は、従来の医療用軟質容器900の他の一例の概略構成を示した斜視図である。医療用軟質容器900は、開口部922の両側に、医療用軟質容器900を手で持つための1対の把持用穴部911a,911bを有している。把持用穴部911a,911bに一方の手の指を各々挿入して医療用軟質容器900を把持する場合、空の医療用軟質容器900への液状物の注入の際、
図4〜
図6に示した医療用軟質容器800への液状物の注入の際と同様に、上記一方の手のひらは、2枚のシートのうちの片方のシートに面する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の医療用軟質容器の好ましい一例は、袋部材支持部が、袋部材に固定された上側固定部および下側固定部と、上側固定部と下側固定部の間に配置された未固定部とを含む。そして、袋部材支持部の未固定部と上側固定部との境界線の延長線と、補助支持部のヒートシール部の外側輪郭線とが交わるか、又は前記延長線の一部と前記外側輪郭線の一部とが、相互に重なる。このような形態では、液状物の注入作業の開始時から、袋部材支持部と1対の補助支持部の三箇所による医療用軟質容器1の支持が行え、且つ、液状物の注入作業中の医療用軟質容器内の液状物の重量の増大やくびれ部を把持する手による把持力の変動等に起因する開口部の変形をより抑制でき、好ましい。
【0017】
本発明の医療用軟質容器の好ましい一例は、補助支持部のヒートシール部の外側輪郭線は、上部と、上部からくびれ部の幅方向の長さが最も短い箇所に向って袋部材の中心軸迄の距離が徐々に変化する下部とを含む。袋部材の幅方向と同方向の直線のうちの外側輪郭線よりも袋部材の中心軸から遠い部分に対する上部の傾斜角度は、袋部材の幅方向と同方向の直線のうちの外側輪郭線よりも袋部材の中心軸から遠い部分に対する下部の傾斜角度よりも大きい。このような形態では、液状物の注入作業の開始時から、上記三箇所による医療用軟質容器1の支持が行え、液状物の注入作業中の医療用軟質容器内の液状物の重量の増大やくびれ部を把持する手による把持力の変動等に起因する開口部の変形をより抑制でき、且つ、開口部の幅方向の長さが大きくなりすぎることを抑制してコンパクトな医療用軟質容器を形成できるので、好ましい。
【0018】
本発明の医療用軟質容器の好ましい一例は、くびれ部のヒートシール部の外側輪郭線が、袋部材の中心軸と平行な直線を含む。この形態では、手によるくびれ部の把持が行い易く好ましい。
【0019】
本発明の医療用軟質容器の好ましい一例では、補助支持部のヒートシール部の内側輪郭線の、袋部材の幅方向と同方向の直線のうちの内側輪郭線よりも袋部材の中心軸から遠い部分に対する傾斜角度がいずれの箇所においても0°を超えている。このような形態では、袋部材のくびれ部よりも上側部分のヒートシール部の近傍に液状物が注入されても、内側輪郭線の傾斜に沿って、液状物が収容部内にスムーズに流入できる。そのため、例えば、上記傾斜角度が0°または負の値である形態よりも、補助支持部のヒートシール部の近傍に液状物が溜まることを抑制でき、好ましい。
【0020】
本発明の医療用軟質容器の好ましい一例では、袋部材の他方の主面に液状物の量を示す目盛りが表示されており、他方の主面に向って右側の補助支持部と袋部材のくびれ部よりも下側の部分との間に、複数の指を挿入可能とする挿入口が形成されるように、上記補助支持部と、袋部材のくびれ部よりも下側の部分とを連結する滑り防止部が形成されている。この場合、液状物を医療用軟質容器に注入する作業中に、補助支持部が、手から滑り落ちることが抑制されるので好ましい。
【0021】
以下、本発明の医療用軟質容器の一例について図面を用いて説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1Aは、本発明の実施形態1の医療用軟質容器1の一例の正面図であり、
図1Bは、医療用軟質容器1の側面図であり、
図1Cは、医療用軟質容器1の背面図であり、
図1Dおよび
図1Eは、
図1Cの部分拡大図であり、
図1Fは、医療用軟質容器1を背面側から見た斜視図である。
図1Gは、医療用軟質容器1を片手で把持し、その開口部を開口させ、医療用軟質容器内に液状物を注いでいる様子を示した正面図であり、
図1Hは、医療用軟質容器1を片手で把持し、その開口部を開口させた状態を示した背面図である。本発明では、実際の使用状態に則して医療用軟質容器1の「上側」(
図1Aの紙面の上側)および「下側」(
図1Aの紙面の下側)を定義する。また、医療用軟質容器1を正面側から(
図1A参照)又は背面側から(
図1C参照)見たときの左右方向を「幅方向」と呼ぶ。
【0023】
図1A〜
図1Fに示された医療用軟質容器1は、可撓性の袋部材2と、排出用ポート3とを含む。袋部材2は平袋状である。排出用ポート3は、袋部材2の下端の排出口22に固定されている。袋部材2は、開閉式の開口部4と、開口部4と連通し液状物を収容するための収容部21とを含む。開口部4には、例えば、開口部4を幅方向に横切って、開口部4を可逆的に開閉自在とするジップ4a(再開閉自在とする係合部、別名「ジッパー」とも言う。)が設けられている。ジップ4aは、従来から公知の方法にて成形できる。袋部材2は、その開口部4よりも上方に、医療用軟質容器1をスタンド等に吊り下げるための吊り下げ部6を備えており、吊り下げ部6には、吊り下げ用穴6aが形成されている。
【0024】
図1A、
図1C〜
図1Eに示されるように、吊り下げ用穴6aおよび排出用ポート3を通る上下方向軸を医療用軟質容器の中心軸1aという。本実施形態では、中心軸1aは、袋部材2を幅方向に二等分する。よって、この中心軸1aは袋部材2の中心軸でもある。
【0025】
袋部材2は、例えば、2枚の軟質プラスチックシート2a,2bを重ね、それらの両側縁部および下縁部を含む外周縁部を相互に熱接着(ヒートシール)させることにより形成される。
図1Aにおいて、符号23は、2枚の軟質プラスチックシート2a,2bのヒートシール部である。
【0026】
軟質プラスチックシート2aの外側面(軟質プラスチックシート2bと対向しない面)には、袋部材2内に注入される液状物の量を確認するための目盛り2cが表示されている。以下、目盛り2cが表示された軟質プラスチックシート2aの主面、すなわち、収容部21内に液状物が充填される際に、充填操作を行う作業者と向かい合う面を正面と称することとし、この正面を基準に左右の位置関係を説明する。
【0027】
排出用ポート3は、例えば、管状である。排出用ポート3は、袋部材2内外の連通を可能とするように、上記2枚の軟質プラスチックシート2a,2bの間に挟まれて、可撓性袋部材2に固定されている。排出用ポート3の袋部材2への固定(一体化)は、例えば、上記2枚の軟質プラスチックシート2a,2bの間に排出用ポート3に配置して、軟質プラスチックシート2a,2bの外周縁部同士を熱接着させることで行える。
【0028】
図1B、
図1C〜
図1Fに示されるように、軟質プラスチックシート2bの外側面(袋部材2の一方の主面、軟質プラスチックシート2bの軟質プラスチックシート2aと対向しない面)には、袋部材支持部5が固定されている。袋部材支持部5は、中心軸1aに沿って配置されている。袋部材支持部5は、袋部材2の一方の主面にのみ固定されており、他方の主面には固定されていない。袋部材支持部5は、シート状物からなるが、軟質プラスチックシート2bとの間に、正面から見て開口部4の左側から指を挿入するための挿入路7(
図1B、
図1F参照)が形成されるように、軟質プラスチックシート2bに、例えば、熱接着により固定されている。すなわち、袋部材支持部5を構成するシート状物の中央部が弛むように、シート状物の上縁部及び下縁部が、軟質プラスチックシート2bに固定されている。固定された上縁部は上側固定部51a、固定された下縁部は下側固定部51bと称する。尚、作業者が左利きである場合は、作業者の指は、正面から見て開口部4の右側から挿入される。
【0029】
図1Hに示されるように、液状物を医療用軟質容器1に注入する作業中の医療用軟質容器1の重量は、挿入路7(
図1B、
図1F参照)に挿入され、袋部材支持部5の未固定部51cと上側固定部51aとの境界線51d(
図1C等参照)及び/又はその近傍の未固定部51cの内側面に接した指によって主として支持される。未固定部51cは、袋部材支持部5のうちの、袋部材2に固定されていない部分であり、上側固定部51aと下側固定部51bとの間に配置された部分である。また、液状物を医療用軟質容器1に注入するために、通常、ジップ4aの係合を解除してから、挿入路7(
図1B,
図1F参照)に指が挿入されるが、くびれ部211を把持した手の甲を袋部材支持部5に押し付けることにより、軟質プラスチックシート2aと軟質プラスチックシート2bとが相互に離れるように、軟質プラスチックシート2bを引っ張ることができる。そのため、くびれ部211を把持する手によって開口部4に付与されるX
1方向およびX
2方向の力と相まって、開口部4を大きく開口させた状態の保持が容易に行える。
【0030】
図1A、
図1C〜
図1Hに示されるように、袋部材2は、幅方向の長さが他の部分よりも短いくびれ部211を含むため、袋部材2のくびれ部211よりも上側部分の幅方向の長さは、くびれ部211の幅方向の長さよりも大きく、収容部21の少なくともくびれ部211に隣接した部分の幅方向の長さも、くびれ部211の幅方向の長さよりも大きい。袋部材2は、くびれ部211の幅方向の長さが最も短い箇所(「幅最小箇所」とも言う)よりも上側に、幅最小箇所よりも、側方(幅方向)に突出した補助支持部8a,8bを有する。
図1Hに示されるように、補助支持部8a,8bは、袋部材2が挿入路7(
図1B、
図1F参照)に挿入された手の指によって支持された時に、手の上に配置される。
図1A、
図1C、
図1F〜
図1Hにおいて、補助支持部8a,8bには、その範囲を明確にするためにハッチングを施している。液状物の注入作業中、医療用軟質容器1内に注入される液状物の重みにより、補助支持部8a,8bは、袋部材2を把持する手に押し付けられ、袋部材支持部5による医療用軟質容器1の支持を補助するように機能する。また、袋部材2のくびれ部211よりも上側部分については手により把持されないので、その幅方向の長さに選択の自由度は高く、大きな開口部を形成できる。さらに、医療用軟質容器1は、そのくびれ部211で把持される構造であるので、手の小さい作業者でも、医療用軟質容器1を把持しやすい。
【0031】
このように、医療用軟質容器1は、液状物の注入作業中に、1対の補助支持部8a,8bと袋部材支持部5の3箇所により支えられるので、液状物の注入作業中、医療用軟質容器1を落としてしまう可能性は極めて低い。また、袋部材支持部5の手との接触部位が面であるので、液状物の注入量が増えるに従って、医療用軟質容器1内の液状物の重量により指や手が痛くなることが抑制されている。さらに、くびれ部211を手で把持することにより開口部4へ付与されるX
1方向およびX
2方向の力と、袋部材支持部5の内側面へ手の甲を押し付けることにより軟質プラスチックシート2bに加わる力とにより、開口部4を大きく開口できその状態の維持が容易であることと、開口部4の幅方向の長さを長く設定できることとが相まって、液状物の注入作業時に、開口部4について大きく開いた状態を安定かつ容易に維持できる。よって、医療用軟質容器1を落としてしまったり、開口部4の開口状態が保持できなくて液状物をこぼしてしまったりする恐れが低減され、故に、医療用軟質容器1への液状物の注入作業中に作業者が受ける精神的及び肉体的な負担を低減できる。
【0032】
図1Dに示されるように、補助支持部8a及び補助支持部8b(図示せず)のヒートシール部23の外側輪郭線23aは、中心軸1aと平行な上部231aと、上部231aからくびれ部211の幅方向の長さが最も短い箇所に向って中心軸1a迄の距離が徐々に短くなる下部232aとを含む。袋部材2の幅方向と同方向の直線1cに対する上部231aの傾斜角度θ
1は、直線1cに対する下部232aの傾斜角度θ
2よりも大きい。そのため、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aのうちの下部232aのみが、液状物の注入作業中にくびれ部211を把持する手に接し、液状物の重量により当該手に押し付けられる場合がある。尚、θ
1は、上部231aのいずれかの箇所を通る接線と上記直線1cのうちの外側輪郭線23aよりも中心軸1aから遠い部分とがなす角度であり、θ
2は、下部232aのいずれかの箇所を通る接線と直線1cのうちの外側輪郭線23aよりも中心軸1aから遠い部分とがなす角度である。
【0033】
傾斜角度θ
2は、液状物の注入作業中、液状物の注入量の増大に伴い、補助支持部8a及び補助支持部8bが押し付けられている手から滑り落ちることを十分に抑制可能なように設定されていると好ましく、例えば、下部232aの長手方向中央において、0°を超え40°以下が好ましく、10〜30°がより好ましい。一方、傾斜角度θ
1は、液状物の注入が容易であり、且つ、袋部材2のくびれ部211よりも上側部分の幅方向の長さが大きくなりすぎることを抑制してコンパクトな医療用軟質容器1を形成する観点から、40〜90°が好ましく、65〜90°がより好ましい。
【0034】
図1Dに示されるように、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aの上部231aは、医療用軟質容器1の中心軸1aと平行であり、θ
1は90°であるが、
図1Iに示されるように、上部231aは中心軸1aに対して傾斜していてもよい。
【0035】
下部232aの好ましい長さは、補助支持部8a,8bによる高い補助支持機能が得られれば特に制限はなく、傾斜角度θ
2等を考慮して決定すればよい。一方、上部231aの好ましい長さは、大きな開口面積の確保と液状物の注入操作の容易性等を考慮して決定すればよい。
【0036】
図1Dに示されるように、袋部材支持部5の上側固定部51aは、軟質プラスチックシート2bのジップ4aよりも下側部分に固定されている。そして、袋部材支持部5の未固定部51cと上側固定部51aとの境界線51dの延長線1bと、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aとが交わるように、補助支持部8a,8bの形状および袋部材支持部5の上側固定部51aの固定位置が設定されている。このように、延長線1bと、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aとが交わる形態では、液状物の注入作業中、液状物の注入量の増大等に伴う開口部4の開口形状の変形が抑制でき、好ましい。また、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aが、前述の上部231aと下部232aとからなる場合、延長線1bとヒートシール部23の外側輪郭線23aのうちの上記下部232aとが交わるように、補助支持部8a,8bの形状および袋部材支持部5の上側固定部51aの固定位置が設定されていると好ましい。液状物の注入作業中、液状物の注入量の増大等に伴う開口部4の開口形状の変形が抑制でき、且つ、開口部4の幅方向の長さが大きくなりすぎることを抑制してコンパクトな医療用軟質容器1を形成できるからである。尚、
図1Dでは、延長線1bと外側輪郭線23aとが交わっているが、本発明において、延長線1bの一部と外側輪郭線23aの一部(例えば、上記下部232aの全部又は一部)とが相互に重なってもよい。
【0037】
また、
図1Dに示されるように、くびれ部211のヒートシール部23の外側輪郭線23aは、中心軸1aと平行な直線を含んでいると好ましい。この場合、手によるくびれ部211の把持が行い易く好ましい。上記直線の長さは、手による把持の容易性、くびれ部211を手で把持することにより開口部4へ付与できるX
1方向およびX
2方向の力(
図1H参照)の大きさ等を考慮して適宜決定すればよい。
【0038】
図1Eに示されるように、袋部材2の幅方向と同方向の直線1cに対する、補助支持部8a及び補助支持部8b(図示せず。)のヒートシール部23の外側輪郭線23aに対応する内側輪郭線23bの傾斜角度θ
3が、いずれの箇所においても0°を超えていると好ましい。また、補助支持部8a及び補助支持部8b(図示せず。)のヒートシール部23の外側輪郭線23aが、上部231aと下部232aとからなる場合、直線1cに対する、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aの下部232aに対応するヒートシール部23の内側輪郭線23bの下部232bの傾斜角度θ
3が、0°を超え90°よりも小さいと好ましく、0°を超え40°以下がより好ましく、10〜30°がさらに好ましい。この場合、袋部材2のくびれ部211よりも上側部分のヒートシール部23の近傍に液状物が注入されても、傾斜角度θ
3の傾斜に沿って、液状物が収容部21内にスムーズに流入できる。そのため、例えば、上記傾斜角度θ
3が0°または負の値である形態よりも、袋部材2のくびれ部211よりも上側部分のヒートシール部の近傍に液状物が溜まることを抑制でき、好ましい。尚、傾斜角度θ
3は、補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の内側輪郭線23bのいずれかの箇所を通る接線と上記直線1cのうちの内側輪郭線23bよりも中心軸1aから遠い部分とがなす角度である。
【0039】
図1Cに示されるように、袋部材支持部5の下側固定部51bは、挿入路7(
図1B)に、好ましくは複数の指を挿入可能であり、より好ましくは、親指以外のすべての指が挿入可能なように、例えば、袋部材2のくびれ部211よりも下側に固定されていると好ましい。
【0040】
医療用軟質容器1の容量について特に制限はないが、通常、500〜1200mlである。
【0041】
くびれ部211の幅方向の最少長W1は、挿入路7(
図1B、
図1F参照)に挿入された手でくびれ部211を把持しながら、当該手の甲を袋部材支持部5の内側面(軟質プラスチックシート2b側の面)に押し付けることが可能であれば特に制限はないが、液状物の広い流入路を確保する観点から、80〜120mmが好ましく、90〜110mmがより好ましい。
【0042】
袋部材2の開口部4における幅方向の最大長W2と上記W1との比(W2/W1)は、大きな開口面積および補助支持部8a,8bによる高い補助支持機能を確保する観点から、1.1〜1.9が好ましく、1.3〜1.7がより好ましい。また、開口部4における開口の幅(開口部4のうちのヒートシールされていない部分の幅)とくびれ部211のヒートシールされていない部分の幅の比(開口部4における開口の幅/くびれ部211のヒートシールされていない部分の幅)も、大きな開口面積を確保する観点から、1.1〜1.9が好ましく、1.3〜1.7がより好ましい。
【0043】
袋部材支持部5の未固定部51cと上側固定部51aとの境界線51dの長さW3およびその近傍の袋部材支持部5の幅方向の長さは、挿入路7内に挿入される手と袋部材支持部5の内側面との十分な接触面積を確保して、狭い面積に、液状物の注入作業中の医療用軟質容器1の重量が集中してかかることを抑制する観点から、20〜60mmが好ましく、30〜50mmがより好ましい。尚、
図1A〜
図1Iでは、袋部材支持部5の幅方向の長さは、その長手方向に沿って一定であるが、これに限定されない。袋部材支持部5の幅方向の長さは、例えば、上側から下側に向って、除所に短くなっていてもよい。また、同様に、狭い面積に、液状物の注入作業中の医療用軟質容器1の重量が集中してかかることを抑制する観点から、くびれ部211の幅方向の最少長W1と上記W3との比(W1/W3)は、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。
【0044】
また、袋部材2は、左右対称な形状であると、利き手の如何に関わらず操作性がかわらないという理由から好ましい。
【0045】
袋部材支持部5の軟質プラスチックシート2bへの固定方法について特に制限はなく、例えば、接着剤による接着、熱接着(ヒートシール)等が挙げられるが、美観が良好で、簡便な熱接着が好ましい。
【0046】
図1Gは、開口部4を開口させた状態で医療用軟質容器1を片手で保持しながら、液状物を収容部21内に注ぐ操作の様子を示している。医療用軟質容器1の正面は、右利きの作業者に面しており、医療用軟質容器1を保持している左手と、液状物が入った注入用のカップ30を持つ右手(図示せず)は相互に対向し、医療用軟質容器1を持つ指、およびカップ30を持つ指(図示せず)が、いずれも作業者の体の前面とほぼ平行に配置されている。換言すると、目盛り2cが表示された正面が作業者に面した医療用軟質容器1に対して、左手は医療用軟質容器1の保持のために医療用軟質容器1の左側からアプローチしており、右手は液状物の医療用軟質容器1への注入のために医療用軟質容器1の右側からアプローチしている。そのため、液状物の注入の最中に目盛り2cが見やすく、かつ、医療用軟質容器1への液状物の注入が行い易い。尚、液状物を収容部21内に注ぐ前には、後述する経腸栄養供給システム等の栄養供給システムの流量調整器52(
図2参照)により可撓性チューブ51は押潰されて可撓性チューブ51の流路は閉じられている。
【0047】
液状物の注入後は、開口部4を、ジップ4aの係合部により閉じる。このようにして液状物が充填された医療用軟質容器1を、開口部4よりも上方に配置された吊り下げ部6の吊り下げ用穴6aを利用してスタンドなどに吊り下げると、医療用軟質容器1が、中心軸1aが重力方向とほぼ平行になり、排出用ポート3が、最下方となるように吊り下げられる。よって、例えば、後述する送液回路のコネクタ54を患者に挿入されたチューブに接続し、流量調整器52を操作して可撓性チューブ51の流路を開くと、患者等に液状物をスムーズに供給できる(
図2参照)。
【0048】
図2に示されるように、本発明の医療用軟質容器の一例は、例えば、経腸栄養供給システム50等の栄養供給システムの構成部品として使用される。経腸栄養供給システム50は、例えば、排出用ポート3に接続された可撓性チューブ51、流量調整器52、点滴筒53、コネクタ54、コネクタカバー55等を含む。流量調整器52は、可撓性チューブ51を押圧して可撓性チューブ51内を流れる液状物の流量調整を可能とする。点滴筒53は、可撓性チューブ51を流れる液状物の流量を可視化させる。コネクタ54は、例えば、患者の鼻腔に挿入されたチューブに接続される。ただし、本発明の経腸栄養供給システムは、
図2に示された構成に限定されるものではなく、従来公知の経腸栄養供給システムが備える構成部品をさらに含んでいてもよい。また、
図1A〜
図2では、袋部材2の排出口22に固定された排出用ポート3を介して、袋部材2と可撓性チューブ51とが連結されているが、可撓性チューブ51は、袋部材2の排出口22に直接固定されていてもよい。また、排出用ポート3はコネクタでもあり、可撓性チューブ51、流量調整器52、点滴筒53、コネクタ54、およびコネクタカバー55等を含む送液回路は、コネクタカバー55側とは反対側の端部に排出用ポート3と接続可能なコネクタを備え、排出用ポート3を介して医療用軟質容器1に着脱自在であってもよい。
【0049】
収容部21を構成する軟質プラスチックシート2a,2bの材料について特に制限はなく、医療用軟質容器に用いられる、従来公知の透明軟質プラスチックシートが使用できる。具体的には、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリアミド、エチレン−メタクリレート共重合体等からなる単層シート、又は上記単層シートが積層された積層シートが挙げられる。積層シートの具体的層構成としては、例えば、ナイロン/ポリエチレン、ナイロン/ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン,ポリプロピレン/ポリエチレン、ナイロン/ポリプロピレン/ポリエチレン等が挙げられる。軟質プラスチックシートの厚さは、例えば、0.1〜0.6mm程度である。
【0050】
排出用ポート3の材料としては、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0051】
袋部材支持部5の材料としては、例えば、収容部21を構成する上記透明軟質プラスチックシート2a,2bの材料と同じ材料が挙げられる。
【0052】
また、
図1A〜
図1Iを用いて説明した医療用軟質容器1では、開口部4を開閉を可能とする手段が、ジップ4a(チャックシール)等の係合部であるが、開閉手段は従来から公知の他の開閉手段であってもよい。また、医療用軟質容器1では、可撓性袋部材2が、2枚の軟質プラスチックシート2a,2bを用いて形成されているが、可撓性袋部材2は、少なくとも2枚の軟質プラスチックシートが貼りあわされることにより形成されていればよく、例えば、開口部4の強度を高めるべく、可撓性袋部材2の形成のために、軟質プラスチックシート2a,2bとは別に、開口部4を補強する軟質プラスチックシートが更に用いられてもよいし、吊り下げ部6を形成するべく別の軟質プラスチックシートが更に用いられてもよい。
【0053】
また、
図1Jに示されるように、医療用軟質容器1には、袋部材支持部5が固定された軟質プラスチックシート2bに対向する軟質プラスチックシート2aに、可撓性を有する線状部材13が固定されていると好ましい。線状部材13の長手方向は、袋部材2の幅方向と平行であると好ましい。この場合、医療用軟質容器1の開口部4を片手で把持し、その開口部4を開口させる操作を行う際、軟質プラスチックシート2aを軟質プラスチックシート2bから引き離し易くなり、開口部4の開口状態の維持もし易くなる。
【0054】
線状部材13は、開口部4を開口させる操作を行う際に、軟質プラスチックシート2aを軟質プラスチックシート2bから引き離し易くなるという理由から、くびれ部211に固定されていると好ましく、くびれ部211のうちの上側部分に固定されているとより好ましい。
【0055】
線状部材13の材料は、医療用軟質容器1の開口部4を片手で把持し、その開口部4を開口させる操作を行う際に撓むものであれば特に制限はなく、軟質プラスチックシート2a、2bと同じ材料でもよいが、軟質プラスチックシート2a、2bに比べて相対的に硬い樹脂材料からなると好ましい。線状部材13の軟質プラスチックシート2aへの固定方法について特に制限はないが、熱接着により線状部材13自身を軟質プラスチックシート2aの外側面に直接固定してもよいし、その外周縁部が軟質プラスチックシート2aに熱接着された他の軟質プラスチックシート14と軟質プラスチックシート2aとにより挟まれることにより、軟質プラスチックシート2aに固定されていてもよい。
【0056】
(実施形態2)
図3Aは、本発明の実施形態2の医療用軟質容器10の一例の正面図であり、
図3Bは、医療用軟質容器10の側面図であり、
図3Cは、医療用軟質容器10の背面図であり、
図3Dは、医療用軟質容器10を背面側から見た斜視図であり、
図3Eは、医療用軟質容器10を片手で把持し、その開口部を開口させた状態を示した正面図である。
【0057】
本実施形態の医療用軟質容器10は、滑り防止部15をさらに備えていること以外は、実施形態1の医療用軟質容器と同じ構成をしている。
図3A〜
図3Eにおいて、同一名称の部材については,実施形態1の医療用軟質容器の場合と同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0058】
図3A〜
図3Eに示されるように,医療用軟質容器10では、袋部材2の目盛り2cが表示された主面に向って右側の補助支持部8bと袋部材2のくびれ部211よりも下側の部分213とを連結する滑り防止部15を備えている。補助支持部8bと袋部材2のくびれ部211よりも下側の部分213との間に、複数の指を挿入可能とする挿入口214が形成されている。この場合、液状物を医療用軟質容器10に注入する作業中に、補助支持部8bが、挿入口214に挿入された手から滑り落ちることがより確実に抑制されるので好ましい。滑り防止部15は、袋部材2と一体化されており、例えば、袋部材2の成形と同時に形成できる。具体的には、軟質プラスチックシート2a,2bを相互に熱接着(ヒートシール)させた後、熱接着部の一部を打ち抜いて挿入口214を形成することにより滑り防止部15を形成できる。滑り防止部15の形状について特に制限はないが、例えば、帯状、リボン状、紐状である。
【0059】
尚、
図1A〜
図1Iを用いて説明した医療用軟質容器1および
図3A〜
図3Eを用いて説明した医療用軟質容器10のいずれも、袋部材2の軟質プラスチックシート2aの外側面にのみ目盛り2cが表示されているが、軟質プラスチックシート2bの外側面(軟質プラスチックシート2aに面しない面)に目盛り2cが表示されていてもよい。この場合、スタンド等に吊り下げられた医療用軟質容器内の液状物の量を、医療用軟質容器のいずれの主面側からも確認できる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体例に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0061】
図1A〜
図1Hに示される医療用軟質容器1を作製した。ただし、
図1A〜
図1Hに示される医療用軟質容器1に表示された目盛り1cの最大値(最大容量)は700mlであるが、本例では、600mlとした。袋部材2を構成する軟質プラスチックシート2a,2b(積層シート、厚さ0.15mm)の層構成は、内層がPE、外層がPPであり、W1は95mm、W2は140mm、W3は35mm、(W2/W1)は140/95(=1.5)であり、(W1/W3)は95/35(=2.7)、θ
1は90°、下部232aの長手方向中央におけるθ
2は25°、θ
3の最少値は25°である。くびれ部211の幅最小箇所における幅は95mmであり、袋部材2のくびれ部211よりも下側部分の幅方向の長さはW2と等しい。補助支持部8a及び補助支持部8bのヒートシール部23の外側輪郭線23aのうちの上部231aの長さは28mm、下部232aの長さは25mmである。袋部材支持部5の幅は35mm、長手方向の長さは130mmであり、上側固定部51aと下側固定部51bとの距離(未固定部51cと上側固定部51aとの境界線と未固定部51cと下側固定部51bとの境界線間の距離)は90mmであり、上側固定部51aと下側固定部51bの上下方向の長さ、各々、10mm、10mmである。開口部4の上端からジップ4aおよび上側固定部51a迄の距離は、各々、6mm、15mmであり、上側固定部51aの幅(中心軸1aの長手方向と同方向の長さ)は35mmである。くびれ部211のヒートシール部23の外側輪郭線23aのうち、袋部材2の中心軸1aと平行な直線部分の長さは60mmである。
【0062】
図1G及び
図1Hに示されるように、挿入路7(
図1B等参照)に左手の親指以外の指を通して、医療用軟質容器1のくびれ部211を左手で持ち、開口部4から袋部材2の内部に経腸栄養法用の液状物を400ml注いだ。尚、液状物を収容部21内に注ぐ前に、流量調整器52(
図2参照)により栄養供給システムの可撓性チューブ51の流路を閉じた。液状物の注入作業中、医療用軟質容器1内に注入される液状物の重みにより、補助支持部8a,8bは、袋部材2を把持する手に押し付けられ、袋部材支持部5による医療用軟質容器1の支持を補助するように機能した。液状物の注入作業中、開口部4の開口形状について、注入作業を妨げるような変形は起こらず、開口部を大きく開口させた状態の保持が容易に行えた。