(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に配索するワイヤーハーネスの保護や経路規制するために、ワイヤーハーネスを内部に挿通させるプロテクタにおいて、樋形状のプロテクタ本体にワイヤーハーネスを通した後に、プロテクタ本体の上面開口を蓋で閉鎖して、プロテクタ本体と蓋とをロックしている。
【0003】
例えば、特許文献1のプロテクタは、先端に係止突起を有するロックアーム(オスロック部)が蓋に形成されるとともに、本体の側壁には、ロックアームの係止突起が係合するための孔が形成された枠部(メスロック部)が形成されている。そして、本体に蓋が被せられる際に、ロックアームの係止突起を本体の側壁によって孔に嵌入案内して係止突起を枠部の壁面端部に係合させることにより本体と蓋とを固定する。このプロテクタは、蓋の閉じ方向とロックアームの孔への挿入方向とが一致しているため、外力が作用してプロテクタが捩れたときや、他の物がロック部を引っ掛けたときなどに、係止突起が孔から外れてロックが解除され易くなってしまうという問題がある。また、このような意図しないロック解除の発生を抑制するために、通常、係止突起を大型化して孔の幅を大きくするとともに、ロックアームや孔の壁が厚く形成されており、ロック部が大型化してプロテクタ外部の配線スペースの不足を招くといった問題もある。
【0004】
そこで、特許文献2のプロテクタは、本体の側壁の端部と蓋の端部とに、端面全体に亙って端面の延在方向に沿って延びるフランジ部をそれぞれ備えている。これらのフランジ部は本体と蓋とを重ね合わせたときに1本のレール部を形成し、レール部の一部には、本体と蓋とに亙る係合孔が形成される。本体と蓋とを固定するロック部材は、レール面と正対する方向に抜けないようにレール部に嵌合可能な溝部を構成し、また係合孔に係合する係合部を有している。このロック部材の溝部をレール端の横からレールの延在方向にスライドさせてレール部に嵌合させ、さらに嵌合したロック部材を係合孔の位置までスライドさせて係合孔に向けて押し込むことによりロック部材の係合部が係合孔に係合して本体と蓋とが固定される。このプロテクタによれば、本体と蓋との閉じ方向と、ロック部材の係合孔への押し込み方向とが異なる。このため、外力が作用してプロテクタが捩れたり、他の物がロック部材を引っ掛けた場合でも、ロック部材と係合孔との係合状態を容易に解除することができず、特許文献1のロック部に比べて、ロック部材自体の小型化を図りつつ、本体と蓋とをより確実に固定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術においては、ロック部材をレール端部からレールの延在方向にスライドさせてレール部と嵌合させた後、さらに係合孔の位置までスライドさせる必要が有る。このため、レール部は、本体と蓋との外周面から外側に張り出して、係合孔よりも長くなるように、すなわちロック部材よりも長くなるように延設されている。従って、特許文献2の技術には、レール部とロック部材とからなるロック構造(ロック部)が、全体として大型化するといった問題がある。
【0007】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、プロテクタの外周面から突き出る構造体の大きさを抑制しつつ、本体と蓋とのロック状態が容易に解除されないロック構造を備えたプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、第1の態様に係るプロテクタは、樋形状の本体と、前記本体の一対の側壁の上端に両端をそれぞれ重ね合わせて前記本体の上面開口を覆う蓋と、互いに対向する一対の係止片が底壁に立設されて形成されるとともに、当該一対の係止片の先端部分に係止爪をそれぞれ備えて、前記本体と前記蓋とを固定するロック部材とを備え、前記本体は、一対の側壁のうち一方の側壁に形成された第1部材と、前記一方の側壁において前記第1部材の下方に形成され、前記ロック部材の前記一対の係止片のうち一方の係止片が挿通可能な貫通孔とを備え、前記蓋は、前記本体と前記蓋とが重ね合わされた状態で前記本体と前記蓋との合わせ面を含む平面を挟んで前記第1部材と対向する第2部材を備え、前記本体と前記蓋とが重ね合わされて前記ロック部材が前記第1部材と前記第2部材とに対向した状態で前記ロック部材の前記一方の係止片が正面から前記貫通孔に挿入されることにより、前記一方の係止片が前記第1部材の下側から前記第1部材に当接可能な位置に配設され、他方の係止片が前記第2部材の上側から前記第2部材に当接可能な位置に配設されて、前記第1部材と前記第2部材との離間方向の移動を規制するとともに、前記ロック部材を抜け止め可能なように、前記一方の係止片の前記係止爪が前記第1部材に係止し、前記他方の係止片の前記係止爪が前記第2部材に係止する。
【0009】
第2の態様に係るプロテクタは、第1の態様に係るプロテクタであって、前記第1部材と前記第2部材とは、前記本体と前記蓋とが重ね合わされた状態で前記本体と前記蓋との外周面よりも内側に設けられている。
【0010】
第3の態様に係るプロテクタは、第2の態様に係るプロテクタであって、前記本体と前記蓋とが重ね合わされた状態で、前記ロック部材の外周面と、前記本体と前記蓋とのそれぞれの外周面とが面一になる。
【0011】
第4の態様に係るプロテクタは、第1から第3の何れか1つの態様に係るプロテクタであって、前記蓋において前記第2部材の上方に形成され、前記ロック部材の前記他方の係止片の少なくとも一部を収容可能な凹部をさらに備え、前記本体と前記蓋とが重ね合わされた状態で、前記他方の係止片の少なくとも一部が、前記凹部に収容されて前記第2部材の上側から前記第2部材に当接可能な位置に配設される。
【発明の効果】
【0012】
第1から第4の何れの態様に係る発明によっても、本体と蓋とが重ね合わされてロック部材が第1部材と第2部材とに対向した状態でロック部材の一方の係止片が正面から貫通孔に挿入されるので第1部材と第2部材とをロック部材と同程度の長さにまで小型化できる。また、一方の係止片が第1部材の下側から第1部材に当接可能な位置に配設され、他方の係止片が第2部材の上側から第2部材に当接可能な位置に配設されて、第1部材と第2部材との離間方向の移動を規制するとともに、ロック部材を抜け止め可能なように、一方の係止片の前記係止爪が前記第1部材に係止し、他方の係止片の前記係止爪が前記第2部材に係止するので、ロック部材を小型化しつつ本体と蓋とをより確実に固定できる。従って、プロテクタの外周面から突き出る構造体の大きさを小さくしつつ、本体と蓋とのロック状態が容易に解除されないようにすることができる。
【0013】
第2の態様に係る発明によれば、第1部材と第2部材とは、本体と蓋とが重ね合わされた状態で本体と蓋との外周面よりも内側に設けられているので、プロテクタの外周面からロック部材が突き出ることを抑制することが出来る。従って、プロテクタの外周面から突き出る構造体の大きさをさらに小さくすることができる。
【0014】
第3の態様に係る発明によれば、本体と蓋とが重ね合わされた状態で、ロック部材の外周面と、本体と蓋とのそれぞれの外周面とが面一になるので、プロテクタの外周面からロック部材が突き出さないようにすることが出来る。従って、プロテクタの外周面から突き出る構造体の大きさをさらに小さくすることができる。
【0015】
第4の態様に係る発明によれば、蓋の第2部材の上方に、ロック部材の他方の係止片の少なくとも一部を収容可能な凹部をさらに備え、本体と蓋とが重ね合わされた状態で、他方の係止片の少なくとも一部が、凹部に収容されて第2部材の上側から第2部材に当接可能な位置に配設される。従って、プロテクタの外周面から突き出る構造体の大きさを小さくすることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。また、各図面は模式的に示されている。なお、本発明における上下方向とは、本体に蓋を重ね合わせた状態において蓋側を上方、本体側を下方とするものであり、重力方向に対する上下を必ずしも意味しない。
【0018】
<実施形態>
実施形態に係るプロテクタ1は、樋形状の本体20と蓋30とが薄肉ヒンジ部49を介して樹脂で一体成形されている(
図1〜
図5参照)。
【0019】
本体20は、底壁21と、底壁21の幅方向の両端からそれぞれ立設する側壁22、23とを備え、断面凹形状に形成されている。側壁22の上端(先端)には、薄肉ヒンジ部49を介して蓋30が開閉自在に連結されている。本体20にワイヤーハーネスを挿通した後に、蓋30が被せられることにより本体20の上面開口が閉鎖される。
【0020】
蓋30は、上壁31と、該上壁31の幅方向の両端から突出させた側壁32、33とを備える。側壁32は、薄肉ヒンジ部49を介して本体20の側壁22と連結されている。薄肉ヒンジ部49を中心として蓋30が回動して、蓋30の側壁33の端部が本体20の他方の側壁23の上端に当接することにより、蓋30が本体20の上面開口部に被せられる。
【0021】
ロック部材50は、互いに対向する一対の係止片52、53が底壁51に立設された樋形状に形成されている。一対の係止片52、53の根本部分と底壁51とによって、部材24、34と嵌合する溝部56が形成されている。一対の係止片52、53の先端部分には、互いに対向する係止爪54、55がそれぞれ設けられている。ロック部材50は、本体20に蓋30が被せられた状態で本体20と蓋30とを固定する。
【0022】
本体20の一対の側壁22、23のうち一方の側壁23には、側壁23の端面の長手方向に延在する柱状の部材(「第1部材」)24が形成されている。また、蓋30の側壁33には、側壁33の端面の長手方向に延在する柱状の部材(「第2部材」)34が形成されている。より詳細には、部材24、34は、本体20の一対の側壁22、23のうち一方の側壁23と蓋30とのそれぞれの長手方向(合わせ面41の長手方向)の一部にそれぞれ設けられている。なお、部材24、34の形状は、柱状に限られない。部材24、34は、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態において、本体20と蓋30との合わせ面41を含む平面を挟んで互いに対向する。本体20と蓋30とが重ね合わされて、ロック部材50が部材24、34に対向した状態、すなわちロック部材50の溝部56の底面が部材24、34に対向した状態で溝部56が部材24、34に向かう挿入方向(矢印Y1で示される方向)に沿って、ロック部材50が部材24、34側に押し込まれる。そして、ロック部材50の一方の係止片52が後述する貫通孔25の正面から貫通孔25に挿通されるとともに、他方の係止片53が後述する凹部35の正面から凹部35に挿入されて収容される。これにより、ロック部材50の溝部56と部材24、34とが嵌合し、係止爪54、55が部材24、34に係止して、本体20と蓋30とが固定される。
【0023】
本体20の側壁23の上端部分には部材24が設けられている。部材24は、本体20の外周面29よりも内側(プロテクタ1の内側空間61側)に位置し、部材24の外側(本体20の外周面29側)の面72は、外周面29から内側に窪んだ窪み部42の底面となっている。部材24は、面72と、側壁23の内周面44とが同一平面に含まれるように側壁23と一体に形成されている。なお、面72が、内周面44に対して内側や、外側に位置するように部材24が形成されてもよい。
【0024】
また、蓋30の側壁33の下端部分には部材34が設けられている。部材34は、蓋30の外周面39よりも内側(プロテクタ1の内側空間61側)に位置し、部材34の外側(蓋30の外周面39側)の面82は、外周面39から内側に窪んだ窪み部43の底面となっている。部材34は、面82と、蓋30の内周面45とが同一平面に含まれるように蓋30と一体に形成されている。なお、面82が、内周面45に対して内側や外側に位置するように部材34が形成されてもよい。なお、本体20に蓋30が被せられた状態において、本体20の側壁23の外周面29と、蓋30の側壁33の外周面39とは面一になり、本体20の側壁23の内周面44と、蓋30の側壁33の外周面39とも面一になる。
【0025】
本体20と蓋30とが重ね合わされた状態において、部材24と部材34とが、本体20と蓋30とのそれぞれの外周面29、39よりも内側に設けられていることにより、プロテクタ1の外周面からのロック部材50の突き出しを抑制することが出来き、当該外周面から突き出る構造体の大きさより小さくすることができる。なお、部材24、34が、プロテクタ1の外周面よりも内側に設けられていないとしても、ロック部材50が部材24、34に正対した状態で部材24、34側に押し込まれることにより部材24、34と嵌合できるので、側壁23、33をより小さくすることが出来る。従って、部材24、34が、プロテクタ1の外周面よりも内側に設けられていないとしても、本発明の有用性を損なうものではない。
【0026】
また、本体20の側壁23には、側壁23を貫通する貫通孔25が、部材24の下方に形成されている。貫通孔25は、側壁23の内周面44に開口26を備えて形成されており、貫通孔25の内部空間は、窪み部42の内側空間と連通している。貫通孔25は、ロック部材50の一対の係止片52、53のうち一方の係止片52を挿通可能に形成されている。
【0027】
蓋30の上壁31には、部材34の上方に、底面47を備えた凹部35が形成されている。凹部35は、上壁31の内周面45に開口36を備えて形成されている。凹部35の内部空間は、窪み部43の内部空間と連通している。凹部35は、係止片を収容可能な形状および大きさに形成されている。そして、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で、係止片53が、部材34の上面81に沿って凹部35に挿入されて収容されることによって、係止片53は、部材34の上側から部材34に当接可能な位置に配設される。開口36は、ロック部材50の他方の係止片53の先端に設けられた係止爪55を挿通可能な形状および大きさに形成されている。従って、係止片53が凹部35に収容されることによって、係止爪55が、開口36から内側空間61側に突き出て、部材34の内側の面84の上端部分に係止する。なお、蓋30が本体20に被さられた状態で、部材24の上面73と部材34の下面83との間に隙間が形成されるように、部材24、34が形成されてもよい。
【0028】
貫通孔25の上下方向の幅は、ロック部材50の係止片52の厚みよりも長い(若干長い)。また、本体20と蓋30との合わせ面41の長手方向における貫通孔25の長さは係止片52の長さよりも長い(若干長い)。そして、ロック部材50の係止片52の下面から係止爪54の先端までの間隔は、貫通孔25の上下方向の幅よりも広い。係止片52が貫通孔25に挿入されやすくするために、係止爪54の上面は、係止爪54の先端側(部材24に係止する部分側)ほど係止片52の下面との距離が大きくなるように、係止片52の下面に対して斜めに形成されている。従って、係止片52を弾性変形させて貫通孔25の下面46と部材24の下面71とに沿って貫通孔25に正面から挿入することにより、係止片52の係止爪54が部材24の内側の面74の一部に係止する。
【0029】
また、ロック部材50の係止片53の上面から係止爪55の先端までの間隔は、凹部35の上下方向の幅よりも広い。そして、係止片53が凹部35に収容されやすくするために、係止片53に形成された係止爪55の下面は、係止爪55の先端側(部材34に係止する部分側)ほど係止片53の上面との距離が大きくなるように、係止片53の上面に対して斜めに形成されている。係止片53を部材34の上面81に沿って、凹部35に正面から、すなわち凹部35の底面47の正面から凹部35に挿入して収容することによって係止片53の係止爪55が部材34の内側の面84に係止する。
【0030】
合わせ面41の長手方向における窪み部42、43の長さは、ロック部材50の溝部56の延在方向に沿った長さ(底壁51の長さ)よりも長い(若干長い)。また、窪み部42、43の窪み幅と、ロック部材50の底壁51のうち窪み部42、43に嵌合する部分の厚みとは同じ(略同じ)である。
【0031】
合わせ面41の長手方向における凹部35の長さは、ロック部材50の底壁51および係止片53の当該長手方向に沿った長さよりも長い(若干長い)。凹部35の深さ、すなわち部材24、34の外側の面72、82から凹部35の底面47(合わせ面41の長手方向に延在する面)までの間隔は、ロック部材50の溝部56の底面と、係止片53の先端との間隔と同じ(略同じ)長さに形成されている。凹部35の幅、すなわち上壁31の外周面と内周面との幅は、係止片53の厚みと同じ(略同じ)である。また、ロック部材50の矢印Y1で示される挿入方向に沿った凹部35の開口36の幅は、係止片53の係止爪55の当該挿入方向に沿った長さよりも長い(若干長い)。
【0032】
また、ロック部材50の溝部56の上面と下面との間隔は、部材34の上面81と部材24の下面71との間隔よりも長い(若干長い)。また、溝部56の上面と係止片52の下面との間隔は、蓋30の部材34の上面81と本体20の貫通孔25の下面46(合わせ面41の長手方向に延在する面)との間隔と同じ(略同じ)に形成されている。
【0033】
上述のように、合わせ面41の長手方向におけるロック部材50の各部の長さと、貫通孔25、窪み部42、43、および凹部35の当該方向の長さとが設定されることにより、ロック部材50が部材24、34に嵌合して係止したときに、合わせ面41の長手方向に沿ったロック部材50の移動が規制される。
【0034】
そして、本体20と蓋30とが重ね合わされてロック部材50が本体20と蓋30とを固定した状態において、ロック部材50の外周面59と、本体20と蓋30とのそれぞれの外周面29、39とが面一になるように外周面59に沿ったロック部材50の厚みが設定されている(
図4、
図5参照)。これにより、プロテクタ1の外周面からロック部材50が突き出さないようにすることができ、プロテクタ1の外周面から突き出る構造体の大きさをさらに小さくすることができる。なお、ロック部材50の外周面59がプロテクタ1の外周面よりも外側に形成されているとしても、本体と蓋体との一方にオスロック部を備え、他方にメスロック部を備える比較技術に係るプロテクタ200に比べて、ロック部材50自体をより小さくできる。従って、ロック部材50の外周面59がプロテクタ1の外周面よりも外側に形成されているとしても、本発明の有用性を損なうものではない。
【0035】
上記のように構成されたプロテクタ1において、蓋30を開けた状態で本体20にワイヤーハーネスを挿通し、挿通後、蓋30を薄肉ヒンジ部49を支点として閉鎖方向に回転する。該回転操作で、本体20の一対の側壁22、23の上端に、蓋30の両端、すなわち側壁32、33の下端がそれぞれ重ね合わされる。これにより、蓋30は、本体20の上面開口を覆って閉鎖する。
【0036】
本体20と蓋30とが重ね合わされて、ロック部材50が部材24、34に対向した状態、すなわちロック部材50の溝部56の底面が部材24、34に対向した状態で、溝部56が部材24、34に向かう挿入方向(矢印Y1で示される方向)に沿って、ロック部材50が部材24、34側に押し込まれる。ロック部材50の一方の係止片52が貫通孔25の正面から貫通孔25に弾性変形しつつ挿入されて貫通孔25を挿通するとともに、他方の係止片53が凹部35の正面から凹部35に弾性変形しつつ挿入されて凹部35に収容される。そして、ロック部材50の溝部56と部材24、34とが嵌合し、一方の係止片52が部材24の下側から部材24に当接可能な位置に配設される。また、ロック部材50の他方の係止片53は、部材34の上側から部材34に当接可能な位置に配設される。これにより、係止片52、53は、部材24、34の離間方向(上下方向)の移動を規制する。当該規制状態において、ロック部材50を抜け止め可能なように、係止片52に設けられた係止爪54が部材24を係止するとともに、係止片53に設けられた係止爪55が部材34を係止する。
【0037】
なお、ロック部材50の外周面59は、プロテクタ1の外周面と面一になることが好ましいが、既述したように、ロック部材50の外周面59がプロテクタ1の外周面よりも外側に形成されているとしても、本発明の有用性を損なうものではない。また、凹部35に収容された係止片53の一部がプロテクタ1の内周面よりも内側に突き出るとしても本発明の有用性を損なうものではない。従って、凹部35は、係止片53の少なくとも一部を収容可能な形状および大きさに形成されて、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で、係止片53の少なくとも一部が、部材34の上面81に沿って凹部35に挿入されて収容されることによって、係止片53は、部材34の上側から部材34に当接可能な位置に配設されてもよい。
【0038】
このような構成は、具体的には、例えば、ロック部材50の外周面59に沿った部分の厚みが凹部の上下方向の幅よりも厚くなるようにロック部材50が形成されて、ロック部材50の外周面59がプロテクタ1の外周面よりも外側に位置することにより実現される。また、このような構成は、凹部35が開口36を備えず、係止片53の係止爪55が部材34の上面81に係止爪55が係止する窪みが形成されることによっても実現される。また、このような構成は、蓋30がより底深に形成されることにより、蓋30の部材34と上壁31との間に隙間がある場合に、蓋30の側壁33における当該隙間部分に係止片53を挿通可能な貫通孔が形成されることによっても実現される。なお、当該貫通孔は、蓋30において部材34の上方に形成され、ロック部材50の他方の係止片53の少なくとも一部を収容可能な凹部である。そして、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で、係止片53の根本部分が、当該貫通孔に収容されるとともに、係止爪55を備える先端部分がプロテクタ1の内側空間61側に突き出るように配設されることによって、係止片53が部材34の上側から部材34に当接可能になるとともに、係止爪55が部材34に係止可能となる。
【0039】
ここで、比較技術に係るプロテクタ200には、メスロック部251と、先端に係止爪253が形成されたオスロック部252とを備えるロック部240が設けられている(
図7参照)。メスロック部251は、本体220に形成され、オスロック部252は、蓋230に形成されている。プロテクタ200においては、本体220と蓋230との開閉方向と、メスロック部251に対するオスロック部252の挿抜方向とが一致した状態でオスロック部252がメスロック部251の孔に挿入される。そして、オスロック部252の先端に設けられた係止爪253とメスロック部251の枠部とが当接することによって本体220と蓋230とが固定される。このため、他の部材が係止爪253に接触することや、外力が作用してプロテクタ200が捩れることによって、係止爪253がメスロック部251から容易に外れて本体220と蓋230とのロック状態が解除されやすくなる。そして、ロック状態が容易に解除されないようにしようとすると、係止爪253とメスロック部251の枠とが当接する部分の面積を大きくするとともに、ロック部240を捩れにくくする必要が有る。このため、オスロック部252が大径化し、メスロック部251の孔および枠の幅が大きくなり、係止爪253も大型化する。すなわち、ロック部240が大きくなる。
【0040】
これに対して、プロテクタ1では、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で、ロック部材50が部材24、34に嵌合することによってロック部材50の係止片52が部材24の下側から部材24に当接可能な位置に配設され、係止片53が部材34の上側から部材34に当接可能な位置に配設されて、係止片52、53が、部材24と部材34との離間方向(上下方向)の移動を規制する。そして、当該規制状態において、ロック部材50を部材24、34から抜け止め可能なように、係止片52の係止爪54が部材24を係止し、係止片53の係止爪55が部材34を係止する。
【0041】
部材24と部材34との離間方向の移動は、係止爪よりも広い当接面積で部材24、34に当接可能な係止片52、53によって規制されているので、係止片52、53を小型化しつつ、部材24と部材34との離間方向の移動をより確実に規制することができる。また、本体20に対する蓋30の開閉方向(上下方向、閉じ方向)、すなわち部材24と部材34との離間方向と、部材24、34に嵌合するときのロック部材50の嵌入方向(挿入方向、挿抜方向)とが異なっている。これにより、部材24と部材34とを離間させる方向に力が働いたとしても係止爪54、55は部材24、34から外れないので、係止爪54、55を小型化しつつ、係止片52、53の部材24、34からの抜け止めを図ることができる。従って、プロテクタ1では、ロック部材50を小型化しつつ本体20と蓋30とをより確実に固定できる。さらに、係止爪54、55を小型化できるので、プロテクタ1の内側空間61の断面積をより大きくすることもできる。
【0042】
また、プロテクタ1では、本体20と蓋30とが重ね合わされてロック部材50が部材24、34に対向した状態、すなわち溝部56の底面が部材24、34に対向した状態で溝部56が部材24、34に向かう挿入方向(矢印Y1で示される方向)に沿って、ロック部材50が部材24、34側に押し込まれる。そして、ロック部材50の一方の係止片52が正面から貫通孔25に挿入されて、溝部56と部材24、34とが嵌合する。従って、例えば、ロック部材50を部材24、34の端部から部材24、34の延在方向にスライドさせることによって、ロック部材50を部材24、34に嵌合させる必要が無い。これにより、部材24、34は、ロック部材50と略同じ長さに設定されて小型化が図られる。また、ロック部材50の一方の係止片52が貫通孔25に挿入されていない状態では、貫通孔25の開口26と、凹部35の開口36とからプロテクタ1の内側空間61に収容されたワイヤーハーネスを視認できる。これにより、ロック部材50の付け忘れを容易に検出できる。
【0043】
上述のように、プロテクタ1では、その外周面、すなわち本体20の外周面29および蓋30の外周面39から突き出る構造体の大きさを小さくしつつ、本体20と蓋30とのロック状態が容易に解除されないようにすることができる。
【0044】
また、
図6に示されるように、比較技術に係るプロテクタ200において、その幅自体を狭くすることによってロック部250と、外部部材との干渉を抑制しようとすると、プロテクタ200の内側空間261の断面積が、実施形態に係るプロテクタ1の内側空間61に比べて小さくなってしまう。また、比較技術に係るプロテクタ100のように、内側空間をより大きくするためにロック部150のみをプロテクタ100の外周面よりも内側に位置するようにしたとしても、ロック部150の位置における内側空間161の断面積は、実施形態に係るプロテクタ1の内側空間61の断面積に比べて小さくなってしまう。このように、プロテクタ1によれば、その外周面から突き出る構造体の大きさを抑制しつつ、その内側空間61の断面積をより大きくすることが出来る。
【0045】
以上のような本実施形態に係るプロテクタ1によれば、本体20と蓋30とが重ね合わされてロック部材50が部材24、34に対向した状態でロック部材50の一方の係止片53が正面から貫通孔25に挿入されるので部材24、34をロック部材50と同程度の長さにまで小型化できる。また、一方の係止片53が部材24の下側から部材24に当接可能な位置に配設され、他方の係止片53が部材34の上側から部材34に当接可能な位置に配設されて、部材24と部材34との離間方向の移動を規制するとともに、ロック部材50を抜け止め可能なように、係止片52の係止爪54が部材24に係止し、係止片53の係止爪55が部材34に係止するので、ロック部材50を小型化しつつ本体20と蓋30とをより確実に固定できる。従って、プロテクタの外周面から突き出る構造体の大きさを小さくしつつ、本体と蓋とのロック状態が容易に解除されないようにすることができる。
【0046】
また、以上のような本実施形態に係るプロテクタ1によれば、部材24、34は、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で本体20と蓋30との外周面29、39よりも内側に設けられているので、プロテクタ1の外周面からロック部材50が突き出ることを抑制することが出来る。従って、プロテクタ1の外周面から突き出る構造体の大きさをさらに小さくすることができる。
【0047】
また、以上のような本実施形態に係るプロテクタ1によれば、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で、ロック部材50の外周面59と、本体20と蓋30とのそれぞれの外周面29、39とが面一になるので、プロテクタ1の外周面からロック部材50が突き出さないようにすることが出来る。従って、プロテクタ1の外周面から突き出る構造体の大きさをさらに小さくすることができる。
【0048】
また、以上のような本実施形態に係るプロテクタ1によれば、蓋30の部材34の上方に、ロック部材50の他方の係止片53の少なくとも一部を収容可能な凹部35をさらに備え、本体20と蓋30とが重ね合わされた状態で、係止片53の少なくとも一部が、凹部35に収容されて部材34の上側から部材34に当接可能な位置に配設される。従って、プロテクタ1の外周面から突き出る構造体の大きさを小さくすることが出来る。
【0049】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。例えば、プロテクタ1では、本体20と蓋30とが薄肉ヒンジ部49を介して樹脂で一体成形されていたが、薄肉ヒンジ部49に代えて、本体20、蓋30に部材24、34と同様の部材がさらに設けられて、ロック部材50と同様のロック部材によって本体20と蓋30とが固定されてもよい。