(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924304
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】変速機の潤滑構造
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20160516BHJP
【FI】
F16H57/04 J
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-94523(P2013-94523)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214845(P2014-214845A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田外 真也
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲之
(72)【発明者】
【氏名】岡留 泰樹
【審査官】
稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−285356(JP,A)
【文献】
実開昭61−91661(JP,U)
【文献】
実開昭63−168359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機構が収容されるミッションケースと、
該ミッションケースの底部に設けられたオイル溜り部と、
前記オイル溜り部のオイルを掻き上げるオイル掻き上げ部材と、
前記オイル掻き上げ部材により掻き上げられたオイルを、前記変速機構の要潤滑部に供給するオイルパスと、を有する変速機の潤滑構造であって、
前記オイルパスは、
一端が他端に比べて上方位置となるように傾斜して前記ミッションケース内に設けられ、前記掻き上げ部材により掻き上げられて一端側に設けられたオイル捕集部に捕集されたオイルを、該オイル捕集部よりも他端側に設けられた前記要潤滑部に導く油路と、
該油路の下面から前記要潤滑部に向けて突設され、前記油路内のオイルを前記要潤滑部に向けて滴下する滴下パイプと、
前記油路下面の、前記滴下パイプの設置位置よりも一端側であって、前記オイル掻き上げ部材よりも他端側の位置に、下方に向けて突設されたオイル遮蔽壁と、を有する変速機の潤滑構造。
【請求項2】
前記オイル掻き上げ部材は、一端側に設けられたデファレンシャルリングギヤであり、
前記要潤滑部は、前記オイル掻き上げ部材よりも小径のギヤであることを特徴とする請求項1に記載の変速機の潤滑構造。
【請求項3】
前記要潤滑部は、複数のギヤであり、
前記複数のギヤのうち最も他端側に設けられたギヤに対応する前記滴下パイプの設置位置よりも所定距離一端側にのみ、前記オイル遮蔽壁が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の変速機の潤滑構造。
【請求項4】
前記滴下パイプは、第1滴下パイプと、該第1滴下パイプよりもパイプ長さが長い第2滴下パイプと、を有しており、更に、前記第1滴下パイプの設置位置よりも所定距離一端側にのみ、前記オイル遮蔽壁が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の変速機の潤滑構造。
【請求項5】
前記変速機と連結された動力源を備え、前記変速機と前記動力源は車幅方向に延びるように車両に搭載されるものであり、前記油路が、前記動力源側に一端側、前記反動力源側に他端側となるように、前記ミッションケースに傾斜搭載されており、更に、前記第1滴下パイプが、前記第2滴下パイプよりも反動力源側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の変速機の潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される変速機の潤滑構造に関し、特に、変速機下部に蓄えられたオイルを、オイルパスを介して変速機内の要潤滑部に供給する変速機の潤滑構造に関するものである。
【0002】
従来、手動変速機(マニュアルトランスミッション)では、変速機下部に蓄えられたオイルをデファレンシャルギヤにより掻き上げ、この掻き上げられたオイルをオイルパスで捕集すると共に、変速機内のギヤや同期装置などの要潤滑部の上方に導き、オイルパスから要潤滑部に向けて滴下することによって要潤滑部の潤滑が行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、オイルパス下面から要潤滑部に向けて突設された滴下パイプ(特許文献1では、落下用油案内用突起)により、オイルを滴下するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-91661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示している技術では、オイルパス下面をつたってくるオイルの影響によって、滴下パイプから滴下されたオイルが適切に要潤滑部に供給されにくくなるケースが生じることが分かった。具体的に
図4を用いて詳細に説明する。
【0006】
デファレンシャルギヤにより掻き上げられたオイルの一部は、オイルパス20´に捕集されることなく、オイルパス20´の下面に付着する。オイルパス20´下面に付着したオイルは、オイルパス自体が捕集オイルを要潤滑部に確実に導くためにミッションケース内に傾斜搭載されている関係上、下流側に向かって流れる。
【0007】
上記のオイルパス下面を下流側に向かって流れるオイルA1は、滴下パイプ31´,32´,33´の下端開口から破線で示すように要潤滑部に向けて滴下されたオイルA2に干渉し、該オイルを要潤滑部よりも下流側の位置に滴下するように作用する。従って、要潤滑部に常に適切にオイルを供給できなくなる可能性がある。これに対して、滴下パイプ自体を長くすることによって、オイルパス下面を流れてくるオイルの影響を回避することが考えられる。しかし、これまで以上にオイルパスと要潤滑部とが干渉しないように離間させる必要がある為、変速機が大型化する課題がある。
【0008】
本願発明は、上述の課題に対してなされたものであって、滴下パイプから滴下されるオイルが適切に要潤滑部に供給されるとともに、変速機が大型化するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題に対して、本発明は、オイルパス下面における滴下パイプの上流側の位置にオイル遮蔽壁を設けることで、オイルパス下面を下流側に流れてくるオイルが、滴下パイプ下端開口から滴下されたオイルとの干渉を抑制することを特徴とするものである。これにより、滴下パイプ自体を長くすることなく、オイルパス下面を下流側に流れてくるオイルの影響を回避することができる為、変速機が大型化するのを防止することができる。
【0010】
本願に関わる第一の発明は、変速機構が収容されるミッションケースと、該ミッションケースの底部に設けられたオイル溜り部と、前記オイル溜り部のオイルを掻き上げるオイル掻き上げ部材と、前記オイル掻き上げ部材により掻き上げられたオイルを、前記変速機構の要潤滑部に供給するオイルパスと、を有する変速機の潤滑構造であって、前記オイルパスは、一端が他端に比べて上方位置となるように傾斜して前記ミッションケース内に設けられ、前記掻き上げ部材により掻き上げられ
て一端側に設けられたオイル捕集部に捕集されたオイルを
、該オイル捕集部よりも他端側に設けられた前記要潤滑部に導く油路と、該油路の下面から前記要潤滑部に向けて突設され、前記油路内のオイルを前記要潤滑部に向けて滴下する滴下パイプと、前記油路下面の
、前記滴下パイプの設置位置より
も一端側
であって、
前記オイル掻き上げ部材よりも他端側の位置に、下方に向けて突設されたオイル遮蔽壁と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明によれば、オイル遮蔽壁により、オイルパス(油路)下面を下流側に流れてくるオイルの流れを、滴下パイプの下端開口から滴下されるオイルに干渉しないように変えることができる。これにより、オイルパス(油路)下面を下流側に流れてくるオイルの影響を回避する為に、滴下パイプを従来よりも長くする必要がなくなるので、変速機が大型化するのを防止することができる。
【0012】
本願に関わる第二の発明は、第1の発明に記載の変速機の潤滑構造であって、前記オイル掻き上げ部材は、一端側に設けられたデファレンシャルリングギヤであり、前記要潤滑部は、前記オイル掻き上げ部材よりも小径のギヤであることを特徴とするものである。
【0013】
本願に関わる第三の発明は、第1又は第2の発明に記載の変速機の潤滑構造であって、前記要潤滑部は、複数のギヤであり、前記複数のギヤのうち最も他端側に設けられたギヤに対応する前記滴下パイプの設置位置よりも所定距離一端側にのみ、前記オイル遮蔽壁が設けられることを特徴とするものである。
【0014】
本願に関わる第
四の発明は、第1
〜第3のいずれか1つの発明に記載の変速機の潤滑構造であって、前記滴下パイプは、第1滴下パイプと、該第1滴下パイプよりもパイプ長さが長い第2滴下パイプと、を有しており、更に、前記第1滴下パイプの設置位置よりも所定距離一端側にのみ、前記オイル遮蔽壁が設けられることを特徴とするものである。
【0015】
第
四の発明によれば、パイプ長さが比較的短い第1滴下パイプの所定距離一端側にのみオイル遮蔽壁を設けることにより、オイル遮蔽壁が形成される箇所を削減できる為、コスト削減を図ることができる。
【0016】
本願に関わる第
五の発明は、第
4の発明に記載の変速機の潤滑構造であって、前記変速機と連結された動力源を備え、前記変速機と前記動力源は車幅方向に延びるように車両に搭載されるものであり、前記油路が、前記動力源側に一端側、前記反動力源側に他端側となるように、前記ミッションケースに傾斜搭載されており、更に、前記第1滴下パイプが、前記第2滴下パイプよりも反動力源側に設けられているこ
とを特徴とするものである。
【0017】
第
五の発明によれば、変速機及び動力源を横置き配置した場合において、変速機を小型化することができる。すなわち、比較的下方に配置される油路の反動力源側に比較的短い第1滴下パイプを設けることにより、要潤滑部とオイルパスとが干渉しないように大きく離間させる必要が無くなり、変速機の小型化が実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に寄れば、滴下パイプから滴下されるオイルが適切に要潤滑部位に供給されるとともに、変速機が大型化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る変速機の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
まず、
図1を用いて、本実施形態に係る変速機の全体構造を説明する。本実施形態に係る変速機1は、クラッチを介して動力源であるエンジンに連結されている。そして、変速機1は、車両前方に設けられたエンジンルーム内に、動力源と共に車幅方向に延びるように搭載されている(FF:フロントエンジン フロントドライブ)。
【0022】
本実施形態において、動力源側は特許請求の範囲に記載の一端側に、反動力源側は他端側に相当する。また、本実施形態では説明の便宜上、動力源側は一端側及び上流側を、反動力源側は他端側及び下流側を指すものとする。
【0023】
変速機1は、前進6速、後進1速の変速機であって、ミッションケース2内に、動力源であるエンジンの出力軸にクラッチを介して連結されたプライマリ軸(いずれも図示されていない)と、該プライマリ軸と並行配置されたセカンダリ軸3、デファレンシャル軸及びリバース軸が配設されており、プライマリ軸とセカンダリ軸3との間に複数の前進ギヤ列が、プライマリ軸と、セカンダリ軸3、リバース軸との間に後進ギヤ列が配設されている。
【0024】
複数の前進ギヤ列は、プライマリ軸とセカンダリ軸3のうちいずれか一方の軸上に配設された遊転ギヤと、該遊転ギヤと噛合うと共に他方の軸上に固設された固定ギヤとを有している。そして、ドライバーが図示しないチェンジレバーを操作すると、このチェンジレバーに連絡されたリンク機構が、遊転ギヤと一方の軸とを同期装置させることにより、所望の変速段が実現している。
【0025】
また、本実施形態の後進ギヤ列は選択摺動式であり、プライマリシャフトに固設されたリバースプライマリギヤと、セカンダリ軸3に固設されたリバースセカンダリギヤと、リバース軸に軸方向に摺動可能に嵌合されたリバースアイドルギヤとで構成されている。そして、ドライバーが図示しないチェンジレバーを操作すると、このチェンジレバーに連絡されたリンク機構(リバースレバーを含む)が、リバースアイドルギヤをリバースプライマリギヤとリバースセカンダリギヤとの噛合い位置まで、リバース軸上を軸方向に摺動させることにより、後速段が実現している。
【0026】
セカンダリ軸3は、動力源側はローラベアリング4、反動力源側はボールベアリング5、を介して、ミッションケース2に軸受けを介して支持されている。
【0027】
そして、セカンダリ軸3の上方(車両上下方向で)には、変速機内の要潤滑部に潤滑オイルを供給するオイルパス20が配設され、固定部材21によりミッションケース2内に固定されている。ここで、オイルパス20は、オイルを要潤滑部位に確実に供給する為に、動力源側が、反動力源側よりも上方位置となるように、ミッションケース2内に傾斜して固定されている。
【0028】
また、変速機の底部にはオイル溜りが設けられており、図示しないデファレンシャル軸に支持されたデファレンシャルリングギヤ6が、このオイル溜りのオイルに浸かるように変速機のオイル量が設定されている。
【0029】
デファレンシャルリングギヤ6が回転すると、この回転に伴ってオイル溜りに蓄えられたオイルが上方に掻き上げられ、オイルパスに捕集されるようになっている。なお、デファレンシャルリングギヤ6が、特許請求の範囲に記載のオイル掻き上げ部材に相当する。
【0030】
次に、
図2を用いてオイルパス20の構造について説明する。オイルパス20は、オイル捕集部22、油路23、反動力源側滴下パイプ31、中間滴下パイプ32、動力源側滴下パイプ33、オイル遮蔽壁34、を有している。反動力源側滴下パイプ31が特許請求の範囲に記載の第1滴下パイプに、中間滴下パイプ32及び動力源側滴下パイプ33が特許請求の範囲に記載の第2滴下パイプに相当する。
【0031】
オイル捕集部22に捕集された掻き上げオイルは、上述したようにオイルパス20自体が、動力原側が反動力源側よりも上方位置となるようにミッションケース2に固定されているため、オイル捕集部22の反動力源に一体的に設けられた油路23へと流れる。
【0032】
油路23は、途中で第1油路24と第2油路25に分岐している。そして、第1油路24はプライマリ軸の軸内、第2油路25はセカンダリ軸3を軸支するボールベヤリング5、反動力源側滴下パイプ31を介して第1ギヤ41、中間滴下パイプ42を介して第2ギヤ、動力源側滴下パイプ43を介して第3ギヤ、にそれぞれ掻き上げられたオイルが供給されるようになっている。この第2油路25が、特許請求の範囲に記載の油路に相当する。
【0033】
第1ギヤ、第2ギヤ及び第3ギヤは、セカンダリ軸上に反動力源側から順に配設されており、この第1ギヤ、第2ギヤ及び第3ギヤが、特許請求の範囲に記載の要潤滑部に相当する。
【0034】
次に、
図3を用いて、本発明の要部について説明する。デファレンシャルリングギヤ6により掻き上げられたオイルは、全てがオイル捕集部22に捕集されるのではなく、掻き上げられたオイルの一部はオイル捕集部22の下面に付着する。この付着したオイルは、上述したようにオイルパス20の動力原側が、反動力源側よりも上方位置となるようにミッションケース2に固定されている関係上、A1(オイルの流れ)に示されるように、オイル捕集部の下面から油路23(第1油路24及び第2油路25)の下面をつたって、反動力源に向かって流れていく。
図3は、第2油路25の下面をつたって流れているオイルの様子を示している。
【0035】
各パイプ(31,32,33)の下端開口(35,36,37)は、それぞれ対応するギヤ(41,42,43)の歯面の軸方向略中心部にオイルが滴下されるように、各滴下パイプの下端開口の位置が設定されている。オイルA3は、各下端開口(35,36,37)からオイルが滴下された様子を示している。
【0036】
反動力源側滴下パイプ31の動力源側の第2油路25の下面にはオイル遮蔽壁34が設けられている。このオイル遮蔽壁34が、反動力源側に向かって第2油路25の下面をつたって流れてくるオイルA1を、反動力源側滴下パイプ31の動力源側において下方に落下させるので、反動力源側滴下パイプ31の下端開口35から滴下されるオイルA3に、オイルA1が干渉するのを防止することができる。
【0037】
これにより、反動力源側滴下パイプ31の下端開口35からのオイルを、要潤滑部である第1ギヤの軸方向略中心部に適切に滴下することができるので、反動力源側滴下パイプ31の長さ(パイプ中の油路の長さ)を長くする必要が無い。従って、変速機が大型化のするのを防止することができる。
【0038】
また、オイル遮蔽壁34は反動力源側滴下パイプ31から所定距離S1、動力源側に設けられている。この所定距離S1があまりにも
小さいと(反動力源側滴下パイプ31とオイル遮蔽壁34があまりに近すぎると)、オイル遮蔽壁34により下方に落下されたオイルが、滴下パイプの下端開口から滴下されるオイルA3と干渉するおそれがある。
【0039】
一方で、所定距離S1があまりにも大きいと(反動力源側滴下パイプ31からあまりにも離してしまうと)、デファレンシャルリングギヤ6により掻き上げられたオイルがオイル遮蔽壁34よりも反動力源側の第2油路25の下面に付着して、反動力源側滴下パイプ31の下端開口35から滴下されるオイルA3と干渉するおそれがある。その為、第1ギヤ41の動力源側の端面よりも第2油路25における動力源側であって、デファレンシャルリングギヤ6により掻き上げられるオイルが、オイル遮蔽壁34よりも反動力源に付着しない程度の位置に上記の「所定距離S1」が設定されている。
【0040】
また、中間滴下パイプ32及び動力源側滴下パイプ33の長さ(パイプ中の油路の長さ)L2は、反動力源側滴下パイプ31の長さL1よりも長くなるように形成されている。オイル遮蔽壁34の下端は、反動力源側滴下パイプ31の下端よりも短い、若しくは略同じに設定され、動力源から反動力源側に向かって第2油路の下面をつたって流れてくるオイルA1が滴下パイプの下端開口から滴下されるオイルA3と干渉しない長さとなっている。
【0041】
第2油路25の下面と要潤滑部であるギヤとの間が比較的離間している中間滴下パイプ32、動力源側滴下パイプ33は、従来よりもパイプ長さを長くすることで、動力源から反動力源側に向かって第2油路の下面をつたって流れてくるオイルA1の干渉の影響を回避している。
【0042】
これにより、第2油路25の下面と要潤滑部であるギヤとの間が比較的近接している反動力源側滴下パイプ31のみオイル遮蔽壁34が形成されるため、オイル遮蔽壁31が設けられる箇所削減によるコスト削減を図ることができる。
【0043】
更に、本実施形態では、オイルパス20の第2油路25の動力源側が、反動力源側よりも上方位置に設けられており、比較的パイプの長さが短く形成された反動力源側滴下パイプ31が、比較的パイプの長さが長く形成された中間滴下パイプ32及び動力源側滴下パイプ33よりも反動力源側に設けられている。
【0044】
これにより、変速機1及び動力源を横置き配置した場合において、変速機1を小型化することができる。すなわち、比較的下方に配置される第2油路25の反動力源側に比較的短い反動力源側滴下パイプを設けることにより、要潤滑部(第1ギヤ41,第2ギヤ42,第3ギヤ43)と第2油路25とが干渉しないように大きく離間させる必要が無くなり、変速機1の小型化が実現できる。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更は可能である。
【0046】
本実施形態では、要潤滑部を第1ギヤ、第2ギヤ及び第3ギヤと説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、同期装置や軸受部材であっても良い。
【0047】
また、本実施形態では、オイル遮蔽壁34が、反動力源側に向かって第2油路25の下面をつたって流れてくるオイルA1を、反動力源側滴下パイプ31の動力源側において下方に落下させると説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、オイル遮蔽壁が反動力源側に向かって第2油路25の下面をつたって流れてくるオイルA1を反動力源側滴下パイプ31の下端開口35から滴下されるオイルA3に干渉しないように流れを変えるものであれば良い。
【0048】
その他に、反動力源側滴下パイプ31が複数あっても良く、反動力源側滴下パイプ31が中間滴下パイプ32及び動力源側滴下パイプ33よりも動力源側に設けられても良く、プライマリ軸やリバース軸などに設けられた要潤滑部にオイルパスを介してオイルを供給するものであっても良く、オイルパス20動力源側が反動力源側よりも下方位置にあっても良く、掻き上げ部材はデファレンシャルリングギヤ6以外の部材を用いても良く、変速機1を車両の前後方向に延びるようにエンジンルーム内に搭載しても良く、変速機1を車両後方のエンジンルーム内に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は車両に変速機の潤滑構造に関する発明であり、特に、オイルパスに設けられた滴下パイプから滴下されるオイルが適切に要潤滑部に供給されるとともに、変速機が大型化するのを防止する場合に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 変速機
2 ミッションケース
3 セカンダリ軸
6 デファレンシャルリングギヤ(掻き上げ部材)
20 オイルパス
22 オイル捕集部
24 第1油路
25 第2油路(油路)
31 反動力源側滴下パイプ(第1滴下パイプ)
32 中間滴下パイプ(第2滴下パイプ)
33 動力源側滴下パイプ(第2滴下パイプ)
34 オイル遮蔽壁
41 第1ギヤ(要潤滑部)
42 第2ギヤ(要潤滑部)
43 第3ギヤ(要潤滑部)