(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の電源では、エネルギー電池からパワー電池又は車両駆動用の電動モータに電力を供給する場合、その電力供給は、常に昇圧手段(DC−DCコンバータ)を介して行われるため、エネルギーロスが発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パワー電池とエネルギー電池とを備えた車両用電源制御装置において、エネルギー電池からパワー電池又は車両駆動用の電動モータへの電力供給を出来る限り効率良く行いながら、要求出力と要求走行距離の両方を満たすようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、パワー電池と、該パワー電池よりも出力密度が小さくかつエネルギー密度が大きいエネルギー電池とを備えた車両用電源制御装置を対象として、上記パワー電池から車両駆動用の電動モータに電力を供給する第1電力供給回路と、
上記第1電力供給回路に接続されて、記エネルギー電池から上記パワー電池又は上記電動モータに電力を供給する第2電力供給回路とを備え、上記第2電力供給回路は、上記エネルギー電池の出力電圧を昇圧する昇圧回路と、該昇圧回路をバイパスするバイパス回路と、該第2電力供給回路を、上記バイパス回路を介して上記エネルギー電池から上記パワー電池又は上記電動モータに電力を供給可能な第1電力供給可能状態と上記昇圧回路を介して上記エネルギー電池から上記パワー電池又は上記電動モータに電力を供給可能な第2電力供給可能状態とに切り換える切換手段とを有し、上記エネルギー電池の出力電圧から上記パワー電池の出力電圧を引いた値である電圧差が、所定値よりも大きいか否かを判定する電圧判定手段と、上記切換手段を制御する切換制御手段とを更に備え、上記切換制御手段は、上記電圧判定手段により上記電圧差が上記所定値よりも大きいと判定されたときには、上記切換手段により上記第2電力供給回路を上記第1電力供給可能状態にする一方、上記電圧判定手段により上記電圧差が上記所定値よりも大きくないと判定されたときには、上記切換手段により上記第2電力供給回路を上記第2電力供給可能状態にするように構成されている、という構成とした。
【0010】
上記の構成により、エネルギー電池の出力電圧からパワー電池の出力電圧を引いた値である電圧差が、所定値(0乃至0よりも僅かに大きい値)よりも大きい場合には、バイパス回路を介してエネルギー電池からパワー電池又は電動モータに電力を供給することができ、エネルギー電池からパワー電池又は電動モータへの電力供給を効率良く行うことができる。一方、上記電圧差が上記所定値よりも大きくなくても、昇圧回路を介してエネルギー電池からパワー電池又は電動モータに電力を供給することができる。ここで、電動モータによる車両走行中であれば、パワー電池から電動モータに電力を供給するとともに、エネルギー電池からも電動モータに電力を供給することができる。この場合、エネルギー電池の出力密度は小さいので、エネルギー電池から電動モータへの電力供給量は少なく、エネルギー電池からの電力で足りない分を、パワー電池からの放電により対応することができる。この結果、パワー電池からの放電を出来る限り抑制することができる。また、高速道路の長時間走行時のように停止及び減速の機会が少ない場合であっても、長距離を連続して走行することができる。一方、車両停止中であれば、エネルギー電池からパワー電池に電力を供給して充電することができ、パワー電池の残容量の低下を抑制することができる。したがって、要求出力と要求走行距離の両方を満たすことができる。また、上記のようにパワー電池は、エネルギー電池からの電力だけでは足りない分の電力を放電する必要があるため、パワー電池の出力電圧の方がエネルギー電池の出力電圧よりも低くなる傾向にある。これにより、基本的には、バイパス回路を介してエネルギー電池からパワー電池又は電動モータに電力が供給されることになる。この結果、エネルギー電池からパワー電池又は電動モータへの電力供給を出来る限り効率良く行うことができる。
【0011】
上記車両用電源制御装置において、上記エネルギー電池の温度が所定範囲内にあるか否かを判定する温度判定手段を更に備え、上記切換手段は、上記第2電力供給回路を更に、上記エネルギー電池から上記パワー電池及び上記電動モータに電力を供給不能な電力供給不能状態に切り換えることが可能に構成されており、上記切換制御手段は、上記温度判定手段により上記エネルギー電池の温度が上記所定範囲内にあると判定されたときには、上記電圧判定手段による判定結果に応じて、上記切換手段により上記第2電力供給回路を上記第1又は第2電力供給可能状態にする一方、上記温度判定手段により上記エネルギー電池の温度が上記所定範囲内にないと判定されたときには、上記切換手段により上記第2電力供給回路を上記電力供給不能状態にするように構成されている、ことが好ましい。
【0012】
このことにより、エネルギー電池の温度が所定範囲内になければ、第2電力供給回路が電力供給不能状態になり、エネルギー電池からパワー電池及び電動モータへの電力供給は行われない。上記所定範囲を、これを外れた温度でエネルギー電池からの放電を行うと、エネルギー電池の寿命を短縮するような温度範囲に設定しておけば、エネルギー電池が早期に劣化するのを抑制することができる。
【0013】
上記車両用電源制御装置において、上記エネルギー電池から、上記電動モータ及び上記パワー電池以外の車載電装品に電力を供給する第3電力供給回路を更に備えている、ことが好ましい。
【0014】
こうすることで、パワー電池からの放電を出来る限り抑制して、要求出力と要求走行距離の両方を満たすようにすることができる。
【0015】
上記車両用電源制御装置の一実施形態では、上記第2電力供給回路は、車両外部の普通充電器と接続される普通充電器接続回路を更に有し、上記切換手段は、上記第2電力供給回路を更に、上記普通充電器により上記普通充電器接続回路及び上記昇圧回路を介して上記パワー電池及び上記エネルギー電池を充電可能な普通充電可能状態に切り換えることが可能に構成されており、上記切換制御手段は、上記普通充電器接続回路が上記普通充電器と接続されたときに、上記切換手段により上記第2電力供給回路を上記普通充電可能状態にするように構成されている。
【0016】
このことにより、車両外部の普通充電器(家庭用電源)によるパワー電池及びエネルギー電池への普通充電を、第2電力供給回路の昇圧回路を利用して行うことができ、これにより、普通充電のために別途に昇圧回路を設ける必要がなく、車両のコスト及び重量を低減することができる。また、車両外部の普通充電器によりパワー電池及びエネルギー電池を同時に充電することができ、1回の普通充電で車両の走行可能な距離を長くすることができる。
【0017】
上記車両用電源制御装置の別の実施形態では、上記第2電力供給回路は、車両外部の急速充電器と接続される急速充電器接続回路を更に有し、上記切換手段は、上記第2電力供給回路を更に、上記急速充電器により上記急速充電器接続回路を介して上記パワー電池及び上記エネルギー電池を充電可能な急速充電可能状態に切り換えることが可能に構成されており、上記切換制御手段は、上記急速充電器接続回路が上記急速充電器と接続されたときに、上記切換手段により上記第2電力供給回路を上記急速充電可能状態にするように構成されている。
【0018】
このことで、車両外部の急速充電器によりパワー電池及びエネルギー電池を同時に充電することができ、1回の急速充電で車両の走行可能な距離を長くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の車両用電源制御装置によると、エネルギー電池の出力電圧からパワー電池の出力電圧を引いた値である電圧差が、所定値よりも大きい場合には、切換手段により第2電力供給回路を第1電力供給可能状態(バイパス回路によりエネルギー電池からパワー電池又は車両駆動用の電動モータに電力を供給可能な状態)にする一方、上記電圧差が上記所定値よりも大きくない場合には、上記切換手段により第2電力供給回路を第2電力供給可能状態(昇圧回路を介してエネルギー電池からパワー電池又は電動モータに電力を供給可能な状態)にするようにしたことにより、エネルギー電池からパワー電池又は電動モータへの電力供給を出来る限り効率良く行いながら、要求出力と要求走行距離の両方を満たすようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用電源制御装置1を示す。この車両用電源制御装置1は、電動車両(電気自動車)に搭載されたものである。
【0023】
車両用電源制御装置1は、パワー電池2(
図1では、P電池と記載)と、該パワー電池2よりも出力密度が小さくかつエネルギー密度が大きいエネルギー電池3(
図1では、E電池と記載)とを備えている。ここでは、上記出力密度は、重量出力密度及び体積出力密度の両方を含み、上記エネルギー密度は、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度の両方を含む。本実施形態では、パワー電池2及びエネルギー電池3の開放電圧は、例えば300〜400Vであり、初期の開放電圧は略同じであることが好ましい。
【0024】
上記パワー電池2は、本実施形態では、リチウムイオン二次電池である。パワー電池2は、単一の電池モジュール
14を有している(
図2及び
図3参照)。この各電池モジュール
14は、複数(本実施形態では6個)の電池セル
15を含んでいる。これらの電池セル
15は、互いに直列接続されている。尚、パワー電池2が、互いに並列接続された複数の電池モジュール
14を有していてもよい。
【0025】
パワー電池2のエネルギー容量は、市場一般の1日当たりの車両走行距離を走行可能な量に設定される。具体的には、市場一般の所定のパーセンタイル(本実施形態では80パーセンタイル)をカバーする(賄う)1日当たりの走行距離をL(km)、電費(電気自動車の電力消費率)をε(km/kWh)、パワー電池2の実効エネルギー容量をE′(kWh)とし、パワー電池2の充電率(SOC)の使用範囲(パワー電池2の所定の上限充電率から所定の下限充電率までの範囲)をβとすると、パワー電池2のエネルギー容量E(kWh)は、
L/ε≦E′=E・β…(1)
を満たす。
【0026】
例えば、市場一般の80パーセンタイルをカバーする1日当たりの走行距離Lを40(km)、電費εを10(km/kWh)、パワー電池2の充電率の使用範囲βを0.7(パワー電池2の上限充電率が0.9、下限充電率が0.2)に設定する。このとき、これらの値を式(1)に代入して変形すると、
E≧L/(ε・β)=40/(10×0.7)=5.7
となる。この条件を満たしかつ後述の電動モータ5の要求出力を満たす電池が、本実施形態のパワー電池2として選択される。こうして選択されるパワー電池2は、軽量・コンパクトなものであることが好ましい。
【0027】
上記エネルギー電池3は、本実施形態では、リチウムイオン二次電池である。エネルギー電池3は、複数(本実施形態ではL個(L≧3))の電池モジュール30を有している(
図2及び
図3を参照)。これらの電池モジュール30は、互いに並列接続されている。各電池モジュール30は、複数(本実施形態では8個)の電池セル31をそれぞれ含んでいる。各電池モジュール30の該複数の電池セル31は、互いに直列接続されている。エネルギー電池3は、電池容量がパワー電池2よりも大きい。エネルギー電池3は、その全部又は一部を交換可能になっている。
【0028】
エネルギー電池3は、その許容連続放電Cレートで放電することでパワー電池2を予め設定された所定の要求充電時間内(例えば、30分以内)に充電可能になっている。具体的には、パワー電池2の充電率の使用範囲をβ、パワー電池2のエネルギー容量に対するエネルギー電池3のエネルギー容量の比をα、エネルギー電池3の許容連続放電Cレートをx(C)、エネルギー電池3の充電率の使用範囲(エネルギー電池3の所定の上限充電率から所定の下限充電率までの範囲)をβ′、要求充電時間をT(h)とすると、エネルギー電池3は、
β/(x・α・β′)≦T…(2)
を満たす。
【0029】
例えば、パワー電池2の充電率の使用範囲βを0.7(パワー電池2の上限充電率が0.9、下限充電率が0.2)、エネルギー電池3の充電率の使用範囲β′を0.9、要求充電時間Tを0.5(h)に設定する。このとき、これらの値を式(2)に代入して変形すると、
x・α≧β/(β′・T)=0.7/(0.9×0.5)=1.56
となる。この条件を満たす電池が、本実施形態のエネルギー電池3として選択される。こうして選択されるエネルギー電池3は、軽量・コンパクトなものであることが好ましい。
【0030】
エネルギー電池3は、その一部の電池セル31によってパワー電池2を充電可能なときには、その一部の電池セル31のみによってパワー電池2を充電可能になっている。具体的には、
図2に示すように、例えば、パワー電池2の充電可能量がエネルギー電池3の第1電池モジュール30の放電可能量よりも小さい場合は、パワー電池2の充電をエネルギー電池3の第1電池モジュール30の電池セル31のみによって行う。一方、
図3に示すように、例えば、パワー電池2の充電可能量がエネルギー電池3の第1電池モジュール30の放電可能量よりも大きい場合は、パワー電池2の充電を、エネルギー電池3の第1電池モジュール30の放電可能な電池セル31と第2電池モジュール30の電池セル31によって行う。
【0031】
車両用電源制御装置1は、パワー電池2から、高電圧・高出力の電気負荷である車両駆動用の電動モータ5に電力を供給する第1電力供給回路8と、エネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5に電力を供給する第2電力供給回路20とを備えている。
【0032】
上記第1電力供給回路8には、電動モータ5を駆動制御するためのインバータ4が設けられており、パワー電池2からの電力がインバータ4を含む第1電力供給回路8を介して電動モータ5に供給される。電動モータ5は、その駆動力によって当該車両の駆動輪(不図示)を駆動する。また、電動モータ5は、インバータ4によって、車両減速時に回生電力を生じるようになされ、この回生電力は、第1電力供給回路8を介してパワー電池2に供給されて充電される。尚、インバータ4は後述のコントローラ12によって制御される。
【0033】
上記第2電力供給回路20は、上記第1電力供給回路8に接続されていて、エネルギー電池3からの電力を第1電力供給回路8を介してパワー電池2又は電動モータ5に供給する。本実施形態では、電動モータ5による車両走行中であるときには、パワー電池2から電動モータ5に電力が供給されるとともに、エネルギー電池3からも電動モータ5に電力が供給される。エネルギー電池3の出力密度は小さいので、エネルギー電池3からの供給電力量(エネルギー電池3の放電電力量)は、所定量以下の一定値であり、エネルギー電池からの電力で足りない分を、パワー電池2からの放電により対応する。また、車両停止中であるときには、エネルギー電池3からパワー電池2に電力を供給して充電す
る。
【0034】
また、車両用電源制御装置1は、エネルギー電池3から、電動モータ5及びパワー電池2以外の車載電装品に電力を供給する第3電力供給回路9を更に備えている。この車載電装品としては、電動モータ5よりも低電圧・低出力の電気負荷であって、
図1に示すように、電動空調装置41やカーアクセサリ42(
図1では、ACCと記載)等が挙げられる。また、本実施形態では、上記車載電装品として、エンジンにより駆動される車両に一般的に搭載されている12Vの鉛蓄電池43(
図1では、12V電池と記載)が設けられている。この鉛蓄電池43は、電動モータ5よりも低電圧・低出力の電気負荷(ここでは、コントローラ12等)に電力を供給するものであって、エネルギー電池3からの電力がDC−DCコンバータ13を介して供給されて充電される。
【0035】
電動空調装置41は、エネルギー電池3からの電力が供給されて作動して、車両の車室内の空気の温度や湿度、清浄度等の調節を行う。カーアクセサリー42は、エネルギー電池3からの電力がDC−DCコンバータ13を介して供給されて作動する。尚、カーアクセサリー42に鉛蓄電池43からの電力を供給するようにしてもよい。カーアクセサリー42は、具体的には、カーオーディオやカーナビゲーション等である。電動空調装置41とカーアクセサリー42とは、互いに並列接続されている。
【0036】
上記第2電力供給回路20は、エネルギー電池3の出力電圧を昇圧する、DC−DCコンバータを含む昇圧回路21と、該昇圧回路21をバイパスするバイパス回路22と、第1乃至第3スイッチ23〜25とを有している。
【0037】
第1スイッチ23は、エネルギー電池3と接続された端子23aを、バイパス回路22が接続された端子23bに接続した第1状態(
図1、
図6及び
図7に示す状態)と、端子23aを端子23cに接続した第2状態(
図4及び
図5に示す状態)とに切り換え可能になっている。
【0038】
第2スイッチ24は、昇圧回路21の入力側が接続された端子24aを、端子23cに接続された端子24b(ここでは、第1スイッチ23の端子23cと共用とする)に接続した第1状態(
図1、
図4及び
図5に示す状態)と、端子24aを、後述の普通充電器接続回路27が接続された端子24cに接続した第2状態(
図6に示す状態)と、端子24aを、端子24b及び端子24cのいずれにも接続しない第3状態(
図7に示す状態)とに切り換え可能になっている。
【0039】
第3スイッチ25は、昇圧回路21の出力側が接続された端子25aを、第1電力供給回路8及びバイパス回路22と接続された端子25bに対して非接続にした開状態(
図1、
図5及び
図7に示す状態)と、端子25aを端子25bに接続した閉状態(
図4及び
図6に示す状態)とに切り換え可能になっている。
【0040】
図1に示すように、第1スイッチ23が上記第1状態にありかつ第2スイッチ24が上記第1状態にありかつ第3スイッチ25が上記開状態にあるとき、第2電力供給回路20は、バイパス回路22を介してエネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5に電力を供給可能な第1電力供給可能状態となる。この第1電力供給可能状態では、エネルギー電池3の出力電圧がそのままの状態で、エネルギー電池3からの電力がパワー電池2又は電動モータ5に供給されることになる。
【0041】
また、
図4に示すように、第1スイッチ23が上記第2状態にありかつ第2スイッチ24が上記第1状態にありかつ第3スイッチ25が上記閉状態にあるとき、第2電力供給回路20は、昇圧回路21を介してエネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5に電力を供給可能な第2電力供給可能状態となる。この第2電力供給可能状態では、昇圧回路21によりエネルギー電池3の出力電圧が昇圧された状態で、エネルギー電池3からの電力がパワー電池2又は電動モータ5に供給されることになる。
【0042】
このように第1乃至第3スイッチ23〜25は、第2電力供給回路20を第1電力供給可能状態と第2電力供給可能状態とに切り換える切換手段を構成する。第1乃至第3スイッチ23〜25は、コントローラ12に設けられたスイッチ制御部12aによって制御されて、その状態がそれぞれ切り換えられて、第2電力供給回路20を第1電力供給可能状態と第2電力供給可能状態とに切り換える。コントローラ12は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。コントローラ12のスイッチ制御部12aは、第1乃至第3スイッチ23〜25(切換手段)を制御する切換制御手段を構成することになる。
【0043】
図5に示すように、第1スイッチ23が上記第2状態にありかつ第2スイッチ24が上記第1状態にありかつ第3スイッチ25が上記開状態にあるとき、第2電力供給回路20は、エネルギー電池3からパワー電池2及び電動モータ5に電力を供給不能な電力供給不能状態になる。このように第1乃至第3スイッチ23〜25(切換手段)は、第2電力供給回路20を更に電力供給不能状態に切り換えることが可能になっている。
【0044】
第2電力供給回路20は、車両外部の普通充電器(家庭用電源)と接続される普通充電器接続回路27と、車両外部の急速充電器と接続される急速充電器接続回路28とを更に有している。
【0045】
普通充電器接続回路27は、第2スイッチ24の端子24cに接続されているとともに、車両の乗員によって不図示のプラグを介して普通充電器に接続される。普通充電器接続回路27が上記普通充電器と接続されたとき(当該接続により不図示のスイッチがONになったとき)に、コントローラ12のスイッチ制御部12aによって、第1スイッチ23が上記第1状態とされかつ第2スイッチ24が上記第2状態とされかつ第3スイッチ25が上記閉状態とされるようになっている。これにより、
図6に示すように、第2電力供給回路20は、上記普通充電器により普通充電器接続回路27及び昇圧回路25を介してパワー電池2及びエネルギー電池3を充電可能な普通充電可能状態となる。
【0046】
上記普通充電器によりパワー電池2やエネルギー電池3を充電しようとすると、昇圧回路が必要になるが、本実施形態では、第2電力供給回路20の昇圧回路21を利用して行うことができ、これにより、普通充電のために別途に昇圧回路を設ける必要がない。また、本実施形態では、上記普通充電器によりパワー電池2及びエネルギー電池3を同時に充電することができる。
【0047】
また、急速充電器接続回路28は、第3スイッチ25の端子25b(つまり第1電力供給回路8及びバイパス回路22)に接続されているとともに、車両の乗員によって不図示のプラグを介して急速充電器に接続される。この急速充電器は、自動車販売店やコンビニエンスストア、高速道路のパーキングエリア等に設置された、普通充電器よりも高電圧(400V程度)の充電器である。急速充電器接続回路28が上記急速充電器と接続されたとき(当該接続により不図示のスイッチがONになったとき)に、コントローラ12のスイッチ制御部12aによって、第1スイッチ23が上記第1状態とされかつ第2スイッチ24が上記第3状態とされかつ第3スイッチ25が上記開状態とされるようになっている。これにより、
図7に示すように、第2電力供給回路20は、上記急速充電器により急速充電器接続回路28を介してパワー電池2及びエネルギー電池3を充電可能な急速充電可能状態となる。本実施形態では、上記普通充電器による普通充電時と同様に、急速充電時においても、上記急速充電器によりパワー電池2及びエネルギー電池3を同時に充電することができる。
【0048】
このように第1乃至第3スイッチ23〜25(切換手段)は、第2電力供給回路20を更に上記普通充電可能状態及び上記急速充電可能状態に切り換えることが可能になっており、コントローラ12のスイッチ制御部12aは、普通充電器接続回路27が上記普通充電器と接続されたときには、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記普通充電可能状態にするとともに、急速充電器接続回路28が上記急速充電器と接続されたときには、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記急速充電可能状態にする。
【0049】
コントローラ12には、パワー電池2に出入りする電流及びパワー電池2の電圧を検出するP電池電流・電圧センサ16、エネルギー電池3に出入りする電流及びエネルギー電池3の電圧を検出するE電池電流・電圧センサ17、及び、エネルギー電池3の温度を検出するE電池温度センサ18からの情報が入力されるようになっている。
【0050】
そして、コントローラ12に設けられた電圧判定部12bが、P電池電流・電圧センサ16及びE電池電流・電圧センサ17からの情報に基づいて、エネルギー電池3の出力電圧からパワー電池2の出力電圧を引いた値である電圧差が、所定値よりも大きいか否かを判定する。この所定値は、0乃至0よりも僅かに大きい値であって、エネルギー電池3の出力電圧がパワー電池2の出力電圧よりも確実に大きいか否かを判定するために設定されたものである。P電池電流・電圧センサ16、E電池電流・電圧センサ17及びコントローラ12の電圧判定部12bは、上記電圧差が上記所定値よりも大きいか否かを判定する電圧判定手段を構成することになる。
【0051】
パワー電池2の出力電圧Vpは、パワー電池2の内部抵抗をRp、パワー電池2の出力直前の開放電圧をVop、パワー電池2の出力電流をIpとすると、
Vp=Vop−Rp・Ip
となる。
【0052】
エネルギー電池3の出力電圧Veは、エネルギー電池3の内部抵抗をRe、エネルギー電池3の出力直前の開放電圧をVoe、エネルギー電池3の出力電流をIeとすると、
Ve=Voe−Re・Ie
となる。
【0053】
エネルギー電池3の出力電圧Veがパワー電池2の出力電圧Vpよりも大きいか否かという判定(ここでは、上記所定値を0とする)は、
Voe−Re・Ie>Vop−Rp・Ip…(3)
を満たすか否かという判定に置き換えることができる。
【0054】
上記式(3)の不等式を変形して整理すると、
Ip>(Vop−Voe+Re・I)/(Rp+Re)…(4)
となる。ここで、Iは、電動モータ5の要求負荷電流であり、I=Ip+Ieとなる。
【0055】
したがって、例えばパワー電池2及びエネルギー電池3の出力電圧を直接検出できないような場合には、コントローラ12の電圧判定部12bは、パワー電池2の出力電圧Vpとエネルギー電池3の出力電圧Veとを比較する代わりに、上記式(4)の不等式を満たすか否かを判定するようにしてもよい。
【0056】
上記電圧差が上記所定値よりも大きい場合には、エネルギー電池3の出力電圧を昇圧する必要はなく、バイパス回路22を介してエネルギー電池3からの電力をパワー電池2又は電動モータ5に供給すればよい。一方、上記電圧差が上記所定値よりも大きくない場合には、エネルギー電池3の出力電圧を昇圧する必要があり、昇圧回路21を介してエネルギー電池3からの電力をパワー電池2又は電動モータ5に供給する。昇圧回路21による昇圧後の電圧は、パワー電池2の出力電圧よりも大きくなる。
【0057】
そこで、コントローラ12のスイッチ制御部12aは、電圧判定部12bにより上記電圧差が上記所定値よりも大きいと判定されたときには、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記第1電力供給可能状態(
図1に示す状態)にする一方、電圧判定部12bにより上記電圧差が上記所定値よりも大きくないと判定されたときには、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記第2電力供給可能状態(
図4に示す状態)にするように構成されている。
【0058】
ここで、本実施形態では、コントローラ12に温度判定部12cが設けられており、この温度判定部12cは、E電池温度センサ18からの情報に基づいて、エネルギー電池3の温度が所定範囲内にあるか否かを判定する。この所定範囲は、これを外れた温度でエネルギー電池3からの放電を行うと、エネルギー電池3の寿命を短縮してエネルギー電池3が早期に劣化するような温度範囲である。E電池温度センサ18及びコントローラ12の温度判定部12cは、エネルギー電池3の温度が所定範囲内にあるか否かを判定する温度判定手段を構成する。
【0059】
そして、本実施形態では、スイッチ制御部12aは、温度判定部12cによりエネルギー電池3の温度が上記所定範囲内にあると判定されたときには、上記の如く、電圧判定部12bによる判定結果に応じて、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記第1又は第2電力供給可能状態にする一方、温度判定部12cによりエネルギー電池3の温度が上記所定範囲内にないと判定されたときには、エネルギー電池3の早期劣化を抑制するべく、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記電力供給不能状態(
図5に示す状態)にするように構成されている。この電力供給不能状態では、エネルギー電池3からパワー電池2及び電動モータ5への電力供給は行うことはできず、パワー電池2のみから電動モータ5に電力を供給することになる。尚、温度判定部12cによる判定結果に関係なく、電圧判定部12bによる判定結果に応じて、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記第1又は第2電力供給可能状態にするようにしてもよい。
【0060】
上記コントローラ12による、第2電力供給回路20における上記第1及び第2電力供給可能状態並びに上記電力供給不能状態の切換えに関する制御動作について、
図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0061】
最初のステップS1で、各センサ16〜18からの情報を読み込み、次のステップS2で、電圧判定部12bが、エネルギー電池3の出力電圧Veからパワー電池2の出力電圧Vpを引いた電圧差が、所定値ΔVよりも大きいか否かを判定する。
【0062】
上記ステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進んで、温度判定部12cが、エネルギー電池3の温度が所定範囲内にあるか否かを判定する。このステップS3の判定がYESであるときには、ステップS4に進んで、スイッチ制御部12aが、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記第1電力供給可能状態にし、しかる後にリターンする。
【0063】
一方、上記ステップS2の判定がNOであるときには、ステップS5に進んで、温度判定部12cが、エネルギー電池3の温度が上記所定範囲内にあるか否かを判定する。このステップS5の判定がYESであるときには、ステップS6に進んで、スイッチ制御部12aが、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記第2電力供給可能状態にし、しかる後にリターンする。
【0064】
上記ステップS3の判定がNOであるとき、及び、上記ステップS5の判定がNOであるときには、ステップS7に進んで、スイッチ制御部12aが、第1乃至第3スイッチ23〜25により第2電力供給回路20を上記電力供給不能状態にし、しかる後にリターンする。
【0065】
したがって、本実施形態では、上記電圧差が上記所定値よりも大きい場合には、バイパス回路22を介してエネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5に電力を供給することができ、エネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5への電力供給を効率良く行うことができる。一方、上記電圧差が上記所定値よりも大きくなくても、昇圧回路21を介してエネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5に電力を供給することができる。そして、電動モータ5による車両走行中であれば、パワー電池2から電動モータ5に電力が供給されるとともに、エネルギー電池3からも電動モータ5に電力が供給される。エネルギー電池3からの供給電力量(エネルギー電池3の放電電力量)は、所定量以下の一定値であり、エネルギー電池3からの電力で足りない分を、パワー電池2からの放電により対応することができる。この結果、パワー電池2からの放電を出来る限り抑制することができる。また、高速道路の長時間走行時のように停止及び減速の機会が少ない場合であっても、長距離を連続して走行することができる。一方、車両停止中であれば、エネルギー電池3からパワー電池2に電力を供給して充電することができ、パワー電池2の残容量の低下を抑制することができる。したがって、要求出力と要求走行距離の両方を満たすことができる。また、上記のようにパワー電池3は、エネルギー電池3からの電力だけでは足りない分の電力を放電する必要があるため、初期の開放電圧が略同じであっても、パワー電池2の出力電圧の方がエネルギー電池3の出力電圧よりも低くなる傾向にある。これにより、基本的には、バイパス回路22を介してエネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5に電力が供給されることになる。この結果、エネルギー電池3からパワー電池2又は電動モータ5への電力供給を出来る限り効率良く行うことができる。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態では、パワー電池2及びエネルギー電池3を共にリチウムイオン二次電池としたが、パワー電池2及びエネルギー電池3を互いに異なる種類の電池としてもよい。また、エネルギー電池3が一次電池であってもよく、例えば、亜鉛空気電池のような金属空気電池や固体電池を用いることも可能である。
【0068】
エネルギー電池3が一次電池である場合、普通充電器又は急速充電器による充電時に、パワー電池2のみを充電すればよいので、この場合の普通充電可能状態及び急速充電可能状態は、上記実施形態の普通充電可能状態及び急速充電可能状態から、第1スイッチ23を上記第2状態に変更したものとすればよい。また、一次電池であるエネルギー電池3を交換する場合、複数の電池モジュール30のうち放電不能になった電池モジュール30のみを交換するようにすればよい。この交換は、当該電池モジュール30の全体の交換であってもよく、金属空気電池の場合には、電極のみの交換であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、本発明の車両用電源制御装置1を電動車両(電気自動車)に適用したが、これ以外の車両、例えばハイブリッド車両に適用することも可能である。
【0070】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。