【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様の球帯状シール体は、環状滑り面を有しており、少なくとも耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなるシール本体を有しており、ここで、シール本体には、補強材が15重量%から80重量%で、耐熱材が20重量%から85重量%の割合で含まれており、シール本体における耐熱材が1.20g/cm
3から2.00g/cm
3の密度を有している。
【0006】
耐熱材と金網からなる補強材とが混在一体化されてなるシール本体に、補強材が80重量%よりも多く、耐熱材が20重量%よりも少ない割合で含まれていると、多くの場合、補強材の周りに生じる多数の微小通路(隙間)に対する耐熱材による封止(充填)が完全になされなくなる結果、排気ガスの初期漏洩を惹起し、仮に微小通路に対する封止が偶々完全になされていたとしても、高温下における耐熱材の酸化消耗等により斯かる封止が早期に消失して、而して早期の排気ガスの漏洩が生じる一方、補強材が15重量%よりも少なく、耐熱材が85重量%よりも多い割合で含まれていると、環状滑り面及び環状滑り面の近傍において補強材が極めて少なくなり環状滑り面及び環状滑り面の近傍における耐熱材に対する補強が好ましくなされなくなり、耐熱材の剥離が顕著に生じる上に、補強材による補強効果が期待し難くなる。
【0007】
また上記のシール本体では、製造段階で強く圧縮されていなく耐熱材が1.20g/cm
3よりも小さい密度であると、長期の使用において斯かる耐熱材に微小空洞が生じてこれが全体的に広がる結果、排気ガスの漏洩を惹起する一方、製造段階で極めて強く圧縮されて耐熱材が2.00g/cm
3よりも大きい密度であると、相手材への適宜な耐熱材の移着が殆ど生じなくなり、相手材との間における動摩擦係数と静摩擦係数との差が極めて大きくなる結果、摺動に際して異音が生じ易くなる。
【0008】
上記の観点から、第一の態様の球帯状シール体は、シール本体自体を介する排気ガスの漏出がなく、相手材との間における摺動に際して異音発生のないものとなり、安定したシール特性を有したものとなる。
【0009】
本発明の第二の態様の球帯状シール体は、環状滑り面を有しており、少なくとも耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなるシール本体と、このシール本体の外周面に一体的に形成されていると共に少なくとも潤滑材からなる被覆層とを有しており、この被覆層の露出面により環状滑り面が構成されており、ここで、シール本体及び被覆層には、補強材が15重量%から80重量%で、耐熱材及び潤滑材が20重量%から85重量%の割合で含まれており、シール本体及び被覆層における耐熱材及び潤滑材が1.20g/cm
3から2.00g/cm
3の密度を有している。
【0010】
第二の態様の球帯状シール体は、被覆層の露出面により構成された環状滑り面を有しているために、斯かる環状滑り面で接触する相手材との更なる滑らかな摺動を確保でき、しかも、第一の態様の球帯状シール体と同様に、シール本体自体を介する排気ガスの漏出のない、相手材との間における摺動に際して異音発生のないものとなる。
【0011】
本発明の第三の態様の球帯状シール体は、環状滑り面を有しており、少なくとも耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて耐熱材と補強材とが混在一体化されてなるシール本体と、このシール本体の外周面に一体的に形成されていると共に少なくとも潤滑材及び耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に潤滑材及び耐熱材が充填されて当該潤滑材及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなる被覆層とを有しており、補強材からなる面と潤滑材からなる面とが混在した被覆層の露出面により環状滑り面が構成されており、ここで、シール本体及び被覆層には、補強材が15重量%から80重量%で、耐熱材及び潤滑材が20重量%から85重量%の割合で含まれており、シール本体及び被覆層における耐熱材及び潤滑材が1.20g/cm
3から2.00g/cm
3の密度を有している。
【0012】
第三の態様の球帯状シール体は、被覆層の補強材からなる面と潤滑材からなる面とが混在した露出面により構成された環状滑り面を有しているために、第二の態様の球帯状シール体と同様に、環状滑り面と接触する相手材との更なる滑らかな摺動を確保でき、また、露出面における潤滑材からなる面を補強材からなる面でもって保持し得る上に、環状滑り面からの潤滑材の相手材への移着と相手材へ移着した潤滑材の掻き取りとを適宜に行い得る結果、長期に亘る滑らかな摺動を確保でき、しかも、第一の態様の球帯状シール体と同様に、シール本体自体を介する排気ガスの漏出のない、相手材との間における摺動に際して異音発生のないものとなる。
【0013】
本発明の第四の態様の球帯状シール体は、環状滑り面を有しており、少なくとも耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて耐熱材と補強材とが混在一体化されてなるシール本体と、このシール本体の外周面に一体的に形成されていると共に少なくとも潤滑材及び耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に潤滑材及び耐熱材が充填されて当該潤滑材及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなる被覆層とを有しており、補強材からなる面と潤滑材からなる面とが混在した被覆層の露出面により環状滑り面が構成されており、ここで、環状滑り面から1mmまでの球帯状シール体の環状の表層部分には、補強材が60重量%から75重量%で、耐熱材及び潤滑材が25重量%から40重量%の割合で含まれており、当該環状の表層部分における補強材、耐熱材及び潤滑材が3.00g/cm
3から5.00g/cm
3の密度を有しており、環状の表層部分を除く球帯状シール体の他の環状の部分には、補強材が20重量%から70重量%で、耐熱材が30重量%から80重量%の割合で含まれている。
【0014】
球帯状シール体において潤滑材及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなる被覆層の厚みは、その摩耗に起因する耐用年数の観点から経験的に1mm以内であればよく、したがって、環状滑り面から1mmまでの球帯状シール体の環状の表層部分に、補強材が60重量%よりも少なく、耐熱材及び潤滑材が40重量%よりも多い割合で含まれていると、当該表層部分での補強材の効果を十分に得ることが困難になり、該表層部分での剥離、脱落が生じ易くなる一方、補強材が75重量%よりも多く、耐熱材及び潤滑材が25重量%よりも少ない割合で含まれていると、補強材の周りに生じる多数の微小通路(隙間)に対する耐熱材による封止(充填)が完全になされなくなる結果、該表層部分を介する排気ガスの初期漏洩を惹起し、仮に微小通路に対する封止が偶々完全になされていたとしても、高温下における耐熱材の酸化消耗等により斯かる封止が早期に消失して、而して早期の排気ガスの漏洩が生じ得る。
【0015】
また、環状の表層部分における補強材、耐熱材及び潤滑材が3.00g/cm
3よりも小さい密度を有していると、製造段階で強く圧縮されていないことになり、長期の使用において斯かる環状の表層部分に微小空洞が生じてこれが全体的に広がる結果、排気ガスの漏洩を惹起する一方、補強材、耐熱材及び潤滑材が5.00g/cm
3よりも大きい密度を有していると、製造段階で極めて強く圧縮されていることになり、相手材への適宜な耐熱材の移着が殆ど生じなくなり、相手材との間における動摩擦係数と静摩擦係数との差が極めて大きくなる結果、摺動に際して異音が生じ易くなる。
【0016】
更に、環状の表層部分を除く球帯状シール体の他の環状の部分で、補強材が20重量%よりも少なく、耐熱材が80重量%よりも多い割合で含まれていると、当該他の環状の部分における耐熱材に対する補強が好ましくなされなくなり、耐熱材の剥離が顕著に生じる上に、補強材による補強効果が期待し難くなる一方、補強材が70重量%よりも多く、耐熱材が30重量%よりも少ない割合で含まれていると、多くの場合、補強材の周りに生じる多数の微小通路(隙間)に対する耐熱材による封止(充填)が完全になされなくなる結果、排気ガスの初期漏洩を惹起し、仮に微小通路に対する封止が偶々完全になされていたとしても、高温下における耐熱材の酸化消耗等により斯かる封止が早期に消失して、而して早期の排気ガスの漏洩が生じるようになる。
【0017】
したがって、第四の態様の球帯状シール体によれば、環状の表層部分に、補強材が60重量%から75重量%で、耐熱材及び潤滑材が25重量%から40重量%の割合で含まれており、当該環状の表層部分における補強材、耐熱材及び潤滑材が3.00g/cm
3から5.00g/cm
3の密度を有しているために、当該表層部分の剥離、脱落が生じ難く、該表層部分を介する排気ガスの初期漏洩がない上に、早期はいうに及ばず長期においても排気ガスの漏洩を生じないようにでき、しかも、相手材との間における摺動に際して異音を生じないようにできる。
【0018】
また第四の態様の球帯状シール体によれば、環状の表層部分を除く球帯状シール体の他の環状の部分でも、補強材が20重量%から70重量%で、耐熱材が30重量%から80重量%の割合で含まれているために、他の環状の部分を介する排気ガスの漏洩を確実に防止できる上に、耐熱材に対する補強が好ましくなされて、しかも、耐熱材の剥離を好ましく防止できる。
【0019】
本発明の第五の態様の球帯状シール体は、環状滑り面を有しており、少なくとも耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて耐熱材と補強材とが混在一体化されてなるシール本体と、このシール本体の外周面に一体的に形成されていると共に少なくとも潤滑材及び耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に潤滑材及び耐熱材が充填されて当該潤滑材及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなる被覆層とを有しており、補強材からなる面と潤滑材からなる面とが混在した被覆層の露出面により環状滑り面が構成されており、ここで、被覆層には、補強材が60重量%から75重量%で、潤滑材及び耐熱材が25重量%から40重量%の割合で含まれている。
【0020】
第五の態様の球帯状シール体によれば、第四の態様の球帯状シール体と同様に、被覆層には補強材が60重量%から75重量%で、耐熱材及び潤滑材が25重量%から40重量%の割合で含まれているために、当該被覆層の剥離、脱落が生じ難く、該被覆層を介する排気ガスの初期及び早期の漏洩を確実に防止できる。
【0021】
本発明の第六の態様の球帯状シール体は、環状滑り面を有しており、少なくとも耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて耐熱材と補強材とが混在一体化されてなるシール本体と、このシール本体の外周面に一体的に形成されていると共に少なくとも潤滑材及び耐熱材と金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に潤滑材及び耐熱材が充填されて当該潤滑材及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなる被覆層とを有しており、補強材からなる面と潤滑材からなる面とが混在した被覆層の露出面により環状滑り面が構成されており、ここで、環状滑り面において、補強材からなる面が0.5%から30%で、潤滑材からなる面が70%から99.5%の面積割合をもって露出している。
【0022】
環状滑り面において、補強材からなる面が0.5%よりも少なく、潤滑材からなる面が99.5%よりも多い面積割合をもって露出していると、環状滑り面は、殆ど潤滑材からなる面で占められ、潤滑材からなる面の剥離、脱落が生じ易くなると共に、環状滑り面からの潤滑材の相手材への移着が必要以上に多くなるにも拘らず相手材へ移着した潤滑材の掻き取りがそれ程なされなくなる一方、補強材からなる面が30%よりも多く露出し、潤滑材からなる面が70%よりも少ない露出であると、潤滑材による効果が少なくなり、環状滑り面に摺動自在に接触して相対的に摺動する相手材の摩耗が顕著となり、長期の使用によって円滑な摺動を得られなくなる。
【0023】
したがって、第六の態様の球帯状シール体によれば、環状滑り面での潤滑材からなる面の剥離、脱落を防ぎ得て、しかも、長期の使用においても相手材との間での円滑な摺動を得ることができる上に、異音の発生をなくし得る。
【0024】
上記の各態様の球帯状シール体において、耐熱体は、本発明の第七の態様の球帯状シール体のように、好ましくは膨張黒鉛を含んでいるが、本発明は、これに限定されず、例えば膨張黒鉛に加えて又はこれに代えて、マイカ及びアスベストのうちの一種又は二種以上から選択されたものを具備していてもよい。
【0025】
また、上記の各態様の球帯状シール体において、環状滑り面は、好ましくは本発明の第八の態様の球帯状シール体のように、部分凸球面、部分凹球面又は截頭円錐面を含んでおり、斯かる部分凸球面、部分凹球面又は截頭円錐面で球帯状シール体は相手材に摺動自在に接触するようになっており、更に、上記の各態様において、球帯状シール体は、本発明の第九の態様の球帯状シール体のように、環状滑り面を含んだ外周面を具備していても、本発明の第十の態様の球帯状シール体のように、環状滑り面を含んだ内周面を具備していてもよい。
【0026】
なお、球帯状シール体の環状滑り面は、全体的に相手材に摺動自在に接触するようになっていてもよいが、これに代えて、部分的に帯状に相手材に摺動自在に接触するようになっていてもよく、また、環状滑り面は、一個の部分凸球面、部分凹球面又は截頭円錐面を含んでいるものに限定されず、曲率中心位置若しくは曲率半径が異なる2個以上の部分凸球面若しくは部分凹球面又は傾斜の程度が異なる截頭円錐面を含んでいてもよい。
【0027】
上記のいずれか態様の球帯状シール体を製造するための本発明の方法は、耐熱材を含んだ耐熱シート部材と金網からなる補強シート部材とを準備する工程と、補強シート部材を耐熱シート部材に重ね合わせたのち、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を形成する工程と、筒状母材を金型のコア外周面に挿入し、金型内において筒状母材をコア軸方向に圧縮成形する工程とを具備している。
【0028】
また上記の第一から第九のいずれかの態様の球帯状シール体を製造するための本発明の方法は、耐熱材を含んだ補強シート部材を金網からなる耐熱シート部材に重ね合わせたのち、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を形成する工程と、耐熱材を含んだ別の耐熱シート部材と当該別の耐熱シート部材の一方の表面に被着された潤滑材を含んだ潤滑層とこの潤滑層に配された金網からなる別の補強シート部材とからなる被覆層形成部材を潤滑層の面を外側にして筒状母材の外周面に捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、この予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程とを具備している。
【0029】
更に上記の第一から第八及び第十のいずれかの態様の球帯状シール体を製造するための本発明の方法は、耐熱シート部材と当該耐熱シート部材の一方の表面に被着された潤滑材を含んだ潤滑層とこの潤滑層に配された金網からなる補強シート部材とからなる被覆層形成部材を潤滑層の面を内側にして捲回して筒状母材を形成する工程と、金網からなる別の補強シート部材を耐熱材を含んだ別の耐熱シート部材に重ね合わせたのち、この重合体を筒状母材の外周面に捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、この予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程とを具備している。