(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル系共重合体は、分子量のピーク値を境に高分子量域と低分子量域とに分割した場合、前記高分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(H)に対する前記低分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(L)の比((L)/(H)×100%)が80%〜120%の範囲である請求項1に記載の樹脂組成物。
前記樹脂組成物における前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の含量は5〜60質量%であり、前記樹脂組成物における前記ポリカーボネート系樹脂(B)の含量は40〜95質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜7に提案されている樹脂組成物は、成形品に十分な表面硬度を与えることと透明性を与えることとを両立するのが困難であるか、あるいは成形条件が非常に狭く、限られた条件でのみ、表面硬度及び透明性の物性を両立可能であった。
【0011】
特に、成形温度が高温になるに伴い、さらに射出成形の場合は射出速度が高速になるに伴い、成形体の透明性が低下する傾向にある。成形温度を高温にすることや射出速度を高速にすることは、生産性の向上や薄物の成形体の製造のために、重要な要素となる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、広い成形条件下で表面硬度及び透明性に優れた成形体を成形可能な樹脂組成物を提供することにある。また、本発明は、上記樹脂組成物を含む成形品及び上記樹脂組成物の構成要素である(メタ)アクリル系共重合体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の骨格を有する(メタ)アクリレート単位を含有する樹脂組成物が、表面硬度及び透明性に優れた成形体を、広い成形条件下において製造可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、例えば次の通りである。
【0014】
[1] (A)下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)5〜85質量%及びメチル(メタ)アクリレート単位(b)15〜95質量%を含有する(メタ)アクリル系共重合体と、
(B)ポリカーボネート系樹脂と
を含む樹脂組成物:
【化1】
(式(1)中、
Xは、単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO
2−及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、R
2及びR
3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基又はフェニルフェニル基であり;R
2及びR
3は、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
R
1は、水素原子又はメチル基であり;
R
4及びR
5は、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基又はフェニルフェニル基であり;
mは、1〜10の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である。)。
[1−a] Xは、単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−SO−、または−SO
2−であり;
R
1は、水素原子又はメチル基であり;
R
4及びR
5は、各々独立に、メチル基、メトキシ基、クロロ基、ブロモ基又はフェニル基であり;
mは、1〜3の整数であり;
pは、0〜1の整数であり;
qは、0〜2の整数である、
[1]に記載の樹脂組成物。
[1−b] 前記(メタ)アクリレート単位(a)の前記(メタ)アクリル系共重合体における含量が5〜80質量%であり、前記メチル(メタ)アクリレート単位(b)の前記(メタ)アクリル系共重合体における含量が20〜95質量%である[1]または[1−a]に記載の樹脂組成物。
[2] 前記(メタ)アクリル系共重合体は、分子量のピーク値を境に高分子量域と低分子量域とに分割した場合、前記高分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(H)に対する前記低分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(L)の比((L)/(H)×100%)が80%〜120%の範囲である[1]〜[1−b]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[3] 前記(メタ)アクリル系共重合体の質量平均分子量が3,000〜30,000である[1]〜[2]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[4] 前記一般式(1)において、mが1〜3の整数である[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記一般式(1)において、Xが単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−SO−、または−SO
2−である[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記一般式(1)において、p及びqが0である[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記樹脂組成物における前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の含量は5〜60質量%であり、前記樹脂組成物における前記ポリカーボネート系樹脂(B)の含量は40〜95質量%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)5〜85質量%及びメチル(メタ)アクリレート単位(b)15〜95質量%を含有する(メタ)アクリル系共重合体:
【化2】
(式(1)中、
Xは、単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO
2−及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり(ここで、R
2及びR
3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基又はフェニルフェニル基であり;R
2及びR
3は、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい);
R
1は、水素原子又はメチル基であり;
R
4及びR
5は、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基又はフェニルフェニル基であり;
mは、1〜10の整数であり;
pは、0〜4の整数であり;
qは、0〜5の整数である。)。
[8−a] 前記(メタ)アクリル系共重合体は、分子量のピーク値を境に高分子量域と低分子量域とに分割した場合、前記高分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(H)に対する前記低分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における前記(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(L)の比((L)/(H)×100%)が80%〜120%の範囲である[8]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8−b] 前記(メタ)アクリル系共重合体の質量平均分子量が3,000〜30,000である[8]又は[8−a]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8−c] 前記一般式(1)において、mが1〜3の整数である[8]〜[8−b]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8−d] 前記一般式(1)において、Xが単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−SO−、または−SO
2−である[8]〜[8−c]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8−e] 前記一般式(1)において、p及びqが0である[8]〜[8−d]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8−f] 前記(メタ)アクリル系共重合体とポリカーボネート系樹脂(粘度平均分子量:22,000)とを30/70(質量%)の割合で溶融混練し、射出温度300℃、射出速度300m/sec、金型温度80℃で射出成形することにより得られる厚さ1.5mmの平板試験片のヘイズが12%以下である[8]〜[8−e]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[8−g] 前記平板試験片の鉛筆硬度がHB以上である[8−f]に記載の(メタ)アクリル系共重合体。
[9] [1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、広い成形条件下で表面硬度及び透明性に優れた成形体を成形可能な樹脂組成物を提供することができる。特に、該樹脂組成物は高速での射出成形が可能であるため生産性が向上する。また、本発明によると、上記樹脂組成物を含む成形品及び上記樹脂組成物の構成要素である(メタ)アクリル系共重合体を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、
(A)後述する一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)5〜85質量%及びメチル(メタ)アクリレート単位(b)15〜95質量%を含有する(メタ)アクリル系共重合体と、
(B)ポリカーボネート系樹脂と
を含む。
【0017】
本願発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂が本来有する優れた透明性を維持しつつ、(メタ)アクリル系共重合体を含有することで優れた表面硬度を有する成形体を製造することができる。
上述したように、先行技術のポリカーボネート系樹脂とその他の樹脂とを組み合わせた樹脂組成物においては、成形温度が高温になるに伴い(約280℃以上)、さらに射出成形の場合は射出速度が高速になるに伴い(約150mm/sec以上)、成形体の透明性が低下する傾向にあった。しかしながら、本発明の実施形態に係る樹脂組成物を高温条件下で成形した場合であっても、さらに射出成形の場合は射出速度が高速であっても、透明性に優れた成形体を得ることができる。
【0018】
上記のように透明性の高い成形品を得られる理由は定かではないが、後述する一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)において、エステル部分のベンゼン環が成形体の透明性を向上させる作用を有するものと考えられる。特に、ベンゼン環を2つ以上有する(メタ)アクリレート単位は、ポリカーボネート系樹脂(B)との相溶性に優れている結果、広い範囲の成形条件において成形体の透明性を維持できるものと考えられる。
【0019】
また、本発明の実施形態に係る樹脂組成物を構成する(メタ)アクリル系共重合体(A)においては、後述する一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)がほぼ均一に導入されており、この現象は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量にかかわらず生じている(後述する実施例を参照されたい)。このようにポリカーボネート系樹脂(B)との相溶性に優れた構成単位が(メタ)アクリル系共重合体(A)中に均一に存在する結果、(メタ)アクリル系共重合体(A)をポリカーボネート系樹脂(B)と混合した場合にもヘイズを小さく抑えることができ、透明性の高い成形品を得られるものと推定される。
【0020】
一方、本発明の実施形態に係る樹脂組成物が優れた表面硬度を有するのは、表面硬度の点で優れているメチル(メタ)アクリレート単位(b)を、一定量配合していることに由来すると考えられる。この効果も、その成形条件にかかわらず得られるものである。従って、本発明の実施形態に係る樹脂組成物によると、広い条件下で、高い透明性と高い表面硬度とを両立した成形品を得ることができる。広い条件下で良好な成形品を得られる結果、効率よく安価に成形品を製造することが可能になる。本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、光メディア用材料等の透明性が必要とされる用途や、筐体等の発色性が必要とされる用途等、幅広い分野に用いることができる。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物に含まれる各成分について、順に説明する。
1.(メタ)アクリル系共重合体(A)
本発明の実施形態に係る樹脂組成物の構成要素である(メタ)アクリル系共重合体(A)は、後述する一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)及びメチル(メタ)アクリレート単位(b)を含有する。以下、各々について説明する。
【0022】
(1)(メタ)アクリレート単位(a)
(メタ)アクリレート単位(a)は、下記一般式(1)で表される。なお、本明細書において、アクリレートとメタクリレートとをあわせて(メタ)アクリレートと称する。
【0024】
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)は、エステル部分にベンゼン環を2つ以上有し、かつエステル部分の酸素原子とベンゼン環が直接結合していない点に構造上の特徴を有する。(メタ)アクリレート単位(a)は、ポリカーボネート系樹脂(B)との相溶性に優れているため、得られる成形体の透明性向上に寄与する。
【0025】
上記一般式(1)において、R
1は、水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0026】
Xは、単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−S−、−SO−、−SO
2−及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される二価の基であり、R
2及びR
3は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、フェニル基又はフェニルフェニル基である。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0027】
Xは、単結合、−C(R
2)(R
3)−、−C(=O)−、−SO−、または−SO
2−が好ましく、単結合がより好ましい。R
2及びR
3は、好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、フェニル基及びフェニルフェニル基から各々独立に選択され、より好ましくは水素原子である。
R
2及びR
3は、相互に連結して、これらが結合する炭素原子と一緒になって炭素数3〜10の環状アルキル基を形成していてもよい。
【0028】
R
4及びR
5は、各々独立に、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基又はフェニルフェニル基である。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、炭素数3〜10の分岐状アルキル基、炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルコキシ基、炭素数3〜10の分岐状アルコキシ基、炭素数3〜10の環状アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
R
4及びR
5は、好ましくはメチル基、メトキシ基、クロロ基、ブロモ基及びフェニル基から各々独立に選択され、より好ましくはフェニル基である。
【0029】
mは、1〜10の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1である。
【0030】
pは、0〜4の整数であり、好ましくは0〜1の整数であり、より好ましくは0である。
【0031】
qは、0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
【0032】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、3−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、2−ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、4−フェネチルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェネチルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェネチルベンジル(メタ)アクリレート、4−フェネチルフェネチル(メタ)アクリレート、3−フェネチルフェネチル(メタ)アクリレート、2−フェネチルフェネチル(メタ)アクリレート、4−(4−メチルフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(4−メチルフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(4−メチルフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(4−メトキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(4−メトキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(4−ブロモフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(4−ブロモフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(4−ブロモフェニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−ベンゾイルベンジル(メタ)アクリレート、3−ベンゾイルベンジル(メタ)アクリレート、2−ベンゾイルベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルスルフィニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(フェニルスルフィニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルスルフィニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルスルフォニル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−((フェノキシカルボニル)オキシ)ベンジル(メタ)アクリレート、3−((フェノキシカルボニル)オキシ)ベンジル(メタ)アクリレート、2−((フェノキシカルボニル)オキシ)ベンジル(メタ)アクリレート、4−(((メタ)アクリロキシ)メチル)フェニルベンゾエート、3−(((メタ)アクリロキシ)メチル)フェニルベンゾエート、2−(((メタ)アクリロキシ)メチル)フェニルベンゾエート、フェニル4−(((メタ)アクリロキシ)メチル)ベンゾエート、フェニル3−(((メタ)アクリロキシ)メチル)ベンゾエート、フェニル2−(((メタ)アクリロキシ)メチル)ベンゾエート、4−(1−フェニルシクロヘキシル)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(1−フェニルシクロヘキシル)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(1−フェニルシクロヘキシル)ベンジル(メタ)アクリレート、4−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、3−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4−(フェニルチオ)ベンジル(メタ)アクリレート、3−(フェニルチオ)ベンジル(メタ)アクリレート、2−(フェニルチオ)ベンジル(メタ)アクリレート及び3−メチル−4−(2−メチルフェニル)ベンジルメタクリレートを挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、好ましくは4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、4−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレート、2−ビフェニルベンジル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、3−フェニルベンジル(メタ)アクリレート、及び2−フェニルベンジル(メタ)アクリレートである。
【0033】
(2)メチル(メタ)アクリレート単位(b)
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、さらに、メチル(メタ)アクリレート単位(b)を含む。メチル(メタ)アクリレート単位(b)を構成する単量体は、メチル(メタ)アクリレートである。なお、本明細書において、メチルアクリレートとメチルメタクリレートをあわせてメチル(メタ)アクリレートと称する。メチル(メタ)アクリレート単位(b)としては、公知の単量体を使用することができる。メチル(メタ)アクリレート単位(b)は、ポリカーボネート系樹脂(B)に対する分散性が優れるため、成形体の表面硬度を向上させる作用を有する。
メチル(メタ)アクリレート単位(b)は、メチルメタクリレートであるか、あるいはメチルメタクリレートとメチルアクリレートとの組み合わせであることが好ましい。
【0034】
続いて、(メタ)アクリル系共重合体(A)について説明する。
(メタ)アクリル系共重合体(A)には、該共重合体に対して一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)が5〜85質量%の割合で含まれ、メチル(メタ)アクリレート単位(b)が15〜95質量%の割合で含まれる。(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリレート単位(a)の割合が5質量%以上であることが、透明性の観点から好ましい。一方、エステル部分にベンゼン環を有する(メタ)アクリレート単位(a)を共重合すると、(メタ)アクリル系共重合体(A)の成形体は、鉛筆硬度をはじめとする表面硬度が低下する傾向にある。しかし、メチル(メタ)アクリレート単位(b)の割合が15質量%以上であれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)の成形体の表面硬度は十分な値となる。従って、この(メタ)アクリル系共重合体(A)と表面硬度が比較的低いポリカーボネート系樹脂(B)とを溶融混練して得られる樹脂組成物を成形することにより、ポリカーボネート系樹脂(B)のみの場合よりも優れた表面硬度を有する成形体を得ることができる。
【0035】
(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリレート単位(a)の割合は、5〜80質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるメチル(メタ)アクリレート単位(b)の割合は、20〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。
【0036】
また、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その重合方法および分子量にかかわらず、(メタ)アクリレート単位(a)がほぼ均一に導入されるという特性を有することが、本発明者らによって見出された。 (メタ)アクリル系共重合体(A)は、分子量のピーク値を境に高分子量域と低分子量域に分割した場合、高分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(H)に対する低分子量域の(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(L)の比((L)/(H)×100%)が、100%に近い値となる。この値は、80%〜120%の範囲であることが好ましく、85%〜115%の範囲がより好ましい。上記値が100%に近いということは、(メタ)アクリル系共重合体(A)の低分子量域と高分子量域に、それぞれ同程度の(メタ)アクリレート単位(a)が導入されていることを意味する。
【0037】
上述したように、(メタ)アクリレート単位(a)が、(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリカーボネート系樹脂(B)との間の相溶性の向上に寄与すると考えられる。従って、(メタ)アクリル系共重合体(A)に(メタ)アクリレート単位(a)が均一に存在することで、(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリカーボネート系樹脂(B)との間の相溶性をさらに向上させることができ、得られる成形体の透明性向上につながると推定される。
なお、高分子量域における(メタ)アクリレート単位(a)の割合(H)と低分子量域における(メタ)アクリレート単位(a)の割合(L)の測定方法については、後述する実施例を参照されたい。
【0038】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量は、3,000〜30,000が好ましく、5,000〜20,000がより好ましく、8,000〜14,000が特に好ましい。質量平均分子量が3,000〜30,000である場合、ポリカーボネート系樹脂(B)との相溶性が良好であり、成形体の透明性の観点から好ましいと共に、表面硬度の観点からも好ましい。質量平均分子量が30,000以上の場合、成形時のせん断などにおいて、(メタ)アクリル系共重合体(A)が凝集しやすくなる結果、得られる成形体の透明性が低下しやすくなる傾向がある。質量平均分子量が3,000以下の場合、得られる成形体の耐衝撃性や鉛筆硬度といった機械物性の低下を伴う傾向がある。
なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(M w/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0039】
上記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、必要に応じて、さらにその他の単量体を共重合して製造されてもよい(以下、(c)成分とする)。(c)成分は、樹脂組成物の特性に悪影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリレート;エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸系ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド系単量体;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレート等の架橋剤を挙げることができる。これらのうち、好ましくはメタクリレート、アクリレート、およびシアン化ビニル単量体であり、(メタ)アクリル系共重合体(A)の熱分解を抑制するという観点から、より好ましくはアクリレートである。これらの単量体は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(c)成分のその他の単量体を含有する場合、(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して0.1〜10質量%の量で含まれることが好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。最も好ましいのは、(メタ)アクリレート単位(a)5〜79.9質量%、メチル(メタ)アクリレート単位(b)20〜94.9質量%、及びその他の成分(c)0.1〜10質量%を含有する(メタ)アクリル系共重合体(A)である。
【0041】
(c)成分の含有率が0.1質量%以上であれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)の熱分解を抑制することができ、10質量%以下であれば、成形体の表面硬度および透明性に悪影響を与えない。
【0042】
上記(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るための重合方法は、特に限定されないが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の公知の方法を使用することができる。好ましくは懸濁重合法や塊状重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。また、重合に必要な添加剤等は必要に応じて適宜添加することができ、添加剤としては、例えば、重合開始剤、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤が挙げられる。
【0043】
重合温度は、(メタ)アクリレートモノマー組成、重合開始剤等の添加剤によって変わるが、50℃〜150℃が好ましく、70℃〜130℃がより好ましい。なお、重合は多段階で昇温して行ってもかまわない。
【0044】
重合時間は、重合方法、(メタ)アクリレートモノマー組成、重合開始剤等の添加剤によって変わるが、目的の温度で1時間〜8時間が好ましく、2時間〜6時間がより好ましい。なお、目的の温度に昇温するまでの時間が前記重合時間にさらに加わる。
【0045】
反応圧力は、重合方法、(メタ)アクリレートモノマー組成等によって変わるが、常圧〜3MPaで重合するのが好ましく、常圧〜1MPaで重合するのがより好ましい。
【0046】
本発明の1つの実施形態によれば、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)5〜85質量%及びメチル(メタ)アクリレート単位(b)15〜95質量%を含有する(メタ)アクリル系共重合体が提供される:
【化4】
上記一般式(1)における各基の定義、ならびに(メタ)アクリレート単位(a)及びメチル(メタ)アクリレート単位(b)の詳細については、上記で説明した通りである。また、この(メタ)アクリル系共重合体の有用性についても、上記で説明した通りである。
【0047】
2.ポリカーボネート系樹脂(B)
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂(B)を含む。
ポリカーボネート系樹脂(B)は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む、すなわち−[O−R−OCO]−単位を有するものであれば、特に限定されない。式中のRは、脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の両方のいずれであってもよい。その中でも、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物を用いて得られる芳香族ポリカーボネートが、コストの面から好ましい。また、これらのポリカーボネート系樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明に用いるポリカーボネート系樹脂(B)の粘度平均分子量(Mv)は、粘度法により算出することができ、15,000〜30,000であることが好ましく、17,000〜25,000であることがより好ましい。粘度平均分子量が上記範囲にあれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)との相溶性が良好であり、より優れた透明性および表面硬度を有する成形体が得られる。
【0049】
ポリカーボネート系樹脂(B)の製造方法は、原料として使用する単量体によって適宜選択することができるが、例えば、ホスゲン法、エステル交換法等が挙げられる。また、上市されているものを適用することもでき、例えば、ユーピロン(登録商標)S−3000(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、Mv=22,000)、タフロン(登録商標)FN1700(出光興産製、Mv=18,000)等を用いることができる。
【0050】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を5〜60質量%及びポリカーボネート系樹脂(B)を40〜95質量%含有することが好ましい(樹脂組成物を基準として)。また、本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を10〜50質量%及びポリカーボネート系樹脂(B)を50〜90質量%含有することがより好ましい(樹脂組成物を基準として)。樹脂組成物中の(メタ)アクリル系共重合体(A)の含量が、5質量%以上であれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリカーボネート系樹脂(B)との相溶性の向上や流動性の向上を図ることができる。一方、(メタ)アクリル系共重合体(A)の含量が多すぎてもヘイズが大きくなる傾向にあるが、(メタ)アクリル系共重合体(A)の含量が60質量%以下であれば、得られる成形体の透明性の低下を抑制することができる。
【0051】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて他の樹脂、添加剤等を含有してもよい。
【0052】
他の樹脂としては、例えば、ABS、HIPS、PS、PAS等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;他の熱可塑性樹脂を配合したエラストマー等のポリマーアロイを挙げることができる。これらの樹脂の含量は、ポリカーボネート系樹脂(B)が本来有する耐熱性、耐衝撃性、難燃性等の物性を損なわない範囲であることが好ましく、具体的には(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリカーボネート系樹脂(B)との合計100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
【0053】
また、上記樹脂組成物が含有していてもよい添加剤としては、例えば、安定剤、強化剤、耐候剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、及びフルオロオレフィンを挙げることができる。具体的には、成形体の強度、剛性、難燃性等を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維等を用いることができる。さらに、耐薬品性等の改良のためにポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を含有していてもよい。
【0054】
上記安定剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジフェニルヒドロゲンフォスファイト、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「IRGANOX 1076」、チバ・ジャパン(株)製)を挙げることができる。また、上記耐候剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンを挙げることができる。
【0055】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)と上記ポリカーボネート系樹脂(B)とを粉体状態で混合する方法や、これらを加熱溶融して混練する方法により製造することができる。上記混合には、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用することができる。
【0056】
3.成形体
本発明の1つの実施形態によれば、上記樹脂組成物を成形して得られる成形体が提供される。
【0057】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、高温条件で成形した場合であっても、優れた透明性と表面硬度とを両立した成形体を得ることが可能である。例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリカーボネート系樹脂(B)(粘度平均分子量:22,000)とを30/70(質量%)の割合で溶融混練し、射出温度300℃、射出速度300m/sec、金型温度80℃で射出成型することにより得られる厚さ1.5mmの平板試験片のヘイズは12%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、上記平板試験片の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましい。
【0058】
上記のように、本発明の実施形態に係る成形体は、ポリカーボネート系樹脂(B)の優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性、難燃性、透明性等の特性を維持しながら、しかも、表面硬度に優れるものである。従って、本発明の実施形態に係る成形体は、電気電子及びOA機器、光メディア、自動車部品、建築部材等に利用することができる。
【0059】
成形体の成形方法としては、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、ブロー成形、押出成形、積層成形、カレンダー成形が挙げられる。射出成形を用いた場合、射出成形条件としては、射出温度が230〜330℃であり、射出速度が10〜500mm/secであり、金型温度が60℃以上であることが表面硬度向上の観点で好ましい。また、本発明の実施形態に係る樹脂組成物の場合、射出速度を高速とすることが可能であることから、生産性という観点においても好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について実施例を参照して詳述するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。実施例中の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0061】
また、実施例及び比較例における各物性の測定は、以下の方法により行った。
【0062】
1.(メタ)アクリル系共重合体の分子量
(メタ)アクリル系共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定を行った。なお、各共重合体のMw、Mn、及びMw/Mnは、標準ポリスチレンによる検量線を基に算出した。
【0063】
装置:東ソー(株)製 HLC−8320GPCEcoSEC
カラム:東ソー(株)製 TSK gel Super H M−H×3本
移動相溶媒:THF
流速:0.6mL/分
温度:40℃
サンプル濃度:0.1%
サンプル注入量:10μL
検出器:RI(UV)
【0064】
2.(メタ)アクリル系共重合体における一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位の分布
(メタ)アクリル系共重合体をクロロホルム(CHCl
3)に溶解し、分取ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(分取GPC)を用いて、分子量のピークを境に高分子量域と低分子量域に分割して分取を行った。その後、分取した共重合体を
1HNMRで測定し、高分子量域の(メタ)アクリル系共重合体における一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位の質量割合(H)および低分子量域の(メタ)アクリル系共重合体における一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位(a)の質量割合(L)を算出した。さらに、共重合比((L)/(H)×100%)を算出した。
【0065】
(分取GPC)
装置:日本分析工業(株)製 LC−9104
カラム:日本分析工業(株)製 JAIGEL−2.5H×1本、JAIGEL−3H×1本
移動相溶媒:CHCl
3
流速:3.5mL/分
温度:40℃
サンプル濃度:10%
サンプル注入量:5mL
検出器:RI(UV)
【0066】
(
1HNMR)
装置:BRUKAER 製 Ascend
TM500
溶媒:CHCl
3
サンプル濃度:2.5mg/mL
積算回数:16回
【0067】
3.鉛筆硬度
厚さ1.5mmの平板試験片を作製し、試験片表面にすり傷が観察されない鉛筆硬度をJIS K5600−5−4に準じて測定した。
【0068】
4.透明性
ヘーズメーターNDH4000(日本電色工業(株)製)を用いて、厚さ1.5mmの平板試験片についてJIS K 7136に準じてヘイズの測定を行った。
【0069】
<合成例1:(メタ)アクリル系共重合体aの合成>
撹拌装置が装備された加温可能な高圧反応器中に脱イオン水200質量部、懸濁安定剤である第三リン酸カルシウム0.5質量部、界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01質量部を加えた後、撹拌した。別途、4−フェニルベンジルメタアクリレート(a−1)20質量部、メチルメタクリレート(b−1)77質量部、メチルアクリレート(b−2)3質量部、開始剤であるパーブチルE(日油株式会社製)0.3質量部、及び連鎖移動剤であるノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)1.75質量部を混合して均一にしたモノマー溶液を調製し、反応容器内に加えた。窒素で反応容器内を満たし、0.1MPaに加圧した。110℃で1時間、続いて120℃で2時間反応を行って重合反応を完結させた。得られたビーズ状の重合体を水洗、乾燥し、(メタ)アクリル系共重合体aを得た。
【0070】
<合成例2:(メタ)アクリル系共重合体bの合成>
メチルメタクリレート(b−1)80質量部、メチルアクリレート(b−2)0質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体bを得た。
【0071】
<合成例3:(メタ)アクリル系共重合体cの合成>
4−フェニルベンジルメタアクリレート(a−1)40質量部、メチルメタクリレート(b−1)57質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体cを得た。
【0072】
<合成例4:(メタ)アクリル系共重合体dの合成>
4−フェニルベンジルメタアクリレート(a−1)80質量部、メチルメタクリレート(b−1)17質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体dを得た。
【0073】
<合成例5:(メタ)アクリル系共重合体eの合成>
連鎖移動剤であるノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)1.00質量部とした以外は、合成例4と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体eを得た。
【0074】
<合成例6:(メタ)アクリル系共重合体fの合成>
連鎖移動剤であるノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)0.50質量部とした以外は、合成例4と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体fを得た。
【0075】
<合成例:7(メタ)アクリル系共重合体gの合成>
ノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)2.0質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体gを得た。
【0076】
<合成例8:(メタ)アクリル系共重合体hの合成>
4−フェニルベンジルメタアクリレート(a−1)4質量部、メチルメタクリレート(b−1)93質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体hを得た。
【0077】
<合成例9:(メタ)アクリル系共重合体iの合成>
4−フェニルベンジルメタアクリレート(a−1)90質量部、メチルメタクリレート(b−1)0質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体iを得た。
【0078】
<合成例10:(メタ)アクリル系共重合体jの合成>
4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート(a−1)の代わりに、フェニルメタアクリレートとし、連鎖移動剤であるノルマル−オクチルメルカプタン(nOM)2.50質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体jを得た。
【0079】
<合成例11:(メタ)アクリル系共重合体kの合成>
4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート(a−1)の代わりに、ベンジルメタアクリレートとした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体kを得た。
【0080】
<合成例12:(メタ)アクリル系共重合体mの合成>
フェニルメタアクリレートの代わりに、4−フェニルフェニルメタアクリレートとした以外は、合成例10と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体mを得た。
【0081】
<合成例13:(メタ)アクリル系共重合体nの合成>
フェニルメタアクリレートの代わりに、2−フェニルフェニルメタアクリレートとした以外は、合成例10と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体nを得た。
【0082】
<合成例14:(メタ)アクリル系共重合体oの合成>
4−フェニルベンジル(メタ)アクリレート(a−1)0質量部、メチルメタクリレート(b−1)97質量部とした以外は、合成例1と同様の方法で(メタ)アクリル系共重合体oを得た。
【0083】
表1に、上記合成例1〜14の組成をまとめた。また、表2に上記合成例1〜14で得られた(メタ)アクリル系共重合体の物性をまとめた。
【表1】
【表2】
【0084】
<樹脂ペレットの製造>
前記合成例で得られた(メタ)アクリル系共重合体と、ポリカーボネート系樹脂としてのユーピロン(登録商標)S−3000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量:22,000)とを、以下の表3に示す質量比で配合した。タンブラーで20分混合後、1ベントを備えた日本製鋼所社製「TEX30HSST」に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練した。ストランド状に押出した溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化して樹脂組成物のペレットを得た。
【0085】
<成形体の作製>
上述の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、射出成型機(住友重機械工業(株)製「SE100DU」)にて、鋼材金型を使用して、下記の射出温度と射出速度、金型温度80℃で射出成型を行い、50×90×1.5mm厚の平板試験片を得た。
射出条件I 射出温度:260℃、射出速度:200mm/sec
射出条件II 射出温度:300℃、射出速度:200mm/sec
射出条件III 射出温度:260℃、射出速度:300mm/sec
射出条件IV 射出温度:300℃、射出速度:300mm/sec
【0086】
各々の平板試験片について、鉛筆硬度および透明性を上述したように測定した。その結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0087】
表3に示す通り、(メタ)アクリル系共重合体a〜gとポリカーボネートとをブレンドした樹脂を射出成型した場合(実施例1〜9)、表面硬度が高く、射出速度が高速で射出温度が高温の場合においても高い透明性を有する。一方、(メタ)アクリル系共重合体hおよびoのように一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位が5%未満の場合(比較例1および比較例7)、透明性が低下する。さらに、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート単位を85質量%より多く含む(メタ)アクリル系共重合体iを用いた場合(比較例2)、優れた透明性を有するものの、表面硬度が不十分である。エステル部分とベンゼン環が直接結合した(メタ)アクリレート単位を含む(メタ)アクリル系共重合体j、m、nを用いた場合は(比較例3、5、6)、射出条件によっては、透明性が低下してしまう。エステル部分とベンゼン環が直接結合していない場合でも、ベンゼン環を1つ有する(メタ)アクリレート単位を含む(メタ)アクリル系共重合体kの場合は(比較例4)、射出条件によっては透明性が低下してしまう。