(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硫化バリウムを原料として得られた原料硫酸バリウム粉体を600〜1300℃で加熱処理する硫酸バリウム粉体の製造方法であって、前記加熱処理温度t℃での保持時間X(分)が、下記一般式であらわされる時間以上であることを特徴とする硫酸バリウム粉体の製造方法。
X(分)=A×106×e(−0.015×t)
ここでAは8以上の値であり、Xの上限は3000分である。
粉体色のL値が98.3以上、a値が−0.5〜0.5、b値が0〜0.9、であり、900℃で30分加熱したときの重量減少が0.5重量%以下であり、硫黄含有量が45ppm以下であることを特徴とする硫酸バリウム粉体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述したような特徴を有する本発明の硫酸バリウム粉体の製造方法について詳述する。
硫化バリウムを原料とする硫酸バリウム粉体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法によって得ることができる。より具体的には、例えば、硫化バリウム水溶液に硫酸、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素リチウム、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等)の水溶液を混合することによって得ることができる。硫酸バリウム粉体の不純物を低減するためには副塩が発生しない硫酸を使用することが好ましい。
【0016】
上述した原料硫酸バリウム粉体の粒子径は特に限定されず、いかなる粒径のものでも加熱処理することにより白色度が高くなり硫黄成分を低減させることができるが、樹脂へ分散させる場合は平均粒子径0.01〜50μmの範囲内のものであることが好ましい。加熱処理後の硫酸バリウム粉体を太陽電池用バックシートやバックライトユニットの反射用フィルムのフィラーとして使用する場合は0.1〜10μmの範囲であることが好ましい。このようにして得られた原料硫酸バリウム粉体の粒子形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、針状、板状、鱗片状、立方状、花びら状等、任意の形状のものであってよいし不定形でもよい。反射フィルムのフィラーとして使用する場合は球状であることが好ましい。
【0017】
上記原料硫酸バリウム粉体は、ナトリウム含有量が100ppm以下であることが好ましい。このようにナトリウム含有量が低減された硫酸バリウム粉体を原料として使用することで、ナトリウム含有量が低い硫酸バリウムが得られる点で好ましい。上記ナトリウム含有量は、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることが更に好ましい。上記ナトリウム含有量は、実施例において記載した方法によって測定した値である。
【0018】
上記原料硫酸バリウム粉体は、塩素含有量が100ppm以下であることが好ましい。このように塩素含有量が低減された硫酸バリウム粉体であることによって、塩素含有量が少ない硫酸バリウムが得られる点で好ましい。上記塩素含有量は、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることが更に好ましい。上記塩素含有量は、実施例において記載した方法によって測定した値である。
【0019】
硫化バリウムを原料とする硫酸バリウム粉体としては、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては、バリエースB−54、バリエースB−55、バリエースB−65、バリエースB−30、バリエースB−31、バリエースB−32、バリエースB−33、バリエースB−34、バリエースB−35、バリファインBF−1、バリファインBF−10、バリファインBF−20、バリファインBF−40、板状硫酸バリウムA(以上商品名、堺化学工業社製)等を挙げることができる。
【0020】
上記原料硫酸バリウム粉体は、シリカ、シリカの水和物、アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1つで被覆されたものであってもよい。このような被覆を有するものとすることで、熱処理時の粒子成長の抑制や焼結の低減が可能となる。また、水や樹脂との親和性を向上させ分散しやすくするという点で好ましいものである。水や樹脂との親和性を向上させ分散しやすくするためには、上記化合物以外にも、酸化チタンや酸化亜鉛などの無機化合物やシランカップリング剤などの有機無機複合化合物を被覆してもよい。
【0021】
シリカやシリカの水和物による被覆を行う方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料硫酸バリウム粉体の水スラリーに珪酸ナトリウム等をそのままあるいは水溶液にして加え、後に硫酸等の酸を添加してシリカやシリカの水和物を析出させる方法や、原料硫酸バリウム粉体をアルコールや水、あるいはアルコールと水の混合溶媒に分散させ、そこにテトラエトキシシランなどのアルコキシシランを添加し、酸や塩基を加えたり、あるいは加熱することなどによりシリカやシリカの水和物を析出させる方法等を挙げることができる。その後、ろ過、乾燥を行うことで被覆した粒子が得られる。ろ過は、フィルタープレス、デカンター、ロータリーフィルターなどの装置を用いることが出来、乾燥は通常用いられる加熱あるいは減圧乾燥装置を用いることができる。また、ろ過を行わず例えば噴霧乾燥装置などを用いることで、被覆した粒子を得ることも出来る。
シリカやシリカの水和物の被覆量は特に限定されないが、シリカとして0.1〜10重量%が好ましい。下限は0.5重量%がより好ましく、上限は重量5%がより好ましい。0.1重量%より低いと、粒子成長の抑制効果が得られない可能性があり、10重量%を超えても抑制効果はそれ以上向上しない。
【0022】
アルミニウム化合物による被覆を行う方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料硫酸バリウム粉体のスラリーに、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等をそのままあるいは水溶液にして加え、その後、酸又はアルカリを加えて、アルミニウム化合物を析出させる方法等を挙げることができる。アルミニウム化合物の被覆量は特に限定されないが、酸化アルミニウムとして0.1〜10重量%が好ましい。下限は0.5重量%がより好ましく、上限は5重量%以下がより好ましい。0.1重量%より低いと、粒子成長の抑制効果が得られない可能性があり、10重量%を超えてもそれ以上抑制効果は向上しない。
【0023】
上記本発明の硫酸バリウム粉体の製造方法における加熱処理温度は600〜1300℃の範囲内であり、かつ加熱処理温度が600〜1300℃の温度範囲から選ばれるt℃のときの保持時間が式1で表されるX(分)以上であることが必要である。600℃以上の温度で保持することで硫黄成分の低減効果が現れ始めるが、この時間保持することにより、硫黄成分を低減させ、白色度を高くできる。式中のt℃は摂氏での加熱処理温度であり、eはネイピア数である。
式1:X(分)=A×10
6×e
(−0.015×t)
ここでAは8以上の値をとる。
Aは8以上であればよいが、好ましくは14以上であり、20以上がより好ましい。Aが8以上のとき導かれる時間を保持すると、硫黄成分の含有量が十分低減し、白色度が非常に高い硫酸バリウム粉体が効率よく得られる。すなわち、Aの値から導かれる保持時間に応じて得られた硫酸バリウム粉体の性能が変化する。したがって、目的に応じて加熱処理温度とAの値を決定し、処理時間を導き出すことができる。導き出されたXを最低限の処理時間として、処理時間を決定すればよい。但し、Aが8未満の場合の保持時間では、上述したような性能を得ることができないおそれがあるため好ましくない。
また、保持時間の上限は特に限定されるものではないが、製造コストの点から3000分以下であることが好ましい。
【0024】
上記加熱処理温度は、750℃以上であることがより好ましく、850℃以上であることが更に好ましい。具体的な例を挙げれば、A=8の場合に式1で導かれる保持時間は750℃であれば104分以上となり、850℃であれば23分以上となる。A=14の場合は750℃であれば182分以上となり、850℃であれば41分以上となる。A=20の場合は750℃であれば260分以上となり、850℃であれば58分以上となる。Aの値を大きくして導き出した時間以上保持するほど硫黄成分をより低減させ、白色度が高い硫酸バリウム粉体が得られるという点で好ましい。すなわち、Aの値から、硫酸バリウム粉体の性能がある程度予測できることから、目的に応じてAの値を決定し、これに基づいて保持時間を決定することができる。また粒子成長を抑えて白色度が高い硫酸バリウム粉体を得る場合には、上記加熱処理温度は1100℃以下であることが好ましい。
なお、Xは3000分以下なので、Aの上限は25となる。
【0025】
保持時間が上記の式から導き出される時間よりも短い場合は加熱処理の効果が不十分となり、粉体色のL値が低くあるいは、b値が高くなることや、電子機器に使用した際に電極を腐食させてしまう可能性がある。保持時間の上限は特に限定されないが、3000分以下とすることが好ましく、1500分以下とすることがより好ましく、500分以下とすることがさらに好ましい。色相の改善と硫黄成分の低減を達成した後も加熱を継続しても問題は無いが、効果が得られた後の加熱の継続はコストアップになる。
【0026】
上記加熱は、シャトル炉などのバッチ式の固定炉や、トンネル炉や回転炉などの連続炉等の装置によって行うことができる。バッチ式の加熱炉では設定温度までの昇温と降温の温度プロセスについては特に限定されず、上記温度での加熱がされれば良い。昇温及び降温中も熱がかかることで硫黄成分が低減し、熱処理の効果が進むことも期待される。
連続炉では同一温度で加熱しても良く、加熱帯を区切って加熱帯ごとに異なる温度で加熱しても良い。
【0027】
加熱は、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行っても良いが、製造コストの点から大気雰囲気下で行うことが好ましい。一酸化炭素や水素などの還元雰囲気であると硫酸バリウムは還元されて硫化バリウムが生成することから好ましくない。
【0028】
加熱後の粉体は、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル、等の一般的な方法で粉砕しても良い。粉砕後の粉体は、篩い、気流分級等の操作により粒子径を整えても良い。また、粉砕と分級を同時に行っても良い。これらの操作を行うことで、分散性の更なる向上が見込まれる。
加熱後の粉体を水にリパルプすることで分散しボールミル、ビーズミルなどの一般的な湿式粉砕をして粒子径を整えても良い。また、加熱処理後に水洗することで不純物をさらに低下させることができる。水洗後は前述のような一般的な乾燥や粉砕を行うにより硫酸バリウム粉体を得ることができる。
【0029】
加熱処理後の粉体は、無機被覆処理や有機被覆処理など顔料に一般的に行われる被覆処理を行ったものであっても良い。無機被覆処理としては特に限定されるものではないがシリカやアルミナなどによる被覆処理が挙げられる。有機被覆処理としてはアミン被覆処理、シリコーン被覆処理、アルコール被覆処理などが挙げられる。被覆処理するアミンとして特に限定されるものではないが、ジエタノールアミンやトリエタノールアミン等が挙げられる。シリコーン被覆処理として特に限定されるものではないが、モノメチルポリシロキサンやジメチルポリシロキサン等が挙げられる。アルコール被覆処理として特に限定されるものではないが、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリトリット、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、その他にもカルボン酸、セッケン、金属セッケン、有機エステル、シラン、シランカップリング剤、シリル化剤、シロキサン被覆処理等が挙げられる。これによって、樹脂との親和性を高め、塗料、インキ、フィルム及びシート等に好適に使用することができる。
【0030】
本発明は、粉体色のL値が98.3以上、a値が−0.5〜0.5、b値が0〜0.9、であり、900℃で30分加熱したときの重量減少が0.5重量%以下であり、硫黄含有量が45ppm以下という物性を有する硫酸バリウム粉体に関するものである。
【0031】
このような本発明の硫酸バリウム粉体は、絶縁性を低下させるという問題や電子機器を腐食させるという問題を生じにくく、太陽電池用バックシート用のフィラー、LEDを光源とするバックライトユニットの反射用フィルムのフィラー、インキや塗料のフィラー等の用途に適したものである。
【0032】
本発明者らは、従来と異なる加熱処理を行うことで、上述したような物性をすべて満たす新規の硫酸バリウム粉体を得たものである。すなわち、硫化バリウムを原料として得られた原料硫酸バリウム粉体は、従来と異なる条件での加熱処理を行うことにより色調や揮発成分の発生量等の点において、大幅に性質が変化する。これによって、上述した太陽電池用バックシートやLEDを光源とするバックライトユニットの反射フィルムの輝度を向上させ、電子機器の腐食を改善できることを見出すことによって本発明は完成したものである。
【0033】
上述したような効果は、加熱処理により、粒子中に残存している硫黄成分が揮発したり、あるいは酸化、分解されたことにより、硫酸バリウム粉体中の硫黄成分の含有量が低減されることによるものであると推測される。充分に硫黄成分を低減させ、白色度を高めるには特定の条件で加熱処理を行うことが必要とされる。また、粉体の凝集及び焼結、粉体の過剰な粒子成長、粉体粒子が溶融することによる形状の変化等の問題を生じさせないという観点からみても、特定の条件での加熱処理を行うことが好ましい。本発明においては、上述したような特定の条件で加熱することで、このような問題を解決できることを見出したものである。
【0034】
本発明の硫酸バリウム粉体は、粉体色のL値が98.3以上、a値が−0.5〜0.5、b値が0〜0.9となる。この硫酸バリウム粉体は非常に白色度が高い粒子であることから、太陽電池用バックシートやLEDを光源とするバックライトユニットの反射用フィルムのフィラー等の、白色度の高い粒子が要求される分野において特に好適に使用することができるが、このときL値が98.5以上、a値が−0.3〜0.2、b値が0〜0.7であることが好ましく、L値が99.0以上、a値が−0.2〜0.1、b値が0〜0.7であることがより好ましい。
【0035】
なお、本発明において、粉体色のL値、a値、b値は、一定サンプル量のペレットを成型しカラーメーターで測定するという測定方法によって測定した値である。L値は明度で明るさの指標で、高いほど明るい色を示している。a値は正に大きいほど赤色味が強く、負に大きいほど緑色味が強いことを示している。b値は正に大きいほど黄色味が強く、負に大きいほど青色味が強いことを示している。
【0036】
更に、本発明の硫酸バリウム粉体は、900℃で30分加熱したときの重量減少が0.5重量%以下であることが好ましい。0.3重量%以下であることがより好ましい。すなわち、硫化バリウムを原料として製造した硫酸バリウム粉体中には、硫黄成分以外にも水分等の不純物が存在しているが、本発明の硫酸バリウム粉体は、これらが、加熱処理によって低減されたものである。よって、上述したようなパラメータを満たすものである。これによって、電子機器の電極等の金属部分の劣化、腐食という問題を生じることが少ないという利点を有する。一方で900℃、30分の加熱減量が上記範囲である硫酸バリウム粉体は加熱処理がされたことを示している。
【0037】
また、水酸化バリウムや塩化バリウムを原料として製造した硫酸バリウム粉体中には、水分等の不純物が強熱減量として通常0.5〜1%程度かそれ以上存在するため、同様に電子機器の電極等の金属部分の劣化、腐食、樹脂組成物のフィラーとして使用する場合、樹脂劣化を促進させるという問題を生じることがある。
【0038】
本発明の硫酸バリウム粉体は平均粒子径が0.01〜50μmであることが好ましい。上記範囲内の粒子径を有する硫酸バリウム粉体は、樹脂への分散性が高く、太陽電池用バックシートやLEDを光源とするバックライトユニットの反射用フィルムの輝度を向上させる点で好ましいものである。上記下限は、0.05μmであることがより好ましく、0.2μmであることが更に好ましい。上記上限は、10μmであることがより好ましく、1μmであることが更に好ましい。上記粒子径の硫酸バリウム粉体を使用して作成された樹脂組成物をフィルムに加工した際にボイドが形成し易くなることで輝度の向上に関与していると考えられる。なお、本明細書において、硫酸バリウム粉体の平均粒子径は、SEMによる観察で任意の粒子100個の長径を測定し、その平均値を算出する方法によって測定した値である。
【0039】
本発明の硫酸バリウム粉体の粒子径の調整は、原料硫酸バリウム粉体の粒子径の選択、加熱処理時の温度と保持時間を選択することで行うことが出来る。また、加熱処理後に一般的な粉砕、分級等の操作を行うことが好ましい。
【0040】
本発明の硫酸バリウム粉体の粒子径や粒子形状は特に限定されるものではなく、例えば、不定形、球状、針状、板状、鱗片状、立方状、花びら状等、任意の形状のものであってよい。反射フィルム用途で使用する場合は球状であることが好ましい。
【0041】
本発明の硫酸バリウム粉体は、比表面積が1〜40m
2/gであることが好ましい。2〜20m
2/gであることがより好ましく、3〜10m
2/gであることがさらに好ましい。これによって、樹脂への分散性が良くなることと、樹脂中にボイドを形成しやすくなり白色度の向上につながるという点で好ましいものである。上記比表面積は、実施例において記載した方法によって測定した値である。
【0042】
本発明の硫酸バリウム粉体は、硫黄含有量が45ppm以下である。このように硫黄含有量が低減された硫酸バリウム粉体であることによって、上述したような着色の抑制や揮発成分の発生量の低減等の効果が得られる点で好ましい。上記硫黄含有量は、25ppm以下であることがより好ましく、15ppm以下であることが更に好ましい。上記硫黄含有量は、実施例において記載した方法によって測定した値である。
【0043】
なお、このような硫黄含有量は、上述したような硫化バリウムを原料とする硫酸バリウムを所定の条件で熱処理することによって達成することができる。
【0044】
本発明の硫酸バリウム粉体は、ナトリウム含有量が100ppm以下であることが好ましい。このようにナトリウム含有量が低減された硫酸バリウム粉体であることによって、ナトリウムによる電子回路の誤作動を低減し、樹脂組成物としたときの絶縁性を高めるという効果が得られる点で好ましい。上記ナトリウム含有量は、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることが更に好ましい。上記ナトリウム含有量は、実施例において記載した方法によって測定した値である。
【0045】
上述した硫化バリウムと硫酸を原料とする硫酸バリウムを所定の条件で熱処理して得られた硫酸バリウムは、原料としてナトリウムを含有する化合物を使用しなければ、通常、上述したナトリウム含有量を満たすものとなる。これに対して、硫化バリウムと硫酸ナトリウムを原料として製造された硫酸バリウムは、ナトリウム量が上述した範囲より多いものとなってしまう。
【0046】
本発明の硫酸バリウム粉体は、塩素含有量が100ppm以下であることが好ましい。このように塩素含有量が低減された硫酸バリウム粉体であることによって、塩素による電子回路の腐食を低減するという効果が得られる点で好ましい。上記塩素含有量は、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることが更に好ましい。上記塩素含有量は、実施例において記載した方法によって測定した値である。
【0047】
上述した硫化バリウムを原料とする硫酸バリウムを所定の条件で熱処理して得られた硫酸バリウムは、原料として塩素を含有する化合物を使用していないことから、通常、上述した塩素含有量を満たすものとなる。これに対して、塩化バリウムを原料として製造された硫酸バリウムは、塩素量が上述した範囲より多いものとなってしまう。
【0048】
上述した塩素やナトリウム等の含有量が少ない硫酸バリウムは、絶縁性を低下させるという問題や電子機器を腐食させるという問題を生じにくいという点で、特に好ましいものである。
【0049】
本発明の硫酸バリウム粉体は、各種樹脂組成物へのフィラー成分として配合することができる。この場合、使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良く、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0050】
本発明の硫酸バリウム粉体を、樹脂組成物に配合する場合、配合量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物全量に対して、5〜70重量%の割合で配合することが好ましい。上記下限は、40重量%であることがより好ましく、上記上限は60重量%であることがより好ましい。
【0051】
本発明の硫酸バリウム粉体は、白度が高く、揮発性成分が少ないものであることから、太陽電池用バックシート用、液晶パネルのバックライトユニットの反射フィルム、インキ用、塗料用、電子部品用の樹脂組成物等のように、高い白色度が要求される用途において特に好適に使用することができる。また、樹脂や溶媒などに分散させる際には硫黄成分由来の臭気による作業環境の悪化も低減される。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
比較例1
加熱処理していない堺化学工業(株)製バリエースB−54を比較例1とした。B−54の粒子径は0.8μmだった。
【0054】
比較例2
磁性るつぼに堺化学工業(株)製バリエースB−54を100g秤量した。ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が600℃に到達後、るつぼを収納して30分間温度を保持して加熱処理した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却することで硫酸バリウム粉体を得た。
【0055】
比較例3
電気炉の炉内温度を700℃で時間を30分にすること以外は比較例2と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0056】
比較例4
電気炉の炉内温度を800℃で時間を30分にすること以外は比較例2と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0057】
実施例1
電気炉の炉内温度を800℃で時間を240分にすること以外は比較例2と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0058】
実施例2
電気炉の炉内温度を850℃で時間を60分にすること以外は比較例2と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0059】
実施例3
電気炉の炉内温度を900℃で時間を30分にすること以外は比較例2と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0060】
比較例5
加熱処理していない堺化学工業(株)製バリエースB−55を比較例5とした。B−55の粒子径は0.6μmだった。
【0061】
比較例6
磁性るつぼに堺化学工業(株)製バリエースB−55を100g秤量した。ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が600℃に到達後、るつぼを収納して300分間温度を保持して加熱処理した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却することで硫酸バリウム粉体を得た。
【0062】
実施例4
電気炉の炉内温度を600℃で時間を2000分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0063】
比較例7
電気炉の炉内温度を700℃で時間を180分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0064】
実施例5
電気炉の炉内温度を700℃で時間を2000分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0065】
比較例8
電気炉の炉内温度を900℃で時間を5分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0066】
実施例6
電気炉の炉内温度を900℃で時間を20分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0067】
実施例7
電気炉の炉内温度を900℃で時間を30分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0068】
実施例8
電気炉の炉内温度を900℃で時間を360分にすること以外は比較例6と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0069】
実施例9
磁性るつぼに堺化学工業(株)製バリエースB−55を100g秤量し、るつぼをADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に収納した。炉内温度が1000℃になるまで2時間で昇温し、1000℃に到達後、30分間温度を保持して自然放冷した。冷却後にるつぼを取り出すことで硫酸バリウム粉体を得た。
【0070】
実施例10
電気炉の炉内温度を1200℃にすること以外は実施例9と同じ操作をして硫酸バリウム粉体を得た。
【0071】
比較例9
加熱処理していない堺化学工業(株)製バリエースB−30を比較例9とした。B−30の粒子径は0.2μmだった。後述の水分散体作成時の粘度をB型粘度計で測定すると230mPa・sであり、分散体から硫化水素の臭いがすることを確認した。
【0072】
実施例11
磁性るつぼに堺化学工業(株)製バリエースB−30を100g秤量した。ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が900℃に到達後、るつぼを収納して30分間温度を保持して加熱処理した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却することで硫酸バリウム粉体を得た。後述の水分散体作成時の粘度をB型粘度計で測定すると34mPa・sであり、分散体から硫化水素の臭いがしないことを確認した。
【0073】
比較例10
加熱処理していない堺化学工業(株)製バリファインBF−20を比較例10とした。BF−20の粒子径は0.1μmだった。
【0074】
実施例12
磁性るつぼに堺化学工業(株)製バリファインBF−20を100g秤量した。ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が900℃に到達後、るつぼを収納して30分間温度を保持して加熱処理した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却することで硫酸バリウム粉体を得た。
【0075】
比較例11
堺化学工業(株)製板状硫酸バリウムAを比較例11とした。板状硫酸バリウムAの粒子径は8.2μmだった。
【0076】
実施例13
磁性るつぼに堺化学工業(株)製板状硫酸バリウムAを100g秤量した。ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が900℃に到達後、るつぼを収納して30分間温度を保持して加熱処理した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却することで硫酸バリウム粉体を得た。
【0077】
比較例12
重晶石3000gとコークス300gを炭化ケイ素のるつぼに入れてふたをして、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に収納した。1000℃まで2時間で昇温し、1000度で2時間キープして加熱することで還元焙焼をした。60℃に加熱した1000mlのイオン交換水に冷却後の焙焼物を分散させることで硫化バリウム成分を溶解させた。5C濾紙で不溶分を濾別してイオン交換水を加えて100g/lの硫化バリウム水溶液を得た。2Lのビーカーに硫化バリウム水溶液1000mlと100g/lの硫酸580mlを混合することで硫酸バリウムのスラリーを得た。反応スラリーに15重量%のアルミン酸ナトリウムを9g添加し、10g/lの硫酸でpHを8に中和したあと、5Cろ紙でろ過してイオン交換水で水洗し、150℃の箱型恒温槽内で乾燥した。乾燥後のサンプルを(日清エンジニアリング(株)製気流式粉砕機SJ−500にて解砕することで硫酸バリウム粉体を得た。得られた硫酸バリウムの粒子径は0.4μmだった。
【0078】
実施例14
重晶石3000gとコークス300gを炭化ケイ素のるつぼに入れてふたをして、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に収納した。1000℃まで2時間で昇温し、1000度で2時間キープして加熱することで還元焙焼をした。60℃に加熱した1000mlのイオン交換水に冷却後の焙焼物を分散させることで硫化バリウム成分を溶解させた。5C濾紙で不溶分を濾別してイオン交換水を加えて100g/lの硫化バリウム水溶液を得た。2Lのビーカーに硫化バリウム水溶液1000mlと100g/lの硫酸580mlを混合することで硫酸バリウムのスラリーを得た。反応スラリーに15重量%のアルミン酸ナトリウムを9g添加し、10g/lの硫酸でpHを8に中和したあと、5Cろ紙でろ過してイオン交換水で水洗し、150℃の箱型恒温槽内で乾燥した。乾燥後のサンプルを100g秤量し、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が900℃に到達した後、るつぼを収納して、30分間温度を保持して加熱した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却した。冷却後のサンプルを(日清エンジニアリング(株)製気流式粉砕機SJ−500にて解砕することで硫酸バリウム粉体を得た。得られた硫酸バリウムの粒子径は0.4μmだった。
【0079】
比較例13
重晶石3000gとコークス300gを炭化ケイ素のるつぼに入れてふたをして、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に収納した。1000℃まで2時間で昇温し、1000度で2時間キープして加熱することで還元焙焼をした。60℃に加熱した1000mlのイオン交換水に冷却後の焙焼物を分散させることで硫化バリウム成分を溶解させた。5C濾紙で不溶分を濾別してイオン交換水を加えて100g/lの硫化バリウム水溶液を得た。2Lのビーカーに硫化バリウム水溶液1000mlと100g/lの硫酸580mlを混合することで硫酸バリウムのスラリーを得た。反応スラリーに30重量%のケイ酸ナトリウムを4g添加し、10g/lの硫酸でpHを8に中和したあと、5Cろ紙でろ過してイオン交換水で水洗し、150℃の箱型恒温槽内で乾燥した。乾燥後のサンプルを(日清エンジニアリング(株)製気流式粉砕機SJ−500にて解砕することで硫酸バリウム粉体を得た。得られた硫酸バリウムの粒子径は0.4μmだった。
【0080】
実施例15
重晶石3000gとコークス300gを炭化ケイ素のるつぼに入れてふたをして、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に収納した。1000℃まで2時間で昇温し、1000度で2時間キープして加熱することで還元焙焼をした。60℃に加熱した1000mlのイオン交換水に冷却後の焙焼物を分散させることで硫化バリウム成分を溶解させた。5C濾紙で不溶分を濾別してイオン交換水を加えて100g/lの硫化バリウム水溶液を得た。2Lのビーカーに硫化バリウム水溶液1000mlと100g/lの硫酸580mlを混合することで硫酸バリウムのスラリーを得た。反応スラリーに30重量%のケイ酸ナトリウムを4g添加し、10g/lの硫酸でpHを8に中和したあと、5Cろ紙でろ過してイオン交換水で水洗し、150℃の箱型恒温槽内で乾燥した。乾燥後のサンプルを100g秤量し、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)の炉内温度が900℃に到達した後、るつぼを収納して、30分間温度を保持して加熱した。その後にるつぼを取り出し、室温にて冷却した。冷却後のサンプルを(日清エンジニアリング(株)製気流式粉砕機SJ−500にて解砕することで硫酸バリウム粉体を得た。得られた硫酸バリウムの粒子径は0.4μmであった。
【0081】
上述した各実施例によって得られた硫酸バリウム粉体について、以下の方法に従って測定を行った。その結果を表1〜3に示した。
【0082】
(色相(L、a、b、W)の測定)
色相を測定するために、7.5gの粉体を外径44mm、内径40mmで5mm高さのアルミリングに入れ、株式会社 前川試験機製作所社製錠剤成型圧縮機(型番BRE‐33)をもちいて120MPaの圧力で試験片を成型した。作成した試験片を、日本電色工業株式会社製粉体色測定器(型番SPECTRO COLOR METER SE−2000)で測定した。
【0083】
(900℃、30分加熱減量(強熱減量)の測定)
重量が既知の磁性るつぼにサンプル約2gを0.1mgの単位まで精秤し900℃に加熱したADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に入れて30分間加熱した。電気炉から取出したるつぼをデシケーター内で放冷し0.1mgの単位で重量を測定し、加熱前後の重量から900℃、30分の加熱減量を算出した。
【0084】
(粒子径(SEM径)の測定)
日本電子株式会社製の操作型電子顕微鏡(型番JSM−6510A)を用いて2千倍もしくは2万倍の倍率で撮影し、粒子の最も長い部分の長さを粒子径とした。無作為に100個の粒子の粒子径を測定した平均値をそのサンプルの粒子径とした。
【0085】
(硫黄含有量の測定)
共栓付きのフラスコに5gのサンプルと濃度が40g/lの水酸化ナトリウム水溶液50mlを加え、80℃で30分間撹拌した。0.01mol/lのヨウ素を25ml加えたあとに濃塩酸を5ml加えてデンプンを指示薬として0.005mol/lのチオ硫酸ナトリウムで滴定した。サンプルを添加しない条件をブランク試験として次の式からサンプル中の硫黄含有量を計算した。
硫黄含有量(ppm)=16×(ブランク滴定量(ml)−サンプル滴定量(ml))
【0086】
(比表面積(SSA)の測定)
Mountech社製Macsorb(型番HM−1220)を用いた。サンプル量は0.5gで、200℃で15分間の脱気処理後に測定した。
【0087】
(Na含有量の測定)
耐圧容器にサンプル5gとイオン交換水40mlを加えて121℃の恒温槽で24時間加熱した。加熱後に耐圧容器を取り出してサンプルを5C濾紙で濾過し、濾液中のNa量を東ソー株式会社製イオンクロマトグラフィーIC−2001で測定した。
【0088】
(Cl含有量の測定)
耐圧容器にサンプル5gとイオン交換水40mlを加えて121℃の恒温槽で24時間加熱した。加熱後に耐圧容器を取り出してサンプルを5C濾紙で濾過し、濾液のCl量を東ソー株式会社製イオンクロマトグラフィーIC−2001で測定した。
【0089】
(銀変色試験)
内容積100mLのガラス製のサンプル瓶に硫酸バリウム粉体3gもしくは実施例で作成した樹脂組成物10gを入れ、蓋をして密閉した。予め85℃×85RH%の状態に安定化しておいた恒温恒湿容器内に、そのサンプル瓶を入れた。恒温恒湿容器内が一定温度・湿度となったのを確認後、恒温恒湿槽の雰囲気下で銀ペースト(藤倉化成社製 ドータイトD550)を塗布したスライドガラスをサンプル 瓶に入れ、ふたを閉めて密閉した。72時間後、サンプル瓶からスライドガラスを取り出し、目視で銀ペーストの変色度合いを確認した。変色の評価は、銀ペーストのみの試験をブランクとして、そのブランクと同等を○、ブランクよりやや劣る場合を△、ブランクより劣る場合を×とした。
なお、銀変色試験は電極の耐腐食性の評価を目的としている。
【0090】
(水分散体作成時の粘度、臭気確認試験)
硫酸バリウム粉体サンプル56gと純水24gと分散剤としてポイズ520(花王株式会社;ポリカルボン酸型分散剤)1.5gと0.3mm径のジルコニアビーズ100gをガラス瓶に入れてペイントシェーカーで30分間分散させた。分散終了直後にガラス瓶のふたを開けて臭気を確認した。臭気を確認後ビーズを取り除き、B型粘度計のローターM2で60rpmの条件で粘度の測定を行った。
【0091】
(樹脂組成物シートの色相の測定)
EEA樹脂(日本ポリエチレン社製 レクスパールA1150)30g及び硫酸バリウム粉体30gをLABO PLASTMILL(東洋精機製作所社製)でミキサーの回転数40rpm、150℃で10分間混練した。混練物を取り出した後、厚み2mmのステンレス製鋳型板(150mm×200mm)の中央に置き、上下よりステンレス製板厚み2mmの(200mm×300mm)で挟み、ミニテストプレス−10(東洋精機製作所社製)の試料台に設置し、160℃、0.5MPaで2分間保持し、その後160℃、5MPaで2分間保持し、その後160℃、25MPaで3分間保持した。次に、水冷板に挟んで25MPaで5分間冷却することにより樹脂組成物のシートを得た。樹脂組成物のシートの色相を日本電色工業株式会社製粉体色測定器(型番SPECTRO COLOR METER SE−2000)で測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
比較例14(塩化バリウムと硫酸ナトリウムを出発原料とした硫酸バリウム)
200g/Lの塩化バリウム1000mlと200g/lの硫酸ナトリウム800mlを3Lのビーカーで混合して硫酸バリウムのスラリーを得た。反応スラリーを5Cろ紙でろ過して脱イオン水で水洗し、150℃の箱型乾燥機で乾燥した。乾燥後のサンプルを日清エンジニアリング(株)製気流式粉砕機SJ−500にて粉砕することで、硫酸バリウム粉体を得た。L=98.9、a=−0.1、b=0.4、W=98.8、比表面積=4、SEM径0.4μm、硫黄含有量2ppm、強熱減量=0.67重量%、Na=150ppm、Cl=200ppmであり、本発明の硫酸バリウムに比べ、ナトリウム、塩素の含有量が多い。
【0097】
比較例15(硫化バリウムと硫酸ナトリウムを出発原料とした硫酸バリウム)
重晶石3000gとコークス300gを炭化ケイ素のるつぼに入れてふたをして、ADVANTEC社製電気炉(型番FUM332PB)に収納した。1000℃まで2時間で昇温し、1000℃で2時間キープして加熱することで還元焙焼をした。60℃に加熱した1000mlのイオン交換水に冷却後の焙焼物を分散させることで硫化バリウム成分を溶解させた。5C濾紙で不溶分を濾別してイオン交換水を加えて100g/lの硫化バリウム水溶液を得た。3Lのビーカーに硫化バリウム水溶液1000mlと100g/lの硫酸ナトリウム600mlを混合することで硫酸バリウムのスラリーを得た。反応スラリーを5Cろ紙でろ過して脱イオン水で水洗し、150℃の箱型乾燥機で乾燥した。乾燥後のサンプルを日清エンジニアリング(株)製気流式粉砕機SJ−500にて粉砕することで、硫酸バリウム粉体を得た。L=98.0、a=−0.2、b=1.4、W=97.6、比表面積=4.5、SEM径0.5μm、硫黄含有量21ppm、強熱減量=0.55重量%、Na=92ppm、Cl=7ppmであり、本発明の硫酸バリウムに比べ、白色度が低くナトリウムの含有量が多い。
【0098】
上述した実施例・比較例の結果から、本発明の硫酸バリウム粉体は、白色度が高く、かつ、加熱時の揮発物の発生が少ないものであることが明らかである。表4の通り、本発明の硫酸バリウム粉体を使用して作成した樹脂組成物はa値とb値は0に近づいており、白色度が高くなっている。本発明の硫酸バリウム粉体は樹脂組成物の色を改善し、硫黄成分による不具合を改善できるものであることが明らかである。また、硫黄の含有量が劇的に低減し、塩化バリウムを原料とした硫酸バリウムに比べて、塩素、ナトリウムの含有量が少ないことから、金属の腐食や臭気などの問題の発生がおきにくくなることが期待される。また、加熱処理する前の硫酸バリウム粉体の分散体と、加熱処理後の粉体の分散体を比べると大幅に粘度が低下しているので、低粘度の分散体が必要な際には、別途添加する分散剤の使用量を少なくすることができると期待される。
【0099】
(Xとtとの関係)
各実施例について、Xとtとをグラフ上にプロットしたものを
図1として示す。
図1においては、実施例毎に、Xとtとの関係をプロットし、更に式中に3つの直線を記載した。
3つの直線は、それぞれ
X(分)=A×10
6×e
(−0.015×t)
において、A=8、A=14、A=20のそれぞれの場合について記載した直線である。
【0100】
図1の結果から、
X(分)=A×10
6×e
(−0.015×t)
(Aは8以上の値)で表される直線によって、加熱処理時の保持時間と温度の関係を規定して処理を行うことで、特に好ましい性質を有する硫酸バリウム粉体を得ることができたことが明らかである。
実施例のなかでも、加熱処理時の保持時間が上記一般式の関係を満たす場合は、例えば実施例8,9のように、特に良好な性質を有する硫酸バリウム粉体を得ることができたことが、
図1及び表1〜3の結果から明らかである。
【課題】安価な硫化バリウムを原料とし、白色度が高く、かつ、揮発成分の発生も抑制された高性能の硫酸バリウム粉体を安価に得ることができる硫酸バリウム粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】硫化バリウムを原料として得られた原料硫酸バリウム粉体を600〜1300℃で加熱処理する硫酸バリウム粉体の製造方法であって、前記加熱処理温度t℃での保持時間X(分)が、下記一般式であらわされる時間以上であることを特徴とする硫酸バリウム粉体の製造方法。