特許第5924468号(P5924468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924468
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】直流CVケーブル用プレハブジョイント
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/08 20060101AFI20160516BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20160516BHJP
   H02G 15/103 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   H02G15/08
   H01R13/533 B
   H02G15/103
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-145277(P2011-145277)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2013-13272(P2013-13272A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2013年6月21日
【審判番号】不服2015-5082(P2015-5082/J1)
【審判請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】502308387
【氏名又は名称】株式会社ビスキャス
(74)【代理人】
【識別番号】100096035
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】新延 洋
【合議体】
【審判長】 飯田 清司
【審判官】 中田 剛史
【審判官】 河口 雅英
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−23742(JP,U)
【文献】 実開昭50−84793(JP,U)
【文献】 特開2003−259542(JP,A)
【文献】 特開平9−23558(JP,A)
【文献】 実開昭48−61377(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G15/08
H01R13/533
H02G15/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が段剥ぎされて、ケーブル導体、ケーブル絶縁体、外部半導電層が露出した2本の直流CVケーブルにおける、前記ケーブル導体同士を接続する導体接続管と、少なくともエポキシ樹脂製の補強絶縁体と、前記導体接続管と接触した埋込電極とを有するエポキシユニットと、絶縁部と導電部とから構成され、前記エポキシユニットと前記ケーブル絶縁体との間に押し込まれるストレスコーンと、前記導体接続管、前記埋込電極、前記ケーブル導体、前記ケーブル絶縁体、及び前記ストレスコーンの前記絶縁部の先端面によって閉じ込められた空気層とを備えた直流CVケーブル用プレハブジョイントにおいて、
前記ストレスコーンにおける前記絶縁部の前記先端面の前記空気層と接する部分には、前記ケーブル導体に直流課電したときに前記空気層に等電位線が入り込むのを抑制する導電性塗料の膜が形成されたことを特徴とする直流CVケーブル用プレハブジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシユニットとケーブル絶縁体の間にストレスコーンを設置した直流CVケーブル用プレハブジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に従来のCVケーブル用プレハブジョイントを示す(特許文献1)。図において、1、1は接続すべきCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル)、2はエポキシユニット、3、3はストレスコーンである。
【0003】
CVケーブル1の端部は段剥ぎされて、ケーブル導体1a、ケーブル絶縁体1b、外部半導電層1cが露出している。ケーブル導体1a、1aは導体接続管4により接続されている。エポキシユニット2はエポキシ樹脂製の補強絶縁体2a、埋込電極2b、遮蔽電極2cで構成されている。埋込電極2bは導体接続管4と接触し、ケーブル導体1aと同電位となる。ストレスコーン3は絶縁部3aと導電部3bとから構成され、図示しない押圧装置によりエポキシユニット2とケーブル絶縁体1bの間に押し込まれる。ストレスコーン導電部3bはCVケーブル1の外部半導電層1cと接触し、接地電位となる。
【0004】
ストレスコーン絶縁部3aの先端面と埋込電極2bの段差部との間にはリング状のストッパー5が設置されている。ストッパー5はストレスコーン絶縁部3aの先端部が押圧力によって埋込電極2bに接近し過ぎないようにするためのものであるが、省略される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−259542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4(A)はケーブル導体1aに交流課電した場合のプレハブジョイント内の等電位線の分布を示す。この場合は、等電位線が全てストレスコーン絶縁部3aを通過するため特に問題は生じない。ところが、ケーブル導体1aに直流課電すると、プレハブジョイント内の等電位線の分布は図4(B)のようになる。すなわち、等電位線が高電圧側へ片寄って、ストレスコーン絶縁部3aの先端部の先にある空気層(空間)Sに入り込むようになる。このような状態になると、電界の集中により微小放電が起こったり、温度上昇を招いたりして、ケーブル接続部に不具合が生じる懸念がある。
【0007】
なお、ストレスコーン絶縁部3aの先端面と埋込電極2bの間に図3のようにリング状のストッパー5を設置する場合でも、ストッパー5の内周側又は外周側に空気層Sが残るので、そこに電界が集中して同様の問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、上記のような問題点に鑑み、特に直流CVケーブル用プレハブジョイントにおけるストレスコーン絶縁部の先端部付近の電界集中をなくし、絶縁性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、端部が段剥ぎされて、ケーブル導体、ケーブル絶縁体、外部半導電層が露出した2本の直流CVケーブルにおける、前記ケーブル導体同士を接続する導体接続管と、少なくともエポキシ樹脂製の補強絶縁体と、前記導体接続管と接触した埋込電極とを有するエポキシユニットと、絶縁部と導電部とから構成され、前記エポキシユニットと前記ケーブル絶縁体との間に押し込まれるストレスコーンと、
前記導体接続管、前記埋込電極、前記ケーブル導体、前記ケーブル絶縁体、及び前記ストレスコーンの前記絶縁部の先端面によって閉じ込められた空気層とを備えた直流CVケーブル用プレハブジョイントにおいて、
前記ストレスコーンにおける前記絶縁部の前記先端面の前記空気層と接する部分には、前記ケーブル導体に直流課電したときに前記空気層に等電位線が入り込むのを抑制する導電性塗料の膜が形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ストレスコーンの絶縁部の先端面に導電性塗料を塗布したことにより、ストレスコーン絶縁部の先端側(高圧側)に存在する空気層に等電位線が入り込むのを抑制できるので、同空気層での微小放電の発生を抑えることができ、絶縁性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る直流CVケーブル用プレハブジョイントの一実施例を示す断面図。
図2図1のプレハブジョイントに直流課電した場合の等電位線の分布を示す説明図。
図3】従来のCVケーブル用プレハブジョイントの一例を示す断面図。
図4図3のプレハブジョイントに、(A)は交流課電した場合、(B)は直流課電した場合の等電位線の分布を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
図1は本発明の一実施例を示す。この直流CVケーブル用プレハブジョイントが図3に示した従来のプレハブジョイントと異なる点は、ストレスコーン絶縁部3aの先端面に導電性塗料6を塗布したことである。導電性塗料6としては導電性ペーストを使用することができる。具体的には、藤倉化成株式会社製のドータイト(商品名)、日本黒鉛工業株式会社製のスーパーコロハイト(商品名)などを使用できる。上記以外の構成は図3に示した従来のプレハブジョイントと同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0013】
上記のように導電性塗料6を塗布しておくと、ケーブル導体1aに直流課電した場合に、ストレスコーン絶縁部3aの先端側(高圧側)に存在する空気層Sに等電位線が入り込むのを抑制できる。
【0014】
図2図1のプレハブジョイントに直流課電した場合のプレハブジョイント内の等電位線の分布を示す。この場合は、ストレスコーン絶縁部3aの先端面に導電性塗料6が塗布されているために、等電位線がストレスコーン絶縁部3aの先端側に存在する空気層Sに入り込まなくなる。このため、空気層Sでの微小放電の発生を抑えることができ、絶縁性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0015】
1:CVケーブル
1a:ケーブル導体
1b:ケーブル絶縁体
1c:外部半導電層
2:エポキシユニット
2a:補強絶縁体
2b:埋込電極
2c:遮蔽電極
3:ストレスコーン
3a:絶縁部
3b:導電部
4:導体接続管
5:ストッパー
6:導電性塗料
S:空気層
図1
図2
図3
図4