(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924487
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】揮発性有機化合物回収装置及び揮発性有機化合物処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20160516BHJP
F01D 15/08 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
B01D53/04 230
F01D15/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-133681(P2012-133681)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-255896(P2013-255896A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】宇治 茂一
【審査官】
山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/019131(WO,A1)
【文献】
特開昭56−089818(JP,A)
【文献】
特開昭54−110179(JP,A)
【文献】
特開2013−086018(JP,A)
【文献】
特開2007−196200(JP,A)
【文献】
特開2009−233617(JP,A)
【文献】
特開2007−263084(JP,A)
【文献】
特開2009−236103(JP,A)
【文献】
特開2004−344718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02
B01D 53/34
F01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含んだ未処理ガスの前記揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ、この吸着剤に吸着された前記揮発性有機化合物を水蒸気によって脱着させることで前記未処理ガスから揮発性有機化合物を回収する揮発性有機化合物回収装置であって、
前記吸着剤を内蔵する複数の吸着塔と、
前記複数の吸着塔に水蒸気を供給する水蒸気供給ラインと、
前記複数の吸着塔から排出される加圧ガスを前記水蒸気供給ラインにそれぞれ導く減圧ラインを備え、
前記複数の吸着塔では、1サイクル中に吸着処理、加温加圧処理、脱着処理及び減圧処理の各処理がそれぞれ順に実施されると共に、1サイクル中において常にいずれか2つの吸着塔での加温加圧処理と減圧処理とが互いに同期して実施され、
前記水蒸気供給ラインと、前記複数の吸着塔からの各減圧ラインとの接続部位には、前記水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気を駆動ガスとして動作する昇圧混合手段が設置され、
前記昇圧混合手段は、脱着処理後の減圧処理を行っている吸着塔から減圧ラインを介して塔内残留加圧ガスを吸引し、前記水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気と混合させて、前記減圧処理を行っている吸着塔と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている吸着塔に導入する
ことを特徴とする揮発性有機化合物回収装置。
【請求項2】
前記昇圧混合手段としてエゼクタが用いられている請求項1に記載の揮発性有機化合物回収装置。
【請求項3】
前記水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気によって回転駆動されるタービンと、このタービンにより回転駆動されて減圧処理を行っている吸着塔から減圧ラインを介して塔内残留加圧ガスを吸引して圧縮する圧縮機を具備し、前記タービンを通過した水蒸気及び前記圧縮機により加圧された前記塔内残留加圧ガスを混合させて、前記減圧処理を行っている吸着塔と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている吸着塔に導入するタービン機構が前記昇圧混合手段として用いられている請求項1に記載の揮発性有機化合物回収装置。
【請求項4】
請求項1に記載の揮発性有機化合物回収装置と、
この揮発性有機化合物回収装置で回収される揮発性有機化合物を燃焼させる燃焼器を備えた
ことを特徴とする揮発性有機化合物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物を含んだ未処理ガスの前記揮発性有機化合物を吸着剤、例えば、活性炭に吸着させ、この活性炭に吸着された揮発性有機化合物を水蒸気によって脱着させて回収するのに用いられる揮発性有機化合物回収装置及び揮発性有機化合物処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような揮発性有機化合物回収装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この揮発性有機化合物回収装置は、吸着剤を内蔵する吸着塔を備えている。この吸着塔では、トルエンやキシレン等の揮発性有機化合物を含む未処理ガスを塔内に導入して、この未処理ガスに含まれる揮発性有機化合物を常温常圧で吸着剤に吸着させることで、未処理ガスから揮発性有機化合物を除去する吸着処理が実施されるようになっている。
【0004】
また、この吸着塔では、上記吸着処理に続いて、塔内に水蒸気を導入して温度及び圧力をいずれも上昇させる加温加圧処理が実施され、さらに、この加温加圧処理によって温度及び圧力が上昇した塔内に水蒸気を導入して吸着剤から揮発性有機化合物を脱着させて、揮発性有機化合物と混合した水蒸気を、例えば、ガスタービンの燃焼器に送る脱着処理が実施されるようになっている。
【0005】
加えて、吸着塔では、脱着処理から上記吸着処理に再び戻るまでの処理として、塔内に残留する水蒸気を処理済ガスとして大気に放出することで、塔内圧力を下げるといった減圧処理が実施されるようになっている。
【0006】
この揮発性有機化合物回収装置において、吸着塔を複数装備して、各吸着塔における上記した吸着、加温・加圧、脱着及び減圧の各処理が1サイクル中で互いに重ならないように制御することで、揮発性有機化合物の回収が連続して行われるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/019131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記した揮発性有機化合物回収装置は、未処理ガスから揮発性有機化合物を回収して、例えば、ガスタービンの燃焼器に送るために用いられる、すなわち、回収した揮発性有機化合物をガスタービンの燃料として再利用するという省エネルギー実現のために用いられることから、吸着塔での減圧処理において、塔内に残留する水蒸気(加圧ガス)を大気に放出することは、省エネルギーに反することになり、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0009】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、未処理ガスから揮発性有機化合物を回収して再利用可能とすることで、省エネルギーを実現することができるのは勿論のこと、さらなる省エネルギー効果を得ることが可能である揮発性有機化合物回収装置及び揮発性有機化合物処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、揮発性有機化合物を含んだ未処理ガスの前記揮発性有機化合物を吸着剤、例えば、活性炭に吸着させ、この活性炭に吸着された揮発性有機化合物を水蒸気によって脱着させることで前記未処理ガスから揮発性有機化合物を回収する揮発性有機化合物回収装置であって、前記吸着剤を内蔵する複数の吸着塔と、前記複数の吸着塔に水蒸気を供給する水蒸気供給ラインと、前記複数の吸着塔から排出される加圧ガスを前記水蒸気供給ラインにそれぞれ導く減圧ラインを備え、前記複数の吸着塔では、1サイクル中に吸着処理、加温加圧処理、脱着処理及び減圧処理の各処理がそれぞれ順に実施されると共に、1サイクル中において常にいずれか2つの吸着塔での加温加圧処理と減圧処理とが互いに同期して実施され、前記水蒸気供給ラインと、前記複数の吸着塔からの各減圧ラインとの接続部位には、前記水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気を駆動ガスとして動作する昇圧混合手段が設置され、前記昇圧混合手段は、脱着処理後の減圧処理を行っている吸着塔から減圧ラインを介して塔内残留加圧ガスを吸引し、前記水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気と混合させて、前記減圧処理を行っている吸着塔と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている吸着塔に導入する構成としたことを特徴としており、この構成の揮発性有機化合物回収装置を従来の課題を解決するための手段としている。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る揮発性有機化合物回収装置は、前記昇圧混合手段としてエゼクタが用いられている構成としている。
【0012】
さらに、本発明の請求項3に係る揮発性有機化合物回収装置は、前記水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気によって回転駆動されるタービンと、このタービンにより回転駆動されて減圧処理を行っている吸着塔から減圧ラインを介して塔内残留加圧ガスを吸引して圧縮する圧縮機を具備し、前記タービンを通過した水蒸気及び前記圧縮機により加圧された前記塔内残留加圧ガスを混合させて、前記減圧処理を行っている吸着塔と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている吸着塔に導入するタービン機構が前記昇圧混合手段として用いられている構成としている。
【0013】
一方、本発明の請求項4に係る揮発性有機化合物処理システムは、請求項1に記載の揮発性有機化合物回収装置と、この揮発性有機化合物回収装置で回収される揮発性有機化合物を燃焼させる燃焼器を備えた構成としている。
【0014】
本発明に係る揮発性有機化合物回収装置では、複数の吸着塔において、1サイクル中に吸着処理、加温加圧処理、脱着処理及び減圧処理の各処理がそれぞれ順に、そして、互いに重ならないようにして実施されるので、揮発性有機化合物の回収が連続して行われる。
【0015】
この1サイクル中において、常にいずれか2つの吸着塔での加温加圧処理と減圧処理とが互いに同期して実施されるので、脱着処理後の減圧処理を行っている吸着塔内に残留している加圧ガスが、この減圧処理を行っている吸着塔と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている吸着塔に導入するように成すと、すなわち、両吸着塔に対していわゆる均圧処理を実施すると、減圧処理を行っている吸着塔では減圧開始時の約半分の圧力まで減圧され、一方、加温加圧処理を行っている吸着塔では、目標圧力の約半分の圧力まで加圧されることとなる。
【0016】
このとき、水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気を駆動ガスとする昇圧混合手段の動作により、減圧処理を行っている吸着塔から減圧ラインを介して塔内残留加圧ガスが吸引され、水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気と混合されて、加温加圧処理を行っている吸着塔に導入される。
【0017】
つまり、減圧処理を行っている吸着塔からは、減圧開始時の半分以上の残留加圧ガスが加温加圧処理を行っている吸着塔に強制的に移送されることとなり、その分だけこの加温加圧処理を行っている吸着塔では、目標圧力とするべく外部から導入する加圧用のガスの量を減らし得ることとなる。
【0018】
したがって、本発明に係る揮発性有機化合物処理システムにおいて、より一層の省エネルギー効果が得られることとなる。
【0019】
また、本発明に係る揮発性有機化合物回収装置において、上記したように、昇圧混合手段としてエゼクタを採用した場合には、簡単な構成で省エネルギー化に貢献でき、一方、昇圧混合手段としてタービン機構を採用した場合には、減圧処理を行っている吸着塔からの塔内残留加圧ガスと水蒸気供給ラインにより供給される水蒸気との効率の良い昇圧混合が成されることとなり、このように、昇圧混合手段としてタービン機構を採用した場合において、タービンをモータで回転駆動する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る揮発性有機化合物回収装置では、上記した構成としているので、未処理ガスから揮発性有機化合物を回収して再利用可能とすることで、省エネルギーを実現することができるのは言うまでもなく、さらなる省エネルギー効果を得ることが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る揮発性有機化合物回収装置を有する揮発性有機化合物処理システムを示す概略構成説明図である。
【
図2】
図1に示した揮発性有機化合物回収装置の1処理サイクル中におけるタイムスケジュール説明図である。
【
図3】
図1に示した揮発性有機化合物回収装置の第1吸着塔及び第3吸着塔間で均圧処理を行っている際のバルブの開閉状態説明図である。
【
図4】
図1に示した揮発性有機化合物回収装置の第1吸着塔及び第3吸着塔間で減圧・加圧処理を行っている際のバルブの開閉状態説明図である。
【
図5】
図1に示した揮発性有機化合物回収装置の第1吸着塔が放圧処理を行っている際のバルブの開閉状態説明図である。
【
図6】
図1に示した揮発性有機化合物回収装置の第1吸着塔及び第3吸着塔間の均圧処理時におけるバルブ開閉状態の拡大説明図(a),減圧・加圧処理時におけるバルブ開閉状態の拡大説明図(b)及び放圧処理時におけるバルブ開閉状態の拡大説明図(c)である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る揮発性有機化合物回収装置を示す第1吸着塔及び第3吸着塔間の減圧・加圧処理時におけるバルブ開閉状態の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る揮発性有機化合物回収装置が採用される揮発性有機化合物処理システムを示しており、この揮発性有機化合物処理システムは、揮発性有機化合物回収装置1と、ガスタービンの燃焼器9と、図示しない水蒸気生成部を備えている。
【0023】
揮発性有機化合物回収装置1は、揮発性有機化合物を含んだ未処理ガスの揮発性有機化合物を吸着剤、例えば、活性炭に吸着させ、この活性炭に吸着された揮発性有機化合物を加圧環境下で水蒸気によって脱着させることで未処理ガスから揮発性有機化合物を回収するようになっている。
【0024】
具体的には、この揮発性有機化合物回収装置1は、吸着剤を内蔵する7つの吸着塔11〜17と、これらの吸着塔11〜17側に上記水蒸気生成部で生成された水蒸気を供給する水蒸気供給ライン3と、吸着塔11〜17から排出される加圧ガスを水蒸気供給ライ3ンにそれぞれ導く減圧ライン31〜37と、水蒸気供給ライン3から吸着塔11〜17のそれぞれに水蒸気を送給する加圧ライン51〜57と、吸着塔11〜17に接続する処理済ガス排出ライン4を備えている。
【0025】
水蒸気供給ライン3には、供給用バルブ2が配置され、複数の減圧ライン31〜37には、減圧用バルブ21〜27がそれぞれ配置され、加圧ライン51〜57には、加圧用バルブ41〜47がそれぞれ配置されており、処理済ガス排出ライン4と吸着塔11〜17との間には、排出バルブ61〜67がそれぞれ配置されている。
【0026】
また、
図1に一点鎖線で示すように、7つの吸着塔11〜17のそれぞれに対して揮発性有機化合物を含んだ未処理ガスが図示しない制御バルブを介して導入され、
図1に二点鎖線で示すように、7つの吸着塔11〜17からは後述する化合物混合水蒸気が燃焼器9に対して図示しない燃焼器用バルブを介して送給されるようになっている。
【0027】
そして、7つの吸着塔11〜17では、
図2に示すように、1サイクル中に吸着処理、加温加圧処理、脱着処理及び減圧処理の各処理がそれぞれ順に、そして、互いに重ならないようにして実施されるようになっている。
【0028】
ここで、吸着塔11〜17において吸着処理が実施される場合には、例えば、
図3〜
図5に示すように、単位時間T3の1サイクル中に吸着塔14〜17において吸着処理が実施される場合には、吸着塔14〜17を取り巻くバルブ24〜27,44〜47,64〜67のすべてが閉状態となり、一方、T3の1サイクル中に第2吸着塔12において脱着処理が実施される場合には、燃焼器用バルブ及び図示しない脱着用蒸気バルブを除いて第2吸着塔12を取り巻くバルブ22,42,62のすべてが閉状態となる。
【0029】
さらに、この揮発性有機化合物回収装置1では、1サイクル中において常にいずれか2つの吸着塔、例えば、単位時間T3の1サイクル中では第1吸着塔11での減圧処理と第3吸着塔13での加温加圧処理とが互いに同期して実施されるようになっている。
【0030】
この実施形態では、
図3に示すように、脱着処理後の減圧処理を行っている第1吸着塔11内に残留している加圧ガスが、この減圧処理を行っている第1吸着塔11と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている第3吸着塔13に導入される、すなわち、両吸着塔11,13に対していわゆる均圧処理が実施されるようになっている。
【0031】
この場合、水蒸気供給ライン3上の供給用バルブ2における下流側と、7つの吸着塔11〜17からの各減圧ライン31〜37との接続部位には、水蒸気供給ライン3により供給される水蒸気を駆動ガスとして動作するエゼクタ(昇圧混合手段)8が設置されている。
【0032】
このエゼクタ8は、
図4に示すように、上記均圧処理に続いて減圧処理を行っている第1吸着塔11から減圧用バルブ21及び減圧ライン31を介して塔内残留加圧ガスを吸引して、水蒸気供給ライン3により開状態の供給用バルブ2を介して供給される水蒸気と混合させるようになっている。
【0033】
そして、このエゼクタ8は、残留加圧ガスと水蒸気との混合流を、上記均圧処理に続いて加温加圧処理を行っている第3吸着塔13に加圧ライン53及び開状態の加圧バルブ43を介して導入するようになっている。
なお、この実施形態では、
図5に示すように、減圧処理を行っている第1吸着塔11において、この減圧処理に続いて、排出バルブ61を開状態とする放圧処理が成されるようになっている。
【0034】
上記した揮発性有機化合物回収装置1では、7つの吸着塔11〜17において、1サイクル中に吸着処理、加温加圧処理、脱着処理及び減圧処理の各処理がそれぞれ順に、そして、互いに重ならないようにして実施されるので、揮発性有機化合物の回収が連続して行われる。
【0035】
この1サイクル中において、常にいずれか2つの吸着塔、例えば、単位時間T3の1サイクル中では第1吸着塔11での減圧処理と第3吸着塔13での加温加圧処理とが互いに同期して実施されるので、
図6(a)にも示すように、減圧用バルブ21,加圧用バルブ43をいずれも開状態として、第1吸着塔11内における脱着処理後の加圧ガスが、この減圧処理を行っている第1吸着塔11と同期して吸着処理後の加温加圧処理を行っている常温常圧の第3吸着塔13に流入するようにすれば、すなわち、両吸着塔11,13に対していわゆる均圧処理を実施すれば、減圧処理を行っている第1吸着塔11では減圧開始時の約半分の圧力まで減圧され、一方、加温加圧処理を行っている第3吸着塔13では、目標圧力の約半分の圧力まで加圧されることとなる。
【0036】
このように、第1吸着塔11内の圧力と、第3吸着塔13内の圧力とがほぼ均一になった時点で、
図6(b)にも示すように、水蒸気供給ライン3の供給用バルブ2を開くと、水蒸気がエゼクタ8の駆動流体として作用し、このエゼクタ8の動作により、減圧処理を行っている第1吸着塔11から減圧ライン31を介して塔内残留加圧ガスが吸引され、水蒸気供給ライン3により供給される水蒸気と混合して、加温加圧処理を行っている第3吸着塔13に加圧ライン53を介して流入する。
【0037】
つまり、減圧処理を行っている第1吸着塔11からは、減圧開始時の半分以上の残留加圧ガスが加温加圧処理を行っている第3吸着塔13に強制的に移送されることとなり、その分だけこの加温加圧処理を行っている第3吸着塔13では、目標圧力とするべく外部から導入する加圧用のガスの量を減らし得ることとなる。
【0038】
この後、第3吸着塔13の加圧が完了した時点で、
図6(c)にも示すように、供給用バルブ2,減圧用バルブ21,加圧用バルブ43をいずれも閉じて排出バルブ61のみを開いて放圧処理を行うと、第1吸着塔11内の残りの加圧ガスが大気に放出される。
【0039】
したがって、上記した揮発性有機化合物回収装置1を有する揮発性有機化合物処理システムにおいて、より一層の省エネルギー効果が得られることとなる。
【0040】
また、上記した揮発性有機化合物回収装置1において、昇圧混合手段としてエゼクタ8を採用しているので、簡単な構成で省エネルギー化に貢献できることとなる。
【0041】
本発明に係る揮発性有機化合物回収装置及び揮発性有機化合物処理システムの構成は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、他の構成として、例えば、
図7に示すように、揮発性有機化合物回収装置1の昇圧混合手段として、タービン機構80を採用することができる。
【0042】
このタービン機構80は、水蒸気供給ライン3により供給される水蒸気によって回転駆動されるタービン81と、このタービン81と軸82を介して連結されて、タービン81により回転駆動されて減圧処理を行っている第1吸着塔11から減圧ライン31を介して塔内残留加圧ガスを吸引して圧縮する圧縮機83を具備している。
【0043】
そして、このタービン機構80においては、減圧処理を行っている第1吸着塔11からの塔内残留加圧ガスと水蒸気供給ライン3により供給される水蒸気との効率の良い昇圧混合が成されることとなり、このように、昇圧混合手段としてタービン機構80を採用した場合において、タービン81をモータで回転駆動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 揮発性有機化合物回収装置
3 水蒸気供給ライン
8 エゼクタ(昇圧混合手段)
9 燃焼器
11〜17 吸着塔
31〜37 減圧ライン
80 タービン機構
81 タービン
83 圧縮機